(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】オレフィンオリゴマー化生成物を分離する方法(変法)
(51)【国際特許分類】
C07C 7/04 20060101AFI20230829BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20230829BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20230829BHJP
C07C 2/26 20060101ALI20230829BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C11/107
C07C11/02
C07C2/26
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021549376
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 RU2019000112
(87)【国際公開番号】W WO2020171730
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】513322589
【氏名又は名称】パブリック・ジョイント・ストック・カンパニー・“シブール・ホールディング”
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オレグ・レオニドヴィッチ・アルカトフ
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ウラジミロヴィチ・リプスキフ
(72)【発明者】
【氏名】エヴゲーニ・アナトーリエヴィチ・ポポフ
(72)【発明者】
【氏名】アイラト・ファリートヴィチ・フサイノフ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0197521(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199467(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0182124(US,A1)
【文献】特開平08-239419(JP,A)
【文献】特開平10-045638(JP,A)
【文献】米国特許第09175109(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0113851(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144024(US,A1)
【文献】特開2016-132670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンオリゴマー化生成物を分離する方法であって、次の一連の工程:
a) 反応マスをオリゴマー化反応器から排出させる工程と、
b) 反応マスを触媒系不活性化剤と接触させる工程と、
c) 初期オレフィンを含む画分を反応マスから単離して
、オリゴマー化反応生成物流を形成
する工程と、
d) エバポレーターで、オリゴマー化反応生成物流を、標的α-オレフィンを主に含む画分と、副生物ポリマー及び触媒系残渣を含む画分とに分離する工程と、
e) 工程d)において得られた標的α-オレフィンを主に含む画分を、軽質画分、標的α-オレフィンの画分及びオリゴマーの重質画分に分離する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
エチレンが、初期オレフィンとして使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オレフィンのオリゴマー化が、オレフィンの三量体化であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
オレフィンの三量体化が、エチレンの三量体化であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
標的α-オレフィンを主に含む画分が、С6+画分であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
軽質画分が、С2~С4画分であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
オリゴマーの重質画分が、С8+画分であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
工程e)で得られた標的α-オレフィン画分が、ヘキセン-1を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヘキセン-1が、工程e)で得られた標的α-オレフィン画分から単離されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程e)で得られたオリゴマーの重質画分が、標的α-オレフィンを単離する工程、又は標的α-オレフィンを単離する工程及びエバポレーターに向けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程c)において単離された初期オレフィンを含む画分が、オリゴマー化反応器に送り込まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程d)において単離された標的α-オレフィンを主に含む画分が、分離塔に送り込まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
標的α-オレフィンを主に含む画分が、軽質画分、標的α-オレフィンの画分及びオリゴマーの重質画分に分離されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
エバポレーターが、薄膜エバポレーター又はロータリーフィルムエバポレーターであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エバポレーターが、ロータリーフィルムエバポレーターであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程d)が、64~175℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程d)が、80~150℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程d)が、0~6atmのゲージ圧で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程d)が、0~3atmのゲージ圧で実施されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程d)が、0~2atmのゲージ圧で実施されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
オレフィンオリゴマー化生成物を分離する方法であって、次の一連の工程:
a) 反応マスをオリゴマー化反応器から排出させる工程と、
b) 反応マスを触媒系不活性化剤と接触させる工程と、
c) 初期オレフィンを含む画分を反応マスから単離して
、オリゴマー化反応生成物流を形成
する工程と、
c)* 工程c)からのオリゴマー化反応生成物流の第1の部分を分離塔に向け、工程c)からのオリゴマー化反応生成物流の第2の部分を工程d)に向ける工程と、
d)* 分離塔で、工程c)*からのオリゴマー化反応生成物流の第1の部分を、軽質画分、標的α-オレフィンの画分、及びオリゴマーの重質画分に分離し、次にオリゴマーの重質画分を工程d)に向ける工程と、
d) エバポレーターで、工程d)*からのオリゴマーの重質画分及びオリゴマー化反応生成物流の第2の部分を、標的α-オレフィンを主に含む画分と副生物ポリマー及び触媒系残渣を含む画分に分離する工程と、
e) 工程d)において得られた標的α-オレフィンを主に含む画分及び工程c)からのオリゴマー化反応生成物流の第1の部分を、軽質画分、標的α-オレフィンの画分、及びオリゴマーの重質画分に分離する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
