(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】新規なラクトバシラスプランタルム菌株、菌株由来多糖体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230829BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20230829BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230829BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230829BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230829BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20230829BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230829BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20230829BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230829BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230829BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230829BHJP
C08B 37/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 E ZNA
C12P19/04 C
C12N5/0783
C12N5/0786
A23L33/135
A61K31/715
A61K35/17
A61K35/747
A61P37/02
A61P31/00
A61P37/04
A61P35/00
C08B37/00 P
(21)【出願番号】P 2022542386
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2021000351
(87)【国際公開番号】W WO2021141473
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0003493
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 14337BP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522275407
【氏名又は名称】イミュノバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イム シンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ ガリマ
(72)【発明者】
【氏名】パク スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ アミット
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511856(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1761186(KR,B1)
【文献】特表2012-533319(JP,A)
【文献】特開2016-155851(JP,A)
【文献】特開2018-090605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0307794(US,A1)
【文献】Microbial Cell Factories, 2012, 11:149, pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
C12P 19/04
A61K 35/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
KCTC 14337BPの寄託番号を有するラクトバシラスプランタルムIMB19菌株(Lactobacillus Plantarum)。
【請求項2】
免疫賦活活性を有する請求項1に記載の菌株由来の莢膜多糖体(Capsular polysaccharide)
であって、下記化学式Iで表示される多糖体を含む、莢膜多糖体、
[化学式I]
-[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]
n
-
前記化学式Iにおいて、
A及びDは、ガラクトース(Galactose)であり、
B、C、E、G及びHは、ラムノース(Rhamnose)であり、
Fは、N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)であり、
Iは、ブドウ糖であり、
nは、1以上の整数である。
【請求項3】
下記化学式Iで表示される多糖体:
[化学式I]
-[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]
n-
前記化学式Iにおいて、
A及びDは、ガラクトース(Galactose)であり、
B、C、E、G及びHは、ラムノース(Rhamnose)であり、
Fは、N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)であり、
Iは、ブドウ糖であり、
nは、1以上の整数である。
【請求項4】
前記A及びDのいずれか一つ以上のガラクトースがリン酸化されたことを特徴とする、請求項3に記載の多糖体。
【請求項5】
前記Aの1位の炭素の水酸化基(-OH)がリン酸化されたことを特徴とする、請求項4に記載の多糖体。
【請求項6】
前記Dの6位の炭素の水酸化基(-OH)がリン酸化されたことを特徴とする、請求項4に記載の多糖体。
【請求項7】
nは2以上であり、反復単位のAとDがリン酸ジエステル結合(phosphodiester linkage)で連結されたことを特徴とする、請求項3に記載の多糖体。
【請求項8】
前記化学式Iにおいて、
DとB、及びBとIは、α-1,3-グリコシド結合で連結され、
IとFは、β-1,6-グリコシド結合で連結され、
FとG、GとC、CとE、及びEとHは、α-1,2-グリコシド結合で連結され、
HとAは、α-1,6-グリコシド結合で連結されたことを特徴とする、請求項3に記載の多糖体。
【請求項9】
下記化学式IIの構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の多糖体:
[化学式II]
【請求項10】
(a)請求項1に記載の菌株を培養する段階;及び
(b)培養された菌株から莢膜多糖体を取得する段階を含む、請求項3に記載の多糖体の生産方法。
【請求項11】
請求項1に記載の菌株又は請求項3~9のいずれか一項に記載の多糖体を有効成分として含む免疫調節用組成物。
【請求項12】
前記免疫調節は、免疫の増強であることを特徴とする、請求項11に記載の免疫調節用組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の菌株又は請求項3~9のいずれか一項に記載の多糖体を有効成分として含む、腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項14】
前記腫瘍は、黒色腫、乳癌、腎臓癌、肺癌、膀胱癌、及び直膓癌からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項13に記載の薬学組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の菌株又は請求項3~9のいずれか一項に記載の多糖体を有効成分として含む免疫増強用食品組成物。
【請求項16】
(a)抗原提示細胞(antigen presenting cell)に請求項1に記載の菌株又は請求項3~9のいずれか一項に記載の多糖体を処理してプライミングする段階;及び
(b)前記プライミングされた抗原提示細胞をT細胞と共培養(co-incubation)する段階を含む炎症性T細胞の製造方法。
【請求項17】
前記抗原提示細胞は、マクロファージ、B細胞、樹状細胞(dendritic cell;DC)、ランゲルハンス細胞からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記炎症性T細胞は、細胞傷害性T細胞又はヘルパーT細胞であることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項19】
マクロファージに請求項1に記載の菌株又は請求項3~9のいずれか一項に記載の多糖体を処理してマクロファージをM1表現型マクロファージに分化する段階;及び
前記分化されたM1表現型マクロファージを取得する段階を含むM1表現型マクロファージの製造方法。
【請求項20】
前記M1表現型マクロファージは、MHC I、MHC II、CD68、iNOS2、及びCD40からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の発現が上方調節されたことを特徴とする、請求項19に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IMB19菌株、菌株由来多糖体及びその用途に関し、特に、免疫刺激及び抗腫瘍活性を有する寄託番号KCTC 14337BPのラクトバシラスプランタルムIMB19菌株及び該菌株由来の多糖体、及びその免疫調節、抗腫瘍及び感染性疾患治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類は、免疫システムと絶え間なく相互作用する一連の微生物を保有している。共生微生物は宿主と共生関係を結び、消化、行動、免疫システムの成熟のような様々な過程において宿主と相互作用する(Cerf-Bensussan N,Gaboriau-Routhiau V.The immune system and the gut microbiota:friends or foes? Nat Rev Immunol 2010;10(10):735-44.)。同様に、かびは人体に存在し、宿主の免疫システムに影響を与える(Wheeler ML,Limon JJ,Underhill DM.Immunity to Commensal Fungi:Detente and Disease.Annu Rev Pathol 2017;12:359-85.)。先天性免疫細胞は、Toll様受容体(Toll-like receptors,TLRs)のようなパターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)により、多糖体を含むかび細胞表面の様々な病原菌関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns,PAMPs)を検出する。信号を探知すると、先天性免疫細胞が遺伝子発現プロファイル(profile)を変更し、後天的免疫を調停するためにサイトカインのような免疫信号分子を生産する(Iliev ID,Leonardi I.Nat Rev Immunol 2017;17(10):635-46.,Underhill DM,Iliev ID.Nat Rev Immunol 2014;14(6):405-16.及びBrubaker SW,Bonham KS,Zanoni I,et al.Annu Rev Immunol 2015;33:257-90.)。
【0003】
WHOは、プロバイオティクスを適切な量で投与する場合に、宿主の健康に役立つ生きている微生物と定義する(Nat Rev Gastroenterol Hepatol11,506-514(2014))。プロバイオティクスは、宿主の腸内微生物相(gut microflora)に対する補充剤の役割を担い、腸障壁機能を改善し、宿主の兔疫体系を調節することに効果的なものと報告された(Microb Ecol Health Dis26,25877(2015))。プロバイオティクスの大部分は、ファーミキューテス門(phylum Firmicutes)に属し、これは、最大の単一バクテリア門であり、これらの大部分は、“G+C”含有量が低いグラム陽性菌であり、主にBacilli及びClostridiaグループに分類される。ラクトバシラス種(Lactobacillus species)は、ラクトバシラセエ(Lactobacillaceae)科に属する乳酸菌(LAB)である。ラクトバシラス(Lactobacillus)は、明確な生態学的地位を有する広く知られた微生物群集である。種々の乳酸菌は、伝統的に、牛乳、乳製品、発酵食品、ソーセージのような食品と関連していることが知られている。ラクトバシラスは、FDAによってGRAS(Generally Regarded As Safe)と認定された微生物グループであり、食品及びその他の産業分野において広く用いられている。ラクトバシラスは、条件嫌気性、非胞子形成、非運動性、棒形、グラム陽性細菌に分類され、一般に、カタラーゼ陰性と見なされる。ラクトバシラスは、同種発酵(homofermentative)又は異種発酵(heterofermentative)特性を示すことができ、一次発酵の最終産物として乳酸を生産する(Front Cell Infect Microbiol 2,86(2012))。ラクトバシラスは、滑らかで膨らんだコロニーを示す。
【0004】
LAB同士の類似な生化学及び形態学的特性のため、個別菌株を同定するためには分子的同定方法が必要である。様々な乳酸菌が食品、特に発酵食品において分離及び特性化されている。発酵は一般に、微生物に起因する生化学的変化を意味する。韓国の伝統食品であるキムチは、主に白菜を発酵させた食べ物であり、栄養健康的に有益な効果を示す(Crit Rev Food Sci Nutr34,175-203(1994))。キムチには独特の微生物群集が存在していると知られている。様々な報告によれば、主に乳酸菌がキムチに存在することが知られており、Weisellia、Lactobacillus、及びLeuconostocは優占種として、特に、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株が最優占種として知られている(Food Sci Biotechnol19,641-646(2010))。ラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)は、菌株特異的プロバイオティックプロファイル及び食品産業において技術的応用によって最も多く研究された菌株の一つである。キムチ微生物群の大部分は培養が可能であり(Int J Food Microbiol102,143-150(2005))、それらが健康上に及ぼす利点を研究するために個別微生物分離が必須である。
【0005】
一方、癌の成長及び増殖は、宿主免疫反応によって厳格に調節される。腫瘍細胞の成長及び増殖のためには、腫瘍細胞の初期死滅を誘導する免疫体系の監視を回避できる必要がある。腫瘍細胞は、サイトカインの分泌、細胞表面分子の発現など、様々な経路を通じて免疫抑制性腫瘍微細環境を形成して免疫システムを回避することによって成長及び増殖する。このような免疫回避機序を対象にする癌治療戦略として、免疫体系を誘導又は強化させようとする様々な努力が試みられた。腫瘍免疫治療法は、腫瘍が獲得した免疫抑制又は免疫回避機序を克服するために、兔疫体系の腫瘍認知能力又は破壊能力を回復又は強化させる治療方法であるといえる。2011年にイピリムマブ(ipilimumab)が悪性黒色腫患者を成功的に治療した免疫治療剤として開発されて以来、ニボルマブ、ペンブロリズマブのような様々な免疫治療剤が開発されてきている。
【0006】
このような腫瘍免疫治療療法のツールとして、腸内微生物群(gut microbiota)の重要性及びその応用に対する報告及び事例が増加している。腸内微生物群は、宿主の局所及び全身免疫反応を形成するために必須の役割を担う(Science330,1768-1773(2010)、Cell148,1258-1270(2012))。腸内微生物群の多様性及び構成は、化学療法に対する反応性にも影響を及ぼすことが見られた(Cancer Immunol Immunother 55,1470-1479(2006);Science342,971-976(2013))。特に、特定の共生微生物は、自発的な抗腫瘍免疫の活性化と関連することが明らかにされ、実験(Science350,1084-1089(2015)、Science350,1079-1084(2015))及びヒト癌(Science359,91-97(2018)、Nature453,620-625(2008))において免疫治療剤の治療効能にシナジー効果を示すことが知られている。したがって、腸内微生物群のような特定菌株が粘膜外及び遠距離腫瘍の進行にも影響を及ぼし得るという点が明確にされつつある。このような様々な報告に基づき、腸内微生物群の変更は、効果的で且つ実行可能な臨床治療の一つのオプションとして見なされている。現在、大部分の研究は、プロバイオティクスの観点において特定菌株又は菌株の集団が宿主の免疫システム又は抗腫瘍免疫に及ぼす包括的な効果を立証したが、このような効果を示す具体的な菌株由来の有効成分及びその信号経路のようなメカニズムに関する情報はほとんど明らかにされたことがない。
【0007】
特に、このような微生物又はその代謝産物などを患者の治療に利用するために、一部の患者は過剰活性化された免疫反応(すなわち、アレルギー又は自己免疫疾患)を抑制しなければならないのに対し、一部の患者は免疫系を強化(すなわち、癌又はウイルス感染)させる必要がある。例えば、Th17-誘導プロバイオティクス菌であるビフィズス菌をリウマチ性関節炎動物モデルに投与した時に関節炎症状を悪化させた(Tze Guan Tan,113(50):E8141-E8150,2016)。したがって、有益な微生物の同定及びその作用因子のメカニズムを明らかにすることは、治療学的に非常に重要である。
【0008】
このような技術的背景下で、本発明者らは、微生物由来の多糖体の成分、構造、分子量などと免疫調節機能との明確な相関関係及びメカニズムを明らかにしようと鋭意努力した結果、韓国固有の食べ物であるキムチから顕著に高い免疫賦活活性を有する新規なラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)に属する菌株を同定し、韓国生物資源センターにKCTC 14337BPの寄託番号で寄託した。また、前記新規菌株、ラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)KCTC 14337BPを給与する場合に、エフェクターT細胞を顕著に増加させ、Tregの生成を抑制し、宿主内で免疫システムを刺激し、腫瘍の成長及び増殖を抑制することを確認した。
【0009】
さらに、本発明者らは、新規な菌株の同定及び特性の他にも、前記新規菌株の莢膜多糖体、及びその特定の構造を有する分画(CPS-100)が、免疫刺激及び増進効果を示す有効分子であることを確認し、CD8+ T細胞機能の活性化、CPS腫瘍内マクロファージ浸潤増加、マクロファージの炎症性表現型への分化/再プログラミングのような様々なメカニズムで抗腫瘍免疫反応を刺激することによって、腫瘍の成長を顕著に抑制できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本背景技術部分に記載された前記情報は、単に本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであり、したがって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に既に知られた先行技術を形成する情報が含まれなくてもよい。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、免疫刺激活性を有する新規な菌株を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、免疫刺激活性を有する前記菌株由来の多糖体を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記菌株及び菌株由来多糖体の免疫調節用途、及び/又は腫瘍又は感染性疾患の予防、改善又は治療用途を提供することにある。
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、KCTC 14337BPの寄託番号を有するラクトバシラスプランタルムIMB19菌株(Lactobacillus plantarum IMB19)を提供する。
【0015】
