(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230829BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
E02F9/00 K
E02F3/36 C
(21)【出願番号】P 2023510599
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005331
(87)【国際公開番号】W WO2022209339
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021061496
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】朝日 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】加庭 啓充
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓人
(72)【発明者】
【氏名】天童 作
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104275(JP,A)
【文献】特開2004-190330(JP,A)
【文献】特開2004-183421(JP,A)
【文献】実開昭54-180372(JP,U)
【文献】登録実用新案第3000513(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0059979(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、
前記車体に回動可能に取付けられたブームと、
前記ブームの先端に回動可能に取付けられたアームと、
前記アームの先端に回動可能に取付けられた作業具と、
前記作業具を回動させるために前記アームに一端が取付けられた作業具シリンダと、
前記アームの先端側に回動可能に取付けられ、前記作業具シリンダの他端と前記作業具との間を連結するリンクとを備えてなる建設機械において、
前記作業具シリンダは、前記アームを前記ブーム側に折畳んだときに前記ブームと対面する前記アームの下面側に配置され、
前記リンクには、前記作業具シリンダの伸縮動作に同期して回動変位し、前記作業具と前記作業具シリンダとの間に介在するシリンダガードが設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記シリンダガードは、縮小状態となった前記作業具シリンダを全長に亘って覆う長さ寸法を有し、幅方向の両端に屈曲部が設けられた板体により形成され、前記リンクに対し一定の角度を保った状態で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前
記シリンダガードは、長さ方向の一端側が前記リンクに固定され、前記シリンダガードの長さ方向の他端は自由端となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧シリンダによって作動する作業装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を代表する油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより車体が構成されている。上部旋回体の前部側には作業装置が設けられている。そして、高層建築物等の地上高さが大きな構造物を解体する場合には、上部旋回体の前部側に解体作業用の作業装置が取付けられる。
【0003】
解体作業用の作業装置は、通常、基端が上部旋回体の旋回フレームに回動可能に連結されたブームと、ブームの先端に回動可能に連結されたアームと、アームの先端に回動可能に連結された圧砕機等の作業具(作業アタッチメント)とを含んで構成される。旋回フレームとブームとの間には、ブームを起伏させるブームシリンダが設けられ、ブームとアームとの間には、ブームの先端側でアームを回動させるアームシリンダが設けられている。アームと作業具との間には、アームの先端側で作業具を回動させる作業具シリンダ(アタッチメントシリンダ)が設けられ、この作業具シリンダは、通常、アームの上面側に配置されている。
【0004】
高層建築物等の解体作業現場、あるいは天井がある作業現場では、アームに対する作業具の可動範囲が狭く、作業具はアームの上面より低い位置で作業を行うことが多い。このため、アームの上面側に配置された作業具シリンダの地上高さが最大となることが多く、解体すべき建築物の天井、鉄筋等に作業具シリンダが接触するリスクが高い。
