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特許7339334HFO-1234YF及び炭化水素の共沸組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】HFO-1234YF及び炭化水素の共沸組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20230829BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230829BHJP
   F25B 45/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 B
F25B1/00 396Z
F25B45/00 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021518484
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2019054171
(87)【国際公開番号】W WO2020072564
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】62/741,243
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリー イー.コーバン
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-531836(JP,A)
【文献】特表2012-509392(JP,A)
【文献】特開2015-108504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0069177(US,A1)
【文献】ZHONG, Q. et al.,J. Chem. Thermodynamics,(2018), vol.118,pp.77-81,DOI 10.1016/j.jct.2017.10.016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00- 5/20
C09K 3/00
C09K 3/30
F25B 1/00- 7/00
F25B43/00-49/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒組成物であって、
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と、エタン(R-170)、又は1~15重量パーセントの量で存在するプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとを含み、
前記組成物は-30℃から40℃の温度範囲にわたって近共沸である、冷媒組成物。
【請求項2】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、前記冷媒組成物のGWPは10よりも小さく、ODPは0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、前記冷媒組成物のGWPは5よりも小さい、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、前記冷媒組成物は、-30℃~最大10℃の温度で0.35ケルビン(K)未満の温度勾配を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンNAL1の前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以上であり、
前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンNAH1の前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以下である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンALL1の前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以上であり、
前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンALH1の前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以下である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、前記エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大36.5重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、前記エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大10重量パーセントの量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、前記エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて1~7重量パーセントの量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、前記エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大5重量パーセントの量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、前記エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大1重量パーセントの量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及び前記エタン(R-170)を含み、前記冷媒組成物の熱容量は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)単独の熱容量よりも5%~70%大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及び前記エタン(R-170)を含み、前記冷媒組成物の熱容量は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)単独の熱容量よりも5%~54%大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及び前記エタン(R-170)を含み、前記冷媒組成物のGWPは10よりも小さい、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及び前記エタン(R-170)を含み、前記冷媒組成物は、-30℃~最大10℃の温度で3ケルビン(K)未満の温度勾配を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記冷媒組成物の熱容量と2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)の熱容量の比が、同じ温度及び圧力で1.05~1.50である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
冷媒組成物であって、
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、
前記プロパン(R-290)は、総冷媒組成物に基づいて1~15重量パーセントの量で存在する、冷媒組成物。
【請求項18】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、前記冷媒組成物のGWPは10よりも小さく、ODPは0である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、前記冷媒組成物のGWPは5よりも小さい、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、前記冷媒組成物は、-30℃~最大10℃の温度で0.35ケルビン(K)未満の温度勾配を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
車両電気システムと組み合わせた、HEV、MHEV、PHEV、又はEVヒートポンプシステムにおける請求項1に記載の冷媒組成物の使用。
【請求項22】
従来のオンサイトの自動車回収、リサイクル、再充電装置を使用して、請求項1の冷媒組成物を整備する方法。
【請求項23】
冷媒組成物からの総汚染物質を改善する方法であって、
第1の冷媒組成物を提供する工程であって、前記第1の冷媒組成物は、近共沸ではなく、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と、エタン(R-170)又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとを含む、工程と、
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、エタン(R-170)、又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つを前記第1の冷媒組成物に供給して、第2の冷媒組成物を形成する工程であって、前記第2の冷媒組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と、エタン(R-170)、又は1~15重量パーセントの量で存在するプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとを含み、前記第2の冷媒組成物は-30℃から40℃の温度範囲にわたって近共沸である、工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
前記第2の冷媒組成物が、従来型のオンサイト自動回収、リサイクル、再充填装置を使用せずに、前記第1の冷媒組成物から形成される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年10月4日に出願された米国特許仮出願第62/741243号の利益を主張しており、その全内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、HFO-1234yfとプロパン(R-290)との共沸組成物及び近共沸組成物、並びにHFO-1234yfとエタン(R-170)との共沸組成物及び近共沸組成物を対象とする。
【背景技術】
【0003】
自動車業界は、推進に内燃エンジン(ICE)を使用することから、推進に電池を使用することへのアーキテクチャプラットフォームの活性化を経験しているところである。このプラットフォームの活性化により、ハイブリッド、プラグインハイブリッド車の内燃エンジン(ICE)のサイズが大幅に制限される、又は純粋な電気車両においてICEが完全に排除される可能性がある。一部の車両は、依然としてICEを維持しており、ハイブリッド電気車両(hybrid electric vehicle、HEV)又はプラグインハイブリッド電気車両(plug-in hybrids electric vehicle、PHEV)又はマイルドハイブリッド電気車両(mild hybrids electric vehicles、MHEV)として知られている。完全に電動であり、ICEがない車両は、完全な電気車両(electric vehicles、EV)と呼ばれる。全てのHEV、PHEV、MHEV、及びEVは、少なくとも1つの電気モーターを使用する。この電気モーターは、ガソリン/ディーゼル車に見られる内燃エンジン(ICE)によって通常提供される、何らかの形の推進力を車両に提供する。
【0004】
