(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】コンクリート柱の型枠構築装置およびそれを用いたコンクリート柱の型枠構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 13/02 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
E04G13/02 A
E04G13/02 Z
(21)【出願番号】P 2019028613
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】521343611
【氏名又は名称】株式会社森本工業
(73)【特許権者】
【識別番号】517400214
【氏名又は名称】林 久治郎
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 明寛
(72)【発明者】
【氏名】林 久治郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 高男
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-264640(JP,A)
【文献】特開平03-103569(JP,A)
【文献】特開平04-005367(JP,A)
【文献】特開平11-343734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面型枠の両側端部にコーナー型枠が連結可能であり、かつ、これら面型枠およびコーナー型枠が上下方向にも連結可能に構成された組立式の型枠と;
複数の前記コーナー型枠の頭頂面同士に亙って載置可能な架台と;
この架台に配設された吊上げ装置と;を備え、
前記架台の下方には支軸が設けられており、この支軸はガイド部材に沿ってスライド可能であって、かつ、これら支軸とガイド部材とは固定可能であるとともに、
このガイド部材が前記コーナー型枠に固定可能であることを特徴とするコンクリート柱の型枠構築装置。
【請求項2】
コーナー型枠の側端部に止着部が設けられており、この止着部に面型枠またはガイド部材が選択的に止着可能であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート柱の型枠構築装置。
【請求項3】
面型枠またはコーナー型枠に足場部材が固定可能であることを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート柱の型枠構築装置。
【請求項4】
面型枠の両側端部にコーナー型枠を連結して基準段の型枠を組み立てる工程と;
前記各コーナー型枠の頭頂面に第一コーナー型枠を、更にその頭頂面に第二コーナー型枠をそれぞれ継ぎ足して、これら第一コーナー型枠および第二コーナー型枠に亙る側面に沿ってガイド部材を固定する工程と;
前記第二コーナー型枠の頭頂面同士に亙って、吊上げ装置が配設された架台を載置する工程と;
前記第一コーナー型枠の間に面型枠をそれぞれ連結する工程と;
架台の下方に設けた支軸を前記ガイド部材に沿って上方向にスライドして、この支軸により架台を上昇させて、架台の下面と第二コーナー型枠の頭頂面との間にスペースを形成する工程と;
このスペースに新規コーナー型枠を挿入して第二コーナー型枠と連結した後、
架台を下降して新規コーナー型枠の頭頂面に載置する工程と;
支軸のみを下降して前記ガイド部材に重ねて固定し、ガイド部材をコーナー型枠から離脱する工程と;
これら固定された支軸とガイド部材とを同時に上昇させて、新規コーナー型枠および第二コーナー型枠に亙る側面に沿ってガイド部材を固定する工程とを含んでなることを特徴とするコンクリート柱の型枠構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠工の改良、更に詳しくは、架台を支持するための支柱を設ける必要がなく、型枠の剛性を巧みに利用して、型枠そのものを架台支持に利用することができるコンクリート柱の型枠構築装置およびそれを用いたコンクリート柱の型枠構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路の橋脚などの高層のコンクリート柱を建造するにあっては、所定の高さまでコンクリートを打設した後に、型枠を上方に継ぎ足してコンクリートを段階的に積み上げていく工法が知られており、その型枠の移動に、所謂「セルフクライミング装置」を用いるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、かかるセルフクライミング装置にあっては、型枠の上部に架台を設けてやぐら状にして、その架台にジャッキやウインチ、ホイスト等の小型の吊上げ装置を設置することによって、型枠等の部材の吊り上げを行うことができ、作業性を向上することができる。
【0004】
しかしながら、この架台を設けるためには、型枠構造とは別に架台の支持構造を設ける必要があり、例えば、支柱を近くに立てたり、既施工コンクリート部分などに支柱を固定せねばならず、設置や撤去のための作業スペースやコストが余計にかかってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のコンクリート型枠工に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、架台を支持するための支柱を設ける必要がなく、型枠の剛性を巧みに利用して、型枠そのものを架台支持に利用することができるコンクリート柱の型枠構築装置およびそれを用いたコンクリート柱の型枠構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0008】
