(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】眼内レンズ用インジェクタ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2022093276
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2017240879の分割
【原出願日】2017-12-15
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2016245504
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016245505
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 和馬
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043471(JP,A)
【文献】特開2014-100558(JP,A)
【文献】特開2016-190023(JP,A)
【文献】特開2016-083364(JP,A)
【文献】米国特許第06607537(US,B1)
【文献】特開2005-185857(JP,A)
【文献】特開2007-307082(JP,A)
【文献】特表2014-519887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体と、
前記本体の端面側に取り付けられて、眼内レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダに保持された眼内レンズに当接して前記眼内レンズを押し出すために前記本体に出退可能に内挿されるプランジャと、
前記プランジャにより押し出された眼内レンズを折り畳みつつ前記眼内レンズを放出するノズル部とを備え、
前記レンズホルダが、前記眼内レンズを載置する載置面が形成された載置部と、
前記載置部を覆うように設けられた蓋部とを有し、
前記蓋部が、前記眼内レンズを弾性力により前記載置面に向かって押える押え部材を有
し、
前記押え部材が、前記眼内レンズの前記載置面と反対側に配置されて前記眼内レンズに対向する一対の溝が形成される溝部材と、
前記溝部材の前記載置面と反対側に配置されて前記溝を覆うように形成されるオーバーカバー部材と、
前記溝を通って前記オーバーカバー部材と前記載置面に載置された眼内レンズとに当接して弾性力により前記眼内レンズを前記載置面に向かって押える嵌め込みリブ部材とを有することを特徴とする眼内レンズ用インジェクタ。
【請求項2】
前記嵌め込みリブ部材が、前記オーバーカバー部材に当接して曲げ弾性変形が生じる弾性変形部を有する請求項
1に記載の眼内レンズ用インジェクタ。
【請求項3】
筒状の本体と、
前記本体の端面側に取り付けられて、眼内レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダに保持された眼内レンズに当接して前記眼内レンズを押し出すために前記本体に出退可能に内挿されるプランジャと、
前記プランジャにより押し出された眼内レンズを折り畳みつつ前記眼内レンズを放出するノズル部とを備え、
前記レンズホルダが、前記眼内レンズを載置する載置面が形成された載置部と、
前記載置部を覆うように設けられて前記眼内レンズを弾性力により前記載置面に向かって押える蓋部とを有
し、
前記蓋部が、前記眼内レンズの前記載置面と反対側に配置されて前記眼内レンズに対向する一対の溝が形成される溝部材と、
前記溝部材の前記載置面と反対側に配置されて前記溝を覆うように形成されるオーバーカバー部材と、
前記溝を通って前記オーバーカバー部材と前記載置面に載置された眼内レンズとに当接して弾性力により前記眼内レンズを前記載置面に向かって押える嵌め込みリブ部材とを有することを特徴とする眼内レンズ用インジェクタ。
【請求項4】
筒状の本体と、
前記本体の端面側に取り付けられて、眼内レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダに保持された眼内レンズに当接して前記眼内レンズを押し出すために前記本体に出退可能に内挿されるプランジャと、
前記プランジャにより押し出された眼内レンズを折り畳みつつ前記眼内レンズを放出するノズル部とを備え、
前記レンズホルダが、前記眼内レンズを載置する載置面が形成された載置部と、
前記載置部を覆うように設けられて前記眼内レンズを弾性力により前記載置面に向かって押える蓋部とを有し、
前記蓋部が、中央に開口が形成される蓋本体と、
前記開口に配置されて、ヒンジ部を介して曲げ弾性変形自在に前記蓋本体と連結され、前記曲げ弾性変形の弾性力により前記眼内レンズを前記載置面に向かって押えるヒンジリブ部材とを有することを特徴とする眼内レンズ用インジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズ用インジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズホルダに保持された眼内レンズをプランジャによって押し出して放出する眼内レンズ用インジェクタが従来技術として知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の眼内レンズ用インジェクタは、プランジャの押込み動作によって、レンズホルダに保持された眼内レンズを凹状に折り畳みつつ眼内レンズを放出するノズル部を備えている。このノズル部は、前方へ行くに従い内径が徐々に小さくなる構成となっている。
【0003】
