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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】水処理設備の更新支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230829BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230829BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022010057
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020054335の分割
【原出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2022044738
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 藤徳
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-048384(JP,A)
【文献】特開2011-181088(JP,A)
【文献】特開2007-156653(JP,A)
【文献】特開2006-281092(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1912239(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
更新支援システムのユニットデータ記憶部により、それぞれが個別に移設可能な1台以上の水処理ユニットを含む水処理設備が有するそれぞれの前記水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関する第1データを記憶し、
予測用データ記憶部により、前記水処理設備の給水対象地域における将来の人口予測を含む処理水量の予測に関する第2データを記憶し、
原水データ記憶部により、前記水処理設備の処理対象となる原水の水質に関する第3データを記憶し、
予測部により、前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データに基づいて、前記第2データを用いて要求される処理水量を予測し、前記第3データと当該予測した処理水量を用いて必要とされる水処理設備の処理能力を算出するとともに、前記算出した処理能力と前記第1データを照合し、将来に過剰となる又は不足する前記水処理ユニットの種類及び台数を予測し、
出力部により、前記予測部からの予測結果として過剰/不足の区別、過剰又は不足が生じる時期、過剰又は不足が生じる水処理ユニットの種類及び台数の情報を報知することを特徴とする水処理設備の更新支援方法。
【請求項2】
更新時期データ記憶部により、前記水処理設備とは異なる水処理設備であって前記水処理設備と同種の前記水処理ユニットを有する他の水処理設備の更新時期に関する第4データを記憶し、
前記予測部により、前記第1データ、前記第2データ、前記第3データ及び前記第4データに基づいて、前記第2データと前記第4データとを用いて要求される処理水量を予測し、前記第3データと当該予測した処理水量を用いて水処理設備の処理能力を算出するとともに、前記算出した処理能力と前記第1データを照合し、前記他の水処理設備の更新時期に過剰となる前記水処理ユニットの種類及び台数を予測することを特徴とする請求項1に記載の水処理設備の更新支援方法。
【請求項3】
実績データ記憶部により、前記水処理設備が現時点で実際に処理した水量を第5データとして記憶し、
過剰ユニット算出部により、前記水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関する前記第1データ及び前記第5データに基づいて、現時点において過剰な前記水処理ユニットの種類及び台数を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水処理設備の更新支援方法。
【請求項4】
予測用データ補正部により、前記水処理設備が現時点で実際に処理した水量の前記第5データを用い、前記水処理設備の将来における処理水量の予測に関する前記第2データを補正し、
前記予測部により、前記補正された前記第2データ、前記第1データ及び前記第3データに基づいて、将来に過剰となる又は不足する前記水処理ユニットの種類及び台数を予測することを特徴とする請求項3に記載の水処理設備の更新支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浄水処理、上下水処理、し尿処理等の水処理設備の更新支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理設備の更新支援方法においては、例えば流入ポンプ毎の消費電力量及び流入流量に基づいて、単位流量あたりの消費電力量を示す消費電力原単位を演算し、演算された現在の消費電力原単位と、導入当初又はメンテナンス直後の所定時間における基本消費電力原単位とを比較表示するとともに、現在の消費電力原単位と導入当初又はメンテナンス直後の所定時間における基本消費電力原単位との差分が所定の診断値以上のときに当該機器のメンテナンスを促すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-181088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような水処理設備の更新支援方法は、設備の劣化度に基づいて、真に更新が必要な設備を更新するための設備更新計画の作成を支援することを目的としている。しかしながら、水処理設備について将来に必要される処理能力の変化については考慮されておらず、将来において発生し得る水処理用の機器、ユニットの過不足を見込んだ更新計画の策定を支援できない。また、水処理設備が有する水処理用の機器、ユニットを、他の水処理設備との間で移設することについても一切考慮されていない。