(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプロブラム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/24 20060101AFI20230829BHJP
H01J 37/04 20060101ALI20230829BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20230829BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230829BHJP
【FI】
H01J37/24
H01J37/04 B
H01J37/09 A
G06T7/00 350C
(21)【出願番号】P 2022083434
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】300050367
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクフィールディング
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 愛
(72)【発明者】
【氏名】三城 多佳記
(72)【発明者】
【氏名】及川 和人
(72)【発明者】
【氏名】津田 安咲子
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002059(JP,A)
【文献】特開2019-217591(JP,A)
【文献】特開2021-128751(JP,A)
【文献】特開2021-149719(JP,A)
【文献】特開2020-129439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/24
H01J 37/04
H01J 37/09
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、
前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに前記第1の確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、
前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行する制御部を備え
、
前記所定の調整は、電子ビームの光軸調整であり、
前記制御部は、さらに、前記第1の判定結果が良好でない場合に、前記電子ビームの光軸を再調整させる指示を前記出力装置に出力することと、
前記光軸が再調整された後に前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の確認用画像を取得することと、
前記電子顕微鏡に備えるすべての絞りの汚染状態が基準以下であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第3の画像と前記電子顕微鏡に備えるいずれかの絞りの汚染状態が基準を超えて悪化しているときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第4の画像とを教師データとして用いて学習がされた第2の学習済みモデルに前記第2の確認用画像を入力することで前記絞りの汚染状態が基準以下であるか否の第2の判定結果を取得することと、
前記第2の判定結果が良好でないときに前記電子ビームの非点収差の補正をさせる指示を前記出力装置に出力することと、
前記非点収差の補正の実施によって前記電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合に、前記電子顕微鏡に備える少なくとも1つの絞りを交換させる指示を前記出力装置に出力することと、を実行する情報処理装置。
【請求項2】
所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、
前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされ
た学習済みモデルに前記第1の確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、
前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行する制御部を備え、
前記所定の調整は、電子ビームの光軸調整であり、
前記制御部は、
さらに、前記第1の判定結果が良好でない場合に、前記電子ビームの光軸を再調整させる指示を前記出力装置に出力することと、
前記光軸が再調整された後に、前記確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第2の確認用画像を取得することと、
ユーザから前記第2の確認用画像の画質についての判定を受け付け、前記画質が不十分との判定が入力されると、前記電子ビームの非点収差の補正をさせる指示を前記出力装置に出力することと、
前記非点収差の補正の実施によって前記電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合に、前記電子顕微鏡に備える少なくとも1つの絞りを交換させる指示を前記出力装置に出力することと、を実行す
る情報処理装置。
【請求項3】
コンピュータが、所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、
前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに前記第1の確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、
前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行
し、
前記所定の調整は、電子ビームの光軸調整であり、
前記コンピュータは、さらに、前記第1の判定結果が良好でない場合に、前記電子ビームの光軸を再調整させる指示を前記出力装置に出力することと、
前記光軸が再調整された後に前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の確認用画像を取得することと、
前記電子顕微鏡に備えるすべての絞りの汚染状態が基準以下であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第3の画像と前記電子顕微鏡に備えるいずれかの絞りの汚染状態が基準を超えて悪化しているときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第4の画像とを教師データとして用いて学習がされた第2の学習済みモデルに前記第2の確認用画像を入力することで前記絞りの汚染状態が基準以下であるか否の第2の判定結果を取得することと、