また、特許文献2に記載の眼内レンズ用インジェクタに設けられたレンズホルダは、眼内レンズを載置する載置部と、この載置部と開閉自在に接続された蓋部とを有する。載置部に眼内レンズを載置した後、蓋部を閉めることで、眼内レンズがレンズホルダに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-140711号公報
【文献】特開2014-100558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、プランジャの押込み動作により、眼内レンズとプランジャの先端との接触位置によっては、ノズル部のテーパー面に接触している眼内レンズの支持部が後方側の意図せぬ方向に折れ曲がるおそれがある。それゆえ、従来の眼内レンズインジェクタは、眼内レンズの折れ曲がりを抑制する点で改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、レンズホルダに保持された眼内レンズに当接して当該眼内レンズを押し出すべきプランジャが、眼内レンズに乗り上げたり、眼内レンズをくぐり抜けたりする場合がある。このため、眼内レンズを適切に押し出すことが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、眼内レンズの折れ曲がりを抑制して放出することが可能な眼内レンズインジェクタを実現することを第1の目的とする。また、本発明の一態様は、眼内レンズを適切に押し出すことができる眼内レンズ用インジェクタを実現することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタは、レンズ部及び該レンズ部に対して点対称に曲線状に延出した第1及び第2の支持部を有する眼内レンズを保持するレンズホルダと、後方側から前記眼内レンズを押出すプランジャと、前記プランジャにより押出された眼内レンズを折り畳みつつ外部へ放出するノズル部と、を備え、前記レンズホルダは、前記第1及び第2の支持部がそれぞれ、後方側、前方側に延出するように前記眼内レンズを保持する眼内レンズ用インジェクタであって、前記レンズ部の中心を通過し前後方向に延びた中心線を基準として、前記第1の支持部の付根側を第1の側とし、該第1の側と反対側を第2の側としたとき、前記ノズル部の入口にプランジャの先端部に当接する当接部を有し、該当接部と前記プランジャとの当接により、前記プランジャの経路を、前記第2の側へ蛇行させる蛇行機構を備えたことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、前記蛇行機構による蛇行により、後方側に延出する第1の支持部の前記第2の側に配されたノズル部の側壁とプランジャとの間のスペースを小さくすることができる。それゆえ、上記の構成によれば、後方側に延出する第1の支持部が後方側に折り曲がることなく前方側へ折り畳まれた状態で眼内レンズを放出することができる。
【0010】
したがって、上記の構成によれば、眼内レンズの折れ曲がりを抑制して放出することが可能な眼内レンズインジェクタを実現することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタは、前記ノズル部内での前記プランジャの先端部の通路を規定する通路部を備え、前記通路部に、前記蛇行機構により蛇行した前記プランジャの経路を前記通路部の中央へ戻す経路変更機構が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記の構成により、前記プランジャは、前記蛇行機構により蛇行した後、前記経路変更機構により経路が前記通路部の中央に戻されるので、前記ノズル部にて眼内レンズがバランスよく凹状に折り畳まれた状態で、眼内レンズを放出することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタは、前記通路部を構成する2つの側壁部は、後方側では互いに平行になるように配されており、前方側では、前記2つの側壁部のうち、前記第2の側に配された側壁部が、前記経路変更機構として前記第1の側に屈曲した屈曲部を有する構成であってもよい。
【0014】
上記の構成によれば、プランジャの先端部は、第2の側に配された側壁部の前方側に設けられた屈曲部に当接することにより、経路が通路部の中央へ戻される。このため、前記ノズル部にて眼内レンズがバランスよく凹状に折り畳まれた状態で、眼内レンズを放出することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタは、前記プランジャの先端部は、該プランジャの軸に対し垂直な断面形状がL字状のL字部であり、該L字部を構成する底部及び側壁は、前記ノズル部の入口に進入したとき、前記当接部が摺動するように構成されており、前記蛇行機構は、前記L字部の側壁に前記第1の側へ隆起するように設けられた隆起部を有する構成であってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、押込み動作により前記ノズル部の入口にプランジャが押し込まれると、前記当接部は、前記L字部の底部及び側壁を摺動する。そして、前記当接部が前記側壁に設けられた前記隆起部に当接することにより、プランジャは、第2の側に経路が蛇行する。これにより、後方側に延出する第1の支持部が後方側に折り曲がることなく前方側へ折り畳まれた状態で眼内レンズを放出することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタは、前記ノズル部内での前記プランジャの先端部の通路を規定する通路部を備え、前記蛇行機構は、前記プランジャが、前記通路部を構成する2つの側壁部のうち前記第2の側に配された側壁部に近接して前記通路部を通過するように構成されている構成であってもよい。