エチレンが、初期オレフィンとして使用されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オレフィンのオリゴマー化が、オレフィンの三量体化であることを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
オレフィンのオリゴマー化が、エチレンの三量体化であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
標的α-オレフィンを主に含む画分が、С6+画分であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
軽質画分が、С2~С4画分であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
オリゴマーの重質画分が、С8+画分であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
工程e)で得られた標的α-オレフィン画分が、ヘキセン-1を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
ヘキセン-1が、工程e)で得られた標的α-オレフィン画分から単離されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
工程e)で得られたオリゴマーの重質画分が、標的α-オレフィンを単離する工程、又は標的α-オレフィンを単離する工程及びエバポレーターに向けられることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
工程c)において単離された初期オレフィンを含む画分が、オリゴマー化反応器に戻されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
工程d)において単離された標的α-オレフィンを主に含む画分が、分離塔に送り込まれることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
標的α-オレフィンを主に含む画分が、軽質画分、標的α-オレフィンの画分、及びオリゴマーの重質画分に分離されることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
エバポレーターが、薄膜エバポレーター又はロータリーフィルムエバポレーターであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
エバポレーターが、ロータリーフィルムエバポレーターであることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程d)*及び工程e)が、一緒に実施されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
工程d)が、64~175℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
工程d)が、80~150℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
工程d)が、0~6atmのゲージ圧で実施されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
工程d)が、0~3atmのゲージ圧で実施されることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
工程d)が、0~2atmのゲージ圧で実施されることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖状低密度、中密度及び高密度ポリエチレンの製造において使用される直鎖状α-オレフィン、特にヘキセン-1、抵抗低減添加剤用のポリ-α-オレフィン等を生成するための、オレフィン、特にエチレンのオリゴマー化の分野に関する。特に、本発明は、エバポレーターを使用して、オレフィンオリゴマー化生成物を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7718838号には、オリゴマー化反応生成物流を分離するためのいくつかの変法が提案されている。すなわち、実施態様の1つは、オリゴマー化反応の標的生成物及び副生物、エチレン、触媒系を含む反応マス(reaction mass)を、オリゴマー化反応器から排出する工程を含む分離方法である。次いで、触媒系の不活性化のために、オリゴマー化反応器からの反応マスのアウトプットラインに不活性化剤が投与される。この後、不活性化された触媒系を含む反応マスが、未反応オレフィンを単離するための分離器に送り込まれる。未反応エチレンの単離後に残存している反応マスは、分離塔に送り込まれ、標的オリゴマー化生成物流、溶媒流、及び重質生成物流(オリゴマー化反応の副生物、例えばC10オレフィン、副生物ポリマー、更には不活性化された触媒系を含む)の3つの流れに分離される。同時に、重質生成物流は追加の分離塔に送り込まれて、C10オレフィンが単離されうる。
【0003】
この方法においては、低分子副生物ポリマーが機器内で沈降物を形成しうるので、機器を定期的に清掃して、副生物ポリマーを除去する必要があり、副生物ポリマーの分子量を正確に制御する必要もある。
【0004】
国際公開第2015179337号にも、オリゴマー化反応生成物流を分離する方法であって、反応マスをオリゴマー化反応器から排出し、次にオリゴマー化反応器からの反応マスのアウトプットラインに不活性化剤を投与して、触媒系を不活性化する工程を含む方法が開示されている。次いで、不活性化された触媒系を含む反応マスを第1の分離デバイス、例えば分離塔又はエバポレーターに送り込んで、エチレン及びブテン-1を含む軽質流、ヘキセン-1及び/又はオクテン-1、更には溶媒を含む標的生成物流、並びに重質C10+オリゴマー、副生物ポリマー及び不活性化された触媒系を含む重質流の3つの流れを得る。その後、重質流を第2の分離デバイス、例えば薄膜エバポレーターに送り込み、重質流を、重質液体C10+オリゴマーを主に含む流れと副生物ポリマー及び不活性化された触媒系を主に含む流れに分離する。
【0005】
この方法によれば、副生物ポリマー及び不活性化された触媒系を含む流れを含む流れ全部を分離塔に送り込む。不活性化された触媒系及び副生物ポリマーが流れに存在することによって、それらが機器の壁に被着し、更に生成物全部を分離するためのパワー入力が増加しうる。
【0006】
更に、従来技術(PERP Report Alpha Olefins 06/07-5、Nexant Inc.、2008、81~82頁)には、エチレンオリゴマー化の生成物を分離する方法であって、次の工程:
a) 溶媒、例えばシクロヘキサン、未反応エチレン、ヘキセン-1、C10+オレフィン、触媒系成分及び副生物ポリマーを含む反応マスをオリゴマー化反応器から排出する工程と、
b) 工程a)の反応マスを分離器に送り込み、未反応エチレンの大部分を単離し、次にそれをオリゴマー化反応器に再循環させる工程と、
c) 工程b)におけるエチレンの単離後に残存している流れを、触媒系を不活性化するための不活性化剤、例えば2-エチルヘキサノールで処理する工程と、
d) ヘキセン-1、С10+オレフィン、溶媒、不活性化された触媒系及び副生物ポリマーを含む工程c)において得られた流れを分離塔に送り込み、それをヘキセン-1及び溶媒、例えばシクロヘキサンを含む上部流と、C10+オレフィン、副生物ポリマー及び不活性化された触媒系を含む底部流との2つの流れに分離する工程と、
e) ヘキセン-1及び溶媒、例えばシクロヘキサンを含む工程d)の上部流を溶媒分離塔に送り込み、ヘキセン-1を主に含む画分から溶媒を分離する工程と、
f) 工程e)のヘキセン-1を主に含む画分をヘキセン-1の単離に向かわせる工程と、
g) C10+オレフィン、副生物及び不活性化された触媒系を含む工程d)の底部流を、C10オレフィンを主に含む画分を分離するための塔に送り込んで、副生物ポリマー及び不活性化された触媒系を含む重質画分を得る工程と
を含む、方法が開示されている。
【0007】