前記第2の判定結果が良好でないときに前記電子ビームの非点収差の補正をさせる指示を前記出力装置に出力することと、
前記非点収差の補正の実施によって前記電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合に、前記電子顕微鏡に備える少なくとも1つの絞りを交換させる指示を前記出力装置に出力することと、を実行する情報処理方法。
【請求項4】
コンピュータが、所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、
前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに前記第1の確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、
前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行し、
前記所定の調整は、電子ビームの光軸調整であり、
前記コンピュータは、
さらに、前記第1の判定結果が良好でない場合に、前記電子ビー
ムの光軸を再調整させる指示を前記出力装置に出力することと、
前記光軸が再調整された後に、前記確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第2の確認用画像を取得することと、
ユーザから前記第2の確認用画像の画質についての判定を受け付け、前記画質が不十分との判定が入力されると、前記電子ビームの非点収差の補正をさせる指示を前記出力装置に出力することと、
前記非点収差の補正の実施によって前記電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合に、前記電子顕微鏡に備える少なくとも1つの絞りを交換させる指示を前記出力装置に出力することと、を実行す
る情報処理方法。
【請求項5】
コンピュータに、所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、
前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに前記第1の確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、
前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行させ、
前記所定の調整は、電子ビームの光軸調整であり、
前記コンピュータに、
さらに、前記第1の判定結果が良好でない場合に、前記電子ビームの光軸を再調整させる指示を前記出力装置に出力することと、
前記光軸が再調整された後に前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の確認用画像を取得することと、
前記電子顕微鏡に備えるすべての絞りの汚染状態が基準以下であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第3の画像と前記電子顕微鏡に備えるいずれかの絞りの汚染状態が基準を超えて悪化しているときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第4の画像とを教師データとして用いて学習がされた第2の学習済みモデルに前記第2の確認用画像を入力することで前記絞りの汚染状態が基準以下であるか否の第2の判定結果を取得することと、
前記第2の判定結果が良好でないときに前記電子ビームの非点収差の補正をさせる指示を前記出力装置に出力することと、
前記非点収差の補正の実施によって前記電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合に、前記電子顕微鏡に備える少なくとも1つの絞りを交換させる指示を前記出力装置に出力することと、を実行させるため
のプログラム。
【請求項6】
コンピュータに、所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、
前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに前記第1の確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、
前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行させ、
前記所定の調整は、電子ビームの光軸調整であり、
前記コンピュータに、
さらに、前記第1の判定結果が良好でない場合に、前記電子ビームの光軸を再調整させる指示を前記出力装置に出力することと、
前記光軸が再調整された後に、前記確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第2の確認用画像を取得することと、
ユーザから前記第2の確認用画像の画質についての判定を受け付け、前記画質が不十分との判定が入力されると、前記電子ビームの非点収差の補正をさせる指示を前記出力装置
に出力することと、
前記非点収差の補正の実施によって前記電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合に、前記電子顕微鏡に備える少なくとも1つの絞りを交換させる指示を前記出力装置に出力することと、を実行させるため
のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプロブラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡では、従来、様々な調整方法が提案されている。例えば、下記特許文献2には、光軸調整を行う際に、検出器で検出された二次電子に基づいて得られる光軸調整用画像15aを表示する表示装置を備えることが記載されている。
【0003】
また、下記特許文献3では、人為的な判断基準を定量化し、当該定量化された判断基準に基づいて、荷電粒子線の軸調整の要否判断を行うことが課題とされている。そして、特許文献3には、荷電粒子線を調節する光学素子の調整条件を変化させ、当該異なる調整条件にて複数の画像を取得し、取得された複数の画像の中から、その画質を許容できる画像、或いは許容できない画像を選択し、選択された画像に基づいて第1の画質評価値を取得し、当該取得された第1の画質評価値と、前記荷電粒子ビームの走査によって得られる画像から求められる第2の画質評価値とを比較すると、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-74294号公報