【0018】
上記構成により、蛇行機構により経路が蛇行したプランジャは、前記通路部を構成する2つの側壁部のうち前記第2の側に配された側壁部に近接して前記通路部を通過するので、より一層、後方側に延出する第1の支持部が後方側に折り曲がることを抑制することができる。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る他の眼内レンズ用インジェクタは、筒状の本体と、前記本体の端面側に取り付けられて、眼内レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダに保持された眼内レンズに当接して前記眼内レンズを押し出すために前記本体に出退可能に内挿されるプランジャと、前記プランジャにより押し出された眼内レンズを折り畳みつつ前記眼内レンズを放出するノズル部とを備え、前記レンズホルダが、前記眼内レンズを載置する載置面が形成された載置部と、前記載置部を覆うように設けられた蓋部とを有し、前記蓋部が、前記眼内レンズを弾性力により前記載置面に向かって押える押え部材を有することを特徴とする。
【0020】
この特徴によれば、載置面に載置された眼内レンズが、押え部材の弾性力により載置面に向かって押えられる。このため、載置面に対する眼内レンズの位置が安定する。従って、眼内レンズに当接して当該眼内レンズを押し出すべきプランジャが、眼内レンズに乗り上げたり、眼内レンズをくぐり抜けたりする現象の発生が防止される。この結果、眼内レンズを適切に押し出すことができる眼内レンズ用インジェクタを実現することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタでは、前記押え部材が、前記眼内レンズの前記載置面と反対側に配置されて前記眼内レンズに対向する一対の溝が形成される溝部材と、前記溝部材の前記載置面と反対側に配置されて前記溝を覆うように形成されるオーバーカバー部材と、前記溝を通って前記オーバーカバー部材と前記載置面に載置された眼内レンズとに当接して弾性力により前記眼内レンズを前記載置面に向かって押える嵌め込みリブ部材とを有することが好ましい。
【0022】
上記構成により、簡素な構成で、載置面に載置された眼内レンズを、押え部材の弾性力により載置面に向かって押えることができる。
【0023】
本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタでは、前記嵌め込みリブ部材が、前記オーバーカバー部材に当接して曲げ弾性変形が生じる弾性変形部を有することが好ましい。
【0024】
上記構成により、簡素な構成で押え部材の弾性力を発生させることができる。
【0025】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る他の眼内レンズ用インジェクタは、筒状の本体と、前記本体の端面側に取り付けられて、眼内レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダに保持された眼内レンズに当接して前記眼内レンズを押し出すために前記本体に出退可能に内挿されるプランジャと、前記プランジャにより押し出された眼内レンズを折り畳みつつ前記眼内レンズを放出するノズル部とを備え、前記レンズホルダが、前記眼内レンズを載置する載置面が形成された載置部と、前記載置部を覆うように設けられて前記眼内レンズを弾性力により前記載置面に向かって押える蓋部とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタでは、前記蓋部が、前記眼内レンズの前記載置面と反対側に配置されて前記眼内レンズに対向する一対の溝が形成される溝部材と、前記溝部材の前記載置面と反対側に配置されて前記溝を覆うように形成されるオーバーカバー部材と、前記溝を通って前記オーバーカバー部材と前記載置面に載置された眼内レンズとに当接して弾性力により前記眼内レンズを前記載置面に向かって押える嵌め込みリブ部材とを有することが好ましい。
【0027】
本発明の一態様に係る眼内レンズ用インジェクタでは、前記蓋部が、中央に開口が形成される蓋本体と、前記開口に配置されて、ヒンジ部を介して曲げ弾性変形自在に前記蓋本体と連結され、前記曲げ弾性変形の弾性力により前記眼内レンズを前記載置面に向かって押えるヒンジリブ部材とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、眼内レンズの折れ曲がりを抑制して放出することができるという効果を奏する。また、眼内レンズを適切に押し出すことができる眼内レンズ用インジェクタを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態1に係る眼内レンズ用インジェクタの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る眼内レンズ用インジェクタに備えられた装置本体の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る眼内レンズ用インジェクタに備えられた先端チップの構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る眼内レンズ用インジェクタに備えられたレンズホルダの構成を示し、(a)は斜視図であり、(b)は下側から見た下面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る眼内レンズ用インジェクタに備えられたプランジャの構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る眼内レンズ用インジェクタに備えられたプランジャガイドの構成を示し、(a)は斜視図であり、(b)は下側から見た下面図である。