この方法の欠点は、触媒系不活性化剤をより遅い段階で送り込むことであり、それによって、不活性化剤を送り込む前に、系における反応副生物の沈降のリスクが高まる。
【0008】
したがって、当技術分野から公知のオレフィンオリゴマー化生成物流を分離する方法は、効果が不十分であり、同時に高価であり、エネルギーを消費する方法である。
【0009】
この観点から、1つの大局的な目標は、オレフィンオリゴマー化反応生成物流を分離する効果的な方法であって、反応域外で進行する副反応を低減するための、良質で完全な触媒系不活性化、機器における沈降物の形成を排除し、分離用のパワー入力を低減するための、副生物ポリマーの予備濃縮及び系からのその除去を特徴とする、方法の開発である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7718838号
【文献】国際公開第2015179337号
【文献】ロシア特許第2104088号
【非特許文献】
【0011】
【文献】PERP Report Alpha Olefins 06/07-5、Nexant Inc.、2008、81~82頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、副生物ポリマーによって汚染された技術的機器の量を最小限に抑えることを可能にしつつ、オレフィンオリゴマー化反応生成物を分離する効果的な方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
技術的成果は、標的生成物及び循環溶媒(recurrent solvent)単離ユニットにおける副生物ポリマーの存在の排除、更に反応マスからの標的生成物及び溶媒の最大限の抽出、並びに重質画分(より高いオリゴマー化度の生成物の画分)、特に触媒系成分及び副生物ポリマーから精製されたС8+画分の取得にあり、オリゴマー化反応器を洗浄するためにС8+画分を使用することができる。
【0014】
追加の技術的成果は、循環溶媒への触媒系不活性化剤の移入の排除である。
【0015】
工程の1つがエバポレーター(evaporator:蒸発器)で行われる、オレフィンオリゴマー化反応生成物流を分離する方法の実現により、技術的課題が解決され、技術的成果が達成される。
【0016】
本発明の第1の実施態様によれば、オレフィンオリゴマー化生成物を分離する方法であって、次の一連の工程:
a) 反応マスをオリゴマー化反応器から排出させる工程と、
b) 反応マスを触媒系不活性化剤と接触させる工程と、
c) 初期オレフィンを含む画分を反応マスから単離して、オリゴマー化反応生成物流を形成する工程と、
d) エバポレーターにおいて、オリゴマー化反応生成物流を、標的α-オレフィンを主に含む画分と、副生物ポリマー及び触媒系成分の残渣を含む画分とに分離する工程と、
e) 工程d)において得られた標的α-オレフィンを主に含む画分を、軽質画分、特にС2~С4画分、標的α-オレフィンの画分、特にС6+画分、及びオリゴマーの重質画分、特にС8+画分に分離する工程と
を含む、方法が提案される。
【0017】
本発明の第2の実施態様によれば、オレフィンオリゴマー化生成物を分離する方法であって、次の一連の工程:
a) 反応マスをオリゴマー化反応器から排出させる工程と、
b) 反応マスを触媒系不活性化剤と接触させる工程と、
c) 初期オレフィン、特にエチレンを含む画分を反応マスから単離して、オリゴマー化反応生成物流を形成する工程と、
c)* 工程c)からのオリゴマー化反応生成物流の第1の部分を分離工程d)*に向け、工程c)からのオリゴマー化反応生成物流の第2の部分を工程d)に向ける工程と、
d)* 工程c)*からのオリゴマー化反応生成物流の第1の部分を、軽質画分、特にС2~С4画分、標的α-オレフィンの画分、特にС6+画分、及びオリゴマーの重質画分、特にС8+画分に分離し、次にオリゴマーの重質画分、特にC8+画分を工程d)に向ける工程と、
d) エバポレーターにおいて、工程d)*からのオリゴマーの重質画分、特にC8+画分と、オリゴマー化反応生成物流の第2の部分とを、標的α-オレフィンを主に含む画分、特にC6+と、副生物ポリマー及び触媒系成分の残渣を含む画分とに分離する工程と、
e) 工程d)において得られた標的α-オレフィンを主に含む画分、特にС6+を、軽質画分、特にС2~С4画分、標的α-オレフィンの画分、特にС6+画分、及びオリゴマーの重質画分、特にС8+画分に分離する工程と
を含む、方法が提案される。
【0018】
本発明は、副生物ポリマーによって汚染された技術的機器の量を最小限に抑えることができる。
【0019】
本発明の本質を開示する技術的解決策を明らかにするために、
図1、
図2及び
図3を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施態様による一連の工程を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第2の実施態様による一連の工程を示すブロック図である。
【
図3】比較例3による一連の工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実現するさまざまな態様の説明を更に提示する。
【0022】
本発明によれば、オレフィンのオリゴマー化方法は、オリゴマー化条件下で、初期オレフィンを含む原料を、1)クロム源;2)窒素含有リガンド;及び3)アルキルアルミニウムを含み、任意選択により亜鉛化合物を含む触媒系と相互作用させる工程を含む。
【0023】
本発明によれば、クロム源は、有機及び/又は無機クロム化合物とすることができる。化合物中のクロムの酸化状態はさまざまなことがあり、+1、+2、+3、+4、+5及び+6とすることができる。一般的な場合に、クロム源は、一般式CrXnの化合物(式中、Xは同じでも異なってもよく、nは整数1~6を表すことができる)である。Xは有機又は無機基とすることができる。
【0024】
有機基Xは、1~20個の炭素原子を有することができ、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アセチルアセトネート基、アミノ基、アミド基等を表すことができる。
【0025】
好適な無機基Xはハロゲニド、スルフェート等である。
【0026】
クロム源の例としては、塩化クロム(III)、酢酸クロム(III)、2-エチルヘキサン酸クロム(III)、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)ピロリド、酢酸クロム(II)、クロム(IV)ジオキシドジクロリド(CrO2Cl2)等が挙げられる。
【0027】
触媒系を構成する窒素含有リガンドは、ピロール環部分を含む有機化合物、すなわち1個の窒素原子を有する5員芳香族環である。好適な窒素含有リガンドは、ピロール、2,5-ジメチルピロール、リチウムピロリドC4H4NLi、2-エチルピロール、2-アリルピロール、インドール、2-メチルインドール、4,5,6,7-テトラヒドロインドールであるが、記載のものに限定されない。ピロール又は2,5-ジメチルピロールの使用が最も好ましい。
【0028】
アルキルアルミニウムは、アルキルアルミニウム化合物、更にはハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルキルアルミニウム化合物、及びそれらの混合物を表すことができる。触媒系の選択性を増加させるために、一般式AlR3、AlR2X、AlRX2、AlR2OR、AlRXOR及び/又はAl2R3X3(式中、Rはアルキル基であり、Xはハロゲン原子である)によって表される、水と接触していない(加水分解されていない)これらの化合物を使用することが好ましい。好適なアルキルアルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド及び/若しくはエチルアルミニウムセスキクロリド、又はそれらの混合物であるが、これらに限定されない。トリエチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウム(diethyaluminum)の混合物の使用が最も好ましい。
【0029】