【0005】
これに対し、従来技術では、作業具シリンダのチューブ側に一端が取付けられたチューブ側ガードと、ロッド側に一端が取付けられたロッド側ガードとを備え、チューブ側ガードの他端側とロッド側ガードの他端側とが移動可能に連結されたシリンダガードが提案されている。このシリンダガードは、チューブ側ガードの他端側にガイドが設けられ、ロッド側ガードの他端側がガイドによってスライド可能に支持される。これにより、作業具シリンダの全ストロークの範囲において、チューブ側ガードとロッド側ガードとによって作業具シリンダを上方から覆うことができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
しかし、特許文献1によるシリンダガードは、作業具シリンダの伸縮動作により、ロッド側ガードがチューブ側ガードのガイドに対して摺動する。このため、ロッド側ガードとチューブ側ガードとの摺動部が、解体作業によって生じた建築物の鉄筋、コンクリート等の破片を噛込むことにより、ロッド側ガードの円滑なスライド動作が妨げられるという問題がある。また、チューブ側ガードとロッド側ガードとの2つのガードが必要となる上に、これらをチューブおよびロッドに取付けるためのボルト、ピン等の取付具が必要となる。このため、特許文献1によるシリンダガードは、部品点数、取付工数が増加し、シリンダガードの製造コストが嵩むという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、作業具シリンダを保護することができるようにした建設機械を提供することにある。
【0009】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、前記車体に回動可能に取付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取付けられたアームと、前記アームの先端に回動可能に取付けられた作業具と、前記作業具を回動させるために前記アームに一端が取付けられた作業具シリンダと、前記アームの先端側に回動可能に取付けられ、前記作業具シリンダの他端と前記作業具との間を連結するリンクとを備えてなる建設機械において、前記作業具シリンダは、前記アームを前記ブーム側に折畳んだときに前記ブームと対面する前記アームの下面側に配置され、前記リンクには、前記作業具シリンダの伸縮動作に同期して回動変位し、前記作業具と前記作業具シリンダとの間に介在するシリンダガードが設けられている。
【0010】
本発明によれば、シリンダガードは、作業具シリンダの伸縮動作に同期して回動変位し、リンクと一体に移動しつつ作業具と作業具シリンダとの間に介在する。この結果、例えば作業具を用いて建築物の解体作業等を行うときに、建築物から飛散した破片が作業具シリンダに衝突するのをシリンダガードによって防止し、作業具シリンダを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態が適用された解体作業用の油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図2】作業具シリンダが縮小状態となったときのアーム、リンク、シリンダガードを示す左側面
図である。
【
図3】作業具シリンダが縮小状態と伸長状態との間にあるときのアーム、リンク、シリンダガードを示す左側面
図である。
【
図4】作業具シリンダが伸長状態となったときのアーム、リンク、シリンダガードを示す左側面
図である。
【
図5】アーム、リンク、作業具シリンダ、シリンダガードを
図2中の矢示V-V方向から見た正面図である。
【
図7】油圧ショベルが建築物の解体作業を行う状態を示す左側面図である。
【
図8】作業具シリンダを縮小状態として解体作業を行う作業装置を示す左側面図である。
【
図9】作業具シリンダが縮小状態と伸長状態との間にある状態で解体作業を行う作業装置を示す左側面図である。
【
図10】作業具シリンダを伸長状態として解体作業を行う作業装置を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、解体作業用の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0013】
解体作業用の油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられた作業装置8とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、例えば高層建築物等の地上高さが大きな構造物を解体する解体作業に好適に用いられる。
