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特許7339372代謝障害を処置するための融合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】代謝障害を処置するための融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230829BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230829BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20230829BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230829BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230829BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230829BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K38/18
A61K47/65
A61K47/68
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P43/00 111
C07K14/50
C07K16/00
C07K19/00 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/02 H
C12N15/13
C12N15/19
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022002030
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2019141242の分割
【原出願日】2012-09-26
(65)【公開番号】P2022058546
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】61/539,280
(32)【優先日】2011-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・アール・ボーチャー
(72)【発明者】
【氏名】シャリ・エル・キャプラン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・エス・ダニエルズ
(72)【発明者】
【氏名】浜松 典郎
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・リクト
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・クレイグ・ウェルドン
【審査官】茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/129503(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/129600(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF21変異体およびFc領域を含む融合タンパク質であって、前記FGF変異体は、成熟FGF21(配列番号3)と比較した切断および変異を有するアミノ酸配列を含み、ここで
a)切断は、配列番号3と比較した1、2、3または4個のアミノ酸残基のN-末端切断を含み、かつ
b)変異は、
i)全長FGF21(配列番号1)と比較した番号付けでQ55C、G148C、K150R、P158S、S195A、P199GおよびG202A、および
ii)全長FGF21(配列番号1)と比較した番号付けでR105KまたはA109T、および
iii)FGF21変異体における全ての他のアミノ酸残基の%までの、配列番号3と比較した修飾
からなる、融合タンパク質。
【請求項2】
FGF21変異体における全ての他のアミノ酸残基の2%までが、配列番号3と比較して修飾されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
FGF21変異体における全ての他のアミノ酸残基の1%までが、配列番号3と比較して修飾されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記Fc領域は、リンカーを介して前記FGF21変異体に結合している、請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記リンカーは1~20アミノ酸長である、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記リンカーはグリシンおよびセリン残基を含む、請求項またはに記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記融合タンパク質のFc領域は、修飾されたFcフラグメントである、請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記Fc領域は、LALA変異で修飾されたFcフラグメントである、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項10】
患者における血糖の低下、インスリンレベルの低下、トリグリセリドレベルの低下、コレステロールレベルの低下、肝臓脂質レベルの減少、肝臓トリグリセリドレベルの減少、体重の減少、グルコース耐性の改善、およびインスリン感受性の改善からなる群より選択される1つ以上の生物学的活性を達成するのに使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記患者は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、糖尿病性合併症、胃不全まひ、インスリン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する障害、ならびに他の代謝障害からなる群より選択される1つ以上の障害に罹患している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
患者における血糖の低下、インスリンレベルの低下、トリグリセリドレベルの低下、コレステロールレベルの低下、肝臓脂質レベルの減少、肝臓トリグリセリドレベルの減少、体重の減少、グルコース耐性の改善、およびインスリン感受性の改善からなる群より選択される1つ以上の生物学的活性を達成するのに使用するための医薬の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項13】
前記患者は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、糖尿病性合併症、胃不全まひ、インスリン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する障害、ならびに他の代謝障害からなる群より選択される1つ以上の障害に罹患している、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
請求項15に記載のベクターまたは請求項14に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項17】
請求項16に記載の宿主細胞を用いて融合タンパク質を発現させることを含む、融合タンパク質の製造方法。
【請求項18】
前記融合タンパク質を精製することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
患者における代謝障害を治療する方法において使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記障害は、肥満、糖尿病、NAFLD、NASH、脂質異常症または高血糖である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記障害は、NAFLDまたはNASHである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記障害は、NASHである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項23】
患者における代謝障害を治療する方法において使用するための医薬の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項24】
前記障害は、肥満、糖尿病、NAFLD、NASH、脂質異常症または高血糖である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記障害はNAFLDまたはNASHである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記障害はNASHである、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、投与される対象における代謝プロフィールを改善することが知られている線
維芽細胞増殖因子21(FGF21)を含む新規融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーは、7つのサブファミリーにグループ分けさ
れる22個の遺伝的に異なる同種リガンドにより特徴付けられる。FGF-21は、FG
F-19およびFGF-23に非常に近く、これらとサブファミリーを形成する。このF
GFサブファミリーは、古典的FGFに珍しい種々の生理学的プロセス、すなわちエネル
ギーおよび胆汁酸ホメオスタシス、グルコースおよび脂質代謝およびリン酸塩ならびにビ
タミンDホメオスタシスを制御する。さらに、他のFGFとは違って、該サブファミリー
は、内分泌腺様式において作用する(Moore, D.D. (2007) Science 316, 1436-8)(Beenken
ら (2009) Nature Reviews Drug Discovery 8, 235)。
【0003】
FGF21は、28個のアミノ酸リーダー配列(配列番号:5)を含む209個のアミ
ノ酸ポリペプチドである。ヒトFGF21は、マウスFGF21と約79%アミノ酸同一
性、およびラットFGF21と約80%アミノ酸同一性を有する。線維芽細胞増殖因子2
1(FGF21)は、虚血性血管疾患、創傷治癒、および、肺、気管支または肺胞細胞機
能の喪失と関連する疾患に対する処置として記載されている(Nishimuraら (2000) Bioch
imica et Biophysica Acta, 1492:203-206;特許公報WO01/36640;および特許
公報WO01/18172)。FGF-21がFGF受容体および下流シグナル伝達分子
、例えば、FRS2aおよびERKを活性化するが、FGFRおよびFGF-21の直接
的相互作用は検出されていない。試験は、FGF-21に対する細胞性応答の決定因子お
よびFGFRを介してFGF-21シグナル伝達を介在する補因子として、肝臓、脂肪細
胞および膵臓において高度に発現されるβ-クロトー(klotho)を同定した(Kurosu, Hら
(2007) J Biol Chem 282, 26687-95)。FGF21は、FGFR1(IIIc)、FGF
R2(IIIc)およびFGFR3(IIIc)β-クロトーシグナル伝達複合体の強力
なアゴニストである。
【0004】
FGF-21は、インスリン-依存性グルコース摂取を誘導することを示した。FGF
-21はまた、種々の糖尿病齧歯動物モデルにおいて高血糖を改善することを示した。加
えて、FGF-21を過剰発現するトランスジェニックマウスは、食餌性代謝異常に対し
て耐性であることが見出され、体重および脂肪塊の減少、およびインスリン感受性の増強
を証明した(Badman, M.K.ら (2007) Cell Metab 5, 426-37)。糖尿病非ヒト霊長類への
FGF-21の投与は、空腹時血漿グルコース、トリグリセリド、インスリンおよびグル
カゴンレベルの減少を引き起こし、リポタンパク質プロフィールにおける有意な改善、例
えば、HDLコレステロールの約80%の増加をもたらした(Kharitonenkov, A.ら (200
7) Endocrinology 148, 774-81)。FGF21作用の分子メカニズムを試験する最近の試
験は、FGF-21を、空腹時状態への適応をコントロールすることを手助けする重要な
内分泌腺ホルモンとして同定した(Badmanら (2009) Endocrinology 150, 4931)(Inagaki
ら (2007) Cell Metabolism 5, 415)。これは、これまでに不明なPPARαの下流の関
連性を提供し、それにより、肝臓が生物学的エネルギーホメオスタシスの制御において身
体の他の部位と連絡する(Galmanら (2008) Cell Metabolism 8, 169)(Lundasenら (2007
) Biochemical and Biophysical Research Communications 360, 437)。
【0005】
FGF21は、AMPK/SIRT1/PGC1α経路の活性化を介して脂肪細胞ホメ
オスタシスを制御し、PPARγ発現を阻害し、ミトコンドリア機能を増加させる(Chau
ら (2010) PNAS 107, 12553)。FGF21はまた、培養されたヒト筋管および単離され
たマウス組織において測定されるとき、骨格筋によるグルコース摂取を増加させる。齧歯
動物の膵島細胞のFGF21処置は、ERK1/2およびAkt経路の活性化を介する改
善された機能および生存をもたらす(Wenteら (2006) Diabets 55, 2470)。FGF21
処置はまた、恐らくHNF4αおよびFoxa2シグナル伝達を介して、齧歯動物の肝臓
における脂質生成および脂肪酸酸化酵素に対する遺伝子発現の変化をもたらす。
【0006】
生物学的薬物として直接的にFGF-21を使用する問題は、その半減期が非常に短い
ことである(Kharitonenkov, Aら. (2005) Journal of Clinical Investigation 115:162
7-1635)。マウスにおいて、ヒトFGF21の半減期は0.5から1時間であり、カニク
イザルにおいて、半減期は2から3時間である。FGF21は、多目的の滅菌医薬製剤と
して利用され得る。しかしながら、保存剤、例えば、m-クレゾールが、これらの条件下
でその安定性に対する有害な影響を有することが決定されている。
【0007】
1型および2型糖尿病および他の代謝状態の処置における治療剤として使用するための
FGF21タンパク質を開発することにおいて、半減期および安定性における増加が望ま
しい。増強された半減期および安定性を有するFGF21タンパク質は、該タンパク質を
投与される患者のより少ない投与頻度を可能にする。明らかに、治療タンパク質FGF2
1に対する安定な水性タンパク質製剤を開発する必要性が存在する。
【0008】
さらに、タンパク質医薬としてのFGF21の開発における重要な挑戦は、それらの物
理化学的不安定性に対処することである。タンパク質の組成変化および特性は、特定の性
質、例えば、フォールディング、立体配座安定性およびアンフォールディング/変性を定
義する。このような特性は、タンパク質水溶液を利用する医薬製剤条件を開発する過程で
タンパク質を安定化する目的であるとき、対処されるべきである(Wang, W., Int. J. of
Pharmaceutics, 18, (1999))。興味ある治療タンパク質、例えば、本発明のタンパク質
を安定化する所望の効果は、タンパク質分解および酵素分解に対する耐性を増加させ、そ
れにより、タンパク質安定性を改善し、タンパク質凝集を減少させる。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
本発明は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)を含む新規融合タンパク質の同定に
関し、これは、医薬製剤条件下で野生型FGF21およびその変異体を超える改善された
医薬特性を有し、例えば、より安定であり、投与される対象に対する代謝パラメーターを
改善する能力を有し、タンパク質分解および酵素分解されにくく、複合体を凝集および形
成する可能性が低い。本発明の融合タンパク質は、FGF21の切断体、突然変異体、お
よび変異体を含む。
【0010】
また、記載されていることは、FGF21関連障害、ならびに他の代謝、内分泌腺およ
び心疾患、例えば、肥満、1型および2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂
肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高
インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、急性心筋梗塞、高
血圧、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈性
心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病性合併症、ニューロパシー、胃不全まひ、インスリン受容体
における重度の不活性化突然変異と関連する障害、および他の代謝障害を処置するための
方法、ならびに重症患者の死亡率および罹患率を低下させる方法である。
【0011】
本発明の融合タンパク質は、1週に1回、注射可能なものとして、単独で、または、1
型および2型糖尿病患者の血糖コントロール、体重および脂質プロフィールを改善する経
口用抗糖尿病剤と組み合わせて、使用され得る。該タンパク質はまた、肥満または他のF
GF21-関連状態の処置のために使用され得る。
【0012】
本発明の融合タンパク質は、医薬製剤条件下で野生型FGF21よりも、より安定であ
り、タンパク質分解および酵素分解されにくく、複合体を凝集および形成する可能性が低
いタンパク質を提供することにより、タンパク質治療物、例えば、野生型FGF21の投
与と関連する身体的不安定の大きな障害を克服する。
【0013】
第1の局面において、本発明は、表1に記載されている配列およびさらに本明細書に記
載されている配列の1つ以上を含む線維芽細胞増殖因子21(FGF21)融合タンパク
質を提供する。表1に記載されているFGF21配列は、野生型FGF21配列、例えば
、NCBI参照番号NP_061986.1での野生型FGF21配列の変異体であり得
、交付済み特許、例えば、Chiron Corporationに割り当てられている
US6,716,626B1において見出される。
【0014】
該融合物は、例えば、変異体FGF21配列、例えば、表1の配列、および他の分子(
非FGF21部分)、例えば、IgG定常ドメインまたはそれらのフラグメント(例えば
、Fc領域)、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはアルブミン-結合ポリペプチドで
あり得る。好ましい態様において、分子の非FGF21部分はFc領域である。
【0015】
他の態様は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオ
チドを含むベクターおよび該ベクターを有する宿主細胞を記載している。
【0016】
本明細書において提供されるものは、本発明の融合タンパク質を作製するために使用さ
れる方法であって、例えば、野生型FGF21タンパク質内の興味ある位置でのアミノ酸
の部位特異的取り込み、ならびに他の分子、例えば、IgG定常ドメインまたはそのフラ
グメント(例えば、Fc領域)、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはアルブミン-結
合ポリペプチドに対する分子のFGF21部分間への融合を介する、野生型FGF21タ
ンパク質の修飾を含む方法である。該修飾体および融合体は、タンパク質の野生型と比較
して本発明の融合タンパク質の生物学的特性を増強し、ならびに、いくつかの場合におい
て、固体支持体の表面へ該変異体を付着させる目的のために、例えば、標識およびタンパ
ク質半減期延長剤に対する付着点として役割を果たす。本発明の関連態様は、該本発明の
タンパク質を生産することができる細胞を生産する方法、および該変異体および融合体を
コードするDNAを含むベクターを生産する方法である。
【0017】
種々の態様において、本明細書に記載されている本発明の融合タンパク質は、哺乳動物
において血糖を低下させることができる、8-12個の長さのアミノ酸残基と小さいフラ
グメントを含む、FGF21野生型配列の1つ以上のフラグメントを含むことができる。
種々の態様において、本明細書に記載されている本発明の融合タンパク質は、例えば、野
生型配列と比較して1つ以上のアミノ酸欠失、挿入、付加または置換での、FGF21野
生型配列の1つ以上の変異体を含むことができる。
【0018】
いくつかの態様において、本明細書に記載されている本発明の融合タンパク質は、野生
型FGF21と比較して作製される部位特異的アミノ酸修飾の位置にて、または一般的に
これらのタンパク質の野生型と共有されるアミノ酸の位置にて、1つ以上のポリマー、例
えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリシアル酸と共有結合させることがで
きる。PEG基は、本発明の融合タンパク質の構成部分、例えば、FGF21タンパク質
変異体の生物学的機能を増強し、および/またはそれを妨げないように結合される。他の
態様において、本発明のポリペプチドは、異種アミノ酸配列に、所望によりリンカーを介
して、例えば、GS、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:6)に融合すること
ができる。異種アミノ酸配列は、IgG定常ドメインまたはそのフラグメント(例えば、
Fc領域)、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはアルブミン結合ポリペプチドであり
得る。本明細書に記載されているこのような融合ポリペプチドもまた、多量体を形成する
ことができる。
【0019】
いくつかの態様において、異種アミノ酸配列(例えば、HSA、Fcなど)は、本発明
の融合タンパク質のアミノ末端に融合される。他の態様において、融合異種アミノ酸配列
(例えば、HSA、Fcなど)は、本発明の融合タンパク質のカルボキシル末端に融合さ
れる。
【0020】
さらに別の態様は、1つ以上のFGF21関連障害、例えば、肥満、2型糖尿病、1型
糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性
脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メ
タボリック・シンドローム、急性心筋梗塞、高血圧、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬
化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈性心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病性合併症、ニ
ューロパシー、胃不全まひ、インスリン受容体における不活性化突然変異と関連する障害
、および他の代謝障害を示す患者を処置する方法であって、治療有効量の1つ以上の本発
明のタンパク質またはそれらの医薬組成物を処置の必要な該患者に投与することを含む、
方法を記載している。
【0021】
本発明はまた、本明細書に記載されている本発明の融合タンパク質および薬学的に許容
される製剤を含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、代謝障害を処置する
ための方法、および本発明の医薬組成物を必要とするヒト患者に投与することを含む方法
において使用することができる。処置することができる代謝障害の非限定的な例は、1型
および2型糖尿病および肥満を含む。
【0022】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の発明の詳細な説明において解明される
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1A-1Dは、V188がob/ob糖尿病マウスモデルにおいてV76よりも改善された有効性を有することを示す。V188は、キログラムあたり1ミリグラム(mpk)で投与されたとき、V76がキログラムあたり5ミリグラムで投与されたときと比較して、優れた結果を示す。図1Aは、読み出し(readout)として食餌血漿グルコースを示す(丸はビヒクル(PBS-リン酸緩衝生理食塩水)を示し、四角は5mpkでのV76を示し、三角は1mpkでのV188を示す)。図1Bは、読み出しとして食餌血漿インスリンを示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV188)。図1Cは、読み出しとして体重を示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV188)。図1Dは、読み出しとして肝臓脂質量を示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV188)。
【0024】
図2図2A-2Dは、V101がob/ob糖尿病マウスモデルにおいてV76よりも改善された有効性を有することを示す。V101は、キログラムあたり1ミリグラム(mpk)で投与されたとき、V76がキログラムあたり5ミリグラムで投与されたときと比較して、優れた結果を示す。図2Aは、読み出しとして食餌血漿グルコースを示す(丸はビヒクル(PBS-リン酸緩衝生理食塩水)を示し、四角は5mpkでのV76を示し、三角は1mpkでのV101を示す)。図2Bは、読み出しとして食餌血漿インスリンを示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV101)。図2Cは、読み出しとして体重を示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV101)。図2Dは、読み出しとして肝臓脂質量を示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV101)。
【0025】