本発明は、また、免疫賦活活性を有する前記菌株由来の莢膜多糖体を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記菌株を培養する段階及び前記培養された菌株から莢膜多糖体を取得する段階を含む、免疫賦活活性を有する莢膜多糖体の生産方法を提供する。
【0017】
本発明は、また、下記化学式Iで表示される多糖体を提供する:
[化学式I]
-[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]n-
前記化学式Iにおいて、
A及びDは、ガラクトース(Galactose)であり、
B、C、E、G及びHは、ラムノース(Rhamnose)であり、
Fは、N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)であり、
Iは、ブドウ糖であり、
nは、1~10の整数である。
【0018】
本発明は、また、前記菌株及び/又は多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物を提供する。
【0019】
本発明は、また、前記菌株及び/又は多糖体を有効成分として含有する腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記菌株及び/又は多糖体を有効成分として含有する免疫増進用食品組成物を提供する。
【0021】
本発明は、また、前記菌株及び/又は多糖体を対象に投与する段階を含む腫瘍又は感染性疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0022】
本発明は、また、前記菌株及び/又は多糖体の免疫調節用途、及び/又は腫瘍又は感染性疾患の予防、改善又は治療用途を提供する。
【0023】
本発明は、また、免疫調節用組成物を製造するための前記菌株及び/又は多糖体の用途を提供する。
【0024】
本発明は、また、腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用薬学組成物を製造するための前記菌株及び/又は多糖体の用途を提供する。
【0025】
本発明は、また、免疫増進用食品組成物を製造するための前記菌株及び/又は多糖体の用途を提供する。
【0026】
本発明は、また、抗原提示細胞(antigen presenting cell)にL.plantarum IMB19菌株及び/又は化学式Iの多糖体でプライミングする段階;及び、プライミングされた抗原提示細胞をT細胞と共培養(co-incubation)する段階を含む炎症性T細胞の製造方法を提供する。
【0027】
本発明は、また、マクロファージにL.plantarum IMB19菌株及び/又は化学式Iの多糖体を処理してM1表現型マクロファージに分化する段階;及び、前記分化されたM1表現型マクロファージを取得する段階を含むM1表現型マクロファージの製造方法を提供する。
【0028】
本発明は、また、前記方法で製造された炎症性T細胞及び/又は前記方法で製造されたM1表現型マクロファージを有効成分として腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用細胞治療剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】キムチ由来菌株処理時に脾臓細胞の炎症性又は抗炎症サイトカイン数値を示すものである。
【0030】
キムチ懸濁液の段階的希釈液を作り、MRSアガープレートにストリークし、37℃で48時間培養した後に14個のコロニーから菌株を獲得し、MRSブロスで24時間さらに培養した。脾臓細胞とそれぞれの菌株を1:10に混合し、37℃、5%CO2条件で48時間培養した。脾臓細胞の活性化は、ELISAによって培養上澄液のサイトカイン数値を測定して評価した。前記データは、平均±SEM値である(n=2)。統計的有意性は、一元分散分析(one-way ANOVA)によってMockに対して計算された。*p<0.5、**p<0.01、*p<0.001
【0031】
【
図2】L.plantarum IMB19菌株の微生物学的及び生物学的特性を示す図である。
【0032】
図2のA:L.plantarum IMB19菌株のTEM写真を示すものである。矢印は、細胞壁周囲の莢膜層を示す。
【0033】
図2のB:5%ヒツジ血液アガーで48時間培養した後、L.plantarum IMB19菌株の溶血活性、陽性対照群:Bacillus cereus ATCC27348
【0034】
図2のC:L.plantarum IMB19菌株に対するゼラチン加水分解試験。陽性対照群:B.cereus ATCC11778
【0035】
【
図3】L.plantarum IMB19の系統図(Cluster dendrogram)を示すものである。
【0036】
系統樹(phylogenetic tree)は、L.plantarum菌株間の差に基づいて構築された。平均ヌクレオチド指数(Average nucleotide index,ANI)は、OrthANIアルゴリズムを計算した。距離は、ゲノムの差に正比例する。
【0037】
【
図4】様々なラクトバシラスプランタルム菌株のTh17細胞生成を確認した結果である。
【0038】
未成熟(naive)CD4+ T細胞に対するL.plantarum IMB19、L.plantarum 3105、L.plantarum 3106、L.plantarum 3107の効果を示した流動細胞分析データである。L.plantarum IMB19でプライミングされた樹状細胞を未成熟CD4+ T細胞、抗CD3(10ng/ml)及びIL-2(100U/ml)と共に培養した。
【0039】
図4のAにおけるiは、Th17細胞の生成を描写するFACSプロットである。細胞は、生きている(live)CD4+RORγ+ T細胞でゲートされた。
【0040】
図4のAにおけるiiは、生きているライブ(live Live)CD4+ RORγ+ T細胞でゲートされたTh17細胞に対する平均細胞数を示す棒グラフである。
【0041】
図4のBは、ライブCD4+ T-bet+ T細胞でゲートされたTh1細胞である。
【0042】
図4のCは、ライブCD4+GATA3+ T細胞でゲートされたTh2細胞である。
【0043】
図4のDは、ライブCD4+Foxp3+調節T細胞でゲートされたTregである。
【0044】
データは、平均±SDで示し、統計的有意性は、一元分散分析(one-way ANOVA)によってMockに対して計算された。**p<0.01
【0045】
【
図5】L.plantarum IMB19のTreg抑制及びTh17細胞誘導能を示すものである。
【0046】
図5のAにおけるiは、Th17細胞の生成に対するL.plantarum IMB19の効果を示す代表的なFACSプロット及び棒グラフである。L.plantarum IMB19プライミングされた樹状細胞を未成熟CD4+ T細胞、抗CD3(0.1ug/ml)、TGF-β(0.5ng/ml)、IL-6(2ng/ml)、IL1-β(2ng/ml)、IL-2(100U/ml)、抗IL4(10μg/ml)及び抗IFNγ(10μg/ml)と共に共同培養した。細胞は、ライブCD4+RORγ+ T細胞でゲートされた。
【0047】
図5のAにおけるiiは、L.plantarum IMB19で生成されたTh17細胞においてインターロイキン-17のレベルを示す代表的なFACSプロット及び棒グラフである。細胞は、ライブCD4+RORγ+IL-17+ T細胞でゲートされた。
【0048】
図5のBは、試験管内Treg細胞生成に対するL.plantarum IMB19の抑制効果を示す代表的なFACSプロット及び棒グラフである。L.plantarum IMB19プライミングされた樹状細胞は、抗CD3(0.1ug/ml)、IL-2(100U/ml)及び様々な濃度のTGF-βと共に未成熟CD4+ T細胞と共同培養した。データは、平均±SEMで表示した。統計的有意性は、一般の一元分散分析で分析された。**p<0.01、***p<0.001
【0049】
【
図6】L.plantarum IMB19によって強化されたCD8+ T細胞活性化を用いた抗腫瘍免疫反応を示すものである。
【0050】
図6のAは、脾臓細胞-バクテリア共同培養上澄液のELISAを用いたサイトカイン分析結果である。
【0051】
図6のBは、L.plantarum IMB19又はL.murinusでプライミングされた脾臓CD11c+樹状細胞及び未成熟CD8+ T細胞の共同培養物から、IFNγ+CD8+ T細胞の定量結果である。
【0052】
図6のCは、L.plantarum IMB19でプライミングされたCD11b+F4/80+腹膜マクロファージ及び未成熟CD8+ T細胞の共同培養物からIFNγ+CD8+ T細胞を定量した結果である。
【0053】
図6のDは、L.plantarum IMB19でプライミングされた脾臓CD11c+樹状細胞、未成熟CD4+ T細胞及び2ng/mlのTGFβの共同培養物からFoxp3+CD4+ T細胞を定量した結果である。
【0054】
前記データは、平均±SEM値であり、Bは、テューキーの(Tukey’s)多重比較と共に一般の一元分散分析で分析された。**p<0.01、****p<0.0001
【0055】
図6のEは、in vivo OVA発現リステリアモノサイトゲネス(LM-OVA)細胞毒成分析を概略的に示すものである。
【0056】
図6のFは、LM-OVAで感染されたマウスにおいてOVA+脾臓細胞に対するL.plantarum IMB19媒介されたCD8+ T細胞特異的細胞傷害性を示すものである。
【0057】
図6のGは、in vivo B16.F10黒色腫マウスモデルを概略的に示すものである。
【0058】
図6のHは、L.plantarum IMB19又はL.murinusで処理又は非処理されたC57/BI6無菌(germ-free)マウスにおいてB16.F10黒色腫成長動力学(B116.F10 melanoma growth kinetics)を示すものである。
【0059】
図6におけるiは、L.plantarum IMB19又はL.murinusで処理又は非処理されたC57/BI6SPFマウスにおいてB16.F10黒色腫成長動力学(B116.F10 melanoma growth kinetics)を示すものである。
【0060】
前記データは、平均±SEM値であり、
図6のFは、非パラメトリック両側検定(non-parametric two tailed t-test)であり、
図6のH及びIは、ダネットの(Dunnet’s)多重比較と共に二元分散分析で分析された。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
【0061】
【
図7】L.plantarum IMB19のCD8+ T細胞に対する容量依存的効果を示すものである。
【0062】
図7のA及びBは、異なる比率のL.plantarum IMB19でプライミングされた脾臓(
図7のA)又はmLN(
図7のB)CD11c+樹状細胞と未成熟CD8+ T細胞の共同培養物においてIFNγ+CD8+ T細胞を定量化したものである。
【0063】
図7のCは、100ng/mlのgp-100の存在下に、異なる比率のL.plantarum IMB19でプライミングされた脾臓CD11c+樹状細胞と未成熟pmel TCR移植CD8+ T細胞の共同培養物においてIFNγ+CD8+ T細胞を定量化したものである。データは、平均±SEMであり、テューキーの多重比較と共に一般の一元分散分析で分析された。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001
【0064】
【
図8】L.plantarum IMB19のインターロイキン-6生産を用いた調節T細胞の成長抑制を示すものである。
【0065】
図8のAは、異なるTGFβ濃度においてL.plantarum IMB19プライミングされた脾臓CD11c+樹状細胞と未成熟CD4+ T細胞の共同培養物においてFoxp3+CD4+ T細胞を定量化したものである。
【0066】
図8のBは、2ng/mlのTGFβ濃度においてL.plantarum IMB19プライミングされた脾臓CD11c+樹状細胞と未成熟CD4+ T細胞の共同培養物においてサイトカインを定量化したものであり、総CD4+ T細胞でゲートされた。
【0067】
図8のCは、IL-6-/-脾臓DC及び0.01ng/mlのTGFβ濃度においてL.plantarum IMB19プライミングされた脾臓CD11c+樹状細胞と未成熟CD4+ T細胞の共同培養物においてFoxp3+CD4+ T細胞を定量化したものである。
【0068】
データは、平均±SEMであり、テューキーの多重比較と共に一般の一元分散分析で分析された。***p<0.001、ns:有意でない
【0069】
【
図9】微生物多様性の変化無しでL.plantarum IMB19が腫瘍免疫に及ぼす効果を示すものである。
【0070】
図9のAは、
図6のHにおけるL.plantarum IMB19を給与した腫瘍保有マウスの糞便サンプルに現れた門(phylums,%)の系統発生学的分析結果である。
【0071】
図9のB及びCは、
図6のHにおけるL.plantarum IMB19を給与した腫瘍保有マウスの糞便サンプルに現れたバクテリアβ-多様性のアルファ(α)多様性分析(B)及び主座標分析(Principal coordinates analysis)を示すものである。データは、2回の独立試験値を示す。
【0072】
【
図10】L.plantarum IMB19の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0073】
図10のaは、L.plantarum IMB19バクテリア群集であり、矢印は個別バクテリアを示す。
【0074】
図10のbは、L.plantarum IMB19であり、矢印は、細胞壁周囲の厚い莢膜層(Capsular layer)を示す。
【0075】
【
図11】HF処理無しで(a)又はHF処理して(b)試料を脱リン酸化させたL.plantarum IMB19から抽出されたCPS由来のアセチル化されたメチルグリコシドのGC-MSプロファイルを示すものである。“i”は不純物を表す。
【0076】
【
図12】L.plantarum IMB19から抽出されたCPSのアセチル化2-(-)-オクチル誘導体(2-(-)-octyl derivatives)(a)、ラムノース(b)、ブドウ糖(c)及びガラクトースアセチル化2-(-)-オクチルグリコシド標準(d)のGC-MSプロファイルを示すものである。“i”は不純物を表す。
【0077】
【
図13】未精製CPSをイオン交換クロマトグラフィーで精製して得た分画の陽性子スペクトルを示すものである(600MHz、298K):CPS(a)、CPS-10(b)、CPS-100(c)、CPS-200(d)、CPS-400(e)、CPS-700(f)及びCPS7-1000(g)。括弧中の数字は、28mgの未精製CPSを基準に各分画の収率(mg/mg)を表す。
【0078】
【
図14】L.plantarum IMB19の莢膜多糖体に対して記録されたHSQCスペクトルの拡張を示すものである(600MHz、310K):(a)アノマー領域(anomeric region)の拡張;(b)カルビノール領域(carbinolic area)の拡張。灰色密度は“CH
2”炭素に該当し、“*”は還元形態(Galα及びGalβ)でガラクトースに付着した反復単位の糖のマイナーなアノマー信号(minor anomeric signals)を示すものである。反復単位の構造は
図20を参照。ラベルは表3を参照。
【0079】
【
図15】HFを処理してサンプルを脱リン酸化した後、L.plantarum IMB19から抽出したCPS-400のアセチル化メチルグリコシドのGC-MSプロファイル。“i”は不純物を表し、MurAは、バクテリアのペプチドグリカンの構成要素であるムラミン酸(muramic acid)を表す。
【0080】
【
図16】L.plantarum IMB19の莢膜多糖体、CPS-100に対して記録されたTOCSU(黒)及びCOZY(青緑/赤)スペクトルの拡張を示すものである(600MHz、310K)。反復単位の構造は
図20を参照。ラベルは表3を参照。
【0081】
【
図17】L.plantarum IMB19の莢膜多糖体、CPS-100に対して記録されたNOESY(黒)及びCOZY(青緑/赤)スペクトルの拡張を示すものである(600MHz、310K)。反復単位の構造は
図20を参照。ラベルは表3を参照。
【0082】
【
図18】L.plantarum IMB19の莢膜多糖体に対して記録されたHSQC-TOCSY(a)及びHMBC(b)NMRスペクトルの拡張を示すものである(600MHz、310K)。反復単位の構造は
図20を参照。ラベルは表3を参照。
【0083】
【
図19】L.plantarum IMB19の莢膜多糖体、CPS-100の一部である残基B-GのH-2陽性子領域を詳細に示すNESY(黒)及びCOZY(青緑/赤)スペクトルの拡張を示すものである(600MHz、310K)。反復単位の構造は
図20を参照。ラベルは表3を参照。
【0084】
【
図20】L.plantarum IMB19の莢膜多糖体、CPS-100の反復単位の構造を示すものである。4は、計算された平均重合度を示す。Dの6’炭素残基の酸素に置換されたリン酸基(P)は、Aの1’炭素と連結されて重合された多糖体の反復単位間AとDのリン酸ジエステル(phosphodiester)結合を表す。
【0085】
【
図21】溶媒単独注入(a);CPS-100(b);CPS-400(c)のHPSECプロファイルを示すものである。13.6及び14.74分におけるピークは、単独注入された溶媒のプロファイル(a)から見られるように、溶媒で誘発されたアーティファクトである。
【0086】
【
図22】CPS-400に対して記録されたNMRスペクトルを示すものである(600MHz、310K):(a)HSQC-TOCSY(黒)及びHSQC(青緑)のオーバーレイ;(b)HMBC(黒)及びHSQC(青緑)のオーバーレイ;(c)HSQC;(d)HSQC-TOCSY;(e)~(h)異なる領域のTOCSYスペクトル。“*”は、未確認されたマイナーモチーフに属する密度。構造単位の標識及び描写は、表4に開示した。
【0087】
【
図23】リビトールGの密度を描写するHSQC-TOCSY(黒色/灰色)及びHSQC(青緑/赤)の拡張を示すものである。G1及びG5からのHSQC-TOCSY相関関係は、灰色点線で立証される。構造単位の標識及び描写は、表4に開示した(600MHz、310K)。
【0088】
【
図24】精製された分画の莢膜多糖体の免疫刺激活性を確認するためにサイトカインのレベルを確認した結果である。脾臓細胞は、
図24に、すなわち、培地(対照群)、CPS分画(CPS-400及びCPS-100、50μg/mL)、全体CPS(50μg/mL)及び脂質多糖体(E.Coli 0111:B4由来LPS、0.1μg/mL)の存在下に脾臓細胞を培養した。サイトカイン生産の評価のために、細胞培養上澄液をELISAで分析した。(a)IFNγ;(b)IL-10;(c)TNF-α;(d)IL-6;(e)IL-12;(f)IFNγの生産に対するCPS-100の容量反応曲線(Dose response curve)。(f)において、EC50(half maximal effective concentration)は3.16μMと計算された。データは、類似の結果の2~3回の独立実験値であり、全ての棒グラフは、平均±SDを示す。*p<0.05、****p<0.0001(多重比較のための事後ダネットの検定(post hoc Dunnet’ test)を用いた一元分散分析);ND、検出無し。
【0089】
【
図25】L.plantarum IMB19及びCPSのCD8+ T細胞の活性化及び腫瘍内浸潤向上を用いた腫瘍成長抑制効果を示すものである。
【0090】
図25のAは、L.plantarum IMB19又はCPSで処理又は非処理されたC57/Bi6 SPFマウスにおけるB16.F10黒色腫成長動力学を示すものである。
【0091】
図25のBは、マウスから分離された腫瘍を示す写真である。
【0092】
図25のC及びDは、L.plantarum IMB19(C)又はCPS(D)処理の開始16~18日後に流動細胞分析で決定された腫瘍浸潤CD8+及びCD4+ T細胞の比率を示すものである。
【0093】
データは平均±SEM値である。データは、ダネットの多重比較を用いた二元分散分析(A)又は非パラメトリック両側検定(non-parametric two tailed t-test)(C-D)で分析された。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001.