電動車両では、ICEは通常、サイズを縮小するか(HEV、PHEV、又はMHEV)、又は排除(EV)して、車両の重量を減らし、それによって電気駆動サイクルを増やす。ICEの主な機能は車両の推進力を提供することであるが、また、副次的な機能として客室に必要な熱を提供する。通常、周囲条件が10℃以下の場合は加熱が必要である。電動でない車両では、ICEからの過剰な熱があり、これを捕捉して、客室を加熱するために使用できる。ICEは、加熱して発熱するまでに時間がかかる場合があるが、-30℃の温度で十分に機能することに留意すべきである。したがって、電動車両では、ICEのサイズの縮小又は排除により、加熱及び冷却が必要な客室及びバッテリー管理の要件から、ヒートポンプタイプ流体、すなわち、加熱モードで、及び/又は冷却モードで使用することができる伝熱流体又は作動流体を使用して、客室を効果的に加熱することが求められる。
【0005】
環境圧力により、現在の自動車用冷媒であるR-134a、ハイドロフルオロカーボンつまりHFCは段階的に廃止され、GWP<150の地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒が採用されている。ハイドロフルオロオレフィンであるHFO-1234yfは、低GWP要件(パパディミトリウあたりGWP=4、AR5あたりGWP<1)を満たしているが、冷蔵能力が低く、通常、ある種のシステムの改変又は作動流体の変更を伴わずに、低(-10℃)から非常に低い(-30℃)周囲温度での必要性を完全に満たすことができない。
【0006】
同様に、据え置き型の住宅及び商業用構造物の加熱及び冷却も、現在使用されている古い高GWP冷媒に代わる適切な低GWP冷媒の不足に悩まされている。
【0007】
自動車の修理又は整備の方法により、液体の勾配は低いか無視できる程度でなければならない。現在、車両のエアコンの修理又はサービスプロセス中に、冷媒は特定の自動車整備マシンを通して取り扱われる。このマシンは、冷媒を回収し、冷媒を断続的な品質レベルまでリサイクルして、全体的な汚染物質を除去し、修理又は整備が完了した後に車両に冷媒を再充填する。これらのマシンは、冷媒を回収(recover)、リサイクル(recycle)、再充填(recharge)するため、R/R/Rマシンと呼ばれる。車両のメンテナンス又は修理中の、冷媒のこの現場での回収、リサイクル、及び再充填では、低勾配が好ましく、無視できる程度の勾配が最も好ましい。現在の自動車整備マシンは、高勾配の、又は勾配のある冷媒を取り扱うように設定されていない。冷媒は車両修理工場で「現場で」取り扱われるため、冷媒リサイクル業者が行うようにブレンド冷媒を正しい組成物に再構成する機会はない。勾配が高い冷媒は、元の配合に「再構成」する必要がある場合がある。そうでなければ、サイクル性能が低下する。ヒートポンプ流体は空調流体と同じ方法で取り扱われるため、低いか勾配がないというこの要件は、ヒートポンプタイプの流体にも適用される。これは、従来の空調流体と同じ方法で取り扱われ、及び/又は整備されるためである。したがって、自動車用途では、勾配が少ない又は勾配がない冷媒が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許仮出願第62/741243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ハイブリッド、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド及び電気車両、電化大量輸送、並びに住宅及び商業用構造物における、冷却及び加熱を提供できる熱管理の増え続けるニーズを満たすために、低GWPヒートポンプタイプの流体が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ハイブリッド、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、又は完全な電気車両において、車室の熱管理(車両の一部から別の部分への熱の伝達)に使用して、空調(A/C)を提供し、又は客室を加熱するための、超低GWP(GWPが10GWP以下)、低毒性(ANSI/ASHRAE規格34又はISO規格817に準拠したクラスA)、低温度勾配(3K未満)又はほぼ無視できる勾配(0.75K未満)で低可燃性(ASHRAE34又はISO817に準拠したクラス2又はクラス2L)の環境保全性の高い冷媒ブレンドの組成物に関する。これらの冷媒はまた、客室エリアのヒートポンプタイプの加熱及び冷却の恩恵を受ける大量輸送モバイルアプリケーションにも使用できる。大量輸送モバイルアプリケーションは、救急車、バス、シャトル、及び電車などの輸送車両を含み得るが、これらに限定されない。
【0011】
本発明の組成物は、車両の熱管理システムの動作条件にわたって低温度勾配を示す。本発明の一態様では、冷媒組成物は、近共沸挙動を示すHFO-1234yfとプロパンとの混合物を含む。本発明の一態様では、冷媒組成物は、共沸様挙動を示すHFO-1234yfとエタンとの混合物を含む。
【0012】
本発明は、以下の態様及び実施形態を含む。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、冷媒及び伝熱流体として有用な組成物である。本明細書に開示される組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)とエタン(R-170)又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとを含み、組成物は近共沸である。
【0013】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、共沸混合物様である組成物である。
【0014】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、プロパンNAL1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以上であり、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、プロパンNAH1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以下である組成物である。
【0015】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、プロパンALL1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以上であり、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、プロパンALH1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以下である組成物である。
【0016】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)が、総冷媒組成物に基づいて最大22重量パーセントの量で存在する組成物である。
【0017】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)が、総冷媒組成物に基づいて1~20重量パーセントである組成物である。
【0018】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)が、総冷媒組成物に基づいて1~10重量パーセントである組成物である。
【0019】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、組成物が、-30℃~40℃の温度範囲にわたって近共沸特性を示す組成物である。
【0020】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、冷媒組成物がヒートポンプ流体である組成物である。
【0021】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)が、総冷媒組成物に基づいて1~5重量パーセントである組成物である。
【0022】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)が、総冷媒組成物に基づいて1~2重量パーセントである組成物である。
【0023】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物の熱容量は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)単独の熱容量よりも2%~22%大きい組成物である。
【0024】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物のGWPは10よりも小さく、ODPは0である組成物である。
【0025】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物のGWPは5よりも小さい組成物である。
【0026】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物は、-30℃~最大10℃の温度で0.35ケルビン(K)未満の温度勾配を有する組成物である。
【0027】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンNAL1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以上であり、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンNAH1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以下である組成物である。
【0028】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンALL1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以上であり、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度が、エタンALH1の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)濃度以下である組成物である。
【0029】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大36.5重量パーセントの量で存在する組成物である。
【0030】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大10重量パーセントの量で存在する組成物である。
【0031】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて1~7重量パーセントの量で存在する組成物である。
【0032】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大5重量パーセントの量で存在する組成物である。
【0033】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、エタン(R-170)が、総冷媒組成物に基づいて最大1重量パーセントの量で存在する組成物である。
【0034】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、冷媒組成物の熱容量は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)単独の熱容量よりも5%~70%大きい組成物である。
【0035】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、冷媒組成物の熱容量は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)単独の熱容量よりも5%~54%大きい組成物である。
【0036】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、冷媒組成物のGWPは10よりも小さい組成物である。
【0037】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタン(R-170)を含み、冷媒組成物は、-30℃~最大10℃の温度で3ケルビン(K)未満の温度勾配を有する組成物である。