【文献】特開2016-35800号公報
【文献】特開2010-182424号公報
【文献】特開2008-84565号公報
【文献】特開2015-2059号公報
【文献】特開平6-325714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術では、ユーザが電子顕微鏡を調整し、または保守する場合の支援の仕組みが十分ではない。そのため、電子顕微鏡の調整または保守において、個人のスキルによるばらつきが生じるおそれがある。その結果、装置が望ましい状態で使用されていない可能性がある。
【0006】
本発明は、1つの側面では、ユーザによる電子顕微鏡の調整または保守を支援する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態は、制御部を備える情報処理装置によって例示される。本制御部は、所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から前記電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、前記所定の調整による調整結果が良好であるときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第1の画像と前記所定の調整による調整結果が良好でないときに前記電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに前記確認用画像を入力することで前記所定の調整がなされた後の前記電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、前記第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本情報処理装置によれば、ユーザによる電子顕微鏡の調整または保守を支援することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る電子顕微鏡を含む情報システムの構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、電子ビームの光軸を調整するつまみを例示する図である。
【
図4】
図4は、電子ビームの光軸が適正な位置に置かれた状態と、電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態で試料を撮影した電子顕微鏡画像を例示する図である。
【
図5】
図5は、情報処理装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、情報システムにおけるプログラムの構成とデータフローを例示する図である。
【
図7】
図7に、学習データの件数と、学習済みモデルによる確認用画像の判定結果を例示する図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態における情報処理装置の処理フローを例示する図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態の変形例1に係る情報処理装置の処理を例示する図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態の変形例2に係る情報処理装置の処理を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、一実施の形態に係る電子顕微鏡と、電子顕微鏡を含む情報システム、情報処理方法およびプログラムを説明する。
【0011】
(システム構成)
図1は、本実施の形態に係る電子顕微鏡3を含む情報システムの構成を例示する図である。本情報システムは、電子顕微鏡3と、情報処理装置1とを有する。電子顕微鏡3の種類に限定はなく、電子顕微鏡3は、例えば、走査型電子顕微鏡、透過形電子顕微鏡等のいずれでもよい。
図1は、走査型電子顕微鏡の構成を例示する。
【0012】
図1のように、電子顕微鏡3は、電子銃32と、電子銃32から放出される電子ビームを制御する電子光学系3EOと、試料4を搭載するステージ39と、検出器37と、制御回路31と、を有する。
【0013】
電子銃32は、フィラメント等から電子を所定の加速電圧で引き出し、電子光学系3EOに電子ビームを供給する。電子光学系3EOは、電子ビームを成形し、収束し、または、偏向する等の機能を有する。また、電子光学系3EOは収束レンズ33と、収束絞り34と、非点収差補正コイル3Aと、対物レンズ35と、対物絞り36を有する。ただし、電子光学系3EOは、複数の収束レンズ33、複数の収束絞り34を有してもよい。
【0014】
収束レンズ33は、収束絞り34を通過する電子ビームのビーム径を制御し、対物レンズ35および対物絞り36に入射させる。非点収差補正コイル3Aは、電子ビームの断面形状が円形に近くなるように電子ビームの軌道を制御する。対物レンズ35は、収束レンズ33で制御された電子ビームを試料4の表面の位置で最小ビーム寸法に収束させ、電子プローブを形成する。対物絞り36は、収束レンズ33で収束された電子ビームを中心軸付近に制限して、対物レンズ35によって収束させることで収差を低減する。
【0015】
ステージ39上には、試料4が搭載される。本実施の形態において、電子顕微鏡3が保守、点検、または調整される際にステージ39に搭載される試料4は、標準試料と呼ばれ
る。電子顕微鏡3は対物レンズ35で収束された電子ビームを試料4に照射し、検出器37で二次電子または反射電子を検出し、試料4の表面を撮影した電子顕微鏡画像を取得する。
【0016】
制御回路31は、情報処理装置1からの指令にしたがい、電子顕微鏡3の鏡筒の各部およびステージ39を制御し、または、各部のセンサから検出値を取得する。例えば、制御回路31は電子銃32への制御信号C1により、電子銃32からの電子のエミッションを制御する。例えば、制御回路31は、電子銃32からの電子の引き出し電圧を制御する。また、例えば、制御回路31は収束レンズ33への制御信号C2により、電子ビームの収束を制御する。また、例えば、制御回路31は非点収差補正コイル3Aへの制御信号CAにより、電子ビームの非点収差を補正する。さらに、例えば、制御回路31は対物レンズ35への制御信号C3により、試料4の表面で電子ビームが収束し、焦点を形成するように制御する。また、制御回路31は、電子光学系3EOに含まれる偏向コイルまたは静電偏向板により電子ビームを偏向し、試料4を走査する。さらに、制御回路31は、検出器37からの検出信号と電子ビームの偏向位置の情報とを基に試料4の電子顕微鏡画像を生成する。さらに、制御回路31は、ステージ39への制御信号C4により、ステージ39の移動を制御する。