図3図3A-3Dは、V103がob/ob糖尿病マウスモデルにおいてV76よりも改善された有効性を有することを示す。V103は、キログラムあたり1ミリグラム(mpk)で投与されたとき、V76がキログラムあたり5ミリグラムで投与されたときと比較して、優れた結果を示す。図3Aは、読み出しとして食餌血漿グルコースを示す(丸はビヒクル(PBS-リン酸緩衝生理食塩水)を示し、四角は5mpkでのV76を示し、三角は1mpkでのV103を示す)。図3Bは、読み出しとして食餌血漿インスリンを示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV103)。図3Cは、読み出しとして体重を示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV103)。図3Dは、読み出しとして肝臓脂質量を示す(左から右へ:ビヒクル、5mpkでのV76、および1mpkでのV103)。
【0026】
図4図4A-4Dは、当分野のFGF21融合タンパク質よりも、本発明の融合タンパク質により有される優れた薬物動態学および熱力学特性を証明する。図4Aは、Fc-L(15)-FGF21(L98R、P171G)およびFc-L(15)-FGF21(L98R、P171G、A180E)として記載されているPCT公開WO10/129600における発明の融合タンパク質の、マウスにおいて融合物のIV注射後の血漿濃度を示す。図4Bは、抗-FGF21抗体ELISAを使用して以前の試験においてV76に対してマウスにおいて作成された薬物動態学データと比較された、抗-Fc-ELISAによりアッセイされたときのマウスにおける単回IV投与後の本発明の融合タンパク質(V101、V103およびV188)の薬物動態学的特性を示す。図4Cは、120時間および15日での抗-Fc-ELISAデータと一致する、抗-FGF21ウェスタンブロットにおける本発明の融合タンパク質のスポットチェックを示す。ブロットにおけるサンプルは以下のとおりである:AはV101を示し、BはV103を示し、CはV188を示す。コントロールはV101および血清である。図4Dは、V76と比較して、本発明の融合タンパク質の有意に増加した熱力学的安定性を証明する。上から下へ、該図は、V101、V103およびV188を示し、これら全てが、V76(T<50℃(示されていない))および野生型FGF21(T=46.5℃±0.3(示されていない))と比較して、改善された融解温度(T)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明の融合タンパク質は、当分野で知られている全長野生型FGF21ポリペプチド
の修飾バージョンを示す。例えば、FGF21野生型配列とタンパク質変異体との間の比
較が必要であるとき、FGF21野生型配列は、参照配列(配列番号:1)となる。FG
F21野生型配列は、NCBI参照配列番号NP_061986.1を有し、例えば、C
hiron CorporationによるUS6,716,626B1のような発行済
み特許において見いだすことができる(配列番号:1)。
【表1】
【0028】
全長FGF21ポリペプチド(NCBI参照配列番号NM_019113.2)をコー
ドする対応するmRNA配列は以下(配列番号:2)に示される:
【表2】
【0029】
成熟FGF21配列は、リーダー配列を欠いており、また、当業者により理解されるポ
リペプチドの他の修飾、例えば、アミノ末端(リーダー配列を有する、または該配列を有
さない)および/またはカルボキシル末端のタンパク質分解プロセッシング、より大きな
前駆体からより小さいポリペプチドの開裂、N-連結および/またはO-連結グリコシル
化および他の翻訳後修飾を含み得る。成熟FGF21配列の典型的な例は、以下の配列(
全長FGF21タンパク質配列(NCBI参照配列番号NP_061986.1)のアミ
ノ酸位置29-209を示す配列番号:3)を有する:
【表3】
【0030】
成熟FGF21ポリペプチド(配列番号:3)をコードする対応するcDNA配列は、
以下(配列番号:4)に示される:
【表4】
【0031】
本発明の融合タンパク質は、本明細書に記載されている野生型タンパク質のタンパク質
変異体または突然変異体、例えば、FGF21変異体を含み得る。本明細書において使用
される「タンパク質変異体」、「ヒト変異体」、「ポリペプチドまたはタンパク質変異体
」、「変異体」、「突然変異体」なる用語、ならびにそれらのような用語またはそれらの
特定の型(例えば、「FGF21タンパク質変異体」、「変異体」、「FGF21突然変
異体」など)は、天然(すなわち、野生型)タンパク質またはポリペプチド対応物または
対応する天然配列の修飾体、切断体、他の変異体を含むタンパク質またはポリペプチド配
列を定義する。例えば、「変異体FGF21」または「FGF21突然変異体」は、本明
細書に記載されている野生型(すなわち、天然)FGF21タンパク質と比較して記載さ
れている。
【0032】
本発明の典型的な融合タンパク質配列は、表1に記載されている。該融合物の記載は、
リンカーを適用する場合、FGF21変異体を含む。FGF21変異体により使用される
変化または置換は、野生型FGF21と比較して番号付けされ記載される。一例として、
「変異体101(V101)」(配列番号:10)は、2つのアミノ酸リンカーおよび野
生型FGF21と比較して作られる以下の置換:Q55C、A109T、G148C、K
150R、P158S、P174L、S195A、P199G、G202Aを有するFc
-FGF21融合物である。
【表5】
【表6】
【0033】
*-上記表におけるFGF21野生型配列は、特記されない限り、NCBI参照配列番
号NP_061986.1(配列番号:1)を示すことに注意すること。
FGF21部分における全ての突然変異および該突然変異の対応するアミノ酸番号付けは
、Fcおよびリンカー領域も含み得る上記表における全長配列ではなく、(配列番号:1
)に戻って参照する。
【0034】
本発明の融合タンパク質において使用される変異体または突然変異体、例えば、野生型
FGF21の変異体は、野生型タンパク質と比較して、少なくとも1つの置換、付加およ
び/または除去されたアミノ酸を特徴とする。さらに、変異体は、野生型タンパク質と比
較してN-および/またはC-末端切断を含み得る。一般的に言えば、変異体は、野生型
タンパク質のいくつかの修飾された特性、構造または機能を有する。例えば、変異体は、
濃縮液中の増強または改善された物理的安定性(例えば、低い疎水性媒介凝集)、血漿と
インキュベートしたとき増強または改善された血漿安定性、または好ましい生物活性プロ
フィールを維持して増強または改善された生物活性を有し得る。
【0035】
本発明の融合タンパク質およびそれらの野生型比較タンパク質の部分間の違いを構成す
る許容されるアミノ酸置換および修飾は、1つ以上のアミノ酸置換、例えば、非天然アミ
ノ酸アナログとの置換、および切断を含むが、これらに限定されない。したがって、本発
明の融合タンパク質(例えば、本発明の融合タンパク質)は、本明細書に記載されている
部位特異的突然変異体、切断ポリペプチド、タンパク質分解-耐性突然変異体、凝集減少
突然変異体、組合せ突然変異体および融合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0036】
タンパク質の発現の分野の当業者は、メチオニンまたはメチオニン-アルギニン配列が
、大腸菌における発現のために、本発明の融合タンパク質のいずれかのN-末端に導入す
ることができることを認識しており、本発明の文脈内に考慮される。
【0037】
本発明の融合タンパク質は、医薬防腐剤(例えば、m-クレゾール、フェノール、ベン
ジルアルコール)との増加した互換性を有し得、したがって、保存中にタンパク質の生理
化学特性および生物学的活性を維持する保存された医薬製剤の調製を可能にする。したが
って、野生型1と比較して増強された医薬安定性を有する変異体は、生理学的および保存
された医薬製剤条件下で濃縮液中の改善された物理的安定性を有し、生物学的効力を維持
している。非限定的な例のために、本発明の融合タンパク質は、それらの野生型対応物ま
たは対応する天然配列よりも、タンパク質分解および酵素分解に対してさらに耐性であり
得;改善された安定性を有し得;凝集する可能性が低いかもしれない。本明細書において
使用される、これらの用語は、相互排他的または限定的ではなく、全体に、挙げられた変
異体が野生型タンパク質の1つ以上の修飾された特性を有することを可能にする。
【0038】
本発明はまた、例えば、FGF21タンパク質変異体に対する望ましい特性、例えば、
FGF21-受容体に対する改善された効力、タンパク質分解-耐性、増加した半減期ま
たは凝集-減少特性およびそれらの組合せを与える特定の残基がさらに修飾されていない
、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一である、FGF21アミノ酸配
列を含む、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を含む。言い換えれば、タンパ
ク質分解-耐性、凝集-減少または他の特性を与えるために修飾されているFGF21突
然変異体配列における残基を除いて、FGF21突然変異体配列における全ての他のアミ
ノ酸残基の約5%(代替的に4%、代替的に3%、代替的に2%、代替的に1%)を修飾
させることができる。このようなFGF21突然変異体は、野生型FGF21ポリペプチ
ドの少なくとも1つの活性を有する。
【0039】
本発明はまた、コードされたタンパク質のタンパク質分解-耐性、凝集-減少または他
の特性を与えるアミノ酸残基をコードするヌクレオチドがさらに修飾されていない、配列
番号:2または配列番号:4のヌクレオチド配列と少なくとも約85%同一、さらに好ま
しくは少なくとも約90から95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。
言い換えれば、タンパク質分解-耐性、凝集-減少または他の特性を与えるために修飾さ
れているFGF21突然変異体配列における残基をコードするヌクレオチドを除いて、突
然変異体配列における全ての他のヌクレオチドの約15%、さらに好ましくは約10から
5%を修飾させることができる。このような核酸分子は、それらの野生型対応物の少なく
とも1つの活性を有するタンパク質をコードする。
【0040】
本明細書において提供されるものは、本発明の融合タンパク質を作製するために使用さ
れる方法であって、タンパク質の野生型(例えば、本明細書に記載されているFGF21
野生型タンパク質)の部位特異的修飾および非部位特異的修飾、例えば、野生型タンパク
質の切断および野生型タンパク質内の興味ある位置でのアミノ酸の部位特異的取り込みを
含む方法である。該修飾は、野生型タンパク質と比較して本発明の融合タンパク質の生物
学的特性を増強し、ならびに、いくつかの場合において、固体支持体の表面へ該変異体を
付着させる目的のために、例えば、標識およびタンパク質半減期延長剤に対する、付着点
として役割を果たす。本発明の関連態様は、該本発明の融合タンパク質を生産することが
できる細胞を生産する方法、および該変異体をコードするDNAを含むベクターを生産す
る方法である。
【0041】
1つの態様において、例えば、半減期を延長する、またはそうではなく、該タンパク質
、ポリペプチドおよび/またはペプチドの生物学的特性を改善する目的のために、かかる
修飾、例えば、部位特異的修飾は、本発明のタンパク質、ポリペプチド、および/または
ペプチドに、複合体、例えばPEG基を結合させるために使用される。該技術は、本明細
書にさらに記載されている。
【0042】
他の態様において、かかる修飾、例えば、部位特異的修飾は、本発明のタンパク質の半
減期を延長する他のポリマー、小分子および組換えタンパク質配列に結合させるために使
用される。1つのこのような態様は、タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチド
への脂肪酸または特定のアルブミン結合化合物の結合を含む。他の態様において、該修飾
は、特定のアミノ酸型で作られ、タンパク質上の1つ以上の部位に結合され得る。
【0043】
他の態様において、このような修飾、例えば、部位特異的修飾は、野生型および/また
は変異体多量体、例えば、二量体(ホモ二量体またはヘテロ二量体)または三量体または
四量体の生産のための結合手段として使用される。これらの多量体タンパク質分子は、さ
らに、アミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかで、他のタンパク質、例えば、Fc、
ヒト血清アルブミン(HSA)などに結合または融合された基、例えば、PEG、糖、お
よび/またはPEG-コレステロール複合体を有し得る。
【0044】
他の態様において、このような部位特異的修飾は、タンパク質、ポリペプチドおよび/
またはペプチドを生産するために使用され、部位特異的に組み込まれたピロリジン、また
はピロリジン類似体または非天然アミノ酸(パラ-アセチル-Phe、パラ-アジド-P
he)の位置が、制御配向および固体支持体の表面上へのこのようなタンパク質、ポリペ
プチドおよび/またはペプチドの結合を可能にするか、または結合される基、例えば、P
EG、糖および/またはPEG-コレステロール複合体を有することを可能にする。
【0045】
他の態様において、このような部位特異的修飾は、タンパク質、ポリペプチドおよび/
またはペプチドを部位特異的に架橋するために使用され、それにより、ヘテロ二量体およ
びヘテロ三量体を含むが、これらに限定されないヘテロ-オリゴマーを形成する。他の態
様において、このような部位特異的修飾は、タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペ
プチドを部位特異的に架橋するために使用され、それにより、タンパク質-タンパク質複
合体、タンパク質-ポリペプチド複合体、タンパク質-ペプチド複合体、ポリペプチド-
ポリペプチド複合体、ポリペプチド-ペプチド複合体またはペプチド-ペプチド複合体を
形成する。他の態様において、部位特異的修飾は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプ
チドの単一部位で2つ以上の分子の型を結合させることを可能にする分岐点を含み得る。
【0046】
他の態様において、本明細書に記載されている修飾は、非部位特異的手段において行う
ことができ、本発明のタンパク質-タンパク質複合体、タンパク質-ポリペプチド複合体
、タンパク質-ペプチド複合体、ポリペプチド-ポリペプチド複合体、ポリペプチド-ペ
プチド複合体またはペプチド-ペプチド複合体をもたらす。
【0047】
定義
種々の定義が、本明細書を通して使用される。多数の用語は、当業者がそれらの用語に
帰属すると考える意味を有する。下記で、または本明細書の他の場所で具体的に定義され
た用語は、全体として、本発明の文脈で提供される意味を有し、一般的には、当業者によ
り理解されるものである。
【0048】
本明細書において使用される「FGF21」なる用語は、線維芽細胞増殖因子(FGF
)タンパク質ファミリーメンバーを示す。FGF21(GenBank受入番号NP_0
61986.1)のアミノ酸配列は、配列番号:1として記載されており、これと対応す
るポリヌクレオチド配列は、配列番号:2(NCBI参照配列番号NM_019113.
2)として記載されている。「FGF21変異体」、「FGF21突然変異体」および同
様の用語は、例えば、欠失された、付加された、修飾された、または置換された構成アミ
ノ酸残基を有する、FGF21タンパク質の修飾された型を示す。
【0049】
本明細書において使用される「FGF21受容体」なる用語は、FGF21に対する受
容体を示す(Kharitonenkov,Aら (2008) Journal of Cellular Physiology 215:1-7; Kur
osu,Hら (2007) JBC 282:26687-26695; Ogawa, Yら (2007) PNAS 104:7432-7437)。
【0050】
「FGF21ポリペプチド」なる用語は、ヒトにおいて発現される天然ポリペプチドを
示す。この記載の目的のために、「FGF21ポリペプチド」なる用語は、あらゆる全長
FGF21ポリペプチド、例えば、209アミノ酸残基からなり、配列番号:2のヌクレ
オチド配列によってコードされる配列番号:1;全長FGF21ポリペプチドのアミノ末
端で28アミノ酸残基(すなわち、これはシグナルペプチドを構成する)が除去されてい
る181アミノ酸残基からなるあらゆる該ポリペプチドの成熟形態を互換的に示すために
使用することができる。
【0051】
本明細書において使用される「変異体76」は、Cys154を介して結合される40
kDa分岐状PEG、および177個のアミノ酸野生型タンパク質と比較して8個の点突
然変異を特徴とするFGF21タンパク質変異体である。変異体の合成は、本願明細書に
おいてより詳細に記載されており、タンパク質配列は表1および配列番号:9において示
されている。
【0052】
「単離された核酸分子」なる用語は、(1)全核酸が供給源細胞から単離されるとき、
天然に見出される少なくとも約50パーセントのタンパク質、脂質、炭水化物または他の
物質から分離されている、(2)「単離された核酸分子」が天然に連結されるポリヌクレ
オチドのすべてまたは一部に連結されていない、(3)天然に連結されないポリヌクレオ
チドに作動可能に連結されている、または(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部
として天然に起こらない、本発明の核酸分子を示す。好ましくは、本発明の単離された核
酸分子は、ポリペプチド生産における使用または治療、診断、予防または研究の使用を妨
げるであろう、天然環境において見られるあらゆる他の汚染核酸分子または他の汚染を実
質的に含まない。
【0053】
「ベクター」なる用語は、コード情報を宿主細胞に伝達するために使用されるあらゆる
分子(例えば、核酸、プラスミドまたはウイルス)を示すために使用される。
【0054】
「発現ベクター」なる用語は、宿主細胞の形質転換のために適当であり、挿入された異
種核酸配列の発現を指向および/またはコントロールする核酸配列を含むベクターを示す
。発現は、プロッセシング、例えば、転写、翻訳およびRNAスプライシング(イントロ
ンが存在するとき)を含むが、これらに限定されない。
【0055】
「作動可能に連結した」なる用語は、フランキング配列が通常の機能を行うように構成
されるか、または集合される、フランキング配列の配置を示すために本明細書において使
用される。融合タンパク質の要素は、融合タンパク質が、天然、内因性タンパク質である
ときのように機能することができ、および/または相乗様式で該融合タンパク質の異種要
素と結合することができるように、お互いに作動可能に連結され得る。
【0056】
ヌクレオチドレベルにおいて、コード配列に作動可能に連結したフランキング配列は、
コード配列の複製、転写および/または翻訳をもたらすことができ得る。例えば、コード
配列は、プロモーターがコード配列の転写を指向することができるとき、プロモーターに
作動可能に連結している。正確に機能する限り、フランキング配列はコード配列と隣接す
る必要はない。したがって、例えば、介在するまだ翻訳されていない転写配列が、プロモ
ーター配列とコード配列間に存在することができ、プロモーター配列は、コード配列に「
作動可能に連結している」と考えることができる。
【0057】
「宿主細胞」なる用語は、核酸配列で形質転換されているか、核酸配列で形質転換され
、次に、選択される興味ある遺伝子を発現することができる細胞を示すために使用される
。該用語は、選択される遺伝子が存在する限り、子孫が元の親と構成される形態または遺
伝子において同一であるがなかろうと、親細胞の子孫に含む。
【0058】
本明細書において使用される「アミノ酸」なる用語は、それらの構造がこのような立体
異性体形態を可能にするとき、DおよびL立体異性体における全てにおいて、天然アミノ
酸と同様の様式において機能する天然アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体および
アミノ酸模擬物を示す。アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenc
lature Commissionにより推奨される、それらの名前、それらの一般的に知られる3文字
記号または1文字記号のいずれかにより示す。
【0059】
生物学的物質、例えば、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などに関連して使用される
とき、「天然」なる用語は、天然において見出され、ヒトにより操作されていない物質を
示す。同様に、本明細書において使用される「非天然」は、天然において見出されないか
、またはヒトにより構造的に修飾または合成されている物質を示す。ヌクレオチドに関連
して使用されるとき、「天然」なる用語は、塩基アデニン(A)、シトシン(C)、グア
ニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)を示す。アミノ酸に関連して使用される
とき、「天然」なる用語は、20の慣用のアミノ酸(すなわち、アラニン(A)、システ
イン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グ
リシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)
、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギ
ニン(R)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)お
よびチロシン(Y))、ならびにセレノシステイン、ピロリジン(Pyl、またはO)、
およびピロリン-カルボキシ-リジン(Pcl、またはZ)を示す。
【0060】
ピロリジン(Pyl)は、Methanosarcinaファミリーのメタン生成古細
菌のメチルアミンメチルトランスフェラーゼ内に天然に見出されるアミノ酸である。ピロ
リジンは、それぞれのmRNAにおいてインフレームのUAGコドンで共翻訳的に組み込
まれるリジン類似体であり、22番目の天然アミノ酸と考えられる。
【0061】
PCT特許公報WO2010/48582(出願人IRM、LLC)において少なくと
も記載されているとおり、大腸菌においてピロリジン(Pyl)を生物合成する試みは、
ピロリン-カルボキシ-リジンまたはPclとして本明細書において称される「脱メチル
化ピロリジン」の形成をもたらした。本明細書において使用される「Pcl」は、Pcl
-AまたはPcl-Bのいずれかを示す。
【0062】
本明細書において使用される「非天然(non-natural)アミノ酸」および「非天然(unnatu
ral)アミノ酸」なる用語は、互換的に、同じか、または異なっている任意の生物体からの
修飾されていない、または修飾された遺伝子を使用して、任意の生物体において生合成的
に産生することができないアミノ酸構造を示すことが意図される。該用語は、天然(野生
型)FGF21タンパク質配列または本発明の配列に存在しないアミノ酸残基を示す。こ
れらは、20天然アミノ酸の1つではない修飾されたアミノ酸および/またはアミノ酸類
似体、セレノシステイン、ピロリジン(Pyl)またはピロリン-カルボキシ-リジン(
Pcl、例えば、PCT特許公報WO2010/48582に記載されている)を含むが
、これらに限定されない。このような非天然アミノ酸残基は、天然アミノ酸の置換、およ
び/または天然(野生型)FGF21タンパク質配列または本発明の配列への非天然アミ
ノ酸の挿入により導入することができる。非天然アミノ酸残基はまた、所望の機能性をF
GF21分子に与えるように組み込むことができる、例えば、機能性部分に連結する能力
(例えば、PEG)。アミノ酸に関連して使用されるとき、記号「U」は、本明細書にお
いて使用されるとき、「非天然(non-natural)アミノ酸」および「非天然(unnatural)アミ
ノ酸」を意味するものとする。
【0063】
加えて、このような「非天然アミノ酸」は、タンパク質への取り込みのために、修飾さ
れたtRNAおよび修飾されたtRNAシンテターゼ(RS)を必要とすることが理解さ
れる。これらの「選択される」直交tRNA/RSペアは、Schultzらにより開発
された選択プロセスまたはランダムもしくは標的化突然変異により作製される。一例とし
て、ピロリン-カルボキシ-リジンは、ある生物体から宿主細胞に移動させられる遺伝子
により生合成的により産生されるため、および天然tRNAおよびtRNAシンテターゼ
遺伝子を使用することによりタンパク質に組み込まれるため、「天然アミノ酸」であるが
、p-アミノフェニルアラニン(Generation of a bacterium with a 21 amino acid gen
etic code, Mehl RA, Anderson JC, Santoro SW, Wang L, Martin AB, King DS, Horn DM
, Schultz PG. J Am Chem Soc. 2003 Jan 29;125(4):935-9参照)は、生合成的に産生さ
れるが、「選択される」直交tRNA/tRNAシンテターゼペアによりタンパク質に組
み込まれるため、「非天然アミノ酸」である。
【0064】
修飾されたコードアミノ酸は、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O
-ホスホセリン、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸
、ベータ-アラニン、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミ
ノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-
アミノピメリン酸、第三級-ブチルグリシン、2,4-ジアミノイソ酪酸、デスモシン、
2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、
N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリジン、アロ
-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシ
ン、アロ-イソロイシン、N-メチルアラニン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロ
イシン、N-メチルペンチルグリシン、N-メチルバリン、ナフトアラニン(naphthalani
ne)、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸および