【0038】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、冷媒組成物の熱容量と2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)の熱容量の比が、同じ温度及び圧力で1.05~1.50である組成物である。
【0039】
別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)は、総冷媒組成物に基づいて0.1~15重量パーセントの量で存在する冷媒組成物である。
【0040】
別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、プロパン(R-290)は、総冷媒組成物に基づいて0.1~22重量パーセントの量で存在する冷媒組成物である。
【0041】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物の熱容量は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)単独の熱容量よりも2%~22%大きい組成物である。
【0042】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物のGWPは10よりも小さく、ODPは0である組成物である。
【0043】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物のGWPは5よりも小さい組成物である。
【0044】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含み、冷媒組成物は、-30℃~最大10℃の温度で0.35ケルビン(K)未満の温度勾配を有する組成物である。
【0045】
別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、加熱システム又は冷却システム又は可逆冷却システム又は可逆加熱システム又はヒートポンプシステムであって、動作可能に接続された、コンデンサと、蒸発器と、コンプレッサと、を直列配置で備え、コンデンサ、蒸発器、及びコンプレッサのそれぞれを通って、前述の実施形態のいずれかの冷媒組成物が循環される、加熱システム又は冷却システム又は可逆冷却システム又は可逆加熱システム又はヒートポンプシステムである。
【0046】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、システムが、自動車システム用のエアコンである、加熱又は冷却システムである。
【0047】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、システムが、据え置き型冷却システム用のエアコンである、加熱又は冷却システムである。
【0048】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、四方弁を更に備える、加熱又は冷却システムである。
【0049】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、システムが、自動車システム用のヒートポンプである、加熱又は冷却システムである。
【0050】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、システムが、据え置き型加熱又は冷却システム用のヒートポンプである、加熱又は冷却システムである。
【0051】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、温度勾配が1ケルビン(K)未満である、加熱又は冷却システムである。
【0052】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、ヒートポンプシステム、可逆冷却ループシステム、又は独立した加熱システム、又は独立した冷却システムにおける前述の実施形態のいずれかの冷媒組成物の使用である。
【0053】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、ハイブリッド電気車両(HEV)、マイルドハイブリッド電気車両(MHEV)、プラグインハイブリッド電気車両(PHEV)、又は電気車両(EV)ヒートポンプシステムにおける前述の実施形態のいずれかの冷媒組成物の使用である。
【0054】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、ハイブリッド電気車両(HEV)、マイルドハイブリッド電気車両(MHEV)、プラグインハイブリッド電気車両(PHEV)、又は電気車両(EV)ヒートポンプシステムにおける冷媒組成物の使用である。
【0055】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、車両電気システムと組み合わせた、HEV、MHEV、PHEV、又はEVヒートポンプシステムにおける冷媒組成物の使用である。
【0056】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、冷媒組成物を自動車システムに充填する方法であって、前述の実施形態のいずれかの組成物を自動車の加熱又は冷却システムに提供することを含む、方法である。
【0057】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、従来のオンサイト自動車回収、リサイクル、再充電装置を使用して、前述の実施形態のいずれかの冷媒組成物を整備する方法である。
【0058】
別の実施形態では、本明細書に開示される、冷媒組成物から総汚染物質を改善する方法であって、第1の冷媒組成物を提供する工程であって、第1の冷媒組成物は、近共沸ではなく、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と、エタン(R-170)又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとを含む、工程と、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、エタン(R-170)、又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つを第1の冷媒組成物に供給して、第2の冷媒組成物を形成することであって、第2の冷媒組成物は近共沸である、工程と、を含む、方法である。
【0059】
前述の実施形態のいずれかによれば、本明細書に開示されるのはまた、第2の冷媒組成物が、従来型のオンサイト自動回収、リサイクル、再充填装置を使用せずに、第1の冷媒組成物から形成される、方法である。
【0060】
本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を例示する好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】一実施形態による、HFO-1234yfとプロパンとのブレンドの気液平衡特性を示す図である。
図2】一実施形態による、HFO-1234yfとプロパンとのブレンドの気液平衡特性を示す図である。
図3】一実施形態による、HFO-1234yfとエタンとのブレンドの気液平衡特性を示す図である。
図4】一実施形態による、HFO-1234yfとエタンとのブレンドの気液平衡特性を示す図である。
図5】一実施形態による、可逆冷却又は加熱ループシステムを示す図である。
図6】一実施形態による、可逆冷却又は加熱ループシステムを示す図である。
図7】一実施形態による、可逆冷却又は加熱ループシステムを示す図である。
図8】一実施形態による、可逆冷却又は加熱ループシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
定義
本明細書で使用するとき、伝熱組成物という用語は、熱源からヒートシンクへ熱を運ぶために使用される組成物を意味する。
【0063】
熱源は、そこから熱を加える、伝達する、移動させる又は除去することが望ましい任意の空間、場所、物又は物体として定義される。この実施形態における熱源の例は、車両の、空調を必要とする車室である。
【0064】
ヒートシンクは、熱を吸収することができる任意の空間、場所、物又は物体として定義される。この実施形態におけるヒートシンクの例は、車両の、加熱を必要とする車室である。
【0065】
伝熱システムは、特定の場所において加熱又は冷却効果を生じるために使用されるシステム(又は機器)である。本発明の伝熱システムは、客室の加熱又は冷却を提供する可逆加熱又は冷却システムを意味する。このシステムは、ヒートポンプシステム、可逆加熱ループ、又は可逆冷却ループと呼ばれることもある。
【0066】
伝熱流体は、少なくとも1つの冷媒と、潤滑油、安定剤、及び火炎抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの部材とを含む。
【0067】
冷蔵能力(システムの推奨要件に応じて、冷却容量又は加熱容量とも呼ばれる)は、循環している冷媒1キログラム当たりの蒸発器内の冷媒のエンタルピーの変化、又は蒸発器から出る冷媒蒸気の単位体積(容積)当たりの蒸発器内の冷媒によって除去される熱、を定義する用語である。冷蔵能力は、冷却又は加熱を生成する冷媒又は伝熱流体組成物の能力の尺度である。したがって、容量が高いほど、生成される冷却又は加熱が大きくなる。冷却率は、蒸発器内の冷媒によって除去される単位時間当たりの熱を指す。加熱率は、蒸発器内の冷媒によって除去される単位時間当たりの熱を指す。
【0068】
性能係数(Coefficient of performance、COP)は、除去された熱を、そのサイクルを運転するのに必要であったエネルギー入力で割ったものである。COPが高いほど、冷媒又は伝熱流体のエネルギー効率が高くなる。COPは、内部温度と外部温度との特定の組み合わせでの冷蔵設備又は空調設備の効率評価であるエネルギー効率比(EER)と直接関連がある。
【0069】
過冷却は、所定の圧力で、その液体の飽和点を下回るまで液体の温度を低下させることを指す。液体飽和点は、蒸気が完全に液体に凝結する温度である。過冷却は、所定の圧力において、液体をより低温の液体に冷却し続ける。飽和温度(又は沸点温度)を下回る温度まで液体を冷却することで、正味の冷蔵能力を増大させ得る。それにより、過冷却は、システムの冷蔵能力及びエネルギー効率を向上させる。過冷却量は、飽和温度(度)を下回る冷却量である。
【0070】
過熱は、所定の圧力で、その蒸気の飽和点を上回るまで蒸気の温度を上昇させることを指す。蒸気飽和点は、液体が完全に蒸気に蒸発する温度である。過熱は、所定の圧力において、蒸気をより高温の蒸気に加熱し続ける。飽和温度(又は露点温度)を上回る温度まで蒸気を加熱することで、正味の冷蔵能力を増大させ得る。それにより、過熱は、システムの冷蔵能力及びエネルギー効率を向上させる。過熱量は、飽和温度(度)を上回る加熱量である。
【0071】
温度勾配(単に「勾配」と呼ばれることもある)は、任意の過冷却又は過熱を除く、冷媒システムの熱交換器(蒸発器又はコンデンサ)内の冷媒による相変化プロセスの開始温度と終了温度との間の差異の絶対値である。この用語は、近共沸混合物又は非共沸組成物の、凝縮又は蒸発について説明するために使用され得る。空調システム又はヒートポンプシステムの温度勾配を指す場合、蒸発器内の温度勾配と凝縮器の温度勾配との平均値である平均温度勾配を提供することが一般的である。勾配は、ブレンド冷媒、すなわち、少なくとも2つの成分で構成される冷媒に適用できる。
【0072】
本明細書で使用するとき、低勾配という用語は、対象の動作範囲にわたって3ケルビン(K)未満であると理解されるべきである。いくつかの実施形態では、勾配は、対象の動作範囲にわたって2.5Kよりも、又は更には対象の動作範囲にわたって0.75K未満であり得る。
【0073】
共沸組成物とは、単一の物質として挙動する2種以上の物質の定沸点混合物を意味する。共沸組成物の特性を決定する1つの方法は、液体の部分的蒸発又は蒸留によって生成された蒸気が、蒸発又は蒸留させた液体(すなわち、組成変化を伴わない混合蒸留物/還流物)と同じ組成物を有することである。定沸点組成物は、共沸であると特徴付けられるが、その理由は、同一化合物の非共沸混合物と比較して、最高沸点又は最低沸点のいずれかを示すためである。動作中、空調システム又は加熱システム内で共沸組成物が分留されることはない。更に、空調システム又は加熱システムからの漏出時に、共沸組成物が分留されることはない。
