(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】タイヤ試験方法及びタイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20230830BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20230830BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2019073540
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 昊均
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060390(JP,A)
【文献】特開2012-207983(JP,A)
【文献】特開2013-124952(JP,A)
【文献】特表2003-532058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B60C 1/00- 19/12
G01N 17/00- 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に調節した雰囲気下で、空気入りタイヤをオゾンに露出させた状態で
前記空気入りタイヤの回転を停止させることにより、前記空気入りタイヤに対して、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向における位置は同じ位置で、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向に直交する方向の荷重を負荷
し、
前記空気入りタイヤに荷重を負荷する時間の経過に伴って内圧を低下させることを特徴とするタイヤ試験方法。
【請求項2】
前記空気入りタイヤに対して負荷する前記荷重は、前記空気入りタイヤの最大負荷能力の40%以上100%以下の範囲内である請求項1に記載のタイヤ試験方法。
【請求項3】
前記空気入りタイヤを露出させる前記オゾンの濃度は、50pphm以上250pphm以下の範囲内である請求項1または2に記載のタイヤ試験方法。
【請求項4】
前記雰囲気の温度は、30℃以上70℃以下の範囲内である請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ試験方法。
【請求項5】
前記空気入りタイヤは、内圧が前記空気入りタイヤの最大空気圧の60%以上100%以下の範囲内である請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ試験方法。
【請求項6】
前記空気入りタイヤへの荷重の負荷を継続しつつ、前記雰囲気の温度を変化させる請求項1~
5のいずれか1項に記載のタイヤ試験方法。
【請求項7】
試験室内の温度を所定の温度に調節可能な空調装置と、
前記試験室内に対してオゾンを供給可能なオゾン供給装置と、
前記試験室内で空気入りタイヤに対して、
前記空気入りタイヤの回転を停止させることにより前記空気入りタイヤのタイヤ周方向における位置は同じ位置で、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向に直交する方向の荷重を負荷する負荷機構装置と、
を備え
、
前記負荷機構装置は、
接地定盤が有し前記空気入りタイヤのトレッド接地面に接触する接触面と、
前記接地定盤に対して立設され、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向における幅よりも広い間隔で2本が配置される支柱と、
前記空気入りタイヤに装着したリムホイールと2本の前記支柱とに連結されると共に前記支柱の延在方向に前記支柱に対して相対移動することにより前記接触面との距離を変化させることのできる連結部材とを有し、
前記連結部材と前記接触面との距離を変化させることにより、前記空気入りタイヤに対して荷重を負荷することを特徴とするタイヤ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験方法及びタイヤ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、車両走行時の歪みや経時劣化等が原因となって、トレッド部に形成される溝部の溝底にクラックが発生することがあるが、溝底に発生するクラックである、いわゆるグルーブクラックの発生の度合いを評価する試験方法として、従来より様々な方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1、2に記載された試験方法では、試験を行うタイヤをオゾン雰囲気に所定期間放置をした後、回転ドラムにタイヤを押し付けてタイヤに荷重を負荷しながら回転ドラムによる走行試験を行うことにより、市場でのグルーブクラックを再現し、評価を行っている。また、特許文献3に記載された試験方法では、試験を行うタイヤに対して回転ドラムによって荷重を付与した状態で回転ドラムによる走行試験を行いながら、タイヤにオゾンを噴射することにより、市場でのグルーブクラックを再現し、評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-84290号公報
【文献】特開2014-100977号公報
