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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】蓄電デバイス電極用分散剤組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230829BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230829BHJP
   C08F 20/12 20060101ALI20230829BHJP
   C08F 20/54 20060101ALI20230829BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
C08F20/12
C08F20/54
C08L33/04
C08K5/17
C08K3/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021182056
(22)【出願日】2021-11-08
(65)【公開番号】P2023069875
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井樋 昭人
(72)【発明者】
【氏名】代田 協一
(72)【発明者】
【氏名】隠岐 一雄
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-189770(JP,A)
【文献】特開2017-228413(JP,A)
【文献】特開2019-192537(JP,A)
【文献】国際公開第2013/151062(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0372121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
C08F 20/12
C08F 20/54
C08L 33/04
C08K 5/17
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー(A)と、沸点が200℃以下のアミン化合物(B)と有機溶剤(C)を含有し、
前記アクリル系ポリマー(A)が下記式(1)で表される構成単位aを含み、
前記化合物(B)が、第2級脂肪族アミン、第3級脂肪族アミン、芳香族アミン、第2級芳香族アミン、第3級芳香族アミンおよび複素環式アミンから選ばれる少なくとも1種のアミン化合物であり、
前記アクリル系ポリマー(A)中の前記構成単位aの含有量が10~80質量%であり、
前記アクリル系ポリマー(A)の含有量は、5質量%以上50質量%以下であり、
前記アクリル系ポリマー(A)と前記化合物(B)の質量比(アクリル系ポリマー(A)/化合物(B))は、0.1以上10以下である、蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【化1】
上記式(1)中、R1、R2、R3は、互いに同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X1は窒素原子または酸素原子を示し、R4は、炭素数8~30の炭化水素基を示す。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマー(A)が、更に下記式(2)で表される構成単位b1または下記式(3)で表される構成単位b2から選ばれる少なくとも1種の構成単位bを含有する、請求項1に記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【化2】
上記式(2)中、R5、R6およびR7は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X2は窒素原子又は酸素原子を示し、R8は炭素数2~4のアルキレン基を示し、pは1~8を示し、R9は水素原子又はメチル基を示す。
【化3】
上記式(3)中、R10、R11およびR12は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X3は、シアノ基、又は炭素数1~4の炭化水素基を有していてもよいピリジニル基を示す。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマー(A)が、更に下記式(4)で表される構成単位cを含有する、請求項1または2に記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【化4】
上記式(4)中、R13、R14、R15は、互いに同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が、5000~100万である、請求項1から3のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【請求項5】
前記化合物(B)の沸点が、100℃以上200℃以下である、請求項1から4のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【請求項6】
前記化合物(B)が、トリプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ベンジルアミン、N-メチルベンジルアミンおよびN-エチルモルホリンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【請求項7】
前記化合物(B)の含有量が、前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して10質量部以上300質量部以下である、請求項1から6のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物。
【請求項8】
素材料系導電材(D)と、請求項1から7のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物とを含有する、炭素材料系導電材スラリー。
【請求項9】
前記炭素材料系導電材(D)が、カーボンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェンから選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の炭素材料系導電材スラリー。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用分散剤組成物を含有する、蓄電デバイス用正極ペースト。
【請求項11】
請求項10に記載の蓄電デバイス用正極ペーストを、集電体に塗工した後、乾燥することを含む、正極塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス電極用分散剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制の観点から二酸化炭素を排出しない電気自動車の開発が盛んに行われている。電気自動車には、ガソリン車に比べて、走行距離が短く、バッテリーの充電に時間がかかるという課題がある。充電時間を短くするためには、正極中での電子の移動速度を速める必要がある。現在、非水電解質蓄電デバイス用の正極には、導電助剤(導電材)として、炭素材料が使用されているが、導電材スラリーや正極ペーストの粘度が高くなり、ハンドリング性に問題があり、スラリーやペーストの粘度低下化が望まれている。
【0003】
特許文献1には、微細炭素繊維と、アミド系有機溶媒である分散媒と、ポリマー系分散剤と、水中でのpKaが7.5以上である有機塩基性化合物からなる微細炭素繊維分散液が開示されている。pKaが7.5以上である有機塩基性化合物としては1~3級アミノ基を有する含窒素有機化合物が使用されており、ポリマー系分散剤としてはメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが使用されている。
特許文献2には、カーボンナノチューブと、ポリビニルピロリドンと、N-メチル-2-ピロリドンと、アミン系化合物を含有する電極用カーボンナノチューブ分散液について開示されている。
特許文献3には、カーボンブラック等の炭素質粒子と、セルロース系分散剤と、ポリ(メチルビニルエーテル無水マレイン酸)、ポリ(イソブチレン無水マレイン酸)、ポリ(エチレン無水マレイン酸)、およびポリ(スチレンコ無水マレイン酸)等の無水マレイン酸部分を含むポリマーと、共分散剤として沸点が200℃以下のアミン化合物と、分散媒とを含む組成物が開示されている。
特許文献4には、蓄電デバイス正極用ペーストに含まれる共重合体として、炭素数8~30の炭化水素基を有する構成単位を含むアクリル系ポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-181140号公報
【文献】特許6531926号公報
【文献】US2019/0372121号
【文献】WO2013/151062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2の技術では、正極塗膜の抵抗値や蓄電デバイスの直流抵抗値が高くなるため、より良質な導電パス、低抵抗の正極塗膜の形成のために、カーボンナノチューブ等の炭素材料系導電材料を含む導電材スラリーや正極ペーストを低粘度化できる分散剤や添加剤の提供が望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、低粘度でハンドリング性が良好な、炭素材料系導電材スラリーおよび正極ペーストの調製を可能とし、正極塗膜の抵抗値や蓄電デバイス直流抵抗値の低下を可能とする蓄電デバイス電極用分散剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、アクリル系ポリマー(A)と、沸点が200℃以下のアミン化合物(B)と有機溶剤(C)を含有し、前記アクリル系ポリマー(A)が下記式(1)で表される構成単位aを含み、前記化合物(B)が、第2級脂肪族アミン、第3級脂肪族アミン、芳香族アミンおよび複素環式アミンから選ばれる少なくとも1種のアミン化合物である、蓄電デバイス電極用分散剤組成物に関する。