【0017】
情報処理装置1は、制御回路31に各種指令を送り、電子顕微鏡3の各部を制御し、または各部を監視する。また、情報処理装置1は、ディスプレイ(例えば、
図5の表示装置14)に試料4の電子顕微鏡画像を表示する。なお、情報処理装置1は、ネットワークN1により、外部のコンピュータ、サーバ、データベースシステム等、様々なシステムと通信する。ネットワークN1は、電子顕微鏡3が設置された構内のLocal Area Network(LAN)でもよいし、遠隔地を結ぶ通信回線でもよい。ネットワークN1は、Virtual Private Network(VPN)等の専用回線でもよいし、インターネット等の公衆ネットワーク
でもよい。
【0018】
(電子顕微鏡の保守、調整の例)
電子顕微鏡の保守、調整の項目としては、以下が例示できる。
(1)フィラメント断線時のフィラメントの交換
(2)フィラメント交換時のウェーネルト電極等のクリーニング
(3)アノードのクリーニング
(4)収束絞り34の交換
(5)対物絞り36の交換
(6)冷却ファンの吸気口のクリーニング
(7)電子ビームの光軸調整
なお、(1)乃至(5)の実施後には、(7)の光軸調整が行われる。
【0019】
図2に、光軸の状態を例示する。
図2の(A)は、電子ビームの光軸が適正な位置に調整された状態を例示する。光軸が適正な状態では、電子銃32から引き出された電子ビームの中心軸が、円形状の収束絞り34の中心、および対物絞り36の中心を通り、ステージ39上の試料4等に照射される。
【0020】
図2の(B)は、電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態を例示する。電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態では、例えば、電子銃32から引き出された電子ビームの中心軸が、円形状の収束絞り34の中心を通らず、収束絞り34の中心に対して非対称な断面形状で収束絞り34を通過する。この場合、対物レンズ35による電子ビームの収束が不十分となりやすく、その結果、試料4の表面で、最小ビーム寸法での電子プローブが形成されにくくなる。そのため、試料4から得られる電子顕微鏡画像のピントが合いにくい状態となる。なお、この場合には、電子ビームの電流が、(A)の光軸が適正な
位置に置かれた状態と比較して低下する。また、検出器37から得られる検出信号のS/N(信号/ノイズ)比が、(A)の光軸が適正な位置に置かれた状態と比較して低下する。さらに、検出器37から得られる、試料4を撮影した電子顕微鏡画像の明るさが、(A)の光軸が適正な位置に置かれた状態と比較して低下する。
【0021】
図3は、電子ビームの光軸を調整するつまみを例示する。本実施の形態では、電子ビームの光軸は、電子顕微鏡3の鏡筒の中心軸に垂直な水平面上で電子銃32の電子源を移動させることで調整される。電子銃32の電子源は、例えば、電子銃32のカソード(フィラメント)、ウェーネルト電極、およびアノードを含む部分である。
図3は、電子銃32の筐体の外部に設けられたつまみ32A乃至32Dを例示する。この例では、つまみ32Aと32Cにより、鏡筒の中心軸に垂直な水平面上の第1の軸(例えば、X軸とする)方向の位置が調整される。また、つまみ32Bと32Dにより、鏡筒の中心軸に垂直な水平面上で第1の軸に垂直な第2の軸(例えば、Y軸とする)方向の位置が調整される。電子顕微鏡3のユーザまたは保守担当者は、つまみ32Aと32Cの組、または、つまみ32Bと32Dの組を調整することで、電子ビームの光軸の位置が電子顕微鏡3の鏡筒の中心軸に合致するように調整する。例えば、ユーザまたは保守担当者は、つまみ32Aと32Cを操作して、試料4を撮影した電子顕微鏡画像の明るさが相対的に最も明るくなるように調整する。
【0022】
図4は、電子ビームの光軸が適正な位置に置かれた状態と、電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像を例示する。
図4の(A)は、光軸が適正な位置に調整された状態での試料4の電子顕微鏡画像である。また、
図4の(B)(C)(D)は、それぞれ、
図4の(A)の状態でのつまみ32Aと32C(またはつまみ32Bと32D)の位置を0度として、それぞれ11.25度、22.5度、および33.75度回転された状態での試料4の電子顕微鏡画像である。すでに、
図3で説明した通り、つまみ32Aと32C(またはつまみ32Bと32D)の回転量に応じた距離だけ、電子銃32の電子源が水平面内で移動する。その結果、、
図4の(B)(C)(D)は、それぞれ、電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態での試料4の電子顕微鏡画像である。
図4において、(A)(B)(C)(D)の通り、つまみの回転量、すなわち、光軸のずれ量の増加とともに、電子顕微鏡画像のコントラストが低下し、明るさが低下する。
【0023】
以下、本実施の形態では、
図4の(A)の画像に正解のラベルを設定し、
図4の(B)(C)(D)の画像に不正解のラベルを設定し、深層学習を用いた学習システムに学習させ、学習済みモデルを作成する。本実施の形態では、情報システムは、光軸調整後に試料4から撮影された電子顕微鏡画像を取得し、学習済みモデルに入力し、電子ビームの光軸が適正な位置にあるか、ずれた位置にあるかを判定させる。
【0024】
(構成)
図5は、情報処理装置1のハードウェア構成を例示する。情報処理装置1の構成は、通常のコンピュータと同様である。情報処理装置1はCPU11と、主記憶装置12と、外部インターフェース(I/F)を通じて接続される外部機器を有し、コンピュータプログラムにより情報処理を実行する。外部機器としては、外部記憶装置13、表示装置14、操作装置15、および通信装置16を例示できる。CPU11と、主記憶装置12と、外部インターフェース(I/F)は、制御部ということができる。
【0025】
CPU11は、主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、情報処理装置1の機能を提供する。CPU11はプロセッサとも呼ばれる。ただし、CPU11は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU11は、単一のソケットで接続される単一のプロセッサであって