【0074】
本明細書で使用するとき、「近共沸組成物」という用語は、特定の温度での組成物の沸点圧力(BP)と露点圧力(DP)との差が、沸点圧力に基づいて5%以下であるような組成物を意味するものとして理解される(すなわち[(BP-DP)/BP]×100≦5)。
【0075】
本明細書で使用するとき、「共沸混合物様組成物」という用語は、特定の温度での組成物の沸点圧力(BP)と露点圧力(DP)との差が、沸点圧力に基づいて3%以下であるような組成物を意味するものとして理解される(すなわち[(BP-DP)/BP]×100≦3)。
【0076】
本明細書で使用するとき、「第1の近共沸低HFO-1234yf組成物(NAL1)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の近共沸挙動を示す組成範囲の最低濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0077】
本明細書で使用するとき、「第1の近共沸高HFO-1234yf組成物(NAH1)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の近共沸挙動を示す組成範囲の最高濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0078】
本明細書で使用するとき、「第1の共沸混合物様低HFO-1234yf組成物(ALL1)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の共沸混合物様挙動を示す組成範囲の最低濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0079】
本明細書で使用するとき、「第1の共沸混合物様高HFO-1234yf組成物(ALH1)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の共沸混合物様挙動を示す組成範囲の最高濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0080】
本明細書で使用するとき、「第2の近共沸低HFO-1234yf組成物(NAL2)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の近共沸挙動を示す組成範囲の最低濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0081】
本明細書で使用するとき、「第2の近共沸高HFO-1234yf組成物(NAH2)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の近共沸挙動を示す組成範囲の最高濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0082】
本明細書で使用するとき、「第2の共沸混合物様低HFO-1234yf組成物(ALL2)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の共沸混合物様挙動を示す組成範囲の最低濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0083】
本明細書で使用するとき、「第2の共沸混合物様高HFO-1234yf組成物(ALH2)」という用語は、HFO-1234yf/プロパン混合物又はHFO-1234yf/エタン混合物の共沸混合物様挙動を示す組成範囲の最高濃度のHFO-1234yfを意味すると理解されるべきである。
【0084】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器などに伴われる他の要素を包含し得る。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0085】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合には、このような語句は、材料に通常付随する不純物を除き、列挙された材料以外の材料の包含を特許請求項から締め出すものである。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れる場合、この語句はその節の中に示される要素のみを限定するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0086】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特徴、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための行動様式に実質的に影響を及ぼす。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の意味を持つ。
【0087】
出願人らが、発明又はその一部を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を使用する発明もまた含むと解釈すべきであることが容易に理解されるべきであろう。
【0088】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を記述するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0089】
冷媒ブレンド(クラスA2、GWP<10及び0 ODP)
地球温暖化係数(GWP)は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較して、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への関与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の影響を示す。100年間を対象期間とするGWPが、一般的にこの業界で参照される値であり、本明細書で使用する。流体混合物又は冷媒混合物については、各成分に関する個々のGWPに基づいて加重平均を計算することができる。国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Control、IPCC)は、公式の評価レポート(assessment report、AR)で冷媒GWPの精査された値を提供している。4番目の評価レポートはAR4として示され、5番目の評価レポートはAR5として示される。規制機関は現在、公式の立法目的でAR4を使用している。
【0090】
オゾン破壊係数(ozone depletion potential、ODP)は、物質によって生じるオゾン破壊の量を指す数値である。ODPは、化学物質がオゾンに及ぼす影響を、類似の質量のR-11又はフルオロトリクロロメタンによる影響と比較した比率である。R-11はクロロフルオロカーボン(CFC)の一種であり、オゾン層破壊の原因となる塩素を有する。更に、CFC-11のODPが1.0と定義される。他のCFC及びハイドロフルオロクロロカーボン(HCFC)は、0.01~1.0の範囲のODPを有する。本明細書に記載された炭化水素(HC)とハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、オゾン層分解及び破壊に寄与することが知られている種である、塩素、臭素、又はヨウ素を含有しないため、ODPはゼロである。炭化水素(HC)も、定義上、塩素、臭素、又はヨウ素を含有しないため、ODPを有さない。
【0091】
冷媒ブレンド組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)などの少なくとも1つのハイドロフルオロオレフィンと、エタン(R-170)又はプロパン(R-290)などの少なくとも1つの炭化水素と、を含む。
【0092】
不飽和ハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒成分も、GWPが非常に低く、全てのHFO成分のGWPが10未満である。炭化水素(HC)冷媒成分は、エタン(R-170)又はプロパン(R-290)が含まれる。HC成分はまた、GWPが非常に低い。例えば、エタン(R-170)のGWPは6で、プロパン(R-290)のGWPは3である。
【0093】
したがって、最終的なブレンドのODPは0で、GWPは非常に低い、又はGWPは10未満である。以下に示す表1は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、エタン(R-170)、プロパン(R-290)、及びこれらの様々な組み合わせについての気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が実施した4回目及び5回目の評価ごとのタイプ、ODP、及びGWPを示す要約表である。
【0094】
ブレンドの場合、GWPは、式(1)に示すように、ブレンド内の各成分(1-n)の量(例えば、重量%)を考慮して、ブレンド内の個々のGWP値の加重平均として計算できる。
【0095】
式(1):GWPブレンド=量1(成分1のGWP)+量2(GWP成分2)+量n(成分nのGWP)。
【0096】
HFO-1234yf及びR-170の対象となるいくつかのブレンドの結果として得られるGWPが以下に記載されている。R-170とのブレンドは36.5重量%に制限されていたため、結果として得られたブレンドはASHRAEクラス2の可燃性要件を満たしていた。同様に、HFO-1234yf及びR-290の対象となるいくつかのブレンドの結果として得られるGWPも以下に記載されている。R-290とのブレンドは22重量%に制限されていたため、結果として得られたブレンドはASHRAEクラス2の可燃性要件を満たしていた。HFO-1234yf及びR-170の両方のGWPが非常に低いため、最大36.5重量%のR-170を含有するブレンドの最終GWPはIPCC AR4に基づいて10未満、更により好ましくは5未満になる。同様に、HFO-1234yf及びR-190の両方のGWPが非常に低いため、最大22重量%のR-290を含有するものの最終GWPはIPCC AR4に基づいて10未満、更により好ましくは5未満、更に4未満になる。
【0097】
【表1】
【0098】
冷媒潤滑油
本発明の冷媒又は伝熱組成物は、潤滑油と混合することができ、本発明の「完全な作動流体組成物」として使用することができる。本発明の伝熱又は作動流体及び潤滑油を含有する本発明の冷媒組成物は、安定剤、漏れ検出材料、及び他の有益な添加剤などの公に知られている添加剤を含有し得る。潤滑油が、得られる化合物の可燃性レベルに影響を与える可能性もある。
【0099】
この組成物のために選択された潤滑油は、好ましくは、潤滑油が蒸発器からコンプレッサに戻り得ることを確実にするために、車両のA/C冷媒中で十分な可溶性を有する。更に、潤滑油が冷たい蒸発器内を通過することができるように、潤滑油は好ましくは低温で相対的に低い粘度を有する。好ましい一実施形態では、潤滑油とA/C冷媒とは、幅広い温度範囲にわたって混和性である。
【0100】
好ましい潤滑油は、1つ以上のポリオールエステル型潤滑剤(POE)であってもよい。本明細書で使用するとき、ポリオールエステルは、約3~20個のヒドロキシル基を有するジオール又はポリオールと、約1~24個の炭素原子を有する脂肪酸とのエステルを含有する化合物を含み、好ましくは、ポリオールとして使用される。基油として使用できるエステル。(Art.153(4)欧州特許第2 727 980(A1)号に従って公開された欧州特許出願であり、これは参照により本明細書に組み込まれる)。ここで、ジオールの例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどが挙げられる。
【0101】