本発明によれば、前記触媒系は、クロム源及び窒素含有リガンドを炭化水素溶媒中で混合し、次にそれらをアルキルアルミニウムと混合することによって得ることができる。この場合、例えばUHF又はSHF照射等のマイクロ波照射を使用して、アルキルアルミニウムを更に活性化することが好ましい。
【0030】
触媒系成分の混合は、当技術分野において公知である任意の方法で実施することができる。触媒系成分の混合は、1分~30分間、好ましくは2分間以上、4分間以上、8分間以上、15分間以上、又は25分間以上行われる。
【0031】
或いは、マイクロ波照射による活性化に供されたアルキルアルミニウムを、マイクロ波放射線に供された容器から直接に徐々に送り込んで他の触媒系成分と混合して、混合時間を、成分により獲得された特殊な特性がマイクロ波照射への曝露下で失われることのない任意の好都合な時間とすることができる。
【0032】
触媒系成分は任意の順序で混合することができる。好ましくは、アルキルアルミニウムは、クロム源と窒素含有リガンドの混合物に添加される。成分の混合は、先行技術により公知のいずれか好適なデバイス、例えばバブル装置、撹拌機、スタティックミキサーを備えた装置で炭化水素溶媒の存在下に行われる。
【0033】
好適な炭化水素溶媒は、ヘキセン-1、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、又はそれらの混合物であり、これらに限定されない。好ましくは、芳香族炭化水素が溶媒として使用され、これらの炭化水素は、触媒系の安定性の増大並びに高活性及び選択性触媒系の調製を促進する。好ましくは、芳香族炭化水素溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、又はそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましい芳香族炭化水素はエチルベンゼンである。
【0034】
触媒系を混合して得る工程の後で、炭化水素溶媒を混合物から除去することができる。当技術分野により公知のように(例えば、ロシア特許第2104088号)、オリゴマー化プロセスにおいて反応混合物中に芳香族炭化水素が存在することによって、触媒系の活性が低減され、ポリマー等の副生物の量が増加し得る。溶媒の除去は、任意の公知の方法、例えば希薄状態を作り出すこと(真空化)によって行うことができる。しかし、溶媒の除去は必ずしも必要とは限らないことに留意すべきである。すなわち、オレフィンオリゴマー化プロセスを高温で実施する場合には、不飽和炭化水素溶媒(例えば、エチルベンゼン)は触媒系の高温における安定性を増大させるので、この指定された溶媒の存在が好ましいであろう。
【0035】
アルキルアルミニウムのマイクロ波照射曝露は、化合物自体の形態、好ましくは液体凝集体の状態でも、炭化水素溶媒中、例えばヘキサン、シクロヘキサン、C10~C12炭化水素画分中の溶液の形態でも実施することができる。
【0036】
放射線曝露の間、活性化に供される触媒系成分は、マイクロ波照射が通過する容器、例えばガラス、フッ素プラスチック、及びポリプロピレンで作製された容器に配置される必要がある。
【0037】
使用されるマイクロ波照射は、0.2~20GHzの範囲の周波数を有することができる。無線障害を引き起こさず、家庭及び工業的マイクロ波照射源において広く使用されている、周波数2.45GHzのマイクロ波照射の使用は特に好ましい。
【0038】
公称のマイクロ波照射パワーは、元素アルミニウムに関して使用されたアルミニウムアルキル1g当たり1~5000Wである。
【0039】
最高の成果を達成するために、照射時間は20秒~20分間、好ましくは15分間であると好ましい。20分を超える曝露時間は、通常、得られる触媒系の特性に追加の利点を与えない。20秒未満の曝露時間は、活性化を施す成分の特性の重要な変更をもたらすのに不十分なことがあり、得られる触媒系の活性及び/又は選択性の増大が不十分になる。
【0040】
マイクロ波照射(マイクロ波照射)によって活性化されたアルキルアルミニウムと、クロム源及び窒素含有リガンドとの混合は、曝露の終止後3分以下、好ましくは曝露の終止後1分以下実施される。
【0041】
照射されたアルキルアルミニウムと、クロム源及び窒素含有リガンドとを混合する間の時間が3分以上である場合、得られた触媒系の特性は、同じ混合時間が1分未満である系と比較して有意に低下する。
【0042】
触媒系成分の比はさまざまでありうる。アルミニウム:クロムのモル比は、5:1~500:1、好ましくは10:1~100:1、最も好ましくは20:1~50:1でありうる。リガンド:クロムのモル比は、2:1から50:1まで、好ましくは2.5:1から5:1までありうる。
【0043】
以上に示されたように、本発明によるオレフィンオリゴマー化方法は、オリゴマー化条件下に、初期オレフィンを含む原料を、触媒系及び任意選択により亜鉛化合物の存在下で相互作用させることによって実施することができる。
【0044】
亜鉛化合物は、個々の化合物の形態でも、他の化合物との混合物、例えば炭化水素の溶液の形態でも使用することができる。
【0045】
亜鉛化合物又はこれらの化合物の混合物は、触媒系にその調製工程で添加することができ、あるいは独立してオリゴマー化反応器に直接添加することができる。
【0046】
亜鉛化合物は、触媒中心、特にクロムの追加の活性化物質として使用される。亜鉛化合物は、その安定性を増大させるために、好ましくは可視光線及びUV線の非存在下で使用される。
【0047】
亜鉛化合物は、金属亜鉛、亜鉛-銅カップル、活性亜鉛、アルキル亜鉛化合物、特にジメチル、ジエチル及びジブチル亜鉛、ジフェニル及びジトリル亜鉛等のアリール亜鉛化合物、亜鉛アミド、特に亜鉛ピロリド及び亜鉛ポルフィリン複合体、亜鉛の酸素化物(zinc oxygenate)(ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化酢酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、及び他のカルボン酸亜鉛を含む)、ハロゲン化亜鉛、特に無水塩化亜鉛、又はそれらの組合せを表すことができる。オリゴマー化方法において使用される溶媒に可溶な亜鉛化合物を使用することが好ましい。
【0048】
亜鉛:クロム比はさまざまであってよく、2:1~100:1、好ましくは5:1~50:1とすることができる。
【0049】
本発明に従って調製された触媒系は、希釈又は無希釈の形態で、当技術分野において公知である任意の方法によって、オリゴマー化反応器に送り込まれる。触媒系を炭化水素希釈剤で希釈することが好ましい。上述した理由により、飽和炭化水素溶媒又はそれらの混合物での希釈物を使用することが特に好ましい。しかし、芳香族化合物の含有量は2質量%を超えないことが好ましい。
【0050】
例えば、アルカン、シクロアルカン、異なるアルカン及/又はシクロアルカンの混合物等の炭化水素溶媒が、オリゴマー化方法における溶媒として使用される。炭化水素溶媒は、オレフィン又は芳香族化合物等の不飽和炭化水素も含むことができる。好適な炭化水素溶媒又は溶媒成分は、ヘプタン、シクロヘキサン、デカン、ウンデカン、イソデカン画分、ヘキセン-1である。好ましくは、ヘプタン、シクロヘキサン、ウンデカンが溶媒として使用される。より好ましくは、シクロヘキサン又はヘプタンが使用される。
【0051】
オレフィンオリゴマー化方法における初期オレフィンとして、エチレン(エテン)、プロピレン(プロペン)及びブチレン(ブテン)によって表されるオレフィンが使用される。好ましくは、エチレン(エテン)が初期オレフィンとして使用される。
【0052】
オレフィンオリゴマー化方法は、オリゴマー化生成物、すなわち高級オレフィンを生成するために実施される。工業的に重要な方法は、エチレンからα-オレフィン等のオリゴマー化生成物を生成する方法である。α-オレフィンは、α位に炭素-炭素二重(C=C)結合を有する化合物である。
【0053】
オリゴマー化方法において得られるα-オレフィンは、さまざまなС4~С40オレフィン及びそれらの混合物を含むことができる。例えば、エチレンオリゴマー化方法において得られたα-オレフィンは、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1、ドデセン-1、高級α-オレフィン、又はそれらの混合物を表すことができる。好ましくは、オリゴマー化方法は、標的α-オレフィン、すなわちヘキセン-1を得るためのエチレン三量体化方法である。