、マルチコア構成のものであってもよい。さらに、情報処理装置1の少なくとも一部の処理がDigital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサ、ベクトルプロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用プロセッサ、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)等によって提供されてもよい。また、情報処理装置
1の少なくとも一部が、Field-Programmable Gate Array(FPGA)等の専用large scale integration(LSI)、その他のデジタル回路であってもよい。また、情報処理装置1の少な
くとも一部にアナログ回路が含まれてもよい。
【0026】
主記憶装置12は、単にメモリとも呼ばれ、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)、Read Only Memory(ROM)等である。さらに、外部記憶装置13は、例えば、主記憶装置12を補助
する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置13は、ハードディスクドライブ、Solid State Drive(SSD)等である。さらに、情報処理装置1には、着脱可能記憶媒体の
駆動装置を設けてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disc(DVD)、Compact Disc(CD)、フラッシュメモリカード等である。
【0027】
また、情報処理装置1は、表示装置14、操作装置15、通信装置16を有する。表示装置14は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等である。操作装置15は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等である。本実施形態では、ポインティングデバイスとしてマウスが例示される。通信装置16は、ネットワークN1(
図1参照)上の他の装置とデータを授受する。
【0028】
図6は、本情報システムにおけるプログラムの構成とデータフローを例示する図である。本情報システムは、装置状態取得プログラム101と、保守管理支援プログラム102と、学習システム111を有する。装置状態取得プログラム101と、保守管理支援プログラム102は、情報処理装置1がCPU11で実行するプログラムである。学習システム111は、コンピュータで実行されるプログラムであってもよい。その場合に、学習システム111は、情報処理装置1のCPU11が主記憶装置12のプログラムを実行するによって提供されるシステムであってもよい。また、学習システム111は、情報処理装置1とネットワークN1(
図1参照)を通じて通信可能な他のコンピュータがプログラムを実行することによって提供されるシステムであってもよい。
【0029】
さらに、学習システム111は、ハードウェアとしてのニューラルネットワークを含むシステムであってもよい。さらに、学習システム111がハードウェアとしてのニューラルネットワークを含むシステムの場合に、情報処理装置1が設置された構内に、学習システム111が設けられてもよい。また、学習システム111が情報処理装置1と同一の筐体内で動作するものでもよい。また、学習システム111がハードウェアとしてのニューラルネットワークを含むシステムの場合に、学習システム111は、情報処理装置1とネットワークN1(
図1参照)を通じて通信可能なシステムであってもよい。
【0030】
学習システム111は、教師データを学習することにより、第1の学習済みモデルとして学習済みモデルA 112A、第2の学習済みモデルとして学習済みモデルB 112B等を作成する。学習済みモデルA 112Aを作成するための教師データは、例えば、
図4で説明したように、電子ビームの光軸が適正な位置に調整された状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像に正解ラベルを付したものを含む。また、教師データは、電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像に不正解ラベルを付したデータを含む。教師データは、これらのラベルを付したデータの集合である。なお、このような教師データ作成時に、電子ビームの光軸以外の調整、例えば、収束絞り34
の汚染、対物絞り36の汚染等はない状態に調整がなされている。電子ビームの光軸が適正な位置に調整された状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像は、所定の調整による調整結果が良好であるときに電子顕微鏡3で確認用試料から撮影された第1の画像の一例である。また、電子ビームの光軸が適正な位置からずれた状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像は、所定の調整による調整結果が良好でないときに電子顕微鏡3で確認用試料から撮影された第2の画像の一例である。
【0031】
学習システム111は、例えば、深層学習のためのたたみ込み層ネットワークを有する。たたみ込み層ネットワークは、ハードウェアのネットワークでもよいし、CPU11においてコンピュータプロブラムによって構築される仮想的なものでもよい。学習システム111は、上記のような教師データを入力することにより、たたみ込み層ネットワークに含まれる複数のたたみ込み層のフィルタリングの係数を調整した学習済みモデルA 112A等を生成する。そして、例えば、学習済みモデルA 112Aは、保守管理支援プログラム102から、確認用の電子顕微鏡画像が入力されたときに、確認用の電子顕微鏡画像が取得された電子顕微鏡3の光軸調整が済み(正解)あるか、または未調整(不正解)であるかを判定する。なお、光軸が未調整な電子顕微鏡画像は、
図4について述べたように、コントラストおよび明るさが、光軸調整が済み(正解)の電子顕微鏡画像よりも低下する。
【0032】
図7に、学習データの件数と、学習済みモデルA 112Aによる確認用の電子顕微鏡画像の判定結果を例示する。
図7(A)は、教師データの構成と電子顕微鏡画像の枚数を例示する。
図7の例では、電子顕微鏡画像の枚数は正解データ(TRUE)、不正解データ(FALSE)がそれぞれ60枚である。また、不正解データのうち、つまみの回転角度(
図3参照)が、11.25度、22.5度、33.75度、および45度のものがそれぞれ15枚である。なお、この場合の正解データおよび不正解データの撮影時は、光軸以外の他の調整項目はすべて調整済みである。したがって、例えば、収束絞り34、対物絞り36等の汚染はなく、非点収差が補正された状態で、これらの教師データが取得されている。