【文献】特開2008-26228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の試験方法では、試験を行ったタイヤと実際のタイヤとでグルーブクラックの発生状況が大きく異なることがあり、市場再現性が不十分である場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、グルーブクラックについての市場再現性を向上させることのできるタイヤ試験方法及びタイヤ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ試験方法は、所定の温度に調節した雰囲気下で、空気入りタイヤをオゾンに露出させた状態で前記空気入りタイヤに対して、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向における位置は同じ位置で、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向に直交する方向の荷重を負荷することを特徴とする。
【0008】
また、上記タイヤ試験方法において、前記空気入りタイヤに対して負荷する前記荷重は、前記空気入りタイヤの最大負荷能力の40%以上100%以下の範囲内であることが好ましい。
【0009】
また、上記タイヤ試験方法において、前記空気入りタイヤを露出させる前記オゾンの濃度は、50pphm以上250pphm以下の範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、上記タイヤ試験方法において、前記雰囲気の温度は、30℃以上70℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、上記タイヤ試験方法において、前記空気入りタイヤは、内圧が前記空気入りタイヤの最大空気圧の60%以上100%以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、上記タイヤ試験方法において、前記空気入りタイヤに荷重を負荷する時間の経過に伴って内圧を低下させることが好ましい。
【0013】
また、上記タイヤ試験方法において、前記空気入りタイヤへの荷重の負荷を継続しつつ、前記雰囲気の温度を変化させることが好ましい。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ試験装置は、試験室内の温度を所定の温度に調節可能な空調装置と、前記試験室内に対してオゾンを供給可能なオゾン供給装置と、前記試験室内で空気入りタイヤに対して、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向における位置は同じ位置で、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向に直交する方向の荷重を負荷する負荷機構装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記タイヤ試験装置において、前記負荷機構装置は、前記空気入りタイヤのトレッド接地面に接触する接触面と、前記空気入りタイヤに装着したリムホイールに連結されると共に前記接触面との距離を変化させることのできる連結部材とを有し、前記連結部材と前記接触面との距離を変化させることにより、前記空気入りタイヤに対して荷重を負荷することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るタイヤ試験方法及びタイヤ試験装置は、グルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るタイヤ試験装置を示す構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るタイヤ試験方法で試験を行う際の手順を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るタイヤ試験装置の変形例であり、荷重センサ50を設ける場合の説明図である。
【
図5】
図5は、タイヤ試験方法の評価結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るタイヤ試験方法及びタイヤ試験装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るタイヤ試験装置1を示す構成図である。
図2は、
図1のA-A矢視図である。
図1、
図2は、タイヤ試験装置1の全体構成を模式的に示したものになっている。なお、以下の説明では、タイヤ試験装置1の通常の使用状態における上下方向を、タイヤ試験装置1においても上下方向として説明し、タイヤ試験装置1の通常の使用状態における水平方向を、タイヤ試験装置1においても水平方向として説明する。
【0020】
本実施形態に係るタイヤ試験装置1は、車両に装着した空気入りタイヤ100の使用状態を再現することにより、グルーブクラックの発生状況を再現する試験装置に適用される。具体的には、本実施形態に係るタイヤ試験装置1は、走行せずに長期間停車している車両に装着された空気入りタイヤ100の状態を再現することにより、車両が長期間停車した場合のグルーブクラックの発生状況を再現する試験装置に適用される。
【0021】
タイヤ試験装置1は、試験室10と、空調装置20と、オゾン供給装置30と、負荷機構装置40とを備える。試験室10は、空気入りタイヤ100の試験を行う際に、外気から隔てられた空間を形成するための部屋になっている。なお、試験室10は、外気に対して完全に隔離されていなくてもよい。試験室10の内側の雰囲気を、外気に対して概ね隔てることができればよい。
【0022】