【0014】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4と、旋回フレーム4の後端側に設けられたカウンタウエイト5と、旋回フレーム4の前部左側に配置されたキャブ6と、カウンタウエイト5の前側に配置された建屋カバー7とを含んで構成されている。キャブ6は、オペレータが油圧ショベル1を操縦するための運転室を画成し、キャブ6内には下部走行体2の走行動作を制御する走行レバー・ペダル装置、上部旋回体3の旋回動作、作業装置8の動作を制御する操作レバー装置(いずれも図示せず)が設けられている。建屋カバー7の内部には、エンジン、油圧ポンプ、熱交換器等の搭載機器(図示せず)が収容されている。
【0015】
旋回フレーム4の前端側には、底板から山型に立上がる支持ブラケット(図示せず)が一体に設けられている。この支持ブラケットは、後述するロアブーム9の基端側を回動可能に支持すると共に、ブームシリンダ19の基端側を回動可能に支持している。
【0016】
マルチブーム式の作業装置8は、上部旋回体3を構成する旋回フレーム4の前端部に取付けられている。作業装置8は、ブームを構成するロアブーム9およびアッパブーム10と、アームを構成するミドルアーム11およびアーム12と、作業具13と、リンク16とを含んで構成されている。
【0017】
ロアブーム9の基端側は、旋回フレーム4の前端側(前記支持ブラケット)に回動可能に取付けられている。ロアブーム9の先端には、アッパブーム10の基端側がボルト等の締結具を用いて固定されている。アッパブーム10の先端には、ミドルアーム11の基端側がピン11Aを用いて回動可能に連結されている。ミドルアーム11には、第1ブラケット11Bと第2ブラケット11Cとが隣接して設けられている。ミドルアーム11の先端には、アーム12の基端側がピン11Dを用いて回動可能に連結されている。
【0018】
アーム12は、上面12A、下面12B、左右の側面12Cによって囲まれた断面四角形状の角筒体として形成されている。
図10に示すように、アーム12をアッパブーム10側に折畳んだときに、アーム12の下面12Bはアッパブーム10と対面する。アーム12の下面12Bには、第1ブラケット12Dと第2ブラケット12Eとが隣接して設けられている。アーム12の先端には、ピン12Fを用いて作業具13の継手装置14が回動可能に連結されている。
【0019】
作業具13は、アーム12の先端に回動可能に取付けられている。本実施形態では、継手装置14と圧砕機15とによって作業具13が構成されている。
【0020】
継手装置14は、例えばバケット、グラップル、圧砕機15等の各種の作業用アタッチメントを、油圧ショベル1の作業内容に応じてアーム12の先端に交換して取付けるための装置である。本実施形態では、解体作業用の圧砕機15が継手装置14に取付けられ、これら継手装置14と圧砕機15とにより作業具13が構成されている。
図2に示すように、継手装置14は、ベース部材14Aと、ベース部材14Aに固定された固定フック14Bと、可動フック14Cとを有している。可動フック14Cは、ベース部材14Aに移動可能に設けられ、固定フック14Bに対して接近または離間する方向に移動する。
【0021】
解体作業用の圧砕機15は、継手装置14を介してアーム12の先端に回動可能に取付けられている。圧砕機15の基端側には2本のピン15Aが設けられ、これら2本のピン15Aが継手装置14の固定フック14Bおよび可動フック14Cに係合することにより、圧砕機15が継手装置14に固定されている。圧砕機15は、油圧シリンダによって開閉する左右の爪部材15Bを有し、左右の爪部材15Bによって建物等を破砕すると共に、破砕によって生じた破片の落下防止のため、破片を周囲の安定した場所に置く。
【0022】
リンク16は、アーム12の先端側に設けられ、後述する作業具シリンダ22と作業具13との間を連結している。
図2ないし
図5に示すように、リンク16は、第1リンク17と第2リンク18とにより構成され、作業具シリンダ22の伸縮動作に同期して回動することにより、アーム12に対して作業具13を回動させる。
【0023】
第1リンク17は、直線状に延びる一対のリンク板からなり、アーム12を挟んで左右方向で対面している。第1リンク17の長さ方向の中間部は、アーム12の先端側のうち継手装置14との連結部(ピン12F)に隣接した位置に、ピン17Aを介して回動可能に連結されている。第1リンク17の長さ方向の一端17Bは、アーム12の下面12B側に配置され、作業具シリンダ22のロッド22Bに連結されている。第1リンク17の長さ方向の他端17Cは、アーム12の上面12A側に配置され、第2リンク18に連結されている。左右の第1リンク17の一端17B側には、それぞれ2個のシートスクリュ(図示せず)が設けられている。