【0054】
オリゴマー化方法は、当技術分野において公知である任意の反応器において行うことができる。好適な反応器は、連続撹拌反応器、回分反応器、プラグフロー反応器、及び管型反応器である。反応器は、気液反応器、例えば撹拌機を備えたオートクレーブ、供給気体及び液体を並流又は向流として備えた気泡塔(バブル反応器)、更にはバブルガスリフト反応器とすることができる。
【0055】
本方法の好ましい実施態様において、オリゴマー化方法がヘキセン-1を生成するためのエチレン三量体化方法であるとき、エチレン圧は、1~200atm、好ましくは10~60atm、最も好ましくは15~40atmの範囲でさまざまである。オリゴマー化速度を加速するためにエチレン圧を増加させることが好ましい。
【0056】
オリゴマー化方法の温度は、0~160℃、好ましくは40~130℃の範囲でさまざまでありうる。反応器の温度を80~120℃の範囲に維持することが最も好ましい。この温度において、副生物ポリマー、特にポリエチレンは、溶液から沈殿しない、すなわち反応器から溶液の形で除去され、触媒系は、最も活性的で選択的である。オリゴマー化方法を(160℃を超える)高温で行うと、触媒系が不活性化されうる。
【0057】
提案方法によれば、反応時間はさまざまでありうる。反応時間は、オリゴマー化の反応域における原料及び溶媒の滞留時間と定義することができる。連続流槽反応器を使用するとき、反応時間は平均滞留時間と定義することができる。反応時間は、本方法の原料として使用されるオレフィン、反応温度、圧力及び他のパラメータに応じてさまざまでありうる。本方法の実施態様において、反応時間は24時間を超えない。反応時間は、12時間未満、6時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、30分未満、15分未満、10分未満とすることができる。最も好ましい反応時間は30分~90分である。
【0058】
提案方法によれば、オレフィン及び触媒系は、オリゴマー化反応器に送り込まれ、希釈剤として使用される水素と接触することができる。水素は、オリゴマー化反応を促進し、かつ/又は有機金属触媒の活性を増大させることができる。更に、水素は、副生物として生成されるポリマーの量を減少させ、それによって、副生物ポリマーが装置の壁上に被着するのを制限することができる。
【0059】
オレフィンオリゴマー化方法は、水及び酸素の非存在下で行われる。
【0060】
初期オレフィン、溶媒及び触媒系は、任意の順序でオリゴマー化反応器に導入されうる。好ましくは、成分は、溶媒、次いで触媒系の順序で導入され、次に初期オレフィンを投入する。
【0061】
本発明によれば、反応器から出る反応マスは、初期オレフィン、触媒系、初期α-オレフィンの標的オリゴマーである標的α-オレフィン、副生物、溶媒、更にはオリゴマー化方法の間に形成されうる副生物ポリマーを含有しうる。
【0062】
標的α-オレフィンは、標的α-オレフィンの異性体を含むことができ、標的α-オレフィンと対応する異性体との質量比は、少なくとも99.5:0.5とするべきである。
【0063】
工程b)において反応器から出る反応マスは、触媒系不活性化剤と接触して、触媒系の残渣を含む反応マスを生成する。
【0064】
当技術分野において公知である好適な触媒系不活性化剤は、水、アルコール、アミン、アミノアルコール、又はそれらの混合物、更にはシリカゲル、アルミナ、アルミノシリケート、又はそれらの水、アルコール、アミン、及びアミノアルコールとの混合物等さまざまな収着剤である。アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの混合物を使用することができる。好適なアミンの例は、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ピペラジン、ピリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、又はそれらの混合物である。アミノアルコールの例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0065】
好ましくは2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、より好ましくは2-エチルヘキサノール等のアルコール又はアミノアルコールが、触媒系不活性化剤として使用される。
【0066】
触媒系不活性化剤の投与は、オリゴマー化反応器からの反応マスのアウトプットラインで行われる。好ましくは、不活性化剤の入口点は、オリゴマー化反応器の近くに位置している。オリゴマー化反応器からの反応マスの望ましいアウトプットラインは、副生物ポリマーの沈殿を避けるために、最小の停滞域数を有し、流体抵抗を低減して、触媒系の不活性化の効率を上昇させるべきである。或いは、触媒系不活性化剤は、初期オレフィンを含有する画分を反応マスから単離する工程c)が行われる装置に導入されてもよい。
【0067】
触媒系の不活性化後、触媒系の残渣を含有する反応マスは、初期オレフィンを単離する工程c)に入る。
【0068】
工程c)において、初期オレフィンを含有する軽質画分は、触媒系の残渣を含有する反応マスから単離されて、オリゴマー化反応生成物流が形成される。
【0069】
初期オレフィンを含有する軽質画分は、先行技術により公知のいずれか好適な機器で反応マスから単離される。そのような機器の例は、回分又は連続沈降機、例えばオーバフロー壁を備えた沈降機であるが、これらに限定されない。沈降機のサイズ及び形状は、副生物ポリマーの懸濁液の濃度及び被着速度に依存する。
【0070】
沈降速度は、副生物ポリマーの懸濁液の温度が変化する間に、その粘度が変化するので温度に依存する。
【0071】
単離プロセスは、60~120℃、好ましくは70~110℃、より好ましくは80~110℃の温度、及び0~60atm、好ましくは0~40atm、より好ましくは0~30atmの圧力で実施される。
【0072】
工程c)において単離された初期オレフィンを含む画分は、ブテン-1及びブテン-2を含むC4画分も2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下の量で含みうる。
【0073】
工程c)において単離された初期オレフィンを含む画分は、オリゴマー化反応器内に再循環されうる。
【0074】
オリゴマー化生成物流は、工程c)において沈降されることもあり、その工程で、副生物ポリマー及び触媒系の残渣が沈降機の底部で濃縮されることが観察されて、オリゴマー化反応生成物の清澄部分が生成され、前記清澄部分は少量の触媒系及び副生物ポリマーを含有し、オリゴマー化反応生成物の濃縮部分は、副生物ポリマー及び触媒系残渣の主部分を含有する。
【0075】
本発明の第1の実施態様によれば、工程c)からのオリゴマー化反応生成物流は、オリゴマー化反応生成物流を、オリゴマー、特にC6+を主に含む画分と、副生物ポリマー及び触媒系残渣を含む画分とに分離する工程d)に向けられる。
【0076】
本発明によれば、分離する工程d)は、エバポレーターで実施される。エバポレーターは、薄膜エバポレーターやロータリーフィルムエバポレーター等の垂直型装置とすることができるが、これらに限定されない。好ましくは、ロータリーフィルムエバポレーターが使用される。
【0077】
エバポレーターでの分離プロセスは、64~175℃の温度、より好ましくは80~150℃の温度、及び0~6atm、好ましくは0~3atm、より好ましくは0~2atmのゲージ圧で実施される。
【0078】
オリゴマー、特にC6+を主に含有する工程d)において得られた画分は、20~25質量%の量の標的α-オレフィン、好ましくはヘキセン-1、1質量%以下の量の軽質画分、特にC2~C4画分の残渣、73~79質量%の量の溶媒、及び2質量%以下の量の重質画分、特にC8+画分を含む。
【0079】
副生物ポリマー及び触媒系残渣を含有する工程d)において得られる画分は、副生物ポリマー及び触媒系残渣をオリゴマー化反応生成物に懸濁させた懸濁液であり、触媒系不活性化剤も含有する。
【0080】
分離後、C6+を主に含有する画分は、軽質画分、特にC2~C4画分、標的α-オレフィンの画分、特にC6+画分、及びオリゴマーの重質画分、特にC8+画分の、3つの画分に分離する工程e)に向けられる。