【化1】

上記式(1)中、R、RおよびRは、互いに同一または異なり、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、Xは窒素原子または酸素原子を示し、Rは、炭素数8~30の炭化水素基を示す。
【0008】
本開示は、一態様において、炭素材料系導電材(D)と、本開示の分散剤組成物とを含有する、炭素材料系導電材スラリーに関する。
【0009】
本開示は、一態様において、本開示の分散剤組成物を含有する、蓄電デバイス用正極ペーストに関する。
【0010】
本開示は、一態様において、本開示の蓄電デバイス用を集電体に塗工した後、乾燥することを含む、正極塗膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、一態様において、低粘度でハンドリング性が良好な炭素材料系導電材スラリーおよび正極ペーストの調製を可能とし、正極塗膜の抵抗値や蓄電デバイスの直流抵抗値の低下を可能とする蓄電デバイス電極用分散剤組成物を提供できる。
また、本開示によれば、一態様において、低粘度でハンドリング性が良好な炭素材料系導電材スラリーおよび正極ペーストを提供できる。
また、本開示によれば、一態様において、塗膜抵抗値が低い正極塗膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[蓄電デバイス電極用分散剤組成物]
本開示は、特定のアクリル系ポリマー(A)と特定のアミン化合物(B)(以下、「化合物(B)」とも言う)とを併用することにより、低粘度でハンドリング性が良好な炭素材料系導電材スラリーおよび正極ペーストの調製を可能とする蓄電デバイス電極用分散剤組成物(以下、「本開示の分散剤組成物」とも言う)を提供できる、という知見に基づく。
【0013】
本開示は、一態様において、アクリル系ポリマー(A)と、化合物(B)と有機溶剤(C)を含有する分散剤組成物であり、前記アクリル系ポリマー(A)が下記式(1)で表される構成単位aを含み、前記化合物(B)が、第2級脂肪族アミン、第3級脂肪族アミン、芳香族アミンおよび複素環式アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミン化合物であり、その沸点が200℃以下である。
【0014】
本開示によれば、一態様において、低粘度でハンドリング性が良好な炭素材料系導電材スラリーおよび蓄電デバイス電極用正極ペーストの調製を可能とする、蓄電デバイス電極用分散剤組成物を提供できる。また、本開示の分散剤組成物を用いることで、低粘度でハンドリング性が良好な本開示の炭素材料系導電材スラリー(以下、「本開示の導電材スラリー」ともいう)および本開示の蓄電デバイス用正極ペースト(以下、「本開示の正極ペースト」ともいう)を提供できる。また、本開示の分散剤組成物を用いて調製された本開示の正極ペーストを用いることで、塗膜抵抗値の低い正極塗膜や、直流抵抗が低い蓄電デバイスを製造できる。
【0015】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細については明らかではないが、以下のように推察される。
アクリル系ポリマー(A)は、炭素数8~30の炭化水素基により炭素材料系導電材に吸着し分散性を発現すると考えられる。アクリル系ポリマー(A)は炭素材料系導電材の表面全体を覆うことなく、炭素材料系導電材の表面には露出した部位が存在する。隣接する炭素材料系導電材は、π-π相互作用および炭素材料系導電材表面の一部に存在する極性基同士の水素結合により、有機溶媒中において凝集する。しかし、本開示では、化合物(B)が前記極性基と相互作用(中和反応や双極子相互作用)することによって炭素材料系導電材間の水素結合を抑制する。更に、アミン(カチオン)が炭素材料系導電材上のπ電子とカチオン-π相互作用することにより炭素材料系導電材間のπ-π相互作用を抑制する。前記水素結合の抑制と前記π-π相互作用の抑制によって、炭素材料系導電材の分散性が向上し、結果、化合物(B)を添加しない場合と比較して、粘度が低下しているものと推察される。
また、正極塗膜の抵抗値や蓄電デバイスの直流抵抗が低くなるメカニズムとしては次のように推察される。アクリル系ポリマー(A)と化合物(B)がそれぞれ炭素材料系導電材と相互作用し、つまりは、これら両方が炭素材料系導電材の表面に吸着している。アクリル系ポリマー(A)は、炭素材料系導電材表面でまだら状に吸着していると推定されるが、アクリル系ポリマー(A)と化合物(B)とが併存すると、両者の炭素材料系導電材の表面に対する競争吸着が生じ、炭素材料系導電材の表面において、吸着したアクリル系ポリマー(A)と化合物(B)は、各々、局在する。化合物(B)が併存しない場合に比べ、アクリル系ポリマー(A)の吸着部面積は減少する。正極ペーストが塗布され乾燥される過程で、化合物(B)が有機溶剤とともに揮発すると、化合物(B)が吸着していた炭素材料系導電材の表面部分が露出し、この露出部分が炭素材料系導電材同士の導電性接点となる。本開示では、化合物(B)が併存しない場合よりも当該露出部分が多く、そのため、導電パスの形成が容易化しており、その結果、正極塗膜の抵抗値や蓄電デバイスの直流抵抗値の低下を可能としているものと推察される。
本発明において上記効果を発現しうる化合物(B)は、正極ペーストの乾燥時に正極ペースに含まれる溶剤とともに揮散する必要性から、前記溶剤として主に使用されるN-メチル-2ピロリドンの沸点(202℃)よりも低い沸点を有するとともに、炭素材料系導電材表面に存在するカルボキシル基、水酸基などと共有結合しにくいことが求められることから、脂肪族では1級アミンよりも2級アミン、3級アミンが好ましく、脂肪族よりバルキーな構造を有する芳香族系アミン、更には複素環式アミンが好ましい。
ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されない。
【0016】
<アクリル系ポリマー(A)>
本開示の分散剤組成物に含まれるアクリル系ポリマー(A)(以下、「本開示のアクリル系ポリマー(A)」ともいう)は、後述する構成単位aを含む。アクリル系ポリマー(A)は、一又は複数の実施形態において、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、後述する構成単位b1およびb2から選ばれる少なくとも1種(以下これらを総称して「構成単位b」ともいう)を含有することが好ましく、更に構成単位cを含有することがより好ましい。アクリル系ポリマー(A)としては、一又は複数の実施形態において、構成単位aを含む重合体、構成単位aと構成単位bとを含む共重合体、構成単位aと構成単位bと構成単位cとを含む共重合体等が挙げられる。アクリル系ポリマー(A)は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0017】
(構成単位a)
構成単位aは、下記式(1)で表される構成単位である。構成単位aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。本開示において、構成単位aは、アクリル系ポリマー(A)のうちの、炭素材料系導電材表面に吸着する成分である。
【0018】
【化2】
【0019】
式(1)中、R、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Xは窒素原子または酸素原子を示し、Rは炭素数8~30の炭化水素基を示す。
【0020】
式(1)において、炭素材料系導電材の表面に対する吸着性向上の観点から、RおよびRは、水素原子が好ましく、Rは水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましく、Xは、酸素原子が好ましい。
の炭化水素基は、炭素材料系導電材表面に対する吸着性向上の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。同様の観点から、Rの炭素数は、8以上であり、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上が更に好ましく、16以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、30以下であり、24以下が好ましく、22以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。Rの炭素数は、同様の観点から、10~30が好ましく、12~24がより好ましく、14~22が更に好ましく、16~20が更により好ましい。Rとしては、同様の観点から、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基等が挙げられる。
【0021】
構成単位aを与えるモノマー(以下、「モノマーa」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートのエステル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物が挙げられる。中でも、炭素材料系導電材の分散性向上の観点およびアクリル系ポリマーへの構成単位aの導入の容易性の観点から、モノマーaは、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびベヘニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ステアリル(メタ)アクリレートおよびベヘニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ステアリルメタクリレート(SMA)およびベヘニルアクリレート(BeA)から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ステアリルメタクリレートが更に好ましい。
