(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ライン走査マイクロスコピー用の装置および方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20230829BHJP
G02B 21/18 20060101ALI20230829BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20230829BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230829BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20230829BHJP
G01B 9/02091 20220101ALI20230829BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/18
G02B21/36
G01N21/17 630
G01N21/45 A
G01B9/02091
(21)【出願番号】P 2022534216
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2020083951
(87)【国際公開番号】W WO2021110595
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522222146
【氏名又は名称】ダマエ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オジャン,ジョナス
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504015(JP,A)
【文献】特開2001-221613(JP,A)
【文献】特開2002-207009(JP,A)
【文献】特開2006-132996(JP,A)
【文献】特開2010-151684(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017017(WO,A1)
【文献】特表2017-522066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/61
G01B 9/00 - 9/10
G01B 11/00 - 11/30
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル帯域の広い光源(210)と、
一次元の検知面(223)を有するセンサ(222)と、
一端に反射参照面(207)が配置された参照アームと、撮像対象となる物体(10)を受けるように構成された物体アームと、前記物体アームおよび参照アームを前記光源および前記センサに結合するビームスプリッタ(204)と、前記物体アームに配置された少なくとも第1の顕微鏡対物レンズ(202)と、を含む干渉顕微鏡(201)と、
焦線の一次元像を前記検知面に形成するように、前記第1の顕微鏡対物レンズの物空間に位置する焦線に沿って、前記物体に光をあてるために前記光源と相互作用するように構成され、かつ、前記物体によって後方散乱されて前記焦線から来る光を選択するように構成された一次元共焦点空間フィルタリング装置(212、213)と、
反射面と前記反射面を前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸(z)に実質的に垂直な回転軸周りに回転させる手段とを有し、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸に対して実質的に垂直な横方向(y)に前記焦線を走査するように構成された、前記焦線の一方向走査のための装置であって、前記反射面は前記第1の顕微鏡対物レンズの上流で前記物体アームに配置され、前記物体アームは前記反射面と前記第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳とを光学的に共役させるための光学素子を持たないように構成された、装置(235、237)と、
前記参照アームに配置された折り返し反射面(402)と、
前記折り返し反射面を軸方向(z
r)及び水平方向(y
r)のうちの一方および/または他方に移動させる手段(406、408)と、
前記一方向走査時に前記焦線の異なる位置について前記干渉顕微鏡によって生成されて前記センサによって取得される前記物体の複数の一次元干渉像から、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸に対して実質的に垂直な面(x,y)に配置された、撮像対象となる前記物体の少なくとも1つの二次元断層en-face画像を生成するように構成された処理装置(240)と、を備え、
前記処理装置は、
前記物体の複数の一次元断層像を生成し、かつ、
前記複数の一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像を生成するように構成され、
前記複数の一次元断層像の各々の像は、前記折り返し反射面の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される、
ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の装置(200)。
【請求項2】
前記複数の一次元断層像の各々の像について、前記折り返し反射面を移動させる前記手段は、前記折り返し反射面の追加の変位をさらに導入し、前記焦線を走査するための前記装置によって導入される位相シフトの補償を可能にするように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記反射参照面を軸方向(Z
r)の一方向に変位させる手段(401)をさらに備え、
前記複数の一次元断層像の各々の像に対して、前記反射参照面を前記軸方向の一方向に移動させる前記手段は、前記反射参照面の追加の軸方向の変位をさらに導入して、前記焦線を走査するための前記装置によって導入される位相シフトの補償を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記物体アームと参照アームのうちの一方および/または他方に配置された波長分散補償用の装置(403)をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記干渉顕微鏡がリニク顕微鏡であり、前記参照アームに配置された第2の顕微鏡対物レンズ(203)をさらに備え、前記参照アームと物体アームとが離れている、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記物体内で深度方向に前記焦線を変位させるために、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸と平行な方向に前記焦線を軸方向に変位させる手段をさらに備え、
前記処理装置は、前記焦線の異なる奥行きについて生成される複数のen-face画像から、撮像対象となる前記物体の三次元像をさらに生成するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記焦線を軸方向に移動させるための前記手段は、前記第1の顕微鏡対物レンズと前記ビームスプリッタとを含むアセンブリ(209)と一体である、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸と平行な方向に移動するための変位手段(208)を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の方法であって、
スペクトル帯域の広い光源(210)を用いて照明ビームを形成し、
ビームスプリッタ(204)によって、前記照明ビームを、一端に反射参照面(207)が配置された参照アームに送られる第1の光束と、撮像対象となる物体(10)を受ける物体アームに送られる第2の光束とに分離し、
第1の顕微鏡対物レンズ(202)の物空間に位置する焦線に沿って撮像対象となる前記物体に光をあてるために、前記物体アームに配置され、共焦点空間フィルタリング装置と相互作用する前記第1の顕微鏡対物レンズによって、前記第2の光束を集束させ、
センサ(222)の一次元の検知面(223)に前記焦線の一次元像を形成するために、前記共焦点空間フィルタリング装置によって、前記物体によって後方散乱されて前記焦線から来る光を選択し、
一次元干渉像を生成するために、前記物体によって後方散乱されて前記選択された光と、前記参照アームの前記反射参照面による、前記第1の光束の反射で生じる光とを、前記ビームスプリッタによって組み合わせ、
反射面と前記反射面を前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸(z)に実質的に垂直な回転軸周りに回転させる手段とを有し、前記反射面は前記第1の顕微鏡対物レンズの上流で前記物体アームに配置され、前記物体アームは前記反射面と前記第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳とを光学的に共役させるための光学素子を持たないように構成された走査装置(235、237)によって、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸に実質的に垂直な横方向(y)に前記焦線を一方向走査し、