【
図7】眼内レンズがレンズホルダにセットされたときの、プランジャ及び眼内レンズの配置を示す斜視図である。
【
図8】(a)は、本発明の実施形態1に係る眼内レンズ用インジェクタの特徴的構成である蛇行機構の構成を示す斜視図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る眼内レンズ用インジェクタの経路変更機構の構成を示し、プランジャガイドを下方側から見た図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る眼内レンズ用インジェクタに備えられたレンズホルダの底部に眼内レンズが載置され、上記レンズホルダの蓋部が開いた状態を示す斜視図である。
【
図10】上記レンズホルダに設けられた底部と蓋部との構成を示す断面斜視図である。
【
図11】上記蓋部に設けられる溝部材を示す斜視図である。
【
図12】上記蓋部に設けられるオーバーカバー部材を示す斜視図である。
【
図13】上記蓋部に設けられる嵌め込みリブ部材を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態3に係る眼内レンズ用インジェクタの全体構成を示す斜視図である。
【
図15】上記眼内レンズ用インジェクタのレンズホルダが設けられた部分を示す拡大斜視図である。
【
図16】上記レンズホルダに設けられた蓋部が開かれた状態を示す拡大斜視図である。
【
図18】閉じられた状態の上記レンズホルダを示す斜視図である。
【
図19】開かれた状態の上記レンズホルダを示す斜視図である。
【
図20】上記レンズホルダの動作を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。
【0031】
図1は、眼内レンズ用インジェクタ1(以下、インジェクタ1と記す)の全体構成を示す斜視図である。
図1に示されるように、インジェクタ1は、筒状の装置本体2と、先端チップ3と、眼内レンズ7を保持するレンズホルダ4と、プランジャ5と、プランジャガイド6と、を備えている。先端チップ3は、装置本体2に接続されるノズル部32を有している。また、レンズホルダ4は、先端チップ3に取り付け可能となっている。また、プランジャ5は、棒状であり、装置本体2に内挿される構成となっている。プランジャガイド6は、先端チップ3におけるノズル部32の後方に設けられている。
【0032】
なお、ここでは、プランジャ5の軸芯方向を前後方向とする。また、レンズホルダ4に保持された眼内レンズ7の厚さ方向を上下方向とし、前後方向及び上下方向の両方に垂直な方向を左右方向とする。また、インジェクタ1の先端チップ3側を前方側とし、その反対側を後方側とする。また、先端チップ3におけるプランジャガイド6側を上方側とし、その反対側を下方側とする。
【0033】
ここで、眼内レンズ7は、レンズ部7aと、前方支持部7bと、後方支持部7cとを備えている。レンズ部7aは、眼内挿入後に水晶体として機能するレンズ部分である。前方支持部7b及び後方支持部7cは、レンズ部7a側面から曲線状に延び出るように形成され、眼内挿入後にレンズ部7aを眼内で支持する機能を有する。前方支持部7b及び後方支持部7cは、レンズ部7aの中心を対称中心とした点対称の位置関係となるように配置されている。これらレンズ部7a、前方支持部7b、及び後方支持部7cは、弾性を有する材質であり、変形可能に形成されている。本実施形態では、レンズ部7a、前方支持部7b及び後方支持部7cが一体的に成形されたシングルピース型を一例として説明する。
【0034】
図2は、装置本体2の構成を示す斜視図である。
図2に示されるように、装置本体2は、前方に先端チップ3が係合される底部21と、前端の外面に術者が把持可能な複数の環状突起部22と、後端の外面に術者が指を掛けて保持する鍔状の保持部23とを有している。装置本体2は、耐衝撃性を有するポリカーボネート等の樹脂を用いて形成される。
【0035】
なお、環状突起部22及び保持部23は、必要とされる機能を発揮できるものであれば、どのような形状であってもよい。例えば、保持部23を鍔状ではなく指を掛けることが可能な突起等により構成してもよい。
【0036】
術者は、片方の手でプランジャ5を押し込みながら、もう片方の手で環状突起部22を把持して、眼内レンズ7を前方支持部7b、レンズ部7a、後方支持部7cの順番で、患者の眼内に放出する。環状突起部22を設けることにより、術者がインジェクタ1を把持し易くなり、インジェクタ1の操作性を高めることができる。
【0037】
図3は、先端チップ3の構成を示す斜視図である。
図3に示されるように、先端チップ3は、眼内レンズ7が放出される放出部31と、前方へ向かうに従い内径が徐々に小さくなるノズル部32と、中央が開口された矩形の外周を有する矩形部33と、プランジャガイド6が取り付けられる開口部34と、を有している。矩形部33を底部21に係合させることにより、先端チップ3は装置本体2に接続される。なお、先端チップ3と装置本体2とを係合する構成は、例えば、係止爪と係止穴とによる係合など、どのような構成であってもよい。また、先端チップ3は、耐薬品性や柔軟性のあるポリプロピレンやポリアミドなどの樹脂を用いて形成される。
【0038】
矩形部33は、レンズホルダ4の係止爪41f(
図4)と係合する係合穴部35を有する。また、開口部34は、矩形部33の前方に形成されている。そして、開口部34を構成する前後方向に延びる側壁には、プランジャガイド6の係合凸部66(
図6)に係合する係合凹部36が設けられている。
【0039】