チオプロリンを含むが、これらに限定されない。「アミノ酸」なる用語はまた、特定の生
物体における代謝産物であるが、タンパク質への取り込みのために遺伝子コードによって
コードされない天然アミノ酸を含む。このようなアミノ酸は、オルニチン、D-オルニチ
ンおよびD-アルギニンを含むが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書において使用される「アミノ酸類似体」なる用語は、天然アミノ酸と同じ基本
化学構造、一例のみとして、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合されるα
-炭素を有する化合物を示す。アミノ酸類似体は、可逆的にまたは不可逆的に、化学的に
ブロックされている天然および非天然アミノ酸、または化学的に修飾されているそれらの
C-末端カルボキシ基、それらのN-末端アミノ基および/またはそれらの側鎖官能基を
含む。このような類似体は、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、S-(カル
ボキシメチル)-システイン、S-(カルボキシメチル)-システインスルホキシド、S
-(カルボキシメチル)-システインスルホン、アスパラギン酸-(ベータ-メチルエス
テル)、N-エチルグリシン、アラニンカルボキサミド、ホモセリン、ノルロイシンおよ
びメチオニンメチルスルホニウムを含むが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書において使用される「アミノ酸模擬物」なる用語は、アミノ酸の一般的な化学
構造と異なるが、天然アミノ酸と同様の様式において機能する構造を有する化合物を示す
【0067】
「生物学的に活性な変異体」なる用語は、ポリペプチド変異体に導入されている修飾の
型または数にかかわらず、その野生型(例えば、天然)タンパク質またはポリペプチド対
応物の活性、例えば、血糖、HbA1c、インスリン、トリグリセリドまたはコレステロ
ールレベルを調節する;膵臓機能を増加させる;肝臓における脂質レベルを減少させる;
体重を減少させる;および、グルコース耐性、エネルギー消費またはインスリン感受性を
改善する能力を有する、本発明の融合タンパク質において、例えば、融合物の構成タンパ
ク質として、使用されるあらゆるポリペプチド変異体を示す。それらの野生型バージョン
と比較して、若干減少したレベルの活性を有するポリペプチド変異体は、それでもなお、
生物学的に活性なポリペプチド変異体と考えることができる。本発明の生物学的に活性な
ポリペプチド変異体の非限定的な典型的な例は、後に修飾され、野生型FGF21と比較
して、同様の、または増強された生物学的特性を有するFGF21変異体である。
【0068】
「有効量」および「治療有効量」なる用語はそれぞれ、野生型ポリペプチドまたはタン
パク質対応物の1つ以上の生物学的活性、例えば、血糖、インスリン、トリグリセリドも
しくはコレステロールレベルを低下させる;肝臓トリグリセリドもしくは脂質レベルを低
下させる;体重を減少させる;または、グルコース耐性、エネルギー消費またはインスリ
ン感受性を改善する能力の観察できるレベルをサポートするために使用される本発明の融
合タンパク質の量を示す。例えば、FGF21関連障害(例えば、1型もしくは2型糖尿
病、肥満またはメタボリック・シンドローム)を示す、該障害に罹患している、または該
障害に罹患しやすい患者に投与される「治療有効量」は、上記障害と関連する病理学的症
状、疾患進行、生理学的状態における改善を誘導する、改善する、さもなければ引き起こ
す量、または該障害での死に対する抵抗力を誘導する、改善する、さもなければ引き起こ
す量である。本発明の目的のために、「対象」または「患者」は、好ましくはヒトである
が、動物、さらに具体的には、ペット(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ
、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど
)でもあり得る。
【0069】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容され
る担体」なる用語は、本発明の融合タンパク質の送達を成し遂げるか、または増強するた
めに適当な1つ以上の製剤物質を示す。
【0070】
「抗原」なる用語は、抗体により結合することができ、さらに抗原のエピトープに結合
することができる抗体を生産するように動物において使用することができる分子または分
子の一部を示す。抗原は、1つ以上のエピトープを有し得る。
【0071】
「天然Fc」なる用語は、単量体または多量体形態のいずれでも、全抗体の消化から得
られる、または他の手段により生産される非抗原結合フラグメントの配列を含み、ヒンジ
領域を含むことができる分子または配列を示す。天然Fcの元の免疫グロブリン供給源は
、好ましくはヒト起源であり、任意の免疫グロブリンであってよいが、IgG1およびI
gG2が好ましい。天然Fc分子は、共有(すなわち、ジスルフィド結合)および非共有
結合により二量体または多量体形態に連結することができる単量体ポリペプチドで構成さ
れる。天然Fc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(
例えば、IgG、IgAおよびIgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2
、IgG3、IgA1およびIgGA2)に依存して1から4の範囲である。天然Fcの
1つの例は、IgGのパパイン消化から得られるジスルフィド結合二量体である(Elliso
nら 1982, Nucleic Acids Res. 10: 4071-9参照)。本明細書において使用される「天然
Fc」なる用語は、単量体、二量体および多量体形態の総称である。
【0072】
「Fc変異体」なる用語は、天然Fcから修飾されるが、サルベージ(salvage)受容体
、FcRn(新生児のFc受容体)に対する結合部位をまだ含む分子または配列を示す。
国際公開WO97/34631およびWO96/32478は、典型的なFc変異体、な
らびにサルベージ受容体との相互作用を記載しており、出典明示により包含させる。した
がって、「Fc変異体」なる用語は、非ヒト天然Fcからヒト化されている分子または配
列を含むことができる。さらに、天然Fcは、本発明の融合タンパク質の融合分子に対し
て必要ではない構造的特徴または生物学的活性を提供するため、除去することができる領
域を含む。したがって、「Fc変異体」なる用語は、(1)ジスルフィド結合形成、(2
)選択される宿主細胞との不適合性、(3)選択される宿主細胞における発現時のN-末
端不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以
外のFc受容体への結合、または(7)抗体依存性細胞毒性(ADCC)に影響するか、
またはこれらと関与する、1つ以上の天然Fc部位または残基を欠いているか、または、
1つ以上のFc部位または残基が修飾されている、分子または配列を含む。Fc変異体は
、以下にさらに詳細に記載されている。
【0073】
「Fcドメイン」なる用語は、上記定義のとおりの天然FcおよびFc変異体および配
列を含む。Fc変異体および天然Fc分子と同様に、「Fcドメイン」なる用語は、全抗
体から消化されるか、または他の手段により生産される単量体または多量体形態における
分子を含む。本発明のいくつかの態様においては、Fcドメインは、例えば、Fcドメイ
ンとFGF21配列間の共有結合を介して、FGF21またはFGF21突然変異体(F
GF21またはFGF21突然変異体の切断形態を含む)に融合することができる。この
ような融合タンパク質は、Fcドメインの結合を介して多量体を形成することができ、こ
れらの融合タンパク質およびこれらの多量体の両方が本発明の局面である。
【0074】
本明細書において使用される「修飾されたFcフラグメント」なる用語は、修飾された
配列を含む抗体のFcフラグメントを意味する。Fcフラグメントは、CH2、CH3お
よびヒンジ領域の部分を含む抗体の一部である。修飾されたFcフラグメントは、例えば
、IgGl、IgG2、IgG3またはIgG4由来であり得る。FcLALAは、効率
低下でADCCを誘導し、弱くヒト補体に結合し、活性化するLALA変異(L234A
、L235A)を有する修飾されたFcフラグメントである。Hessellら 2007 Nature 44
9:101-104。Fcフラグメントに対するさらなる修飾は、例えば、米国特許第7,217
,798号に記載されている。
【0075】
「異種」なる用語は、これらのドメインが、抗体の定常領域と結合されることが、天然
に見られないことを意味する。特に、このような異種結合ドメインは、4つのフレームワ
ーク領域、FR1、FR2、FR3およびFR4ならびに間に3つの相補性決定領域(C
DR)からなる抗体可変ドメインの典型的な構造を有さない。したがって、フソボディの
それぞれのアームは、抗体の定常C1重鎖領域のN-末端部分に共有的に連結される第
1の結合ドメインを含む第1の一本鎖ポリペプチド、および抗体の定常C軽鎖のN-末
端部分に共有的に連結される第2の結合ドメインを含む第2の一本鎖ポリペプチドを含む
。共有結合は、例えばペプチド結合を介して直接的、またはリンカー、例えばペプチドリ
ンカーを介して間接的であり得る。フソボディの2つのヘテロ二量体は、抗体構造のよう
に、例えば、これらのヒンジ領域にて少なくとも1つのジスルフィド架橋により、共有的
に連結される。フソボディ構造を有する分子の例は、当分野に開示されており、特に、ヘ
テロ二量体受容体のリガンド結合領域を含むフソボディである(例えば、国際特許公報W
O01/46261およびWO11/076781参照)。
【0076】
「ポリエチレングリコール」または「PEG」なる用語は、カップリングまたは活性化
部分に対してカップリング剤または誘導体化の有無にかかわらず、ポリアルキレングリコ
ール化合物またはその誘導体を示す。
【0077】
「FGF21関連障害」なる用語および本明細書において同様に使用される用語、肥満
、1型および2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)
、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高インスリン血症、耐糖能
障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、急性心筋梗塞、高血圧、心臓血管疾患、ア
テローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈性心臓疾患、腎臓疾患、糖
尿病性合併症、ニューロパシー、胃不全まひ、インスリン受容体における重度の不活性化
突然変異と関連する障害、および他の代謝障害を含む。
【0078】
「インスリン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する障害」なる用語および
本明細書において同様に使用される用語は、重度なインスリン耐性を引き起こすが、2型
糖尿病において一般的な肥満なしで、しばしば(常にではないが)見られる、インスリン
受容体(またはそれから直接的に下流である可能性があるタンパク質)における突然変異
を有している対象における状態を示す。多くの点で、これらの状態に罹患している対象に
は、1型糖尿病および2型糖尿病の混合の症状が現れる。それに罹患された対象は、A型
インスリン耐性、C型インスリン耐性(AKA HAIR-AN症候群)、Rabson
-Mendenhall症候群、および最後にDonohue’s症候群またはLepr
echaunismを含む、おおよそ増加する重症度のいくつかのカテゴリーに分類され
る。これらの障害は、非常に高い内因性インスリンレベルと、および非常にしばしば高血
糖と関連する。それに罹患された対象はまた、アンドロゲン過剰症、多嚢胞卵巣症候群(
PCOS)、多毛症、および皮膚のひだにおける黒色表皮症(過剰増殖および色素沈着)
を含む「インスリン毒性」と関連する種々の臨床的特徴を示す。
【0079】
「2型糖尿病」は、インスリンの利用可能性にかかわらず過剰なグルコース生産により
特徴付けられる状態であり、循環グルコースレベルが、不十分なグルコースクリアランス
の結果として、過剰に高く維持される。
【0080】
「1型糖尿病」は、インスリンの完全な欠乏により引き起こされる高い血糖レベルによ
り特徴付けられる状態である。これは、身体の免疫系が膵臓におけるインスリンを生産す
るベータ細胞を攻撃し、それらを破壊するときに起こる。その結果、膵臓は、ほとんどあ
るいは全くインスリンを生産しない。
【0081】
「耐糖能障害」または耐糖能異常(IGT)は、心臓血管病理学の危険性の増加と関連
する血糖異常症の前糖尿病状態である。前糖尿病状態は、対象の、グルコースの細胞への
効率的な移動およびそれを効率的な燃料源としての利用を防ぎ、血液中のグルコースレベ
ルの上昇およびある程度のインスリン耐性を引き起こす。
【0082】
「高血糖」は、血中の糖(グルコース)の過剰として定義される。
【0083】
低い血糖とも称される「低血糖」は、血糖レベルが、身体の活性のために十分なエネル
ギーを提供するためにはあまりにも低く低下したときに起こる。
【0084】
「高インスリン血症」は、正常レベルよりも高い血液中のインスリンとして定義される
【0085】
「インスリン耐性」は、正常量のインスリンが、正常以下の生物学的応答を生じる状態
として定義される。
【0086】
「肥満」は、ヒト対象に関して、体重が20パーセント、所定の集団に対する標準体重
を超えるとして定義することができる(R. H. Williams, Textbook of Endocrinology, 1
974, p. 904-916)。
【0087】
「糖尿病性合併症」は、高い血糖レベルにより引き起こされる他の身体機能での問題、
例えば、腎臓、神経(ニューロパシー)、足(足部潰瘍および循環不良)および眼(例え
ば網膜症)である。糖尿病はまた、心臓疾患および骨関節障害に対する危険性を増加させ
る。糖尿病の他の長期合併症は、皮膚問題、消化問題、性機能障害および歯と歯茎との問
題を含む。
【0088】
「メタボリック・シンドローム」は、少なくとも3つの以下の兆候のクラスターとして
定義することができる:腹部脂肪--ほとんどの男性において、40インチ以上のウエス
ト;絶食後、高い血糖--少なくとも110ミリグラム/デシリットル(mg/dl);
血流中の高いトリグリセリド--少なくとも150mg/dL;低いHDL--40mg
/dl未満;および、130/85mmHgまたはそれ以上の血圧。
【0089】
「膵炎」は膵臓の炎症である。
【0090】
「脂質異常症」は、リポタンパク質過剰生産または欠乏を含むリポタンパク質代謝の障
害である。脂質異常症は、血液中の、総コレステロール、低比重リポタンパク質(LDL
)コレステロールおよびトリグリセリド濃度の上昇、ならびに高比重リポタンパク質(H
DL)コレステロール濃度の減少により明らかにされ得る。
【0091】
「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」は、アルコール消費と関連しない、肝細
胞の脂肪変化により特徴付けられる肝臓疾患である。
【0092】
「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」は、アルコール消費と関連せず、小葉内炎
症および線維症を伴う肝細胞の脂肪変化により特徴付けられる肝臓疾患である。
【0093】
「高血圧」または「高い血圧」、すなわち、心臓血管損傷または他の悪影響を誘導する
可能性のあるレベルへの全身動脈血圧の一時的または持続的上昇。高血圧は、140mm
Hgを超える収縮期血圧または90mmHgを超える拡張期血圧として独断的に定義され
ている。
【0094】
「心臓血管疾患」は、心臓または血管に関連する疾患である。
【0095】
「急性心筋梗塞」は、心臓部分への血液供給の妨害があるときに起こる。十分な期間処
置されずに放置されると、虚血および酸素不足を起こし、心筋組織(心筋)の損傷または
死(梗塞)を引き起こし得る。
【0096】
「末梢動脈疾患」は、プラークが頭、臓器および手足へ血液を運ぶ動脈において構築す
るときに起こる。時間とともに、プラークは、動脈を硬化し狭め、臓器および身体の他の
部分への酸素を豊富に含む血液の流量を制限し得る
【0097】
「アテローム性動脈硬化症」は、大および中動脈の内膜における不規則に分散された脂
質沈着により特徴付けられる血管疾患であり、動脈内腔の狭窄を引き起こし、結局は線維
症および石灰化が始まる。病変は、通常病巣であり、ゆっくり、断続的に進行する。血流
の制限は、病変の分布および重症度によって異なる多くの臨床症状の原因となる。
【0098】
「卒中」は、24時間以上続く脳循環の損傷に関連するあらゆる急性臨床事象である。
卒中は、循環が危険にさらされている脳組織の位置および程度に依存して、不可逆性脳損
傷、症状の型および重症度に関連する。
【0099】
鬱血性心不全とも称される「心不全」は、心臓がもはや身体の他の部分へ血液を十分に
供給することができない状態である。
【0100】
冠動脈疾患とも称される「冠動脈性心臓疾患」は、心臓へ血液および酸素を供給する少
量の血管の狭窄である。
【0101】
「腎臓疾患」またはネフロパシーは、腎臓のあらゆる疾患である。糖尿病性腎症は、1
型または2型糖尿病を有する人々における罹患率および死亡率の主な原因である。
【0102】
「ニューロパシー」は、脳神経または末梢もしくは自律神経系と関連するあらゆる疾患
である。
【0103】
「胃不全まひ」は、腸の排出遅延をもたらす胃蠕動の低下である。
【0104】
本発明によって包含される重症患者は、一般的に、不安定な代謝亢進状態を経験する。
該不安定な代謝状態は、いくつかの栄養素における相対的な欠乏を引き起こし得る基質代
謝における変化による。一般的に、脂肪および筋肉の両方の酸化の増加が存在する。
【0105】
さらに、重症患者は、好ましくは、全身性炎症反応症候群または呼吸困難を経験する患
者である。罹患率における減少は、重症患者がさらなる病気、状態または症状を発症する
可能性を減少すること、または、さらなる病気、状態または症状の重症度を減少すること
を意味する。例えば、罹患率を減少することは、菌血症もしくは敗血症または多臓器不全
と関連する合併症の発症の減少に対応し得る。
【0106】
本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明白
に他の意味を示さない限り、複数の表示を含む。したがって、例えば、「抗体」に対する
表示は、2つ以上のこのような抗体の混合物を含む。
【0107】
本明細書において使用される「約」なる用語は、値の+/-20%、さらに好ましくは
+/-10%、またはよりさらに好ましくは+/-5%を示す。
【0108】
「ポリペプチド」および「タンパク質」なる用語は、互換的に使用され、コードおよび
非コードアミノ酸、天然および非天然アミノ酸、化学的もしくは生化学的に修飾もしくは
誘導体化されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含むこ
とができるあらゆる長さのアミノ酸のポリマー形態を示す。該用語は、融合タンパク質を
含み、N-末端メチオニン残基を有していろうとなかろうと、異種アミノ酸配列との融合
タンパク質、異種および同種リーダー配列との融合物;免疫学的タグ化タンパク質などを
含むが、これらに限定されない。
【0109】
「個体」、「対象」、「宿主」および「患者」なる用語は、互換的に使用され、診断、
処置または治療が望まれるあらゆる対象、特にヒトを示す。他の対象は、ウシ、イヌ、ネ
コ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含み得る。いくつかの好ましい態
様において、対象はヒトである。
【0110】
本明細書において使用される「サンプル」なる用語は、患者由来の生物学的材料を示す
。本発明によりアッセイされるサンプルは、何ら特定の型に限定されない。サンプルは、
限定的な例として、単一の細胞、複数の細胞、組織、腫瘍、生物学的液体、生物学的分子
もしくは上清または前記のいずれかの抽出物を含む。例えば、生検のために取り出される
組織、切除中に取り出される組織、血液、尿、リンパ組織、リンパ液、脳脊髄液、粘液お
よび糞便サンプルを含む。使用されるサンプルは、アッセイフォーマット、検出方法なら
びにアッセイされる腫瘍、組織、細胞または抽出物の性質に基づいて変化する。サンプル
を調製するための方法は、当分野でよく知られており、容易に適合させ、利用される方法
に適合するサンプルを得ることができる。
【0111】
本明細書において使用される「生物学的分子」なる用語は、ポリペプチド、核酸および
糖類を含むが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書において使用される「調節」なる用語は、遺伝子、タンパク質または細胞の内
部、外部または表面に存在するあらゆる分子の質または量における変化を示す。該変化は
、該分子の発現またはレベルにおける増加または減少であり得る。「調節する」なる用語
はまた、限定はしないが、血糖、インスリン、トリグリセリドもしくはコレステロールレ
ベルを低下させる;肝臓脂質もしくは肝臓トリグリセリドレベルを減少させる;体重を減
少させる;および、グルコース耐性、エネルギー消費またはインスリン感受性を改善する
能力を含む生物学的機能/活性の質または量の変化を含む。
【0113】
本明細書において使用される「モジュレーター」なる用語は、FGF21関連障害、例
えば、1型もしくは2型糖尿病または代謝状態様肥満と関連する1つ以上の生理学的また
は生化学的事象を調節する組成物を示す。該事象は、血糖、インスリン、トリグリセリド
もしくはコレステロールレベルを低下させる;肝臓脂質もしくは肝臓トリグリセリドレベ
ルを減少させる;体重を減少させる;および、グルコース耐性、エネルギー消費またはイ
ンスリン感受性を改善する能力を含むが、これらに限定されない。
【0114】
「遺伝子産物」は、遺伝子により発現または生産されるバイオポリマー産物である。遺
伝子産物は、例えば、つなぎ合わされていないRNA、mRNA、スプライス変異体mR
NA、ポリペプチド、翻訳後修飾されたポリペプチド、スプライス変異体ポリペプチドな
どであり得る。また、該用語により含まれるものは、鋳型(すなわちRNAのcDNA)
としてRNA遺伝子産物を使用して作製されるバイオポリマー産物である。遺伝子産物は
、酵素的に、組換え的に、化学的に、または遺伝子が生来の細胞内で作製され得る。いく
つかの態様において、遺伝子産物がタンパク性であるとき、それは生物学的活性を示す。
いくつかの態様において、遺伝子産物が核酸であるとき、それは生物学的活性を示すタン
パク性遺伝子産物に翻訳され得る。
【0115】
本明細書において使用される「FGF21活性の調節」は、例えば、FGF21ポリヌ
クレオチドまたはポリペプチドとの薬剤の相互作用、FGF21転写および/または翻訳
の阻害(例えば、FGF21遺伝子またはFGF21転写産物とのアンチセンスまたはs
iRNA相互作用を介して、FGF21発現を促進する転写因子の調節を介して)などの
結果であり得るFGF21活性における増加または減少を示す。例えば、生物学的活性の
調節は、生物学的活性における増加または減少を示す。FGF21活性は、限定はしない
が、対象において、血糖、インスリン、トリグリセリドまたはコレステロールレベルをア
ッセイすること、FGF21ポリペプチドレベルを評価すること、または、FGF21転
写レベルを評価することを含む方法により評価することができる。FGF21活性の比較
はまた、例えば、FGF21下流バイオマーカーのレベルを測定すること、およびFGF
21シグナル伝達における増加を評価することにより成し遂げることができる。FGF2
1活性はまた、細胞シグナル伝達;キナーゼ活性;脂肪細胞へのグルコース摂取;血液イ
ンスリン、トリグリセリドまたはコレステロールレベル変動;肝臓脂質または肝臓トリグ
リセリドレベル変化;FGF21とFGF21受容体間の相互作用;または、FGF21
受容体のリン酸化を測定することにより評価することができる。いくつかの態様において
、FGF21受容体のリン酸化はチロシンリン酸化であり得る。いくつかの態様において
、FGF21活性の調節は、FGF21-関連表現型の調節を引き起こすことができる。
【0116】
FGF21活性の比較はまた、例えば、FGF21下流バイオマーカーのレベルを測定
すること、およびFGF21シグナル伝達における増加を評価することにより成し遂げる
ことができる。FGF21活性はまた、細胞シグナル伝達;キナーゼ活性;脂肪細胞への
グルコース摂取;血液インスリン、トリグリセリドまたはコレステロールレベル変動;肝
臓脂質または肝臓トリグリセリドレベル変化;FGF21と受容体(FGFR-1c、F
GFR-2cまたはFGFR-3c)間の相互作用;または、FGF21受容体のリン酸
化を測定することにより評価することができる。いくつかの態様において、FGF21受
容体のリン酸化はチロシンリン酸化であり得る。いくつかの態様において、FGF21活
性の調節は、FGF21-関連表現型の調節を引き起こすことができる。
【0117】
本明細書において使用される「FGF21下流バイオマーカー」は、遺伝子もしくは遺
伝子産物または遺伝子もしくは遺伝子産物の測定可能な徴候である。いくつかの態様にお
いて、FGF21の下流マーカーである遺伝子または活性は、発現の改変されたレベル、
または血管組織においてで示す。いくつかの態様において、下流マーカーの活性は、FG
F21モジュレーターの存在下で改変される。いくつかの態様において、下流マーカーは
、FGF21が本発明のFGF21モジュレーターでかき乱されるとき、発現の改変され
たレベルを示す。FGF21下流マーカーは、グルコースまたは2-デオキシ-グルコー
ス摂取、pERKおよび他のリン酸化またはアセチル化タンパク質またはNADレベルを
含むが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書において使用される「上方調節する」なる用語は、活性または量の増加、活性
化または刺激を示す。例えば、本発明の文脈において、FGF21モジュレーターは、F
GF21受容体の活性を増加させ得る。1つの態様において、FGFR-1c、FGFR
-2c、またはFGFR-3cの1つ以上は、FGF21モジュレーターに応答して上方
調節され得る。上方制御はまた、FGF21-関連活性、例えば、血糖、インスリン、ト
リグリセリドもしくはコレステロールレベルを低下する;肝臓脂質もしくはトリグリセリ
ドレベルを減少する;体重を減少する;グルコース耐性、エネルギー消費またはインスリ