【0022】
アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位aの含有量は、炭素材料系導電材の表面に対する吸着性および炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位aの含有量は、同様の観点から、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~75質量%、更に好ましくは20~70質量%であり、更により好ましくは25~60質量%、更により好ましくは30~50質量%である。構成単位aが2種以上の組合せである場合、構成単位aの含有量はそれらの合計含有量である。
本開示において、アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位aの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対するモノマーaの使用量の割合とみなすことができる。
【0023】
(構成単位b)
構成単位bは、下記式(2)で表される構成単位b1および下記式(3)で表される構成単位b2から選ばれる少なくとも1種の構成単位である。構成単位bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。本開示において、構成単位bは、アクリル系ポリマー(A)のうちの炭素材料系導電材表面に吸着せず、立体反発を担う成分である。アクリル系ポリマー(A)は、立体反発による分散性向上の観点から、好ましくは構成単位bとして構成単位b2を含む。
【0024】
【化3】
【0025】
上記式(2)中、R、R、Rは、互いに同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Xは窒素原子又は酸素原子を示し、Rは炭素数2~4のアルキレン基を示し、pは1~8を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。
式(2)において、立体反発による分散性向上の観点から、RおよびRは、水素原子が好ましく、Rは水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましく、Xは、酸素原子が好ましく、pは、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。
【0026】
【化4】
【0027】
上記式(3)中、R10、R11およびR12は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Xは、シアノ基又は炭素数1~4の炭化水素基を有していてもよいピリジニル基を示す。
【0028】
前記式(2)で表される構成単位b1は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。構成単位b1としては、非イオン性モノマー由来の構造、又は重合後に非イオン性基を導入した構造等が挙げられる。構成単位b1を与えるモノマー(以下、「モノマーb1」ともいう)としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、立体反発と有機溶媒に対するアクリル系ポリマー(A)の溶解性の観点から、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGMA)、およびメトキシエチルメタクリレート(MEA)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~3のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA(EO1))、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2のエメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA(EO2))およびメトキシエチルメタクリレート(MEA)から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびエチレンオキサイドの平均付加モル数が2のエメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA(EO2))から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。モノマーb1は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0029】
(構成単位b2)
前記式(3)で表される構成単位b2は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。アクリル系ポリマー(A)を合成するにあたり、前記式(3)で表される構成単位b2を与えるモノマー(以下、「モノマーb2」ともいう)としては、立体反発と有機溶媒に対するアクリル系ポリマーの溶解性の観点から、4-ビニルピリジン(4-Vpy)、2-ビニルピリジン(2-Vpy)、アクリロニトリル(AN)およびメタクリロニトリル(MAN)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、4-ビニルピリジン(4-Vpy)およびアクリロニトリル(AN)から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリロニトリル(AN)がより好ましい。モノマーb2は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0030】
(構成単位c)
構成単位cは、下記式(4)で表される構成単位である。構成単位cは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。本開示において、構成単位cは、本開示のアクリル系ポリマー(A)のうちの炭素材料系導電材表面に吸着せず、溶解性を担う成分である。
【0031】
【化5】
【0032】
上記式(4)中、R13、R14、R15は、互いに同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。構成単位cを与えるモノマー(以下、「モノマーc」ともいう)としては、有機溶媒に対するアクリル系ポリマーの溶解性の観点から、アクリルアミド(AAm)、およびメタクリルアミド(MAAm)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メタクリルアミド(MAAm)が好ましい。
【0033】
本開示のアクリル系ポリマー(A)が構成単位bを含む場合、アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位bの含有量は、立体反発による分散性向上の観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位bの含有量は、同様の観点から、20~80質量%が好ましく、25~70質量%がより好ましく、30~60質量%が更に好ましく、30~50質量%が更により好ましい。構成単位bが2種以上の組合せである場合、構成単位bの含有量は、それらの合計含有量である。
本開示において、モノマーbは、アクリル系ポリマー(A)を合成するにあたり、構成単位bを与えるモノマーであり、アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位bの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対するモノマーbの使用量の割合とみなすことができる。
【0034】
本開示のアクリル系ポリマー(A)が構成単位cを含む場合、アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位cの含有量は、アクリル系ポリマー(A)の溶解性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位cの含有量は、同様の観点から、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~30質量%が更に好ましく、20~30質量%が更により好ましい。構成単位cが2種以上の組合せである場合、構成単位cの含有量は、それらの合計含有量である。
本開示のアクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位cの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対するモノマーcの使用量の割合とみなすことができる。
【0035】
本開示のアクリル系ポリマー(A)は、本開示の効果が奏される限り、構成単位a、構成単位bおよび構成単位c以外の構成単位を更に含んでいてもよい。アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中における構成単位aと構成単位bとの合計含有量は、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、30質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が更により好ましく、そして、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0036】
本開示のアクリル系ポリマー(A)が、構成単位a、構成単位bおよび構成単位cを含む共重合体である場合、構成単位a、構成単位b、構成単位cの好ましい組み合わせは、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、例えば、下記が挙げられる。