処理装置(240)によって、前記一方向走査時に前記焦線の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸に実質的に垂直な面(x,y)に配置された、撮像対象となる前記物体の少なくとも1つの二次元断層en-face画像を生成し、
前記撮像対象となる前記物体の少なくとも1つの二次元断層en-face画像の生成は、
前記物体の複数の一次元断層像の生成と、
前記複数の一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像
の生成と、
前記複数の一次元断層像の各々の像の、
前記参照アームに配置された折り返し反射面(402)の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像からの生成と、を含み、
前記折り返し反射面(402)は、前記折り返し反射面を移動させる手段(406、408)によって、軸方向(z
r
)及び水平方向(y
r
)のうちの一方および/または他方に移動される、方法。
【請求項9】
前記複数の一次元断層像の各々の像に対して、前記反射参照面または前記折り返し反射面の追加の軸方向の変位を導入し、前記走査装置によって導入される位相シフトの補償を可能にすることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸と平行な方向に前記物体内で深度方向に前記焦線を軸方向に移動させ、
前記焦線の異なる奥行きについて生成される複数のen-face画像から、撮像対象となる前記物体の三次元像を生成することをさらに含む、請求項8または9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ライン走査マイクロスコピー用の装置および方法に関する。特に、この装置および方法は、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピーに基づいている。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影(OCT)では、低コヒーレンス干渉計が使用されている。
【0003】
このイメージング技術は、例えばD.Huangら(非特許文献1)に記載されており、この技術を用いると、数ミクロンの軸方向分解能で組織の断層像を作成することができる。
【0004】
より正確には、特に走査型OCT技術が知られている。
【0005】
(非特許文献1)に記載されているように、時間領域におけるバージョンのOCT(時間領域OCT)では、白色光のビームが2本に分割され、一方は研究対象となる組織、他方は参照鏡で集束する。観察される物体で反射(後方散乱)した光は、参照鏡で反射した光と結合され、光検出器で検出される。干渉は、光路長差が最大でも放射される光の可干渉長前後である場合にのみ発生する。干渉計の参照アームの光路長を変えることで、物体の異なる深さまで達することができる。(軸方向すなわち奥行き方向での撮像を可能にする)干渉と、(横に一方向または二方向での撮像を可能にする)走査とによって、二次元または三次元の像を構成することが可能である。周波数領域での走査を用いたOCT(周波数領域OCT)の場合、参照アームの光路長は固定であり、干渉信号はスペクトル的に分析される。この点については、A.F.Fercherらによる論文(非特許文献2)を参照のこと。実務上、走査型OCTでは、数マイクロメートル前後より高い横方向の分解能を得るのは困難である。
【0006】
横方向の分解能を向上させるという特別な目的で、J.A.Izattらによる論文(非特許文献3)には、光干渉断層撮影と共焦点マイクロスコピーとを組み合わせた改良技術が説明されている。共焦点マイクロスコピーによって、コヒーレンス空間の外側に位置し、センサに知覚される試料領域で後方散乱されるフォトンの数を大幅に減少させることができるため、信号対雑音比を高めることができる。
【0007】
より最近では、Y.Chenらによる論文(非特許文献4)において、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用のLS-OCM装置が提案されている。このような装置を
図1に示す。
【0008】
図1に示すLS-OCM装置100には、干渉計の物体アームと参照アームに2つの顕微鏡対物レンズ102、103をそれぞれ有するリニク型の干渉顕微鏡101が含まれ、前記物体アームと参照アームは、ビームスプリッターキューブ104で分離されている。また、装置100には、この例では広いスペクトル帯(80nm)のパルスを放射するフェムト秒レーザー源であるレーザー源110も含まれている。円柱レンズ111と球面レンズ112、113との配置によって、試料10の一次元照明が得られている。参照アームの光出力はニュートラルデンシティフィルター105で制御され、物体アームには分散を補償するためにスライドガラス106が配置されている。物体アームと参照アームからの光はビームスプリッターキューブ104で再結合され、レンズ121によって一次元カメラ122に投影されて、干渉信号を得ることができるようになる。この干渉信号は、参照アームの顕微鏡対物レンズ103の焦平面に配置された参照鏡107を圧電トランスデューサ108によって正弦波で作動させることによって変調され、変調の結果として得られる4つの干渉信号の組み合わせから試料の線の像が再構成される。
【0009】
図1に記載されたマイクロスコピー装置は、線形すなわち一次元(一方向)の共焦点フィルタリング構成を有する。実際、照明線は、検出面が線の像の幅と実質的に同一の幅を有する一次元センサと光学的に共役し、観察対象となる物体の領域の空間フィルタリングがなされる。
【0010】
このように、
図1に記載のマイクロスコピー装置には、共焦点フィルタリングに関連した利点があるが、1ラインでの平行撮像により、(非特許文献3)に記載の走査型光干渉断層撮影マイクロスコピーよりも撮像速度を高めることが可能になる。
【0011】
さらに、(非特許文献4)では、並進ステージ109によって、試料10を照明線に垂直な方向に走査することで試料のen-face画像を作成することも可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
軸方向の分解能すなわち顕微鏡対物レンズ102の光軸方向に約3μm、横方向の分解能すなわち顕微鏡対物レンズの光軸に垂直な面に含まれる方向に約2μmで、試料のen-face画像を形成することができるが、(非特許文献4)に記載の装置では、en-face画像を生成するために試料を移動しなければならないin vivo試料のマイクロスコピーには適していない。また、仮に照明ビームや検出ビームを走査する機構を想定した場合、装置全体が大型になるため、工業化の観点からは避けたいところである。
【0013】
本明細書では、画像の高速取得と装置全体の小型化を実現した、in vivo試料のen-face画像を形成するためのライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の装置および方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書において、「comprise(備える、含む)」という語は、「include(含む)」、「contain(含む)」と同じ意味であり、包括的またはオープンであり、記載または図示のない他の要素を除外するものではない。また、本明細書において、「約」または「実質的に」という用語は、それぞれの値の10%、例えば5%の上限および/または下限マージンと同義である(同じものを意味する)。
第1の態様によれば、本明細書は、
スペクトル帯域の広い光源と、
一次元の検知面を有するセンサと、
一端に反射参照面が配置された参照アームと、撮像対象となる物体を受けるように構成された物体アームと、前記物体アームおよび参照アームを前記光源および前記センサに結合するビームスプリッタと、前記物体アームに配置された少なくとも1つの第1の顕微鏡対物レンズと、を含む干渉顕微鏡と、
前記焦線の一次元像を検出面上に形成するように、前記第1の顕微鏡対物レンズの物空間に位置する焦線に沿って前記物体に光をあてるために前記光源と相互作用するように構成され、かつ、前記物体によって後方散乱されて前記焦線から来る光を選択するように構成された一次元共焦点空間フィルタリング装置と、
前記焦線を一方向に走査するための装置であって、前記第1の顕微鏡対物レンズの上流で前記物体アームに配置され、前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸に対して実質的に垂直な横方向に焦線を走査するように構成された装置と、