インジェクタ1の使用時には、あらかじめレンズホルダ4が矩形部33の開口に挿入されていてもよいし、インジェクタ1の使用時にレンズホルダ4が矩形部33の開口に挿入されてもよい。
【0040】
図4は、レンズホルダ4の構成を示し、
図4の(a)は斜視図であり、
図4の(b)は下側から見た下面図である。
図4の(a)に示されるように、レンズホルダ4は、底部41と、底部41と接続され開閉自在な蓋部42とにより構成されている。底部41に眼内レンズ7を設置した後、蓋部42を閉めることにより、眼内レンズ7が保持される。レンズホルダ4は、耐薬品性のあるポリプロピレンなどの樹脂を用いて形成される。
【0041】
レンズホルダ4の底部41は、その中央部分に眼内レンズ7を載置する載置面41aを有する。載置面41aには、中央の前後に亘って溝部41bが形成されている。また、底部41は、レンズ位置規制部41cと、プランジャ位置規制部41dと、を有する。レンズ位置規制部41cは、載置面41aに載置された眼内レンズ7の後端位置を規制する機能を有し、後方支持部7cの形状に沿って屈曲した形状を有している。また、プランジャ位置規制部41dは、底部41の後端に設けられており、プランジャ5の先端部を挟持する挟持部を有している。プランジャ位置規制部41dにより眼内レンズ7に対するプランジャ5の相対位置が規制される。
【0042】
さらに、
図4の(b)に示されるように、底部41の下面には、眼内レンズ7の形状に形付けられた載置案内部41eが設けられている。この載置案内部41eは、底部41を上面からみたとき、載置面41a内に透けて見えており、術者が認識可能となっている。それゆえ、術者は、載置面41a内に透けて見える載置案内部41eにあわせて眼内レンズ7を載置することにより、底部41の載置面41aの適切な位置に眼内レンズ7が配置される。
【0043】
また、底部41の外面には、先端チップ3の係合穴部35(
図3)に係合される係止爪41fが設けられている。なお、先端チップ3に係合穴部35を設けず、レンズホルダ4の係止爪41fを装置本体2の底部21に係合させる構成としてもよい。
【0044】
また、蓋部42は、溝部材43と、オーバーカバー部材44と、嵌め込みリブ部材45と、を備えている。溝部材43は、蓋部42を閉めたとき、眼内レンズ7の載置面41aと反対側に配置されており、眼内レンズ7に対向する一対の溝が形成されている。オーバーカバー部材44は、溝部材43における載置面41aと反対側に配置されており、溝部材43の溝を覆うように形成されている。嵌め込みリブ部材45は、溝部材43の溝を通過してオーバーカバー部材44と載置面41aに載置された眼内レンズ7とに当接して弾性力により眼内レンズ7を載置面41aに向かって押える機能を有する。
【0045】
図5は、プランジャ5の構成を示す斜視図である。
図5に示されるように、プランジャ5は、後方側軸部51と、押圧部52と、中軸部53と、L字部54と、を備えている。
【0046】
後方側軸部51は、プランジャ5の最も後方側に位置する。後方側軸部51は、プランジャ5が装置本体2に挿入された初期位置にある状態では外部に露出している部分である(
図1参照)。また、後方側軸部51は、装置本体2の後端で係止される係止部51aと、後方に外側に突出したストッパ51bと、を有する。押圧部52は、後方側軸部51の後方側の周面に鍔状に形成される。術者は、この押圧部52を装置本体2側に押し込むことにより、プランジャ5を先端側に移動させる。
【0047】
中軸部53は、後方側軸部51の前方側に接続され、後方側軸部51よりも細い径の軸部である。中軸部53は、その先端に、断面形状がL字形状のL字部54を有する。
【0048】
L字部54は、底部54aと側壁部54bとにより構成されている。底部54aは、プランジャ5の先端に向かうに従い上下方向の厚さが小さくなった形状となっている。側壁部54bは、底部54aの左右一方の端部に設けられている。また、底部54aにおける側壁部54bが設けられていない端部側へ隆起した隆起部54cが設けられている。
【0049】
また、中軸部53の外周面と装置本体2の内周面との間に沿ってバネなどの弾性部材(不図示)が設けられてもよい。これにより、プランジャ5の押込み時に弾性部材から反力を受け、眼内レンズ7がプランジャ5のL字部54から勢いよく飛び出すことを防止できる。この弾性部材の位置は特に限定されず、例えばプランジャ5の押圧部52と装置本体2の後端との間に配置してもよく、プランジャ5の押込み時に弾性部材から反力を受ける構成であればよい。
【0050】
図6は、プランジャガイド6の構成を示し、
図6の(a)は斜視図であり、
図6の(b)は下側から見た下面図である。プランジャガイド6は、術者の押込み操作により前方へ押し込まれレンズホルダ4を通過したプランジャ5の先端部(L字部54)を、先端チップ3の放出部31へ案内する部材である。プランジャガイド6は、先端チップ3の開口部34に取り付けられる。
図6の(a)に示されるように、プランジャガイド6は、平板形状の閉塞部61と、閉塞部61の下方に設けられた通路部64とを有する。閉塞部61は、先端チップ3の開口部34と略同じ寸法を有し、開口部34を閉塞する部分である。通路部64は、プランジャ5のL字部54を放出部31へ案内する通路であり、互いに対向し前後方向に延びた2つの壁部64a及び64bを有している。
【0051】
また、通路部64の外面には、係合凸部66が設けられている。係合凸部66は、先端チップ3における開口部34の側壁に設けられた係合凹部36に係合する。
【0052】
また、閉塞部61には、下方へ突出する下方突出部63が設けられている。この下方突出部63は、通路部64を構成する2つの壁部64a及び64bの間に配置されている。下方突出部63は、プランジャ5が通路部64に進入したときに、L字部54の底部54a及び側壁部54bに摺動するように配置されている(