【0024】
第2リンク18は、第1リンク17の他端17Cと継手装置14との間に設けられ、両者間を連結している。第2リンク18の長さ方向の一端は、第1リンク17の他端17Cにピン18Aを介して回動可能に連結されている。第2リンク18の長さ方向の他端は、継手装置14のベース部材14Aのうちピン12Fから離間した位置に、ピン18Bを用いて回動可能に連結されている。
【0025】
旋回フレーム4とロアブーム9との間には、左右一対(2本)のブームシリンダ19が設けられている(左側のみ図示)。ブームシリンダ19のボトム側は、旋回フレーム4の前記支持ブラケットに回動可能に取付けられている。ブームシリンダ19のロッド側は、ロアブーム9の先端側にピン19Aを用いて回動可能に連結されている。アッパブーム10とミドルアーム11との間には、左右一対(2本)のミドルアームシリンダ20が設けられている(左側のみ図示)。ミドルアームシリンダ20のボトム側は、アッパブーム10にピン20Aを用いて回動可能に連結され、ミドルアームシリンダ20のロッド側は、ミドルアーム11の第1ブラケット11Bにピン20Bを用いて回動可能に連結されている。ミドルアーム11とアーム12との間には、アームシリンダ21が設けられている。アームシリンダ21のボトム側は、ミドルアーム11の第2ブラケット11Cにピン21Aを用いて回動可能に連結され、アームシリンダ21のロッド側は、アーム12の第1ブラケット12Dにピン21Bを用いて回動可能に連結されている。
【0026】
作業具シリンダ22は、アーム12の下面12B側に配置され、アーム12とリンク16との間に設けられている。作業具シリンダ22は、チューブ22Aと、チューブ22A内に摺動可能に設けられたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端側がチューブ22Aから突出したロッド22Bとを有している。作業具シリンダ22の長さ方向の一端(チューブ22A)は、アーム12の第2ブラケット12Eにピン22Cを用いて回動可能に連結されている。作業具シリンダ22の長さ方向の他端(ロッド22B)は、第1リンク17の一端17Bにピン22Dを用いて回動可能に連結されている。
【0027】
従って、作業具シリンダ22が伸縮動作を行うことにより、第1リンク17はアーム12との連結部(ピン17A)を中心として回動し、この第1リンク17の動作が第2リンク18を介して継手装置14に伝わる。これにより、継手装置14および圧砕機15からなる作業具13は、アーム12との連結部(ピン12F)を中心として回動する。本実施形態では、作業具シリンダ22が縮小状態と伸長状態との間で伸縮することにより、圧砕機15は、
図8ないし
図10に示す範囲で回動変位しつつ、建築物の解体作業を行う。
【0028】
この場合、作業具シリンダ22はアーム12の下面12B側に配置されているので、ピン12Fを中心として作業具13を上向きに回動させるときには、作業具シリンダ22は伸長動作となる。一方、作業具13を下向きに回動させるときには、作業具シリンダ22は縮小動作となる。従って、例えばアーム12の上面12A側に作業具シリンダ22が配置される場合に比較して、解体作業によって生じた鉄筋、コンクリート等の廃材を作業具13を用いて持上げる場合には、作業具シリンダ22が伸長動作となって大きな力を発生することができる。
【0029】
次に、本実施形態に用いられるシリンダガード23について、
図2ないし
図6を参照して説明する。シリンダガード23は、リンク16を構成する一対の第1リンク17に固定されている。シリンダガード23は、作業具シリンダ22が縮小状態(
図2に示す状態)と伸長状態(
図4に示す状態)との間で伸縮するときに、作業具13と作業具シリンダ22との間に介在し、作業具シリンダ22を保護する。
【0030】
図6に示すように、シリンダガード23は、鋼板材等を用いて長方形の板体として形成され、一対の第1リンク17に取付けられる取付板部23Aと、取付板部23Aに対して傾斜した状態で一体に設けられたガード板部23Bとを含んで構成されている。ガード板部23Bは、作業具シリンダ22が
図2に示す縮小状態となったときに作業具シリンダ22に最も接近するように、取付板部23Aに対する傾斜角度が設定されている。
図2および
図5に示すように、シリンダガード23は、縮小状態となった作業具シリンダ22を全長に亘って覆う長さ寸法を有している。また、シリンダガード23の幅寸法は、一対の第1リンク17の間隔よりも僅かに大きく設定され、シリンダガード23の幅方向の両端側には、それぞれ屈曲部23Cが設けられている。この屈曲部23Cは、取付板部23Aおよびガード板部23Bに対して直角に折曲げられ、シリンダガード23全体の強度を高めている。