前記一方向走査時に前記焦線の異なる位置について干渉顕微鏡によって生成されて前記センサによって取得される物体の複数の一次元干渉像から、顕微鏡対物レンズの前記光軸に対して実質的に垂直な面に配置された、観察対象となる前記物体の少なくとも1つの二次元断層en-face画像を生成するように構成された処理装置と、を備える、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の装置に関する。
【0015】
本明細書において、物体アームに配置された第1の顕微鏡対物レンズの光軸は、前記対物レンズの瞳の中心を通り、前記瞳の面に対して実質的に垂直な線によって規定される。この線は、装置が戻りミラーまたは他の光偏向素子を含む場合、折れ線になることがある。
【0016】
したがって、一般的な方法では、「軸方向」とは、装置の所与の空間において、前記空間で考慮される、前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸に対して共線次元の方向を示すことになる。
【0017】
一般に、「横方向」とは、装置の所与の空間において、前記空間において考慮される、前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸に垂直な方向を示すことになる。
【0018】
本明細書において、「ピント面」は、焦線の走査時に、第1の顕微鏡対物レンズの物空間で前記焦線によって形成される表面である。第1の顕微鏡対物レンズの物空間は、本明細書では、動作時に研究対象が位置する空間によって規定される。ピント面は、ほぼ平面であり、第1の顕微鏡対物レンズの光軸に対して実質的に垂直であり、前記顕微鏡対物レンズの被写界深度に対応する領域で規定される。
【0019】
「フォーカス表面」とは、物空間において、第1の顕微鏡対物レンズおよび第1の顕微鏡対物レンズと検出面との間に存在する一組の光学素子によって一次元の検知面と光学的に共役になる表面である。装置は、ピント面がフォーカス表面と実質的に一致するように、像形成の上流で調整される。
【0020】
このように説明した光干渉断層撮影マイクロスコピー装置のもともとの配置では、前記第1の顕微鏡対物レンズの上流で、前記焦線の一方向走査のための装置を干渉顕微鏡の物体アームに配置することで、装置の全体としての大きさを小さく維持しつつ、in vivo試料のen-face画像を形成することができる。
【0021】
研究対象は、例えば、限定されないが、皮膚領域であり、例えば、異なるタイプおよびサブタイプの皮膚癌、特にメラノーマ、基底細胞癌および扁平上皮癌の診断、皮膚の炎症性および水疱性病理の診断、健康な皮膚の様々な形態的パラメータの評価、皮膚病変の変化のモニタリング、切除マージンの検査等に適用される。
【0022】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、スペクトル帯域の広い光源は、発光ダイオードまたは複数の発光ダイオードの組み合わせ、スーパールミネセントダイオードまたは複数のスーパールミネセントダイオードの組み合わせ、ハロゲンフィラメントランプ、アークランプ、スペクトル帯域の広いレーザー源(例えば、「スーパーコンティニウム」の生成による光源)を含む。いずれの場合も、光源のスペクトル幅(半値幅)は、100nm以上であるのが好ましい。このスペクトル幅が大きいほど、装置の軸方向の分解能が良好となり得る。中心帯域波長は、可視であっても近赤外であってもよい。生体での用途および医療用途では一般に近赤外が好ましく、700nm~1500nmである。光源は、偏光であっても非偏光であってもよく、空間的にコヒーレントであってもインコヒーレントであってもよい。
【0023】
空間的にコヒーレントな光源(レーザーまたはスーパールミネセントダイオード)は、輝度が大きいため好都合になり得る。また、それらの光源を円柱レンズと組み合わせて、焦線を形成することができる。1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記干渉顕微鏡は、前記参照アームに配置された第2の顕微鏡対物レンズをさらに備え、前記参照アームと物体アームとが離れている、リニク型の顕微鏡である。例えば、第1の顕微鏡対物レンズと第2の顕微鏡対物レンズとが同一であり、干渉計の2つのアーム間の波長分散の影響を補償することができる。
【0024】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、参照アームには、顕微鏡対物レンズが含まれていない。この場合は特に、装置には、前記物体アームと参照アームのうちの一方および/または他方に配置された波長分散補償用の要素をさらに含むことができる。
【0025】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記第1の顕微鏡対物レンズおよび/または前記第2の顕微鏡対物レンズが存在する場合は前記第2の顕微鏡対物レンズは、浸漬型顕微鏡対物レンズ、すなわち、屈折率が研究対象の屈折率と実質的に等しい媒体中に浸漬された顕微鏡対物レンズである。
【0026】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記反射参照面は、入射光の約5%以下を反射するように構成された表面を含む。そのような反射参照面は、例えば、スライドガラス(例えば、石英)のガラス/空気界面を含む。もちろん、例えば鏡など、反射係数がさらに大きい他の反射面を使用してもよい。
【0027】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、マイクロスコピー装置は、参照アームに配置された光出力減衰エレメントをさらに備え、干渉顕微鏡の各アームを伝搬する光ビームの光出力の差を制御できるようになっている。減衰エレメントは、例えば、ニュートラルデンシティフィルターである。減衰エレメントによって導入される分散を補償するために、波長分散補償用の要素、例えばスライドガラスを物体アームに配置することができる。
【0028】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、一次元の検知面を有するセンサは、所与の幅の一次元の検出面を形成するために1本以上のラインに従って配置された複数の基本センサ(または「画素」)を含む、一次元センサ、例えばCCDまたはCMOSタイプの一次元カメラである。また、一次元の検知面を有するセンサは、例えば画素の1本以上のラインのみが電子的に起動される二次元センサなど、画素の1本以上のラインのみが考慮される二次元センサを含む。
【0029】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、一次元共焦点空間フィルタリングのための、前記物体によって後方散乱されて前記焦線から来る光の選択は、例えば干渉顕微鏡の下流に配置された結像レンズと第1の顕微鏡対物レンズによって前記焦線と光学的に共役し、幅が検出面上の焦線の像の幅に適合される前記一次元の検知面によって得られる。したがって、一次元の検知面は、一次元共焦点空間フィルタリング装置の一部である。
【0030】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、一次元共焦点空間フィルタリングのための、前記物体によって後方散乱されて前記焦線から来る光の選択は、干渉顕微鏡の下流に配置された結像レンズと第1の顕微鏡対物レンズによって前記焦線と光学的に共役する空間フィルタリング要素、例えばスリットによって得られる。この例では、空間フィルタリング要素の寸法、例えばスリットの幅は、前記空間フィルタリング要素の面における焦線の像の幅に適合される。空間フィルタリング要素は、例えば、センサの検出面と光学的に共役である。
【0031】
2つの場合のいずれにおいても、一次元の検知面またはスリットの幅は、焦線の像の幅の10倍未満、有利には5倍未満であればよい。例えば、一次元の検知面またはスリットの幅を、焦線の像の幅と実質的に等しくすることができる。
【0032】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、一次元共焦点空間フィルタリング装置は、干渉顕微鏡の上流に配置された円柱レンズを含み、これは、第1の顕微鏡対物レンズの物空間に前記焦線を形成するためにスペクトル帯域の広い光源と協働する。スペクトル帯域の広い光源は、例えば、空間的にコヒーレントな光源、例えば、スーパーコンティニウムレーザーまたはスーパールミネセントダイオードである。このような一次元共焦点空間フィルタリング装置は、例えば数ミリワット前後の満足のいく光出力で線に沿って物体に光をあてることができる点で都合がよい。しかしながら、一次元共焦点空間フィルタリング装置には、他の例示的な実施形態において、光源の面と光学的に共役な面に配置された一次元開口、例えばスリットと、前記焦線を形成するように前記第1の顕微鏡対物レンズと協働する干渉顕微鏡の上流の対物レンズが含まれていてもよい。
【0033】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、焦線の一方向走査のための装置は、反射面、例えばミラーと、第1の顕微鏡対物レンズの光軸に実質的に垂直な回転軸を中心に前記反射面を回転させる手段とを含む。