即ち、本発明は、面型枠11の両側端部にコーナー型枠12が連結可能であり、かつ、これら面型枠11およびコーナー型枠12が上下方向にも連結可能に構成された組立式の型枠1と;
複数の前記コーナー型枠12の頭頂面同士に亙って載置可能な架台2と;
この架台2に配設された吊上げ装置3と;を備え、
前記架台2の下方には支軸41を設け、この支軸41をガイド部材42に沿ってスライド可能にして、かつ、これら支軸41とガイド部材42とを固定可能にするとともに、
このガイド部材42を前記コーナー型枠12に固定可能にするという技術的手段を採用したことによって、コンクリート柱の型枠構築装置を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、コーナー型枠12の側端部に止着部を設け、この止着部に面型枠11またはガイド部材42を選択的に止着可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、面型枠11またはコーナー型枠12に足場部材を固定可能にするという技術的手段を採用した。
【0011】
また、本発明は、面型枠11の両側端部にコーナー型枠12Aを連結して基準段の型枠1を組み立てる工程と;
前記各コーナー型枠12Aの頭頂面に第一コーナー型枠12Pを、更にその頭頂面に第二コーナー型枠12Qをそれぞれ継ぎ足して、これら第一コーナー型枠12Pおよび第二コーナー型枠12Qに亙る側面に沿ってガイド部材42を固定する工程と;
前記第二コーナー型枠12Qの頭頂面同士に亙って、吊上げ装置3が配設された架台2を載置する工程と;
前記第一コーナー型枠12Pの間に面型枠11をそれぞれ連結する工程と;
架台2の下方に設けた支軸41を前記ガイド部材42に沿って上方向にスライドして、この支軸41により架台2を上昇させて、架台2の下面と第二コーナー型枠12Qの頭頂面との間にスペースを形成する工程と;
このスペースに新規コーナー型枠12Nを挿入して第二コーナー型枠12Qと連結した後、
架台2を下降して新規コーナー型枠12Nの頭頂面に載置する工程と;
支軸41のみを下降して前記ガイド部材42に重ねて固定し、ガイド部材42をコーナー型枠12から離脱する工程と;
これら固定された支軸41とガイド部材42とを同時に上昇させて、新規コーナー型枠12Nおよび第二コーナー型枠12Qに亙る側面に沿ってガイド部材42を固定する工程とを含んでなるようにするという技術的手段を採用したことによって、コンクリート柱の型枠構築方法を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート柱の型枠構築装置および構築方法は、架台を支持する支軸およびガイド部材をコーナー型枠に固定可能にしたことによって、架台を支持するための支柱を設ける必要がなく、型枠の剛性を巧みに利用して、型枠そのものを架台支持に利用することができる。
【0013】
したがって、架台の支持構造の設置や撤去のための作業スペースやコストが余計にかかることがない。また、コーナー型枠と支軸とガイド部材、吊上げ装置とによって架台を上昇させることができるので、大掛かりなクレーン設備を現場に常駐させる必要がなくなる。
【0014】
このように、施工負担が軽減して少ない人員で済み、工期短縮およびコスト削減を実現することができることから、産業上の利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の型枠構築装置を表わす全体斜視図である。
【
図2】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図3】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図4】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図5】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図6】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図7】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図8】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図9】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【
図10】本発明の型枠構築方法の手順を表わす説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を
図1から
図10に基づいて説明する。
図1中、符号1で指示するものは型枠であり、符号2で指示するものは架台、符号3で指示するものは吊上げ装置である。
【0017】
<型枠構築装置について>
まず、本発明のコンクリート柱の型枠構築装置の構成について以下に説明する。本実施形態における型枠1は組立式であって、面型枠11の両側端部にコーナー型枠12が連結可能に構成されている。本実施形態では、面型枠11の内側面が平面状であり、コーナー型枠12の内側面には直線または曲面(好ましくは円弧)が形成されているものを採用することができる。
【0018】
本実施形態では、これら面型枠11およびコーナー型枠12は、鋼鉄等の高強度の材料を使用することができる。型枠自体に強度を持たせることにより、セパレータおよび支保工のバタ材が不要となる。また、各型枠の構造は、複数の鋼板を溶接等で結合してフランジやリブを設けたものにすることができる。なお、型枠の連結方法としては、面型枠11とコーナー型枠12との接合部分にそれぞれ孔部を設けてボルトにより固定したり、万力で挟持したりするなどの手段を採用することができる。