【0094】
図25のE及びFは、L.plantarum IMB19(E)又はCPS(F)で処理又は非処理時に、腫瘍浸潤IFNγ+CD8+ T細胞の百分率及び腫瘍浸潤CD8+ T細胞の平均蛍光強度(mean fluorescence intensity,MFI)の量を示すものである。
図25のG及びHは、L.plantarum IMB19(G)又はCPS(H)で処理又は非処理時に、IFNγ+CD4+ T細胞の頻度を示すものである。データは平均±SEM値である。データは、非パラメトリック両側検定(non-parametric two tailed t-test)で分析された。*P<0.05、ns:無意義。
【0095】
【
図26】L.plantarum IMB19及びCPSが腫瘍内調節T細胞集団を変更させないことを示すものである。
【0096】
図26のA及びBは、L.plantarum IMB19(A)又はCPS(B)の処理時に、腫瘍浸潤されたリンパ球内腫瘍浸潤CD4+Foxp3+調節T細胞の百分率を示すものである。データは、非パラメトリック両側検定(non-parametric two tailed t-test)で分析された。*P<0.05、ns:無意義。
【0097】
【
図27】L.plantarum IMB19のEMT乳癌の腫瘍成長抑制活性を示すものである。
【0098】
図27のAは、L.plantarum IMB19処理又は非処理されたBalb/c SPFマウスにおけるEMT-6乳癌成長動力学を示すものである。データは平均±SEMであり、ダネットの多重比較と共に二元分散分析で分析された。*P<0.05、***P<0.001。
【0099】
【
図28】CPSのB16.F10黒色腫において炎症性マクロファージのCPSの腫瘍内浸潤向上活性を示すものである。
【0100】
図28のAは、腫瘍接種40時間後に、CPS処理時のCD45+CD11c+CD11b+腫瘍浸潤マクロファージの数及び百分率を示すものである。
【0101】
図28のB及びCは、CPS処理時に、腫瘍浸潤マクロファージ(B)及び樹状細胞(C)上の活性マーカー、CD11b、MHC I、MHC II、CD86及びCD40を示すものである。
【0102】
図28のDは、CPS処理時に、腫瘍流れ込みリンパ節(Tumor draining lymph nodes)においてCD8+CD69+ T細胞の百分率を示すものである。データは平均±SEMであり、ダネットの多重比較と共に二元分散分析(A)又は非パラメトリック両側検定(non-parametric two tailed t-test)(B)で分析された。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0103】
図28のE及びFは、分離して直後(E)又は24時間のIL-4処理後(F)に、生体外でCPS(10μg/ml)処理されたマウス腹膜マクロファージ上の活性マーカー、MHC I、MHC II、iNOS2、CD68、CD40、CD80、及びCD86を示すものである。
【0104】
図28のGは、腫瘍接種40時間後に分離されたCPS又はPBS処理された腫瘍由来マクロファージにおける豊富化したM1マクロファージ遺伝子シグネチャーをダビッド(DAVID)経路分析で分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
特に断らない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野によく知られており、通常使われるものである。
【0106】
共生微生物がヒトのような宿主の免疫調節反応に深く関与することが知られることにより、免疫増進又は抑制能を有する共生微生物、すなわち、プロバイオティクスに対する研究が活発に行われている。ヒトと進化的に共存する数多い微生物種のうち、免疫調節能力を有するものと明らかにされた微生物種はごく少数に過ぎず、同じ種の微生物においても菌株によって免疫調節活性が顕著に異なるか、ひいては相反する効果を示す。微生物が保有する活性は、各微生物ごとに非常に多様で且つ異なるため、近年、免疫調節能力を有する微生物が生産する有用な代謝産物、又は有効分子のようなポストバイオティクスに対する関心が急増している。特に、マンノース、ベータ-グルカンと微生物由来の多糖体は、宿主の免疫システムに様々な影響を及ぼすものと知られている。しかしながら、微生物由来の多糖体もその種類及び構造によって様々な活性を有し、ザイモサンのような多糖体は、免疫増進及び抑制の両面性を同時に示すこともあることが報告された。したがって、プロバイオティクス由来の多糖体を、対象の免疫調節、特にヒトの臨床的治療用途に使用するためには、各多糖体の免疫調節メカニズムを明らかにすることが非常に重要である。しかしながら、多糖体の構造と免疫調節活性との連関性に対する報告はほとんどなされたことがない。
【0107】
本発明者らは、ポストバイオティクスの観点から、多糖体の構造と免疫調節活性との連関性を明らかにしようと鋭意努力してきており、免疫調節能を示すビフィスズ菌、酵母のような様々な菌株由来の多糖体の構造と免疫調節能の連関性及びメカニズムを明らかにし、特許出願したことがある(大韓民国特許出願第2018-0067535号(登録予定)、第2019-0091908号など)。
【0108】
本発明の一実施例において、本発明者らは、韓国の伝統発酵食品であるキムチから、高い免疫刺激活性を示す新規なラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IMB19菌株を同定し、韓国生物資源センターに寄託した(寄託番号:KCTC 14337BP)。
【0109】
本発明の他の実施例において、先天的免疫システムと適応免疫システムの両方を含むように設計した共同培養システムにおいて、前記菌株が免疫刺激性サイトカイン(例えば、IFN-γ)の増加及び抗炎症サイトカイン(例えば、IL-10)を抑制させ、エフェクターT細胞を顕著に増加させ、Tregの生成を抑制することにより、宿主内で免疫システムを刺激し、腫瘍の成長及び増殖を抑制することを確認した。
【0110】
したがって、本発明は、一観点において、KCTC 14337BPの寄託番号を有するラクトバシラスプランタルムIMB19菌株(Lactobacillus plantarum IMB19)に関する。
【0111】
本発明のラクトバシラスプランタルムIMB19菌株(Lactobacillus plantarum IMB19)は、優れた免疫賦活活性及び抗腫瘍活性を示すことを特徴とし得る。より具体的に、本発明の菌株は、i)ヘルパーT細胞の誘導及びTreg細胞の分化抑制のような炎症性表現型へのT細胞分化誘導、ii)CD8+ T細胞の刺激、活性向上及び腫瘍内浸潤向上、iii)Treg細胞活性抑制、iv)腫瘍内マクロファージ浸潤増加、v)マクロファージの炎症性細胞への活性化、及びM2からM1マクロファージへの再プログラミングのような様々な免疫賦活活性及び/又は抗腫瘍活性を示すことを特徴とし得る。
【0112】
本発明のラクトバシラスプランタルムIMB19菌株(以下、L.plantarum IMB19と略称する。)は、キムチから分離されており、16S rRNA分析、recA増幅/バンド比較及び全体遺伝子配列分析及び系統学的、形態学的、生理学的分析を通じて新規な菌株と同定され、寄託された。
【0113】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、発酵食品、例えば、キムチに由来するものであることを特徴とし得る。
【0114】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は小さくて滑らかな円形の半透明なコロニーを示すことを特徴とし得る。
【0115】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、無鞭毛性(non-flagellated)であることを特徴とし得る。
【0116】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、棒形(rod-shaped)コロニーを示すことを特徴とし得る。
【0117】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、莢膜層(capsular layer)を有することを特徴とし得る。
【0118】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、非溶血性(non-hemolytic)又はγ-溶血性(γ-hemolytic)であることを特徴とし得る。
【0119】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、ゼラチナーゼ活性に陰性であることを特徴とし得る。
【0120】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、ヒスタミン(histamine)、カダベリン(cadaverine)、チラミン(tyramine)及び/又はプトレシン(putrescine)のような生体アミン(biogenic amine)を生成しないことを特徴とし得る。
【0121】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、カナマイシンに耐性を有することを特徴とし得る。
【0122】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、免疫増進及び/又は抗腫瘍活性を有することを特徴とし得る。より具体的な例に、前記L.plantarum IMB19菌株は、i)ヘルパーT細胞の誘導及びTreg細胞の分化抑制のような炎症性表現型へのT細胞分化誘導、ii)CD8+ T細胞の刺激、活性向上及び腫瘍内浸潤向上、iii)Treg細胞活性抑制、iv)腫瘍内マクロファージ浸潤増加、v)マクロファージの炎症性細胞への活性化及びM2からM1マクロファージへの再プログラミングのような様々な免疫増進及び抗腫瘍活性を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0123】
本発明において、前記L.plantarum IMB19菌株は、腫瘍の成長を抑制することを特徴とし得る。
【0124】
本発明の一実施例において、前記菌株を給与した動物腫瘍モデルにおいて、CD8+ T細胞の刺激、マクロファージでの分化、表現型誘導、Tregの抑制、免疫細胞の腫瘍浸潤向上などの様々なメカニズムを通じて顕著な免疫増進効果及び抗腫瘍活性を示すことを確認した。
【0125】
また、本発明の他の実施例において、CPSを処理時に腫瘍の成長が顕著に抑制されることを確認した。
【0126】
したがって、本発明は、他の観点において、前記菌株及び/又はその培養液を有効成分として含有する免疫調節用組成物に関する。
【0127】
本発明は、さらに他の観点において、前記菌株及び/又はその培養液を対象に投与する段階を含む免疫調節方法に関する。
【0128】
本発明は、さらに他の観点において、前記菌株及び/又はその培養液の免疫調節用途に関する。
【0129】
本発明は、さらに他の観点において、免疫調節用組成物を製造するための前記菌株及び/又はその培養液の用途に関する。
【0130】
本発明の用語“免疫調節”とは、血液内免疫アンバランスを解消し、免疫恒常性を維持することを意味する。免疫恒常性の維持は、免疫を抑制させる免疫寛容(tolerance)と免疫を増進させる免疫反応(immunity)とのバランスを取る状態をいい、このような状態の維持は、腫瘍及び癌を含む大部分の疾患の治療において必須の要素である。本発明において、前記組成物は、免疫刺激用途に用いられることが好ましい。
【0131】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、免疫刺激用途に用いられてよい。
【0132】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、免疫刺激用又は免疫増進用組成物であることを特徴とし得る。
【0133】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、プロバイオティクス組成物であることを特徴とし得る。
【0134】
本発明の用語プロバイオティクスは、適切な量で投与する場合に、宿主の健康に役立つ生きている微生物を意味する(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 11,506-514(2014))。プロバイオティクスは、宿主の腸内微生物相(gut microflora)に対する補充剤の働きをし、腸障壁機能を改善し、宿主の兔疫体系を調節することを特徴とし得る。
【0135】
本発明において、前記プロバイオティクス組成物は、プレバイオティクスをさらに含むことができる。
【0136】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、腫瘍、感染性疾患、免疫減少/抑制を原因又は症状とする免疫疾患の予防、改善又は治療のための目的で、薬学組成物又は食品組成物などとして使用されてよく、このとき、使用量及び使用形態は、目的に応じて適切に調節可能である。
【0137】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、他の薬学組成物又は食品組成物と併用して又は補助剤(adjuvant)として使用されてよい。例えば、前記他の薬学組成物は、免疫療法と関連した免疫治療剤、免疫細胞治療剤などがあるが、これに制限されるものではない。例えば、前記他の食品組成物は、発酵食品、発酵食品の製造のための発酵スターター、栄養剤のような健康機能食品などでよいが、これに制限されるものではない。
【0138】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、本発明のL.plantarum IMB19菌株及び/又はその培養液の他にも、別のプロバイオティック菌株、化合物、補助剤、添加剤、担体、賦形剤などをさらに含むことができる。
【0139】
本発明の用語“その培養液”は、本発明のL.plantarum IMB19菌株を含む培養原液でよく、その破砕物、遠心分離上澄液又はペレット、濃縮液、乾燥物などを全て含む包括的な意味で使われる。本発明のL.plantarum IMB19菌株は、通常のラクトバシラス菌株の培養方法によって培養できる。本発明の菌株の培養方法は、実施例の一例として記載した。培地としては天然培地又は合成培地などを使用することができる。培地の炭素源としては、例えば、グルコース、スクロース、デキストリン、グリセロールなどが使用されてよく、窒素源としては、ペプトン、肉類抽出物、酵母、大豆、アンモニウム塩、ナイトレート及びその他有機又は無機窒素含有化合物が使用されてよいが、これに限定されるものではない。培地に含まれる無機塩としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、鉄、カリウムなどが使用されてよいが、これに限定されるものではない。前記炭素源、窒素源及び無機塩の成分の他にもアミノ酸、ビタミン、核酸などが添加されてよい。
【0140】
本発明において、前記培養液は、L.plantarum IMB19菌株及び/又はL.plantarum IMB19菌株由来の免疫調節活性を有する有効成分(例えば、多糖体)を含有することを特徴とし得る。菌株の状態は液体状態又は乾燥状態であってよく、乾燥方法は、例えば、自然乾燥、噴霧乾燥及び凍結乾燥などがあるが、これに制限されるものではない。
【0141】
本発明は、さらに他の観点において、本発明のL.plantarum IMB19菌株又はその培養液を有効成分として含有する腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0142】
本発明は、さらに他の観点において、前記菌株及び/又はその培養液を対象に投与する段階を含む腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療方法に関する。
【0143】
本発明は、さらに他の観点において、前記菌株及び/又はその培養液の腫瘍又は感染性疾患の予防、改善又は治療用途に関する。
【0144】
本発明は、また、腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用薬学組成物を製造するための前記菌株及び/又はその培養液の用途に関する。
【0145】
本発明の用語“腫瘍”は、生体調節機構から離脱して細胞が自律性をもって過剰増殖する現象又はこれによって生成された新生物、又は過形成物のいずれをも含む。前記腫瘍は、例えば、良性、前悪性、悪性腫瘍のいずれをも含み、より具体的な例に、組織細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、骨腫、各種癌、例えば、肺癌、小細胞肺癌、胃癌、胃腸管癌、腸癌、結腸癌、直膓癌、膵癌、乳癌、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝癌、腎臓癌、膀胱癌、膵癌、脳癌、肉腫、骨肉腫、黒色腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、FL、MCL、MZBL、CLL、T-ALL、AML、ALLなど)、血液癌、白血病、乾癬、骨疾患、線維増殖性障害、粥状硬化症などを含むことができ、好ましくは、黒色腫、乳癌、腎臓癌、肺癌、膀胱癌、直膓癌であってよいが、これに制限されるものではない。
【0146】
本発明の用語“感染性疾患”は、様々な病原体の感染によって誘発又は悪化する病原体関連疾患を意味する。例えば、前記感染性疾患は、ウイルス、バクテリア、真菌、原生動物、寄生虫、プリオン、又はタンパク質凝集体などに感染されて誘発又は悪化する疾患であってよいが、これに制限されるものではない。
【0147】
本発明で使われる用語“予防”は、本発明に係る薬学組成物の投与によって疾患を抑制させるか、疾患の発病を遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0148】
本発明で使われる用語“治療”は、本発明に係る薬学組成物の投与によって疾患に対する症状が好転するか或いは有益に変更されるあらゆる行為を意味する。
【0149】
本発明の薬学組成物は、その有効成分の上述した免疫増進効果及び/又は抗腫瘍効果によって様々な疾患に対する予防又は治療及び抗炎症効果を示す。
【0150】
前記薬学組成物は、本発明のL.plantarum IMB19菌株又はその培養液を含有する他、一般に薬学組成物に使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0151】
前記組成物に含み得る担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエイト、プロピルヒドロキシベンゾエイト、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などがある。前記組成物を製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調合される。
【0152】
本発明に係る薬学組成物は、通常の方法によって様々な形態で剤形化して使用可能である。適宜の剤形には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、硬質又は軟質のカプセル剤、溶液剤、懸濁剤又は乳化液剤、注射剤、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液などがあるが、これに限定されるものではない。
【0153】
本発明に係る薬学組成物は、薬学的に不活性である有機又は無機担体を用いて適切な剤形とすることができる。すなわち、剤形が錠剤、コーティングされた錠剤、糖衣錠及び硬質カプセル剤である場合に、ラクトース、スクロース、澱粉又はその誘導体、タルク、カルシウムカーボネート、ゼラチン、ステアリン酸又はその塩を含むことができる。また、剤形が軟質カプセル剤である場合には、植物性オイル、ワックス、脂肪、半固体及び液体のポリオールを含むことができる。また、剤形が溶液又はシロップ形態である場合に、水、ポリオール、グリセロール、及び植物性オイルなどを含むことができる。