【0034】
焦線の一方向走査のための装置は、第1の顕微鏡対物レンズの上流で物体アームに配置される。
【0035】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、走査装置の反射面は、あらゆるケラレ効果を抑制するために、第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳と光学的に共役である。
【0036】
他の例示的な実施形態によれば、走査装置の反射面は、第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳のレベルで照明ビームに起こり得るケラレを抑制し、かつ、物体によって後方散乱された光のケラレを抑制するために、単に前記第1の顕微鏡対物レンズの近くに配置されている。特に、走査装置の反射面と第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳とを光学的に共役させるための光学素子を導入していないため、装置の小型化を促進することが可能である。
【0037】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、処理装置は、1つ以上の物理的実体、例えば1つ以上のコンピュータを含む。本明細書において、特に方法の工程を実施するために計算工程または処理工程に言及する場合、各々の計算工程または処理工程は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、マイクロコードまたはこれらの技術の任意の適切な組み合わせによって実施することができると理解される。ソフトウェアを使用する場合、各々の計算工程または処理工程を、コンピュータプログラムの命令またはソフトウェアコードによって実施することができる。これらの計算工程または処理工程を実行するために、これらの命令を、処理装置によって読み取り可能な記憶媒体に格納または伝送することが可能であるおよび/または処理装置によって実行することが可能である。1つ以上の例示的な実施形態によれば、処理装置は、ユーザとやりとりするための画面および/またはインターフェースと接続されている。
【0038】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、一次元断層像は、前記複数の画像の連続する画像間の値の分散を決定することによって、複数の一次元干渉像から生成される。分散は、各点について並列に複数の連続する一次元干渉像に対して決定される。例えば、前記一次元断層像を決定することには、前記複数の連続した一次元干渉像の分散を計算することを含む。1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記複数の一次元干渉像には2~20の一次元干渉像が含まれ、2~10の一次元干渉像が含まれていると都合がよい。
【0039】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、処理装置は、
前記物体の複数の一次元断層像を生成し、かつ、
複数の前記一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像を生成するように構成され、
前記複数の一次元断層像の各々の像は、前記一方向走査時に前記焦線の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される。
【0040】
これらの例示的な実施形態において、一次元断層像を取得するために反射参照面を変位させる必要がない。実際、焦線の走査のために、焦線を走査するための装置の反射面が第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳と光学的に共役でない場合、複数の一次元干渉像(または一次元干渉信号)を、干渉顕微鏡によって生成し、物体内の焦線の複数の連続する位置についてセンサによって取得することができる。前記複数の干渉像の複数の干渉像は、各点で、参照アームから来る光と物体アームから来る光との間の異なる光路長差に対応する異なる干渉状態を示す。前記複数の一次元干渉像から、一次元の断層像を生成することが可能である。
【0041】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第1の態様に係るマイクロスコピー装置は、前記反射参照面を軸方向に一方向に変位させるための手段を含む。
【0042】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、処理装置は、
前記物体の複数の一次元断層像を生成し、かつ、
複数の前記一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像を生成するように構成され、
前記複数の一次元断層像の各々の像は、反射参照面の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される。
【0043】
これらの例示的な実施形態では、一次元断層像は、反射参照面の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成され、その結果、参照アームから来る光と物体アームから来る光との間の異なる光路長差、よって、前記複数の一次元干渉像の干渉像について異なる干渉状態が生じる。これらの例示的な実施形態では、一次元干渉像の生成時の焦線の変位は、このように生成された断層像を劣化させないように、実質的にゼロであるか、または十分に小さいと都合がよい。
【0044】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記反射参照面を移動させるための前記手段は、前記反射参照面の追加の軸方向の変位をさらに導入して、焦線を走査するための装置によって導入される位相シフトの補償を可能にするように構成されている。
【0045】
本出願人は、実際に、en-face画像を生成するための焦線の一方向走査の間、「干渉面」、すなわち、効果的に観察可能な表面である光路長差ゼロの表面が、厳密には平面ではなく放物線表面の形態をとることを示した。その結果、「ぼやけた」en-face画像になることがある。そこで、干渉面とピント面とのより良い重ね合わせを得て、一層鮮明な実質的に平面のen-face画像を生成することができるように、前記反射参照面の追加の軸方向変位を導入することで、補償用の位相シフトを導入することが可能となる。
【0046】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第1の態様に係るマイクロスコピー装置は、参照アームに配置された折り返し反射面と、軸方向と横方向のうちの一方および/または他方に前記折り返し反射面を移動させる手段と、をさらに含む。
【0047】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記処理装置は、
前記物体の複数の一次元断層像を生成し、かつ、
複数の前記一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像を生成するように構成され、
前記複数の一次元断層像の各々の像は、前記折り返し反射面の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される。
【0048】
干渉顕微鏡の参照アームに配置された折り返し反射面を移動させると、反射参照面を移動させずにすむようになるため、マイクロスコピー装置全体の大きさをさらに小さくすることが可能になる。さらに、特に反射参照面が顕微鏡対物レンズの焦平面にある場合、前記反射参照面の変位時に参照アームから来る光の強度が変動するリスクが抑えられる。この変動は、反射参照面上の不純物に起因し、像にアーティファクトを生じさせる可能性がある。
【0049】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記複数の一次元断層像の各々の像について、前記折り返し反射面を移動させるための前記手段は、焦線を走査するための装置によって導入される位相シフトを補償することを可能にする前記折り返し反射面の追加の変位をさらに導入するように構成されている。
【0050】
もちろん、前記折り返し反射面の異なる位置に対する複数の一次元干渉像の取得によって一次元断層像が生成される場合にも、前記反射参照面の追加の軸方向変位によって、焦線を走査するための装置によって導入される位相シフトの補償を得ることも可能である。逆に、反射参照面の異なる位置に対する複数の一次元干渉像の取得によって一次元断層像が生成される場合であっても、前記折り返し反射面の追加の変位によって、焦線を走査するための装置によって導入される位相シフトの補償を得ることも可能である。