SMA/HEMA/MAAm
SMA/HEMA/AAm
SMA/PEGMA(EO1)/MAAm
SMA/PEGMA(EO2)/MAAm
SMA/2-Vpy/MAAm
SMA/4-Vpy/MAAm
SMA/4-Vpy/AAm
SMA/AN/MAAm
BeA/AN/MAAm
【0037】
本開示のアクリル系ポリマー(A)が構成単位a、構成単位bおよび構成単位cを含む共重合体である場合、構成単位a、構成単位bおよび構成単位cの配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでも良い。
【0038】
<アクリル系ポリマーの製造方法>
本開示のアクリル系ポリマー(A)の合成方法は特に限定されず、通常の(メタ)アクリル酸エステル類、およびビニルモノマーの重合に使用される方法が用いられる。アクリル系ポリマー(A)の合成方法としては、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。例えば、フリーラジカル重合法を用いる場合は、モノマーaおよび必要に応じてモノマーb,cを含むモノマー成分を溶液重合法で重合させる等の公知の方法で得ることができる。
前記重合に用いられる溶媒としては、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン)、芳香族系炭化水素(トルエン、キシレン等)、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、N-メチルピロリドン等の有機溶媒を使用することができる。溶媒量は、モノマー全量に対する質量比で、0.5~10倍量が好ましい。
前記重合に用いられる重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えばアゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンぺルオキシド類等が挙げられる。重合開始剤量は、モノマー成分全量に対し、0.01~5モル%が好ましく、0.05~4モル%がより好ましく、0.1~3モル%が更に好ましい。重合反応は、窒素気流下、40~180℃の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は0.5~20時間が好ましい。
また、前記重合の際、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、イソプロピルアルコールや、メルカプトエタノール等のメルカプト化合物が挙げられる。
【0039】
本開示において、アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中の構成単位aの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマーaの使用量の比と見なすことができる。アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中の構成単位bの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマーbの使用量の比と見なすことができる。アクリル系ポリマー(A)の全構成単位中の構成単位aおよび構成単位bの合計含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマーaおよびモノマーbの合計使用量の比と見なすことができる。
【0040】
本開示のアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、炭素材料系導電材の分散性向上と有機溶媒に対するアクリル系ポリマーの溶解性の観点から、5000以上が好ましく、7000以上がより好ましく、1万以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、100万以下が好ましく、50万以下がより好ましく、30万以下が更に好ましく、20万以下が更により好ましく、10万以下が更により好ましく、5万以下が更により好ましい。同様の観点から、本開示のアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、5000~100万が好ましく、7000~50万がより好ましく、1万~30万が更に好ましく、1万~20万が更により好ましく、1万~10万が更により好ましく、1万~5万が更により好ましい。本開示において、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値であり、測定条件の詳細は実施例に示す通りである。
【0041】
本開示の分散剤組成物中の本開示のアクリル系ポリマー(A)の含有量は、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、有機溶媒に対するアクリル系ポリマー(A)の溶解性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。アクリル系ポリマー(A)が2種以上の組合せである場合、アクリル系ポリマー(A)の含有量はそれらの合計含有量である。
【0042】
<化合物(B)>
本開示の分散剤組成物に含まれる沸点が200℃以下のアミン化合物(B)(以下、「本開示の化合物(B)」ともいう)は、炭素材料系導電材に対する相互作用、吸着性の観点から、塩基性の強い、2級の脂肪族アミン、3級の脂肪族アミン、芳香族アミンおよび複素環式アミンから選ばれる少なくとも1種である。本開示の化合物(B)の沸点は、200℃以下であるが、正極ペーストの溶媒の沸点以下であることが好ましく、正極ペーストの溶媒として多用されているN-メチルピロリドン(NMP)の沸点(沸点202℃)以下であることがより好ましく、NMPの再利用の観点から、190℃以下が更に好ましい。本開示の化合物(B)の沸点の下限は、取り扱い性の観点から100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0043】
アミン化合物は、炭素材料系導電材表面において“カチオン‐π”相互作用により、炭素材料系導電材同士のπ-π相互作用を遮断し、導電材スラリーの粘度を低減するが、正極塗膜中に電気絶縁性のアミン化合物が残留すると、正極塗膜の抵抗値や、リチウムイオン電池等の蓄電デバイスの直流抵抗値を上昇させてしまう。そのため、本開示では、アミン化合物(B)として、正極ペーストで主に使用される溶剤NMP(沸点202℃)よりも低沸点であり、且つ、アミド化しない、第3級脂肪族アミン、芳香族アミン、または複素環式アミン、或いは、大きな立体障害によりアミド化しにくい、第2級の脂肪族アミンや、芳香族アミンまたは複素環式アミンを使用しており、これにより、塗膜の乾燥時に溶剤とともにアミン化合物(B)も良好に揮発され、アミド化合物の添加に起因する上記抵抗値の上昇が抑制されているものと推察される。
【0044】
本開示の化合物(B)としては、ジブチルアミン(以下カッコ内の数値は沸点:159℃)、ジヘキシルアミン(同193℃)、N-メチルシクロヘキシルアミン(同148℃)、N-エチルシクロヘキシルアミン(同164℃)等の第2級の脂肪族アミン;トリプロピルアミン(同156℃)、ジメチルオクチルアミン(同195℃)、ジメチルシクロへキシルアミン(同160℃)等の第3級の脂肪族アミン;ベンジルアミン(同185℃)等の第1級の芳香族アミン;N-メチルベンジルアミン(同186℃)、N-モノメチルアニリン(同196℃)等の第2級の芳香族アミン;N,N-ジメチルベンジルアミン(同183℃)、N,N-ジメチルアニリン(同194℃)、N,N-ジメチル-o-トルイジン(同186℃)等の第3級の芳香族アミン;N-メチルモルホリン(同116℃)、N-エチルモルホリン(同135℃)、4-イソブチルモルホリン(同167℃)等の複素環式アミン等から選ばれる1種以上のアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、炭素材料系導電材の分散性向上と、導電性スラリーや正極ペーストの低粘度化と、正極塗膜の抵抗値および蓄電デバイスの直流抵抗値の低下との両立の観点から、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、トリプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリンおよびN-エチルモルホリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、トリプロピルアミン、ジヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、ベンジルアミンおよびN-エチルモルホリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、トリプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ベンジルアミンおよびN-エチルモルホリンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ジヘキシルアミン、ベンジルアミンおよびN-エチルモルホリンから選ばれる少なくとも1種が更により好ましい。
【0045】
本開示の分散剤組成物中の本開示の化合物(B)の含有量は、一又は複数の実施形態において、導電材スラリー及び正極ペーストの低粘度化の効果の観点から、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、更により好ましくは50質量部以上、更により好ましくは70質量部以上であり、そして、アクリル系ポリマー(A)の溶解性の観点から、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、更に好ましくは200質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。