ン感受性を改善する;またはFGF21受容体のリン酸化を引き起こす;またはFGF2
1下流マーカーを増加する能力を示すことができる。FGFR21受容体は、FGFR-
1c、FGFR-2c、またはFGFR-3cの1つ以上であり得る。上方制御は、コン
トロールと比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なく
とも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なく
とも400%、または少なくとも500%であり得る。
【0119】
本明細書において使用される「N-末端」なる用語は、タンパク質の少なくとも最初の
20個のアミノ酸を示す。
【0120】
本明細書において使用される「N-末端ドメイン」および「N-末端領域」なる用語は
、互換的に使用され、タンパク質の第1のアミノ酸で始まり、タンパク質のN-末端半分
における任意のアミノ酸で終わるタンパク質のフラグメントを示す。例えば、FGF21
のN-末端ドメインは、配列番号:1のアミノ酸1から配列番号:1のほぼアミノ酸10
から105の間の任意のアミノ酸までである。
【0121】
本明細書において使用される「C-末端」なる用語は、タンパク質の少なくとも最後の
20個のアミノ酸を示す。
【0122】
本明細書において使用される「C-末端ドメイン」および「C-末端領域」なる用語は
、互換的に使用され、タンパク質のC末端半分における任意のアミノ酸で始まり、タンパ
ク質の最後のアミノ酸で終わるタンパク質のフラグメントを示す。例えば、FGF21の
C末端ドメインは、配列番号:1のアミノ酸105から約アミノ酸200の間から任意の
アミノ酸で始まり、配列番号:1のアミノ酸209で終わる。
【0123】
本明細書において使用される「ドメイン」なる用語は、生体分子の知られているまたは
疑われる機能に寄与する該生体分子の構造部を示す。ドメインは、領域またはその一部と
同一であってよく、領域の全てまたは一部に加えて、特定の領域と異なる生体分子の一部
を組み込まれていてもよい。
【0124】
本明細書において使用される「シグナルドメイン」(「シグナル配列」または「シグナ
ルペプチド」とも称される)なる用語は、前駆体タンパク質(しばしば、膜結合または分
泌タンパク質)のN-末端領域で一続きのアミノ酸配列にて存在するペプチドドメインを
示し、翻訳後タンパク質輸送に関与する。多くの場合、シグナルドメインは、選別プロセ
スが完了した後、特異的シグナルペプチダーゼにより全長タンパク質から除去される。そ
れぞれのシグナルドメインは、細胞中の前駆体タンパク質の特定の目標を指定する。FG
F21のシグナルドメインは、配列番号:1のアミノ酸1-28である。
【0125】
本明細書において使用される「受容体結合ドメイン」なる用語は、膜結合受容体タンパ
ク質と接触し、細胞性応答、例えば、シグナル伝達事象を引き起こすタンパク質の任意の
位置または領域を示す。
【0126】
本明細書において使用される「リガンド結合ドメイン」なる用語は、対応する天然配列
の少なくとも1つの定性結合活性を保持する本発明の融合タンパク質の任意の部分または
領域を示す。
【0127】
「領域」なる用語は、生体分子の一次構造の物理的に隣接する部分を示す。タンパク質
の場合、領域は、タンパク質のアミノ酸配列の隣接する部分により定義される。いくつか
の態様において、「領域」は、生体分子の機能と関連する。
【0128】
本明細書において使用される「フラグメント」なる用語は、生体分子の一次構造の物理
的に隣接する部分を示す。タンパク質の場合、部分は、タンパク質のアミノ酸配列の隣接
する部分により定義され、少なくとも3-5アミノ酸、少なくとも8-10アミノ酸、少
なくとも11-15アミノ酸、少なくとも17-24アミノ酸、少なくとも25-30ア
ミノ酸および少なくとも30-45アミノ酸を示す。オリゴヌクレオチドの場合、部分は
、オリゴヌクレオチドの核酸配列の隣接する部分により定義され、少なくとも9-15ヌ
クレオチド、少なくとも18-30ヌクレオチド、少なくとも33-45ヌクレオチド、
少なくとも48-72ヌクレオチド、少なくとも75-90ヌクレオチドおよび少なくと
も90-130ヌクレオチドを示す。いくつかの態様において、生体分子の部分は、生物
学的活性を有する。本発明の文脈において、FGF21ポリペプチドフラグメントは、配
列番号:1に記載されている全FGF21ポリペプチド配列を含まない。
【0129】
「天然配列」ポリペプチドは、天然由来のポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するも
のである。このような天然配列ポリペプチドは、天然から単離することができるか、また
は組換えもしくは合成手段により生産することができる。したがって、天然配列ポリペプ
チドは、天然ヒトポリペプチド、マウスポリペプチド、または任意の他の哺乳動物種由来
のポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。
【0130】
本明細書において使用される「同種ヌクレオチド配列」もしくは「同種アミノ酸配列」
またはそれらの変異なる句は、少なくとも特定のパーセントのヌクレオチドレベルまたは
アミノ酸レベルでの相同性により特徴付けられる配列を示し、「配列同一性」と互換的に
使用される。同種ヌクレオチド配列は、タンパク質のアイソフォームをコードする配列を
含む。このようなアイソフォームは、例えば、RNAの代替スプライシングの結果として
、同じ生物体の異なる組織において発現させることができる。あるいは、アイソフォーム
は、異なる遺伝子によってコードされ得る。同種ヌクレオチド配列は、限定はしないが哺
乳動物を含む、ヒト以外の種のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。同種ヌ
クレオチド配列はまた、限定はしないが、本明細書に記載されているヌクレオチド配列の
天然対立遺伝子変異および突然変異を含む。同種アミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換を
含み、ポリペプチドが同じ結合および/または活性を有するアミノ酸配列を含む。いくつ
かの態様において、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、比較配列と少なくとも60%以
上、最大99%同一性を有するとき、同種である。いくつかの態様において、ヌクレオチ
ドまたはアミノ酸配列は、比較配列と1つ以上、最大60個のヌクレオチド/アミノ酸置
換、付加または欠失を有するとき、同種である。いくつかの態様において、同種アミノ酸
配列は、最大5または最大3個の保存的アミノ酸置換を有する。
【0131】
相同性または同一性パーセントは、例えば、SmithおよびWatermanのアル
ゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482-489)を使用する、デフォルト設定を使用し
てGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for UNIX, Gen
etics Computer Group, University Research Park, Madison WI)により決定することが
できる。いくつかの態様において、プローブと標的間の相同性は、約75%から約85%
である。いくつかの態様において、核酸は、配列番号:2またはその部分と少なくとも約
95%、約97%、約98%、約99%および約100%同種であるヌクレオチドを有す
る。
【0132】
相同性はまた、ポリペプチドレベルであり得る。いくつかの態様において、本発明の融
合タンパク質の構成ポリペプチドは、完全長野生型対応物もしくは対応する天然配列、ま
たはそれらの部分と少なくとも95%同種であり得る。本発明の融合タンパク質またはそ
の部分および異なるアミノ酸配列の同一性程度またはパーセントは、「本発明配列」また
は「外来配列」のどちらか小さい方の長さで割った2つの配列のアラインメントにおける
正確な一致の数として計算する。結果は、同一性パーセントとして示される。
【0133】
本明細書において使用される「混合」なる用語は、同じ領域中で1つ以上の化合物、細
胞、分子などを互いに合わせるプロセスを示す。これは、例えば、試験チューブ、ペトリ
皿または1つ以上の化合物、細胞または分子を混合することが可能であるあらゆる容器中
で行われ得る。
【0134】
本明細書において使用される「実質的に精製される」なる用語は、天然環境から取り出
されており、天然に関連する他の成分を少なくとも60%、少なくとも75%、および少
なくとも90%含まない化合物(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたは抗
体のいずれか)を示す。
【0135】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、治療剤、例えば、抗体またはポリペプチド、
遺伝子および他の治療剤の投与のための担体を示す。該用語は、組成物を受ける個体に有
害な抗体の生産をそれ自体誘導せず、過度の毒性なく投与することができるあらゆる医薬
担体を示す。適当な担体は、大型のゆっくり代謝される高分子、例えば、タンパク質、多
糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集
物および不活性ウイルス粒子であり得る。このような担体は、当業者によく知られている
。治療組成物における薬学的に許容される担体は、液体、例えば、水、塩水、グリセロー
ルおよびエタノールを含むことができる。補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH
緩衝物質などもまた、このようなビヒクル中に存在することができる。
【0136】
本発明の融合タンパク質の物理的安定性を増強すること
システイン残基により提供される天然ジスルフィド結合は、一般的に、タンパク質の熱
力学的安定性を増加させる。融解温度の増加において測定されるとき、熱力学的安定性の
増加の成功例は、酵素T4リゾチーム(Matsumuraら PNAS 86:6562-6566 (1989))および
バルナーゼ(Johnsonら J. Mol. Biol. 268:198-208 (1997))の多数のジスルフィド結合
された突然変異体である。本発明の局面は、野生型FGF21の柔軟性を抑制し、それに
より、タンパク質の疎水性コアへの保存剤のアクセスを制限する、変異体内のジスルフィ
ド結合の存在によりなし遂げられた、保存剤の存在下でのFGF21の物理的安定性の増
強である。
【0137】
したがって、本発明の第2の局面は、例えば、システイン残基を野生型FGF21タン
パク質または本発明のポリペプチドおよびタンパク質変異体に組み込む、または置換する
ことを介する、さらなるジスルフィド結合の取り込みにより生じる増強された医薬安定性
を有するヒトFGF21の変異体またはその生物学的に活性なペプチドを提供する。当業
者は、本明細書において記載されている提案された態様に加えて、天然システイン、シス
テイン103およびシステイン121を、改善された特性を与え得る新規ジスルフィド結
合を導入するために遺伝子座として利用することができることを認識している。
【0138】
これらは、2つ以上の以下のもの:グルタミン46、アルギニン47、チロシン48、
ロイシン49、チロシン50、スレオニン51、アスパラギン酸52、アスパラギン酸5
3、アラニン54、グルタミン55、グルタミン56、スレオニン57、グルタミン酸5
8、アラニン59、ヒスチジン60、ロイシン61、グルタミン酸62、イソロイシン6
3、バリン69、グリシン70、グリシン71、アラニン72、アラニン73、ロイシン
144、ヒスチジン145、ロイシン146、プロリン147、グリシン148、アスパ
ラギン149、リジン150、セリン151、プロリン152、ヒスチジン153、アル
ギニン154、アスパラギン酸155、プロリン156、アラニン157、プロリン15
8、アルギニン159、グリシン160、プロリン161、アラニン162、アルギニン
163、フェニルアラニン164(ここで、アミノ酸の番号は、全長209アミノ酸hF
GF21配列の配列番号:1に基づく)に対してシステインでの置換を有する野生型FG
F-21を包含する融合タンパク質を含む。
【0139】
さらに、本発明の融合タンパク質は、Cys103-Cys121の天然の1つに加え
て、以下のとおりで、操作されたジスルフィド結合で増強された野生型ヒトFGF21の
変異体またはその生物学的に活性なペプチドを包含し得る:Gln46Cys-Ala5
9Cys、Gln46Cys-His60Cys、Gln46Cys-Leu61Cys
、Gln46Cys-Glu62Cys、Gln46Cys-Ile63Cys、Arg
47Cys-Ala59Cys、Arg47Cys-His60Cys、Arg47Cy
s-Leu61Cys、Arg47Cys-Glu62Cys、Arg47Cys-Il
e63Cys、Tyr48Cys-Ala59Cys、Tyr48Cys-His60C
ys、Tyr48Cys-Leu61Cys、Tyr48Cys-Glu62Cys、T
yr48Cys-Ile63Cys、Leu49Cys-Ala59Cys、Leu49
Cys-His60Cys、Leu49Cys-Leu61Cys、Leu49Cys-
Glu62Cys、Leu49Cys-Ile63Cys、Tyr50Cys-Ala5
9Cys、Tyr50Cys-His60Cys、Tyr50Cys-Lue61Cys
、Tyr50Cys-Glu62Cys、Tyr50Cys-Ile63Cys、Leu
144Cys-Gly160Cys、Leu144Cys-Pro161Cys、Leu
144Cys-Ala162Cys、Leu144Cys-Arg163Cys、Leu
144Cys-Phe164Cys、His145Cys-Gly160Cys、His
145Cys-Pro161Cys、His145Cys-Ala162Cys、His
145Cys-Arg163Cys、His145Cys-Phe164Cys、Leu
146Cys-Gly160Cys、Leu146Cys-Pro161Cys、Leu
146Cys-Ala162Cys、Leu146Cys-Arg163Cys、Leu
146Cys-Phe164Cys、Pro147Cys-Gly160Cys、Pro
147Cys-Pro161Cys、Pro147Cys-Ala162Cys、Pro
147Cys-Arg163Cys、Pro147Cys-Phe164Cys、Gly
148Cys-Gly160Cys、Gly148Cys-Pro161Cys、Gly
148Cys-Ala162Cys、Gly148Cys-Arg163Cys、Gly
148Cys-Phe164Cys、Thr57Cys-Val69Cys、Thr57
Cys-Gly70Cys、Thr57Cys-Gly71Cys、Thr57Cys-
Ala72Cys、Thr57Cys-Ala73Cys、Glu58Cys-Val6
9Cys、Glu58Cys-Glu70Cys、Glu58Cys-G71Cys、G
lu58Cys-Ala72Cys、Glu58Cys-Ala73Cys、Ala59
Cys-Val69Cys、Ala59Cys-Gly70Cys、Ala59Cys-
Gly71Cys、Ala59Cys-Ala72Cys、Ala59Cys-Ala7
3Cys、His60Cys-Val69Cys、His60Cys-Gly70Cys
、His60Cys-Gly71Cys、His60Cys-Ala72Cys、His
60Cys-Ala73Cys、Leu61Cys-Val69Cys、Leu61Cy
s-Gly70Cys、Leu61Cys-Gly71Cys、Leu61Cys-Al
a72Cys、Leu61Cys-Ala73Cys、Arg47Cys-Gly148
Cys、Tyr48Cys-Gly148Cys、Leu49Cys-Gly148Cy
s、Tyr50Cys-Gly148Cys、Thr51Cys-Gly148Cys、
Asp52Cys-Gly148Cys、Asp53Cys-Gly148Cys、Al
a54Cys-Gly148Cys、Gln55Cys-Gly148Cys、Gln5
6Cys-Gly148Cys、Thr57Cys-Gly148Cys、Glu58C
ys-Gly148Cys、Arg47Cys-Asn149Cys、Tyr48Cys
-Asn149Cys、Leu49Cys-Asn149Cys、Tyr50Cys-A
sn149Cys、Thr51Cys-Asn149Cys、Asp52Cys-Asn
149Cys、Asp53Cys-Asn149Cys、Ala54Cys-Asn14
9Cys、Gln55Cys-Asn149Cys、Gln56Cys-Asn149C
ys、Thr57Cys-Asn149Cys、Glu58Cys-Asn149Cys
、Arg47Cys-Lys150Cys、Tyr48Cys-Lys150Cys、L
eu49Cys-Lys150Cys、Tyr50Cys-Lys150Cys、Thr
51Cys-Lys150Cys、Asp52Cys-Lys150Cys、Asp53
Cys-Lys150Cys、Ala54Cys-Lys150Cys、Gln55Cy
s-Lys150Cys、Gln56Cys-Lys150Cys、Thr57Cys-
Lys150Cys、Glu58Cys-Lys150Cys、Arg47Cys-Se
r151Cys、Tyr48Cys-Ser151Cys、Leu49Cys-Ser1
51Cys、Tyr50Cys-Ser151Cys、Thr51Cys-Ser151
Cys、Asp52Cys-Ser151Cys、Asp53Cys-Ser151Cy
s、Ala54Cys-Ser151Cys、Gln55Cys-Ser151Cys、
Gln56Cys-Ser151Cys、Thr57Cys-Ser151Cys、Gl
u58Cys-Ser151Cys、Arg47Cys-Pro152Cys、Tyr4
8Cys-Pro152Cys、Leu49Cys-Pro152Cys、Tyr50C
ys-Pro152Cys、Thr51Cys-Pro152Cys、Asp52Cys
-Pro152Cys、Asp53Cys-Pro152Cys、Ala54Cys-P
ro152Cys、Gln55Cys-Pro152Cys、Gln56Cys-Pro
152Cys、Thr57Cys-Pro152Cys、Glu58Cys-Pro15
2Cys、Arg47Cys-His153Cys、Tyr48Cys-His153C
ys、Leu49Cys-His153Cys、Tyr50Cys-His153Cys
、Thr51Cys-His153Cys、Asp52Cys-His153Cys、A
sp53Cys-His153Cys、Ala54Cys-His153Cys、Gln
55Cys-His153Cys、Gln56Cys-His153Cys、Thr57
Cys-His153Cys、Glu58Cys-His153Cys、Arg47Cy
s-Arg154Cys、Tyr48Cys-Arg154Cys、Leu49Cys-
Arg154Cys、Tyr50Cys-Arg154Cys、Thr51Cys-Ar
g154Cys、Asp52Cys-Arg154Cys、Asp53Cys-Arg1
54Cys、Ala54Cys-Arg154Cys、Gln55Cys-Arg154
Cys、Gln56Cys-Arg154Cys、Thr57Cys-Arg154Cy
s、Glu58Cys-Arg154Cys、Arg47Cys-Asp155Cys、
Tyr48Cys-Asp155Cys、Leu49Cys-Asp155Cys、Ty
r50Cys-Asp155Cys、Thr51Cys-Asp155Cys、Asp5
2Cys-Asp155Cys、Asp53Cys-Asp155Cys、Ala54C
ys-Asp155Cys、Gln55Cys-Asp155Cys、Gln56Cys
-Asp155Cys、Thr57Cys-Asp155Cys、Glu58Cys-A
sp155Cys、Arg47Cys-Pro156Cys、Tyr48Cys-Pro
156Cys、Leu49Cys-Pro156Cys、Tyr50Cys-Pro15
6Cys、Thr51Cys-Pro156Cys、Asp52Cys-Pro156C
ys、Asp53Cys-Pro156Cys、Ala54Cys-Pro156Cys
、Gln55Cys-Pro156Cys、Gln56Cys-Pro156Cys、T
hr57Cys-Pro156Cys、Glu58Cys-Pro156Cys、Arg
47Cys-Ala157Cys、Tyr48Cys-Ala157Cys、Leu49
Cys-Ala157Cys、Tyr50Cys-Ala157Cys、Thr51Cy
s-Ala157Cys、Asp52Cys-Ala157Cys、Asp53Cys-
Ala157Cys、Ala54Cys-Ala157Cys、Gln55Cys-Al
a157Cys、Gln56Cys-Ala157Cys、Thr57Cys-Ala1
57Cys、Glu58Cys-Ala157Cys、Arg47Cys-Pro158
Cys、Tyr48Cys-Pro158Cys、Leu49Cys-Pro158Cy
s、Tyr50Cys-Pro158Cys、Thr51Cys-Pro158Cys、
Asp52Cys-Pro158Cys、Asp53Cys-Pro158Cys、Al
a54Cys-Pro158Cys、Gln55Cys-Pro158Cys、Gln5
6Cys-Pro158Cys、Thr57Cys-Pro158Cys、Glu58C
ys-Pro158Cys、Arg47Cys-Arg159Cys、Tyr48Cys
-Arg159Cys、Leu49Cys-Arg159Cys、Tyr50Cys-A
rg159Cys、Thr51Cys-Arg159Cys、Asp52Cys-Arg
159Cys、Asp53Cys-Arg159Cys、Ala54Cys-Arg15
9Cys、Gln55Cys-Arg159Cys、Gln56Cys-Arg159C
ys、Thr57Cys-Arg159Cys、Glu58Cys-Arg159Cys
、Arg47Cys-G160Cys、Tyr48Cys-G160Cys、Leu49
Cys-G160Cys、Tyr50Cys-Gly160Cys、Thr51Cys-
Gly160Cys、Asp52Cys-Gly160Cys、Asp53Cys-Gl
y160Cys、Ala54Cys-Gly160Cys、Gln55Cys-Gly1
60Cys、Gln56Cys-Gly160Cys、Thr57Cys-Gly160
Cys、Glu58Cys-Gly160Cys、Arg47Cys-Pro161Cy
s、Tyr48Cys-Pro161Cys、Leu49Cys-Pro161Cys、
Tyr50Cys-Pro161Cys、Thr51Cys-Pro161Cys、As
p52Cys-Pro161Cys、Asp53Cys-Pro161Cys、Ala5
4Cys-Pro161Cys、Gln55Cys-Pro161Cys、Gln56C
ys-Pro161Cys、Thr57Cys-Pro161Cys、Glu58Cys
-Pro161Cys、Arg47Cys-Ala162Cys、Tyr48Cys-A
la162Cys、Leu49Cys-Ala162Cys、Tyr50Cys-Ala
162Cys、Thr51Cys-Ala162Cys、Asp52Cys-Ala16
2Cys、Asp53Cys-Ala162Cys、Ala54Cys-Ala162C
ys、Gln55Cys-Ala162Cys、Gln56Cys-Ala162Cys
、Thr57Cys-Ala162Cys、Glu58Cys-Ala162Cys、A
rg47Cys-Arg163Cys、Tyr48Cys-Arg163Cys、Leu
49Cys-Arg163Cys、Tyr50Cys-Arg163Cys、Thr51
Cys-Arg163Cys、Asp52Cys-Arg163Cys、Asp53Cy
s-Arg163Cys、Ala54Cys-Arg163Cys、Gln55Cys-
Arg163Cys、Gln56Cys-Arg163Cys、Thr57Cys-Ar

163Cys、Glu58Cys-Arg163Cys。
【0140】
本発明の別の局面は、本発明の第2の態様において示される2つ以上のアミノ酸位置で
のシステインの置換と共に、本発明の第1の態様において示される任意のアミノ酸位置で
任意の荷電アミノ酸および/または極性であるが非荷電アミノ酸の置換を含む野生型ヒト
FGF21の変異体またはその生物学的に活性なペプチドを含む融合タンパク質を提供す
る。
【0141】
野生型タンパク質比較物およびその変異体に対する本発明の融合タンパク質の改善
タンパク質医薬の開発における重要な挑戦が、タンパク質の物理化学的不安定性に取り
組むことであることは、当分野でよく知られている。このことは、タンパク質医薬製剤が
多数の使用を意図されるとき、さらになおさら明らかであり、注射製剤は、安定な濃縮さ
れた保存溶液を必要とすると同時に、好ましい生物活性プロフィールを維持する。文献に
おける野生型FGF21の生物物理学特性化は、濃縮タンパク質溶液(>5mg/ml)
は、ストレス条件、例えば、高い温度または低いpHに暴露されたとき、加速された会合
および凝集(すなわち、乏しい物理的安定性および生物医薬特性)を引き起こすことを確
立した。医薬防腐剤(例えば、m-クレゾール)へのFGF21の濃縮タンパク質溶液の
暴露はまた、物理的安定性に対するネガティブな影響を有した。
【0142】
したがって、本発明の態様は、生理学的および保存製剤の両方の条件下で、化学安定性
および生物学的効力を維持するが、濃縮溶液の物理的安定性を増強することである。所定
のタンパク質濃度で、温度およびイオン強度が物理的安定性に対して大きな影響を有する
ため、会合および凝集が疎水性相互作用によって生じ得ることが考えられる。ほとんど、
非保存的と推測される表面暴露アミノ酸残基を標的とした。これらの残基の局所環境を分
析し、構造的に重要であると思われないものを突然変異誘発のために選択した。特定の変
化を開始する1つの方法は、グルタミン酸残基を導入することにより、タンパク質のpI
をさらに減少させることである(「グルタミン酸スキャン」)。電荷置換の導入が電荷-
電荷反発を介して疎水性媒介凝集を阻害し、保存剤相溶性を改善する可能性があるという
仮説を立てられる。加えて、当業者はまた、十分な程度の突然変異誘発で、負電荷の同時
減少有りまたは無しでの正電荷の導入により、pIを塩基性(basic)pH範囲にシフトさ
せ、したがって電荷-電荷反発を起こすことができることを認識している。
【0143】
生物学的薬物としての野生型FGF21の治療的適応と関連するさらなる困難性は、例
えば、その半減期がインビボで非常に短い(マウスおよび霊長類においてそれぞれ約0.