上記ポリオールの例としては、多価アルコール、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、トリ(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの二量体から二十量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトール-グリセリン縮合体、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなど;多糖類、例えば、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトースなど;これらの部分的エーテル化生成物及びメチルグルコシドなどが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードアルコール、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、又はトリ(ペンタエリスリトール)がポリオールとして好ましい。
【0102】
脂肪酸の炭素数は特に限定されないが、一般に、1~24個の炭素原子を有する脂肪酸が使用される。1~24個の炭素原子を有する脂肪酸では、潤滑特性の観点から、3個以上の炭素原子を有する脂肪酸が好ましく、4個以上の炭素原子を有する脂肪酸がより好ましく、5個以上の炭素原子を有する脂肪酸が更により好ましく、10個以上の炭素原子を有する脂肪酸が最も好ましい。更に、冷媒との適合性の観点から、18個以下の炭素原子を有する脂肪酸が好ましく、12個以下の炭素原子を有する脂肪酸がより好ましく、9個以下の炭素原子を有する脂肪酸が更により好ましい。
【0103】
更に、脂肪酸は、直鎖脂肪酸及び分枝鎖脂肪酸のいずれであってもよく、脂肪酸は、潤滑特性の観点からは直鎖脂肪酸が好ましく、一方、加水分解安定性の観点からは分枝鎖脂肪酸が好ましい。更に、脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。具体的には、上記脂肪酸の例としては、直鎖又は分枝鎖脂肪酸、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸など;カルボン酸基が四級炭素原子に結合している、いわゆるネオ酸などが挙げられる。より具体的には、その好ましい例としては、吉草酸(n-ペンタン酸)、カプロン酸(n-ヘキサン酸)、エナント酸(n-ヘプタン酸)、カプリル酸(n-オクタン酸)、ペラルゴン酸(n-ノナン酸)、カプリン酸(n-デカン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデカン酸)、イソペンタン酸(3-メチルブタン酸)、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸などが挙げられる。ちなみに、ポリオールエステルは、ポリオールのヒドロキシル基が完全にエステル化されずに残っている部分エステル;全てのヒドロキシル基がエステル化されている完全なエステル;又は部分エステルと完全エステルとの混合物であってもよく、完全エステルが好ましい場合がある。
【0104】
ポリオールエステルにおいて、より優れた加水分解安定性の観点から、ヒンダードアルコール、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、トリ(ペンタエリスリトール)などのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、又はペンタエリスリトールのエステルが更により好ましく;冷媒との特に優れた適合性及び加水分解安定性の観点から、ペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。
【0105】
ポリオールエステルの好ましい具体例としては、ネオペンチルグリコールと、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのジエステル;トリメチロールエタンと、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;トリメチロールプロパンと、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;トリメチロールブタンと、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;ペンタエリスリトールと、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのテトラエステルが挙げられる。ちなみに、2種以上の脂肪酸とのエステルは、1種の脂肪酸とポリオールとの2種以上のエステルの混合物、及びその2種以上の混合脂肪酸とポリオールとのエステルであってもよく、特に、混合脂肪酸とポリオールとのエステルは、低温特性及び冷媒との適合性において優れている。
【0106】
好ましい実施形態では、潤滑油は、約-35℃~約100℃、より好ましくは約-30℃~約40℃の範囲内、更により具体的には-25℃~40℃の温度で冷媒に可溶性である。別の実施形態では、コンプレッサ内で潤滑剤を維持しようとする試みは優先ではないので、高温不溶性は好ましくない。
【0107】
電化自動車の空調用途のために使用される潤滑油は、75~110cSt、理想的には約80cSt~100cSt、最も具体的には85cst~95cStの動粘度(ASTM D445に準拠して40℃で測定)を有してもよい。しかし、本発明を限定することを望むものではないが、電動車両のA/Cコンプレッサのニーズに応じて、他の潤滑油粘度が使用されていてもよいことに留意すべきである。
【0108】
潤滑油の加水分解を抑えるためには、電気タイプの車両の加熱/冷却システムの水分濃度を制御する必要がある。したがって、この実施形態の潤滑剤は、水分が少なく、典型的には100重量ppm未満である必要がある。
【0109】
冷媒安定剤
HFOタイプの冷媒は、二重結合が存在するため、熱的に不安定になり、極端な使用、取り扱い、又は保管状況で分解する可能性がある。したがって、HFOタイプの冷媒に安定剤を添加することには利点がある場合がある。安定剤としては、特に、ニトロメタン、アスコルビン酸、テレフタル酸、トルトリアゾール又はベンゾトリアゾールなどのアゾール、トコフェロールなどのフェノール化合物、ヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tertブチル-4-メチルフェノール、n-ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのエポキシド(おそらくフッ素化又は過フッ素化アルキルエポキシド又はアルケニル又は芳香族エポキシド)、d-リモネン又はα及びβ-ピネンなどのテルペン、亜リン酸塩、リン酸塩、ホスホネート、チオール及びラクトンが挙げられ得る。
【0110】
慣例的であることを望まないが、ブレンドは、使用されているシステムの要件に応じて、安定剤を含む場合と含まない場合がある。冷媒ブレンドが安定剤を含む場合、それは、上記の安定剤のいずれかの0.01重量パーセントから最大1重量パーセントまでの任意の量を含み得るが、最も好ましくは、トコフェロール又はd-リモネンである。
【0111】
冷媒ブレンドの可燃性
可燃性は、発火する及び/又は炎を伝播させる組成物の能力を意味するために使用される用語である。冷媒及び他の伝熱組成物又は作動流体については、燃焼下限濃度(lower flammability limit、「LFL」)とは、ASTM(American Society of Testing and Material、米国材料検査協会)E681に記述されている試験条件下で組成物の均質混合物及び空気を介して炎を伝播することができる空気中の伝熱組成物の最低濃度である。可燃上限(upper flammability limit、「UFL」)とは、同じ試験条件下で組成物の均質混合物及び空気を介して火炎伝播することができる、空気中における伝熱組成物の最高濃度である。
【0112】
ANSI/ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)により(クラス1、火炎伝播なし)として分類されるためには、冷媒は、液体及び蒸気相内の両方で配合されたときに、ASTM E681の条件を満たさなければならず、並びに漏出時に得られる液体相及び蒸気相の両方において、非可燃性でなければならない。
【0113】
冷媒がANSI/ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)により低可燃性(クラス2L)として分類されるためには、冷媒は、1)140°F(60℃)及び14.7psia(101.3kPa)でテストしたときに火炎伝播を示し、2)LFL>0.0062lb/ft(0.10kg/m)を有し、3)73.4°F(23.0℃)及び14.7psia(101.3kPa)でテストしたときに3.9インチ/秒(10cm/秒)以下の最大燃焼速度を有し、4)8169Btu/lb(19,000kJ/kg)未満の燃焼熱を有する。2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)は、ANSI/ASHRAE規格34クラス2Lの可燃性評価を備えている。
【0114】
冷媒をANSI/ASHRAE規格34クラス2で分類するために、冷媒は、1)140°F(60℃)及び14.7psia(101.3kPa)でテストしたときに火炎伝播を示し、2)LFL>0.0062lb/ft(0.10kg/m)を有し、3)8169Btu/lb(19,000kJ/kg)未満の燃焼熱を有する。
【0115】
冷媒をANSI/ASHRAE規格34クラス3で分類するために、冷媒は、1)140°F(60℃)及び14.7psia(101.3kPa)でテストしたときに火炎伝播を示し、2)LFL<0.0062lb/ft(0.10kg/m)を有し、又は3)8169Btu/lb(19,000kJ/kg)超の燃焼熱を有する。
【0116】
HFO成分及びHC成分が正しい比率でブレンドされると、結果として得られるブレンドは、ANSI/ASHRAE規格34及びISO817で定義されているクラス2の可燃性を持つ。クラス2の可燃性は、クラス3の可燃性よりも本質的に可燃性が低く(すなわち、燃焼熱つまりHOC値で例示されるようにエネルギー放出が低い)、自動車の加熱/冷却システムで管理できる。ASHRAE規格34は、化学量論的反応に十分な酸素を伴う1モルの冷媒の完全燃焼に基づくバランスの取れた化学量論方程式を使用して、冷媒ブレンドの燃焼熱を計算する方法を提供する。
【0117】
ASHRAE規格34セクション6.1.3.6で提供されている燃焼熱の計算に基づく以下の表から見られるように、0.1重量%~36.5重量%のエタンをHFO-1234yfと組み合わせることが可能であり、ASHRAEクラス2可燃性の燃焼熱要件(HOC<19KJ/kg)を依然として満たすことができる。同様に、0.1重量%~22重量%のプロパンをHFO-1234yfと組み合わせても、ASHRAEクラス2可燃性(HOC<19KJ/kg)の燃焼熱要件を満たすことができる。
【0118】
【表2】
【0119】
95重量%のR-1234yfと5重量%のR-170とを含むブレンドを、ASTM E681に従ってテストしたところ、LFLが5体積%であることがわかった。結果として得られるLFLは、ASHRAEクラス2の可燃性要件を満たしている。以下の表3を参照。
【0120】
【表3】
【0121】
HFO成分及びHC成分が更に正確な比率でブレンドされると、結果として得られるブレンドは、ANSI/ASHRAE規格34及びISO817で定義されているクラス2Lの可燃性を持つ。クラス2Lの可燃性は、クラス3の可燃性よりも本質的にはるかに可燃性が低く(すなわち、燃焼熱つまりHOC値で例示されるようにエネルギー放出が低い)、自動車の加熱/冷却システムで管理できる。
【0122】
結果として得られるブレンドは、ANSI/ASHRAE規格34及びISO817で定義されているクラス2Lの可燃性を持つように、HFO成分及びHC成分をブレンドし、火炎抑制剤を追加することも可能である。クラス2Lの可燃性は、クラス3の可燃性よりも本質的にはるかに可燃性が低く(すなわち、燃焼熱つまりHOC値で例示されるようにエネルギー放出が低い)、自動車の加熱/冷却システムで管理できる。この例は、冷媒ブレンドの特性に影響を与えず、結果として得られるブレンドがクラス2Lの可燃性になるように、CF3I又はその他の既知の火炎抑制剤を追加することである。結果として得られるブレンドがクラス1であり、火炎伝播を示さないように、可燃性を低減するのに十分な火炎抑制剤を添加するが更に可能である。