【0033】
図7(B)に学習済みモデルA 112Aによる確認用の電子顕微鏡画像に対する判定結果を例示する。学習済みモデルA 112Aによる判定では、光軸調整がずれたときに撮影された不正解データ(FALSE)と判定されるべき電子顕微鏡画像に対して、再現率75%、適合率88.2%、F値81.1%という結果が得られている。また、光軸が調整済みのときに撮影された正解データ(TRUE)と判定されるべき電子顕微鏡画像に対して、再現率90%、適合率78.3%、F値83.7%という結果が得られている。なお、この場合の確認用の電子顕微鏡画像の撮影時は、光軸以外の他の調整項目はすべて調整済みである。
【0034】
ここで、再現率とは、真の値が「正解」である電子顕微鏡画像に対して、学習システムが「正解」と判断したものの割合である。また、適合率とは、一般に、機械学習による判断を行う学習システムにおいて、出力された結果がどの程度正解していたのかを表す指標である。例えば、学習システムが「正解」と判断した電子顕微鏡画像のうち、実際に真の値が正解であったものの割合である。F値とは、再現率と適合率の調和平均をいう。
【0035】
また、例えば、学習済みモデルB 112Bを作成するための教師データは、収束絞り34、対物絞り36のいずれか1つ以上の汚染の程度に対応して撮影された画像を含むものでもよい。例えば教師データは、収束絞り34および対物絞り36の汚染のレベルが十分低いときに試料4を撮影した電子顕微鏡画像に正解ラベルを付したデータを含んでもよい。また、教師データは、収束絞り34、対物絞り36のうち、いずれかの1つ以上の汚染のレベルが所定の限度を超えて悪化した状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像に不正
解ラベルを付したデータを含んでもよい。教師データは、このようなラベルを付したデータの集合であってもよい。なお、この場合の確認用の電子顕微鏡画像の撮影時は、収束絞り34、対物絞り36以外の他の調整項目はすべて調整済みである。収束絞り34および対物絞り36の汚染のレベルが十分低いときに試料4を撮影した電子顕微鏡画像は、第3の画像の一例である。また、収束絞り34、対物絞り36のうち、いずれかの汚染のレベルが所定の限度を超えて悪化した状態で試料4を撮影した電子顕微鏡画像は第4の画像の一例である。
【0036】
学習システム111は、このような教師データを入力することにより、学習済みモデルB 112Bを生成する。そして、
図6に例示するように、学習済みモデルB 112Bは、保守管理支援プログラム102から、確認用の電子顕微鏡画像が入力されたときに、電子顕微鏡3の収束絞り34および対物絞り36の状態を判定する。例えば、学習済みモデルB 112Bは、確認用の電子顕微鏡画像が取得された電子顕微鏡3において収束絞り34および対物絞り36の汚染が十分低いこと(正解)を判定する。また、学習済みモデルB 112Bは、収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つの汚染のレベルが所定の限度を超えた状態であること(不正解)を判定する。なお、収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つが汚染した状態では、非点収差が大きくなり、試料4の表面を撮影した電子顕微鏡画像内のパターンがある程度一様に、一定の方向に歪み、当該方向に引き延ばされたように見えることが多い。
【0037】
装置状態取得プログラム101は、電子顕微鏡3の制御回路31を介して、様々な情報を取得する。装置状態取得プログラム101が取得する情報は、例えば、試料4を撮影した電子顕微鏡画像、各種物理量等である。各種物理量としては、電子顕微鏡画像の明るさ、フォーカス調整時の電子顕微鏡画像の変化、非点収差補正量、画像のコントラスト等を例示できる。
【0038】
電子顕微鏡画像の明るさは、例えば、試料4を撮影した電子顕微鏡画像における画素配列中の各画素の平均値として算出できる。電子顕微鏡画像の明るさは、相対的な明るさをユーザが判断した結果であってもよい。例えば、
図3に例示した光軸調整用のつまみ32Aと32C等をユーザが操作ときに、表示装置14に表示された電子顕微鏡画像が相対的に明るくなる、または暗くなることをユーザが判定し、光軸を調整してもよい。情報処理装置1は、そのような調整結果をユーザから受け付けてもよい。
【0039】
フォーカス調整時の電子顕微鏡画像の変化の仕方は、例えば、対物レンズ35の電流を変化させたときに、表示装置14に表示された電子顕微鏡画像が表示装置14の画面上での平行移動を伴って変化するか否かである。電子ビームの光軸が鏡筒の中心(例えば収束絞り34の開口の中心)からずれていると、対物レンズ35の電流を変化させ、電子ビームのフォーカスを変化させると、試料4の表面で電子ビームの照射位置がずれる。その結果、表示装置14に表示された電子顕微鏡画像が画面上を平行移動する。このように、電子ビームの光軸が鏡筒の中心からずれていることは、対物レンズ35の電流値の変化に対応する電子顕微鏡画像の画面上での平行移動によって判定できる。
【0040】
非点収差補正量は、非点収差補正コイル3Aの電流値として特定できる。非点収差の有無は、試料4を撮影した電子顕微鏡画像における形状の変形で特定できる。例えば、試料4が既知の表面構造を有する場合、試料4を撮影した電子顕微鏡画像中のパターンが既知の表面構造に対して、特定方向に一様に歪んでいることが検知されればよい。なお、非点収差の有無はユーザによって判断されてもよい。さらに、ユーザが非点収差補正コイル3Aの電流値を最大限としても、非点収差を補正できず、電子顕微鏡画像が特定方向に一様に歪んでいる場合、収束絞り34または対物絞り36の汚染が限度を超えている可能性が高い。本情報システムは、学習済み教師データによる電子顕微鏡画像の判定と、ユーザか
らの入力を基に電子顕微鏡の状態を判断する。そして、本情報システムは、電子顕微鏡3の保守作業、調整作業を支援する。
【0041】
(処理フロー)
図8に、本実施の形態における情報処理装置1の処理フローを例示する。この処理は、情報処理装置1のCPU11が主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにしたがって実行する。この処理では、情報処理装置1は、所定の調整の一例としての電子ビームの光軸調整が調整済みとの入力(以下、光軸調整済みの入力)を受け付ける(S1)。光軸調整済みの入力に代えて、例えば、光軸調整後の電子顕微鏡3の状態を判定せよとのユーザからの指令が情報処理装置1に入力されてもよい。情報処理装置1は、光軸調整済みの入力を受け付けると、確認用の試料4の電子顕微鏡画像を取得する(S2)。S2で取得される電子顕微鏡画像は、第1の確認用画像の一例であり、S2の処理は、第1の確認用画像を取得することの一例である。