5および2時間)ことである。したがって、より高い効力またはより長い半減期のいずれ
かによりさらに有効である追跡(follow-up)化合物を開発する必要性が存在する。本発明
の融合タンパク質は、より高い効力および半減期延長製剤で、FGF21処置の望ましい
効果をなし遂げるための手段として開発された。
【0144】
さらに本明細書に記載されているとおり、本発明の融合タンパク質は、PCT公開WO
10/129600における野生型FGF21の非常に短い半減期および融合タンパク質
Fc-L(15)-FGF21(L98R、P171G、A180E)の17時間半減期
と比較して、マウスにおいて2週間以上良い半減期を有する。本発明の融合タンパク質は
また、本明細書および2010年11月19日に出願されたUS特許出願61/415,
476に記載されているペグ化V76と比較して、改善された半減期および薬物動態学的
特性を証明する。
【0145】
さらに、1mpkでの本発明のFc-FGF21融合タンパク質は、グルコース、イン
スリン、体重および肝臓脂質の低下に対して、5mpkでのV76よりもより有効である
。ob/obマウスにおける12日処置試験において、融合タンパク質は、ビヒクルから
の以下の%変化を示す(全ての融合物を1.0mg/kgで投与し、V76を5.0mg
/kgで投与する):
【0146】
ビヒクルからの総グルコース(AUC)%変化:V76は-42%であり;V101は
-53%であり、V103は-46%であり、V188は-42%である;
【0147】
ビヒクルからの総血漿インスリン%変化:V76は-46%であり;V101は-82
%であり、V103は-69%であり、V188は-59%である;
【0148】
ビヒクルからの総体重%変化:V76は-7%であり;V101は-12%であり、V
103は-12%であり、V188は-11%である;そして、
【0149】
ビヒクルからの総肝臓脂質%変化:V76は-30%であり;V101は-44%であ
り、V103は-50%であり、V188は-51%である。
【0150】
同様に、インビトロアッセイは、V76よりも、本発明の融合タンパク質の5倍以上良
い効力を示す:
【0151】
ヒト脂肪細胞アッセイにおけるpERKにおいて(平均EC50±SEM)、V76は
21±2nM(n=3)であり;V101は1.0±0.1nM(n=3)であり、V1
03は1.3±0.2nM(n=3)であり、V188は1.4±0.4nM(n=3)
である;
【0152】
ヒトβクロトーアッセイでのHEK293におけるpERKにおいて(平均EC50±
SEM)、V76は13±4nM(n=5)であり、V101は0.60±0.06nM
(n=5)であり、V103は0.9±0.3nM(n=5)であり、V188は0.4
±0.1nM(n=3)である;そして、
【0153】
マウス脂肪細胞アッセイにおけるグルコース摂取において(平均EC50±SEM)、
V76は5±1nM(n=3)であり、V101は0.60±0.06nM(n=3)で
あり、V103は0.60±0.07nM(n=3)であり、V188は0.48±0.
14nM(n=3)である。
【0154】
本発明の態様は、生理学的および保存医薬製剤の両方の条件下で物理化学的安定性に関
与するが、例えば、野生型FGF21と比較して本発明の融合タンパク質の生物学的効力
の維持が、同様に考慮される重要な因子である。したがって、本発明のタンパク質の生物
学的効力は、本願明細書の実施例において示されるとおり、グルコース摂取および/また
は血漿グルコースレベルの低下に影響するタンパク質の能力により定義される。
【0155】
本発明にしたがって投与される本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプ
チドは、当分野で知られている任意の手段により作製および/または単離され得る。変異
体を生産するための最も好ましい方法は、組換えDNA方法論を介することであり、当業
者によく知られている。このような方法は、Molecular Biology(John
Wiley & Sons, Inc.)のCurrent Protocolsに記載されており、これ
を出典明示により本明細書に包含させる。
【0156】
さらに、好ましい態様は、本明細書に記載されている変異体に由来する生物学的に活性
なペプチドを含む。このようなペプチドは、記載されている少なくとも1つの置換を含み
、該変異体は、生物学的活性を有する。ペプチドは、当業者に知られているあらゆる、お
よび全ての手段により生産され得、この例は、酵素消化、化学合成または組換えDNA方
法論を含むが、これらに限定されない。
【0157】
特定の線維芽細胞増殖因子のペプチドのフラグメントが生物学的に活性であることが当
分野で確立されている。例えば、Bairdら Proc. Natl. Acad. Sci (USA) 85:2324-2328 (
1988)およびJ. Cell. Phys. Suppl. 5:101-106 (1987)参照。したがって、変異体のフラ
グメントまたはペプチドの選択は、当分野で知られている基準に基づく。例えば、ジペプ
チジルペプチダーゼIV(DPP-IVまたはDPP-4)が、神経ペプチド、内分泌腺
ペプチドおよびサイトカインの不活性化に関与するセリン型プロテアーゼであることが知
られている(Dammeら Chem. Immunol. 72: 42-56, (1999))。FGF21のN-末端(H
isProIlePro)は、DPP-IVに対する基質となる可能性がある2つのジペ
プチドを含み、4個のアミノ酸によってN-末端で切断されたFGF21のフラグメント
をもたらし得る。予想外に、野生型FGF21の該フラグメントは、生物学的活性保持す
ることが証明されており、したがって、最大4個のアミノ酸によってN-末端で切断され
た本発明のタンパク質は、本発明の態様である。
【0158】
本発明はまた、RNAの形態またはDNAの形態であってよい上記変異体をコードする
ポリヌクレオチドを含み、該DNAはcDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAを含む。
DNAは二本鎖または一本鎖であってよい。本発明のタンパク質をコードするコード配列
は、遺伝子コードの重複または縮重の結果として変化し得る。
【0159】
本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、以下のものを含み得る:変
異体に対するコード配列のみ、変異体に対するコード配列およびさらなるコード配列、例
えば、機能性ポリペプチド、またはリーダーもしくは分泌配列または前駆タンパク質配列
;変異体に対するコード配列および非コード配列、例えば、イントロンまたは変異体に対
するコード配列の5’および/または3’の非コード配列。したがって、「変異体をコー
ドするポリヌクレオチド」なる用語は、さらなるコードおよび/または非コード配列を含
む、変異体に対するコード配列だけでなく、ポリヌクレオチドもまた含み得るポリヌクレ
オチドを含む。
【0160】
本発明はさらに、示される置換を含む、ポリペプチドのフラグメント、アナログおよび
誘導体をコードする記載されているポリヌクレオチドの変異体に関する。ポリヌクレオチ
ドの変異体は、ヒトFGF21配列の天然対立遺伝子変異体、非天然変異体、または上記
切断変異体であり得る。したがって、本発明はまた、上記変異体をコードするポリヌクレ
オチド、ならびに記載されている変異体のフラグメント、誘導体またはアナログをコード
するこのようなポリヌクレオチドの変異体を含む。このようなヌクレオチド変異体は、第
1または第2の態様の少なくとも1つの示されたアミノ酸置換が存在するかぎり、欠失変
異体、置換変異体、切断変異体、および付加または挿入変異体を含む。
【0161】
本発明のポリヌクレオチドは、配列が発現コントロール配列に作動可能に連結した(す
なわち、発現コントロール配列の機能を保証するように位置する)後、宿主において発現
する。これらの発現ベクターは一般的に、エピソームまたは宿主染色体DNAの不可欠な
部分として、宿主生物中で複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配
列で形質転換された細胞の検出を可能にするために、選択マーカー、例えば、テトラサイ
クリン、ネオマイシンおよびジヒドロ葉酸レダクターゼを含み得る。FGF21変異体は
、適当なプロモーターのコントロール下で、哺乳動物細胞、昆虫、酵母、細菌または他の
細胞において発現させることができる。無細胞翻訳系もまた、本発明のDNA構築物由来
のRNAを使用して、このようなタンパク質を生産するために使用することができる。
【0162】
大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングするために特に有用な原核生物宿
主である。使用のために適当な他の微生物宿主は、枯草菌(Bacillus subtilus)、ネズミ
チフス菌(Salmonella typhimurium)ならびにセラチア、シュードモナス、連鎖球菌および
ブドウ球菌の様々な種を含むが、他のものも当然選択肢として使用され得る。これらの原
核生物宿主において、1つはまた、一般的に宿主細胞と適合性のある発現コントロール配
列(例えば、複製起点)を含む発現ベクターを作ることができる。加えて、多くのよく知
られているプロモーター、例えば、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(Trp
)プロモーター系、ベータ-ラクタマーゼプロモーター系またはファージラムダもしくは
T7由来のプロモーター系が存在し得る。プロモーターは、一般的に、所望によりオペレ
ーター配列にて、発現をコントロールし、転写および翻訳を開始および完了するために、
リボソーム結合部位配列などを有する。
【0163】
タンパク質の発現の当業者は、メチオニンまたはメチオニン-アルギニン配列が大腸菌
における発現のために成熟配列(配列番号:3)のN-末端に導入され得ることを認識し
、本発明の文脈において考慮される。したがって、特記されない限り、大腸菌において発
現される本発明のタンパク質は、N-末端に導入されたメチオニン配列を有する。
【0164】
他の微生物、例えば、酵母または真菌もまた、発現のために使用され得る。メタノール
資化酵母、出芽酵母、分裂酵母およびピチア・アングスタ(Pichia angusta)は、所望の、
発現コントロール配列、例えば、プロモーター、例えば、3-ホスホグリセリン酸キナー
ゼまたは他の糖分解酵素、および複製起点、終始配列などを有する適当なベクターと共に
、好ましい酵母宿主の例である。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、トリコ
デルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei);およびスエヒロタケ(Schizophyllum commune)
は、真菌宿主の例であるが、他のものも当然選択肢として使用され得る。
【0165】
哺乳動物組織細胞培養物もまた、本発明のポリペプチドを発現および生産するために使
用され得る。無傷な変異体を分泌することができる多くの適当な宿主細胞系が、当分野で
開発されているため、真核細胞が実際に好ましく、CHO細胞系、種々のCOS細胞系、
NSO細胞、Syrian Hamster卵巣細胞系、HeLa細胞またはヒト胚腎臓
細胞系(すなわちHEK293、HEK293EBNA)を含む。
【0166】
これらの細胞のための発現ベクターは、発現コントロール配列、例えば、複製起点、プ
ロモーター、エンハンサー、および必要なプロセッシング情報部位、例えば、リボソーム
結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列
を含むことができる。好ましい発現コントロール配列は、SV40、アデノウイルス、ウ
シパピローマウイルス、サイトメガロウイルス、Raus肉腫ウイルスなどに由来するプ
ロモーターである。好ましいポリアデニル化部位は、SV40およびウシ成長ホルモンに
由来する配列を含む。
【0167】
興味あるポリヌクレオチド配列(例えば、本発明の融合タンパク質および発現コントロ
ール配列)を含むベクターは、よく知られている方法により宿主細胞に移動させることが
でき、これは細胞性宿主の型に依存して変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェ
クションは、原核細胞のために一般的に利用され、リン酸カルシウム処理またはエレクト
ロポレーションは、他の細胞性宿主のために使用され得る。
【0168】
タンパク質精製の種々の方法が使用され得、このような方法は、例えば、Deutscher, M
ethods in Enzymology 182: 83-9 (1990)およびScopes, Protein Purification: Princip
les and Practice, Springer-Verlag, NY (1982)において、当分野で知られており、記載
されている。選択される精製工程は、例えば、本発明の融合タンパク質のために使用され
る生産プロセスの性質に依存する。
【0169】
本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチド、例えば、本発明のデュア
ル活性融合タンパク質は、患者の臨床状態、タンパク質組成物の送達部位、投与方法、投
与スケジュールおよび専門家に知られている他の因子を考慮して、良い医療行為と一致す
る様式において処方および投与されるべきである。したがって、本明細書における目的の
ために本発明の融合タンパク質の「治療有効量」は、このような考えにより決定される。
【0170】
本発明のタンパク質の医薬組成物は、一般的に意図される目的をなし遂げる任意の手段
により、1型および2型糖尿病、肥満、メタボリック・シンドロームまたは重症患者を処
置するために投与され得る。非限定的な許容される投与手段は、例えば、吸入もしくは坐
薬的により、または例えば膣、経直腸、尿道、経口内および舌下組織への洗浄により粘膜
組織へ、経口的、経鼻的、局所的、鼻腔内、腹腔内、非経腸的、静脈内、筋肉内、胸骨内
、関節内注射により、リンパ管内、間質的、動脈内、皮下的、滑液嚢内、経上皮的および
経皮的にを含む。いくつかの態様において、医薬組成物は、洗浄、経口的または動脈中に
より投与される。導入の他の適当な方法はまた、再充電可能または生分解性デバイスおよ
び徐放または持続放出ポリマーデバイスを含むことができる。本発明の医薬組成物はまた
、他の既知の代謝剤との組合せ治療の一部として投与することができる。
【0171】
投与される用量は、年齢、健康状態およびレシピエントの体重、もしあれば同時処置の
種類、処置の頻度、および所望の効果の性質に依存する。本発明の範囲内の組成物は、F
GF21変異体が、1型または2型糖尿病、肥満またはメタボリック・シンドロームの処
置のために所望の医療効果をなし遂げるために有効である量において存在する全ての組成
物を含む。個々の必要性はある患者から別の患者で変化し得るが、全ての成分の有効量の
最適範囲の決定は、通常の臨床医の能力の範囲内である。
【0172】
本発明のタンパク質は、薬学的に有用な組成物を調製するために、既知の方法にしたが
って製剤化することができる。所望の製剤は、任意の薬学的に許容される担体、防腐剤、
賦形剤または安定剤を有する高い純度の適当な希釈剤または水溶液で再構成された安定な
凍結乾燥された産物である[Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition (1980
)]。本発明のタンパク質は、薬学的に許容されるバッファーと組み合わされて、pHを
、許容される安定性および投与のために許容されるpHを提供するために調整され得る。
【0173】
非経口投与において、1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、一般的に、単
位用量の注射可能形態(溶液、懸濁液またはエマルジョン)における所望の純度の程度の
1つ以上の該タンパク質を、薬学的に許容される担体、すなわち、使用される用量および
濃度でレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分と適合性であるものと混合す
ることにより製剤化される。好ましくは、1つ以上の薬学的に許容される抗微生物剤を加
えてもよい。フェノール、m-クレゾールおよびベンジルアルコールは、好ましい薬学的
に許容される抗微生物剤である。
【0174】
所望により、1つ以上の薬学的に許容される塩は、イオン強度または緊張力(tonicity)
を調整するために加えられ得る。1つ以上の賦形剤は、製剤の等張性をさらに調整するた
めに加えられ得る。グリセリン、塩化ナトリウムおよびマンニトールは、等張性を調整す
る賦形剤の例である。
【0175】
当業者は、良い医療行為および個々の患者の臨床状態により決定されるとき、本発明の
タンパク質を含む治療組成物に対する薬学的に有効な用量および投与レジメンを容易に最
適化することができる。本発明のタンパク質に対する典型的な用量範囲は、成体に対して
約0.01mg/日から約1000mg/日(または週に1回の投与にて約0.05mg
/週から約5000mg/週)の範囲である。好ましくは、用量は、約0.1mg/日か
ら約100mg/日(または週に1回の投与にて約0.5mg/週から約500mg/週
)、さらに好ましくは約1.0mg/日から約10mg/日(または週に1回の投与にて
約5mg/週から約50mg/週)の範囲である。より好ましくは、用量は、約1-5m
g/日(または週に1回の投与にて約5mg/週から約25mg/週)である。投与され
るFGF21変異体の適当な用量は、より速く、より効率的なグルコース利用により血糖
レベルの低下およびエネルギー消費の増加をもたらし、したがって、1型および2型糖尿
病、肥満およびメタボリック・シンドロームの処置のために有用である。
【0176】
加えて、高血糖およびインスリン耐性が栄養補給を与えられた重症患者において一般的
であるため、いくつかのICUは、食事を与えられた重症患者において過剰高血糖を処置
するためにインスリンを投与する。実際に、最近の試験は、糖尿病の病歴を有するか否か
にかかわらず、デシリットルあたり110mgよりも高くないレベルで血糖を維持するた
めの外因性インスリンの使用が、外科的集中治療室における重症患者中の罹患率および死
亡率を減少させることを立証している(Van den Bergheら N Engl J Med., 345(19):1359
, (2001))。したがって、本発明のタンパク質は、ユニークに、代謝的に不安定な重症患
者において代謝安定性を回復させるための手助けに適している。本発明のタンパク質、例
えば、FGF21の変異体を含むものは、グルコース摂取を刺激し、インスリン感受性を
増強するが、低血糖を誘導しないという点でユニークである。
【0177】
本発明の別の局面において、肥満、1型および2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アル
コール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリ
ン耐性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、急性心
筋梗塞、インスリン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する状態、および他の
代謝障害の処置のための医薬として使用するための本発明のタンパク質が考慮される。
【0178】
部位特異的FGF21突然変異体
いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、さらなるFGF21突然変異体
または非天然アミノ酸を有するFGF21類似体を含む。
【0179】
いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、以下の野生型FGF21のさら
なる修飾の1つ以上を有するFGF21アゴニストを含む:
【0180】
(i)二量体化、例えば、R154Cでのジスルフィドの形成または別の部位でのシス
テインの導入、または融合されたFcドメインを介する二量体化、または架橋剤、例えば
、二機能性PEGを介する二量体形成を容易にするためのさらなるジスルフィド、非天然
アミノ酸または修飾;
【0181】
(ii)FGF21のフラグメント;
【0182】
(iii)FGF21活性(ベータ-クロトーへの結合ならびにFGFRの結合および
活性化)を有するように選択されたタンパク質;および
【0183】
(iv)(種々の形態、例えば、Fab、ユニボディ(unibody)、svFcなどの)F
GF21模擬物抗体
【0184】
いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、以下のリンカーの1つ以上を含
む:単一のアミド結合、短ペプチド(特に、Ser/Glyリピート)、FGF21翻訳
配列からのさらなる残基、または最大でタンパク質全体の大型リンカー(例えば、Fcド
メイン、HSA-結合ヘリックス束、HSAなど)。2つの部分はまた、他の化学的手段
により、例えば、非天然アミノ酸または標準化学的リンカー(マレイミド-Cys、NH
S-Lys、クリックなど)を介して連結され得る。
【0185】
本発明の他の態様は、半減期延長のための以下の結合を含むが、これらに限定されない
:融合物の単量体もしくは二量体型のいずれかに対するHSA-結合脂質もしくは小分子
またはミセル。
【0186】
本発明の1つの態様において、他の結合が、半減期延長および他の改善された生物学的
特性をなし遂げるために、本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドに
作られ得る。それらは、本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドにP
EG-コレステロール複合体(ミセルおよびリポソームを含む)を結合すること、および
/または本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドに糖(グリコシル化
)を結合することを含むことができる。さらに他の態様において、同様の技術を使用して
、例えば、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、アルブミン
結合リガンドまたは炭水化物保護物(shield)の複合体をタンパク質、ポリペプチド、およ
び/またはペプチドに加える。
【0187】
HES化技術は、例えば、還元的アルキル化を介して、分岐状のヒドロキシエチルスタ
ーチ(HES)鎖(コーンスターチ由来の60kDaまたは100kDaの高度に分岐状
のアミロペクチンフラグメント)をタンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチド
と結合する。ポリシアル化(Polsialation)は、ペグ化と同様の方法において、興味あるタ
ンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチドをポリシアル酸(PSA)ポリマーと
結合する。PSAポリマーは、体内で天然に起こり、10-50kDの分子量において利