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、水処理設備が有する水処理ユニットについて将来に発生し得る過不足を事前に見込んだ更新計画の策定を支援でき、将来における複数の水処理設備間での水処理ユニットの移設を考慮した更新計画の策定を支援することが可能である水処理設備の更新支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る水処理設備の更新支援方法は、更新支援システムのユニットデータ記憶部により、それぞれが個別に移設可能な1台以上の水処理ユニットを含む水処理設備が有するそれぞれの前記水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関する第1データを記憶し、予測用データ記憶部により、前記水処理設備の給水対象地域における将来の人口予測を含む処理水量の予測に関する第2データを記憶し、原水データ記憶部により、前記水処理設備の処理対象となる原水の水質に関する第3データを記憶し、予測部により、前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データに基づいて、前記第2データを用いて要求される処理水量を予測し、前記第3データと当該予測した処理水量を用いて必要とされる水処理設備の処理能力を算出するとともに、前記算出した処理能力と前記第1データを照合し、将来に過剰となる又は不足する前記水処理ユニットの種類及び台数を予測し、出力部により、前記予測部からの予測結果として過剰/不足の区別、過剰又は不足が生じる時期、過剰又は不足が生じる水処理ユニットの種類及び台数の情報を報知する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る水処理設備の更新支援方法によれば、水処理設備が有する水処理ユニットについて将来に発生し得る過不足を事前に見込んだ更新計画の策定を支援でき、将来における複数の水処理設備間での水処理ユニットの移設を考慮した更新計画の策定を支援することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る水処理設備の更新支援システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る水処理設備の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の予測処理の一例を示すフロー図である。
図4】実施の形態1に係る水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の予測用データの補正処理の一例を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法のマッチング処理の一例を示すフロー図である。
図6】実施の形態1に係る水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の活用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る水処理設備の更新支援方法及び水処理設備システムを実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1から図6を参照しながら、本開示の実施の形態1について説明する。図1は水処理設備の更新支援システムの全体構成を示すブロック図である。図2は水処理設備の構成の一例を示すブロック図である。図3は水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の予測処理の一例を示すフロー図である。図4は水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の予測用データの補正処理の一例を説明する図である。図5は水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法のマッチング処理の一例を示すフロー図である。図6は水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の活用例を説明する図である。
【0011】
本開示に係る水処理設備の更新支援システムによる更新支援方法の要旨は、水処理設備について予め目安となる将来の予想更新時期を定めておき、水処理設備における水処理ユニットの種類、台数及び処理能力と、前記水処理設備の将来における予測の処理水量と、前記水処理設備の処理対象となる原水の水質とに基づいて、前記水処理設備において将来に過剰又は不足する前記水処理ユニットの種類及び台数を予測し、その予測結果から、将来に発生し得る過不足を事前に見込んで前記更新時期の更新計画を策定し、複数の水処理設備の間での水処理ユニットの移設を可能とするものである。
【0012】
図1に示す、この実施の形態に係る更新支援システム100は、水処理設備200の更新を支援するためのものである。まず、更新支援システム100が対象とする水処理設備200について説明する。更新支援システム100が対象とする水処理設備200は、例えば、浄水施設、下水処理施設及び屎尿処理施設の少なくとも1種類を含んでいる。水処理設備200は、例えば、水道事業体303(地方自治体)により管理される。水処理設備200は、1台以上の水処理ユニットを含んでいる。水処理ユニットは、それぞれが個別に移設可能なユニットである。水処理設備200は、要求される処理内容に応じて、1台以上の水処理ユニットを組み合わせることにより構成されている。
【0013】
図2を参照しながら、水処理設備200が例えば浄水施設である場合の構成例について説明する。同図に示すように、浄水施設である水処理設備200は、水処理ユニットとして、薬注ユニット201、混和凝集処理ユニット202、沈殿処理ユニット203、濾過処理ユニット204及び貯留ユニット205を備えている。
【0014】
薬注ユニット201は、例えば、後述する混和凝集処理ユニット202に薬液を注入するユニットである。薬注ユニット201が注入する薬液には、凝集剤、pH調整剤等が含まれている。薬注ユニット201が注入する薬液に含まれる凝集剤としては、無機系凝集剤及び有機高分子凝集剤等が挙げられる。無機系凝集剤としては、例えば、ポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド等が挙げられる。有機高分子凝集剤としては、カチオン系、アニオン系、両性系等のものが挙げられ、例えば、アミジン系凝集剤、アクリルアミド系凝集剤、アクリル酸系凝集剤等を挙げることができる。これらの凝集剤は、それぞれを単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0015】