【0042】
そして、情報処理装置1は、試料4の電子顕微鏡画像を学習済みモデルA 12Aに入力し、判定結果を取得する(S3)。上述のように、学習済みモデルA 12Aは、光軸調整が良好な場合の試料4の電子顕微鏡画像と、光軸調整が良好でない場合の試料4の電子顕微鏡画像とを学習済みである。また、S3での判定結果は、第1の判定結果の一例である。
【0043】
学習済みモデルA 12Aの判定結果において、光軸調整が良好(OK)である場合、情報処理装置1は、そのまま、光軸調整が良好であることを表示装置14に出力する(S5)。一方、学習済みモデルA 12Aの判定結果において、光軸調整が良好(OK)でない場合、情報処理装置1は、光軸調整を再実行する指示を表示装置14に出力する(S6)。S5、S6の処理は、第1の判定結果を出力することの一例である。
【0044】
(実施の形態の効果)
以上述べたように、本実施の形態の情報システムは、光軸調整が良好な場合の試料4の電子顕微鏡画像と、光軸調整が良好でない場合の試料4の電子顕微鏡画像とを学習済みの学習済みモデルA 12Aを有する。そして、本情報システムは、学習済みモデルA 12Aにより、光軸調整調整後の試料4の電子顕微鏡画像を判定する。従来、光軸調整の良否は、例えば、表示装置4に表示される電子顕微鏡画像の相対的な明るさの変化、あるいは、対物レンズ35の調整時の表示装置4の画面上での電子顕微鏡画像の平行移動の有無等により、ユーザに判定されている。本実施の形態のように、学習済みモデルA 12Aによる判定結果を取得することで、ユーザの主観によらない判断を短時間で得ることができる。したがって、本情報システムは、電子顕微鏡ユーザまたは保守管理を担当するサービス担当者に対して、特に保守管理の側面で、機能と使い勝手の向上を図ることができる。
【0045】
(変形例)
図9に、本実施の形態の変形例1に係る情報処理装置1の処理を例示する。上記
図8の処理では、学習済みモデルA 12Aの判定結果において、光軸調整が良好(OK)でない場合、情報処理装置1は、光軸調整を再実行する指示を表示装置14に出力し、処理を終了する。しかし、情報処理装置1は、ユーザの操作に応じて、さらなる判定を行ってもよい。
【0046】
図9において、S1からS5の処理は、
図8と同一であるので、その説明が省略される。学習済みモデルA 12Aの判定結果において、光軸調整が良好(OK)でない場合、情報処理装置1は、光軸調整を確認するようにとのユーザへの指示を表示装置14に出力し、ユーザの確認を待つ(S11)。
図8で説明したように、学習済みモデルA 12A
の判定結果は第1の判定結果の一例である。また、S11の処理は、第1の判定結果が良好でない場合に、電子ビームの光軸を再調整させる指示を出力装置である表示装置14に出力することの一例である。
【0047】
すると、ユーザは光軸調整を再度確認する。ここでは、例えば、ユーザは、
図3に例示したつまみ32Aと32C(またはつまみ32Bと32D)等を操作し、電子顕微鏡画像が相対的に最も明るい状態であるか否かを確認する。また、例えば、ユーザは、対物レンズ35の電流値を調整したときに、表示装置4の画面上での電子顕微鏡画像の平行移動がないか、最低限の移動であることを確認する。これらの手順により、ユーザは、光軸が適正な位置に調整されていることを確認できる。なお、ユーザは、光軸が適切な位置に調整されていないことを認識した場合には、所定の手順で再度光軸を調整すればよい。すなわち、光軸調整の確認とは、光軸の再調整を含む。
【0048】
そして、情報処理装置1は、光軸調整の確認結果を受け付ける。そして、ユーザの確認結果において、光軸調整が良好(OK)でない場合(S12でN)、情報処理装置1は、エラーを出力する(S13)。この場合には、例えば、保守管理担当者へエラーの情報と、メンテナンス作業の依頼とが通知されることになる。ユーザの調整では、解決できない問題が発生している可能性があるからである。
【0049】
一方、ユーザによる光軸調整の確認結果において、光軸調整が良好(OK)である場合(S12でY)、情報処理装置1は、再度、確認用の試料4の電子顕微鏡画像を取得する。そして、情報処理装置1は、取得した試料4の電子顕微鏡画像を学習済みモデルB 12Bに入力し、判定結果を取得する(S14)。ここで、再度、確認用の試料4の電子顕微鏡画像を取得することは、光軸が再調整された後に電子顕微鏡3で確認用試料である試料4から撮影された第2の確認用画像を取得することの一例である。また、S14の処理は、絞りの汚染状態が基準以下であるか否の第2の判定結果を取得することの一例である。
【0050】
ここで、学習済みモデルB 12Bは、収束絞り34および対物絞り36のいずれかが汚染された場合の試料4の電子顕微鏡画像と、収束絞り34および対物絞り36のいずれも汚染されていない場合の試料4の電子顕微鏡画像とを学習済みである。学習済みモデルB 12Bの判定結果が良好(OK)である場合(S15でY)、情報処理装置1は、処理を終了する。
【0051】
一方、学習済みモデルB 12Bの判定結果が良好(OK)でない場合(S15でN)、情報処理装置1は、非点収差の補正をユーザに実施させる指示を表示装置14に出力する。そして、情報処理装置1は、ユーザからのその補正の結果の入力を待つ(S16)。非点収差の補正は、非点収差補正コイル3Aの電流を調整することで実行される。そして、非点収差の補正の結果が良好(OK)であることが入力された場合(S17でY)、情報処理装置1は、処理を終了する。なお、学習済みモデルB 12Bの判定結果が良好(OK)でない場合(S15でN)、情報処理装置1は、S16、S17の処理を実施しないで、直ちに、S18の処理を実施してもよい。この場合には、情報処理装置1は収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つの絞りの交換と、交換後の非点収差の補正とを実施させるユーザへの指示を表示装置14に出力する。
【0052】
一方、非点収差の補正の結果が良好(OK)にならないことが入力された場合(S17でN)、情報処理装置1は、収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つの絞りの交換と、交換後の非点収差の補正とを実施させるユーザへの指示を表示装置14に出力する。そして、情報処理装置1は、その後の非点収差の補正の結果のユーザからの入力を待つ(S18)。非点収差の補正の結果が良好(OK)にならないとは、非点収差の補正の