【0031】
シリンダガード23の取付板部23Aには、複数(例えば4個)のボルト挿通孔23Dが設けられている。ボルト挿通孔23Dは、リンク16を構成する一対の第1リンク17に2個ずつ設けられたシートスクリュ(図示せず)に対応している。従って、ボルト挿通孔23Dに挿通したボルト24を、一対の第1リンク17のシートスクリュに螺着することにより、シリンダガード23が第1リンク17に固定される。このように、シリンダガード23は、長さ方向の一端23Eが第1リンク17に固定され、長さ方向の他端23Fが自由端となっている。シリンダガード23のガード板部23Bと第1リンク17とがなす角度θは、作業具シリンダ22の伸縮動作に関わらず常に一定となっている。
【0032】
また、取付板部23Aの幅方向の両端側に設けられた屈曲部23Cのうち、作業具シリンダ22と第1リンク17との間を連結するピン22Dの軸線と重なる位置には、それぞれ半円形状の切欠部23Gが形成されている。この切欠部23Gは、シリンダガード23を第1リンク17に取付けたときに、ピン22Dの両端が屈曲部23Cに干渉するのを防止する。
【0033】
本実施形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、例えば
図7に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2によって自走することにより、解体すべき建築物100に接近する。そして、作業装置8のブームシリンダ19、ミドルアームシリンダ20、アームシリンダ21をそれぞれ伸長状態とし、ロアブーム9、アッパブーム10、ミドルアーム11、アーム12を直線状に起立させる。これにより、作業具13が高所に配置され、油圧ショベル1は、圧砕機15によって建築物100を解体し、鉄筋、コンクリート等の廃材を、輸送車両の荷台等(図示せず)に廃棄する。
【0034】
ここで、作業装置8を直線状に起立させた状態で解体作業を行うときには、
図8に示すように、作業具シリンダ22を縮小状態とすることにより、作業具13をピン12Fを中心として下向きに回動させ、圧砕機15によって建築物100を解体する。このように、作業装置8を直線状に起立させた状態では、作業具13(圧砕機15)は、通常、ピン12Fを中心として下向きに回動した姿勢で解体作業を行う。作業具13をピン12Fを中心として上向きに回動させた姿勢で解体作業を行うことは一般的ではない。この状態では、作業具シリンダ22が建築物100に接近する。しかし、作業具シリンダ22が縮小状態となることにより、シリンダガード23は、作業具シリンダ22の全体を覆うことができる。この結果、圧砕機15による建築物100の解体作業時に、鉄筋、コンクリート等の破片が圧砕機15の周囲に飛散したとしても、シリンダガード23は、これらの破片が作業具シリンダ22に衝突するのを防止し、作業具シリンダ22を保護することができる。
【0035】
また、
図9に示すように、アーム12をミドルアーム11の先端から水平方向に延ばした状態で解体作業を行う場合には、作業具シリンダ22を縮小状態と伸長状態との中間とする。そして、作業具13を建築物100に正対する姿勢とした状態で、圧砕機15によって建築物100を解体する。このように、アーム12を水平方向に延ばした状態では、作業具13をピン12Fを中心として上向きに回動させた姿勢で解体作業を行うことは一般的ではない。この状態では、シリンダガード23は、建築物100に正対することにより、建築物100から飛散する鉄筋、コンクリート等の破片から作業具シリンダ22を保護することができる。
【0036】
さらに、
図10に示すように、アーム12をミドルアーム11の先端から下向きに延ばした状態で解体作業を行う場合には、作業具シリンダ22が建築物100から離れると共に、建築物100と作業具シリンダ22との間にアーム12が配置される。また、アーム12の先端から突出した作業具シリンダ22のロッド22Bの先端側は、シリンダガード23によって覆われる。この状態では、建築物100から飛散する鉄筋、コンクリート等の破片に対し、アーム12によって作業具シリンダ22のチューブ22Aおよびロッド22Bの大部分を保護することができる。一方、作業具シリンダ22のロッド22Bの先端側は、シリンダガード23によって保護することができる。
【0037】