混和凝集処理ユニット202は、処理対象の原水に対し、薬液の混和処理と汚泥の凝集処理とを行うユニットである。すなわち、混和凝集処理ユニット202は、まず、処理対象の原水に対し、薬注ユニット201から注入された凝集剤を混和させる。そして、混和凝集処理ユニット202は、凝集剤の作用により原水に含まれる汚泥を凝集させて、不水溶性の凝集汚泥(フロック)を形成させる。
【0016】
沈殿処理ユニット203は、混和凝集処理ユニット202において生成された凝集汚泥を沈殿させることで固液分離を行い、被処理水から凝集汚泥を除去するユニットである。濾過処理ユニット204は、被処理水を濾過することで、沈殿処理ユニット203で凝集汚泥として取り除かれなかった被処理水中の固体成分等を除去する。濾過処理ユニット204での濾過は、膜濾過、砂濾過等の既知の濾過処理を単独で行ってもよいし、これらを組み合わせて行ってもよい。そして、貯留ユニット205は、被処理水が処理されて生成された浄水を一時的に貯留しておくユニットである。
【0017】
なお、図2においては、薬注ユニット201が主に混和凝集処理ユニット202に薬液を注入する場合の構成例を示したが、薬注ユニット201が薬液を注入するユニットは混和凝集処理ユニット202に限られない。薬注ユニット201は、混和凝集処理ユニット202、沈殿処理ユニット203、濾過処理ユニット204及び貯留ユニット205のいずれにも薬液を注入することが可能である。
【0018】
また、図2においては、これらの水処理ユニットのそれぞれを代表して1台ずつ示しているが、水処理設備200は、各種類の水処理ユニットを2台以上備えていてもよい。また、対象となる水処理設備200は、これらの水処理ユニットの全種類を備えている必要はなく、以上に示した水処理ユニットの一部のみを備え、備えていない水処理ユニットがあってもよい。さらに、水処理設備200が備える水処理ユニットの種類は、以上に示したものに限られない。他に例えば、生物処理ユニット、塩素処理ユニット、脱水ユニット等を水処理設備200が備えていてもよい。
【0019】
図1に示す、この実施の形態の更新支援システム100は、ハードウェアとして、プロセッサ及びメモリを備えた1台以上のコンピュータから構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリには、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、又は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0020】
更新支援システム100のメモリには、ソフトウェアとしてのプログラムが記憶される。そして、更新支援システム100は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって予め設定された処理を実施し、ハードウェアとソフトウェアとが協働した結果として、以下に説明する各部の機能を実現する。
【0021】
図1に示すように、この実施の形態の更新支援システム100は、ユニットデータ記憶部111、予測用データ記憶部112及び原水データ記憶部113を備えている。ユニットデータ記憶部111は、第1データを記憶する第1データ記憶部である。第1データは、水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータである。
【0022】
水処理ユニットの種類とは、前述した水処理設備200が浄水施設である例では、薬注ユニット201、混和凝集処理ユニット202、沈殿処理ユニット203、濾過処理ユニット204、貯留ユニット205等のことである。水処理ユニットの処理能力とは、例えば、水処理ユニットの種類が混和凝集処理ユニット202、沈殿処理ユニット203、濾過処理ユニット204等であれば、単位時間(例えば1日等)当たりに処理可能な水量等である。また、水処理ユニットの種類が薬注ユニット201であれば、注入可能な薬液の種類、一度に注入可能な薬液の種類の数、単位時間(例えば1日等)当たりに注入可能な薬液の量等である。また、水処理ユニットの種類が貯留ユニット205であれば、貯留可能な容量等である。
【0023】
予測用データ記憶部112は、第2データを記憶する第2記憶部である。第2データは、水処理設備200の将来における処理水量の予測に関する時系列データである。例えば、水処理設備200が浄水施設の場合、当該水処理設備200の処理水量は給水対象地域への給水量である。例えば、水処理設備200が浄水施設の場合、当該水処理設備200に要求される処理水量すなわち給水量は、当該水処理設備200の給水対象地域の人口と強い相関がある。この場合、水処理設備200の給水対象地域の将来における人口予測から、前述の相関に基づき、水処理設備200の将来における処理水量の予測を行うことが可能である。したがって、水処理設備200の給水対象地域の将来における人口予測に関するデータは、水処理設備200の将来における処理水量の予測に関するデータの一例である。この場合には、第2記憶部である予測用データ記憶部112が記憶する第2データには、水処理設備200の給水対象地域の将来における人口予測に関するデータが含まれる。なお、水処理設備200の将来における処理水量の予測に関する第2データとして、他に例えば、水処理設備200の将来における処理水量の予測データそのものを用いてもよい。
【0024】
ユニットデータ記憶部111に記憶される第1データ及び予測用データ記憶部112に記憶される第2データは、例えば、入力装置301を用いて、更新支援システム100に入力される。入力装置301は、例えば、キーボード、マウス等である。あるいは、インターネット等の通信ネットワークを介して更新支援システム100外部のPC、スマートフォン等の端末装置、サーバー、他のシステム、外部の情報記憶媒体等から、第1データ及び第2データを入力してもよい。
【0025】
原水データ記憶部113は、第3データを記憶する第3記憶部である。第3データは、水処理設備200の処理対象となる原水の水質に関するデータである。原水データ記憶部113が記憶する原水の水質に関するデータは、例えば、原水水質センサ302により計測されたものである。原水水質センサ302は、水処理設備200が浄水施設の場合、水源池又は水源となる河川の水質及び水量を計測するセンサである。
【0026】