【0019】
そして、これら面型枠11およびコーナー型枠12が上下方向にも連結可能に構成されている。この場合の連結手段も前記同様である。
【0020】
次に、架台2は、複数の前記コーナー型枠12の頭頂面同士に亙って載置可能なフレームである。この架台2は、棒状部材(好ましくはH形鋼)を結合して構成されている。
【0021】
また、この架台2には吊上げ装置3が配設されている。この吊上げ装置3は、例えば、ジャッキやウインチ、ホイスト等の小型のものを採用することができ、架台の各隅角部や、架台の下部において水平方向に移動自在に配設することができる。
【0022】
そして、前記架台2の下方には支軸41が設けられており、この支軸41はガイド部材42に沿って鉛直方向にスライド可能である。本実施形態では、ガイド部材42としてコの字型チャンネル部材のレールを採用することができ、その他、筒状のガイド部材42の内部に支軸41を挿通させる構造にすることもできる。なお、対向する支軸41同士を梁等の連結材で連結することによって、構造的強度を上げ、支軸41同士の平行位置を維持して連動しやすくすることができて好ましい。
【0023】
また、これら支軸41とガイド部材42とは固定可能であるとともに、このガイド部材42は前記コーナー型枠12(の側面)にも固定可能である。
【0024】
本実施形態では、コーナー型枠12の側端部に止着部が設けられており、この止着部に面型枠11またはガイド部材42が選択的に止着可能である。止着部の構造として、孔部を形成することが好ましく、固定手段としてはボルト等を採用する。このように止着部が共用できることによって、架台を支持する支柱を別に設ける必要がなくなるのである。
【0025】
なお、本実施形態では、必要に応じて、面型枠11またはコーナー型枠12に足場部材を固定可能にすることもできる。
【0026】
<型枠構築方法について>
次に、本発明のコンクリート柱の型枠構築方法について以下に説明する。コンクリート柱を形成するためには、鉄筋工およびコンクリート工も当然に必要であるが、本実施形態においては、鉄筋工やコンクリート工の図示や詳細な説明は省略する。まず、
図2に示すように、面型枠11の両側端部にコーナー型枠12Aを連結して基準段の型枠1を組み立てる。こうすることにより、この基準段の型枠1の内側スペースに配筋してコンクリートを打設することができる。
【0027】
そして、前記各コーナー型枠12Aの頭頂面に第一コーナー型枠12Pを、更にその頭頂面に第二コーナー型枠12Qをそれぞれ継ぎ足して、これら第一コーナー型枠12Pおよび第二コーナー型枠12Qに亙る側面に沿ってガイド部材42を固定する。
【0028】
次いで、前記第二コーナー型枠12Qの頭頂面同士(本実施形態では4本)に亙って、吊上げ装置3が配設された架台2を載置する。
【0029】
この際、ガイド部材42が固定されていないコーナー型枠12の側面においては、このガイド部材42が干渉しないため、前記第一コーナー型枠12Pの間(および第二コーナー型枠12Qの間)に面型枠11をそれぞれ連結することができる。
【0030】
次に、
図3に示すように、架台2の下方に設けた支軸41を前記ガイド部材42に沿って上方向にスライドして、この支軸41により架台2を上昇させて(昇降動力は適宜設ける)、架台2の下面と第二コーナー型枠12Qの頭頂面との間にスペースを形成する。
【0031】
そして、
図4および
図5に示すように、このスペースに新規コーナー型枠12Nを挿入して(このスペースは新規コーナー型枠12Nの全長よりも少し大きめの余裕がある)第二コーナー型枠12Qと連結した後、架台2を(当該余裕分)下降して新規コーナー型枠12Nの頭頂面に載置する(
図6参照)。
【0032】
図7に示すように、支軸41のみを下降して前記ガイド部材42に重ねて固定し、ガイド部材42をコーナー型枠12から離脱する。この際、前記吊上げ装置3の下方に垂下されるワイヤーやチェーン等の吊支部31を支軸41に固定して昇降することができ、対向する支軸41同士を梁等の連結材41Aで連結する場合には、この連結材41Aに吊支部31を固定することができる(
図8参照)。
【0033】
然る後、これら固定された支軸41とガイド部材42とを同時に上昇させて、新規コーナー型枠12Nおよび第二コーナー型枠12Qに亙る側面に沿ってガイド部材42を固定する(
図9参照)。
【0034】
そして、
図10に示すように、ガイド部材42が上昇してできたスペースにおいて、コーナー型枠12の間に面型枠11をそれぞれ連結することができ、四方が囲われた型枠の内側スペースにコンクリートを打設することができる。
【0035】
こうして新たに四方が囲われた型枠を基準段として、前記の工程を次々と繰り返すことによって、コンクリート柱を構築することができる。
【0036】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、コーナー型枠12は棒状の形態に限らず、面型枠11と組み立てることで型枠になるものであれば、幅広の形態であっても良い。
【0037】
また、面型枠11およびコーナー型枠12の使用材料は、鋼鉄に限らずプラスチックなどを採用することができる。
【0038】
更にまた、コンクリート硬化後は、地上側から順次、面型枠11およびコーナー型枠12を脱型することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0039】
1 型枠
11 面型枠
12 コーナー型枠
12A コーナー型枠
12P 第一コーナー型枠
12Q 第二コーナー型枠
12N 新規コーナー型枠
2 架台
3 吊上げ装置
31 吊支部
41 支軸
41A 連結材
42 ガイド部材