このように、本実施形態によるシリンダガード23は、作業具シリンダ22が縮小状態と伸長状態との間で伸縮するときに、常に作業具13と作業具シリンダ22との間に介在することにより、作業具シリンダ22を保護することができる。この場合、シリンダガード23は、その一端23E側がリンク16の第1リンク17にボルト24を用いて固定され、第1リンク17と一体に回動変位しつつ作業具シリンダ22を保護する。このため、シリンダガード23は、例えば従来技術のように、ロッド側ガードとチューブ側ガードとの2部材を摺動変位可能に組付けるシリンダガードに比較して、摺動部への破片の噛み込みによって動作不良が生じる不具合がない。従って、シリンダガード23は、長期に亘って確実に作業具シリンダ22を保護することができる。
【0038】
しかも、シリンダガード23は単一部品からなり、ボルト24を用いて容易に第1リンク17に取付けることができる。従って、例えば従来技術のように、ロッド側ガードとチューブ側ガードとの2部材からなるシリンダガードに比較して、部品点数、取付工数を低減することができる。従って、シリンダガード23は、製造コストの低減にも寄与することができる。
【0039】
かくして、本実施形態による油圧ショベル1は、作業装置8は、上部旋回体3に回動可能に取付けられたロアブーム9およびアッパブーム10と、アッパブーム10の先端に回動可能に取付けられたミドルアーム11およびアーム12と、アーム12の先端に回動可能に取付けられた作業具13と、作業具13を回動させるためにアーム12に一端が取付けられた作業具シリンダ22と、アーム12の先端側に回動可能に取付けられ、作業具シリンダ22の他端と作業具13との間を連結するリンク16とを備え、作業具シリンダ22は、アーム12をアッパブーム10側に折畳んだときにアッパブーム10と対面するアーム12の下面12B側に配置され、リンク16には、作業具シリンダ22の伸縮動作に同期して回動変位し、作業具13と作業具シリンダ22との間に介在するシリンダガード23が設けられている。
【0040】
この構成によれば、シリンダガード23は、作業具シリンダ22の伸縮動作に同期して回動変位することにより、リンク16と一体に移動しつつ作業具13と作業具シリンダ22との間に介在する。この結果、例えば作業具13を用いて建築物の解体作業等を行うときに、建築物から飛散した破片が作業具シリンダ22に衝突するのをシリンダガード23によって防止し、作業具シリンダ22を保護することができる。
【0041】
実施形態では、シリンダガード23は、縮小状態となった作業具シリンダ22を全長に亘って覆う長さ寸法を有し、幅方向の両端に屈曲部23Cが設けられた板体により形成され、第1リンク17に対し一定の角度を保った状態で固定されている。この構成によれば、シリンダガード23と第1リンク17との間に摺動部を設ける必要がない。従って、この摺動部に解体作業によって生じた破片等を噛み込むことがなく、シリンダガード23の動作不良を回避することができる。また、屈曲部23Cによってシリンダガード23全体の強度を高めることができる。
【0042】
実施形態では、シリンダガード23は、長さ方向の一端23E側が第1リンク17に固定され、シリンダガード23の長さ方向の他端23Fは自由端となっている。この構成によれば、シリンダガード23は、作業具シリンダ22の伸縮動作に応じて第1リンク17と一緒に回動変位しつつ、作業具シリンダ22を保護することができる。
【0043】
なお、実施形態では、アーム12の先端に、継手装置14を介して圧砕機15を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、アーム12の先端に圧砕機15を直接取付ける構成としても良い。
【0044】
また、実施形態では、アッパブーム10の先端にミドルアーム11を介してアーム12を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、アッパブーム10の先端にアーム12を直接取付ける構成としても良い。
【0045】
さらに、実施形態では、アーム12の先端に継手装置14を介して解体作業用の圧砕機15を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、バケット、グラップル、リフティングマグネット等の他の作業具を備えた油圧ショベルにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
8 作業装置
9 ロアブーム(ブーム)
10 アッパブーム(ブーム)
11 ミドルアーム(アーム)
12 アーム
12B 下面
13 作業具
16 リンク
17 第1リンク
18 第2リンク
22 作業具シリンダ
23 シリンダガード
23C 屈曲部
23E 一端
23F 他端