原水水質センサ302は、例えば、水処理設備200への取水点(水処理設備200の樋門)等に設置されている。当該取水点が河川にある場合、原水水質センサ302を、当該取水点の上流及び下流のそれぞれにさらに設けてもよい。原水水質センサ302による計測データは、更新支援システム100に送信される。そして、原水データ記憶部113は、更新支援システム100において受信された原水水質センサ302による計測データを、第3データとして記憶する。
【0027】
また、原水データ記憶部113は、水処理設備200を管理、運営する例えば水道事業体303(地方自治体)が蓄積する原水の水質に関するデータを、第3データとして記憶してもよい。この場合、水道事業体303が有する原水の水質に関するデータが蓄積されているデータベースと更新支援システム100とが通信ネットワークを介して通信可能に接続されていれば、水道事業体303が有するデータベースから通信によりデータを取得し、水道事業体303が蓄積する原水の水質に関するデータを原水データ記憶部113に記憶させる。あるいは、水道事業体303が有する原水の水質に関するデータが蓄積されている例えばCD-ROM等の情報記憶媒体からデータを読み出すことで、水道事業体303が蓄積する原水の水質に関するデータを原水データ記憶部113に記憶させてもよい。
【0028】
更新支援システム100は、予測部121及び出力部122をさらに備えている。予測部121は、水処理設備200において将来に過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する。予測部121における予測は、前述した第1データ、第2データ及び第3データに基づいて行われる。
【0029】
まず、予測部121は、予測用データ記憶部112に記憶されている第2データ、すなわち水処理設備200の将来における処理水量の予測に関するデータを用いて、将来の各時点において水処理設備200に要求される処理水量を予測する。例えば、水処理設備200が浄水施設の場合であって、第2データに水処理設備200の給水対象地域の将来における人口予測に関するデータが含まれている場合、予測部121は、水処理設備200の給水対象地域の将来の各時点における人口予測から、水処理設備200の将来の各時点における処理水量を予測する。
【0030】
次に、予測部121は、原水データ記憶部113に記憶されている第3データ、すなわち水処理設備200の処理対象となる原水の水質に関するデータと、水処理設備200の将来における処理水量の予測とから、第3データの示す水質の原水を処理して、将来の各時点で予測処理水量を達成するために必要な水処理設備200の処理能力を算出する。なお、ここでは、将来の各時点において、原水の水質は現時点と同じであると仮定している。
【0031】
続いて、予測部121は、算出した将来の各時点に必要となる水処理設備200の処理能力と、ユニットデータ記憶部111に記憶されている第1データ、すなわち水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータとを照らし合わせる。そして、この照らし合わせにより、予測部121は、算出した将来に必要となる水処理設備200の処理能力に対し、将来に過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する。
【0032】
つまり、予測部121は、将来に必要となる処理能力と現時点での処理能力との差を、各種類の水処理ユニットの台数単位で算出する。具体的には、ある種類の水処理ユニットについて将来に必要となる処理能力よりも現時点での処理能力が大きかったとしても、その処理能力の余剰量が当該種類の水処理ユニットの1台分に満たなければ、その余剰は切り捨てられて当該種類の水処理ユニットの過剰台数としてカウントされない。また、ある種類の水処理ユニットについて将来に必要となる処理能力が現時点での処理能力より大きければ、その処理能力の不足が当該種類の水処理ユニットの1台分に満たなくとも、その不足は切り上げられて当該種類の水処理ユニットの不足台数としてカウントされる。なお、将来に過剰となる又は不足する水処理ユニットがある場合、この予測部121の予測結果には、水処理ユニットの過剰又は不足が生じる時期についての情報も含まれている。
【0033】
ここで、個々の水処理ユニットの処理能力については、一定の幅で調整可能であることが多い。したがって、処理能力の余剰量が水処理ユニットの1台分に満たなかったとしても、個々の水処理ユニットの処理能力を上げることで水処理ユニットの1台分の余剰を作り出すことができる場合がある。また、処理能力の不足量が水処理ユニットの1台分に満たないときに、個々の水処理ユニットの処理能力を上げることで処理能力の不足量を補うことができる場合も考えられる。
【0034】
そこで、水処理ユニットの過剰台数をカウントする際の余剰分の切り捨て、及び、水処理ユニットの不足台数をカウントする際の不足分の切り上げについて、一定の余裕をみて行うようにするとよい。例えば、処理能力の余剰量が水処理ユニットの1台分に満たない場合、この1台分に満たない半端な余剰量が基準量以上であれば、逆に余剰分を切り上げて過剰台数としてカウントする。この際の基準量は、例えば水処理ユニットの標準的な処理量の90%とする。また、他に例えば、処理能力の不足量が水処理ユニットの1台分に満たない場合、この1台分に満たない半端な不足量が基準量以下であれば、逆に不足分を切り捨てて不足台数としてカウントしない。この際の基準量は、例えば水処理ユニットの標準的な処理量の10%とする。
【0035】
出力部122は、予測部121による予測結果を報知するために、予測結果を更新支援システム100の外部に出力するデータ出力用インターフェースである。出力部122の出力先は、例えば、モニタ401、プリンタ402等である。モニタ401は、出力部122から出力された予測部121による予測結果を表示する。プリンタ402は、出力部122から出力された予測部121による予測結果を紙等に印刷する。出力される予測結果には、過剰/不足の区別、過剰又は不足が生じる時期、過剰又は不足が生じる水処理ユニットの種類及び台数の情報が含まれている。
【0036】
なお、出力部122の出力先は、これらのモニタ401、プリンタ402に限られない。他に例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して予測部121による予測結果を更新支援システム100外部のPC、スマートフォン等の端末装置、サーバー、他のシステム等に送信してもよい。
【0037】