【0046】
本開示の分散剤組成物中における本開示のアクリル系ポリマー(A)と本開示の化合物(B)との質量比(アクリル系ポリマー(A)/化合物(B))は、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、0.7以上が更に好ましく、そして、高導電性の観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましく、1.5以下が更に好ましい。
【0047】
<有機溶媒(C)>
本開示の分散剤組成物は、一又は複数の実施形態において、有機溶媒(C)を更に含有することができる。有機溶媒(C)としては、正極ペーストに含まれる結着剤(バインダー樹脂)を溶解できるものが好ましい。有機溶媒(C)としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド系極性有機溶媒;ヘキサノール、ヘプタノール、またはオクタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、またはヘキシレングリコール等のグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、またはソルビトール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、またはシクロペンタノン等のケトン類;酢酸エチル、γ-ブチルラクトン、またはε-プロピオラクトン等のエステル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。有機溶媒(C)は1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。中でも、バインダー樹脂の溶解性の観点から、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましく、N-メチルピロリドン(NMP)がより好ましい。
【0048】
本開示の分散剤組成物中の有機溶媒(C)の含有量は、一又は複数の実施形態において、本開示のアクリル系ポリマー(A)の溶解性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、アクリル系ポリマー(A)と本開示の化合物(B)の均一溶解性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは78質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0049】
本開示の分散剤組成物は、本開示の効果が妨げられない範囲で、その他の成分を更に含んでもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、消泡剤、防腐剤、脱水剤、防錆剤、可塑剤、結着剤(アクリル系ポリマー(A)とは異なる構造のバインダー樹脂)等が挙げられる。
【0050】
[導電材スラリー]
本開示は、一態様において、炭素材料系導電材(D)と、本開示の分散剤組成物とを含有する、導電材スラリー(以下、「本開示の導電材スラリー」ともいう)に関する。本態様における本開示の分散剤組成物の好ましい形態は上述のとおりである。本開示の導電材スラリーは、一又は複数の実施形態において、本開示のアクリル系ポリマー(A)、本開示のアミン化合物(B)、有機溶媒(C)、および後述する炭素材料系導電材(D)(以下、「本開示の炭素材料系導電材(D)」ともいう)を含む。
【0051】
<炭素材料系導電材(D)>
本開示の炭素材料系導電材(D)としては、一又は複数の実施形態において、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と表記することもある)、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン等が挙げられ、これらの中でも、高い導電性を実現する観点から、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、およびグラフェンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、同様の観点から、カーボンナノチューブ又はグラフェンがより好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。炭素材料系導電材(D)は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0052】
(カーボンナノチューブ)
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンナノチューブ(CNT)の平均直径は、特に限定されないが、CNTの分散性向上の観点から、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上であり、そして、導電性向上の観点から、好ましくは100nm以下が好ましく、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下である。同様の観点から、CNTの平均直径は、好ましくは2~100nm、より好ましくは3~70nmがより好ましく、更に好ましくは5~50nmである。本開示において、CNTの平均直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)により測定できる。
【0053】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンナノチューブ(CNT)は、導電性と分散性を両立するために、2種以上の直径の異なるものを使用してもよい。2種以上の直径の異なるCNTを使用する場合、相対的に細いCNTの平均直径は、分散性の観点から、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上であり、そして、導電性の観点から、好ましくは29nm以下、より好ましくは25nm以下、更に好ましくは20nm以下である。相対的に太いCNTの平均直径は、分散性の観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは35nm以上、更に好ましくは40nm以上であり、そして、導電性向上の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0054】
本開示において、カーボンナノチューブ(CNT)とは、複数のカーボンナノチューブを含む総体を意味する。本開示の導電材スラリーの調製に用いられるカーボンナノチューブの形態は、特に限定されないが、例えば、複数のカーボンナノチューブがそれぞれ独立していてもよいし、複数のカーボンナノチューブが束状あるいは絡まり合うなどの形態でもよいし、これらの形態が混合した形態でもよい。カーボンナノチューブは、種々の層数または直径のカーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの製造におけるプロセス由来の不純物(例えば、触媒やアモルファスカーボン)を含み得る。
【0055】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンナノチューブ(CNT)は、一又は複数の実施形態において、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであり、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ(SWカーボンナノチューブ)、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ(DWカーボンナノチューブ)、3層以上に巻いたものを多層カーボンナノチューブ(MWカーボンナノチューブ)ともいう。カーボンナノチューブを含む蓄電デバイス用正極ペーストを用いて形成される正極塗膜に求められる特性に応じて、単層、2層、多層のいずれのカーボンナノチューブおよびそれらの混合物を用いることができ、正極塗膜は、電極基板(集電体)に塗工して得られた膜状の層である。
【0056】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるCNTとしては、例えば、Nanocyl社のNC-7000(以下数値は平均直径、9.5nm)、NX7100(10nm)、Cnano社のFT6100(9nm)、FT-6110(9nm)、FT-6120(9nm)、FT-7000(9nm)、FT-7010(9nm)、FT-7320(9nm)、FT-9000(12.5nm)、FT-9100(12.5nm)、FT-9110(12.5nm)、FT-9200(19nm)、FT-9220(19nm)、Cabot Performance material(Shenzhen)社のHCNTs4(4.5nm)、CNTs5(7.5nm)、HCNTs5(7.5nm)、GCNTs5(7.5nm)、HCNTs10(15nm)、CNTs20(25nm)、CNTs40(40nm)、韓国CNT社のCTUBE170(13.5nm)、CTUBE199(8nm)、CTUBE298(10nm)、Kumho社のK-Nanos100P(11.5nm)、LG Chem社のCP-1001M(12.5nm)、BT-1003M(12.5nm)、Nano Tech Port社の3003(10nm)、3021(20nm)等が挙げられる。
カーボンナノチューブを2種類組み合わせて使用する場合のCNTとしては、例えば、Cabot Performance material(Shenzhen)社のCNTs40(40nm)とHCNTs4(4.5nm)又はHCNTs5(7.5nm)との組合せ、CNTs40(40nm)とGCNTs5(7.5nm)との組合せ、CNTs40(40nm)とCnano社のFT-7010(9nm)との組合せ、CNTs40(40nm)とFT-9100(12.5nm)との組合せ、CNTs40(40nm)とLG Chem社のBT-1003M(12.5nm)との組合せ等が挙げられる。