用できる負に帯電した非免疫原性ポリマーである。
【0188】
本発明のさらに他の態様において、他の結合または修飾は、半減期延長および他の改善
された生物学的特性をなし遂げるように、本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび/ま
たはペプチドに作られ得る。これらは、組換えPEG(rPEG)基の作製、および本発
明のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドへのそれらの結合を含む。Amu
nix、Inc社により開発されたとおり、rPEG技術は、生物医薬に遺伝的に融合さ
れ、余分な化学的結合工程を回避するPEG様特性を有するタンパク質配列に基づく。r
PEGは、親水性アミノ酸の長い非構造化テールを含む延長された半減期のエクセナチド
構築物であり、これは、タンパク質またはペプチドの血清半減期を増加およびその吸収速
度を遅延の両方をすることができ、したがって有意にピークトラフ比率を減少させる。r
PEGは増加した流体力学的半径を有し、実際の分子量の約15倍である見かけの分子量
を示し、ペグ化が長い血清半減期をなし遂げる方法を模倣する。
【0189】
切断FGF21ポリペプチド
本発明の1つの態様は、成熟FGF21ポリペプチド(配列番号:3)の切断形態であ
る。本発明のこの態様は、優れた場合によっては、成熟FGF21ポリペプチドの非切断
形態と同様の活性を提供することができる切断FGF21ポリペプチドを同定する努力か
ら生じた。
【0190】
本明細書において使用される「切断FGF21ポリペプチド」なる用語は、アミノ酸残
基がFGF21ポリペプチドのアミノ末端(またはN-末端)から除去されているか、ア
ミノ酸残基がFGF21ポリペプチドのカルボキシル末端(またはC-末端)から除去さ
れているか、または、アミノ酸残基がFGF21ポリペプチドのアミノ末端およびカルボ
キシル末端の両方から除去されているFGF21ポリペプチドを示す。本明細書に記載さ
れている種々の切断は、本明細書に記載されているとおりに調製された。
【0191】
N-末端切断FGF21ポリペプチドおよびC-末端切断FGF21ポリペプチドの活
性は、インビトロ ホスホ-ERKアッセイを使用してアッセイすることができる。切断
FGF21ポリペプチドの活性を試験するために使用することができるインビトロアッセ
イの特定の詳細は、実施例において見いだすことができる。
【0192】
本発明の切断FGF21ポリペプチドの活性はまた、インビボアッセイ、例えば、ob
/obマウスにおいて評価することができる。一般的に、一般的に、切断FGF21ポリ
ペプチドのインビボ活性を評価するために、切断FGF21ポリペプチドを試験動物の腹
腔内に投与することができる。所望のインキュベーション期間(例えば、1時間またはそ
れ以上)後、血液サンプルを取り、血糖レベルを測定することができる。
【0193】
a.N-末端切断
【0194】
本発明のいくつかの態様において、N-末端切断は、成熟FGF21ポリペプチドのN
-末端からの1、2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸残基を含む。9個未満の
アミノ酸残基のN-末端切断を有する切断FGF21ポリペプチドは、個体において血糖
を低下させる成熟FGF21ポリペプチドの能力を保持する。したがって、特定の態様に
おいて、本発明は、1、2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸残基のN-末端切
断を有する成熟FGF21ポリペプチドの切断形態またはFGF21タンパク質変異体を
含む。
【0195】
b.C-末端切断
【0196】
本発明のいくつかの態様において、C-末端切断は、成熟FGF21ポリペプチドのC
-末端からの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のアミノ酸
残基を含む。13個未満のアミノ酸残基のC-末端切断を有する切断FGF21ポリペプ
チドは、インビトロ ELK-ルシフェラーゼアッセイ(Yie Jら FEBS Letts 583:19-24
(2009))において野生型FGF21の有効性の少なくとも50%の有効性を示し、これ
らのFGF21突然変異体が個体において血糖を低下させる成熟FGF21ポリペプチド
の能力を保持することを示した。したがって、特定の態様において、本発明は、1、2、
3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のアミノ酸残基のC-末端切断を
有する成熟FGF21ポリペプチドの切断形態またはFGF21タンパク質変異体を含む
【0197】
c.N-末端およびC-末端切断
【0198】
本発明のいくつかの態様において、切断FGF21ポリペプチドは、N-末端およびC
-末端切断の組合せを有することができる。N-末端およびC-末端切断の組合せを有す
る切断FGF21ポリペプチドは、N-末端またはC-末端切断単独のいずれかを有する
対応する切断FGF21ポリペプチドの活性を共有する。言い換えれば、9個未満のアミ
ノ酸残基のN-末端切断および13個未満のアミノ酸残基のC-末端切断の両方を有する
切断FGF21ポリペプチドは、9個未満のアミノ酸残基のN-末端切断を有する切断F
GF21ポリペプチドまたは13個未満のアミノ酸残基のC-末端切断を有する切断FG
F21ポリペプチドと同様またはそれ以上の血糖降下活性を有する。したがって、特定の
態様において、本発明は、1、2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸残基のN-
末端切断および1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のアミノ
酸残基のC-末端切断の両方を有する成熟FGF21ポリペプチドの切断形態またはFG
F21タンパク質変異体を含む。
【0199】
本発明の全てのFGF21変異体と同様に、切断FGF21ポリペプチドは、所望によ
り、特異的突然変異により、または細菌発現プロセスの結果として導入され得るアミノ末
端メチオニン残基を含むことができる。
【0200】
本発明の切断FGF21ポリペプチドは、本明細書に記載されている実施例に記載され
ているとおりに調製することができる。標準分子生物学技術をよく知っている当業者は、
本明細書の記載と組み合わせて、本発明の切断FGF21ポリペプチドを作製および使用
する知識を使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成
、組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に関
して使用することができる。例えば、あらゆる目的のために出典明示により本明細書に包
含させる、上記、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual、参照。酵素反
応および精製技術は、一般的に当分野で成し遂げられている、または本明細書に記載され
ているとおりに、製造業者の記載にしたがって行うことができる。特定の定義が提供され
ている場合を除いて、本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学および薬学およ
び医薬化学の実験室的処理および技術と関連して利用される命名法が、よく知られており
、当分野で一般的に使用されるものである。標準技術は、化学合成;化学分析;医薬品、
製剤および送達;および患者の処置のために使用することができる。
【0201】
本発明の切断FGF21ポリペプチドはまた、切断FGF21ポリペプチドにさらなる
特性を与えることができる別のエンティティ(entity)に融合することができる。本発明の
1つの態様において、切断FGF21ポリペプチドは、IgG定常ドメインまたはそれら
のフラグメント(例えば、Fc領域)、ヒト血清アルブミン(HSA)またはアルブミン
結合ポリペプチドに融合することができる。このような融合は、本明細書において提供さ
れる既知の分子生物学的方法および/または案内を使用して成し遂げることができる。こ
のような融合ポリペプチドの利益ならびにこのような融合ポリペプチドを作製する方法は
本明細書においてより詳細に記載されている。
【0202】
FGF21融合タンパク質
本明細書において使用される「FGF21融合ポリペプチド」または「FGF21融合
タンパク質」なる用語は、本明細書に記載されているいずれかのFGF21タンパク質変
異体のN-末端またはC-末端にて1つ以上のアミノ酸残基(例えば、異種タンパク質ま
たはペプチド)の融合を示す。
【0203】
FGF21融合タンパク質は、例えば、本願明細書において定義されているFGF21
タンパク質変異体のN-末端またはC-末端のいずれかにて異種配列を融合することによ
り作製することができる。本明細書に記載されているとおり、異種配列は、アミノ酸配列
または非アミノ酸含有ポリマーであり得る。異種配列は、FGF21タンパク質変異体に
直接、またはリンカーもしくはアダプター分子を介して融合することができる。リンカー
またはアダプター分子は、1つ以上のアミノ酸残基(または-mer)、例えば、1、2
、3、4、5、6、7、8または9個の残基(または-mers)、好ましくは10から
50個のアミノ酸残基(または-mers)、例えば、10、11、12、13、14、
15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45または50個の残
基(または-mers)、およびさらに好ましくは15から35個のアミノ酸残基(また
は-mers)であり得る。リンカーまたはアダプター分子はまた、融合分子の分離を可
能にするように、DNA制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼに対する切断部位に
て設計することができる。
【0204】
異種ペプチドおよびポリペプチドは、FGF21タンパク質変異体;膜貫通受容体タン
パク質またはその部分、例えば、細胞外ドメインまたは膜貫通および細胞内ドメイン;膜
貫通受容体タンパク質に結合するリガンドまたはその部分;触媒的に活性である酵素また
はその部分;オリゴマー形成を促進するポリペプチドまたはペプチド、例えば、ロイシン
ジッパードメイン;安定性を増加させるポリペプチドまたはペプチド、例えば、免疫グロ
ブリン定常領域;機能性もしくは非機能性抗体またはそれらの重鎖もしくは軽鎖;ならび
に、本発明のFGF21タンパク質変異体と異なる活性、例えば、治療活性を有するポリ
ペプチドの検出および/または単離を可能にするエピトープを含むが、これらに限定され
ない。ヒト血清アルブミン(HSA)に融合されたFGF21突然変異体もまた、本発明
により包含される。
【0205】
a.Fc融合
【0206】
本発明の1つの態様において、FGF21タンパク質変異体は、ヒトIgGのFc領域
の1つ以上のドメインに融合される。抗体は、2つの機能的依存性部分、抗原に結合する
「Fab」として知られる可変ドメインおよびエフェクター機能、例えば、補体活性化に
関与し、食細胞により攻撃する「Fc」として知られる定常ドメインを含む。Fcは長期
血清半減期を有するが、Fabは寿命が短い(Caponら, 1989, Nature 337: 525-31)。
治療タンパク質と連結されるとき、Fcドメインは、より長い半減期を提供するか、また
は、Fc受容体結合、プロテインA結合、補体結合および胎盤通過さえも含むような機能
を組み込むことができる(Caponら 1989)。
【0207】
本明細書中、Fc-FGF21は、Fc配列がFGF21のN-末端に融合されている
融合タンパク質を示す。同様に、本明細書中、FGF21-Fcは、Fc配列がFGF2
1のC-末端に融合されている融合タンパク質を示す。
【0208】
本発明の好ましい態様は、本願明細書において定義されているFGF21変異体を含む
Fc-FGF21融合タンパク質である。特に好ましい態様は、本願明細書において定義
されている修飾されたFcフラグメント(例えば、FcLALA)およびFGF21変異
体を含むFc-FGF21融合タンパク質である。
【0209】
融合タンパク質は、例えば、プロテインAアフィニティーカラムの使用により精製する
ことができる。Fc領域に融合されるペプチドおよびタンパク質は、非融合対応物よりも
実質的に良いインビボ半減期を示すことを見出した。また、Fc領域への融合は、融合ポ
リペプチドの二量化/多重合を可能する。Fc領域は天然Fc領域であってよく、また、
特定の質、例えば、治療的質、循環時間または凝集の減少を改善するように改変すること
ができる。
【0210】
抗体の「Fc」ドメインとの融合によるタンパク質治療剤の有用な修飾は、PCT公開
第WO00/024782号において詳細に記載されている。この文献は、「ビヒクル」
、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストランまたはFc領域への連結を
記載している。
【0211】
b.融合タンパク質リンカー
【0212】
本発明の融合タンパク質を形成するとき、リンカーは必要ではないが、使用することが
できる。存在するとき、スペーサーとして主に働くため、リンカーの化学構造は重要では
ないかもしれない。リンカーは、ペプチド結合により互いに連結されたアミノ酸からなり
得る。本発明のいくつかの態様において、リンカーは、ペプチド結合により連結される1
から20個のアミノ酸からなり、該アミノ酸は20個の天然アミノ酸から選択される。種
々の態様において、1から20個のアミノ酸は、アミノ酸グリシン、セリン、アラニン、
プロリン、アスパラギン、グルタミンおよびリジンから選択される。いくつかの態様にお
いて、リンカーは、立体的障害のない大多数のアミノ酸、例えば、グリシンおよびアラニ
ンからなる。いくつかの態様において、リンカーは、ポリグリシン、ポリアラニン、グリ
シンおよびアラニンの組合せ(例えば、ポリ(Gly-Ala))またはグリシンおよび
セリンの組合せ(例えば、ポリ(Gly-Ser))である。15個のアミノ酸残基のリ
ンカーがFGF21融合タンパク質に対して特に良く働くことが見出されたが、本発明は
、任意の長さまたは組成物のリンカーを考慮する。
【0213】
本明細書に記載されているリンカーは典型的であり、より長く他の残基を含むリンカー
が、本発明により考慮される。非ペプチドリンカーもまた、本発明により考慮される。例
えば、アルキルリンカーを使用することができる。これらのアルキルリンカーは、限定は
しないが、低級アルキル(例えば、C1-C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl
、Br)、CN、NH2またはフェニルを含む任意の非立体的障害基によりさらに置換さ
れ得る。典型的な非ペプチドリンカーは、ポリエチレングリコールリンカーであり、該リ
ンカーは、100から5000kD、例えば、100から500kDの分子量を有する。
【0214】
化学的に修飾された融合タンパク質
【0215】
例えば、本明細書に記載されているFGF21融合の切断および変異体形態を含む本明
細書に記載されている融合タンパク質の化学的に修飾された形態は、本明細書に記載され
ている記載を考慮して、当業者により調製することができる。このような化学的に修飾さ
れた融合タンパク質は、化学的に修飾された突然変異体が、修飾されていない突然変異体
と、突然変異体に天然に結合された分子の型または位置のいずれかにおいて異なるように
改変される。化学的に修飾された突然変異体は、1つ以上の天然に結合された化学基の欠
失により形成される分子を含むことができる。
【0216】
1つの態様において、本発明のタンパク質は、1つ以上のポリマーの共有結合により修
飾することができる。例えば、選択されるポリマーは、一般的に、結合するタンパク質が
水性環境、例えば、生理学的環境下で沈殿しないように、水溶性である。適当なポリマー
の範囲内に含まれるものは、ポリマーの混合物である。好ましくは、最終産物調製物の治
療的使用のために、ポリマーは薬学的に許容される。本発明のタンパク質に結合した非水
溶性ポリマーもまた、本発明の局面を形成する。
【0217】
典型的なポリマーはそれぞれ、あらゆる分子量であってよく、分岐状または非分岐状で
あってよい。ポリマーはそれぞれ、一般的に、約2kDaから約100kDaの平均分子
量を有する(「約」なる用語は、水溶性ポリマーの調製において、いくつかの分子が規定
された分子量以上および未満の重さであることを示す)。それぞれのポリマーの平均分子
量は、好ましくは、約5kDaから約50kDa、さらに好ましくは約12kDaから約
40kDa、より好ましくは約20kDaから約35kDaである。
【0218】
適当な水溶性ポリマーまたはその混合物は、N-連結もしくはO-連結炭水化物、糖、
リン酸、ポリエチレングリコール(PEG)(モノ-(C1-C10)、アルコキシ-、
もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールを含む、タンパク質を誘導体化するた
めに使用されているPEGの形態を含む)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デ
キストラン(例えば、約6kDの、例えば低分子量デキストラン)、セルロースまたは他
の炭水化物ベースのポリマー、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール
、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポ
リマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアル
コールを含むが、これらに限定されない。共有的に結合されたFGF21タンパク質変異
体多量体を調製するために使用することができる二機能性架橋分子もまた、本発明により
包含される。ポリシアル酸に共有結合されたFGF21突然変異体もまた、本発明により
包含される。
【0219】
多糖類ポリマーは、タンパク質修飾のために使用することができる別の型の水溶性ポリ
マーである。したがって、多糖類ポリマーに融合された本発明の融合タンパク質は、本発
明の態様を形成する。デキストランは、アルファ1-6結合により主に連結されるグルコ
ースの個々のサブユニットからなる多糖類ポリマーである。デキストランそれ自体は、広
い分子量範囲において利用でき、約1kDから約70kDの分子量において容易に利用で
きる。デキストランは、ビヒクルそれ自体または別のビヒクル(例えば、Fc)と組み合
わせての使用のための適当な水溶性ポリマーである。例えば、国際公開WO96/119
53参照。治療または診断免疫グロブリンへ結合されるデキストランの使用が報告されて
いる。例えば、欧州特許公報第0 315 456号参照、これを出典明示により本明細
書に包含させる。本発明は、本発明はまた、約1kDから約20kDのデキストランの使
用を含む。
【0220】
一般的に、化学修飾は、タンパク質を活性化ポリマー分子と反応させるために使用され
る任意の適当な条件下で行うことができる。化学的に修飾されたポリペプチドを調製する
ための方法は、一般的に、(a)条件下でポリペプチドを活性化ポリマー分子(例えば、
ポリマー分子の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と反応させ、それによって、F
GF21タンパク質変異体が1つ以上のポリマー分子と結合するようになること、および
(b)反応産物を得ることの工程を含む。最適な反応条件は、既知のパラメーターおよび
所望の結果に基づいて決定される。例えば、タンパク質に対するポリマー分子の比率が高
くなれば、結合されるポリマー分子のパーセントが高くなる。本発明の1つの態様におい
て、化学的に修飾されたFGF21突然変異体は、アミノ-末端に単一のポリマー分子部
分を有し得る(例えば、米国特許第5,234,784号参照)。
【0221】
本発明の別の態様において、本発明のタンパク質は、ビオチンと化学的に結合させるこ
とができる。次に、本発明のビオチン/タンパク質はアビジンに結合し、本発明の四価ア
ビジン/ビオチン/タンパク質をもたらすことができる。本発明のタンパク質はまた、ジ
ニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)と共有的に結合させ
、得られる複合体を抗-DNPまたは抗-TNP-IgMで沈殿させ、10の価数で十量
体複合体を形成させることができる。
【0222】
一般的に、本発明の化学的に修飾されたFGF21突然変異体の投与により緩和または
調節することができる条件は、本発明のタンパク質に対して本明細書に記載されているも
のを含む。しかしながら、しかしながら、本明細書に記載されている化学的に修飾された
FGF21突然変異体は、非修飾FGF21突然変異体と比較して、さらなる活性、生物
学的活性の増強または減少、または他の特性、例えば、半減期の延長または短縮を有し得
る。
【0223】
融合タンパク質の治療組成物およびその投与
本発明はまた、投与様式との適合性に対して選択される薬学的または生理学的に許容さ
れる製剤または薬学的に許容される担体との混合物中に本明細書に記載されている本発明
の融合タンパク質の1つ以上を含む治療組成物を提供する。組成物は、具体的には、例え
ば、増強された特性を示す融合タンパク質の同定を踏まえて考慮される。
【0224】
いくつかの態様において、治療組成物は、液体溶液または懸濁液としてのいずれかで注
射用として製造され;注射前に、液体ビヒクルでの溶液または懸濁液に対して適当な固体
形態もまた製造することができる。リポソームは、薬学的に許容される担体の定義に含ま
れる。薬学的に許容される塩、例えば、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸
塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安
息香酸エステル塩などもまた、医薬組成物に存在することができる。薬学的に許容される
賦形剤の徹底的な議論は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (1995) A
lfonso Gennaro, Lippincott, Williams, & Wilkinsで利用できる。
【0225】
許容される製剤は、好ましくは、使用される用量および濃度でレシピエントに対して非
毒性である。
【0226】
医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透性、粘性、明瞭さ、色、等張性、臭気、滅
菌性、安定性、分解もしくは放出速度、吸着性または浸透を修飾、維持または保存するた
めの製剤物質を含むことができる。適当な製剤物質は、限定はしないが、アミノ酸(例え
ば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン)、抗菌剤、抗酸化
剤(例えば、アスコルビン酸、硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム)、バッファ
ー(例えば、ホウ酸、重炭酸、Tris-HCl、クエン酸、リン酸または他の有機酸)
、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジ
アミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベ
ータ-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)、
増量剤、単糖類、二糖類および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデ
キストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン)
、着色剤、香味剤および賦形剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリド
ン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、防腐剤(例えば
、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール
、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素
)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)
、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁剤、界面活性剤また
は湿潤剤(例えば、プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート、例え
ば、ポリソルベート20またはポリソルベート80;トリトン;トロメタミン;レシチン
;コレステロールまたはチロキサパール(チロキサパール(tyloxapal)))、安定性増強剤
(例えば、スクロースまたはソルビトール)、緊張力増強剤(例えば、アルキル金属ハロ
ゲン化物;好ましくは塩化ナトリウムまたはカリウム;またはマンニトールソルビトール
)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または医薬アジュバント(例えば、Remingto
n's Pharmaceutical Sciences (18th Ed., A. R. Gennaro, ed., Mack Publishing Compa
ny 1990)、およびこれの後版、参照、あらゆる目的のために出典明示により本明細書に包
含させる)を含む。
【0227】
最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形式および所望の用量に依存
して、当業者により決定される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、上記
、参照)。このような組成物は、本発明の融合タンパク質の物理的状態、安定性、インビ
ボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響し得る。
【0228】
医薬組成物における主なビヒクルまたは担体は、実際、水性または非水性のいずれかで
あり得る。例えば、注射のために適当なビヒクルまたは担体は、恐らく非経口投与のため
の組成物によく見られる他の物質を補った、水、生理食塩水溶液または人工脳脊髄液であ
り得る。中性緩衝食塩水または血清アルブミンと混合した塩水は、さらなる典型的なビヒ
クルである。他の典型的な医薬組成物は、ソルビトールまたは適当な代替物をさらに含む
ことができる、約pH7.0-8.5のTrisバッファーまたは約pH4.0-5.5
の酢酸バッファーを含む。本発明の1つの態様において、デュアル機能医薬組成物は、凍
結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態にて、所望の純度の程度を有する選択される組成
物を任意の製剤と混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences、上記)
、保存用に調製することができる。さらに、デュアル機能性タンパク質産物は、適当な賦
形剤、例えば、スクロースを使用して凍結乾燥物として製剤化することができる。
【0229】
本発明の融合タンパク質を含む医薬組成物は、非経口投与のために選択することができ
る。あるいは、組成物は、消化管を介する、例えば、経口的な、吸入または送達のために
選択することができる。このような薬学的に許容される組成物の調製は、当分野の技術の
範囲内である。
【0230】
製剤成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。例えば、バッファーは、生理学的
pHまたはわずかにより低いpHで、一般的に約5から約8のpH範囲内で、組成物を維
持するために使用される。
【0231】
非経口投与が考慮されるとき、本発明における使用のための治療組成物は、薬学的に許
容されるビヒクル中に所望のデュアル機能性タンパク質を含むピロゲン無し非経腸的に許
容される水溶液の形態においてであり得る。非経口注射のために特に適当なビヒクルは、
デュアル機能性タンパク質が適当に保存される滅菌等張液として製剤化される滅菌蒸留水
である。さらに別の調製物は、デポー注射を介して送達される産物の制御または持続放出
を提供する、薬剤を有する所望の分子の製剤、例えば、注射可能なミクロスフェア、生体
内分解性粒子、ポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸またはポリグリコール酸)、ビーズま
たはリポソームを含むことができる。ヒアルロン酸もまた使用することができ、これは、
循環の持続期間を増進する効果を有することができる。所望の分子の導入のための他の適
当な手段は、移植可能な薬物送達デバイスを含む。
【0232】
1つの態様において、医薬組成物は、吸入のために製剤化することができる。例えば、
本発明のデュアル機能性タンパク質は、吸入のための乾燥粉末として製剤化することがで
きる。デュアル機能性タンパク質吸入溶液もまた、エアロゾル送達のために高圧ガスで製
剤化することができる。さらに別の態様において、溶液は噴霧状にすることができる。肺
投与は、化学的に修飾されたタンパク質の肺送達を記載している国際公開WO94/20
069にさらに記載されている。
【0233】
特定の製剤は経口的に投与することができることも考慮される。本発明の1つの態様に
おいて、この様式において投与される本発明の融合タンパク質は、固体投与形態、例えば
、錠剤およびカプセルの合成において習慣的に使用される担体の有無にかかわらず製剤化
することができる。例えば、カプセルは、バイオアベイラビリティを最大化し、前全身性
分解を最小限にするとき、胃腸管部位に製剤の活性部分を放出するように設計することが
できる。さらなる薬剤を、本発明の融合タンパク質の吸収を容易にするために含むことが
できる。希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤および結
合剤もまた、使用することができる。
【0234】
別の医薬組成物は、錠剤の製造のために適当である非毒性賦形剤との混合物中に有効な
量の本発明の融合タンパク質を含むことができる。錠剤を滅菌水または別の適当なビヒク
ルに溶解することにより、溶液は単位用量形態において調製することができる。適当な賦
形剤は、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸もしくは重炭酸ナトリウム、ラク
トースまたはリン酸カルシウム;または結合剤、例えば、スターチ、ゼラチンまたはアカ
シア;または滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクを含
むが、これらに限定されない。
【0235】
持続もしくは制御送達製剤において本発明の融合タンパク質を含む製剤を含む、さらな
る本発明の融合タンパク質を含む医薬組成物が、当業者に明らかである。種々の他の持続
もしくは制御送達手段、例えば、リポソーム担体、生体内分解性微粒子または多孔質ビー
ズおよびデポー注射を製剤化するための技術もまた、当業者に知られている(例えば、医
薬組成物の送達のための多孔質ポリマー性微粒子の制御放出を記載している国際公開WO
93/15722、およびミクロスフェア/微粒子調製および使用を記載しているWischk
e & Schwendeman, 2008, Int. J Pharm. 364: 298-327、およびFreiberg & Zhu, 2004, I
nt. J Pharm. 282: 1-18、参照)。
【0236】
持続放出調製物のさらなる例は、造形品の形態における半透性ポリマーマトリックス、
例えば、フィルムまたはマイクロカプセルを含む。持続放出マトリックスは、ポリエステ
ル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許第0
058 481号)、L-グルタミン酸およびガンマエチル-L-グルタミン酸のコポリ
マー(Sidmanら 1983, Biopolymers 22: 547-56)、ポリ(2-メタクリル酸ヒドロキシ
エチル)(Langerら 1981, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277およびLanger, 1982, C
hem. Tech. 12: 98-105)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、上記)またはポリ-D-3
-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第0 133 988号)を含むことができる。持続放出組
成物はまた、当分野で知られているいくつかの方法のいずれかにより調製することができ
るリポソームを含むことができる。例えば、Epsteinら 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U
.S.A. 82: 3688-92;および欧州特許第0 036 676、0 088 046および
0 143 949号、参照。
【0237】
インビボ投与のために使用される本発明の医薬組成物は、一般的に、滅菌であるべきで
ある。これは、滅菌濾過膜を介する濾過により成し遂げることができる。組成物が凍結乾
燥されるとき、この方法を使用する滅菌は、凍結乾燥および再構成の前、または後のいず
れかに行うことができる。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態または溶液におい
て保管することができる。加えて、非経口組成物は、一般的に、皮下注射針により貫通で
きるストッパーを有する滅菌点検口を有する容器、例えば、静脈内溶液バッグまたはバイ
アルに置かれる。
【0238】
医薬組成物が製剤化されると、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体、または無水
もしくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中で保管することができる。このような製剤は
、すぐに使える形態、または、投与前に再構成する必要なる形態(例えば、凍結乾燥され
た形態)のいずれかで保管することができる。
【0239】
特定の態様において、本発明は、単回投与単位を生産するためのキットである。キット
は、それぞれ、乾燥タンパク質を有する第1の容器および水性製剤を有する第2の容器の
両方を含む。単一および多チャンバー型の充填済みシリンジ(例えば、液体シリンジおよ
び凍結乾燥シリンジ(lyosyringe))を含むキットも本発明の範囲内に含まれる。
【0240】
融合タンパク質の用量およびその投与
治療に使用される本発明の医薬組成物の有効量は、例えば、治療状況および目的に依存
する。当業者は、したがって、処置に対して適当な用量レベルが、一部分において、送達
される分子、融合タンパク質変異体が使用される適応症、投与経路、ならびに患者のサイ
ズ(体重、体表面または臓器サイズ)および状態(年齢および全般的な健康状態)に依存
することを理解している。したがって、臨床医は、最適な治療効果を得るために用量を滴
定し、投与経路を修飾することができる。典型的な用量は、上記因子に依存して、約0.
1μg/kgから最大約100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。他の態様に
おいて、用量は、0.1μg/kgから最大約100mg/kg;または1μg/kgか
ら最大約100mg/kgの範囲であり得る。
【0241】
投与の頻度は、使用される製剤におけるデュアル機能性タンパク質の薬物動態パラメー
ターに依存する。一般的に、臨床医は、用量が所望の効果をなし遂げるように達するまで
、組成物を投与する。したがって、組成物は、単回投与として、時間とともに2またはそ
れ以上の投与として(同じ量の所望の分子を含んでも、含まなくてもよい)として、また
は、移植デバイスまたはカテーテルを介する連続的な注入として、投与することができる
。適当な用量のさらなる改善は、当業者により日常的に行われており、当業者により日常
的に行われる活動の範囲内である。適当な用量は、適当な用量-応答データの使用を介し
て確認することができる。
【0242】
医薬組成物の投与経路は、既知の方法にしたがって、例えば、経口的;静脈内、腹腔内
、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、動脈内、門脈内または病巣内経路による注射を介し
て;持続放出系(注射もされ得る)により;または、移植デバイスによりである。所望に
より、組成物は、ボーラス注射により、または連続的に注入により、または移植デバイス
により投与することができる。
【0243】
あるいは、またはさらに、組成物は、所望の分子が吸収または封入されている膜、スポ
ンジまたは他の適当な物質の移植を介して局所的に投与することができる。移植デバイス
を使用するとき、デバイスは、任意の適当な組織または臓器に埋め込むことができ、所望
の分子の送達は、拡散、定時放出ボーラスまたは連続的投与を介する送達であり得る。
【0244】
融合タンパク質の治療的使用
本発明のタンパク質は、限定はしないが代謝障害を含む、多くの疾患、障害または状態
を処置、診断、改善または予防するために使用することができる。1つの態様において、
処置される代謝障害は、糖尿病、例えば、2型糖尿病である。別の態様において、代謝障
害は肥満である。他の態様は、代謝状態または障害、例えば、1型糖尿病、膵炎、脂質異
常症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH
)、インスリン耐性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドロ
ーム、高血圧、心臓血管疾患、急性心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、
卒中、心不全、冠動脈性心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病性合併症、ニューロパシー、インス
リン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する障害、胃不全まひおよび他の代謝
障害を含む。
【0245】
適用において、障害または状態、例えば、1型または2型糖尿病または肥満は、治療有
効用量において本明細書に記載されているFGF21タンパク質変異体を必要とする患者
に投与することにより処置することができる。投与は、本明細書に記載されているとおり
、例えば、IV注射、腹腔内注射、筋肉内注射または錠剤または液体製剤の形態における
経口的に行うことができる。多くの場合、所望の用量は、本明細書に記載されているとお
りに、臨床医により決定することができ、FGF21突然変異体ポリペプチドの治療有効
用量を示すことができる。治療有効用量のFGF21突然変異体ポリペプチドが、とりわ
け、投与スケジュール、投与される抗原の投与単位、核酸分子またはポリペプチドが他の
治療剤と組み合わせて投与されるか否か、レシピエントの免疫状態および健康状態に依存
することは当業者に明白である。本明細書において使用される「治療有効用量」なる用語
は、処置される疾患または障害の症状の緩和を含む、研究者、医師または他の臨床医によ
り探求される組織系、動物またはヒトにおける生物学的または医学応答を引き起こすFG
F21突然変異体ポリペプチドの量を意味する。
【0246】
本発明は詳細に今回記載されており、これは、以下の実施例を参照することによりさら
に明白に理解されるが、実施例は、説明のみの目的のためにここに含まれ、本発明を限定
されることを意図しない。
【0247】
本発明の実施は、他に記載のない限り、当分野の技術内の化学、生化学、分子生物学、
免疫学および薬理学の慣用の方法を使用する。このような技術は、文献で十分に説明され
ている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Penns
ylvania: Mack Publishing Company, 1990); Methods In Enzymology (S. Colowick and
N. Kaplan, eds., Academic Press, Inc.);および Handbook of Experimental Immunolog
y, Vols. I IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds., 1986, Blackwell Scientific Pu
blications);および Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Editio
n, 1989)参照。
【実施例
【0248】
実施例1:FGF21変異体タンパク質の調製
FGF21 V76に対する発現構築物:FGF21変異体を、Achmullerら (2007) (Na
ture Methods 4:1037-1043) に記載されている修飾された大腸菌発現ベクターpET30
aにクローニングし、FGF21のN-末端(aa33-209)にヘキサ-ヒスチジン
タグ、次に、Npro-EDDIEタグのインフレーム融合物を産生した。
【0249】
FGF21 V76の発現および精製:pET30a-His-Npro-EDDIE-
FGF21発現プラスミドを、大腸菌BL21 Star(DE3)コンピテント細胞(I
nvitrogen)に形質転換した。新たに形質転換された細胞の単一コロニーの一晩培養を、3
7℃で50μg/mLのカナマイシンを含む50mLのTerrific Broth(
TB)で行った。前培養物をカナマイシンを有する1LのTB培地に移し、250rpm
で震盪しながら37℃でバッフル付フラスコ中で培養した。6時間培養後、1mMの最終
濃度でのIPTGの添加によりFGF21の発現を誘導し、培養物を37℃で一晩培養し
た。次に、細胞を回収し、50mLの氷冷溶解バッファー;50mMのTris-HCl
、pH8、150mMのNaCl、1mMのEDTAに再懸濁し、次に、microfl
uidizerTMを使用して溶解した。
【0250】
封入体(IB)を、4℃で1時間30,000×gで遠心分離により沈殿させた。IB
を50mMのTris-HCl、pH8、150mMのNaClで洗浄し、次に、30m
Lの溶解バッファー;10mMのTris-HCl、pH8、100mMのNaHPO
、6MのGnHClに溶解させた。溶解されたIBは、25℃で1時間30,000×
gで遠心分離により浄化した。IB溶液を、溶解バッファーで平衡化されたNi-NTA
高性能樹脂(GE Healthcare)の5mLのカラム上に負荷した。タ樹脂に結合したタンパ
ク質を、pH4.5に低下させることにより溶離した。溶出液を、pHを調整し、ジチオ
スレイトール(DTT)を20mMの濃度で添加することにより調整した。調整された溶
出液を、1Lのリフォールディングバッファー;50mMのTris-HCl、pH8、
0.5Mのアルギニン、20mMのDTTにゆっくり希釈し、次に、4℃で2日間インキ
ュベーションした。希釈されたサンプルを濃縮し、限外ろ過方法を使用して20mMのT
ris-HCl、pH9にバッファー交換した。濃縮したサンプルを、20mMのTri
-HCl(pH9)で平衡化されたQセファロース高速流樹脂(GE Healthcare)の10
mLカラムに負荷した。
【0251】
平衡バッファーで樹脂を洗浄後、樹脂に結合したタンパク質を、20mMのTris-
HCl、pH9、500mMのNaClで溶離した。リフォールディングされたFGF2
1タンパク質から開裂されたHis-Npro融合フラグメントおよびあらゆる開裂され
ていない融合タンパク質を除去するために、溶出液を20mMのTris、pH8.0、
50mMのイミダゾールで平衡化されたNi-NTA高性能樹脂の5mLカラムに負荷し
、FGF21を含むフロースルー画分を回収した。エンドトキシンレベルを減少させるた
めに、FGF21画分を、10mMのTris、pH8、50mMのイミダゾール、50
0mMのNaCl、1mMのCaClで平衡化されたEndoTrap HD樹脂(Hy
glos)で処理した。低エンドトキシンサンプルをPBSに対して透析し、次に、0.22
μmフィルターで滅菌した。精製されたFGF21タンパク質を液体窒素でスナップ凍結
させ、-80℃で貯蔵した。タンパク質濃度を、FGF21に対するモル吸光係数として
9362 M-1 cm-1を使用して280nmでの吸光度により決定した。タンパク
質純度および完全性を、HPLC、SDS-PAGEおよび液体クロマトグラフィー-質
量分析により決定した。
【0252】
FGF21変異体のシステインペグ化:FGF21変異体V76(R154C)変異体
は、操作されたシステインを介して二量体化する傾向を有する;したがって、ペグ化前に
、タンパク質溶液(一般的に、Tris バッファー中5mg/ml)を、氷上で30分
間、5mMのメルカプトエチルアミンで穏やかに還元し、20mMのTris、pH7で
即座に脱塩した。次に、新たに還元されたタンパク質(一般的に3mg/ml)を、氷上
で3時間、1.5当量の40kDaの分岐状マレイミド-PEG試薬(Sunbrigh
tシリーズのNOF カタログ # GL2-400MA)で即座にペグ化した。最後に
、ペグ化タンパク質を、約25%の全収率で陰イオン交換クロマトグラフィー(Mono
Q)により精製した。
【0253】
Fc-FGF21融合変異体に対する発現構築物:アミノ酸33-209をコードするヒ
トFGF21変異体に対するcDNAを、タンパク質の分泌を指向するリーダーペプチド
(免疫グロブリンカッパ鎖)、次にFcドメインおよび短リンカーを含むN-末端配列を
有する、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの哺乳動物発現ベクター下流に、
インフレームで、クローニングした。
【0254】
Fc-FGF21変異体の発現および精製:Fc-FGF21
変異体タンパク質を、HEK293T細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレク
ション)に発現させた。細胞を、トランスフェクションの日まで、Freestyle
293発現培地(Invitrogen、カタログ #12338-018)中で37℃
で、8%COで、懸濁培養において培養した。細胞をスインギングバケットローター(s