【0123】
これらの成分の毒性もWEEL又は同様の毒物学的種類の委員会によってレビューされ、400ppmを超える毒性値があることが判明したため、ANSI/ASHRAE規格34及びISO817によってクラスA又は低毒性レベルとして分類されている。
【0124】
本発明の組成物は、熱管理システムで望ましく使用される温度範囲にわたる共沸混合物様及び/又は近共沸特性である。共沸混合物様及び/又は近共沸組成物は、冷蔵又は空調システムなどの熱管理システムで使用される場合、低温度勾配を示す。いくつかの実施形態では、組成物は、所望の蒸発器及びコンデンサの動作温度の両方で、共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示す。
【0125】
本発明の組成物は、加熱/冷却システムの性能を更に改善することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の熱容量と2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)の熱容量の比が、同じ温度及び圧力で1.05~1.50である。
【0126】
HFO-1234yf及びプロパンの混合物は、温度及び圧力に応じて、1つ以上の濃度範囲にわたって共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びプロパンの冷媒組成物は、プロパンNAL1からプロパンNAH1までの濃度範囲にわたって近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びプロパンの冷媒組成物は、プロパンNAL2からプロパンNAH2までの濃度範囲にわたって共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、プロパンNAL1からプロパンNAH1及びプロパンNAL2からプロパンNAH2の範囲は重複している。
【0127】
近共沸特性を示す本発明の組成物は、プロパンNAL1に対応するHFO-1234yf濃度とプロパンNAH1に対応するHFO-1234yf濃度との間のHFO-1234yf/プロパン組成物の一部としてHFO-1234yf濃度を有し得ることも理解されよう。同様に、プロパンNAL2、プロパンNAH2に関連する組成物、及びプロパンNAL2とプロパンNAH2との間のHFO-1234yf濃度を有する近共沸を示す組成物は、上記のとおりであり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びプロパンの冷媒組成物は、プロパンALL1からプロパンALH1までの濃度範囲にわたって共沸混合物様特性を示し得る。いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びプロパンの冷媒組成物は、プロパンALL2からプロパンALH2までの濃度範囲にわたって共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、プロパンALL1からプロパンALH1及びプロパンALL2からプロパンALH2の範囲は重複している。
【0129】
近共沸特性を示す本発明の組成物は、AAL1に対応するHFO-1234yf濃度とAAH1に対応するHFO-1234yf濃度との間のHFO-1234yf/プロパン組成物の一部としてHFO-1234yf濃度を有し得ることも理解されよう。同様に、プロパンAAL2、プロパンAAH2に関連する組成物、及びプロパンAAL2とプロパンAAH2との間のHFO-1234yf濃度を有する近共沸を示す組成物は、上記のとおりであり得る。
【0130】
HFO-1234yf及びエタン(R-170)の混合物は、温度及び圧力に応じて、1つ以上の濃度範囲にわたって共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びエタン(R-170)の冷媒組成物は、エタンNAL1からエタンNAH1までの濃度範囲にわたって近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びエタン(R-170)の冷媒組成物は、エタンNAL2からエタンNAH2までの濃度範囲にわたって共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、エタンNAL1からエタンNAH1及びエタンNAL2からエタンNAH2の範囲は重複していない。
【0131】
近共沸特性を示す本発明の組成物は、エタンNAL1に対応するHFO-1234yf濃度とエタンNAH1に対応するHFO-1234yf濃度との間のHFO-1234yf/エタン(R-170)組成物の一部としてHFO-1234yf濃度を有し得ることも理解されよう。同様に、エタンNAL2、エタンNAH2に関連する組成物、及びエタンNAL2とエタンNAH2との間のHFO-1234yf濃度を有する近共沸を示す組成物は、上記のとおりであり得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びエタン(R-170)の冷媒組成物は、エタンALL1からエタンALH1までの濃度範囲にわたって共沸混合物様特性を示し得る。いくつかの実施形態では、HFO-1234yf及びエタン(R-170)の冷媒組成物は、エタンALL2からエタンALH2までの濃度範囲にわたって共沸混合物様及び/又は近共沸特性を示し得る。いくつかの実施形態では、エタンALL1からエタンALH1及びエタンALL2からエタンALH2の範囲は重複していない。
【0133】
近共沸特性を示す本発明の組成物は、エタンAAL1に対応するHFO-1234yf濃度とエタンAAH1に対応するHFO-1234yf濃度との間のHFO-1234yf/エタン(R-170)組成物の一部としてHFO-1234yf濃度を有し得ることも理解されよう。同様に、エタンAAL2、エタンAAH2に関連する組成物、及びエタンAAL2とエタンAAH2との間のHFO-1234yf濃度を有する近共沸を示す組成物は、上記のとおりであり得る。
【0134】
本発明の一態様を図1に示す。図1の例では、0℃でのR-1234yf/プロパンの沸点圧力に基づく沸点圧力と露点圧力との間のパーセント偏差が示されている。システムは、約0℃の温度で、0のプロパンNAL1(610)から約70重量パーセントのR-1234yfのプロパンNAH1(650)まで、及び100~約30重量パーセントのプロパンにおいて近共沸混合物である。システムはまた、約0℃の温度で、約98.5のプロパンNAL2(660)から100重量パーセントのR-1234yfのプロパンNAH2(640)まで、及び約1.5~0重量パーセントのプロパンにおいて近共沸である。
【0135】
システムは、約0℃の温度で、0のプロパンALL1(615)から約67.8重量パーセントのR-1234yfのプロパンALH1(620)まで、及び100~約32.2重量パーセントのプロパンにおいて共沸混合物様である。システムはまた、約0℃の温度で、約99.2のプロパンALL2(630)から100重量パーセントのR-1234yfのプロパンALH2(645)まで、及び約0.8~0重量パーセントのプロパンにおいて共沸混合物様である。
【0136】
本発明の別の態様を図2に示す。図2の例では、40℃でのR-1234yf/プロパンの沸点圧力に基づく沸点圧力と露点圧力との間のパーセント偏差が示されている。システムは、約40℃の温度で、約0のプロパンNAL1(610)から約79.8重量パーセントのR-1234yfのプロパンNAH1(650)まで、及び100~約20.2重量パーセントのプロパンにおいて近共沸混合物である。システムはまた、約40℃の温度で、約96.3のプロパンNAL2(660)から100重量パーセントのR-1234yfのプロパンNAH2(640)まで、及び約3.7~0重量パーセントのプロパンにおいて近共沸混合物である。
【0137】
システムは、約40℃の温度で、0のプロパンALL1(615)から約73.7重量パーセントのR-1234yfのプロパンALH1(620)まで、及び100~約26.3重量パーセントのプロパンにおいて共沸混合物様である。システムはまた、約40℃の温度で、約98.2のプロパンALL2(630)から100重量パーセントのR-1234yfのプロパンALH2(645)まで、及び約1.8~0重量パーセントのプロパンにおいて共沸混合物様である。
【0138】
実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)を含む。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパン(R-290)からなり得る。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、1重量パーセントプロパン~10重量パーセントプロパンの範囲のブレンドを含み得る。より具体的には、ブレンドは、5重量パーセント~10重量パーセントプロパン、更により具体的には、5重量パーセント~7重量パーセントのプロパンを含有し得る。
【0139】
本発明の一態様を図3に示す。図3の例では、0℃でのR-1234yf/エタンの沸点圧力に基づく沸点圧力と露点圧力との間のパーセント偏差が示されている。システムは、約0℃の温度で、0のエタンNAL1(710)から約15.1重量パーセントのR-1234yfのエタンNAH1(750)まで、及び約100~約84.9重量パーセントのエタンにおいて近共沸混合物である。システムはまた、約0℃の温度で、約99.8のエタンNAL2(760)から100重量パーセントのR-1234yfのエタンNAH2(740)まで、及び約0.2~0重量パーセントのエタンにおいて近共沸である。
【0140】
システムは、約0℃の温度で、0のエタンALL1(715)から約10重量パーセントのR-1234yfのエタンALH1(720)まで、及び100~約90重量パーセントのエタンにおいて共沸混合物様である。システムはまた、約0℃の温度で、約99.9のエタンALL2(730)から100重量パーセントのR-1234yfのエタンALH2(745)まで、及び約0.1~0重量パーセントのエタンにおいて共沸混合物様である。
【0141】
本発明の別の態様を図4に示す。図4の例では、40℃でのR-1234yf/エタンの沸点圧力に基づく沸点圧力と露点圧力との間のパーセント偏差が示されている。システムは、約40℃の温度で、約36のエタンNAL1(710)から約42重量パーセントのR-1234yfのエタンNAH1(750)まで、及び約64~約58重量パーセントのエタンにおいて近共沸混合物である。システムはまた、約40℃の温度で、約99.6のエタンNAL2(760)から100重量パーセントのR-1234yfのエタンNAH2(740)まで、及び約0.4~0重量パーセントのエタンにおいて近共沸混合物である。
【0142】
システムは、約40℃の温度で、36のエタンALL1(715)から約38.9重量パーセントのR-1234yfのエタンALH1(720)まで、及び約64~約61.1重量パーセントのエタンにおいて共沸混合物様である。システムはまた、約40℃の温度で、約99.8のエタンALL2(730)から100重量パーセントのR-1234yfのエタンALH2(745)まで、及び約0.2~0重量パーセントのエタンにおいて共沸混合物様である。
【0143】
HFO-1234yfは空調用冷媒として使用できるが、ヒートポンプタイプの流体として、すなわち、冷却及び加熱モード又は可逆サイクルシステムで機能する能力に制限がある。したがって、本明細書に記載の冷媒は、加熱動作範囲でHFO-1234yfよりも改善された容量を独自に提供し、HFO-1234yfよりも低い加熱範囲の容量を-30℃まで拡張し、GWPが非常に低く、可燃性が低から軽度であると同時に、低い又はほぼ無視できる程度の勾配も独自に示す。したがって、これらの冷媒は、電気化車両の用途、特に、下限加熱範囲でこれらの特性を必要とするHEV、PHEV、MHEV、EV、及び大量輸送車両で最も有用である。また、ヒートポンプタイプ流体は、空調範囲、すなわち、最大40℃で良好に機能する必要があり、HFO-1234yfに対し容量の増加をもたらすことにも留意すべきである。したがって、本明細書に記載の冷媒ブレンドは、特に-30℃から最大+40℃までの温度範囲にわたって良好に機能し、ヒートポンプシステムで使用されているサイクルに応じて加熱及び/又は冷却を提供することができる。