次に、以上のように構成された更新支援システム100の処理の流れの一例について、図3のフロー図を参照しながら説明する。まず、ステップS11において、更新支援システム100に第1データ、すなわち水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータが入力される。そして、ユニットデータ記憶部111は、更新支援システム100に入力された水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータを第1データとして記憶する。水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータが変更、追加、削除等される都度、最新の第1データが更新支援システム100に入力される。そして、ユニットデータ記憶部111は入力された第1データを蓄積していく。
【0038】
続く、ステップS12において、更新支援システム100に第2データ、すなわち水処理設備200の将来における処理水量の予測に関する時系列データが入力される。そして、予測用データ記憶部112は、更新支援システム100に入力された水処理設備200の将来における処理水量の予測に関する時系列データを第2データとして記憶する。水処理設備200の将来における処理水量の予測に関する時系列データが変更等される都度、最新の第2データが更新支援システム100に入力される。そして、予測用データ記憶部112は入力された第2データを蓄積していく。
【0039】
続く、ステップS13において、更新支援システム100に第3データ、すなわち水処理設備200の処理対象となる原水の水質に関するデータが、原水水質センサ302から入力される。そして、原水データ記憶部113は、更新支援システム100に入力された水処理設備200の処理対象となる原水の水質に関するデータを第3データとして記憶する。原水水質センサ302が原水水質を計測する都度、最新の計測結果が更新支援システム100に入力される。あるいは、水道事業体303が有する原水の水質に関するデータを更新支援システム100に入力してもよい。そして、原水データ記憶部113は入力された最新の計測結果を第3データとして蓄積していく。
【0040】
なお、以上の各種データの入力及び蓄積に係るステップS11からS13は、上記の順序に限られない。これらのステップの処理は、最新のデータが更新支援システム100に入力される都度、適宜に実行される。ステップS11、S12及びS13の後、処理はステップS14へと進む。
【0041】
ステップS14においては、予測部121は、水処理設備200において将来に過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する。このステップS14での予測においては、ステップS11でユニットデータ記憶部111に記憶された第1データ、ステップS12で予測用データ記憶部112に記憶された第2データ、及び、ステップS13で原水データ記憶部113に記憶された第3データが用いられる。ステップS14の後、処理はステップS15へと進む。
【0042】
ステップS15においては、出力部122は、ステップS14で予測部121が予測した結果を出力する。ステップS15の処理が完了すると、一連の動作は終了となる。
【0043】
例えば浄水場等の水処理設備200は、近年、建設してから数十年経過して老朽化し更新を迎えつつあるものが多い。一方、現状の日本では将来にわたって人口が減少することが想定されており、現時点での人口で必要な施設規模で水処理設備200を更新しても、人口減少に伴い近い将来には施設規模は過剰になることが考えられる。その結果、更新に伴う建設投資が無駄になる可能性がある。この一因として、例えば水処理設備200が浄水場の場合、それぞれの地方公共団体、それぞれの浄水場の給水エリア毎の部分最適のみを考えざるを得なかったことがある。また、浄水場等の水処理設備200は市場規模として小さく、市場に出回る水処理ユニットの数量も少ない。このため、水処理設備200が有する水処理ユニットの中古市場における流通量予測も難しい。
【0044】
これに対し、以上のように構成された更新支援システム100によれば、将来において水処理設備200で過剰又は不足が生じる水処理ユニットの種類及び台数を予測し、予測結果を出力して提示可能である。ここで、水処理設備200の水処理ユニットは、個別に移設ができるものであるため、将来において過剰となった水処理ユニットは、水処理設備200から他の設備等に移設することができる。また、逆に、将来において不足する水処理ユニットは、他の設備等から水処理設備200に移設することもできる。出力部122により出力された予測部121の予測結果では、将来における水処理ユニットの過剰又は不足が、水処理ユニットを移設可能な単位である台数により示される。このため、更新支援システム100からの出力内容を確認した者は、将来において必要な処理能力を確保したまま他の設備等への移設が可能な水処理ユニットが生じ得るか否か、及び、将来において必要な処理能力を確保するために追加又は他の設備等からの移設が必要となる状況が発生するのか否かを容易に把握できる。また、将来において必要な処理能力を確保したまま他の設備等への移設が可能な水処理ユニットの台数、あるいは、将来において必要な処理能力を確保するために他の設備等からの移設が必要となる水処理ユニットの台数を容易に把握できる。したがって、将来における水処理ユニットの移設の有無を考慮に入れた水処理設備200の更新計画の策定を支援することが可能である。
【0045】
図1に示すように、この実施の形態の更新支援システム100は、更新時期データ記憶部115をさらに備えていてもよい。更新時期データ記憶部115は、第4データを記憶する第4記憶部である。第4データは、水処理設備200とは異なる他の水処理設備(以降において単に「他の水処理設備」という)の更新時期に関するデータである。他の水処理設備は、水処理設備200が有する水処理ユニットのうちの少なくとも一部の水処理ユニットを利用可能な設備である。したがって、水処理設備200と他の水処理設備とで共通する水処理ユニットが水処理設備200で過剰となれば、当該過剰となった水処理ユニットを水処理設備200から他の水処理設備へと移設できる。
【0046】