【0051】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第1の態様によるトモグラフィマイクロスコピー装置は、物体内で広範囲に前記焦線を変位させるために、前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸と平行な方向に前記焦線を軸方向に変位させるための手段をさらに含む。そして、ピント面を物体内で広範囲に移動させる。
【0052】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、処理装置は、異なるピント面に対して生成される複数の複数のen-face画像から、観察対象となる前記物体の三次元像をさらに生成するように構成されている。
【0053】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、焦線の軸方向変位のための前記手段は、前記第1の顕微鏡対物レンズと前記ビームスプリッタとを含むアセンブリと一体である、前記第1の対物顕微鏡の前記光軸と平行な方向への変位のための手段を含む。このような構成は、軸方向走査時に、移動させる重量を最小限に抑えながら、干渉面とピント面を同時にかつ一体的に移動させることができる点で都合がよい。
【0054】
もちろん、焦線の軸方向変位のための他の手段も想定することができる。
【0055】
例えば、非限定的な方法で、焦線の軸方向変位のための前記手段は、前記第1の顕微鏡対物レンズと焦線の一方向走査のための前記装置とを含むアセンブリと一体的な変位のための手段、あるいは、前記第1の顕微鏡対物レンズと参照アームの前記折り返し反射面が存在する場合はこれのアセンブリ、あるいは、前記干渉顕微鏡のすべての要素を含むアセンブリを含んでもよい。
【0056】
上記に引用した例では、前記第1の顕微鏡対物レンズと、前記第2の顕微鏡対物レンズが存在する場合にはこの第2の顕微鏡対物レンズに、浸漬型顕微鏡対物レンズを選択することが可能である。実際、これらの例では、干渉面の変位とピント面の変位は一体であり、研究対象の屈折率を第1の顕微鏡対物が浸漬されている媒体の屈折率に適合させることにより、これらを一致させることが可能である。
【0057】
他の例示的な実施形態によれば、焦線の軸方向変位のための前記手段は、一方では第1の顕微鏡対物レンズから独立し、他方では反射参照面を有する第2の顕微鏡対物レンズが存在する場合にこれで形成されるアセンブリから独立した変位手段を含んでもよく、この焦線の軸方向変位のための手段も、一方では第1の顕微鏡対物レンズから独立し、他方では参照アームに配置される折り返し反射面から独立した変位手段を含んでもよい。
【0058】
これらの例では、干渉面の変位とピント面の変位は別々であり、2つの面を一致させるように、これらの面を異なる量だけ移動させることが可能である。
【0059】
第2の態様によれば、本明細書は、第1の態様による装置によって実施される、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の方法に関するものである。
【0060】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第2の態様による前記方法は、
スペクトル帯域の広い光源を用いて照明ビームを形成し、
ビームスプリッタによって、照明ビームを、一端に反射参照面が配置された参照アームに送られる第1の光束と、撮像対象となる物体を受ける物体アームに送られる第2の光束とに分離し、
第1の顕微鏡対物レンズの物空間に位置する焦線に沿って撮像対象となる前記物体に光をあてるために、前記物体アームに配置され、共焦点空間フィルタリング装置と相互作用する前記顕微鏡対物レンズによって、前記第2の光束を集束させ、
センサの一次元の検知面に前記焦線の一次元像を形成するために、前記共焦点空間フィルタリング装置によって、物体によって後方散乱されて前記焦線から来る光を選択し、
一次元干渉像を生成するために、物体によって後方散乱されて選択された光と、参照アームの反射面による、前記第1の光束の反射で生じる光とを、前記ビームスプリッタによって組み合わせ、
前記第1の顕微鏡対物レンズの上流で前記物体アームに配置された走査装置によって、前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸に実質的に垂直な横方向に前記焦線を一方向に走査し、
処理装置によって、前記一方向走査時に前記焦線の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から、顕微鏡対物レンズの前記光軸に実質的に垂直な面に配置された、観察対象となる前記物体の少なくとも1つの二次元断層en-face画像を生成することを含む。
【0061】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記物体の前記少なくとも1つの二次元断層en-face画像を生成することが、
前記物体の複数の一次元断層像を生成し、かつ、
複数の前記一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像を生成することを含み、
前記複数の一次元断層像の各々の像は、前記一方向走査時に前記焦線の異なる位置について前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される。
【0062】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記物体の前記少なくとも1つの二次元断層en-face画像を生成することは、
前記物体の複数の一次元断層像を生成し、かつ、
複数の前記一次元断層像から前記物体の前記二次元断層en-face画像を生成することを含み、
前記複数の一次元断層像の各々の像は、参照アームに配置された、反射参照面の異なる位置または折り返し反射面の異なる位置について、前記センサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される。
【0063】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、この方法は、
焦線を走査するための装置によって導入される位相シフトを補償するために、前記複数の一次元断層像の各々の像に対して、前記反射参照面の追加の軸方向の変位を導入するか、前記折り返し反射面の追加の変位を導入することをさらに含む。
【0064】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、この方法は、
前記第1の顕微鏡対物レンズの前記光軸と平行な方向に物体内で広範囲に前記焦線を軸方向に移動させ、
焦線の異なる奥行きについて生成される複数のen-face画像から、観察対象となる前記物体の三次元像を生成することをさらに含む。
【0065】
本発明の他の利点および特徴は、以下の図面によって示される説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】は、既に説明したが、従来技術から知られている、物体に対するライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー(LS-OCM)用の装置を示す図である。
【
図2】は、本明細書による、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の装置の一例を示す図である。
【
図3A】は、本明細書の一例による、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置における一次元共焦点空間フィルタリング手段の動作を第1の図で示したものである。
【
図3B】は、
図3Aに示す一次元共焦点空間フィルタリング手段を第2の図で示したものである。
【
図4A】は、本明細書による、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置の一例を示す図である。
【
図4B】は、本明細書によるライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置の一例を示す図である。
【
図4C】は、本明細書によるライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置の一例を示す図である。
【
図5A】は、焦線の一方向走査の一例を、時間の関数として示す図である。
【
図5B】は、一例による、
図5Aに示す走査に従って焦線を横方向にシフトしたときの干渉面の断面と、
図5Bにも示す、反射参照面の軸方向位置の変動による補償を伴う、
図5Aに示す走査に従って焦線を横方向にシフトしたときの干渉面を示す図である。
【
図5C】は、一例による、
図5Aに示す走査に従って焦線を横方向にシフトしたときの干渉面の断面と、
図5Cにも示す、反射参照面の軸方向位置の変動による段階的な補償を伴う、
図5Aに示す走査に従って焦線を横方向にシフトしたときの干渉面を示す図である。
【
図6A】は、一例による、本明細書によるライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置の一例における干渉面を、補償なしで示す図である。
【