【0081】
工程e)は、先行技術により公知のいずれか好適な装置で実施される。そのような装置の例は、蒸発塔、さまざまなタイプの接触デバイスを装備した分離塔であるが、これらに限定されない。
【0082】
工程e)における分離プロセスは、64~140℃の温度、より好ましくは64~120℃の温度、及び0~4atm、好ましくは0~3atm、より好ましくは0~2atmの圧力で実施される。
【0083】
工程e)において得られた軽質画分、特にC2~C4画分は、初期オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1及びブテン-2を含む。望ましい軽質画分、特にC2~C4は、必要ならオリゴマー化反応器に戻される。
【0084】
工程e)において得られた標的α-オレフィンの画分、特にC6+画分は、21~27質量%の量の標的α-オレフィン、好ましくはヘキセン-1、及び溶媒を含む。標的α-オレフィンの画分(特に、C6+画分)は、0.25質量%の量のC8オレフィン及び0.5質量%以下の量のC10オレフィンも含む。次いで、オリゴマー画分(C6+画分)は、標的α-オレフィン、好ましくはヘキセン-1の単離工程に向けられる。
【0085】
工程e)で得られたオリゴマーの重質画分、特にC8+画分は、オクテン-1を含めてC8オレフィン、C10オレフィン、特にデセンを含む。
【0086】
次いで、オリゴマーの重質画分(特に、C8+画分)は、標的α-オレフィンの画分(特に、C6+画分)と共に標的α-オレフィンの単離工程に、又は標的α-オレフィンの単離工程及び工程d)におけるエバポレーターに向けられる。
【0087】
標的α-オレフィンを単離する工程は、充填式又はプレート型蒸留塔において実施される。標的α-オレフィンの画分中の標的α-オレフィン、好ましくはヘキセン-1の含有量は、少なくとも95質量%、好ましくは97質量%、より好ましくは99質量%である。標的α-オレフィンの単離後に残された底部生成物は、溶媒単離工程に向けられる。
【0088】
溶媒単離工程は、ノズル又はディスク蒸留塔において実施される。好ましくは、この工程で単離された溶媒は、反応器に再循環される(循環溶媒)。循環溶媒の純度は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%である。
【0089】
循環溶媒の単離工程の底部生成物は、95~99質量%の量のオクテン、0.5~4.7質量%の量のデセン、及び2質量%以下の量の溶媒を主に含むオリゴマーの重質画分(特に、C8+画分)である。更に、望ましい底部生成物は、少量の触媒系不活性化剤を含むことができるが、その量は、0.005質量%、好ましくは0.002質量%、より好ましくは0.0005質量%を超えるべきではない。オリゴマーの望ましい重質画分(C8+画分)は、反応機器の副生物ポリマー及び触媒系残渣の沈降物を清掃するために反応機器を洗浄するのに使用されうる。
【0090】
本発明の第2の実施態様によれば、工程c)からのオリゴマー化反応生成物流が工程c*)に向けられ、オリゴマー化反応生成物流の第1の部分は工程c)から分離工程d)*に向けられ、オリゴマー化反応生成物流の第2の部分は工程c)から工程d)に向けられる。
【0091】
工程d)*では、工程c)*からのオリゴマー化反応生成物流の第1の部分を、軽質画分、特にC2~C4画分、標的α-オレフィンの画分、特にC6+画分、及びオリゴマーの重質画分、特にC8+画分に分離し、次に重質画分(特にC8+画分)を工程d)に向ける。
【0092】
本発明によれば、工程d)*は、工程e)と一緒に実施される。
【0093】
工程d)*及びe)は、先行技術により公知のいずれか好適な装置で実施される。そのようなデバイスの例は、蒸発塔、さまざまなタイプの接触デバイスを装備した分離塔であるが、これらに限定されない。
【0094】
工程d)*及びe)における分離プロセスは、64~140℃の温度、より好ましくは64~120℃の温度、及び0~4atm、好ましくは0~3atm、より好ましくは0~最大2atmのゲージ圧で実施される。
【0095】
工程d)*及びe)において得られる軽質画分、特にC2~C4画分は、初期オレフィン、好ましくはエチレン、並びにブテン-1及びブテン-2を含む。軽質画分(特に、C2~C4画分)は、必要に応じてオリゴマー化反応器に再循環される。
【0096】
工程d)*及びe)において得られた標的α-オレフィンの画分、特にC6+画分は、21~27質量%の量の標的α-オレフィン、好ましくはヘキセン-1、及び溶媒を含む。C6+画分は、0.25質量%の量のC8オレフィン及び0.5質量%以下の量のC10オレフィンも含有する。次いで、標的α-オレフィンの画分(特に、C6+画分)は、標的α-オレフィン、好ましくはヘキセン-1の単離工程に向けられる。
【0097】
工程d)*及びe)において得られたオリゴマーの重質画分、特にC8+画分は、オクテン-1を含めてC8オレフィン、C10オレフィン、特にデセンを含有する。次いで、オリゴマーの重質画分(特に、C8+画分)は、標的α-オレフィンの単離工程、又は標的α-オレフィンの単離工程及び工程d)のエバポレーターに向けられる。
【0098】
本発明によれば、分離工程d)は、エバポレーターで実施される。エバポレーターは、薄膜エバポレーター、ロータリーフィルムエバポレーター等の垂直型装置でありうるが、これらに限定されない。好ましくは、ロータリーフィルムエバポレーターが使用される。
【0099】
エバポレーターでの分離プロセスは、64~175℃の温度、より好ましくは80~150℃の温度、及び0~6atm、好ましくは0~3atm、より好ましくは0~2atmの圧力で実施される。
【0100】
工程d)において得られる標的α-オレフィンの画分、特にC6+を主に含有する画分は、20~25質量%の量のα-オレフィン、好ましくはヘキセン-1の標的オリゴマー、1質量%以下の量の軽質画分、好ましくはC2~C4画分の残渣、73~79質量%の量の溶媒、及び2質量%以下の量のオリゴマーの重質画分(特に、C8+画分)を含む。
【0101】
副生物ポリマー及び触媒系残渣を含有する工程d)において得られる画分は、副生物ポリマー及び触媒系残渣をオリゴマー化反応生成物に懸濁させた懸濁液であり、触媒系不活性化剤も含有する。
【0102】
分離後、標的α-オレフィンの画分、特にC6+を主に含有する画分は、軽質画分、特にC2~C4画分、標的α-オレフィンの画分、特にC6+画分、及びオリゴマーの重質画分、特にC8+画分の3つの画分に分離する、工程e)に向けられる。
【0103】
溶媒の単離工程は、充填式又はプレート型蒸留塔において実施される。好ましくは、この工程で単離された溶媒は、反応器に再循環される(循環溶媒)。循環溶媒の純度は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%である。
【0104】
循環溶媒の単離工程の底部生成物は、17質量%以下の量のオクテン、最大81質量%の量のデセン、及び2質量%以下の量の溶媒を主に含有するオリゴマーの重質画分(特に、C8+画分)である。更に、望ましい底部生成物は、少量の触媒系不活性化剤を含有することができるが、その量は、0.005質量%、好ましくは0.002質量%、より好ましくは0.0005質量%を超えるべきではない。反応機器の副生物ポリマー及び触媒系残渣の沈降物を清掃するために、この指定されたC8+画分を使用して、反応機器を洗浄することができる。
【0105】
より詳細に、本発明の第1の実施態様によるオリゴマー化生成物を分離する方法の実装と共にオレフィンオリゴマー化方法のフローチャートを提示する
図1で、本発明の実施態様の1つを説明する。
図1に従って、101はオリゴマー化反応器であり、102は沈降機であり、103は工程d)におけるエバポレーターであり、104は工程e)における分離器であり、105は標的α-オレフィンの単離塔であり、106は循環溶媒の単離塔である。
【0106】