実施によって電子ビームの非点収差が基準の範囲に調整できない場合を意味する。この場合には、収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つが交換される。なお、ユーザは収束絞り34および対物絞り36のすべてを交換してもよい。そして、ユーザは、絞り交換後に非点収差の補正を実行する。絞り交換後の非点収差の補正の結果が良好(OK)であることが入力された場合(S19でY)、情報処理装置1は、処理を終了する。なお、このとき、情報処理装置1は、再度、試料4の電子顕微鏡画像を学習済みモデルB 12Bに入力し、判定結果を取得してもよい。
【0053】
一方、収束絞り34および対物絞り36のすべての交換後の非点収差の補正の結果が良好(OK)にならないことが入力された場合(S19でN)、情報処理装置1は、情報処理装置1は、エラーを出力する(S20)。この場合には、例えば、保守管理担当者へエラーの情報と、メンテナンス作業の依頼とが通知されることになる。
【0054】
以上のような変形例の処理によれば、光軸調整後の学習済みモデルA 12Aの判定結果が良好(OK)でない場合、情報処理装置1は、光軸調整を再度確認するようにとのユーザへの指示を表示装置14に出力する。その結果、情報処理装置1は、光軸調整がなされていることを確認した状態で、学習済みモデルB 12Bにより、確認用の試料4の電子顕微鏡画像を判定する。このため、情報処理装置1は、光軸未調整の状態を除外した上で、より確実に、収束絞り34および対物絞り36等の汚染を判断できる。さらに、学習済みモデルB 12Bの判定結果が良好(OK)でない場合(S15でN)、情報処理装置1は、非点収差の補正を指示する。そのため、収束絞り34および対物絞り36等に汚染の可能性があると判断された場合であっても、情報処理装置1は、まず、ユーザに非点収差の補正を指示する。これにより、収束絞り34および対物絞り36等に汚染の可能性があっても、非点収差の補正で対応できる場合には、収束絞り34および対物絞り36等の交換が不要となる。一方、非点収差の補正の結果が良好(OK)でない場合には、情報処理装置1は収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つの交換を指示する。すなわち、情報処理装置1は、非点収差の補正では対応できないと判断される場合に、収束絞り34および対物絞り36の少なくとも1つの交換を指示する。このようにして、情報処理装置1は、確認用の試料4の電子顕微鏡画像に対する学習済みモデルA 12A、学習済みモデルB 12Bによる判断と、ユーザによる電子顕微鏡3の保守管理作業の結果とを組み合わせて、ユーザの保守管理作業を支援できる。
【0055】
図10は、本実施の形態の変形例2に係る情報処理装置1の処理を例示する。上記
図8(変形例1)では、ユーザによる光軸調整の再確認後、情報処理装置1は、試料4の電子顕微鏡画像を学習済みモデルB 12Bに入力し、非点収差の補正の要否を判定した。しかし、情報処理装置1は、学習済みモデルB 12Bにこのような判定をさせる代わりに、ユーザに確認を促してもよい。すなわち、ユーザによる光軸調整の再確認結果が良好(OK)である場合(S12でY)、情報処理装置1は、再度、確認用の試料4の電子顕微鏡画像を取得する。そして、ユーザに、取得した確認用の試料4の電子顕微鏡画像の確認を指示する(S14A)。
図9で述べたように、再度取得される確認用の試料4の電子顕微鏡画像は、第2の確認用画像である。そこで、S14Aの処理は、ユーザから第2の確認用画像の画質についての判定を受け付けることの一例ということができる。
【0056】
ユーザによる確認結果が良好(OK)であることが入力された場合(S15AでY)、情報処理装置1は、処理を終了する。一方、ユーザによる確認結果が良好(OK)でないことが入力された場合(S15AでN)、情報処理装置1は、
図9と同様、非点収差の補正の指示(S16)以下の処理を実行すればよい。
【0057】
以上述べたように、情報処理装置1は、変形例1と同様、情報処理装置1は、確認用の試料4の電子顕微鏡画像に対する学習済みモデルA 12Aによる判断と、ユーザによる
電子顕微鏡3の保守管理作業の状況とを組み合わせる。そして、情報処理装置1は、これらを組み合わせることで、電子顕微鏡3の状態を判定し、ユーザの保守管理作業を支援できる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、走査型電子顕微鏡を例に学習済みモデルA 12A、学習済みモデルB 12B等による試料4を撮影した画像の判定、および、光軸調整、非点収差の補正、および絞りの交換を支援する処理を例示した。しかし、本発明の実施は電子顕微鏡3が走査型電子顕微鏡である場合に限定される訳ではない。すなわち、電子顕微鏡3が透過型電子顕微鏡であっても、上記の実施の形態と同様に、情報処理装置1は、ユーザを支援する処理を実施できる。なお、電子顕微鏡3が透過型電子顕微鏡である場合に、試料4を撮影した画像としては、例えば、透過電子が照射される蛍光スクリーンを撮影したCCDカメラまたはCMOSカメラ等からの画像を用いればよい。
【0059】
(コンピュータが読み取り可能な記録媒体)
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0060】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスク、Read Only Memory(ROM)等がある。さらに、Solid State Drive
(SSD)は、コンピュータ等から取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータ等に固定された記録媒体としても利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 情報処理装置
3 電子顕微鏡
4 試料
31 制御回路
32 電子銃
33 収束レンズ
34 収束絞り
35 対物レンズ
36 対物絞り
39 ステージ
3A 非点収差補正コイル
【要約】
【課題】ユーザによる電子顕微鏡の調整または保守を支援する。
【解決手段】制御部は、所定の調整がなされた後に電子顕微鏡の状態を確認するための確認用試料から電子顕微鏡で撮影された第1の確認用画像を取得することと、所定の調整による調整結果が良好であるときに電子顕微鏡で確認用試料から撮影された第1の画像と所定の調整による調整結果が良好でないときに電子顕微鏡で前記確認用試料から撮影された第2の画像とを教師データとして用いて学習がされた学習済みモデルに確認用画像を入力することで所定の調整がなされた後の電子顕微鏡の調整結果が良好であるか否の第1の判定結果を取得することと、第1の判定結果を出力装置に出力することと、を実行する。
【選択図】
図6