なお、ここでいう水処理ユニットが利用可能であるとは、当該水処理ユニットを既存の水処理ユニットと置き換え可能である場合、及び、当該水処理ユニットを新たに必要としている場合等を含む。ここでいう水処理ユニットが置き換え可能であるとは、例えば、水処理ユニット同士が、同種である、機能が共通している、又は、機能が代替可能である場合等をいう。また、水処理ユニットを新たに必要としている場合には、当該水処理ユニットを必要とする「他の水処理設備」が現時点では設置されておらず、将来に新設される予定であるものも含まれる。すなわち、前述の更新時期には、広義には新たに設置する時期も含まれる。
【0047】
第4データは、前述した第1データ及び第2データと同様に、例えば、入力装置301を用いて、あるいは、インターネット等の通信ネットワークを介して更新支援システム100外部のPC、スマートフォン等の端末装置、サーバー、他のシステム等から、更新支援システム100に入力される。第4データの入力は、例えば他の水処理設備の管理者、運営者等により行われる。他の水処理設備が浄水場であれば水道事業体等である。
【0048】
そして、更新支援システム100が更新時期データ記憶部115を備えている場合、予測部121は、前述した第1データ、第2データ及び第3データに加えて、更新時期データ記憶部115に記憶されている第4データにさらに基づいて、予測を行ってもよい。この場合、予測部121は、これらのデータに基づき、将来における他の水処理設備の更新時期において、水処理設備200で過剰となる水処理ユニットの種類及び台数を予測する。
【0049】
まず、予測部121は、予測用データ記憶部112に記憶されている第2データ、すなわち水処理設備200の将来における処理水量の予測に関するデータと、更新時期データ記憶部115に記憶されている第4データ、すなわち他の水処理設備の更新時期に関するデータとから、将来の他の水処理設備の更新時期において水処理設備200に要求される処理水量を予測する。
【0050】
次に、予測部121は、原水データ記憶部113に記憶されている第3データ、すなわち水処理設備200の処理対象となる原水の水質に関するデータと、他の水処理設備の更新時期において水処理設備200に要求される処理水量の予測とから、第3データの示す水質の原水を処理して、他の水処理設備の更新時期において予測処理水量を達成するために必要な水処理設備200の処理能力を算出する。なお、ここでは、他の水処理設備の更新時期における原水の水質は現時点と同じであると仮定している。
【0051】
続いて、予測部121は、算出した他の水処理設備の更新時期に必要となる水処理設備200の処理能力と、ユニットデータ記憶部111に記憶されている第1データ、すなわち水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータとを照らし合わせる。そして、この照らし合わせにより、予測部121は、算出した他の水処理設備の更新時期に必要となる水処理設備200の処理能力に対し、過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する。
【0052】
このようにすることで、他の水処理設備の更新時期に合わせて、他の水処理設備の更新時において必要な処理能力を確保したまま他の設備等への移設が可能な水処理ユニットが水処理設備200で生じ得るか否か等を容易に把握可能な情報を提供できる。したがって、水処理設備200については、当該水処理設備200の水処理ユニットを将来において他の水処理設備へ移設すること等を事前に織り込んだ運用計画の策定を支援できる。また、他の水処理設備についても、水処理設備200からの水処理ユニットの移設等を事前に織り込んだ運用計画の策定を支援できる。
【0053】
なお、ここでいう他の水処理設備とは、今回の水処理ユニットの過剰予測の対象でないというだけであり、他の機会に水処理ユニットの過剰予測の対象となることを妨げるものではない。つまり、後述するように、更新支援システム100が対象とする水処理設備200が複数である場合に、この対象とする複数の水処理設備200に「他の水処理設備」が含まれていてもよい。したがって、他の水処理設備は、更新支援システム100による水処理ユニットの過剰予測及び不足予測の対象となり得る。
【0054】
また、この実施の形態の更新支援システム100は、図1に示すように、実績データ記憶部114及び過剰ユニット算出部124をさらに備えていてもよい。実績データ記憶部114は、第5データを記憶する第5記憶部である。第5データは、水処理設備200が実際に処理した水量のデータである。この場合、例えば、水処理設備200には、処理水量を計測する処理水量センサが設けられている。そして、この処理水量センサの計測データが、更新支援システム100に送信される。実績データ記憶部114は、更新支援システム100において受信された水処理設備200の処理水量センサによる計測データを、第5データとして記憶する。
【0055】
過剰ユニット算出部124は、実績データ記憶部114に記憶されている第5データ、すなわち水処理設備200が現時点で実際に処理した水量のデータと、ユニットデータ記憶部111に記憶されている第1データ、すなわち水処理設備200が有するそれぞれの水処理ユニットの種類、台数及び処理能力に関するデータとを照らし合わせる。そして、この照らし合わせにより、過剰ユニット算出部124は、水処理設備200の処理実績水量に対し現時点で過剰で水処理ユニットの種類及び台数を算出する。
【0056】
出力部122は、過剰ユニット算出部124による算出結果を、更新支援システム100の外部に出力する。出力部122の出力先は、例えば、モニタ401、プリンタ402等である。モニタ401は、出力部122から出力された過剰ユニット算出部124による算出結果を表示する。プリンタ402は、出力部122から出力された過剰ユニット算出部124の算出結果を紙等に印刷する。
【0057】
このようにすることで、例えば、地震、洪水等の災害に被災して水処理ユニットが急遽使用不能になった水処理設備がある場合等に、その時点において水処理設備200で必要な処理能力を確保したまま被災した水処理設備への移設が可能な水処理ユニットがあるか否かを容易に把握可能な情報を提供できる。したがって、被災した水処理設備についての迅速な災害対応を支援できる。
【0058】
更新支援システム100が実績データ記憶部114を備えている場合、更新支援システム100は、予測用データ補正部123をさらに備えていてもよい。予測用データ補正部123は、予測用データ記憶部112に記憶されている第2データ、すなわち水処理設備200の将来における処理水量の予測に関するデータを補正する補正部である。この補正は、実績データ記憶部114に記憶されている第5データ、すなわち、水処理設備200が現時点で実際に処理した水量のデータに基づいて行われる。