【0154】
本発明に係る薬学組成物は、前記の担体の他にも、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、溶解剤、甘味剤、着色剤、滲透圧調節剤、酸化防止剤などをさらに含むことができる。
【0155】
本発明に係る薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、“薬学的に有効な量”は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他医学分野によく知られた要素によって決定されてよい。本発明に係る薬学組成物は、個別治療剤として投与されるか、別の治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。上記の要素を全て考慮し、副作用無しで最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されてよい。
【0156】
本発明の薬学組成物は、個体に様々な経路で投与されてよい。投与の方式は、例えば、皮下、静脈、筋肉又は子宮内硬膜又は脳血管内注射によって投与されてよい。本発明の薬学組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0157】
本発明に係る薬学組成物の投与方法は、剤形によって容易に選択されてよく、経口又は非経口投与されてよい。投与量は、患者の年齢、性別、体重、病症の程度、投与経路によって変わってよい。
【0158】
本発明の組成物は、他の治療療法又は治療剤と併用して投与されてよい。腫瘍の予防又は治療用途に用いられる場合に、好ましくは、前記他の治療療法又は治療剤は、免疫療法又は免疫細胞治療剤であってよいが、これに制限されず、臨床医の判断によって様々に組合わせて使用されてよい。
【0159】
本発明は、さらに他の観点において、本発明のL.plantarum IMB19菌株又はその培養液を有効成分として含有する免疫増進用食品組成物に関する。
【0160】
本発明は、さらに他の観点において、免疫増進用食品組成物を製造するための前記菌株及び/又はその培養液の用途に関する。
【0161】
本発明の食品組成物は、免疫活性を増強又は改善して免疫機能の恒常性を維持させることができる。
【0162】
本発明の食品組成物は、腫瘍又は感染性疾患の予防又は改善効果を示す健康機能食品であることを特徴とし得る。
【0163】
本発明の用語“食品”は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スネック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、プレバイオティクス、プロバイオティクス、ポストバイオティクス、健康機能食品及び健康食品などがあり、通常の意味の如何なる食品も含む。
【0164】
前記健康機能(性)食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use,FoSHU)と同じ意味の用語であり、栄養供給の他にも生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学、医療効果が高い食品を意味する。ここで、“機能(性)”とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の食品は、当業界で通常用いられる方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造できる。また、前記食品の剤形も、食品として認定される剤形であれば制限なく製造されてよく、本発明に係る健康機能食品は、粉末、顆粒錠剤、カプセル又は飲料の形態であってよい。
【0165】
前記健康食品(health food)は、一般食品に比べて積極的な健康維持又は増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)は、健康補助目的の食品を意味する。場合によって、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は、同一の意味で使われてよい。
【0166】
前記食品組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含むことができるが、担体の種類は特に制限されず、当該技術分野において通常使用される担体であればいずれも使用可能である。
【0167】
また、前記組成物は、食品組成物に通常使用され、臭い、味、視覚などを向上させることができる追加成分を含むことができる。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ニアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、フォレート(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含むことができる。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロム(Cr)などのミネラルを含むことができる。また、リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含むことができる。
【0168】
また、前記組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、ベンゾ酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(さらし粉と高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(MSGなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基礎剤、バブル抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を含むことができる。前記添加物は、食品の種類によって選別され、適切な量で使用されてよい。
【0169】
本発明のL.plantarum IMB19菌株又はその培養液と共に食品学的に許容可能な食品補助添加剤をさらに含むことができ、他の食品又は食品成分と共に使用されてよく、通常の方法によって適切に使用されてよい。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康又は治療的処置)によって適切に決定されてよい。
【0170】
本発明の一実施例において、莢膜多糖体(Capsular polysaccharides)が本発明のL.plantarum IMB19の免疫賦活活性を示す有効成分であることを確認した。
【0171】
また、本発明の他の実施例では、前記分離した莢膜多糖体がL.plantarum IMB19菌株と同様に、i)ヘルパーT細胞の誘導及びTreg細胞の分化抑制のような炎症性表現型へのT細胞分化誘導、ii)CD8+ T細胞の刺激、活性向上及び腫瘍内浸潤向上、iii)Treg細胞活性抑制、iv)腫瘍内マクロファージ浸潤増加、v)マクロファージの炎症性細胞への活性化及びM2からM1マクロファージへの再プログラミングのような様々なメカニズムにより、優れた免疫賦活活性及び抗腫瘍活性を示すことを確認した。
【0172】
本発明の他の実施例において、前記莢膜多糖体は、NMRで構造的に分析された。
【0173】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、免疫賦活活性を有するL.plantarum IMB19菌株由来の莢膜多糖体(Capsular polysaccharides;CPS)に関する。
【0174】
本発明において、前記莢膜多糖体は、下記化学式Iの多糖体を含むことを特徴とし得る:
[化学式I]
-[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]n-
A及びDは、ガラクトース(Galactose)であり、
B、C、E、G及びHは、ラムノース(Rhamnose)であり、
Fは、N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)であり、
Iは、ブドウ糖であり、
nは、1以上の整数である。
【0175】
本発明において、前記化学式Iの多糖体は、化学式Iにおいて[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]で表示される反復単位の重合体構造である。
【0176】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、前記反復単位は直接の共有結合の他にも様々な方法で制限なく連結されてよい。例えば、前記反復単位は、グリコシド結合、ホスホジエステル結合のような化学的結合によって連結されてよく、リンカーを媒介で連結されてよい。
【0177】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、反復単位([-D-B-I-F-G-C-E-H-A-])は、AとDのグリコシド結合(-O-)で連結されたことを特徴とし得る。
【0178】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、反復単位([-D-B-I-F-G-C-E-H-A-])は、AとD間のリン酸ジエステル結合(phosphodiester linkage)で連結されたことを特徴とし得る。
【0179】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、反復単位のAの1位の炭素と他の反復単位のDの6位の炭素とがリン酸ジエステル結合(phosphodiester linkage)で連結されたことを特徴とし得る。
【0180】
本発明において、前記化学式IのA及びDのいずれか一つ以上がリン酸化されたことを特徴とし、好ましくは、Aの場合、1位の炭素の水酸化基がリン酸化されたことを特徴とし、Dの場合、6位の炭素の水酸化基がリン酸化されたことを特徴とし得る。
【0181】
本発明において、前記ガラクトース(galactose)は、自然系に一般に存在するガラクトース又はその誘導体を含む意味で使われる。例えば、本発明において、前記ガラクトースは異性質体であって、α型(α configuration)又はβ型(β configuration)、D型(D configuration)又はL型(L configuration)であってよく、好ましくはα-ガラクトース、より好ましくはα-D-ガラクトースであることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0182】
本発明において、前記ラムノース(rhamnose)は、自然系に一般に存在するラムノース又はその誘導体のいずれをも含む意味で使われる。例えば、本発明において、前記ラムノースは異性質体であって、α型(α configuration)又はβ型(β configuration)、D型(D configuration)又はL型(L configuration)であってよく、好ましくはα-ラムノース、より好ましくはα-L-ラムノースであることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0183】
本発明において、本発明において、前記N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)は、N-アセチルグルコサミン及びその誘導体のいずれをも含む意味で使われる。
【0184】
本発明において、前記ブドウ糖(glucose)は、一般のブドウ糖又はその誘導体のいずれをも含む意味で使われる。例えば、本発明において、前記ブドウ糖は異性質体であって、α型又はβ型、D型又はL型であってよく、好ましくは、β型配列を有するブドウ糖、より好ましくはD-ブドウ糖であることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0185】
本発明において、DとB(D-B)、及びBとI(B-I)は、α-1,3-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0186】
本発明において、前記IとF(I-F)は、β-1,6-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0187】
本発明において、前記FとG(F-G)、GとC(G-C)、CとE(C-E)、及びEとH(E-H)は、α-1,2-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0188】
本発明において、前記HとA(H-A)は、α-1,6-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0189】
本明細書において、前記グリコシド結合は、結合配向によってα又はβで表示しており、続く数字はそれぞれ、2つの単糖類において、グリコシド結合(-O-)で連結された炭素番号を意味する。例えば、前記“IとF(I-F)はβ-1,6-グリコシド結合で連結された”とは、Iの1位の炭素とFの6位の炭素がIを基準にβ-配列のグリコシド結合で連結されたことを意味する。
【0190】
本発明において、前記莢膜多糖体は、nが1以上の整数である化学式Iの多糖体を含むことができ、様々なnで重合された多数の化学式Iの多糖体を含むことができる。好ましくは、前記化学式Iの唐体は、nが1~10であることを特徴とし得る。
【0191】
本発明の一実施例において、莢膜多糖体に含まれた化学式Iの多糖体の平均重合度は約4であり、平均分子量は約6.0kDaと確認された。各反復単位([-D-B-I-F-G-C-E-H-A-])は、約1.5kDaの分子量(MW)と確認された。
【0192】
本発明において、前記莢膜多糖体に含まれた化学式Iの多糖体の‘平均重合度(average of n)’は、好ましくは1~10、最も好ましくは約4であることを特徴とし得る。
【0193】
本発明において、前記莢膜多糖体に含まれた化学式Iの多糖体の平均分子量は、1.5~15kDa、好ましくは約6.0kDaであることを特徴とし得る。
【0194】
本発明の一実施例において、前記莢膜多糖体に含まれた化学式Iの多糖体は、L.plantarum IMB19菌株由来の莢膜多糖体(Capsular polysaccharides;CPS)を、約100mMのNaClを溶離液として用いてイオン交換クロマトグラフィー方法で分離した。詳細な分離方法は実施例に詳細に記載されているが、これに制限されず、本発明に記載の化学式Iの多糖体構造及び特徴に基づき、従来に知られた様々な精製方法で取得できる。
【0195】
本発明において、前記莢膜多糖体は、テイコ酸(teichoic acid)をさらに含むことができる。
【0196】
本発明の一実施例から確認されるように、本発明において、前記莢膜多糖体は、2個以上のテイコ酸をさらに含むことができる。
【0197】
本発明において、前記テイコ酸は、Groタイプ又はRboタイプであってよく、莢膜多糖体が2個以上のテイコ酸をさらに含む場合に、単一タイプの形態で、又は2種のタイプが混合して含まれてよい。
【0198】
本発明において、前記莢膜多糖体は、化学式Iの多糖体及び/又はテイコ酸の他にも、他の多糖体又は脂質のような生体分子をさらに含むことを特徴とし得る。
【0199】
本発明は、さらに他の観点において、
(a)上記の菌株を培養する段階;及び
(b)前記培養された菌株から莢膜多糖体を取得する段階を含む、免疫賦活活性を有する多糖体の生産方法に関する。
【0200】
本発明において、
(c)取得された莢膜多糖体にイオン交換クロマトグラフィーを行い、免疫賦活活性を有する有効多糖体分画を取得する段階をさらに含むことを特徴とし得る。
【0201】
本発明の莢膜多糖体生産方法及び免疫賦活活性を有する有効多糖体分画を取得する段階は、一例として、本発明の実施例に詳細に記載されているが、これに制限されるものではない。
【0202】
本発明の実施例では、L.plantarum IMB19菌株由来の莢膜多糖体(Capsular polysaccharides;CPS)を様々な濃度のNaCl溶離液を使用したイオン交換クロマトグラフィーを用いて分画し、各分画に含まれた多糖体の構造をNMRで分析した。
【0203】
本発明の他の実施例では、L.plantarum IMB19菌株由来の莢膜多糖体(Capsular polysaccharides;CPS)の様々な分画のうち、100mMのNaClを使用して精製したCPS-100においてのみ、顕著なレベルのIFN-γ、TNF-α、IL-6及びIL-12を生成し、且つ無視できるレベルのIL-10、IL-17、IL1-β生産を示すのに対し、他の分画(CPS-400(テイコ酸を含む。)など)は有意義なサイトカイン生産が検出されず、L.plantarum IMB19菌株の免疫賦活活性を示す有効分子が、CPS-100に含まれた特定反復単位のポリマー構造を有する多糖体(化学式I)であることを確認した。
【0204】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、下記化学式Iで表示される多糖体に関する。
[化学式I]
-[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]n-
前記化学式Iにおいて、
A及びDは、ガラクトース(Galactose)であり、
B、C、E、G及びHは、ラムノース(Rhamnose)であり、
Fは、N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)であり、
Iは、ブドウ糖であり、
nは、1以上の整数である。
【0205】
本発明において、前記化学式Iの多糖体は、化学式Iにおいて[-D-B-I-F-G-C-E-H-A-]で表示される反復単位の重合体構造である。
【0206】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、前記反復単位は、直接の共有結合の他にも様々な方法で制限なく連結されてよい。例えば、前記反復単位は、グリコシド結合、ホスホジエステル結合のような化学的結合によって連結されてよく、リンカーを媒介で連結されてよい。
【0207】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、反復単位([-D-B-I-F-G-C-E-H-A-])は、AとDのグリコシド結合(-O-)で連結されたことを特徴とし得る。
【0208】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、反復単位([-D-B-I-F-G-C-E-H-A-])は、AとD間のリン酸ジエステル結合(phosphodiester linkage)で連結されたことを特徴とし得る。
【0209】
本発明において、前記化学式Iのnが2以上である場合に、反復単位のAの1位の炭素と他の反復単位のDの6位の炭素とがリン酸ジエステル結合(phosphodiester linkage)で連結されたことを特徴とし得る。
【0210】
本発明において、前記化学式IのA及びDのいずれか一つ以上がリン酸化されたことを特徴とし、好ましくは、Aの場合、1位の炭素の水酸化基がリン酸化されたことを特徴とし、Dの場合、6位の炭素の水酸化基がリン酸化されたことを特徴とし得る。
【0211】
本発明において、前記ガラクトース(galactose)は、自然系に一般に存在するガラクトース又はその誘導体を含む意味で使われる。例えば、本発明において、前記ガラクトースは異性質体であって、α型(α configuration)又はβ型(β configuration)、D型(D configuration)又はL型(L configuration)であってよく、好ましくはα-ガラクトース、より好ましくはα-D-ガラクトースであることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0212】