図8)。下方突出部63は、プランジャ5のL字部54に当接し底部54a及び側壁部54bに摺動することにより、放出部31へ向かうプランジャ5の移動経路のずれを防止し、移動経路を一定に維持する機能を有する。
【0053】
図7は、眼内レンズ7がレンズホルダ4の底部41にセットされたときの、プランジャ5及び眼内レンズ7の配置を示す斜視図である。
【0054】
図7に示されるように、レンズホルダ4に保持された眼内レンズ7は、後方支持部7cがレンズ部7aから後方側に延出し、前方支持部7bがレンズ部7aから前方側に延出するように配置されている。ここで、レンズホルダ4に保持された眼内レンズ7において、レンズ部7aの中心を通り、プランジャ5の軸線に沿った中心線Xを基準として、レンズ部7aにおける後方支持部7cの付根側をY1側とし、Y1側と反対側をY2側とする。本実施形態では、インジェクタ1のプランジャガイド6が上方に向き、かつ先端チップ3が前方側になるように設置したとき、左側がY1側であり、右側がY2側である。
【0055】
レンズホルダ4に保持された状態では、前方支持部7bの付根と反対側の自由端7b1は中心線Xを基準としてY1側に配置され、後方支持部7cの付根と反対側の自由端7c1は、中心線Xを基準としてY2側に配置されている。
【0056】
また、
図7に示されるように、底部41の載置面41aの後端部には、スロープ面41gが設けられている。スロープ面41gは、前方の載置面41aから後方へ向かうに従い上方向に隆起する構成である。そして、後端側のスロープ面41gの最上面は、プランジャ位置規制部41dにて位置規制されたプランジャ5のL字部54の側壁部54bと略同じ位置にある。このため、後方支持部7cをレンズ位置規制部41cの屈曲部分に沿って配置した初期位置では、眼内レンズ7の後方支持部7cは、プランジャ5のL字部54の側壁部54b近傍に配置される。
【0057】
プランジャ5が初期位置にある状態で、術者によってプランジャ5が初期位置から前後方向の先端側に押し込まれると、プランジャ5のL字部54が眼内レンズ7の後方支持部7cに接触し、後方支持部7cがレンズ部7a側に折り曲げられた状態となる。そして、プランジャ5が更に先端側に進むと、眼内レンズ7は先端チップ3のノズル部32を通過しながら凹状に折り畳まれる。次いで、眼内レンズ7が折り畳まれた状態で、眼内レンズ7が放出部31に到達する。放出部31に到達した眼内レンズ7は、前方支持部7b、レンズ部7a、後方支持部7cの順番で放出部31のカットされている側から眼内に挿入される。
【0058】
ところで、プランジャ5の押込み動作により、眼内レンズ7がノズル部32を通過したとき、眼内レンズ7の後方支持部7cの自由端7c1はノズル部32のテーパー面に接触した状態となっている。このような状態で眼内レンズ7がノズル部32内に押し込まれ折り畳められると、眼内レンズ7とプランジャ5のL字部54との接触位置によっては、ノズル部32のテーパー面に接触している後方支持部7cが後方側の意図せぬ方向に折れ曲がってしまう。このため、後方支持部7cが変形した状態で眼内レンズ7が放出されるおそれがある。
【0059】
そこで、本実施形態に係るインジェクタ1は、ノズル部32内のプランジャ5の経路を蛇行させる蛇行機構を備えている。この蛇行機構は、プランジャ5の先端部分であるL字部54に当接する当接部として、上述した下方突出部63をノズル部32の入口に有している。そして、プランジャ5の押込み動作により押し込まれたプランジャ5のL字部54と下方突出部63との当接により、プランジャ5の経路を、Y2側へ蛇行させる機能を有する。
【0060】
本願発明者らは、後方支持部7cが後方側の意図せぬ方向に折れ曲がる原因について、鋭意検討した。その結果、眼内レンズ7がノズル部32内に押し込まれ折り畳められるに際し、接触している後方支持部7cの自由端7c1が接触しているノズル部32のテーパー面とプランジャ5との間のスペースを小さくすることにより、後方支持部7cが後方側に折り曲がることなく前方側へ折り畳まれるという新規知見を見出した。本実施形態に係るインジェクタ1の特徴的構成である蛇行機構は、本願発明者が独自に見出した新規知見に基づくものである。
【0061】
本実施形態に係るインジェクタ1の蛇行機構は、プランジャ5のL字部54と下方突出部63との当接により、プランジャ5の経路を、Y2側へ蛇行させる機能を有する。この蛇行機構による蛇行により、後方支持部7cの自由端7c1側(すなわちY2側)に配されたノズル部32の側壁とプランジャ5との間のスペースを小さくすることができる。それゆえ、本実施形態に係るインジェクタ1によれば、後方支持部7cが後方側に折り曲がることなく前方側へ折り畳まれた状態で眼内レンズ7を先端チップ3から放出することができる。
【0062】
図8の(a)は、本実施形態に係るインジェクタ1の特徴的構成である蛇行機構Aの構成を示す斜視図である。
図8の(a)に示されるように、プランジャ5の先端部であるL字部54は、プランジャ5の軸に対し垂直な断面形状がL字状である。そして、L字部54を構成する底部54a及び側壁部54bは、ノズル部32の入口に進入したとき、下方突出部63が摺動するように構成されている。蛇行機構Aは、上述した下方突出部63に加え、L字部54の側壁部54bにY1側へ隆起するように設けられた隆起部54cを有する。
【0063】
下方突出部63がプランジャ5のL字部54の底部54a及び側壁部54bに摺動しているとき、通路部64の壁部64bは、下方突出部63を挟んで、L字部54の側壁部54bと対向している。一方、通路部64の壁部64aは、下方突出部63を挟まず側壁部54bと対向している。