空調装置20は、試験室10内の温度を所定の温度に調節可能なっている。空調装置20は、試験室10の外部に設置されており、試験室10の内部に連通する通気口22を通じて、試験室10内の温度を調節することができる。詳しくは、空調装置20は、温度の設定等の入力操作を行う操作部(図示省略)を有しており、任意の温度設定が可能になっている。また、試験室10の内部には、周囲の雰囲気の温度を検出可能な温度センサ25が配設されており、空調装置20は、温度センサ25と電気的に接続されている。空調装置20は、温度センサ25で検出した温度を取得することが可能になっており、操作部で設定された温度と、温度センサ25より取得した試験室10内の温度とを比較することにより、試験室10内の温度が操作部で設定された温度に近付くように運転動作をする。
【0023】
オゾン供給装置30は、オゾンを生成し、生成したオゾンを試験室10内に対して供給可能になっている。オゾン供給装置30は、試験室10の外部に設置されており、試験室10の内部に連通する通気口32を通じて、試験室10内に対してオゾンを供給することが可能になっている。詳しくは、オゾン供給装置30は、オゾンの濃度の設定等の入力操作を行う操作部(図示省略)を有しており、任意のオゾン濃度の設定が可能になっている。また、試験室10の内部には、周囲の雰囲気のオゾンの濃度を検出可能なオゾン濃度センサ35が配設されており、オゾン供給装置30は、オゾン濃度センサ35と電気的に接続されている。オゾン供給装置30は、オゾン濃度センサ35で検出したオゾンの濃度を取得することが可能になっており、操作部で設定されたオゾンの濃度と、オゾン濃度センサ35より取得した試験室10内のオゾン濃度とを比較することにより、試験室10内のオゾン濃度が操作部で設定されたオゾン濃度に近付くように運転動作をする。
【0024】
なお、空調装置20とオゾン供給装置30とは、試験室10の内部に設置されていてもよい。空調装置20は、試験室10内の温度を調整することができ、オゾン供給装置30は、試験室10内にオゾンを供給することができれば、装置自体の設置位置は、試験室10の内部でも外部でもどちらでもよい。
【0025】
負荷機構装置40は、試験室10の内部に設置されており、試験室10内で空気入りタイヤ100に対して、空気入りタイヤ100のタイヤ幅方向に直交する方向の荷重を負荷することが可能になっている。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ100の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいう。
【0026】
本実施形態では、負荷機構装置40には、空気入りタイヤ100に対して簡易的に荷重を負荷することのできるフラットスポット生成機41が用いられる。フラットスポット生成機41は、接地定盤42と、支柱44と、連結部材47とを有している。接地定盤42は、試験を行う空気入りタイヤ100のトレッド接地面101に接触する接触面43を有している。接地定盤42は、例えば、矩形の板状の形状で形成され、接触面43は、接地定盤42の厚さ方向における一方側の面によって形成される平面になっている。接地定盤42は、接触面43を上方に向けて配置される。支柱44は、棒状の形状で接地定盤42に立設される柱状部材になっている。本実施形態では、支柱44は、円形断面の中実構造で形成され、長さが試験を行う空気入りタイヤ100の外径よりも長くなっている。支柱44には、一端側にネジ山(図示省略)が形成されており、ネジ山の近傍には、支柱44を接地定盤42に取り付ける際に工具で把持する固定用部材45が固定されている。接地定盤42における、支柱44を取り付ける位置には、接地定盤42の厚さ方向に接地定盤42を貫通するネジ孔(図示省略)が形成されている。
【0027】
支柱44は、一端側に形成されるネジ山を、接地定盤42に形成されるネジ孔に対して接触面43側から螺合させることにより、接地定盤42の接触面43側に、延在方向が接触面43に対してほぼ垂直になる向きで取り付ける。これにより、支柱44は接地定盤42に立設される。また、支柱44は、接地定盤42に対して2本が立設され、2本の支柱44は、試験を行う空気入りタイヤ100のタイヤ幅方向における幅よりも広い間隔で配置されている。
【0028】
連結部材47は、接地定盤42上で空気入りタイヤ100を支持する部材になっている。連結部材47は、空気入りタイヤ100に装着したリムホイール110と、接地定盤42に立設される支柱44との双方に連結されることにより、空気入りタイヤ100を支持することが可能になっている。
【0029】
詳しくは、連結部材47は、円筒状の部材になっており、長手方向における中央付近の位置に、リムホイール110に連結する連結部48を有している。連結部48は、フランジ状の形状で形成されて連結部材47に設けられており、リムホイール110における、リムホイール110を車両に装着する際にボルトを通す取付け孔(図示省略)に対応する位置に、挿通孔(図示省略)が形成されている。これにより、連結部48は、リムホイール110に形成される取付け孔と、連結部48に形成される挿通孔の位置とを合わせて、双方の孔にボルト49を連通させてボルト49とナット(図示省略)とを螺合することにより、リムホイール110に連結することが可能になっている。
【0030】