図6B】は、一例による、本明細書によるライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置の一例における干渉面を、補償ありで示す図である。
【
図7】は、補償がある場合とない場合とで、本明細書による例示的な方法によって得られる試料の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下の詳細な説明では、本明細書についてのより深い理解を提供するために、具体的な詳細を多く述べてある。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても本明細書を実施できることは、当業者には明らかであろう。他の場合、説明が不必要に複雑になるのを避けるために、周知の特徴については詳細には説明していない。
【0068】
さらに、より明瞭にするために、図面でもこれらの特徴を縮尺通りには示していない。
【0069】
図2は、本明細書によるライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置の一例を示す図である。
【0070】
図2に示すトモグラフィマイクロスコピー装置200は、スペクトル帯域の広い光源210と、例えばCCDまたはCMOSタイプの一次元カメラなど、一次元の検知面223を有するセンサ222と、特にセンサ222から来る信号を処理するように構成された処理装置240と、干渉顕微鏡201と、を含む。
【0071】
干渉顕微鏡201は、特に、先端に反射参照面207が配置された参照アームと、撮像対象となる物体10を受けるように構成された物体アームと、物体アームおよび参照アームを光源210およびセンサに結合するビームスプリッタ204と、前記物体アームに配置された少なくとも1つの第1の顕微鏡対物レンズ202と、を含む。干渉顕微鏡は、例えば、
図2に示すように、第1の顕微鏡対物レンズ202と同一の第2の顕微鏡対物レンズ203が参照アームに配置され、その焦平面に反射参照面207が配置されている、リニク型の顕微鏡である。
図2の例では、顕微鏡対物レンズ202、203は液浸対物レンズであり、屈折液205、206、すなわち、物体10の屈折率に合う屈折率の液体に浸漬されている。また、干渉顕微鏡201には、公知の方法で、物体アームに配置された光出力減衰器(図示せず)および/または前記物体アームと参照アームのうちの一方および/または他方に配置された波長分散補償器(図示せず)がさらに含まれていてもよい。
【0072】
トモグラフィマイクロスコピー装置200は、特に円柱レンズ212を含む一次元共焦点空間フィルタリング装置をさらに含む。共焦点フィルタリング装置は、第1の顕微鏡対物レンズの物空間に位置する焦線に沿って物体10に光をあてるために、光源と相互作用するように構成されている(ここで、「物空間」は、撮影の観点から規定される、動作時に研究対象が位置する顕微鏡対物レンズの空間である)。また、検出面223に焦線の一次元像を形成するために、物体で後方散乱されて前記焦線から来る光を選択するように構成されている。一次元共焦点空間フィルタリング装置の例については、
図3Aおよび
図3Bを参照してより詳細に説明する。
【0073】
図2の例では、対物レンズの瞳の中心を通り、当該瞳の平面に対して実質的に垂直な線によって規定される第1の顕微鏡対物レンズ202の光軸が、物体10の空間軸zによって参照される。x軸およびy軸は、
図2の例では、物体10の空間における2つの横方向、すなわち、互いに直交し、第1の顕微鏡対物レンズ202の光軸zに直交する2つの方向に対応している。反射参照面の空間において、z
rは、この空間で考えられる軸方向すなわち第1の顕微鏡対物レンズの光軸に対して共線次元となる方向を示し、x
r、y
rは、横方向を示す。
【0074】
本明細書による装置の干渉顕微鏡では、スペクトル帯域の広い光源の時間可干渉長が短いがゆえに、反射参照面207で反射した光と物体10によって後方散乱した光との干渉は、物体アームと参照アームにおける光路が等しく、公差が光源の可干渉長に等しい場合にのみ発生する。
【0075】
本明細書において、「干渉面」(または「光路長差ゼロの表面」)という用語は、干渉が発生し得る物体内の仮想スライスをいう。干渉面は、実際に観察することができる面である。「干渉像」という用語は、検出面で形成される干渉をセンサが取得した結果として得られる干渉信号をいう。このため、干渉像の各点は、所与の「干渉状態」すなわち、当該点について物体アームから入射する光と参照アームから入射する光の光路長差が可干渉長未満であることを示す。本明細書では、共焦点照明と検出が一次元であることから、干渉像も一次元である。干渉面の両側で物体によって後方散乱された光は、干渉信号で一定の発光バックグラウンドを形成する一助となる。後述する手段を用いて干渉顕微鏡の2つのアームの光路長差を修正することで、連続する画像間の点の干渉状態を変調することが可能である。そして、センサによって取得される一次元の干渉像を組み合わせることで、一次元の断層像を形成することが可能になる。
【0076】
干渉顕微鏡の2つのアーム間の光路長差を修正するために実装された様々な手段については、特に
図4A、
図4Bおよび
図4Cを参照して後述する。
【0077】
実用上、連続する一次元の干渉像間で光路長差が既知の法則に従って得られる場合、この法則に基づいて前記干渉像から一次元の断層像を決定することが可能である。
【0078】
例えば、一次元の断層像を形成するための簡単な手法では、位相をシフトさせた複数の一次元干渉像をデジタル的に結合する、位相シフト干渉法と呼ばれる方法を使用している。例えば、物体内の照明光の中心波長をλ、第1の顕微鏡対物レンズが浸漬される屈折率をnとすると、軸方向にλ/8nだけ離れた焦線の位置に対応する4つの一次元干渉像を合成することができる。これは、隣接する2つの画像間での位相差π/2に相当する。これらの画像をE1、E2、E3、E4とすると、(E1-E3)2+(E2-E4)2が干渉信号の振幅、すなわち再構成された画像の振幅に相当し、(E1-E3)/(E2-E4)が干渉信号の位相に相当する。この位相では、物体についての構造情報および断層情報以外の情報が提供される。位相シフトの概念と、焦線は常に物体アームと参照アームとの光路長差がゼロに等しいことに対応するという上述した事実との間に矛盾がないことに注意されたい。実際、光を後方散乱させることができる物体の構造が、焦線と一致するときのみならず、その前後でも観察される(なぜなら、コヒーレンス「ゲート」と共焦点フィルタリングによって導入されるそれの幅がλより大きいため)。したがって、軸方向での走査時に連続して取得される画像に対するこの構造に対する寄与の間には、実際に位相シフトが存在する。
【0079】
変形例として、連続する画像間の正弦波位相シフトに適応したアルゴリズムを使用することも可能である。例えば、干渉縞の包絡線(干渉信号の振幅)を抽出し、信号の非変調部分(非干渉信号)を除去するために、複数の一次元干渉像をフーリエ解析によって処理することができる。正弦波位相シフトは、例えば、参照面が正弦波状に変調される場合に得られるが、これだけではない。
【0080】
全体として、本出願人は、複数の一次元干渉像の連続する画像間の分散を決定することによって、前記複数の一次元干渉像から一次元断層像を生成することが可能であることを示した。その場合、連続する一次元干渉像間の光路長差の変動法則を正確に知る必要はない。例えば、一次元断層像を生成するために、N個の連続した一次元干渉像の分散を計算することが可能であり、Nは例えば2~20、都合がよいのは2~10、例えば5程度である。
【0081】
スペクトル帯域の広い光源210は、例えば、スーパーコンティニウムレーザーを含み、可干渉長は一般に1~5μmである。
【0082】
トモグラフィマイクロスコピー装置200は、第1の顕微鏡対物レンズ202の上流で物体アームに配置された、前記焦線を一方向に走査するための装置235、237をさらに含む。一方向走査装置は、例えば、非限定的に、反射面235と、第1の顕微鏡対物レンズの光軸に垂直な回転軸を中心に反射面を回転させるための手段237とを含む。走査装置は、例えば、ガルバノミラーで形成される。焦線の一方向走査用の装置は、前記第1の顕微鏡対物レンズの光軸zに実質的に垂直な横方向(
図2の例ではyとする)に焦線を走査するように構成されている。
【0083】
次に、本明細書によれば、処理装置240によって、一方向走査時に前記焦線の異なる位置についてセンサによって取得される物体の複数の一次元干渉像から、物体10の少なくとも1つの二次元断層en-face画像、すなわち顕微鏡対物レンズの光軸に対して実質的に垂直なx,y面に配置された二次元断層像を生成することが可能である。
【0084】
焦線の一方向走査用の装置が干渉顕微鏡201の物体アームに配置されるため、en-face画像を取得するための装置200の全体的な大きさが小さくなる。
【0085】
例示的な実施形態によれば、焦線を走査するための装置の反射面は、例えば光学レンズによって、第1の顕微鏡対物レンズ202の入射瞳と光学的に共役にされている。これにより、第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳のレベルでの照明ビームのケラレや、物体によって後方散乱された光のケラレを回避することが可能となる。しかしながら、この構成では組み立てが複雑になり、装置全体の大きさが増す。したがって、ケラレを抑えるために、走査装置の反射面を