winging bucket rotor)において7分間1000xgで遠心し、自動細胞計数器を使用し
てカウントした。細胞を900mlのFreestyle 293培地にて1.4x10
細胞/mLの最終濃度に希釈し、3L 非バッフルフラスコ(Corning、カタロ
グ #431252)に置いた。以下のとおり、細胞をポリエチレンイミン(PEI)お
よびプラスミドの混合物を使用してトランスフェクトした。3mlの無菌 1mg/mL
ストック(stock)のlinear、M.W. 25,000、PEI(Alfa Aes
ar、カタログ #43896)を50mlのFreestyle 293培地に加え、
穏やかに混合し、25℃で5分間インキュベートした。同時に、1mgのエンドトキシン
-フリー プラスミドを50mL Freestyle 293培地に加え、0.22u
Mフィルターを使用して無菌濾過した。次に、PEI混合物を無菌濾過されたDNAに加
え、穏やかに混合し、25℃で10分間インキュベートした。次に、PEI-プラスミド
混合物を希釈されたHEK293T細胞を含む3L フラスコに加え、125RPM、3
7℃で、8% COで震盪インキュベーターに置いた。
【0255】
トランスフェクション後6日目に、細胞を10分間2000xgで遠心し、上清を回収
した。上清を、0.8/0.2uMフィルター(Pall Corporation、カ
タログ #4628)を介する濾過によりさらに浄化した。
【0256】
FGF21タンパク質のバッチ精製を、精製される20mgの予測されるタンパク質あ
たり、1mlの組換えプロテインAセファロース高速流(GE、カタログ #17-51
38-03)を、浄化された上清に直接加え、穏やかな回転で4℃で1時間インキュベー
トすることにより行った。次に、上清混合物を使い捨てPoly-Prep クロマトグ
ラフィーカラム(Bio-Rad、カタログ #731-1550)に注ぎ、フロースル
ー(flow through)を捨てた。保持されたビーズを、5カラム容量のDPBS、pH7.4
(Invitrogen、カタログ #14190-144)で洗浄した。プロテインA
ビーズからのタンパク質の溶離を、20カラム容量の50mMのクエン酸ナトリウムバッ
ファー、pH3.0を加えることにより行った。溶離バッファーを、20%のTris-
HCLバッファー、pH9.0の添加により中和した。
サイズ排除クロマトグラフィーは、二次(secondary)ポリシング(polishing)工程として
、プロテインAバッチ精製された物質をHigh Load 26/600 Super
dex 200pgカラム(GE、カタログ #28-9893-36)に流すことによ
り行った。精製されたタンパク質収量を、A280により定量した。SDS-Pageを
純度および分子量を確認するために行った。エンドトキシンレベルをEndosafe
PTSシステム(Charles River Labs)を使用することにより定量し
た。
【0257】
実施例2:FGF21依存性2-デオキシグルコース(2-DOG)摂取測定
FGF21は、インスリンの存在および非存在下でマウス3T3-L1脂肪細胞におい
てグルコース摂取を刺激する、およびob/obおよびdb/dbマウスならびに8週齢
ZDFラットにおいて用量依存的に食餌および空腹時血糖、トリグリセリドおよびグルカ
ゴンレベルを減少させることを示され、したがって、糖尿病および肥満を処置するための
治療としてのFGF21の使用の基礎を提供する(例えば、特許公報WO03/0112
13、およびKharitonenkovら., (2005) Jour. of Clinical Invest. 115:1627-1635参照
)。また、FGF21は、3T3-L1脂肪細胞におけるFGFR-1およびFGFR-
2のチロシンリン酸化を刺激することを観察された。
【0258】
3T3-L1繊維芽細胞は、ATCC(カタログ # CL173)から購入した。該
細胞を150cmペトリ皿においてコンフルエンシーにまで増殖させ、10%ウシ胎児血
清および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補った高グルコースを有するDMEM(
Invitrogen カタログ # 11995065)において、さらに4日間維持
した。次に、細胞を4μg/mlのインスリン(Sigma、カタログ # I-550
0)、115μg/mlのIBMX(Sigma、カタログ # I5879)および0
.0975μg/mlのデキサメタゾン(Sigma、カタログ #D1756)を補っ
た上記培地で3日間分化し、その後、分化培地を完全DMEMと置き換えた。1つのプレ
ートの分化された3T3-L1脂肪細胞を、培地置換えの次の日に、4つの96-ウェル
プレート上に播種した。
【0259】
次に、脂肪細胞を完全培地において、一晩FGF21-WTおよびFGF21変異体タ
ンパク質で処理した(変異体のリストに関して表2参照;30pMから100nMが使用
される典型的な濃度範囲である)。FGF21サンプルで処理される脂肪細胞は、ウェル
あたり50μlのKRHバッファー(0.75%のNaCl;0.038%のKCl;0
.0196%のCaCl;0.032%のMgSO;0.025MのHEPES、p
H7.5;0.5%のBSA;2mMのピルビン酸ナトリウム)において2時間血清飢餓
であった。ブランクのためのウェルに、15分間1μl(最終濃度5μg/ml)サイト
カラシンBを加えた。[3H]-2-DOG(20.6mCi/mmoL、1mCi/m
L)を、5.1mMの冷2-DOGにおいて1:20希釈し、ウェルあたり1μlの希釈
2-DOGを加え、細胞を5分間インキュベートした。細胞を100μl/ウェルのKR
Hバッファーで3回洗浄した。40μl/ウェルの1%SDSを細胞に加え、細胞を少な
くとも10分間震盪した。200μl/ウェルのシンチレーション液体を加え、プレート
を一晩震盪し、ベータ-マイクロプレートリーダーで読んだ。サイトカラシンBで処理さ
れた全カラム/列から得られた値を平均し、全ての他の値から引いた。データをGrap
hPad prismソフトウェアにより分析し、該結果は表2に要約される。Fc-F
GF21融合変異体V101、V103およびV188は、マウス3T3L1脂肪細胞に
よる2-デオキシグルコース摂取の誘導について、ペグ化FGF21変異体V76より優
れている。
【0260】
実施例3:細胞ウェスタン(ICW)アッセイにおけるpERK
ヒトβ-クロトーで安定にトランスフェクトされたHEK293細胞を、DMEM高グ
ルコース、10%のFBS、1%のPSおよび600ng/mlのG418において培養
し、ウェルあたり30,000個の細胞で一晩でポリ-D-リジン被覆96-ウェルプレ
ート(BD bioscience、カタログ #356640)に播種した。細胞は、4時間、DMEM高グ
ルコース、0.5%のBSAおよび10mMのHEPESにおいて血清飢餓した。WT
FGF21およびFGF21変異体(変異体のリストに関して表3参照)を、飢餓培地に
おいて、種々の濃度に希釈した(100pMから300nMが使用される典型的な濃度範
囲である)。細胞を10分間、FGF21で刺激した。FGF21またはFGF21変異
体タンパク質刺激後、培地をウェルから吸引し、細胞を100μlの冷PBSで1回洗浄
し、次に、室温で15分間100μLの4%ホルムアルデヒドで固定し、次に、100μ
lの氷冷メタノールでさらに10分間インキュベーションした。
【0261】
固定後、細胞をPBS中の0.3%のトリトンX-100で4回、それぞれ5分洗浄し
た。150μlのOdyssey Blockingバッファーを、室温で1.5時間、
透過処理した細胞に加えた。ホスホ-ERK(pERK)抗体を0.17μg/mlの濃
度(1:200希釈、または示された希釈)に希釈し、全-ERK(tERK)抗体をO
dyssey Blocking バッファーにおいて2.2μg/mlの濃度(1:2
00希釈、または示された希釈)に希釈した。50μlを、バックグラウンドのために標
準化する二次抗体で処理されたのみである1つのカラムを含めない全てのウェルに加えた
。プレートを湿紙タワー(tower)で被覆し、蒸発を防止するために蓋をし、次に4℃で一
晩インキュベートした。
【0262】
その後、一次抗体を吸引し、細胞を、PBS中の0.3%のTween 20で4回、
それぞれ5分洗浄した。洗浄中、二次抗体反応混合物は、1:1000-希釈(または示
された希釈)ヤギ抗-マウスAlexa 680および1:1000-希釈(または示さ
れた希釈)IRDye800 ヤギ抗-ウサギ抗体を含むOdyssey Blocki
ngバッファーにおいて調製した。洗浄が完了したら、40μLの反応混合物をそれぞれ
のウェルに加えた。プレートに黒色の蓋を被せ、光から二次抗体を保護し、プレートを震
盪器上で室温で1時間インキュベートした。最後に、細胞を再び、PBS中の0.3%の
Tween 20でそれぞれ5分間4回洗浄し、次に700nm(赤)および800nm
(緑)チャンネルにおいてLI-COR Bioscience Odyssey In
frared Imaging System(Li-Cor Biosciences, Lincoln, NE)に
てスキャンした。Alexa 680は近赤外蛍光(発光波長668nm)でtERKを
染色したが、IRDye800は緑色蛍光(発光波長800nm)でpERKを染色した
。蛍光バックグラウンドを除去するために、二次抗体のみで処理された全体の段/列から
得られた値を平均し、プレートから得られた全ての他の値から引いた。それぞれのサンプ
ルに存在するpERKの量の標準化のために、それぞれのウェルにおけるpERKに対す
る値を、tERKの値で割った。データはGraphPad Prismソフトウェアに
より分析し、該結果は表に要約される。Fc-FGF21融合変異体V101、V103
およびV188は、該ERKリン酸化アッセイにおいて、ペグ化FGF21変異体V76
より優れている。
【表7】
【0263】
実施例4:FGF21変異体のインビボ試験
ob/obマウスは、2型糖尿病のマウスモデルである。該マウスは、機能性レプチン
を欠いており、高血糖、インスリン耐性、過食症、肝臓脂肪症および肥満により特徴付け
られる。オスob/obマウス(10-13週齢)を使用し、以下、ペグ化FGF21変
異体V76およびFc-FGF21融合変異体V101、V103およびV188の血糖
に対する効果を評価した。
【0264】
FGF21変異体またはPBSビヒクルを、1週あたり2回で12日間(全4回投与)
で、1mg/kgでs.c.投与(V101、V103およびV188)、またはV76
に5mg/kgでs.c投与した。試験の最初の日に、尾の血糖および体重を測定し、マ
ウスを、グループ間で合わせられた平均グルコースおよび体重で、異なるグループ(グル
ープあたりn=8)に配分した。glucometer(OneTouch)を使用して
血糖を測定した。血漿インスリンを、投与前1日目および最後の投与24時間後12日目
に測定した。これらの試験の結果は、表5において要約されている。
【0265】
これらの試験の結果は、表3および図1-3において要約されている。Fc-FGF2
1融合変異体V101、V103およびV188は、5倍低い用量で、これらの試験にお
いて測定された全ての終点においてペグ化FGF21変異体V76よりも優れている。
【表8】
【0266】
実施例5:マウスにおけるFGF21融合変異体の薬物動態学
Fc-FGF21融合変異体V101、V103およびV188の薬物動態学プロフィ
ールを決定するために、C57BL/6Jマウスに1mg/kgの試験物質をIV注射し
、16日間(384時間)種々の時点で採血した。血液サンプルを、顎下腺または眼窩後
静脈叢のいずれかからEDTAで被覆されたマイクロテイナーチューブに回収した。約5
0μLの血液をそれぞれの時点で回収し、~25μLの血漿を得た。
【0267】
ELISAにより試験物質の血漿濃度を測定するために、384-ウェルプレートを一
晩室温(RT)で2μg/mLの抗ヒトFc-ガンマ ヤギポリクローナル抗体(30μ
L/ウェル)で被覆し、次に、RTで2時間カゼインベースの希釈剤でブロックした(1
00μL/ウェル)。希釈されたサンプル、標準およびコントロールをプレート(30μ
L/ウェル)に加え、RTで2時間インキュベートした。サンプルを取り出した後、ウェ
ルをホスフェートベースの洗浄溶液(100μL/ウェル)で3回洗浄した。捕捉抗体の
HRP-標識化バージョンである検出抗体をプレートに加え、RTで1時間インキュベー
トした(30μL/ウェル)。プレートをホスフェートベースの洗浄溶液(100μL/
ウェル)で再び3回洗浄した後、化学発光基質を加え(30μL/ウェル)、プレート発
光を5分以内に適当なプレートリーダーを使用して読んだ。図4Aおよび4Bに示される
とおり、Fc-FGF21融合変異体は、当分野で既知のFc-FGF21融合と比較し
て(図4A)、およびペグ化FGF21変異体V76と比較して(図4B)、非常に延長
された血漿半減期を有した。
【0268】
Fcのみでない全長Fc-FGF21変異体がELISAにおいて検出されたことを保
証するために、Fc-FGF21試験物質の血清レベルを、ELISAにより測定される
レベルとの比較のためにウェスタンブロットにより立証した。2uLのマウス血清を2.
5uLの4Xローディングバッファー、1uLの10X変性剤および4uLのdHOと
混合し、95℃に5分間加熱し、4-12%勾配ポリアクリルアミドゲル状に負荷し、1
00ボルト(定電圧)で1時間電気泳動した。iblotシステム(Invitroge
n、カタログ # IB1001、7分 ラン(run)時間)を使用するウェスタンブロッ
トにより、サンプルをニトロセルロースろ紙に移した。ニトロセルロースフィルターを、
30mlのRocklandブロッキング溶液(カタログ #MB-070)でブロック
し、スナップiblotシステムプロトコールの後に1:2000希釈でのヤギ抗-FG
F21一次抗体(R&D systems、カタログ # BAF2539)でプローブ
化し、1:10000希釈での二次としてストレプトアビジン(Licor、カタログ
# 926-68031)で蛍光的に標識化した。タンパク質レベルを700nmでLi
cor Odysseyシステムにてイメージ化し、同じゲル上に流された2nMのコン
トロールV101と比較した。図4Cに示されるとおり、全長Fc-FGF21変異体V
101、V103およびV188は、薬物動態学試験からマウス血清から、15日間、抗
-FGF21抗体を使用するウェスタンブロットを使用して検出することができる。
【0269】
実施例6:Fc-FGF21融合変異体V101、V103およびV188は、非常に熱
力学的に安定である
タンパク質は、特定の温度範囲でアンフォールディングさせることができる。タンパク
質アンフォールディングの温度は、タンパク質の熱安定性を説明するための内因性パラメ
ーターである。示差走査熱量測定(DSC)を使用して、タンパク質のアンフォールディ
ング温度を検出する。該特性温度は融解温度(Tm)と呼ばれ、これはタンパク質アンフ
ォールディング中のピーク温度である。
【0270】
元のタンパク質サンプルを、0.5mlの全容量のために、PBSにおいて~1mg/
ml(0.5mg/mlから1.2mg/ml)の濃度に希釈する。ウェルあたり0.4
mlのアリコートにて希釈されたタンパク質サンプル、標準、PBS、およびDI水を、
DSC 96-ウェルプレートに加える。次に、プレートをシールにより覆う。サンプル
をMicroCalの96ウェル示差走査熱量計において分析した。温度は、1分あたり
1℃の速度で10-110℃でスキャンした。
【0271】
図4Dに示されるとおり、FGF21変異体V101、V103およびV188の融解
温度は非常に高い。これは、FGF21変異体V76および野生型FGF21の非常に低
い融解温度(示されていない)と対照的である。本発明者らは、V101、V103およ
びV188の改善された安定性が新規Q55CおよびG148C突然変異からの第2のジ
スルフィド結合の特定の付加に起因すると考える。熱力学的安定性のこの型は、タンパク
質をタンパク質分解から保護することが知られており、その上、図4Bおよび4Cにおけ
るデータにより例示されるインビボでの有意に長期な安定性および改善された薬物動態学
プロフィールにつながることができる。
本発明は以下を提供する。
[A] FGF21変異体およびFc領域を含む、融合タンパク質。
[B] 該タンパク質の配列が、表1に記載されている配列から選択される、[A]に記
載の融合タンパク質。
[1] FGF21変異体およびFc領域を含む融合タンパク質であって、前記FGF変
異体は、配列番号1の全長hFGF21配列に対して、Q55C、R105K、G148
C、K150R、P158S、S195A、P199GおよびG202Aの変異を含む、
融合タンパク質。
[2] FGF21変異体およびFc領域を含む融合タンパク質であって、前記融合タン
パク質は、配列番号11のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質。
[3] 前記FGF21変異体は、GSリンカーを介して前記Fc領域に融合している、
[1]に記載の融合タンパク質。
[4] 前記Fc領域は、LALA変異で修飾されたFcフラグメントである、[1]に
記載の融合タンパク質。
[5] Gln55Cysと、Cys103、Cys121、Gly148Cys、As
n149Cys、Lys150Cys、Ser141Cys、Pro152Cys、Hi
s153Cys、Arg154Cys、Asp155Cys、Pro156Cys、Al
a157Cys、Pro158Cys、Arg159Cys、Gly160Cys、Pr
o161Cys、Ala162CysおよびArg163Cysのうちの1つにおけるシ
ステイン残基との間に少なくとも1つの操作されたジスルフィド結合を含む、[1]に記
載の融合タンパク質。
[6] Gly148Cysと、Cys103、Cys121、Arg47Cys、Ty
r48Cys、Leu49Cys、Tyr50Cys、Thr51Cys、Asp52C
ys、Asp53Cys、Ala54Cys、Gln55Cys、Gln56Cys、T
hr57Cys、Glu58Cys、Gly160Cys、Pro161Cys、Ala
162Cys、Arg163CysおよびPhe164Cysのうちの1つにおけるシス
テイン残基との間に少なくとも1つの操作されたジスルフィド結合を含む、[1]に記載
の融合タンパク質。
[7] 操作されたジスルフィド結合Gln55Cys-Gly148Cysでさらに増
強されている、[6]に記載の融合タンパク質。
[8] 前記融合タンパク質は配列番号12のアミノ酸配列を含む、[1]に記載の融合
タンパク質。
[9] 前記FGF21変異体は、C103とC121の間にジスルフィド結合を含む、
[1]に記載の融合タンパク質(ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1の全長hFGF
21配列のアミノ酸の位置を意味する)。
[10] 前記Fc領域は、リンカーを介して前記FGF21変異体に結合している、[
1]に記載の融合タンパク質。
[11] 前記リンカーは1~20アミノ酸長である、[10]に記載の融合タンパク質

[12] 前記リンカーはグリシンおよびセリン残基を含む、[10]または[11]に
記載の融合タンパク質。
[13] 前記融合タンパク質のFc領域は、修飾されたFcフラグメントである、[1
]、[3]、[10]、[11]または[12]に記載の融合タンパク質。
[14] [1]~[13]のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容可
能な担体とを含む医薬組成物。
[15] 患者における血糖の低下、インスリンレベルの低下、トリグリセリドレベルの
低下、コレステロールレベルの低下、肝臓脂質レベルの減少、肝臓トリグリセリドレベル
の減少、体重の減少、グルコース耐性の改善、およびインスリン感受性の改善からなる群
より選択される1つ以上の生物学的活性を達成するのに使用するための、[14]に記載
の医薬組成物。
[16] 前記患者は、肥満、1型および2型糖尿病、インスリン耐性、高インスリン血
症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、糖尿病性合併症、胃不全まひ、
インスリン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する障害、ならびに他の代謝障
害からなる群より選択される1つ以上の障害に罹患している、[15]に記載の医薬組成
物。
[17] 前記障害は、肥満、2型糖尿病、脂質異常症または高血糖である、[16]に
記載の医薬組成物。
[18] 患者における血糖の低下、インスリンレベルの低下、トリグリセリドレベルの
低下、コレステロールレベルの低下、肝臓脂質レベルの減少、肝臓トリグリセリドレベル
の減少、体重の減少、グルコース耐性の改善、およびインスリン感受性の改善からなる群
より選択される1つ以上の生物学的活性を達成するのに使用するための医薬の製造におけ
る、[1]~[13]のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
[19] 前記患者は、肥満、1型および2型糖尿病、インスリン耐性、高インスリン血
症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、糖尿病性合併症、胃不全まひ、
インスリン受容体における重度の不活性化突然変異と関連する障害、ならびに他の代謝障
害からなる群より選択される1つ以上の障害に罹患している、[18]に記載の使用。
[20] 前記障害は、肥満、2型糖尿病、脂質異常症または高血糖である、[19]に
記載の使用。
[21] [1]~[13]のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌ
クレオチド。
[22] [21]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[23] [22]に記載のベクターまたは[21]に記載のポリヌクレオチドを含む宿
主細胞。
[24] [23]に記載の宿主細胞を用いて融合タンパク質を発現させることを含む、
融合タンパク質の製造方法。
[25] 前記融合タンパク質を精製することをさらに含む、[24]に記載の方法。
[26] 患者における代謝障害を治療する方法において使用するための、[14]に記
載の医薬組成物。
[27] 前記代謝障害は、肥満、糖尿病、脂質異常症または高血糖である、[26]に
記載の医薬組成物。
[28] 患者における代謝障害を治療する方法において使用するための医薬の製造にお
ける、[1]~[13]のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
[29] 前記代謝障害は、肥満、糖尿病、脂質異常症または高血糖である、[28]に
記載の使用。
[30] 前記代謝障害は2型糖尿病である、[27]に記載の医薬組成物。
[31] 前記代謝障害は2型糖尿病である、[29]に記載の使用。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
【配列表】
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