【0057】
(カーボンブラック)
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど各種のものを用いることができる。また、通常行われている酸化処理がなされたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0058】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、好ましくは20m2/g以上1500m2/g以下、より好ましくは50m2/g以上1000m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上800m2/g以下のものを使用することが望ましい。
【0059】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンブラックの一次粒子径(直径)は、導電性の観点から、5~1000nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。本開示において、カーボンブラックの一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0060】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC-300J、EC-600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35、Li-100、Li-250、Li-400、Li-435(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
(グラフェン)
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるグラフェンとは、一般には1原子の厚さのsp結合炭素原子のシート(単層グラフェン)を指すが、本開示においては、単層グラフェンが積層した薄片状の形態を持つ物質も含めてグラフェンと呼ぶことにする。
【0062】
本開示の炭素材料系導電材(D)として使用できるグラフェンの厚みには特に制限は無いが、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下である。グラフェン層に平行な方向の大きさには特に制限は無いが、小さすぎるとグラフェン一個あたりの導電パスが短くなるため、グラフェン間の接触抵抗の影響で導電性が悪くなる。そのため、本開示におけるグラフェンはある程度以上大きいことが好ましい。グラフェン層に平行な方向の大きさは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上である。ここで、グラフェン層に平行な方向の大きさとは、グラフェンの面方向に垂直な方向から観察したときの最大径と最小径の平均を言う。
【0063】
本開示の導電材スラリー中の炭素材料系導電材(D)の含有量は、正極ペーストの濃度調整の利便性向上の観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、そして、導電材スラリーを取り扱いやすい粘度とする観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。本開示の導電材スラリー中の炭素材料系導電材(D)の含有量は、同様の観点から、1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~7質量%が更に好ましい。
【0064】
<導電材スラリー中のアクリル系ポリマー(A)>
本開示の導電材スラリー中のアクリル系ポリマー(A)の含有量は、炭素材料系導電材(D)の分散性向上の観点から、炭素材料系導電材(D)100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更により好ましくは10質量部以上であり、そして、高導電性の観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更により好ましくは30質量部以下である。本開示の導電材スラリー中のアクリル系ポリマー(A)の含有量は、同様の観点から、炭素材料系導電材100質量部に対し、0.1~200質量部が好ましく、1~100質量部がより好ましく、5~50質量部が更に好ましく、10~30質量部が更により好ましい。
【0065】
<導電材スラリー中の化合物(B)>
本開示の導電材スラリー中の化合物(B)の含有量は、炭素材料系導電材の分散性向上の観点から、炭素材料系導電材(D)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましく、10質量部以上が更により好ましく、そして、高導電性の観点から、500質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましく、30質量部以下が更により好ましい。同様の観点から、化合物(B)の含有量は、炭素材料系導電材(D)100質量部に対して、0.5~500質量部が好ましく、1.0~100質量部がより好ましく、5~50質量部が更に好ましく、10~30質量部が更により好ましい。
【0066】
<導電材スラリーの製造方法>
本開示の導電材スラリーは、一又は複数の実施形態において、本開示の分散剤組成物と炭素材料系導電材(D)、および必要に応じて追加溶媒を含む混合物を混合分散機で調製することができる。前記追加溶媒としては、上述した本開示の分散剤組成物の調製に用いることができる有機溶媒(C)と同様のものが挙げられる。前記混合分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザー、振動ミル、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、およびペイントシェーカー等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。導電材スラリーの構成成分のうちの一部成分を混合してから、それを残余と混合することもできるし、各成分は、全量を一度に投入せずに、複数回に分けて投入してもよい。炭素材料系導電材(D)の状態は、乾燥状態でもよいし、溶媒を含んだ状態であってもよい。
【0067】
本開示の導電材スラリーの25℃における粘度は、低い方が好ましい。沈降性などの観点から、炭素材料系導電材(D)の含有量が5質量%の場合、例えば、0.05Pa・s以上が好ましく、0.1Pa・s以上がより好ましく、0.2Pa・s以上が更に好ましい。また、導電材スラリーの25℃における粘度は、正極ペースト調製時のハンドリング性向上の観点から、炭素材料系導電材(D)の含有量が5質量%の場合、50Pa・s以下が好ましく、20Pa・s以下より好ましく、10Pa・s以下が更に好ましい。
【0068】
[正極ペースト]
本開示は、一態様において、本開示の分散剤組成物を含有する、蓄電デバイス用正極ペースト(以下、「本開示の正極ペースト」ともいう)に関する。本態様における本開示の分散剤組成物の好ましい形態は上述のとおりである。すなわち、本開示の正極ペーストは、一又は複数の実施形態において、本開示のアクリル系ポリマー(A)、本開示の化合物(B)、有機溶媒(C)、および炭素材料系導電材(D)を含む。
本開示の正極ペーストは、一又は複数の実施形態において、正極活物質および結着剤を更に含むことができる。
本開示の正極ペーストは、一又は複数の実施形態において、炭素材料系導電材(D)以外の導電材が更に含まれていてもよい。炭素材料系導電材(D)以外の導電材としては、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。
【0069】
<正極活物質>
正極活物質としては、無機化合物であれば特に制限はなく、例えば、オリビン構造を有する化合物やリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。オリビン構造を有する化合物としては、一般式LiM1PO(但し、M1は3d遷移金属、0≦X≦2、0.8≦S≦1.2)で表される化合物を例示できる。オリビン構造を有する化合物には、非晶質炭素等を被覆して用いてもよい。リチウム遷移金属複合酸化物としては、スピネル構造を有するリチウムマンガン酸化物、層状構造を有し一般式LiMOδ(但し、Mは遷移金属、0.4≦X≦1.2、0≦δ≦0.5)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。前記遷移金属Mとしては、Co、Ni又はMnを含むものとすることができる。前記リチウム遷移金属複合酸化物は、更に、Al、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Ti、Zn、P、Bから選ばれる一種又は二種以上の元素を含有していてもよい。
【0070】
本開示の正極ペースト中の正極活物質の含有量は、正極ペーストが集電体に塗布するのに適した粘度に応じて調整することができる限り、特に制限はないが、エネルギー密度の観点と正極ペーストの安定性の観点、更には生産性の観点から、好ましくは40~90質量%、より好ましくは50~85質量%、更に好ましくは60~80質量%である。
【0071】
本開示の正極ペーストの全固形分における正極活物質の含有量について、特に制限はない。本開示の正極ペーストの全固形分における正極活物質の含有量は、従来公知の正極ペーストの全固形分におけるそれと同じであってもよく、蓄電デバイスのエネルギー密度を高度に保つ観点から、90.0質量%以上が好ましく、合材層(塗膜)の導電性や塗膜接着性の担保の観点から、99.9質量%以下が好ましい。同様の観点から、90.0~99.9質量%が好ましい。
【0072】
<結着剤(バインダー樹脂)>