本発明において、前記ラムノース(rhamnose)は、自然系に一般に存在するラムノース又はその誘導体のいずれをも含む意味で使われる。例えば、本発明において、前記ラムノースは異性質体であって、α型(α configuration)又はβ型(β configuration)、D型(D configuration)又はL型(L configuration)であってよく、好ましくはα-ラムノース、より好ましくはα-L-ラムノースであることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0213】
本発明において、前記N-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)は、自然系に一般に存在するN-アセチルグルコサミン又はその誘導体のいずれをも含む意味で使われる。
【0214】
本発明において、前記ブドウ糖(glucose)は、一般のブドウ糖又はその誘導体のいずれをも含む意味で使われる。例えば、本発明において、前記ブドウ糖は異性質体であって、α型又はβ型、D型又はL型であってよく、好ましくは、β型配列を有するブドウ糖、より好ましくは、D-ブドウ糖であることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0215】
本発明の用語“誘導体”とは、化合物の構造が、本願に開示された化合物の構造と十分に類似であり、その類似性を基準に請求された化合物と同一又は類似の活性及び用途を示すか、或いは、前駆体として、請求された化合物と同一又は類似の活性及び用途を誘導することが予想される親化合物(例えば、本願に記載された化合物、化学式Iの多糖体)の構造に由来する構造を有する化合物を意味する。例えば、前記誘導体は、親化合物の塩、異性質体、エステル、アミド、エステル又はアミドの塩、N-酸化物などを含むが、これに制限されるものではない。
【0216】
本発明において、前記化学式IのDとB(D-B)、及びBとI(B-I)は、α-1,3-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0217】
本発明において、前記化学式IのIとF(I-F)は、β-1,6-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0218】
本発明において、前記化学式IのFとG(F-G)、GとC(G-C)、CとE(C-E)、及びEとH(E-H)は、α-1,2-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0219】
本発明において、前記化学式IのHとA(H-A)は、α-1,6-グリコシド結合で連結されたことを特徴とし得る。
【0220】
本明細書において、前記連結は、結合配向によってα又はβで表示し、続く数字は2つの単糖類の(-O-)結合された炭素番号を意味する。
【0221】
本発明において、前記化学式Iのnは、1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数、より好ましくはnは4であることを特徴とし得る。
【0222】
本発明において、前記多糖体は、下記化学式IIの構造を有することを特徴とし得る:
[化学式II]
【0223】
本発明において、前記化学式IIのnは、好ましくは1~10の整数、より好ましくは、nは4であることを特徴とし得る。
【0224】
本発明の一実施例において、莢膜多糖体の有効分画であるCPS-100に含まれた化学式Iの多糖体の平均重合度は、約4であり、平均分子量は、約6.0kDaと確認された。各反復単位([-D-B-I-F-G-C-E-H-A-])は、約1.5kDaの分子量(MW)と確認された。
【0225】
本発明において、前記化学式Iの多糖体は、重合度、リン酸化程度などによって、少なくとも約1.5kDa、好ましくは約1.5kDa~約15kDa、より好ましくは約4kDaの分子量を有することを特徴とし得る。
【0226】
本発明において、前記多糖体は、KCTC 14337BPの寄託番号を有するラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IMB19菌株由来であることを特徴とし得る。
【0227】
本発明において、前記化学式Iの多糖体は、免疫増進及び/又は抗腫瘍活性を有することを特徴とし得る。より具体的な例として、前記L.plantarum IMB19菌株は、i)ヘルパーT細胞の誘導及びTreg細胞の分化抑制のような炎症性表現型へのT細胞分化誘導、ii)CD8+ T細胞の刺激、活性向上及び腫瘍内浸潤向上、iii)Treg細胞活性抑制、iv)腫瘍内マクロファージ浸潤増加、v)マクロファージの炎症性細胞への活性化及びM2からM1マクロファージへの再プログラミングのような様々な免疫増進及び抗腫瘍活性を有してよいが、このようなメカニズムに制限されるものではない。
【0228】
本発明において、前記化学式Iの多糖体は、腫瘍の成長を抑制することを特徴とし得る。
【0229】
本発明において、通常の技術者らは、前記多糖体を、本発明の菌株を用いて生産/分離でき、その他の化学的又は生物学的方法で本発明の多糖体を誘導又は合成することができる。
【0230】
さらに、本発明の多糖体の薬動学(pharmacokinetics)及び/又は薬理学的(pharmacodynamics)特性の改善又は臨床的剤形化(例えば、可溶性)のためのCPSの構造の変形(modification)が行われてよいことは自明である。例えば、i)一つ以上の官能基の追加、ii)炭素鎖の変形、iii)一つ以上の水素又は水酸化基の添加、iv)末端基の変形(例えば、染料などのようなシグナル分子の追加)、v)他の知られた糖分子との結合(例えば、経口又は全身伝達のための剤形など)などが行われてよいが、これに制限されるものではない。
【0231】
したがって、本発明の多糖体は、前記化学式I又は化学式IIの多糖体に限定されるものでなく、本発明の免疫刺激、免疫増進効果を有する限り、前記化学式I又は化学式IIの変形体、誘導体、類似体などのいずれをも含む概念として解釈されるべきである。
【0232】
したがって、本発明は、他の観点において、前記化学式Iの多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物に関する。
【0233】
本発明は、さらに他の観点において、前記多糖体を対象に投与する段階を含む免疫調節方法に関する。
【0234】
本発明は、さらに他の観点において、前記多糖体の免疫調節用途に関する。
【0235】
本発明は、さらに他の観点において、免疫調節用組成物を製造するための多糖体の用途に関する。
【0236】
以下において、用語に関して特に断りのない限り、通常の技術者によって理解される意味又は本発明の他の観点で定義した意味と同一に理解されるであろう。
【0237】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、免疫刺激又は免疫増進用途に使用されてよい。
【0238】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、免疫刺激用又は免疫増進用組成物であることを特徴とし得る。
【0239】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、腫瘍、感染性疾患の他にも、免疫減少/抑制を原因又は症状とする免疫疾患の予防、改善又は治療のための目的で、薬学組成物又は食品組成物などの形態で製造及び使用されてよく、このとき、使用量及び使用形態は目的に応じて適切に調節できる。
【0240】
本発明の一実施例において、多糖体の50%効果濃度(half maximal effective concentration,EC50)は、3.16μMと確認された。したがって、好ましくは、本発明の免疫調節用組成物は、少なくとも3.16μM以上の多糖体を含むことを特徴とし得る。
【0241】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、他の薬学組成物又は食品組成物と併用して又は補助剤(adjuvant)として使用されてよい。例えば、前記他の薬学組成物は、免疫療法と関連した免疫治療剤、免疫細胞治療剤などがあるが、これに制限されるものではない。例えば、前記他の食品組成物は、発酵食品、栄養剤のような健康機能食品などでよいが、これに制限されるものではない。
【0242】
本発明において、前記免疫調節用組成物は、本発明の多糖体の他にも、他のプロバイオティック菌株、化合物、補助剤、添加剤、担体、賦形剤などをさらに含むことができる。
【0243】
本発明は、さらに他の観点において、本発明の化学式Iの多糖体を有効成分として含有する腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0244】
本発明は、さらに他の観点において、前記多糖体を対象に投与する段階を含む腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療方法に関する。
【0245】
本発明は、さらに他の観点において、前記多糖体の腫瘍又は感染性疾患の予防、改善又は治療用途に関する。
【0246】
本発明は、また、腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用薬学組成物を製造するための前記多糖体の用途に関する。
【0247】
本発明の用語“腫瘍”は、生体調節機構から離脱して細胞が自律性をもって過剰増殖する現象又はこれによって生成された新生物、又は過形成物のいずれをも含む。前記腫瘍は、例えば、良性、前悪性、悪性腫瘍のいずれをも含み、より具体的な例として、組織細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、骨腫、各種癌、例えば、肺癌、小細胞肺癌、胃癌、胃腸管癌、腸癌、結腸癌、直膓癌、膵癌、乳癌、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝癌、腎臓癌、膀胱癌、膵癌、脳癌、肉腫、骨肉腫、黒色腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、FL、MCL、MZBL、CLL、T-ALL、AML、ALLなど)、血液癌、白血病、乾癬、骨疾患、線維増殖性障害、粥状硬化症などを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0248】
本発明の用語“感染性疾患”は、様々な病原体の感染によって誘発又は悪化する病原体関連疾患を意味する。例えば、前記感染性疾患は、ウイルス、バクテリア、真菌、原生動物、寄生虫、プリオン、又はタンパク質凝集体などに感染されて誘発又は悪化する疾患でよいが、これに制限されるものではない。
【0249】
本発明の薬学組成物は、その有効成分である化学式Iの多糖体の上述した免疫増進効果及び/又は抗腫瘍効果によって様々な疾患に対する予防又は治療及び抗炎症効果を示す。
【0250】
前記薬学組成物は、その有効成分である化学式Iの多糖体を含有する他に、通常薬学組成物に使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0251】
前記組成物に含み得る担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエイト、プロピルヒドロキシベンゾエイト、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などがある。前記組成物を製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調合される。
【0252】
本発明に係る薬学組成物は、通常の方法によって様々な形態で剤形化して使用されてよい。適宜の剤形には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、硬質又は軟質のカプセル剤、溶液剤、懸濁剤又は乳化液剤、注射剤、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液などがあるが、これに限定されるものではない。
【0253】
本発明に係る薬学組成物は、薬学的に不活性である有機又は無機担体を用いて適切な剤形で製造できる。すなわち、剤形が錠剤、コーティングされた錠剤、糖衣錠及び硬質カプセル剤である場合に、ラクトース、スクロース、澱粉又はその誘導体、タルク、カルシウムカーボネート、ゼラチン、ステアリン酸又はその塩を含むことができる。また、剤形が軟質カプセル剤である場合には、植物性オイル、ワックス、脂肪、半固体及び液体のポリオールを含むことができる。また、剤形が溶液又はシロップ形態である場合に、水、ポリオール、グリセロール、及び植物性オイルなどを含むことができる。
【0254】
本発明に係る薬学組成物は、上記の担体の他にも、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、溶解剤、甘味剤、着色剤、滲透圧調節剤、酸化防止剤などをさらに含むことができる。
【0255】
本発明に係る薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、“薬学的に有効な量”は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定されてよい。本発明に係る薬学組成物は、個別治療剤として投与するか、或いは他の治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。上記の要素を全て考慮し、副作用無しで最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されてよい。
【0256】
本発明の薬学組成物は、個体に様々な経路で投与されてよい。投与の方式は、例えば、皮下、静脈、筋肉又は子宮内硬膜又は脳血管内注射によって投与されてよい。本発明の薬学組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0257】
本発明に係る薬学組成物の投与方法は、剤形によって容易に選択されてよく、経口又は非経口で、局所又は全身で投与されてよい。投与量は、患者の年齢、性別、体重、病症の程度、投与経路によって異なってよい。
【0258】
本発明の組成物は、他の治療療法又は治療剤と併用して投与されてよい。腫瘍の予防又は治療用途に使用される場合に、好ましくは、前記他の治療療法又は治療剤は免疫療法又は、免疫細胞治療剤であってよいが、これに制限されず、臨床医の判断によって様々に組合わせて使用されてよい。
【0259】
本発明は、さらに他の観点において、前記化学式Iの多糖体を有効成分として含有する免疫増進用食品組成物に関する。
【0260】
本発明は、さらに他の観点において、免疫増進用食品組成物を製造するための前記多糖体の用途に関する。
【0261】
本発明の食品組成物は、免疫活性を増強又は改善して免疫機能の恒常性を維持させることができる。
【0262】
本発明の食品組成物は、腫瘍又は感染性疾患の予防又は改善効果を示す健康機能食品であることを特徴とし得る。
【0263】
前記食品組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含むことができるが、担体の種類は特に制限されず、当該技術の分野において通常使用される担体であればいずれも使用可能である。
【0264】
また、前記組成物は、食品組成物に通常使用され、臭い、味、視覚などを向上させることができる追加成分を含むことができる。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ニアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、フォレート(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含むことができる。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロム(Cr)などのミネラルを含むことができる。また、リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含むことができる。
【0265】
また、前記組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、ベンゾ酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(さらし粉と高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(MSGなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基礎剤、バブル抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を含むことができる。前記添加物は、食品の種類によって選別され、適切な量で使用されてよい。
【0266】
本発明の食品組成物は、その有効成分である化学式Iの多糖体と共に食品学的に許容可能な食品補助添加剤をさらに含むことができ、他の食品又は食品成分と共に使用されてよく、通常の方法によって適切に使用されてよい。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康又は治療的処置)によって適切に決定されてよい。
【0267】
本発明の一実施例において、本発明の菌株及び菌株由来多糖体は、in vivo及びin vitroを問わず、細胞においてIFN-γの発現を誘導し、IL-10発現を抑制することによって、免疫反応を刺激して増進させることを確認した。
【0268】
本発明の他の実施例において、前記菌株及び菌株由来多糖体は、DCを媒介してCD8+ T細胞を活性化できることを確認した。また、MyD88信号伝達体系が欠乏している場合にも、CD+8 T細胞の活性化が顕著に減少することを確認した。
【0269】
本発明のさらに他の実施例では、前記菌株及び菌株由来多糖体でプライミングされたDCと未成熟CD4+ T細胞の共培養によってTh17細胞を誘導できることを確認した。
【0270】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、
(a)抗原提示細胞(antigen presenting cell)にL.plantarum IMB19菌株及び/又は前記化学式Iの多糖体を処理してプライミングする段階;及び
(b)プライミングされた抗原提示細胞をT細胞と共培養(co-incubation)する段階を含む炎症性T細胞の製造方法に関する。
【0271】
本発明の用語“抗原提示細胞”とは、抗原を取り込んで処理した後、抗原由来切片をMHC class±分子のような抗原提示分子と共にT細胞に提示して分化を誘導する細胞を意味する。例えば、前記抗原提示細胞は、マクロファージ、B細胞、樹状細胞(dendritic cell;DC)、ランゲルハンス細胞などがあるが、これに限定されるものではない。
【0272】
本発明において、前記(b)段階のT細胞は、未成熟T細胞であることが好ましく、より好ましくは、未成熟CD8+ T細胞又は未成熟CD4+ T細胞でよいが、これに制限されるものではない。
【0273】
本発明の用語“炎症性T細胞”とは、免疫反応に直接に、又は炎症前段階で免疫反応を誘導又は支援するT細胞を意味する。好ましくは、前記炎症性T細胞は、細胞傷害性T細胞又はヘルパーT細胞(Th cell)であってよく、より好ましくは、IFN-γ+CD8+ T細胞又はCD4+RORγ+ Th17細胞であることを特徴とし得る。
【0274】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、前記方法で製造された炎症性T細胞を有効成分として含有する腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用細胞治療剤に関する。
【0275】
本発明の一実施例において、脾臓マクロファージ又はM2表現型マクロファージをCPSに露出する場合に、MHC I、MHC II、CD68、iNOS2及びCD40が顕著に上方調節され、腫瘍微細環境において免疫を抑制するM2表現型マクロファージをM1表現型マクロファージに再プログラミングできることを確認した。
【0276】