図2に示すように第1の顕微鏡対物レンズ202の上流で第1の顕微鏡対物レンズに近い位置に置く、すなわち、走査装置を統合する上での機械的な制約に鑑みて可能な限り対物レンズの瞳に近い位置に置くことが好ましい。
【0086】
処理装置240は主に、本明細書による方法の各工程を実施するように構成されている。処理装置240は、ユーザとやりとりをするための画面および/またはインターフェース(
図2には図示せず)に接続されていてもよい。また、処理装置は、反射面の回転手段237を制御するための手段および/または本明細書によるトモグラフィマイクロスコピー装置の他の可動要素を制御するための手段を含んでいてもよい。
【0087】
本明細書の一例による、ライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー装置における一次元共焦点空間フィルタリングを、2つの垂直切断面(それぞれ顕微鏡対物レンズ202の光軸zを含むyz面およびxz面)に沿って
図3Aおよび
図3Bに示す。これらの図では、トモグラフィマイクロスコピー装置の特徴のうち、一次元共焦点空間フィルタリングの理解に有用なものだけを示してある。
【0088】
この例では、一次元共焦点空間フィルタリング装置は、干渉顕微鏡の上流に配置されて第1の顕微鏡対物レンズ202の物空間内に焦線301を形成するためにスペクトル帯域の広い光源と相互作用する円柱レンズ212を含む。焦線の走査時、この焦線はピント面上を移動し、実質的に焦点表面と一致する。このようなピント面は、前記第1の顕微鏡対物レンズに入射するビームがコリメートされている場合、第1の顕微鏡対物レンズ202の焦平面と実質的に一致し、ほぼ平坦である。スペクトル帯域の広い光源は、例えば空間的にコヒーレントな光源、例えば、スーパーコンティニウムレーザーである。このような一次元共焦点空間フィルタリング装置は、満足のいく光出力で物体に光をあてることを可能にするという点で都合がよい。
【0089】
一次元共焦点空間フィルタリング用の、物体10によって後方散乱されて前記焦線301から来る光の選択は、本例ではさらに、干渉顕微鏡の下流に配置された第1の顕微鏡対物レンズ202および結像レンズ221によって焦線と光学的に共役な、センサ322の一次元の検知面323によって得られる。検出面323の幅は、検出面上の焦線の像の幅に応じて決定される。このように、一次元の検知面は、所与の幅のフィルタリングスリットのような挙動を示し、よって、一次元共焦点空間フィルタリング装置の一部を形成する。物体10によって後方散乱されて前記焦線301から来る光の選択は、焦線301および検出面323と光学的に共役な、検出面から離れたフィルタリングスリット(
図3A、
図3Bの例では図示せず)によっても得られることに注意されたい。
【0090】
このように、検出面323によって形成されるフィルタリングスリットに垂直なyz平面(
図3A)では、円柱レンズ212と第1の顕微鏡対物レンズ202とによって焦線301が形成される物体の領域から来る光(実線で示すビーム)だけがセンサ222によって検出され、物体の他の領域302、303から来る光(例えば点線のビーム)は非常に強く減衰される。フィルタリングスリットと平行な面(
図3Bのxz面)では、このようなフィルタリングは発生しない。
【0091】
共焦点空間フィルタリングは、スペクトル帯域の広い光源を用いた可干渉長の短い干渉計で生じる「コヒーレントな」フィルタリングを補完するものであり、その原理は、上記で想起されるとおりである。特に、共焦点フィルタリングは、焦平面の外側に位置する試料の領域から来る光の散乱と寄生反射によって生じる「バックグラウンド」を除去することによって、干渉イメージングの性能を改善する。このため、センサのすべてのダイナミクスが有用な干渉信号の検出に使用され、S/N比が向上する。さらに、干渉計は、たとえ可干渉長が短くても、物体の撮像領域に由来する弾道光子と、物体の他の領域に由来し、拡散によって同一長の光路を移動した光子とを区別できるようにはならない。このため、結果的に有用な干渉信号に付加される寄生干渉信号が生じて像にアーティファクトを発生させ、アクセス可能な撮像深度が制限されることになる。本明細書による装置では、共焦点フィルタリングで弾道光子だけを通過させるため、このバックグラウンドが除去される。
【0092】
共焦点フィルタリングだけの場合と比較して、干渉検出を使用すると、有用な信号をかなり増幅することができるようになる(「純粋な」共焦点マイクロスコピーの場合、取得深度を制限するのは低い信号対雑音比である)。したがって、本明細書による装置では、低可干渉長の干渉計によるマイクロスコピーと共焦点スリットマイクロスコピーという、使用する2つの原理の間に、単純な並置ではなく相乗効果が存在する。
【0093】
図4A、
図4Bおよび
図4Cに、本明細書による方法を実施するためのトモグラフィマイクロスコピー装置の3つの例を示す。
【0094】
これらの図では、本明細書による方法の理解に必要な装置の特徴のみを示してある。特に、照明手段および共焦点空間フィルタリング装置と処理装置については図示していない。いくつかの例示的な実施形態は、いくつかの図にのみ示されているが、上述した異なる実施形態を組み合わせることも可能である。
【0095】
これらの図において、
図2の例で示したものと同一の特徴には同一の参照符号を付し、繰り返して説明することはない。
【0096】
図4Aは、干渉顕微鏡が単一の顕微鏡対物レンズ、すなわち第1の顕微鏡対物レンズ202だけを含む装置の第1の例を示している。物体アームは、波長分散補償用の要素403、例えばスライドガラスを含む。
【0097】
この例では、反射参照面207は固定されている。
【0098】
各々の一次元断層像は、本例では、一方向走査時に前記焦線の異なる位置についてセンサによって取得される複数の一次元干渉像から生成される。これは、焦線を走査するための装置の反射面が、第1の顕微鏡対物レンズの入射瞳と光学的に共役でないという事実によって可能となる。したがって、観察線の走査によって得られる焦線の複数の異なる連続した位置について、センサによって取得される連続した干渉像の点は、参照アームから来る光と物体アームから来る光との間の異なる光路長差(または位相シフト)に対応する異なる干渉状態を示す。複数の一次元干渉像から、一次元の断層像を生成することが可能である。
【0099】
この例では、干渉像の2回の取得間の光路長差の変動法則は、例えば、反射参照面が移動される場合のような決定論的な方法では知られていない。
【0100】
しかしながら、本出願人は、上述したように連続する画像間の分散を求めることで、複数の一次元干渉像から一次元断層像を生成し得ることを示した。
【0101】
図4Bは、干渉顕微鏡がリニク型であり、物体アームの第1の顕微鏡対物レンズ202に加えて、参照アームの第2の顕微鏡対物レンズ203を含む装置の第2の例を示す。2つの顕微鏡対物レンズは同一であると都合がよい。
【0102】
この例では、反射参照面207は、
図4Bに両方向矢印405で概略的に示した反射参照面の一方向変位のための手段によって軸方向z
rに並進移動可能であり、これらの手段は、例えば圧電モータを含む。
【0103】
本例では、反射参照面の異なる位置についてセンサによって取得される複数の一次元干渉像から各々の一次元断層像を生成することができ、その結果、参照アームから来る光と物体アームから来る光に異なる光路長差が生じることから、異なる一次元干渉像で異なる干渉状態が生じる。これらの例示的な実施形態において、一次元干渉像の生成時における焦線の変位は、こうして生成される一次元断層像を劣化させないように、実質的にまたは十分に小さいものであると都合がよい。
【0104】
図4Cは、干渉顕微鏡がリニク型である装置の一例を再び示す。
【0105】
本例では、反射参照面207は固定されている。
【0106】
干渉顕微鏡は、本例では、参照アームに配置された折り返し反射面402と、軸方向z
rと横方向(
図4Cの例ではy
r)のうちの一方および/または他方に、前記折り返し反射面を移動する手段406、408とを含み、変位手段406、408は、例えば、1つの圧電アクチュエータまたは2つの圧電アクチュエータを含む。
【0107】
この特定の配置によって、折り返し反射面の異なる位置についてセンサで取得される複数の一次元干渉像から、各々の一次元断層像を得ることが可能である。
【0108】
折り返し反射面402を移動させることにより、参照面207を振動させる必要がないまま、一次元断層像を取得することが可能となる。これには、例えば反射参照面を移動させるとき、特に
図4Cに示すように参照面が第2の顕微鏡対物レンズ203の焦平面にあるときに、参照アームから来る光の光度が反射参照面上の不純物に起因するような変動を生じるリスクを抑える利点がある。
【0109】
さらに、反射参照面207の変位を排除することで、装置の全体的な大きさをさらに抑えることが可能である。
【0110】