提示された方法によれば、初期オレフィン、好ましくはエチレン、溶媒及び触媒系(1)が、オリゴマー化反応器101に送り込まれる。次に、オリゴマー化反応時において得られ、オリゴマー化反応器を出る反応マス(2)を、触媒系の不活性化剤(3)と接触させて、触媒系残渣を含有する反応マスを得る。その後、触媒系残渣を含有する反応マスは沈降機102に入って、初期オレフィンを含有する画分(4)が単離され、オリゴマー化反応生成物流(5)が形成される。初期オレフィンを含有する画分(4)は、オリゴマー化反応器に任意選択により再循環される。次に、オリゴマー化反応生成物流(5)はエバポレーター103に送り込まれ、オリゴマー化反応生成物流が、標的α-オレフィンの画分、特にC6+を主に含有する画分(6)と副生物ポリマー及び触媒系残渣を含有する画分(7)とに分離される。その後、C6+を主に含有する標的α-オレフィンの画分(6)は、C2~C4画分(8)、C6+画分(11)及びC8+画分(流れ(9)及び/又は(10))の3つの画分に分離するための分離装置104に送り込まれる。次いで、C8+画分(9)はC6+画分(11)と共に、105における標的α-オレフィン(12)の単離工程に向けられ、又はC8+画分(10)はC6+画分(11)と共に、105における標的α-オレフィン(12)の単離工程に向けられ、C8+画分(10)はエバポレーター103に送り込まれる。標的α-オレフィン(12)の単離後に残存している底部生成物(13)は、106における溶媒の単離工程に向けられて、循環溶媒(14)及びC8+画分を含有する底部生成物(15)が得られる。
【0107】
本発明の第2の実施態様によるオリゴマー化生成物を分離する方法の実装と共にオレフィンオリゴマー化方法のフローチャートを提示する
図2で、本発明の第2の実施態様をより詳細に説明する。
図2に従って、101はオリゴマー化反応器であり、102は沈降機であり、103は工程d)におけるエバポレーターであり、104は工程e)における分離器であり、105は標的α-オレフィンの単離塔であり、106は循環溶媒の単離塔である。
【0108】
提示された方法によれば、初期オレフィン(好ましくはエチレン)、溶媒及び触媒系(1)が、オリゴマー化反応器101に送り込まれる。次に、オリゴマー化反応時において得られ、オリゴマー化反応器を出る反応マス(2)を、触媒系の不活性化剤(3)と接触させて、触媒系残渣を含有する反応マスを得る。その後、触媒系残渣を含有する反応マスは沈降機102に入って、初期オレフィンを含有する画分(4)が単離され、オリゴマー化反応生成物流が形成され、2つの流れ(5)及び(6)に分離される。初期オレフィンを含有する画分(4)は、オリゴマー化反応器に任意選択により再循環される。次に、オリゴマー化反応生成物流の第1の部分(5)は分離器104に送り込まれて、C2~C4画分(7)、C6+画分(8)及びC8+画分(9)の3つの画分に分離される。オリゴマー化反応生成物流の第2の部分はエバポレーター103に送り込まれ、オリゴマー化反応生成物流が、C6+を主に含有する標的α-オレフィンの画分(10)と副生物ポリマー及び触媒系残渣を含有する画分(12)とに分離される。その後、C6+を主に含有する標的α-オレフィンの画分(10)は、C2~C4画分(7)、C6+画分(8)及びC8+画分(流れ(9)及び/又は(11))の3つの画分に分離するための分離器104に送り込まれる。次いで、C8+画分(11)はC6+画分(8)と共に、105における標的α-オレフィン(13)の単離工程に向けられ、又はC6+画分(8)は105における標的α-オレフィン(13)の単離工程に向けられ、C8+画分(9)はエバポレーター103に送り込まれる。標的α-オレフィン(13)の単離後に残存している底部生成物(14)は、106における溶媒の単離工程に向けられて、循環溶媒(15)及びC8+画分を含有する底部生成物(16)が得られる。
【0109】
図1及び
図2に提示されたスキームは、本発明の実施態様の例であり、本発明を限定しない。
【0110】
以下の実施例を参照して、本発明を更に詳細に記載する。これらの実施例は、本発明を説明するために記載されているに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0111】
本発明の実施態様
溶媒-シクロヘキサン
触媒系:
1)クロム源-2-エチルヘキサン酸クロム(III)、
2)リガンド-2,5-ジメチルピロール、
3)アルキルアルミニウム-トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロリドの混合物。
【0112】
触媒系不活性化剤は2-エチルヘキサノールである。
【実施例1】
【0113】
第1の実施態様によるエチレンオリゴマー化反応生成物流の分離
90℃の温度に予熱されたシクロヘキサン、70℃の温度に予熱されたエチレン、及び触媒系は、定量ポンプによって25atmの圧力で操作するオリゴマー化反応器に入る。
【0114】
エチレンのヘキセン-1へのオリゴマー化方法は、100~120℃の温度及び25atmの圧力で約50%のエチレン変換度まで実施される。この反応は発熱性反応であり、オリゴマー化反応器冷却システムの使用を必要とする。
【0115】
反応器は、三量体化反応の熱を取り除くのに必要な量の埋込み管巣を備えた垂直型熱交換器である。冷却剤が反応器のシェル側に送り込まれる。主にエチレンからなる気体は、液体の反応マスから分離され、反応器の分離部の最上部に位置している別個のパイプスタブを通して排出され、熱交換器に入り、冷却剤で冷却され、部分凝縮する。
【0116】
次に、液体の反応マスは、重力によって、2つのコレクターを通して未反応エチレンと水素の部分分離用に設計された沈降機に送り込まれる。
【0117】
オリゴマー化反応後に触媒系を不活性化するために、触媒系不活性化剤2-エチルヘキサノールは、反応マスが沈降機に入る前に、定量ポンプによって反応器の後ろのマニホールドに送り込まれる。
【0118】
沈降機において、未反応エチレンは排出され、圧縮ユニットを通してオリゴマー化反応器に再循環される。触媒系残渣を含有する反応マスはロータリーフィルムエバポレーターに入り、副生物ポリマー、特にポリエチレン、触媒系残渣、及び触媒系不活性化剤が分離される。ロータリーフィルムエバポレーターは、150℃の温度及び0.05~0.1atmの圧力で操作する。
【0119】
副生物ポリマー、特にポリエチレン、触媒系残渣及び触媒系不活性化剤から精製された、ロータリーフィルムエバポレーターからの反応マスは、蒸発塔に入る。蒸発塔は、64℃~140℃の温度及び3.5atmのゲージ圧で操作する。
【0120】
蒸発塔において、反応マスは以下の3つの流れに分離される。
- C2~C4画分;
- ヘキセン-1の単離工程に送られるC6+画分;
- ロータリーフィルムエバポレーターに一部戻され、標的生成物の単離工程に一部向けられるC8+画分。
【0121】
ヘキセン-1の単離は、充填式蒸留塔において70~100℃の温度及び2atmのゲージ圧で実施される。
【0122】
次に、ヘキセン-1の単離後に残存しているC6+画分は、循環溶媒の単離工程に送り込まれる。
【0123】
循環溶媒の単離工程は、充填式蒸留塔において80~140℃の温度及び2atmのゲージ圧で実施される。
【0124】
流れの組成をTable 1(表1)に提示する。
【実施例2】
【0125】
第2の実施態様によるエチレンオリゴマー化反応生成物流の分離
90℃の温度に予熱されたシクロヘキサン、70℃の温度に予熱されたエチレン、及び触媒系は、定量ポンプによって25atmの圧力で操作するオリゴマー化反応器に入る。
【0126】
エチレンのヘキセン-1へのオリゴマー化方法は、100~120℃の温度及び25atmの圧力で約50%のエチレン変換度まで実施される。この反応は発熱性反応であり、オリゴマー化反応器冷却システムの使用を必要とする。
【0127】
反応器は、三量体化反応の熱を取り除くのに必要な量の埋込み管巣を備えた垂直型熱交換器である。冷却剤が反応器のシェル空間に送り込まれる。主にエチレンからなる気体は、液体の反応マスから分離され、反応器の分離部の最上部に位置している別個のパイプスタブを通して排出され、熱交換器に入り、冷却剤で冷却され、部分凝縮する。
【0128】
次に、反応マスは、重力によって、2つのコレクターを通して未反応エチレンと(使用されているとき)任意選択により水素の部分分離用に設計された沈降機に送り込まれる。
【0129】
オリゴマー化反応後に触媒系を不活性化するために、触媒系不活性化剤である2-エチルヘキサノールは、反応マスが沈降機に入る前に、定量ポンプによって反応器の後ろのマニホールドに送り込まれる。