したがって、本発明は、他の観点において、マクロファージにL.plantarum IMB19菌株及び/又は化学式Iの多糖体を処理してM1表現型マクロファージに分化する段階;及び前記活性化されたM1表現型マクロファージを取得する段階を含む、M1表現型マクロファージの製造方法に関する。
【0277】
本発明の用語“マクロファージ”は、白血球の一類型であって、病原体、外部物質、微生物、癌細胞、異常タンパク質などを飲み込んで分解する食作用をし、このような先天的免疫反応の他に適応免疫の抗原提示細胞としても働く。
【0278】
マクロファージは、炎症性マクロファージであるM1表現型マクロファージ、又は抗炎症性マクロファージであるM2表現型マクロファージに分類され、免疫の刺激及び抑制のバランスに関与する。特に、M2表現型マクロファージは、腫瘍の成長に寄与するものと報告されたことがある(Ann Oncol28,xii18-xii32(2017);Front Oncol 9,421(2019))。前記M1表現型マクロファージは、NK細胞又はTh1によって分泌されるIFN-γ、TLRのPAMPs認識によるMyD88経路などを通じて活性化され、抗原提示、炎症遺伝子及び炎症性ケモカイン分泌誘導などのような免疫反応を刺激及び誘導するマクロファージを総称し、M2表現型マクロファージ(免疫抑制性マクロファージ)は、IL-4、IL-13などによって分化されたマクロファージであり、免疫抑制能を示し、組織再建及び傷治癒に関与する。
【0279】
本発明において、前記(a)段階のマクロファージは、未成熟マクロファージ(naive macrophage)又はM2表現型マクロファージであってよい。
【0280】
本発明において、M1表現型マクロファージは、免疫反応を刺激又は誘導する炎症性表現型に活性化された如何なるマクロファージも含む。前記M1表現型マクロファージは、遺伝子発現プロファイルの変化によって分類が可能であり、例えば、前記M1表現型マクロファージは、MHC I、MHC II、CD68、iNOS2、及びCD40からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の発現が上方調節されたことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0281】
本発明の用語、“マクロファージの分化”とは、マクロファージの既存遺伝子発現プロファイルにおいて、他の遺伝子発現プロファイルを示す表現型へと活性化又は転換されることを意味する。前記分化は未成熟マクロファージの活性化又は分極化の他、既に活性化されて特定表現型(例えば、M1表現型又はM2表現型)を示すマクロファージの再プログラミング(reprogramming)も含む意味で使われる。
【0282】
本発明の用語“上方調節”とは、マクロファージの転換前の表現型と比較して、特定の遺伝子又はタンパク質の発現が向上していることを意味する。
【0283】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、前記方法で製造された炎症性マクロファージを有効成分として含有する腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用細胞治療剤に関する。
【0284】
実施例
【0285】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0286】
実施例1:材料及び方法
1.バクテリア培養及び同定
キムチを均質化し、懸濁液を収集した。その後、連続希釈し、MRSブロス及び寒天にストリークして37℃で48時間培養してコロニーを分離し、様々な分析のために追加培養した。
【0287】
L.plantarum IMB19(L.plantarum IMB19)は、一般に、24~36時間、37℃でMRSブロスで培養した。TEM(transmission electron microscope)のために、バクテリアを培養した後、MRS-1.5%寒天(Neogen Corp.,USA)にストリークし、24~30時間培養した。バクテリアコロニーは、2000メッシュグラフェンコーティング銅グリッドにドロップキャスティングした。TEMイメージングは、JEOL1220及びHitachi HT7700を用いて80kVで行った。
【0288】
同定のために、選別された分離菌株の細胞の形態を顕微鏡で調べ、遺伝的特性分析はゲノムDNAを用いて行い、Macrogen(韓国)で16s rRNA配列分析を行った。
【0289】
16S rRNA遺伝子は、正方向(27Fプライマー)5’-AGAGTTTGATCMTGGCTCAG-3’、及び逆方向(1492Rプライマー)5’-TACGGYTACCTTGTTACGACTT-3’の汎用プライマーを用いて直接PCRによって増幅された。
【0290】
2.一次細胞ベースの試験
2-1.in vitro脾臓細胞刺激
全ての動物実験及び手順は、ポハン工科大学動物管理及び使用委員会の倫理規定及び承認に従って行われた。C57BL/6マウスは、病原体のない動物障壁施設で飼育及び施設内繁殖され、6~8週齢で使用された。脾臓を収穫し、滑らかに粉砕して脾臓細胞を放出した。細胞懸濁液をアンモニウムクロリドバッファーを用いてRBC溶解させ、10% FBS(Hy-Clone,Australia)を含有する完全RPMI培地(Welgene,S.Korea)に再懸濁させた。細胞を96ウェルプレートで、抗CD3(Bio-Xcell,USA)10ng/mL及びGM-CSF(Peprotech,USA)2.5ng/mLを含有する200μLの培地/ウェルに200k/ウェルの密度でプレーティングした。分画されたCPS-100、分画されていない全体CPS(tCPS)、LPS(E-coli 0111:B4由来の脂糖類(liposaccharide)、Invivogen,USA)及び培地を必要に応じて添加し、37℃、5%CO2条件で48時間培養した。メーカーの指針に従い、遠心分離後に上澄液を収集し、酵素連結免疫吸着分析(Enzyme linked immunosorbent Assay(ELISA);e-Bioscience,Ready set go ELISA kits)を用いてサイトカイン推定のために冷凍させた。
【0291】
2-2.免疫細胞共同培養システム
上述したように脾臓細胞の分離を行った。CD11c+APC(Miltenyi biotec)及び未成熟CD4+ T細胞(naive CD4+ T-cells)(Stem Cell Technologies)は、メーカーのプロトコルに従って分離された。APCは、37℃、5%CO2で18~20時間プロバイオティック菌株と共に培養された。その後、プロバイオティック菌株を洗浄し、プライミングされたAPC及びCD4+ T細胞を特定条件で共に共同培養した。
【0292】
3.安全性評価(Safety evaluation)
3-1.溶血テスト(Hemolysis Test)
L.plantarum IMB19を最適の成長条件で成長させた後、5%のヒツジ血液寒天(Hanil,Komed)にストリークして48時間培養した。アルファ(α)2溶血は、赤血球のヘモグロビンの部分分解と見なし(実際に溶血を示さない。)、寒天プレートにおいて透明領域として観察されるベータ(β)溶血は、赤血球のヘモグロビンの完全な分解と見なし、ガンマ(γ)溶血は溶血不足と見なした。Bacillus cereus ATCC 27348を陽性対照群として使用した。
【0293】
3-2.ゼラチン分解試験
基本プロトコルは、ASM Science Recommendation(Dela Cru et al.,2012)に従って行った。最適の成長条件で成長したL.plantarum IMB19をゼラチン培地に接種ループで接種し、30℃で最大で5日間培養し、ゼラチン液化及びバクテリア成長を毎日確認した。ゼラチンは一般に28℃以上で液化される。液化がゼラチン分解酵素活性によるものか否かを確認するために、チューブを冷蔵庫に30分間保管した。その後、チューブを傾け、ゼラチンが分解されたか観察した。ゼラチンが分解された場合に、低温の露出後にも液化培地として現れる。Bacillus cereus ATCC11778を陽性対照群として使用した。
【0294】
3-3.生体アミン生産分析(biologenic amine analysis)
L.plantarum IMB19は、最適の成長条件で成長し、Bover-Cid及びHolzapfel(Bover-Cid et al,1999)によってヒスタミン(histamine)、カダベリン(cadaverine)、チラミン(tyramine)及びプトレシン(putrescine)の前駆体が含まれた特殊培地にストリークして37℃、30℃及び23℃で4日間培養した。その後、培地色相の変化を確認し、陽性及び陰性を決定した。E.coli ATCC 25922を陽性対照群として使用した。培養は、ブロモクレゾールパープル指示薬(bromo cresol purple indicator)と共に、オルニチン、リジン、チロシン、ヒスチジンのいずれか一つの塩基性培養培地を用いて寒天上で行った。
【0295】
3-4.抗生剤耐性試験
基本プロトコルは、ISO推奨事項(ISO-10932,2010)に基づいて行った。抗生剤に対する菌株の最小抑制濃度(MIC)を評価するために、ブロス希釈方法を用いた。
【0296】
培養液微細希釈において試験有機体は培養液培地で純粋に培養し、全ての有機体を1X PBSで洗浄した。PBSで洗浄されたバクテリア溶液を、0.01~0.02の600nm光学密度(OD)単位で調整した。菌株10μL(1~2×105CFU)を抗生剤と共に、200μLのLSMブロス培地を含む96ウェルプレートに接種した。
【0297】
菌株は、ヨーロッパ食品安全庁(EFSA,2018)で設定したパラメータによって設定されたカット-オフ値と同一であるか或いは低い特定抗生剤に対する濃度で抑制された時に感受性と見なされ、規定によって設定されたカット-オフ値よりも高い特定抗生剤濃度で抑制されないと、耐性があると見なされた。
【0298】
4.未精製莢膜多糖体(capsular polysaccharide,CPS)の分離
未精製莢膜多糖体(CPS)の分離は、以前に記述された方法を変形して行われた(Verma et al.,2018)。細菌培養液を遠心分離し、10%振幅及び10秒のパルスで15分間Bransonデジタル超音波処理器で超音波処理した。上澄液は、トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid(0.5% w/v))で4℃で一晩処理された。サンプルを6000rpmで20分間遠心分離し、100%エタノールを3:1の比率で上澄液に添加し、未精製多糖体を-20℃で沈殿させた。沈殿物を、耐毒素のない蒸留水に準備されたマグネシウムクロリド(20mM,Sigma Aldrich)及びカルシウムクロリド(20mM,Sigma Aldrich)を含有するトリスバッファー(100mM,Sigma Aldrich,USA)に再懸濁し、DNAse(0.1mg/mL,Roche,Germany)及びRNAse(0.4mg/mL,Sigma Aldrich,USA)で37℃で4~6時間処理した。タンパク質汚染物質を分解するために、プロナーゼ(Pronase,0.3mg/mL,Sigma-Aldrich,USA)に添加して4℃で一晩培養した。サンプルに37℃で30分間トリクロロ酢酸(1~2% w/v)を処理し、添加された酵素を含む総タンパク質を除去した。タンパク質の除去されたサンプルの総多糖体は、エタノール沈殿によって再び沈殿された。ペレットを耐毒素のない水に再懸濁し、4℃で48時間1日に2回で水を入れ替えながら透析した(MW cut-off 12,000Da)。総CPS分画は、培養物リットルにつき20mgの最終収率で凍結乾燥させて取得した。
【0299】
5.GC-MS分析条件
全ての化学誘導体は、質量選択検出器5973N及びZebron ZB-5毛細管カラム(Phenomenex,30m×0.25mm i.d.、フィルム厚0,25μm、流速1mL/min、キャリアガスとしてHe)が装着された気体-液体クロマトグラフィー(GLC-MS)Agilent 7820A(Santa Clara,CA,USA)を用いて分析された。電子衝撃質量スペクトルは、70eVのイオン化エネルギー及び0.2mAのイオン化電流で記録された。使用された温度プログラムは、次の通りである:150℃で5分、10℃/minで150℃で300℃まで、300℃で12分。
【0300】
6.NMR収集媒介変数
分離された多糖体の構造的分析のために、Z軸に沿って勾配が形成された逆クライオ-プローブ(reverse cryo-probe)付きBruker 600MHz分光器を用いてNMRスペクトルをD2Oに記録した。スペクトルは298K又は310Kで測定し、内部標準として、アセトン(1H 2.225ppm;13C 31.45ppm)で補正し、Topspin 2.0ソフトウェア(Bruker)で獲得し、Topspin 3.6で処理及び研究した。1H-1H DQ-COSY(二重量子COZYスペクトル;以下、COSY)、TOCSY及びNOESYスペクトルは、2048×512ポイントのデータセット(t1×t2)及びTOCSY及びNOESYスペクトルの場合にそれぞれ100ms及び200msの混合時間が設定された24回のスキャンで収集した。異種核1H-13C HSQC、HMBC、及びHSQC-TOCSYスペクトルは、2048×512ポイントのデータセットを用いた1H-検出モードで行われた。HSQC及びHSQC-TOSCYは、“CH2”密度を他の密度と区別するために、選択段階で多重編集によって行われた。HMBCは、一結合(one-bond)相関関係を抑制するために、低域通過Jフィルターを用いて長距離カップリング定数に最適化され、長距離相関関係の進化には60ms遅延が用いられた。HSQC-TOCSYは、混合時間を100msに設定した。全ての二次元試験において、データマトリックスは4092×2048ポイントに拡張され、qsine又はsine窓関数を適用して変換した。
【0301】
7.動物及びマウス腫瘍モデル
C57BL/6&Balb/cマウスは、ポハン工科大学校動物施設で確保及び維持した。Pmel-1 TCRトランスジェニック、MyD88-/-及びIL-6-/-マウスは、Jackson Labから得てPOSTECH動物施設で維持された。C57BL/6-由来黒色腫細胞株B16.F10及びBalb/c由来乳癌細胞株EMT-6は、ATCCから調達して提供されたプロトコルによって維持された。共通遺伝子腫瘍モデル(Syngeneic tumor models)は、20万個のB16.F10腫瘍細胞又は50万個のEMT-6細胞を皮下注射して生成した。終点まで隔日で腫瘍サイズを測定し、腫瘍体積を長さ×広さ2×0.5で計算した。先天性免疫細胞の初期浸潤分析のために、腫瘍細胞を5mill/マウスに皮下注射し、40時間後に腫瘍細胞を分析した。全ての実験動物手順は、ポハン工科大学校動物管理及び使用委員会(IACUC)の承認を受けて行われた。
【0302】
8.細胞ベースのin vitro分析方法
脾臓及び/又はリンパ節から採取した総細胞を、全体脾臓細胞培養に使用するか又は磁性ビーズ分離(Miltenyi Biotec)に適用し、CD11c+樹状細胞、未成熟CD8+ T細胞(naive CD8+ T-cell)又は未成熟CD4+ T細胞を豊富にさせた。総脾臓細胞(20万個/ウェル)を96プレートにバクテリアと1:1の比率で培養し、48時間目に上澄液を収穫し、ELISA(eBioscience Ready set Go kits)に使用した。CD11c+樹状細胞(20万個/ウェル)を適切な比率のバクテリアで18~20時間プライミングし洗浄した後、T細胞(20万個/ウェル)を添加して72時間培養した。指示されたように、CD8+ T細胞の刺激のためにanti-CD3@0.01μg/ml(BioXCell)、GM-CSF@2.5ng/ml(Peprotech)を、CD4+ T細胞の刺激のためにanti-CD3@0.1μg/ml、GM-CSF@10ng/ml、IL2@100U/ml及びTGFβ(Peprotech)を添加した。
【0303】
腹膜マクロファージは、2% BIogel(Bio-Rad)を腹腔内注射して5日後に細胞を収穫し、組換えネズミ(murine)MCSF 10ng/ml(Peprotech)と共にin vitro培養した。選択的に活性化されたマクロファージの分極化(polarization)のために、IL-4(Peprotech)を24時間添加した後、CPS、LPS(E-coli 0111:B4由来脂質多糖体、Invivogen)又はPam3CSk4(Sigma)で処理した。
【0304】
9.メタ遺伝体(Metagenomics)分析及び全体遺伝子配列分析(Whole genome sequencing)
腫瘍を保有しているSPFマウスの大便ペレットを、メタ遺伝体分析を委託した(Macrogen,S.Korea)。バクテリアの全体遺伝子配列分析は、イルミナプラットホーム(Illumina platform,Macrogen,S.Korea)で行われ;バクテリア培養サンプルを、分析のために直接送付した。生物情報学的分析も、Macrogenに委託して行った。
【0305】
10.腫瘍浸潤マクロファージの分類及び遺伝子発現プロファイル分析
マウスに500μgのCPSを24時間間隔で2回注入した後、5×106個のB16.F10腫瘍細胞を皮下に接種した。腫瘍移植40時間後に、浸潤免疫細胞を含む全体腫瘍をリベラーゼ(Liberase)において単一細胞懸濁液で消化させた。同じ処理グループにおいて5~10匹のマウスサンプルを募集し、Fixable Viability-ef506(eBioscience)、CD45-AF488(Bioloegend,30-F11)、CD3-ef450(Ebioscience,145-2C11)、CD19-PB(Ebioscience,1D3)、I-A/I-E-PECy7(Biolegend,M5/114.15.2)、CD11c-PE(Ebioscience,N418)及びCD11b-PerCpCy5.5(BD,M1/70)で染色した。生きているCD45+CD3-CD19-MHCIIhiCD11c+CD11b+マクロファージを、FBS補充された培地で分類し、遠心分離してトリゾール(Trizol,Sigma)に保管した。サンプルは、Macrogenで遺伝子発現プロファイルを分析し、処理群間の遺伝子転写体の数週の平均フォールドチェンジを計算し、両比較においてフォールド-チェンジが1.5以上である遺伝子を、経路分析のためにDAVID v6.7(The Database for Annotation,Visualization and Integrated Discovery v6.7)に入力した。免疫機能が顕著に強化されたと決定された遺伝子を、ヒートマップに表示した(p<0.05)。
【0306】
11.リステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)in vivo細胞毒成分析
従来知られた方法で分析を行った。具体的に、C57/Bl6マウスにOVAペプチド(LM-OVA)を発現させるリステリアモノサイトゲネスを5000CFU/miceで注入した。マウスに隔日でL.plantarum IMB19菌株を給与した。6日目に、未成熟C57/bl6マウスの脾臓細胞をOVAペプチドパルスし、ペプチドパルスされているかされていない細胞をCFSE又はCTVで染色し、1:1の比率で混合し、感染されたマウスの静脈内に投与した。LM-OVAに感染されたマウスを2時間後に犠牲させ、脾臓細胞/リンパ節を収穫し、流動細胞分析を用いてペプチドパルスされた脾臓細胞の細胞死滅率を検出した。
【0307】
12.クロマトグラフィーを使用した精製
分離された全体莢膜多糖体(tCPS28mg)は、陰イオン交換Q-セファロース高速フロー方法で精製した(GE Healthcare;V=4.4mL,flow 16mL/h)。樹脂はパッキングされ、1M NaClで洗浄し、10体積のNaCl 10mMで平衡化された。その後、全体莢膜多糖体(tCPS)を10mM NaCl(5mL)に溶解させ、樹脂に吸着させた。溶出は、16mLのNaCl(それぞれ10、100、200、400、700及び1000mM)を順次に添加して段階的に行われた。各濃度のNaClで溶出された溶出液を収集し、透析(Cut-off1kDa)によって脱塩及び凍結乾燥させた。各濃度のNaClから溶出された6個の分画を、CPS-X(Xは溶出に使用されたNaCl濃度,mM)で標識した。