図4A~
図4Cに示す例では、トモグラフィマイクロスコピー装置は、前記第1の顕微鏡対物レンズ202の光軸zと平行な方向に、焦線を軸方向に移動させる手段をさらに含む。これには、本明細書による方法を用いて、物体10の複数のen-face画像を異なる奥行きで撮像するために、ピント面を移動させることを含む。その後、複数のen-face画像から、観察対象となる物体の三次元像を作成することができる。
【0111】
図4A~
図4Cに示すように、焦線を軸方向に移動させるための手段は、第1の顕微鏡対物レンズ202とビームスプリッタ204とを含むアセンブリ209と一体で、第1の顕微鏡対物レンズ202の光軸zと平行な方向に、変位の手段を含んでいてもよい。このような構成は、軸方向への走査時に、移動させる重量を最小限に抑えつつ、干渉面とピント面とを同時かつ一体的に移動させることができる点で都合がよい。これにより、変位の速度、ひいては取得の速度を最大にすることが可能になる。
【0112】
もちろん、図示していない焦線を軸方向に移動させるための他の手段を想定することができる。
【0113】
例えば、非限定的な方法で、焦線を軸方向に移動させるための手段は、第1の顕微鏡対物レンズ202と焦線を走査するための装置235、237とを含むアセンブリと一体の変位のための手段、あるいは、第1の顕微鏡対物レンズ202を含み、参照アームの折り返し反射面402が存在する場合(
図4C)はこれを含むか、干渉顕微鏡201のすべての要素を含むアセンブリを含んでいてもよい。
【0114】
上で引用した例では、第1の顕微鏡対物レンズ202に、第2の顕微鏡対物レンズ203が存在する場合にはこれについても、浸漬型顕微鏡対物レンズが選択されると都合がよい。実際、これらの例では、干渉面の変位とピント面の変位は一体であり、研究対象10の屈折率を第1の顕微鏡対物レンズが浸漬されている媒体の屈折率に合わせることで、これらを一致させるのに役立つ。
【0115】
他の例(図示せず)によれば、焦線を軸方向に移動させるための手段は、一方では第1の顕微鏡対物レンズ202から独立した変位手段、他方では第2の顕微鏡対物レンズ203が存在する場合にはこれと反射参照面207とで形成されたアセンブリから独立した変位手段を含んでいてもよい。また、焦線を軸方向に移動させるための手段は、一方では第1の顕微鏡対物レンズ202から、他方では参照アームに配置された折り返し反射面402から独立した変位手段を含んでいてもよい(
図4C)。
【0116】
これらの例では、干渉面の変位とピント面の変位は別々であり、2つの面を、これらが一致するように異なる量だけ移動させることが可能である。
【0117】
本出願人はさらに、特に
図4A~
図4Cに示すような焦点線の一方向走査のための装置の反射面235が顕微鏡対物レンズ202の入射瞳と光学的に共役でない場合、走査時に光路長差(または位相シフト)が発生し、これによって完全に平坦な面に対して光路長差ゼロの表面(干渉面)の変形が生じることを示している。その結果、開口数が大きな(通常0.3~0.8)レンズを使用する事実により、その部分に対するピント面が平坦で、被写界深度が大きくないため、形成されるen-face画像をフィールド全体で完全に鮮明な像にすることができない。
【0118】
焦線を走査するための装置によって導入された位相シフトを補償し、干渉面とピント面とを一致させるために、本明細書によるマイクロスコピーには、複数の一次元断層像の各々の像に対して、反射参照面207(
図2)または前記折り返し反射面402(
図4C)の追加の軸方向変位を導入することをさらに含んでもよい。
【0119】
したがって、
図5A~
図5Cは、焦線の一方向走査の一例を時間の関数として示す図(
図5A)と、焦線を
図5Aに示す走査に従って横方向に移動させたときの干渉面の断面の2つの例を補償ありの場合と補償なしの場合で示す図(
図5B、
図5C)である。
【0120】
図6Aおよび
図6Bは、試料におけるコヒーレンス面(610)および集束面(612)の一例を補償ありの場合と補償なしの場合で示す図である。
図6Aおよび
図6Bの例では、反射参照面207を移動させているが、折り返し反射面を移動させても所望の効果は同じであろう。
【0121】
より正確には、
図5Bの例では、
図5Aに示した走査に従って焦線を横方向に移動させた場合の干渉面を曲線510で表している。焦線の位置y=0に対して奥行き100μmで、光路長差ゼロの位置を示す。
図5Bに示すように、補償用の位相シフトを適用しない場合、干渉面は実質的に放物線状である。例えば曲線512によって
図5Bに示す反射参照面の軸方向位置の変動による補償があれば、曲線514で示す干渉面は実質的に平坦であり、ピント面と一致する。
【0122】
図6Aおよび
図6Bに示すように、反射参照面207は、走査ミラー235の変位時に位相シフトを導入するように、例えば圧電トランスデューサ405によって動的に駆動され、干渉計の光路長差ゼロの位置を顕微鏡対物レンズ202の光軸に実質的に垂直な面612において物体のレベル(曲線610)で維持できるようにする。
図6Aおよび
図6Bは、特に走査ミラーの3つの位置(1、2、3)を示し、これらは、干渉面(光路長差ゼロの表面)の平坦度を補正するための参照面の3つの位置に関連している。
【0123】
圧電トランスデューサ405は、周波数が走査ミラー235の周波数に等しく、振幅と形状が、焦線の位置の関数として、対物レンズの光軸に垂直な面に対する光路長差ゼロ位置からの偏差の振幅と形状に応じて較正される法則に従うことが可能である。圧電トランスデューサに適合した法則を適用するために、この偏差をあらかじめ評価することができる。この偏差は、試料とは無関係であり、顕微鏡対物レンズ202に対する走査ミラー235の位置にのみ依存する。よって、適用される法則が理論的または経験的に決定されると、それ以上の調整は必要ない。
【0124】
図5Cに示すように、圧電トランスデューサ207の制御と調整を単純化するために、走査ミラー237の変位時にいくつかの動作点を有する、段階的に変化する位相シフト520を導入することも可能である(圧電トランスデューサの段階的な制御)。これらの動作点は、像の鮮明さの観点から(したがって顕微鏡対物レンズの被写界深度との関係で)(顕微鏡対物レンズ202の光軸に沿って)許容可能であると考えられる高さの直方体524に干渉プロービングを維持するように選択される。
【0125】
図7は、試料のin vivo画像710を示す。この画像は、本明細書による例示的な方法によって、補償なしで得られたものである。画像710は、25歳の男性の手の甲から形成された試料を用いて、1.2×1.2mm
2のフィールドで、周波数7Hzで走査ミラー237を走査して得られる。
【0126】
画像710の領域712および714では、顆粒層(細胞あり)を観察することができ、領域716では、角質層(細胞なし)を観察することができる。これらの層は、物理的に異なる深さにある。この画像は、実際に観察できる表面である干渉面が、必ずしも完全に平坦とはかぎらないことを明確に示している。
【0127】
補償は、これらの領域を分離するのに役立つ。
【0128】
このように、画像720および730は、それぞれ2つの奥行きにおいて干渉面がピント面と一致するように補償して得られる、同一フィールドの画像に対応する。よって、画像化された2つの領域は、角質層720と顆粒層730である。
【0129】
この補償は、
図5B(512)に示すものと同様の法則に従って、参照面(スライドガラス)を7Hzで振動させることで得られる。この補償信号に高周波(10kHz)の正弦波振動を加えることで、一次元断層像を得ることができる。
【0130】
多数の例示的な実施形態を通じて説明したが、本明細書によるライン走査型光干渉断層撮影マイクロスコピー用の方法および装置は、当業者にとって明らかな変形、改変および改良を含み、これらの変形、改変および改良は、後に続く請求項によって定められる本発明の範囲の一部を形成することが理解されよう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0131】
【文献】D. Huang et al., “Optical coherence tomography” Science 254(5035), 1178-1181 (1991)
【文献】A. F. Fercher et al. "Optical coherence tomography - principles and applications”, Reports on Progress in Physics 66 (2003) 239-303
【文献】J. A. Izatt, et al., “Optical coherence microscopy in scattering media”, OPTICS LETTERS / vol. 19, no. 8 / April 15 (1994)
【文献】Y. Chen et al. "High-resolution line-scanning optical coherence microscopy" Optics Letters, vol. 32, no. 14, 1971 - 1973 (2007)