結着剤(バインダー樹脂)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル等単独で、あるいは混合して用いることができる。中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はスチレン-ブタジエンゴムが好ましく、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)がより好ましい。
【0073】
本開示の正極ペースト中の結着剤の含有量は、合材層(塗膜)の塗膜接着性や集電体との結着性の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、更には質量1%以上が好ましい。蓄電デバイスのエネルギー密度を高度に保つ観点からは9.95質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0074】
<正極ペースト中のアクリル系ポリマー(A)>
本開示の正極ペースト中の本開示のアクリル系ポリマー(A)の含有量は、正極ペーストの粘度低減、更に塗膜平滑性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上であり、塗膜抵抗の低減の観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、更により好ましくは0.3質量%以下である。同様の観点から、本開示の正極ペースト中の本開示のアクリル系ポリマー(A)の含有量は、0.01~2.0質量%が好ましく、0.05~1.0質量%がより好ましく、0.07~0.5質量%が更に好ましく、0.07~0.3質量%が更により好ましい。
【0075】
<正極ペースト中の化合物(B)>
本開示の正極ペースト中の本開示の化合物(B)の含有量は、正極ペーストの固形分濃度を高くする観点、および、粘度低下の観点から、好ましくは0.012質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、そして、結着剤(バインダー樹脂)の溶解性と正極ペーストの安定性の観点から、好ましくは0.191質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。同様の観点から、本開示の正極ペースト中の本開示の化合物(B)の含有量は、0.012~0.191質量%が好ましく、0.02~0.1質量%がより好ましい。
【0076】
<正極ペースト中の炭素材料系導電材(D)>
本開示の正極ペーストの炭素材料系導電材(D)の含有量は、合材層(塗膜)の導電性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、蓄電デバイスのエネルギー密度を高度に保つ観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。同様の観点から、本開示の正極ペースト中の本開示の炭素材料系導電材(D)の含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましく、0.1~2質量%が更に好ましい。
【0077】
本開示の正極ペーストは、一又は複数の実施形態において、正極活物質、本開示の導電材スラリー、結着剤(バインダー樹脂)溶液、および固形分調整等のための溶媒(追加溶媒)等を、混合および攪拌して、作製することができる。このほか、本開示のアクリル系ポリマー(A)以外の分散剤や機能性材料等を添加しても良い。上記溶媒(追加溶媒)としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非水系溶媒あるいは水等が使用できる。また、本開示の正極ペーストの調製においては、上記溶媒(追加溶媒)としては非水系溶媒を使用することが好ましく、中でも、NMPを使用することがより好ましい。混合や攪拌にはプラネタリミキサー、ビーズミル、ジェットミル等を用いることができ、また、これらを併用することもできる。
【0078】
本開示の正極ペーストは、正極ペーストの調製に用いる全成分のうちの一部成分をプレミックスしてから、それを残余と混合することもできる。また、各成分は、全量を一度に投入せずに、複数回に分けて投入しても良い。これにより、攪拌装置の機械的な負荷を抑えることができる。
【0079】
本開示の正極ペーストの固形分濃度や、正極活物質の量、結着剤の量、導電材スラリーの量、添加剤成分の添加量、溶媒の量は、正極ペーストが集電体に塗布するのに適した粘度に応じて調整することができる。乾燥性の観点からは溶媒の量が小さいほうが好ましいが、正極合材層(塗膜)の均一性や表面の平滑性の観点から、正極ペーストの粘度が高すぎないことが好ましい。一方で、乾燥抑制の観点、および合材層(塗膜)の充分な膜厚を得る観点から、正極ペーストの粘度が低すぎないことが好ましい。
【0080】
本開示の正極ペーストは、製造効率の観点からは高濃度に調整できることが好ましいが、著しい粘度の増加は作業性の観点から好ましくない。添加剤により、高濃度を保ちつつ、好ましい粘度範囲を保つことができる。
【0081】
<正極ペーストの製造方法>
本開示の正極ペーストの製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示の炭素材料系導電材スラリーと結着剤と溶媒と正極活物質とを混合する工程を含むことができる。各成分は任意の順に混合してもよい。また、一又は複数の実施形態において、本開示の導電材スラリーと溶媒と結着剤とを混合し、これらが均質になるまで分散したのち、正極活物質を混合し、これらが均質になるまで攪拌することにより正極ペーストを得る方法が挙げられるが、これら成分の添加順序はこの限りではなく、本開示の化合物(B)を本開示のアクリル系ポリマー(A)とは別に正極ペースト調製の段階で添加してもよい。
【0082】
尚、本開示の導電材スラリー及び正極ペーストは、各々、本開示の効果が妨げられない範囲で、その他の成分を更に含んでもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、消泡剤、防腐剤、脱水剤、防錆剤、可塑剤、結着剤等が挙げられる。
【0083】
[正極塗膜又は蓄電デバイス用正極の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の正極ペーストを用いた正極塗膜又は蓄電デバイス用正極の製造方法に関する。本態様は、本開示の正極ペーストを、集電体に塗工した後、乾燥することを含む。本態様において、本開示の正極ペーストの好ましい形態は上述のとおりである。本開示の正極塗膜又は蓄電デバイス用正極の製造方法において、本開示の正極ペーストを用いること以外は、従来から公知の方法により正極塗膜又は蓄電デバイス用正極を製造できる。
【0084】
正極塗膜又は蓄電デバイス用正極は、例えば、上記の正極ペーストをアルミニウム箔等の集電体に塗工し、これを乾燥して作製する。正極塗膜の密度を上げるために、プレス機により圧密化を行うこともできる。正極ペーストの塗工には、ダイヘッド、コンマリバースロール、ダイレクトロール、グラビアロール等を用いることができる。塗工後の乾燥は、加温、エアフロー、赤外線照射等を単独あるいは組み合わせて行うことができる。塗工後の乾燥は、乾燥時間を経ることにより、正極ペースト中の化合物(B)および有機溶媒(C)が正極ペースト中に存在できなくなる温度で行う。乾燥温度は、乾燥が行われる環境下(気圧下)において、バインダー樹脂の熱分解温度以下であれば特に制限はないが、好ましくは化合物(B)の沸点以上の温度、より好ましくは有機溶媒(C)の沸点以下の温度である。具体的には、常圧下で、好ましくは60~220℃、より好ましくは80~200℃であり、乾燥時間は、好ましくは10~90分、より好ましくは20~60分である。正極のプレスは、ロールプレス機等により、行うことができる。
【実施例
【0085】
以下、本開示の実施例および比較例を示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0086】
1.各パラメータの測定方法
[ポリマーの重量平均分子量の測定]
ポリマーの重量平均分子量は、GPC法により測定した。詳細な条件は以下の通りである。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
カラム:α-M + α-M(東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率
溶離液:60mmol/LのHPOおよび50mmol/LのLiBrのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液
流速:1mL/min
検量線に用いる標準試料:ポリスチレン
試料溶液:共重合体の固形分を0.5wt%含有するDMF溶液
試料溶液の注入量:100μL
【0087】
[導電材スラリーの粘度測定]
導電材スラリーの粘度(25℃)は、Anton Paar社のMCR302レオメーターに、パラレルプレートPP50を装着し、せん断速度を0.1s-1から1000s-1まで上げた後(往路)、せん断速度を1000s-1から0.1s-1まで戻し(復路)、復路のせん断速度1s-1における粘度を測定し、それを表5に示した。
【0088】
[正極ペーストの粘度測定]
正極ペースト(25℃)の粘度は、Anton Paar社のMCR302レオメーターに、コーンプレート(直径50mm)を装着し、せん断速度を0.1s-1から1000s-1まで上げた後(往路)、せん断速度を1000s-1から0.1s-1まで戻し(復路)、復路のせん断速度1s-1における粘度を測定し、それを表7に示した。
【0089】
[正極塗膜の抵抗値の測定]
正極ペーストを、ポリエステルフィルムに垂らし、100μmのアプリケータで均一に塗工した。この塗工したポリエステルフィルムを100℃で1時間乾燥し、厚み40μmの正極塗膜を得た。
PSPプローブを装着したLoresta-GP(三菱ケミカルアナリテック製)にて限界電圧10vにて体積抵抗値を測定した。その結果は表7に示した。