【0308】
分子量測定は、溶離剤(eluent)として50mMのNH4HCO3で平衡化されたTSK G-5000PWXLサイズ排除カラム(30cm×7.8mm)を使用するHPLC system Agilent 1100を用いてCPS-100に対して推論され(flow=0.8mL/min)、溶出液を屈折率検出器(refractive index detector)でモニタリングした。カラムは、知られた分子量(それぞれ12、50、150及び670kDa)のデキストラン標準(1mg/mL溶液50μL)を注入して補正した。分子量のログは、溶出体積に対してプロットされ、確立された線形関係(linear relationship,LogPM=-0.811mL+11.7;R2=0.98)を用いて多糖体のMWを計算した。
【0309】
13.統計分析
腫瘍成長曲線は、2グループの比較のためのシダックの(Sidak’s)多重比較事後-検定、様々なグループと対照群間の比較のためのダネットの多重比較事後-検定、又は2つ以上のグループのそれぞれの比較のためのテューキーの多重比較事後-検定を用いた両方向ANOVAによって分析した。他の比較では、2グループを比較する時に独立スチューデントのt検定(unpaired Student ’s t-test)を用い、2グループ以上を比較する時は、多重検定のためのBonFerroni補正と一元分散分析が用いられた。P<0.05は統計的に有意義であると見なした(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001)。GraphPad PRISM v8.0を用いて統計分析を行った。Flow-joソフトウェアv10.1を用いて流動細胞分析データを分析した。
【0310】
実施例2:L.plantarum IMB19の分離及び同定
L.plantarum IMB19(L.plantarum IMB19)は、主に原料由来微生物によって発酵された家庭用キムチから分離された。ラクトバシラス種(Lactobacillus sp.)のコロニーを誘導するために、連続希釈したキムチ懸濁液をMRSブロス(De Man,Rogosa and Sharpe broth,Becton-Dickinson,USA)プレートにストリークした。培養した単一コロニーを分離し、MRSブロスでさらに培養した。コロニーの形態がそれぞれの個別菌株を区分するのに十分でなかったため、14個の分離されたバクテリアをPCR及び16s rRNA配列分析し、NCBIのBLASTを用いて配列の類似性を確認した。分離されたバクテリアはいずれも乳酸菌(LAB)に属するものと判明された。分離されたバクテリアのうち、L.plantarumと99%以上の類似性を有する菌株を同定し、その他にも、多くの分離されたバクテリア寒天Weissellia koreensisと99%類似することを確認した。このような結果は、キムチの優占種がL.plantarumとWeissellia koreensisであるという既存の報告と一致する。
【0311】
分析されたL.plantarum IMB19の16S rRNA配列情報は、次の通りである。
【0312】
【0313】
【0314】
実施例3:L.plantarum IMB19の選別
分離されたバクテリアの免疫細胞に対する免疫刺激効果を確認するために、バクテリア培養分離物がネズミ(murine)の脾臓細胞に及ぼす影響をテストし、免疫細胞に対する刺激効果があるバクテリアを確認した。全体脾臓細胞を、分離されたバクテリアと48時間培養した後、培養上澄液でサイトカインのレベルを測定した。よく知られた炎症マーカーであるIFN-γと抗炎症サイトカインであるIL-10を用いて、前記分離されたバクテリアが免疫細胞に及ぼす影響を評価した。全ての分離されたバクテリアのうち、無視可能なレベルのIL-10と非常に高い量のIFN-γを誘導する新規なラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株を選別し、L.plantarum IMB19と命名した(
図1、colony 1)。
【0315】
実施例4:L.plantarum IMB19の微生物学的及び生化学的特性分析
L.plantarumのコロニー形態は小さくて滑らかな円形であり、半透明な様子を示す。低温切片(Cryosection)TEMを用いてL.plantarumの無鞭毛(non-flagellated)、棒形の微生物コロニーを確認した(
図2のA)。個別バクテリアの厚い莢膜層が一般的に明らかに確認された。ヒツジ血液寒天(sheep blood agar)で培養する場合には、透明であるか、緑色光の領域がないため、当該菌株が他のラクトバシラスと類似に非溶血性(non-hemolytic)又はγ-溶血性(γ-hemolytic)と確認された(
図2のB)。陽性対照群として使用されたBacillus cereus ATCC 11778に対して最大5日までゼラチナーゼ活性に陰性と現れた(
図2のC)。また、特化された培地で前記菌株の4つの生体アミン生成をテストした(ヒスタミン(histamine)、カダベリン(cadaverine)、チラミン(tyramine)及びプトレシン(putrescine))。L.plantarum IMB19は、E-coli ATCC 25922とは違い、生体アミンを生成しないものと確認された(表1)。
【0316】
【0317】
抗生剤感受性テスト結果は、下記表2のように、大部分のラクトバシラス種と同様に、カナマイシン(kanamycin)を除いて大部分の臨床関連抗生剤に感受性を示すことが確認された(Appl Environ Microbiol 85,(2019))。
【0318】
【0319】
*EFSA=ヨーロッパ食品安全処(European Food Safety Authority)、Amp=Ampicillin、Ery=Erythromycin、Gen=Gentamicin、Tet=Tetracycline、Str=Streptomycin、Chl=Chloramphenicol、Cli=Clindamycin、Kan=Kanamycin、Van=Vancomycin、n.r=not required、Q.C=Quality Control。
【0320】
実施例5:L.plantarum IMB19の遺伝学的特性分析
【0321】
16S rRNA配列分析に基づく配列類似性比較は、L.plantarum種間の同一性を確認した。また、PCRによるrecA遺伝子分析により、L.pentosus及びL.paraplantarumのような遺伝的に密接した他の種と区分した(Appl Environ Microbiol 67,3450-3454(2001))。
【0322】
DNA分離、Pac-Bio & Illumina Hi-seq配列分析及び生物情報学に基づく分析が行われた(Macrogen、韓国)。
【0323】
L.plantarum IMB19は、recA遺伝子由来プライマーを用いてrecA遺伝子を増幅及びバンドを比較し、他の遺伝的に密接に関連した種と区別した。いくつかのL.plantarum菌株は、全体ゲノムにおいて類似性を有するものと知られているので、平均ヌクレオチド指数(OrthoANI)に基づいて系統発生分析を行い、L.plantarum IMB19を固有の菌株として同定した(
図3)。4個の知られた菌株に対する病原性遺伝子配列相同性(virulent gene sequence homology)に基づき、Virulence Finder 2.0を用いて推定される病原性遺伝子の存在を確認した。90%ヌクレオチドカット-オフを用いて病原性遺伝子に対するいかなる有意味なヒットも見られなかった。ResFinder(J Clin Microbiol 52,1501-1510(2014))から確認できるように、L.plantarum IMB19の全体ゲノムには抗生剤耐性遺伝子がないことが確認された。
【0324】
前記実施例に開示されているように、L.plantarum IMB19は、既存に報告されたL.plantarum菌株と異なる特徴を有する新規な菌株であり、2020年10月21日に韓国生命工学研究院生物資源センターに受託番号KCTC 14337BPで寄託した。
【0325】
実施例6:L.plantarum IMB19のネズミ(murine)T細胞に対する免疫刺激効果
L.plantarumに属する様々な菌株の宿主免疫及び健康に及ぼす有益な効果は、従来に報告されたことがあり(Biomed Res Int 2018,9361614(2018))、本発明のL.plantarum IMB19のネズミ(murine)免疫細胞に対する直接的な効果を確認した。本発明者らは、抗原提示細胞(APC)によるバクテリア抗原の吸収が活性化状態を変更させることができ、これにより、他の免疫細胞をプライミングし、結果的に免疫システムの調節が可能であると予想した。したがって、それぞれ先天的免疫システム及び適応免疫システムを示すAPC及びCD4+ T細胞の両方を含む共同培養システムを設計した。CD11c+APCをバクテリアに20時間露出させた(APC:バクテリア=1:100)。このようなAPCは、免疫表現型を歪めず、サブオプティマルな外部刺激下で未成熟CD4+ T細胞(naive CD4+ T cell)と共同培養した。T細胞のTh1、Th2、Th17又は調節T細胞(Treg)への分化を確認するために、他の転写因子、Tbet、GATA3、RORγ及びFoxp3を分析した。特別な外部の影響無しで、L.plantarum IMB19は、他の3つの菌株と比較して、CD4+RORγ+ Th17細胞の生成を顕著に誘導した(
図4のA)。他のTh細胞のサブタイプの有意味な生成の有無は明確にされておらず、他のL.plantarum菌株と類似に現れた(
図4のB)。
【0326】
前記結果の検証のために、Th17細胞の最小生成条件で、L.plantarum IMB19によるTh17細胞の生成をテストした。L.plantarum IMB19は、相当な量のIL-17を生産するCD4+RORγ+ Th17の生成を顕著に増加させた(
図5のA)。
【0327】
一方、L.plantarum IMB19は、中性条件で相当な量のFoxp3を誘導しておらず(
図5のB)、よって、L.plantarum IMB19が十分な濃度のTGF-βで未成熟CD4+ T細胞からTregを生成できるかどうか確認した結果、TGF-βの濃度増加下でむしろTregの生成を顕著に抑制することが確認された。
【0328】
実施例7:L.plantarum IMB19の生体内で抗腫瘍免疫反応の促進効果確認
L.plantarum IMB19菌株及び対照群として様々なラクトバシラス菌株(14種)を脾臓細胞と共に培養して、免疫細胞によるサイトカイン生産の変更有無を比較した。その結果、他のラクトバシラス菌株に比べてL.plantarum IMB19は顕著に高いIFN-γレベル及び顕著に低いIL-10レベルを示した(
図6のA)。参考として、他の菌株であるラクトバチルスムリヌス(Lactobacillus murinus)は、最も高いIL-10誘導能を示し、低いIFN-γ生産を示した(
図6のA)。
【0329】
CD8+ T細胞が主要抗腫瘍エフェクター細胞のために分離された前記2菌株のCD8+ T細胞刺激能力を確認した。バクテリアでプライミングされた樹状細胞(DC)及びCD8+ T細胞の共同培養において、L.plantarum IMB19を処理する場合にIFN-γレベルの増加を確認し、特に、ラクトバチルスムリヌス(Lactobacillus murinus)を処理した場合に比べて顕著に増加した(
図1のB)。脾臓及び腸間膜リンパ節抗原提示細胞と共同培養時に、CD8+ T細胞の活性化は、バクテリアの濃度に依存的に変化した(
図7のA及びB)。
【0330】
L.plantarum IMB19は、樹状細胞がない場合には、CD8+ T細胞を直接刺激しなかった。マウス黒色腫特異的抗原Pmel-1に対するTCR運搬CD8+ T細胞の活性化は、抗原gp-100の存在下に類似に活性化された(
図7のC)。DCの他にもマクロファージは腫瘍の成長及び抑制に重要な役割を担うものと知られたAPCであるので、CD11b+F4/80+腹膜マクロファージを用いたCD8+ T細胞刺激に対するL.plantarum IMB19の効果を確認した。樹状細胞と類似に、L.plantarum IMB19は、マクロファージ-CD8+ T細胞共同培養時に、IFN-γ+CD8+ T細胞の比率を大きく増加させた(
図6のC)。
【0331】
CD4+Foxp3+調節T細胞(Tregs)は、腫瘍に蓄積され、CD8+ T細胞及びその他免疫細胞のエフェクター機能を抑制して腫瘍進行を増加させる。また、Treg生成を促進する様々なバクテリアが報告されたことがある(Nature 453,620-625(2008);Sci Immunol 3,(2018))。したがって、本発明者らは、L.plantarum IMB19がCD11c+DC及びCD4+ T細胞の共同培養時にTreg誘導に影響を及ぼすかどうか確認した。高度なTreg歪み培養条件でL.plantarum IMB19は、TGF-βの存在下でTreg生成の相当な抑制を示した(
図6のD)。この効果は、より低いレベルのTGF-βにおいても持続され、テストされた条件のいずれにおいてもTreg生成が観察されなかった(
図8のA)。一方、インターロイキン-17A(IL-17A)は増加し(
図8のB)、これは、T-helper-17細胞(Th17)の生成を意味する。インターロイキン-6(IL-6)は、Th17生成に必須であり、TGF-βの存在下にTreg生成を抑制する(Eur J Immunol 40,1830-1835(2010))。これにより、IL-6欠乏DCは、CD4+ T細胞共同培養でTregsを生成した。したがって、L.plantarum IMB19プライミングDCによるIL-6生産は、Treg歪み培養条件下でTreg生成を抑制する。
【0332】
L.plantarum IMB19によって活性化されたCD8+ T細胞が機能的に細胞傷害性であるか否かをテストするために、OVA抗原(LM-OVA)を発現させる急性リステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)感染モデルを使用した細胞傷害性を試験した(
図6のE)。L.plantarum IMB19を給与したLM-OVA感染マウスは、生体内でOVA pulsed CFSEがロードされた標的細胞の溶解において顕著な増加を示した(
図6のF)。また、SPF(specific pathogen free)及びGF(Germ free)マウスの両方で皮下移植されたB16.F10黒色種に対するL.plantarum IMB19の効果を評価した(
図6のG)。L.plantarum IMB19は、L.murinusと比較してSPF及びGFマウスの両方において黒色腫成長の顕著な抑制を示した(
図6のH及びI)。L.plantarum IMB19が抗腫瘍効果を招く全ての群集崩壊(dysbiosis)を誘導するか否かを評価するために、L.plantarum IMB19を給与した腫瘍保有動物の大便サンプルに対して16sリポソームRNAシーケンシングを行った。しかしながら、PBS対照群と比較して、L.plantarum IMB19給餌マウスの大便から、微生物多様性において重要な変化が見られなかった(
図9のA~C)。これは、抗腫瘍免疫のL.plantarum IMB19媒介調節は、L.plantarum IMB19特異的な効果に該当し、群集崩壊の結果でないことを意味する。総合的に、本実施例のデータは、L.plantarum IMB19が生体内で細胞傷害性T細胞媒介抗腫瘍免疫反応の陽性調節子であることを示す。
【0333】
実施例8:L.plantarum IMB19由来未精製多糖体分画の化学的特性分析
透過電子顕微鏡(TEM)による分析の結果、L.plantarum IMB19の細胞は、ラムノース、ガラクトース、ブドウ糖及びグルコサミンで構成された炭水化物組成、及び少量のグリセロール及びリビトールを含有する莢膜物質の層で囲まれていることが確認された(
図10及び
図11のA)。2つのポリオールは、一般に、ホスホジエステル結合で相互連結されるテイコ酸(teichoic acids)の存在と関連がある(Tomita,Tanaka,& Okada,2017)。一般に、メタノール分解(methanolysis)は、ホスホジエステル結合を完全に切断できないため、このようなポリオールの検出が非常に難しい。したがって、メタノール分解及びアセチル化前に水性HFで試料を脱リン酸化してGC-MS分析を反復し、2つのポリオールの量が増加することに基づいてテイコ酸の存在を確認した。単糖類では、ラムノースはL絶対配列を、グルコースとガラクトースはD配列(
図12)を有する。一方、グルコサミンでは、D配列は立体異性質体の独占的存在に基づいて仮定された。
【0334】
実施例9:未精製多糖体の精製
炭水化物成分の化学的分析結果は、CPSが重合体の混合物であることを示唆している。そこで、イオン交換クロマトグラフィーを用いてCPSを精製して得た6個の分画を、使用された溶出液の濃度(X)によってCPS-Xで表示した。精製によって得た収率は次の通りである:CPS-10 11%、CPS-100 13%、CPS-200 9.0%、CPS-400 51%、CPS-700 7.0%、及びCPS-1000 7.9%。各分画は、
1H NMR分析を用いて元来の混合物(CPS)のスペクトルプロファイルと比較した(
図13)。
【0335】
【0336】
CPS-100(
図13のb):CPS-10は、多少異質的なスペクトルを示した。CPS-10のアノマー領域は、炭水化物と異なる物質と関連した4.2及び1.3ppmの強い信号を有する2個の主要信号を含む。
【0337】
CPS-100(
図13のc):CPS-100のアノマー領域(5.6~4.5ppm)は、α-配列(
3J
H1,H2=3.4Hz)及びリン酸化(
3J
H1,P=7.0Hz)された残基を示す5.5ppmにおける二重ダブレット(
図14)を有する9個の主要信号を含む。また、それぞれN-アセチルグルコサミン及びラムノースユニットの存在と一致するアセチル基(2.06ppmでのメチル基)及びジオキシ残基(1.3ppm)の様々なメチル基を含む強い信号を確認した。
【0338】
CPS-200(
図13のd):CPS-200は、CPS-100とCPS-400との混合物として示され、アノマー領域において4個の多少広い信号を示し、1.6ppm(ラムノースのメチルKと一致しない値)と混雑なカルビノール領域(4.4~3.2ppm)において強烈なメチル信号を示した。
【0339】
積分によってアノマー陽性子及びカルビノール陽性子間の比率は、1.0:12と示され、一般に、予想される比率は1:6又はそれ以下であり、これは、CPS-400が多糖体の典型的な構造を有していないことを意味し、比率の増加は、化学的分析によって確認されたように、リビトール及びグリセロールユニットの存在のためである(
図15)。また、グルコースは、最も豊富な単糖類であり、その次にペプチドグリカンの特徴として、少量のグルコサミン(GlcN)及びムラミン酸(MurA)の2単糖類が豊富に見られた。
【0340】
このような観察は、CPS-400がテイコ酸(TA)であることを意味する。
【0341】
CPS-700及びCPS-1000(
図13のf及びg):アノマー領域は、CPS-400で発見される信号の一部のみが含まれており、2分画ともアノマー陽性子及びカルビノール陽性子間の比率は、不定形的であった。不炭水化物物質の信号もさらに確認された。
【0342】
CPSにおいてCPS-10、CPS-700及びCPS-1000の量が豊富でないため、少量しか獲得されなかった。
【0343】
実施例10:CPS-100のNMR分析
莢膜多糖体の構造は、310Kで記録された1H-1H同種核(COSY、TOCSY、NOESY)及び1H-13C異種核(HSQC、HMBC、HSQC-TOCSY)2D NMRスペクトルの完全なセットを分析して決定された(表3)。
【0344】
【0345】
*C及びEのC-3はオーバーラップされ、これらの正確な化学的移動は確実に決定されていない。
【0346】
**C、E、G及びHのC-5はオーバーラップされ、それらの正確な化学的移動は確実に決定されていない。
【0347】
297K(