【0144】
実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタンを含む。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタンからなり得る。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びエタンを含む近共沸、共沸混合物様、又は共沸ブレンドを含み得る。
【0145】
他の実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパンを含む。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパンからなり得る。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びプロパンを含む近共沸、共沸混合物様、又は共沸ブレンドを含み得る。
【0146】
冷媒ブレンドは、様々な加熱及び冷却システムで使用できる。図5の実施形態では、加熱/冷却ループ110を有する加熱/冷却システム100は、第1の熱交換器120、圧力調整器130、第2の熱交換器140、コンプレッサ150、及び四方弁160を備える。第1及び第2の熱交換器は、空気/冷媒タイプである。ループ110の冷媒、及びファンによって生成された空気の流れが第1の熱交換器120を通過する。この同じ空気流の全部又は一部はまた、熱交換器を通過して、エンジンなどの外部冷却回路(図5には示されていない)を通過することができる。同様に、第2の熱交換器140は、ファンによって生成された空気流を通過させている。この同じ空気流の全部又は一部はまた、別の外部冷却回路(図5には示されていない)を通過することができる。空気が流れる方向は、ループ110の動作モード及び外部冷却回路の要件に依存する。したがって、エンジンの場合、エンジンがアイドル状態であり、ループ110がヒートポンプモードにあるとき、空気は、エンジン冷却回路の熱交換器によって加熱され、次に熱交換器120に吹き付けられて、ループ110の流体の蒸発の速度を上げ、したがってこのループの性能を改善することができる。冷却回路の熱交換器は、エンジンに入る空気の加熱又はこのエンジンによって生成されたエネルギーを生産的に使用するなどのエンジン要件に従って、弁によって作動させることができる。
【0147】
冷却モードでは、コンプレッサ150によって動かされた冷媒は、弁160を介して、コンデンサとして機能する熱交換器120を通過し、すなわち、熱エネルギーを外部に放出し、次に圧力調整器130を通過し、蒸発器として機能している熱交換器140を通過して、したがって、自動車の車室内部に吹き込まれることを意図した空気の流れを冷却する。
【0148】
ヒートポンプモードでは、冷媒の流れの方向は、弁160を使用して逆にされる。熱交換器140はコンデンサとして機能し、熱交換器120は蒸発器として機能する。次に、熱交換器140を使用して、自動車の車室に向けられた空気の流れを加熱することができる。
【0149】
図6の実施形態では、加熱/冷却ループ210を有する加熱/冷却システム200は、第1の熱交換器220、圧力調整器230、第2の熱交換器240、コンプレッサ250、四方弁260、及び分岐270を備え、分岐270は、冷却モードでの流体の流れの方向を考慮するとき、一方では熱交換器220の出口に、他方では熱交換器240の出口に取り付けられる。この分岐は、エンジンに入ることが意図されている空気の流れ又は排気ガスの流れが通過する熱交換器280と、圧力調整器280とを備える。第1の熱交換器220及び第2の熱交換器240は、空気/冷媒タイプである。ループ210からの冷媒、及びファンによって生成された空気の流れが第1の熱交換器220を通過する。この同じ空気流の全部又は一部はまた、エンジン冷却回路の熱交換器(図6には示されていない)を通過する。同様に、第2の交換器240は、ファンによって運ばれた空気流を通過させている。この空気流の全部又は一部はまた、エンジン冷却回路(図6には示されていない)の別の熱交換器を通過する。空気が流れる方向は、ループ210の動作モード及びエンジン要件に依存する。例として、燃焼エンジンがアイドル状態であり、ループ210がヒートポンプモードにあるとき、空気は、エンジン冷却回路の熱交換器によって加熱され、次に熱交換器220に吹き付けられて、ループ210の流体の蒸発を加速し、このループの性能を改善することができる。冷却回路の熱交換器は、エンジンに入る空気の加熱又はこのエンジンによって生成されたエネルギーを生産的に使用するなどのエンジン要件に従って、弁によって作動させることができる。
【0150】
熱交換器280はまた、これが冷蔵モードであろうとヒートポンプモードであろうと、エネルギー要件に従って作動させることができる。遮断弁290を分岐270に設置して、この分岐をアクティブ化又は非アクティブ化することができる。
【0151】
ファンによって運ばれる空気の流れは、熱交換器280を通過する。この同じ空気流は、エンジン冷却回路の別の熱交換器を通過する場合があり、また、排気ガス回路、エンジン空気入口、又はハイブリッド自動車の場合はバッテリーに配置された他の熱交換器を通過する場合がある。
【0152】
図7の実施形態では、冷蔵ループ310を有する冷蔵システム300は、第1の熱交換器320、圧力調整器330、第2の熱交換器340、コンプレッサ350、及び四方弁360を備える。第1の熱交換器320及び第2の熱交換器340は、空気/冷媒タイプである。熱交換器320及び340が動作する方法は、図6に示される第1の実施形態と同じである。2つの流体/液体熱交換器370及び380は、冷蔵ループ回路310及びエンジン冷却回路又は二次グリコール-水回路の両方に設置されている。中間の気体流体(空気)を通過させることなく流体/液体熱交換器を設置すると、空気/流体熱交換器と比較して熱交換の改善に貢献する。
【0153】
図8の実施形態では、冷蔵ループ410を有する冷蔵システム400は、第1シリーズの熱交換器420及び430、圧力調整器440、第2のシリーズの熱交換器450及び460、コンプレッサ470、並びに四方弁480を備える。分岐490は、冷媒モードでの流体の循環を考慮するとき、一方では熱交換器420の出口に、他方では熱交換器460の出口に取り付けられる。この分岐は、燃焼エンジンに入ることが意図されている空気の流れ又は排気ガスの流れが通過する熱交換器500と、遮断弁510とを備える。この分岐が動作する方法は、図7に示される第2の実施形態と同じである。
【0154】
熱交換器420及び450は空気/冷媒タイプであり、熱交換器430及び460は液体/冷媒タイプである。これらの熱交換器が動作する方法は、図5に示される第3の実施形態と同じである。
【0155】
冷媒ブレンドはまた、冷媒組成物からの総汚染物質の相対濃度を低減するために使用され得る。一実施形態では、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)とエタン(R-170)又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとを含む第1の冷媒組成物は、近共沸挙動を示さず、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、エタン(R-170)、又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つとブレンドされ、第2の冷媒組成物を形成する。2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、エタン(R-170)、又はプロパン(R-290)のうちの少なくとも1つを追加すると、総汚染物質の相対濃度が低下し、近共沸挙動を示す第2の冷媒組成物になる。
【実施例
【0156】
ヒートポンプシステムの熱力学的モデリングの比較
加熱モード:エタン
熱力学的モデリングプログラムであるThermocycle3.0を使用して、HFO-1234yfと比較したHFO-1234yf/エタンブレンドの期待される性能をモデル化した。加熱モードに使用されるモデル条件は次のとおりである。熱交換器#2は10℃刻みで変化させた。
【0157】
【表4】
【0158】
1重量%~10重量%の範囲のHFO-1234yf/エタンのモデリング結果。
【0159】
【表5】
【0160】
【表6】
【0161】
【表7】
【0162】
【表8】
【0163】
【表9】
【0164】
モデリングの結果は、HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-170とのブレンドが、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供することを示している。-20℃及び-30℃の周囲温度では、HFO-1234yfは十分に機能しない。-30℃では、コンプレッサ入口圧力は大気圧より低く(101.3kPa未満)、空気がコンプレッサに引き込まれる(表4)。したがって、HFO-1234yfは、何らかのシステム設計なしで、-20℃までのヒートポンプ流体としての使用に制限されている。しかし、1重量%のR-170(エタン)でさえ、HFO-1234yf(99重量%)/R-170(1重量%)が-30℃までの温度で動作できるため、結果として得られるブレンドの性能が大幅に向上する。したがって、HFO-1234yf/R-170の本発明のブレンドは、加熱範囲をΔ10℃拡張する。
【0165】
HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-170(エタン)とのブレンドはまた、加熱容量の向上という点で、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供する。モデリングの結果は、1重量%のR-170でも5%を超える熱容量の改善があり、最大10%のエタンは最大54%の相対熱容量を大幅に改善できることを示している。本発明のブレンドの改善された加熱容量は、新しい流体を容易に使用して、客室に適切な熱を提供できることを示している。更に、結果として得られる本発明のブレンドは、一般に、ヒートポンプの動作範囲にわたって、純粋なHFO-2134yfに対して、同様の又は低減されたコンプレッサ吐出量比を有する。
【0166】
モデリングによると、HFO-1234yfと1重量%~5重量%のR-170(エタン)とのブレンドは、-30℃~+10℃の加熱範囲で同様の性能係数(COP)又はエネルギー性能を有することを示す。HFO-1234yfと5重量%を超え最大10重量%までのR-170(エタン)とのブレンドは、加熱範囲で適切なCOPを有する。
【0167】
更に、1~10重量%のR-170(エタン)を含有するブレンドも、所望の加熱範囲にわたって、つまり-30℃~最大10℃で比較的低い勾配を示す。しかし、整備は通常ガレージサービスベイで行われ、周囲温度は10℃以上になると想定されているため、R-170ブレンドは非常に良好な勾配を有し、近共沸ブレンドに近いものとして整備できる。
【0168】
したがって、本明細書に記載のHFO-1234yf/R-170冷媒ブレンドは、-30℃~+10℃の加熱動作範囲でHFO-1234yfよりも5%~54%改善された容量を独自に提供し、HFO-1234yfよりも低い加熱範囲の容量をΔ10℃拡張し、GWPが非常に低く(10未満)、可燃性が低から軽度(クラス2~クラス2L)であると同時に、10℃以上の自動車整備温度ゾーンで低い又はほぼ無視できる程度の温度勾配も独自に示す。
【0169】
HFO-1234yf及びR-170の全てのブレンドが望ましいが、ヒートポンプ流体に有利な可燃性(すなわち、クラス2又はクラス2L)を有する好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~63.5重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-170~36.5重量%のR-170であり、より好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~90重量%のHFO-1234yf及び1重量%~10重量%のR-170であり、最も好ましいブレンドは、99%のHFO-1234yf~93重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-170~7重量%のR-170である。