【0130】
沈降機において、未反応エチレンは排出され、圧縮ユニットを通してオリゴマー化反応器に再循環される。また、沈降機において、副生物ポリマー及び触媒系残渣が装置の底部で濃縮され、したがって反応マスの清澄部分及び反応マスの濃縮部分が形成する。
【0131】
沈降機の上部からの反応マスの清澄部分は蒸発塔に入る。蒸発塔は、64℃~140℃の温度及び3.5atmのゲージ圧で操作する。
【0132】
蒸発塔において、反応マスは以下の3つの流れに分離される。
- C2~C4画分;
- ヘキセン-1の単離工程に送られるC6+画分;
- ロータリーフィルムエバポレーターに一部戻され、標的生成物の単離工程に一部向けられるC8+画分。
【0133】
ヘキセン-1の単離は、充填式蒸留塔において70~100℃の温度及び2atmのゲージ圧で実施される。
【0134】
次に、ヘキセン-1の単離後に残存しているC6+画分は、循環溶媒の単離工程に送り込まれる。
【0135】
循環溶媒の単離工程は、充填式蒸留塔(packed column)において80~140℃の温度及び2atmのゲージ圧で実施される。
【0136】
C8+画分はロータリーフィルムエバポレーターに送り込まれ、C8+画分の追加の分離が行われ、C8+画分は蒸発塔に戻され、更にまたC6+画分の一般的な流れと、ヘキセン-1の単離工程に送られる。ロータリーフィルムエバポレーターは、150℃の温度及び0.05~0.1atmの圧力で操作する。
【0137】
副生物ポリマー及び触媒系残渣を含有する反応マスの濃縮部分はロータリーフィルムエバポレーターに入り、副生物ポリマー、特にポリエチレン、触媒系残渣及び触媒系不活性化剤が分離される。
【0138】
ロータリーフィルムエバポレーターからの、副生物ポリマー、特にポリエチレン、触媒系残渣及び触媒系不活性化剤から精製された反応マスは、蒸発塔に入る。蒸発塔は、64℃~140℃の温度及び3.5atmのゲージ圧で操作する。
【0139】
流れの組成をTable 2(表2)に提示する。
【0140】
実施例1及び2に概要を記すように、オリゴマー化反応生成物流を分離する方法を使用するとき、標的生成物の単離工程〔Table 1(表1)、装置105からの市販用ヘキサン-1流(12)、及びTable 2(表2)、装置105からの市販用ヘキセン-1流(13)を参照のこと、副生物ポリマーの含有量は0質量%である〕及び循環溶媒の単離工程〔Table 1(表1)、装置106からの循環溶媒流(14)、及びTable 2(表2)、装置106からの循環溶媒流(15)、副生物ポリマーの含有量は0質量%である〕において副生物ポリマーの存在は排除され;反応マスからのヘキセン-1〔市販用ヘキセン-1流(12)中のヘキセン-1の含有量(Table 1(表1)を参照のこと)、及び市販用ヘキセン-1流(13)中のヘキセン-1の含有量(Table 2(表2)を参照のこと)は99.01質量%である〕及び循環溶媒〔循環溶媒流(14)(Table 1(表1)を参照のこと)及び循環溶媒流(15)(Table 2(表2)を参照のこと)中のシクロヘキサン含有量は99.5質量%である〕の最大抽出が確実となり;触媒系成分及び副生物ポリマーから精製されたC8+画分の取得〔副生物ポリマー及び触媒系残渣の含有量は、C8+画分流(15)(Table 1(表1))及びC8+画分流(16)(Table 2(表2))において0質量%である〕が実現され、オリゴマー化反応器を洗浄するためにC8+画分の使用が可能になる。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【実施例3】
【0145】
(比較)
工程d)を使用しないエチレンオリゴマー化反応生成物流の分離
実施例3による工程の順序を
図3で詳細に提示する。
【0146】
90℃の温度に予熱されたシクロヘキサン、70℃の温度に予熱されたエチレン、及び触媒系は、投入ポンプポンプによって25atmの圧力で操作するオリゴマー化反応器(201)に送り込まれる(1)。
【0147】
エチレンのヘキセン-1へのオリゴマー化方法は、100~120℃の温度及び25atmの圧力で約50%のエチレン変換度まで実施される。この反応は発熱性反応であり、オリゴマー化反応器冷却システムの使用を必要とする。
【0148】
反応器は、三量体化反応の熱を取り除くのに必要な量の埋込み管巣を備えた垂直型熱交換器である。冷却剤が反応器のシェル空間に送り込まれる。主にエチレンからなる気体は、液体の反応マスから分離され、反応器の分離部の最上部に位置している別個のパイプスタブを通して排出され、熱交換器に送られ、冷却剤で冷却され、部分凝縮する。
【0149】
次に、反応マス(2)は、重力によって、2つのコレクターを通して未反応エチレン(4)と(使用されているとき)任意選択により水素の部分分離用に設計された沈降機(202)に送り込まれる。
【0150】
オリゴマー化反応後に触媒系を不活性化するために、触媒系不活性化剤である2-エチルヘキサノールは、反応マスが沈降機に入る前に、定量ポンプによって反応器の後ろのマニホールドに送り込まれる。
【0151】
触媒系残渣を含有する反応マス(5)は、副生物ポリマー及び触媒系残渣を分離する濾過システム(203)に入る。
【0152】
濾過システムを通過した後、反応マス(7)は蒸留塔(204)に入る。蒸留塔は、エチレン及び水素(8)を反応マスから単離するように設計されている。
【0153】
更に、蒸留塔の底部からのエチレン及び水素から精製された反応マス(9)は、標的生成物、すなわちヘキセン-1を単離するための蒸留塔(205)に送り込まれる。ヘキセン-1の単離は、充填式蒸留塔において70~100℃の温度及び2atmのゲージ圧で行われる。塔の上部において、ヘキセン-1(10)は単離され、底部生成物(11)は循環溶媒(12)を単離するための蒸留塔(206)に入る。循環溶媒の単離工程は、充填式蒸留塔において80~140℃の温度及び2atmのゲージ圧で実施される。
【0154】
同時に、プラント起動時に、蒸留塔及びそれらの構成要素を含めて機器の壁への副生物ポリマーの被着がほとんど直ちに起こり、塔の操作効率の急激な低減が起こり、流れの組成及び機器操作の質に関して信頼できるデータを得ることができない。
【0155】
したがって、反応マスと溶解している副生物ポリマーの沈降機中での滞留時間が不十分であるために、副生物ポリマーの大部分(流れ全体の塊の0.5質量%まで)はエチレン及び水素の単離塔に入り、更にヘキセン-1及び循環溶媒を単離する塔に入り、副生物ポリマーによる目詰まりのためにポンピング機器の定期的な運転停止を引き起こす(1日当たり1回又は複数回)。副生物ポリマーの一部分も蒸留塔の充填区域に入り、充填物構成要素の表面に沈殿し、したがって反応マスの分離効率が急激に低下し、そのため、生成物の質を最大20%低減することによって所望の質の循環溶媒を単離することができ、又は所望の質の標的生成物及び最大20%の生成物を含有する溶媒を単離することができ、更には蒸留塔生産性が最大50%低減する。
【符号の説明】
【0156】
1 初期オレフィン、溶媒及び触媒系(
図1及び
図2)、90℃の温度に予熱されたシクロヘキサン、70℃の温度に予熱されたエチレン、及び触媒系(
図3)
2 反応マス
3 不活性化剤
4 画分(
図1及び
図2)、未反応エチレン(
図3)
5 オリゴマー化反応生成物流(
図1)、流れ(
図2)、反応マス(
図3)
6 画分(
図1)、流れ(
図2)
7 画分(
図1)、C2~C4画分(
図2)、反応マス(
図3)
8 C2~C4画分(
図1)、C6+画分(
図2)、エチレン及び水素(
図3)
9 C8+画分(
図1及び2)、反応マス(
図3)
10 C8+画分(
図1)、画分(
図2)、ヘキセン-1(
図3)
11 C6+画分(
図1)、C8+画分(
図2)、底部生成物(
図3)
12 標的α-オレフィン(
図1)、画分(
図2)、循環溶媒(
図3)
13 底部生成物(
図1)、標的α-オレフィン(
図2)
14 循環溶媒(
図1)、底部生成物(
図2)
15 底部生成物(
図1)、循環溶媒(
図2)
16 底部生成物
101 オリゴマー化反応器
102 沈降機
103 エバポレーター
104 分離器
105 単離塔
106 単離塔
201 オリゴマー化反応器
202 沈降機
203 濾過システム
204 蒸留塔
205 蒸留塔
206 蒸留塔