【0064】
この構成によれば、押込み動作によりノズル部32の入口にプランジャ5が押し込まれると、下方突出部63は、L字部54の底部54a及び側壁部54bを摺動する。そして、下方突出部63が側壁部54bに設けられた隆起部54cに当接することにより、プランジャ5の先端部であるL字部54は、Y1側と反対側のY2側に経路が蛇行する。
【0065】
また、蛇行機構Aは、プランジャ5が、通路部64を構成する2つの壁部64a及び64bのうちY2側に配された壁部64aに近接して通路部64を通過するように構成されている。これにより、より一層、後方支持部7cが後方側に折り曲がることを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るインジェクタ1は、プランジャガイド6の通路部64に、蛇行機構Aにより蛇行したプランジャ5の経路を通路部64の中央へ戻す経路変更機構Bを備えている。
図8の(b)は、経路変更機構Bの構成を示し、プランジャ5のL字部54が当接しているプランジャガイド6を下方側から見た図である。
【0067】
図8の(b)に示されるように、下方突出部63を挟んでL字部54の側壁部54bと対向している壁部64bは、前後方向に沿って延びた直線状となっている。一方、下方突出部63を挟まず側壁部54bと対向している壁部64aは、前方側の端部が壁部64bとの間隔が狭くなるように屈曲した屈曲部65を有する。すなわち、通路部64を構成する2つの壁部64a及び64bは、後方側では互いに平行になるように配されている。そして、前方側では、2つの壁部64a及び64bのうち、Y2側に配された壁部64aが、Y1側に屈曲した屈曲部65を有する。
【0068】
この屈曲部65は、経路変更機構Bとして機能する。下方突出部63と隆起部54cとの当接によりY2側に蛇行したプランジャ5のL字部54は、壁部64aの前方側に設けられた屈曲部65に当接することにより、経路が通路部64の中央へ戻される。これにより、プランジャ5は、蛇行機構Aにより蛇行した後、経路変更機構Bにより経路が通路部64の中央に戻されて、先端チップ3の放出部31に到達する。このように放出部31に到達するまでにプランジャ5の経路が中央に戻されるので、ノズル部32にて眼内レンズ7がバランスよく凹状に折り畳まれた状態で、眼内レンズ7を放出することができる。
【0069】
なお、本実施形態に係るインジェクタ1では、先端チップ3及びプランジャガイド6は別体で構成されていたが、一体的に構成されていてもよい。
【0070】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0071】
本実施形態に係るインジェクタは、レンズホルダ4の構成に特徴がある。
図9は、レンズホルダ4の底部41に眼内レンズ7が載置され、レンズホルダ4の蓋部42が開いた状態を示す斜視図である。
図10は、レンズホルダ4に設けられた底部41と蓋部42との構成を示す断面斜視図である。
【0072】
レンズホルダ4の底部41に形成された載置面41aに眼内レンズ7が載置される。レンズホルダ4の蓋部42は、底部41に対して開閉自在に接続され、閉じた状態で、載置面41aに載置された眼内レンズ7を覆うように設けられる。蓋部42は、溝部材43とオーバーカバー部材44と嵌め込みリブ部材45とを有する。
【0073】
図11は蓋部42に設けられる溝部材43を示す斜視図である。溝部材43は、略板状の形状を有しており、眼内レンズ7に対して載置面41aと反対側において眼内レンズ7を覆うように配置される。溝部材43には、載置面41aに載置された眼内レンズ7に対向する一対の溝49が前後方向に沿って形成される。
【0074】
図12は蓋部42に設けられるオーバーカバー部材44を示す斜視図である。オーバーカバー部材44は、略板状に形成されている。オーバーカバー部材44は、蓋部42が閉じた状態で上方向に湾曲する湾曲部44aを有する。オーバーカバー部材44は、溝部材43に対して載置面41aと反対側に配置され、溝部材43に取り付けられる。
【0075】
図13は蓋部42に設けられる嵌め込みリブ部材45を示す斜視図である。嵌め込みリブ部材45は、溝部材43の一対の溝49を通ってオーバーカバー部材44と眼内レンズ7とに当接して弾性力により眼内レンズ7を載置面41aに向かって押える。
【0076】
嵌め込みリブ部材45には、板状のベース部46と、ベース部46から載置面41aに向かって溝部材43の溝49を通って突出する一対のレンズ押え部47と、ベース部46からオーバーカバー部材44に向かって湾曲しながら突出する弾性変形部48とが設けられる。
【0077】
溝部材43とオーバーカバー部材44と嵌め込みリブ部材45とは、本願発明の「押え部材」を構成する。なお、オーバーカバー部材44と嵌め込みリブ部材45とは一体に構成されても構成されてもよい。
【0078】
このように構成されたレンズホルダ4の底部41の載置面41aに眼内レンズ7を載置して蓋部42を閉じると、レンズ押え部47の端面が眼内レンズ7に当接して弾性変形部48がオーバーカバー部材44の湾曲部44aに押し当てられる。このため、弾性変形部48に曲げ弾性変形が生じる。この結果、嵌め込みリブ部材45が眼内レンズ7により持ち上げられる。レンズ押え部47は、弾性変形部48の曲げ弾性変形に基づく弾性力により眼内レンズ7を載置面41aに向かって押える。
【0079】
このように、レンズホルダ4の蓋部42に、眼内レンズ7を押える可動式の押え部材を設けることにより、眼内レンズ7が底部41の載置面41aに優しく押さえつけられる。このため、眼内レンズ7は常にレンズホルダ4の載置面41aに設置される。この結果、プランジャ5が眼内レンズ7に乗り上げるという問題及びプランジャ5が眼内レンズ7をくぐり抜けるという問題が回避される。