【0090】
[電極(正極)および蓄電デバイスの作製]
実施例10~16、比較例9~15の正極ペーストを、厚さ20μmのAl箔上に、正極容量が3mAh/cmとなるように塗工し、乾燥器を用いて100℃で60分乾燥し、集電体上に合材層が形成された電極材料を作製した。この正極材料を直径13mmに打ち抜きプレスして電極(正極)を得た。当該正極上に、直径19mmのセパレータ、直径15mm厚さ0.5のコイン状金属リチウムを配置して、2032型コインセル(試験用ハーフセル)を作製した。電解液には、1M LiPF EC/DEC(体積比)=3/7を用いた。
【0091】
[直流抵抗(DCR)の測定]
試験用ハーフセルを30℃恒温槽内で温調した状態で、次に記載する充放電条件で3サイクル充放電試験を行った。
(充放電条件)
30℃、0.2C、充電4.45V CC/CV 1/10Cカットオフ
放電CC3.0Vカットオフ
次いで、0.2Cで2.5時間充電を行い、0.2C~8C放電における10秒間の電圧降下から直流抵抗(DCR)を算出した。
【0092】
2.分散剤組成物の調製
[使用原料]
表3に示す分散剤組成物1~17の調製に用いたアクリル系ポリマー(A)およびその原料、化合物(B)等の詳細は、表1、表2および下記の通りである。
[アクリル系ポリマー(A)の原料]
(モノマーa)
SMA:ステアリルメタクリレート(新中村化学工業社製、品番:NK-エステルS)
(モノマーb1)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(富士フイルム和光純薬株式会社製)
PEGMA(EO2):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製、品番:NK-エステルM-20G、エチレンオキサイドの平均付加モル数=2)
(モノマーb2)
AN:アクリロニトリル
(モノマーc)
MAAm:メタクリルアミド(東京化成工業社製)
[アクリル系ポリマー(A)の比較対象]
PVP:ポリビニルピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製、K-30)
[溶媒]
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
[重合開始剤]
V-65B:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和
光純薬株式会社製)
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
[分散剤組成物1~5、10~15調製用のアクリル系ポリマー(A)の合成例]
滴下用モノマー溶液として、40gのSMA(モノマーa)と、40gのアクリロニトリル(モノマーb21)と、20gのMAAm(モノマーc)と、59.5gのNMP(溶媒)とからなる混合溶液を、滴下用開始剤溶液として、1.28gのV-65B(重合開始剤)と12.8gのNMP(溶媒)とからなる混合溶液を作製した。
還流管、攪拌機、温度計、窒素導入管、および滴下漏斗を取り付けたセパラブルフラスコ内を1時間以上窒素置換した。滴下用モノマー溶液、および滴下用開始剤溶液を、各々、65℃の槽内に160分かけて槽内に滴下した。滴下終了後、更に槽内を65℃に維持しながら1時間撹拌した。その後、槽内を80℃まで昇温し、更に2時間撹拌した。次いで、42.6gのNMP(溶媒)を追加し、希釈を行うことで、分散剤組成物1~5、10~15調製用のアクリル系ポリマー(A)溶液を得た。その不揮発分は40質量%であり、重量平均分子量は3.7万であった。
【0096】
[分散剤組成物6~7調製用のアクリル系ポリマー(A)の合成例]
滴下用モノマー溶液の調製において、分散剤組成物6~7のアクリル系ポリマー(A)の合成に使用される各モノマーの質量比を、各々、表3に記載の値としたこと以外は、[分散剤組成物1~5、10~15調製用のアクリル系ポリマー(A)の合成例]と同様にして、分散剤組成物6~7調製用のアクリル系ポリマー(A)溶液を得た。
【0097】
[分散剤組成物8~9調製用のアクリル系ポリマー(A)の合成例]
分散剤組成物8のアクリル系ポリマー(A)の合成においてV-65Bの量を3.90g、分散剤組成物9のアクリル系ポリマー(A)の合成においてV-65Bの量を0.49gとしたこと以外は、[分散剤組成物1~5、10~15調製用のアクリル系ポリマー(A)の合成例]と同様にして、分散剤組成物8~9調製用のアクリル系ポリマー(A)溶液を得た。
【0098】
[分散剤組成物1~17の調製例]
表3に示すアクリル系ポリマー(A)又はその比較対象としてのPVPと、表2および3に示す化合物(B)およびその比較対象と、表3に示す有機溶媒(C)(NMP)とを均一に混合し、分散剤組成物1~17を得た。各分散剤組成物中の各成分の含有量(質量%)は、表3に示すとおりである。
【0099】
【表3】
【0100】
3.導電材スラリー1~17(実施例1~10、比較例1~7)の調製
[導電材スラリー1~17の調製に用いた導電材]
表5に示す導電材スラリー1~17の調製に用いた導電材の詳細は、表4に示す通りである。
【0101】
【表4】
【0102】
[導電材スラリーの調製例]
(実施例1)
表4に記載の導電材N(繊維状炭素ナノ構造体としてのMWカーボンナノチューブ、Cabot社製 多層カーボンナノチューブHCNTs10、平均長さ5~12μm(カタログ値))5gと、分散剤組成物1を5gと、NMP(追加溶媒)90gとを混合し、粗分散液を得た。得られた粗分散液を、分散時に背圧を負荷する多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU MINI」)に充填し、100MPaの圧力で分散処理を行った。具体的には、背圧を負荷しつつ、粗分散液にせん断力を与えてMWカーボンナノチューブを分散させ、繊維状炭素ナノ構造体分散液として、実施例1の導電材スラリー1(カーボンナノチューブ分散液)を得た。なお、分散処理は、分散液を高圧ホモジナイザーから排出させて再び高圧ホモジナイザーに注入するという循環をさせながら行い、当該循環は20回行った。分散液の排出および注入速度は30g/分とした。
得られた導電材スラリー1の温度25℃における粘度を測定したところ、粘度は830mPa・sであった。
【0103】
(実施例2~10、比較例1~7)
分散剤組成物、導電材、追加溶媒の種類及び含有量を表3~表5に示すとおりとしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2~10及び比較例1~7の導電材スラリー2~17(カーボンナノチューブ分散液)を調製した。
調製した各導電材スラリー中の各成分の配合量(質量%)および導電材スラリーの粘度は、表5に示すとおりである。
【0104】
【表5】
【0105】
表5に示されるように、実施例1~5の導電材スラリーと比較例2~5の導電材スラリーは、共通の分散剤を含んでいるが、化合物(B)を含む実施例1~5の導電材スラリーは、化合物(B)を含まない比較例2~5の導電材スラリーよりも粘度が低く、カーボンナノチューブの分散性が向上していることがわかる。
また、実施例1と比較例7との比較から、アクリル系ポリマー(A)と、化合物(B)との併用により粘度低下の効果が顕著であることがわかる。
【0106】
4.正極ペースト(実施例11~17、比較例8~14)の調製
(実施例11)
上記導電材スラリー1(実施例1)2.04gと、NMP(追加溶媒)0.50gと、PVDFのNMP溶液(固形分8% KFポリマーL#7208、株式会社クレハ製、バインダー樹脂溶液)3.8gとを、50mlのサンプルビンに秤取り、スパーテルで均一にかき混ぜた。その後、正極活物質としてLCO(コバルト酸リチウム 北京当升社製、「GSL-5D」)15gを添加し、再度スパーテルで均一になるまでかき混ぜた。更に自転公転ミキサー(AR-100 株式会社 シンキー製)にて、10分間撹拌し、正極活物質の含有量が70.29質量%、導電材の含有量が0.478質量%、アミン化合物と分散剤の含有量が各々0.096質量%、バインダー樹脂の含有量が1.42質量%の正極ペースト(実施例10)を得た。
なお、正極活物質、結着剤(PVDF)、導電材(カーボンナノチューブ)および分散剤(アクリル系ポリマー(A))の質量比率は97.24:1.97:0.66:0.13(固形分換算)とし、正極ペーストの固形分量(質量%)は、72.29質量%とした。正極ペーストの全固形分量は、正極ペーストが含有する、分散剤(アクリル系ポリマー(A))、正極活物質、導電および結着剤の合計質量である。得られた正極ペーストの温度25℃における粘度を測定したところ、粘度は6.2Pa・sであった。
【0107】
(実施例12~17、比較例8~14)
導電材スラリーの種類を表6に示す導電材スラリーに変更したこと以外は、上記実施例11と同様にして、正極ペースト(実施例12~17、比較例8~14)を調製した。調製した各正極ペースト中の各成分の配合量(質量%)は表6に示すとおりであり、各正極ペーストの25℃における粘度は表7に示す通りである。
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
表7に示されるように、アクリル系ポリマー(A)と、化合物(B)とを含む分散剤組成物1~7を各々使用して調整された実施例11~17の正極ペーストの粘度は、比較例8~14の正極ペーストの粘度よりも低かった。また、実施例11~17の正極ペーストを用いて作成した正極塗膜の体積抵抗値および蓄電デバイスの直流抵抗値は比較例8~14のそれよりも顕著に低いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示の分散剤組成物は、炭素材料系導電材スラリーや正極ペーストの低粘度化が可能である。そして、本開示の分散剤組成物を本開示の正極ペーストの調製に用いれば、正極塗膜の抵抗値や蓄電デバイスの直流抵抗値の低下が可能である。