図13のc)において310K(
図14)への温度上昇は、約5.15ppmにおける3個のアノマー信号及び関連残基の単純化されたNMR属性間のオーバーラップを減少させた。
【0348】
HSQCスペクトル(
図14)は、大文字A-I、
図14のa、表3で表示された
1H5.6~4.5において9個の主要アノマー密度を示し、該当する陽性子はいずれも類似の比率を有している。NMR分析は、COSYスペクトルの3.85ppmと共通に、TOCSYスペクトルにおいて3つの相関関係を示すAのH-1(5.51ppm)で(
図16)始まった。したがって、この密度は、H-2に割り当てられ、類似の接近方式によってH-3(3.91ppm)及びH-4(4.04ppm)も割り当てられた。H-1との追加の相関関係がないので、Aをガラクトースユニットと確認した。H-5は、強いH-4/H-5相関関係によってNOESYスペクトルで識別され(
図17)、該当するCOZY相関関係によって2つのH-6を確認した(
図16及び
図17)。
【0349】
HSQC及びHSQC-TOCSYスペクトル(
図18のa)は、C-6(67.1ppm)の高い化学的移動に基づいてO-6に連結されたα-ガラクトースユニットであるA(表3)の全ての炭素化学的移動を定義した。DのH-1(5.12ppm)で発生するTOCSYスペクトルの相関関係は、Aと同じパターンを有しているので、Dはガラクトースであり、αは、
3J
H1,H2(3.9Hz)値に基づいて構成され、H-6s/C-6(4.04-4.02/65.6ppm)の化学的移動は、この位置の以前文献のデータと一致し、リン酸化されていることを意味する(Sechenkova et al.,2004)。したがって、Dは、6P-α-Galであったし、他の全ての炭素化学移動の高いフィールド値に基づいてそれ以上分岐されなかった。
【0350】
Bにおいて、H-1(5.24ppm)は、H-2(4.25ppm)に最も強い2つのTOCSY相関関係を示し、これは、COZY密度と一致している(
図16)。この2番目の陽性子(
図16)においてTOCSYを判読した結果、ラムノース残基のパターン全体診断である1.28ppmにおいてメチルを含むユニットの他の全ての陽性子を確認した。したがって、Bは、そのC-5値(約70.5ppm)と参照グリコシド(α又はβメチルグリコシドの場合にそれぞれ69.4又は73.6ppm、Bock & Pedersen,1983)の類似性に基づき、アノマー中心においてα-配列されたラムノースであり、当該炭素において経験したグリコシル化移動から定義されたのと同様に3-置換された。残基C、E、G及びH(それぞれ、5.14、5.10、4.97、4.88ppmにおいてH-1)のTOCSYパターンは、Bのものと類似であり、α-ラムノースユニットであったし、参照値(71.0ppm,Bock & Pedersen,1983)と比較して、C-2(77.8~79.6ppm)の低いフィールド値は、O-2において置換されたことを意味する。
【0351】
Fにおいて、H-1(5.01ppm)は、4個のTOCSY相関関係を有しており(
図16)、これは、COSYスペクトルにおいてH-2~H-5に起因したものであり、グルコ構成残基(gluco configurated residue)のパターンである。H-5のHSQC-TOCSY分析により69.5ppmでの密度と相関関係を確認し、これは、C-6に起因し、次第にH-6sと関連した(4.14及び3.96ppm)。したがって、Fは、C-2(54.9ppm)及びH-2(3.93ppm)値に基づくN-アセチルグルコサミンであり、C-6(69.4ppm)において置換された。α配列は、アノマーシグナル形状(broad singlet)とC-3値(71.8ppm)によって推論され、これは、参照α-グリコシド(72.0ppm,Bock & Pedersen,1983)と非常に類似している。最後に、IのH-1(4.50ppm)は、ユニットの全ての陽性子を示すTOCSYパターンを有している。したがって、
13C化学的移動に基づき、IはC-3(82.8ppm)において置換され、
3J
H1,H2値(7.9Hz)に基づいてβ-配列されたブドウ糖である。
【0352】
残基間の配列は、HMBC(
図5のB)とNOESY(
図4)スペクトルを分析して推論した。最初に、BのH-1とIのC-3が連結されたHMBCの相関関係と当該密度は、B
1I
3と表示した(
図18のb)。同じ形式でC
1E
2、D
1B
3、F
1G
2、H
1A
6及びI
1F
6のような別の相関関係が発見された。また、EのH-1とGのH-1は、C及びHのC-2と類似の値である約79ppmにおける炭素と長距離相関関係を示した。E
1H
2及びG
1C
2へのこのような密度の正確な割り当ては、EのH-1とHのH-2、及びGのH-1とCのH-2が関連しているNOESYスペクトル(
図17)を分析して推論した。このような属性は、異なるラムノースユニットのH-2陽性子の拡張に詳細に示された逆相関関係を観察して確認された(
図19)。
【0353】
最後に、AとDがそれぞれO-1とO-6においてホスホジエステル結合でリン酸化されたという情報は、何故、AのH-1とDのC-6、又はDのH-6及びAのC-1に対してHMBC連結が現れなかったか、又は何故、これらの陽性子が残基間のNOE相関関係を有しないかを説明する。HMBCスペクトルは、実際に、このシーケンスの限界(3個連結)を超えるAのH-1(又は、C-1)とDのC-6(又は、H-6)間の結合数が多いために(5個連結)、両ユニット間のいかなる相関関係も検出することができなかった。類似に、AとD間のリン酸塩部分の密度は、検出可能なNOE効果を提供するために、それらのユニットの陽性子を非常に遠く離す。したがって、CPS-100の反復単位構造は、
図20に報告されているように、non-asaccharideである。
【0354】
また、その特性を理解するために、マイナーなNMR信号を調査した。HSQCスペクトル(
図14)において、Galα及びGalβ(それぞれ
1H/
13C 5.26/93.5及び4.57/97.8ppm)で表示された密度の炭素化学的移動は、自由還元形態のα又はβ残基を示す。H-1においてTOCSYスペクトル(
図16)は、ガラクト(galacto)構成糖の典型的なパターンが示された(すなわち、Galαの場合、3番目の密度は、COZY密度とほとんどオーバーラップされる。)。このような発見は、CPSの分離のための超音波処理及びトリクロロ酢酸処理が含まれており、上記の2つの処理過程において、特に、ガラクトースAのアノマーリン酸塩において、ホスホジエステル結合の極度の柔軟性によってそれら結合の一部の切断を誘導できるという点から説明される。したがって、強い信号の傍におけるマイナーな信号(
図14、“*”で表示)は、最初の反復残基に属し、自由還元形態でガラクトースに連結されていると予想された。しかしながら、それらの低い強度と、カルビノール領域(carbinolic region)の密集は、正確な属性の把握を妨害した。最後に、HSQCスペクトル(
図14のa)において、アノマー密度を統合すると、サンプルの平均重合度は4であり、平均MWは約6kDa(反復単位のMWは1500Da)であって、HPSECによって計算された11kDaは多少過大評価された値と類似の値である(
図21)。
【0355】
実施例11:CPS-400のNMR分析
前記実施例において説明されたのと類似の方式でCPS-400の構造的特徴を分析した(表4)。
【0356】
第一に、HSQCスペクトルのアノマー領域(
図22のa及びb)は、いくつかの残基を示しているが、
1H 5.3-5.1ppmにおける信号は、単糖類残基で発生したのに対し、
1H/
13C 5.39/75.5ppmは、アノマー信号ではなくAで表示されたグリセロールユニット(Gro)のC-2であり、アシル化によって低いフィールドへと移動した。O-2における置換基はアラニン(Ala)であり、
1H/
13C 1.64/16.5ppmで確認されたメチル及び4.30/50.2ppmにおけるHα/Cαによって確認された。また、AのH-1/C-1及びH-3/C-3は同等であり、当該HSQC-TOCSY(
図22のa)及びTOCSY(
図22のg)の相関関係に基づいて4.11/65.0ppmで確認された。
【0357】
最後に、C-1(又は、C-3)値は、Gro型テイコ酸の場合のように、Aが両末端でリン酸化されていることを示す。Gerlach et al.,2018を参照したHSQC分析において、2番目の1,3-二リン酸化Groユニット(B)、及び1,5-二リン酸化されたリビトールユニット(Rbo,C)を確認し、このような最後の残基は、リビトール-ホスフェートバックボーンに基づくさらに他のテイコ酸の存在を意味する。単糖類ユニットにおいて、分析は、TOCSYスペクトルのアノマー信号において最大H-6まで磁化(magnetization)の効率的な伝播に基づいてα-グルコースユニットとして確認された最も強い信号(D、E、F’及びF)に集中した。このようなGlcユニットは、13C化学的移動の類似性に基づいてそれ以上置換されなかった(Bock & Pedersen,1983)。
【0358】
このようなユニットの位置は、HMBCスペクトル分析及び参照文献のデータとの比較から推論した。実際に、Eは、Groユニット(H)のO-2に連結されたのに対し(Shashkov,Potekina,Senchenkova,& Kudryashova,2009)、F’は、Rboユニット(I)のO-4に連結された(Streshinskaya et al.,2011)。Dにおいて、H-1は、陽性子(4.30ppm)がHSQC-TOCSYスペクトルにおいて69.9ppmで“CH
2”に連結された78.3ppmにおける炭素(
図18のb)と長距離相関関係を有している(
図23)。このような新しいユニットはGと表示され、
1H/
13C 4.30/78.3及び4.14/66.9ppmにおける密度は、G4及びG5と割り当てられた(
図18のc及び
図23)。Gは、リビトールと識別され、HSQC-TOSCYスペクトル分析によって他の信号を探した。実際に、
1H/
13C 4.16/67.7ppmにおいて“CH
2”密度は、G4を示す信号と3つの相関関係を有しており、この密度はG1と表示した。また、GのC-1(67.7ppm)は、Iに対して報告されたように、隣接位置でグリコシル化されず、リン酸化された炭素を表す。このような情報は、残り2つのHSQC-TOSCY相関関係をC-2(70.5ppm)及びC-3(80.6ppm)に割り当てるようにし、HSQCスペクトルにおいて順にそれに相応するH-2(4.15ppm)及びH-3(3.97ppm)を識別した(
図18、
図23、表4)。したがって、Gは、付着した2つのユニット、F及びDと共に、O-3及びO-4でグリコシル化されたRboである(
図22のbにおけるHMBC)。
【0359】
このような類型の置換は、他のラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株から確認されたことがあるが、そのNMRデータは、リン酸塩がないRboユニットを報告しており、このような化学的移動と本発明のデータは比較できない(Tomita et al.,2017)。しかしながら、我々の結果は、C-2及びC-3に連結されたグルコースユニットを有するリビトールの逆置換パターンを提案したビフィスズ菌のテイコ酸のもの(Valueva et al.,2013)と類似であった。興味深くに、Valueva et al.(2013)に報告された脱リン酸化形態のNMRデータは、Tomita et al.(2009)で報告された3,4-二グルコシル化リビトールのNMRデータと一致している。したがって、このようなリビトールユニットの置換パターン(2,3又は3,4)は、まだ明確に定義されずにいる。したがって、本発明のNMRデータは、CPS-400がGro-及びrbo-型の2つのテイコ酸の混合物であることを示し、それぞれ、非化学量論的方式でいくつかの置換基の存在を示した。Gro-型TAにおいて、非化学量論的置換基は、アラニン及びα-グルコースであった。Rbo-型TAにおいて、α-グルコースは、リビトールのO3及びO4の両方、O4単独で発生するか、又はいずれの位置でも発生しなかった。サイズ排除クロマトグラフィーによって2つのTAの分離を試みたが、CPS-400は約45kDa(
図21)の対称ピークとして現れ、それ以上分離されなかった。
【0360】
実施例12:CPS-100及びCPS-400の免疫刺激活性
前記CPS-100及びCPS-400の免疫反応に対する活性を確認した。
【0361】
全ての免疫細胞を生理学的な比率で混合した脾臓細胞を使用し、免疫システムに対するCPSの効果を確認した。終点分析(Endpoint analysis)は、ELISAにより、個別のサイトカインをテストして行った。サイトカインは、生体内で炎症性又は寛容性免疫反応を媒介し調節する細胞信号伝達に関与する分泌性ペプチド/糖タンパク質グループを意味する。したがって、CPSに露出される時に、免疫細胞プールにおいてサイトカインの歪みは生体内で類似の役割を担うことを意味する。CPS-100及びCPS-400によって生成された免疫反応を確認するために、インターフェロンガンマ(IFN-γ)を炎症性マーカーとし、インターロイキン-10(IL-10)を調節性サイトカインとして分析した。研究結果によれば、CPS-100は、高いIFN-γ及び無視できるレベルのIL-10生産で現れたように、免疫刺激性であることを示す(
図24のa及びb)。一方、TA分画であるCPS-400では、IFN-γのレベルが検出されなかった(
図24のa)。類似の条件において、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、IL-6(interleukin 6)、IL-12(interleukin 12)、IL-17(interleukin 17)及びIL1-β(interleukin 1β)を含む他のサイトカインを評価した。
【0362】
CPS-100は細胞を刺激し、顕著に高いレベルのTNF-α、IL-6及びIL-12の生成を示すのに対し(
図24のc~e)、IL-17及びIL1-βは検出されなかった。一方、CPS-400は、測定された如何なるサイトカインでも明確な増加が見られなかった(
図24のc及e)。IFN-γは、様々な類型の免疫細胞で生成される一次免疫刺激マーカーであるので、CPSの免疫刺激反応の特異性を確認するために、IFN-γの生産がCPS-100の濃度に依存的であるかどうかを確認した。48時間のIFN-γ誘導においてCPS-100のEC50(half maximal effective concentration)は3.16μM(
図24のf)であって、CPS-100が効率的な免疫刺激剤として使用され得ることを意味する。
【0363】
結果的に、CPS-100は、L.plantarum IMB19菌株と類似の免疫刺激特性を示し、これは、L.Plantarum IMB19菌株の免疫賦活活性を示す有効分子がCPS-100であることを意味する。
【0364】
実施例13:L.plantarum IMB19及びCPSのCD8+ T細胞機能の向上及び抗腫瘍免疫効果
in vitroにおける免疫刺激剤としてのCPS活性が生体内で腫瘍抑制活性へとつながり得るかを確認した。経口投与されたL.plantarum IMB19及び腹腔内投与されたCPS治療グループは、皮下黒色腫の成長が顕著に減少したことが確認された(
図25のA及びB)。両グループにおいて、腫瘍成長の遅延はCD8+ T細胞の浸潤と関連している(
図25のC)。腫瘍浸潤CD8+ T細胞によるIFN-γの生成と頻度の増加は、前記投与によってCD8+ T細胞の細胞傷害性活性が顕著に向上したことを意味する(
図25のE及びF)。腫瘍内CD4+ T細胞は、また、両投与グループにおいて、IFN-γ生産の上方調節を示している(
図25のG及びH)。一方、PBS投与グループと比較して、腫瘍内Treg集団の差は見られなかった(
図26のA及びB)。L.plantarum IMB19の経口投与は、EMT-6乳癌において腫瘍成長を調節した(
図27)。結果的に、前記データは、CPS及びL.plantarum IMB19が癌成長を抑制する抗腫瘍免疫活性を向上させるということを意味する。
【0365】
実施例14:CPSの腫瘍内マクロファージ浸潤増加
CPSは、腫瘍においてマクロファージの浸潤を増加させる。CD8+ T細胞反応を調節する特定APC類型を確認するために、CPSの腹膜内投与と共に、B16.F10黒色腫細胞を移植し、初期腫瘍においてAPCの浸潤を評価した。CPSは主に、CD11c+DCに比べて、腫瘍においてCD11c+CD11b+マクロファージの頻度を増加させた(
図28のA)。流動細胞計測法によって確認した結果、マクロファージの数は、CPS投与されたマウスにおいて顕著に高く現れた(
図28のA)。同じ条件で、CD11c+CD11b+マクロファージとCD11c+樹状細胞の活性化マーカーを確認した。驚くことに、CPS処理された樹状細胞の活性化状態は、対照群と有意味な差を示さなかった(
図28のC)。しかしながら、マクロファージは、より活性化されており、CD11b、MHC I、MHC II、CD86及びCD40のより高い発現を示した(
図28のB)。同じマウスにおいて全身的な適応免疫システムの活性化を確認するために、排水リンパ節においてCD8+ T細胞早期活性化マーカーであるCD69を確認した。対照群と比較して、CD69は、CPS投与によって明確且つ有意に上方調節された(
図28のD)。このようなデータは、CPSがマクロファージの活性化に重要な働きをし、腫瘍成長を制限できることを意味する。
【0366】
実施例15:CPSによるマクロファージの炎症性マクロファージへの分化及びM2マクロファージのM1表現型への再プログラミング
マクロファージに対するCPSの効果を特性化するために、マクロファージをCPSに露出する場合に表現型の変化を確認した。腹膜CD11b+F4/80+マクロファージは、CPSを処理した場合に活性化された表現型を示しており、LPS又はPam3CSK4処理された場合に比べて、CPS処理されたマクロファージにおいてMHC I、MHC II、CD68、iNOS2、及びCD40の顕著な上方調節を示し(
図28のE)、M1表現型又はマクロファージの炎症性表現型を示した。特に、Pam3CSK4と類似に、TLR2はCPS処理時に上方調節され、CPSがTLR2リガンドであることを意味する。しかしながら、生体内実験とは対照的に、CD80及びCD86の発現は変更されなかった(
図28のE)。
【0367】
代案として、活性化されたマクロファージ又はM2表現型マクロファージは、免疫抑制に大きく寄与し、腫瘍の成長を向上させる(Ann Oncol 28,xii18-xii32(2017))(Front Oncol 9,421(2019))。したがって、前記結果は、腫瘍においてCPSがM2マクロファージをM1表現型に再プログラミングし得ることを示す。実際に、IL-4誘導M2表現型腹膜マクロファージは、LPS及びPam3CSK4と比較して、CPSを処理する場合に顕著に増加した(
図28のF)。また、炎症性マクロファージマーカーiNOS2は、MHC I、MHC II、CD40及びCD68とは別に、有意に上方調節された(
図5のF)。このようなデータは、CPSの処理が炎症性マクロファージを生成し、免疫抑制性マクロファージを免疫刺激性表現型に再プログラミングすることを意味する。
【0368】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。
【産業上の利用可能性】
【0369】
本発明の新規ラクトバシラスプランタルムIMB19菌株及び前記菌株由来の多糖体は、優れたCD8+ T細胞活性の刺激能力及びTreg細胞の抑制活性を示し、CPS腫瘍内マクロファージ浸潤増加、マクロファージの炎症性(M1)表現型への分化/再プログラミングのような様々なメカニズムによって抗腫瘍免疫反応を刺激及び向上させる。したがって、本発明の菌株及び菌株由来多糖体は、対象における免疫の調節、特に免疫増進のために有用に使用されてよく、抗腫瘍免疫反応を誘導及び向上させ、腫瘍の成長を抑制させることができる。本発明の新規菌株及び菌株由来の多糖体は、例えば、腫瘍、感染性疾患、免疫機能異常を原因又は症状とする様々な免疫疾患の予防、改善又は治療に有用である。
【配列表】