【0059】
水処理設備200の将来における処理水量の予測に関するデータの予測用データ補正部123による補正について、図4を参照しながら例を挙げて説明する。過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数の予測を、予測部121が同図に示す時点t1において行うとする。この時点t1において、同図に示すように、予測用データ記憶部112に記憶されている第2データに基づく処理水量の予測値と、実績データ記憶部114に記憶されている第5データの実績値との間に、差dがあったとする。この場合、予測用データ補正部123は、時点t1以降における予測用データ記憶部112に記憶されている第2データに基づく処理水量の予測値が、時点t1における前述の差dの分だけ修正されたものとなるように、第2データを補正する。
【0060】
そして、予測部121は、前述の第1データ及び第3データに加えて、予測用データ補正部123により補正された第2データを用いて、水処理設備200において将来に過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する。このようにすることで、予測用データ記憶部112に記憶されている第2データに基づく予測値と、水処理設備200の処理水量の実績値とに乖離がある場合にも、第2データに基づく予測値が実績値により近づくように補正できる。そして、この補正後の第2データを用いて予測部121が予測を行うことで、予測部121による予測精度の向上を図ることが可能である。
【0061】
なお、以上においては、1つの水処理設備200を更新支援システム100の対象として説明したが、更新支援システム100が対象とする水処理設備200は複数でも構わない。多数の水処理設備200を対象とする場合、予測部121による予測結果の情報量も大量になる。いつ、どの水処理設備200において、どの種類の水処理ユニットについて何台分の余剰又は不足が生じるのかについて容易に確認できるようにすると、水処理設備の更新を、より効率的に支援できる。
【0062】
そこで、この実施の形態の更新支援システム100において、出力部122は、予測部121の予測結果のうち、マッチング条件に合致する情報を出力するようにしてもよい。この場合、例えば、更新支援システム100には、予測部121の予測結果を記憶する図示しない結果記憶部が設けられている。また、更新支援システム100に対し、例えば図示しない入力装置等を介して、所望するマッチング条件を指定可能である。ここで指定可能なマッチング条件として、例えば、水処理ユニットの種類及びその処理能力、並びに、水処理ユニットが必要となる又は不要となる時期等を挙げることができる。出力部122は、前述した結果記憶部に記憶されている予測部121の予測結果から、指定されたマッチング条件に合致するものを検索する。そして、マッチング条件に合致するものがあれば、その内容を出力する。
【0063】
次に、このようなマッチングを行う場合の更新支援システム100の処理の流れの一例について、図5を参照しながら説明する。まず、ステップS21において、更新支援システム100に対し、指定するマッチング条件が入力される。続くステップS22において、出力部122は、前述した結果記憶部に記憶されている予測部121の予測結果から、ステップS21で入力されたマッチング条件に合致するものを検索する。そして、この検索の結果、マッチング条件に合致するものが見付からなかった場合、一連の処理は終了となる。
【0064】
一方、ステップS22における検索の結果、マッチング条件に合致するものがある場合、処理はステップS23へと進む。ステップS23においては、出力部122は、予測部121の予測結果のうちで、マッチング条件に合致するものを出力する。出力される情報には、例えば、マッチング条件に合致した水処理ユニットの過剰又は不足が生じる水処理設備200、過剰又は不足が生じる水処理ユニットの種類及び台数、過剰又は不足が生じる時期、過剰/不足の区別等の情報が含まれている。ステップS23の処理が終了すると、一連の処理は終了となる。
【0065】
なお、前述したように、更新支援システム100は、ハードウェアとして1台以上のコンピュータから構成されている。更新支援システム100が2台以上のコンピュータから構成されている場合、以上で説明した更新支援システム100が備える各部は、2台以上のコンピュータに分散して設けられてもよい。また、更新支援システム100を構成する2台以上のコンピュータは、同一の場所でなく、複数の離れた場所に設置され、通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されていてもよい。さらに、更新支援システム100を構成するコンピュータは、インターネット等の通信ネットワーク上に設けられた複数のサーバーからなるサーバー群いわゆるクラウドサーバーであってもよい。
【0066】
次に、以上のように構成された水処理設備の更新支援システム100による更新支援方法について説明する。この実施の形態に係る更新支援方法においては、まず、水処理設備200の将来の予想更新時期を定める時期設定ステップを行う。時期設定ステップは、例えば、水処理設備200の将来の予想更新時期を入力装置301を介して更新時期データ記憶部115に水処理設備200の将来の予想更新時期を記憶させることで行われる。つまり、ここでは、更新時期データ記憶部115に水処理設備200の将来の予想更新時期を記憶させることで、水処理設備200の将来の予想更新時期が定められる。
【0067】
次に、将来に過剰又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する予測ステップを行う。この予測ステップは、予測部121が、水処理設備200が有する移設可能な水処理ユニットの種類、台数及び処理能力と、水処理設備の将来の予測処理水量又は給水地域の予測人口と、水処理設備200の処理対象となる原水の水質とに基づいて、将来に必要な処理能力と現時点での処理能力との差から将来に過剰又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測する。この予測部121での予測において、水処理設備200が有する移設可能な水処理ユニットの種類、台数及び処理能力には、ユニットデータ記憶部111に記憶されている第1データが用いられる。水処理設備の将来の予測処理水量又は給水地域の予測人口には、予測用データ記憶部112に記憶されている第2データが用いられる。水処理設備200の処理対象となる原水の水質には、原水データ記憶部113に記憶されている第3データが用いられる。