【0080】
また、注入された粘弾性物質が眼内レンズ7の下に入って眼内レンズ7が浮き上がるためにプランジャ5により眼内レンズ7が好適に押し出されないという問題の発生が防止される。
【0081】
プランジャ5が眼内レンズ7に当接して眼内レンズ7を押し出すときは、レンズ押え部47が弾性変形部48の弾性力により上方に変位する。このため、プランジャ5が眼内レンズ7を適切に押し出すことができる。
【0082】
眼内レンズ7は、薄型眼内レンズ、又は、当該薄型眼内レンズよりも厚く形成された厚型眼内レンズである。そして、薄型眼内レンズと厚型眼内レンズとの何れかがレンズホルダ4に収容される。従って、薄型眼内レンズをレンズホルダ4が保持するときに薄型眼内レンズの上方に空間が生じても、眼内レンズを安定して保持することができるという効果を奏する。
【0083】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、説明する。
【0084】
図14は実施形態3に係る眼内レンズ用インジェクタ1Aの全体構成を示す斜視図である。
図15はインジェクタ1Aのレンズホルダ4Aが設けられた部分を示す拡大斜視図である。
図16はインジェクタ1Aに取り付けられたレンズホルダ4Aに設けられた蓋部42Aが開かれた状態を示す拡大斜視図である。
図17は蓋部42Aの下面図である。
【0085】
前述した実施形態の構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0086】
インジェクタ1Aは、前述したレンズホルダ4と構成が異なるレンズホルダ4Aを備える。このレンズホルダ4Aは、底部41と、底部41と接続され開閉自在な蓋部42Aとにより構成されている。
【0087】
図18は閉じられた状態のレンズホルダ4Aを示す斜視図である。
図19は蓋部42Aが開かれた状態の単体のレンズホルダ4Aを示す斜視図である。
【0088】
蓋部42Aは、
図16及び
図17に示すように、板状に形成されたヒンジベース部71(蓋本体)を備える。ヒンジベース部71の中央に矩形状の開口76が形成される。この開口76にヒンジリブ部材73が配置される。ヒンジリブ部材73は、板状に形成されてヒンジベース部71と略平行に配置されるベース部75と、蓋部42Aが閉じられた状態で載置面41aに向かってベース部75から突出する一対のレンズ押え部74とを有する。そして、ヒンジリブ部材73のベース部75は、一対のヒンジ部72を介してヒンジベース部71に連結される。ヒンジ部72によりヒンジベース部71に連結されたヒンジリブ部材73のベース部75が、一対のヒンジ部72を支点として、弾性曲げ変形自在となっている。
【0089】
蓋部42Aは、略板状に形成されたオーバーカバー部材44Aをさらに備える。オーバーカバー部材44Aは、ヒンジリブ部材73及びヒンジベース部71を覆うように、ベース部75に対してレンズ押え部74の反対側に配置される。
【0090】
このように構成されたレンズホルダ4Aの動作を説明する。
図20はレンズホルダ4Aの動作を説明するための斜視図である。
【0091】
レンズホルダ4Aの蓋部42Aが閉じると、ヒンジリブ部材73のレンズ押え部74が、底部41の載置面41aに載置された眼内レンズ7に当接する。そして、ヒンジ部72によりヒンジベース部71に連結されたヒンジリブ部材73のベース部75が、ヒンジ部72を支点として、載置面41aから離れる方向に弾性曲げ変形する。このため、ヒンジリブ部材73のレンズ押え部74は、曲げ変形の弾性力により眼内レンズ7を載置面41aに向かって押圧する。
【0092】
そして、プランジャ5が眼内レンズ7に後方から当接して眼内レンズ7を矢印A1で示される前方に押すと、ヒンジリブ部材73のベース部75が、ヒンジ部72を支点として、載置面41aから離れる方向にさらに弾性曲げ変形する。このため、レンズ押え部74が実線L1で示される位置から破線L2で示される位置に移動して上方に逃げる。レンズ押え部74が上方に逃げると、ベース部75がオーバーカバー部材44Aの中央部分を矢印A2で示される上方に押し、オーバーカバー部材44Aの中央部分が持ち上がる。このため、レンズ押え部74が、プランジャ5に押される眼内レンズ7の移動の妨げになることを防止することができる。
【0093】
ヒンジベース部71とヒンジリブ部材73とは、本願発明の「押え部材」を構成する。本願発明の「押え部材」は、前述した嵌め込みリブ部材45のような単一部材が眼内レンズ7を押えてもよいし、ヒンジリブ部材73のようにヒンジベース部71と連結して蓋部の一部分となるように構成した部材が眼内レンズ7を押えてもよい。
【0094】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 インジェクタ(眼内レンズ用インジェクタ)
2 装置本体
3 先端チップ
4 レンズホルダ
5 プランジャ
6 プランジャガイド
7 眼内レンズ
7a レンズ部
7b 前方支持部(第2の支持部)
7b1、7c1 自由端
7c 後方支持部(第1の支持部)
41 底部(載置部)
42 蓋部
43 溝部材(押え部材)
44 オーバーカバー部材(押え部材)
45 嵌め込みリブ部材(押え部材)
48 弾性変形部(押え部材)
54 L字部
54a 底部
54b 側壁部
54c 隆起部
32 ノズル部
63 下方突出部(当接部)
64 通路部
64a、64b 壁部(通路部を構成する2つの側壁)
65 屈曲部
71 ヒンジベース部(蓋本体)
72 ヒンジ部
73 ヒンジリブ部材
74 レンズ押え部
75 ベース部
76 開口
A 蛇行機構
B 経路変更機構