【0170】
加熱モード:プロパン
熱力学的モデリングプログラムであるThermocycle3.0を使用して、HFO-1234yfと比較したHFO-1234yf/プロパンブレンドの期待される性能をモデル化した。加熱モードに使用されるモデル条件は次のとおりである。熱交換器#2は10℃刻みで変化させた。
【0171】
【表10】
【0172】
1重量%~10重量%の範囲のHFO-1234yf/プロパンのモデリング結果。
【0173】
【表11】
【0174】
【表12】
【0175】
【表13】
【0176】
【表14】
【0177】
【表15】
【0178】
モデリングの結果は、HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-290とのブレンドが、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供することを示している。-30℃の周囲温度では、HFO-1234yfは十分に機能しない。コンプレッサ入口圧力は大気圧より低く(101.3kPa未満)、空気がコンプレッサに引き込まれる(表4)。したがって、HFO-1234yfは、何らかのシステム設計なしで、-20℃までのヒートポンプ流体としての使用に制限されている。しかし、1重量%のR-290(プロパン)でさえ、HFO-1234yf(99重量%)/R-290(1重量%)が-30℃までの温度で動作できるため、結果として得られるブレンドの性能が大幅に向上する。したがって、HFO-1234yf/R-290の本発明のブレンドは、加熱範囲をΔ10℃拡張する。
【0179】
HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-290(プロパン)とのブレンドはまた、加熱容量の向上という点で、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供する。モデリングの結果は、1重量%のR-290でも2%を超える熱容量の改善があり、最大10%のプロパンは最大22%の相対熱容量を大幅に改善できることを示している。本発明のブレンドの改善された加熱容量は、新しい流体を容易に使用して、客室に適切な熱を提供できることを示している。更に、結果として得られる本発明のブレンドは、一般に、ヒートポンプの動作範囲にわたって、純粋なHFO-2134yfに対して、同様の又は低減されたコンプレッサ吐出量比を有する。
【0180】
モデリングによると、HFO-1234yfと1重量%~5重量%のR-290(プロパン)とのブレンドは、-30℃~+10℃の加熱範囲で同様のCOP又はエネルギー性能を有することを示す。HFO-1234yfと5重量%を超え最大10重量%までのR-290(プロパン)とのブレンドは、加熱範囲で適切なCOPを有する。
【0181】
更に、1~10重量%のR-290(プロパン)を含有するブレンドはまた、所望の加熱範囲にわたって、つまり-30℃~最大10℃で無視できる程度の勾配を示す。したがって、この本発明のブレンドは、ほとんど全ての周囲環境で使用することができる。
【0182】
したがって、本明細書に記載のHFO-1234yf/R-290冷媒ブレンドは、-30℃~+10℃の加熱動作範囲でHFO-1234yfよりも2%~22%改善された容量を独自に提供し、HFO-1234yfよりも低い加熱範囲の容量をΔ10℃拡張し、GWPが非常に低く(10未満)、可燃性が低から軽度(クラス2~クラス2L)であると同時に、全てのヒートポンプの動作温度でほぼ無視できる程度の勾配も独自に示す。
【0183】
HFO-1234yf及びR-290の全てのブレンドが望ましいが、ヒートポンプ流体に有利な可燃性を有する好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~78重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-290~22重量%のR-290であり、より好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~80重量%のHFO-1234yf及び1重量%~20重量%のR-290であり、最も好ましいブレンドは、99%のHFO-1234yf~90重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-290~10重量%のR-290である。
【0184】
冷却モード(プロパン)
ヒートポンプシステムの熱力学的モデリングの比較
【0185】
冷却モード:プロパン
熱力学的モデリングプログラムであるThermocycle3.0を使用して、HFO-1234yf/エタンと比較したHFO-1234yfに対するブレンドの期待される性能をモデル化した。冷却モードに使用されるモデル条件は次のとおりである。熱交換器#2は10℃刻みで変化させた。
【0186】
【表16】
【0187】
【表17】
【0188】
【表18】
【0189】
【表19】
【0190】
ヒートポンプ流体が実行可能な候補であるためには、冷却モードでも良好に機能する必要がある。すなわち、周囲温度が高い場合は、適切な冷却を提供する必要がある。モデリングの結果は、HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-290とのブレンドが、周囲温度20℃~最大40℃までの冷却範囲で、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供することを示している。
【0191】
HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-290(プロパン)とのブレンドはまた、冷却容量の向上という点で、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供する。モデリングの結果は、1重量%のR-290でも2%を超える熱容量の改善があり、最大10%のプロパンは最大22%の相対冷却容量を大幅に改善できることを示している。本発明のブレンドの改善された冷却容量は、新しい流体を容易に使用して、客室に適切な冷却(空調)を提供できることを示している。更に、結果として得られる本発明のブレンドは、一般に、冷却動作範囲にわたって、純粋なHFO-1234yfに対して、同様のコンプレッサ吐出量比を有する。
【0192】
モデリングによると、HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-290(プロパン)とのブレンドは、+20℃~+40℃の冷却範囲で同様のCOP又はエネルギー性能を有することを示す。
【0193】
更に、1~10重量%のR-290(プロパン)を含有するブレンドはまた、所望の冷却範囲にわたって、つまり+20℃~+40℃で無視できる程度の勾配を示す。したがって、この本発明のブレンドは、ほとんど全ての周囲環境で使用することができる。
【0194】
したがって、本明細書に記載のHFO-1234yf/R-290冷媒ブレンドは、+20℃~+40℃の冷却動作範囲でHFO-1234yfよりも2%~22%改善された容量を独自に提供し、GWPが非常に低く(10未満)、可燃性が低から軽度(クラス2~クラス2L)であると同時に、全てのヒートポンプの動作温度でほぼ無視できる程度の勾配も独自に示す。
【0195】
HFO-1234yf及びR-290の全てのブレンドが望ましいが、ヒートポンプ(すなわち、加熱又は冷却モードで動作する)流体に有利な可燃性(クラス2又はクラス2L)を有する好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~78重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-290~22重量%のR-290であり、より好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~80重量%のHFO-1234yf及び1重量%~20重量%のR-290であり、最も好ましいブレンドは、99%のHFO-1234yf~90重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-290~10重量%のR-290である。
【0196】
冷却モード:エタン
熱力学的モデリングプログラムであるThermocycle3.0を使用して、HFO-1234yf/プロパンと比較したHFO-1234yfに対するブレンドの期待される性能をモデル化した。冷却モードに使用されるモデル条件は次のとおりである。熱交換器#2は10℃刻みで変化させた。
【0197】
【表20】
【0198】
【表21】
【0199】
【表22】
【0200】
【表23】
【0201】
ヒートポンプ流体が実行可能な候補であるためには、冷却モードでも良好に機能する必要がある。すなわち、周囲温度が高い場合は、適切な冷却を提供する必要がある。モデリングの結果は、HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-170とのブレンドが、周囲温度+20℃~最大+40℃までの冷却範囲で、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供することを示している。
【0202】
HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-170(エタン)とのブレンドはまた、冷却容量の向上という点で、純粋なHFO-1234yfよりも大きな利点を提供する。モデリングの結果は、1重量%のR-170でも6~7%%を超える熱容量の改善があり、最大10%のエタンは最大50~70%の相対冷却容量を大幅に改善できることを示している。本発明のブレンドの改善された冷却容量は、新しい流体を容易に使用して、客室に適切な冷却(空調)を提供できることを示している。更に、結果として得られる本発明のブレンドは、一般に、冷却動作範囲にわたって、純粋なHFO-1234yfに対して、同様のコンプレッサ吐出量比を有する。
【0203】
モデリングによると、HFO-1234yfと1重量%~10重量%のR-170(エタン)とのブレンドは、+20℃~+40℃の冷却範囲で同様のCOP又はエネルギー性能を有することを示す。
【0204】
更に、1~10重量%のR-170(エタン)を含有するブレンドはまた、所望の冷却範囲にわたって、つまり+20℃~+40℃で無視できる程度の勾配を示す。したがって、この本発明のブレンドは、ほとんど全ての周囲環境で使用することができる。
【0205】
したがって、本明細書に記載のHFO-1234yf/R-170冷媒ブレンドは、+20~+40℃の冷却動作範囲でHFO-1234yfよりも2%~22%改善された容量を独自に提供し、GWPが非常に低く(10未満)、可燃性が低から軽度(クラス2~クラス2L)であると同時に、全てのヒートポンプの動作温度でほぼ無視できる程度の勾配も独自に示す。
【0206】
HFO-1234yf及びR-170の全てのブレンドが望ましいが、ヒートポンプ流体に有利な可燃性を有する好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~63.5重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-170~36.5重量%のR-170であり、より好ましいブレンドは、99重量%のHFO-1234yf~90重量%のHFO-1234yf及び1重量%~10重量%のR-170であり、最も好ましいブレンドは、99%のHFO-1234yf~93重量%のHFO-1234yf及び1重量%のR-170~7重量%のR-170である。
【0207】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用することができることが理解されるであろう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2
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図7
図8