【0068】
このようにして時期設定ステップで定めた予想更新時期と予測ステップの予測結果とは、出力部122を介して、モニタ401やプリンタ402に出力される。そして、出力された予想更新時期と予測結果とから、将来に発生し得る過不足を事前に見込んだ更新計画を策定し、複数の水処理設備200の間での水処理ユニットの移設を可能とすることができる。なお、以上で説明した時期設定ステップと予測ステップとを行う順序は、特に限定されない。すなわち、前述したようにまず時期設定ステップを行ってから予測ステップを行ってもよいし、予測ステップを行ってから時期設定ステップを行ってもよい。さらに、時期設定ステップと予測ステップとを並行して行ってもよい。
【0069】
次に、図6を参照しながら、以上のように構成された更新支援システム100を活用した、水処理設備の更新支援の例について説明する。この例では、A浄水場は4000m^3/d、すなわち1日当たり4000トンの給水量(処理水量)の水処理設備200である。そして、A浄水場において設備の更新を行い、1台当たりの処理能力が1000m^3/dの水処理ユニットである装置Aを4台設置した(装置A1~4)。装置Aは、1台ずつ個別に移設が可能な水処理ユニットである。
【0070】
このA浄水場の更新から10年後にB浄水場での設備更新が予定されている。B浄水場は3000m^3/d、すなわち1日当たり3000トンの給水量の水処理設備200である。B浄水場には、1台当たりの処理能力が1000m^3/dの水処理ユニットである装置Aが3台設置されている。
【0071】
これまでに説明したように、この実施の形態の更新支援システム100によれば、予測部121により、水処理設備において将来に過剰となる又は不足する水処理ユニットの種類及び台数を予測できる。ここで、更新支援システム100の予測部121により、将来においてA浄水場の給水対象エリアの給水量が減少し、B浄水場の更新が予定されているA浄水場の更新から10年後には、A浄水場の4台の装置Aのうちの1台が過剰になることが予測されたとする。
【0072】
そこで、このような予測に基づき、B浄水場に必要な3台の装置Aのうちの1台についてA浄水場で余剰となる装置A4を再利用し、再利用した装置A4と、新たな2台の装置A5及び装置A6とにより、B浄水場の設備更新を行う更新計画を策定できる。したがって、予測部121の予測結果を参考にして、B浄水場の設備更新においてA浄水場で将来に過剰となる装置A4を移設するという、装置Aの3台全てを新規に購入するよりも更新費用が安価な計画を事前に立てることが可能である。
【0073】
また、A浄水場の更新から20年後には、C浄水場での設備更新が予定されている。C浄水場は3000m^3/d、すなわち1日当たり3000トンの給水量の水処理設備200である。C浄水場には、1台当たりの処理能力が1000m^3/dの水処理ユニットである装置Aが3台設置されている。ここで、更新支援システム100の予測部121により、将来においてA浄水場の給水対象エリアの給水量が減少し、C浄水場の更新が予定されているA浄水場の更新から20年後には、A浄水場の4台の装置Aのうちのさらに2台が過剰になることが予測されたとする。
【0074】
そこで、このような予測に基づき、C浄水場に必要な3台の装置Aのうちの2台についてA浄水場で余剰となる装置A2及び装置A3を再利用し、再利用した装置A2及び装置A3と、新たな1台の装置A7とにより、C浄水場の設備更新を行う更新計画を策定できる。したがって、予測部121の予測結果を参考にして、C浄水場の設備更新においてA浄水場で将来に過剰となる装置A2及び装置A3を移設するという、装置Aの3台全てを新規に購入するよりも更新費用が安価な計画を事前に立てることが可能である。
【0075】
この際、更新支援システム100において、ユニットデータ記憶部111に記憶されている装置Aの処理能力と、原水データ記憶部113に記憶されているC浄水場の原水水質とを参照し、3台の装置A(装置A2、装置A3及び装置A7)により、必要な給水量(3000m^3/d)をC浄水場の原水水質においても賄うことが可能であるか否かを判定してもよい。そして、この判定の結果、3台の装置A(装置A2、装置A3及び装置A7)では、C浄水場の原水水質において必要な給水量を確保できない場合には、これを補う水処理ユニットである装置Bの導入を提案できるようにしてもよい。
【0076】
さらに、これまでに説明したように、この実施の形態の更新支援システム100によれば、過剰ユニット算出部124により、水処理設備において現時点で過剰な水処理ユニットの種類及び台数を算出できる。例えば、A浄水場の更新から5年後の時点において、災害が発生して被災した浄水場において装置Aが損壊して使用不能になったとする。この時点において、更新支援システム100の過剰ユニット算出部124により、A浄水場の4台の装置Aのうち1台が過剰になると算出されたとする。そこで、このような算出結果を参考に、A浄水場で過剰となった装置A4を被災した浄水場に移設することができる。
【0077】
以上のようにして、この実施の形態の更新支援システム100による更新支援方法によれば、将来において水処理設備200で過不足が生じる水処理ユニットの種類及び台数を予測し、予測結果を出力して提示することで、複数の水処理設備間での水処理ユニットの移設を考慮した更新計画策定を支援できる。したがって、水処理ユニットの運用に関し、個々の水処理設備での部分最適でなく、複数の水処理設備を跨いだ全体最適化にも寄与し得る。
【符号の説明】
【0078】
100 更新支援システム
111 ユニットデータ記憶部
112 予測用データ記憶部
113 原水データ記憶部
114 実績データ記憶部
115 更新時期データ記憶部
121 予測部
122 出力部
123 予測用データ補正部
124 過剰ユニット算出部
200 水処理設備
201 薬注ユニット
202 混和凝集処理ユニット
203 沈殿処理ユニット
204 濾過処理ユニット
205 貯留ユニット
301 入力装置
302 原水水質センサ
303 水道事業体
401 モニタ
402 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6