さらに、連結部材47には、円筒状に形成される連結部材47の径方向に連結部材47を貫通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔に、支柱44を通すことが可能になっている。連結部材47は、接地定盤42に立設される2本の支柱44のいずれも貫通孔に通すことが可能になっており、即ち、連結部材47には、貫通孔が2箇所の位置に、接地定盤42に立設される2本の支柱44の間隔で形成されている。これにより、連結部材47は、支柱44の延在方向に、支柱44に対して相対移動することができる。即ち、連結部材47は、支柱44に沿って上下方向に移動可能になっており、接触面43との距離を変化させることができる。フラットスポット生成機41は、連結部材47を支柱44に沿って上下方向に移動させることにより、支柱44に沿った方向、即ち、上下方向の荷重を、空気入りタイヤ100に負荷することが可能になっている。
【0031】
一方、支柱44には、少なくとも接触面43からの距離が空気入りタイヤ100の半径と同程度の領域を含む所定の範囲に、ネジ山が形成されている。このため、連結部材47は、貫通孔に支柱44を通した状態で、支柱44に形成されるネジ山における、連結部材47の上側の位置に、ネジ山に螺合するナット等の拘束部材46を螺合させることにより、連結部材47の上方への移動を規制することができる。拘束部材46としては、例えば、蝶ナットを用いることにより、工具を用いることなく拘束部材46を容易に回転させることができ、連結部材47の移動を規制する位置を定めることができる。
【0032】
本実施形態に係るタイヤ試験装置1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。
図3は、実施形態に係るタイヤ試験方法で試験を行う際の手順を示すフロー図である。タイヤ試験装置1によって空気入りタイヤ100の試験を行う際には、空気入りタイヤ100をリムホイール110にリム組みし、所定の内圧に調整する(ステップST1)。この場合における空気入りタイヤ100の内圧は、空気入りタイヤ100の最大空気圧の60%以上100%以下の範囲内にする。なお、空気入りタイヤ100の内圧は、空気入りタイヤ100の最大空気圧の80%以上100%以下の範囲内であるのが好ましい。ここでいう最大空気圧は、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0033】
次に、フラットスポット生成機41に空気入りタイヤ100を装着する(ステップST2)。フラットスポット生成機41に空気入りタイヤ100を装着する際には、空気入りタイヤ100に装着されたリムホイール110に連結部材47を連結し、連結部材47に形成される貫通孔に支柱44を通す。これにより、接地定盤42に対する空気入りタイヤ100の向きを、空気入りタイヤ100の回転軸が接地定盤42の接触面43に対して平行になる向きにする。この状態で、支柱44に沿って連結部材47を移動させることにより、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101における、接触面43に対向する部分を、接触面43に接触させる。即ち、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101を接触面43に接触させる状態で、空気入りタイヤ100を接地定盤42上に載置し、支柱44と連結部材47とによって空気入りタイヤ100を支持する。これにより、フラットスポット生成機41に空気入りタイヤ100を装着する。
【0034】
次に、空気入りタイヤ100に荷重を負荷する(ステップST3)。空気入りタイヤ100に対する荷重の負荷は、連結部材47と接触面43との距離を変化させることにより行う。つまり、リムホイール110に連結された連結部材47を、支柱44に沿って上下方向に移動させて連結部材47と接触面43との距離を変化させることにより、空気入りタイヤ100に装着されるリムホイール110を上下方向に移動させる。
【0035】
一方で、空気入りタイヤ100は、トレッド接地面101が接触面43に接触しているため、接触面43に対する空気入りタイヤ100の相対的な位置関係は変化しない。このため、空気入りタイヤ100における、主にリムホイール110よりも下側に位置する部分には、リムホイール110と接触面43とによって上下方向に押し潰される方向の荷重がリムホイール110から負荷される。空気入りタイヤ100に荷重を負荷する際には、支柱44に形成されるネジ山に沿って拘束部材46を回転させることにより、連結部材47の上側から拘束部材46を押し付け、連結部材47を下方に移動させる。これにより、連結部材47からリムホイール110に対して、上下方向における下向きの荷重を作用させることができ、下向きの荷重が負荷されるリムホイール110から空気入りタイヤ100に対して、荷重を負荷する。つまり、フラットスポット生成機41により、空気入りタイヤ100のタイヤ周方向における位置は同じ位置で、空気入りタイヤ100のタイヤ幅方向に直交する方向の荷重を、空気入りタイヤ100に対して負荷する。
【0036】
支柱44のネジ山に沿って回転させることにより連結部材47を下方に移動させる拘束部材46は、支柱44のネジ山と螺合しているため、支柱44に対する上下方向における位置を維持することができる。このため、拘束部材46は、連結部材47の上下方向における位置を、空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷した状態の位置に維持することができ、空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷した状態を維持することができる。即ち、空気入りタイヤ100が装着されたフラットスポット生成機41は、空気入りタイヤ100に対して、タイヤ周方向における同じ位置に継続的に荷重を負荷する。その際に、空気入りタイヤ100に負荷する荷重の大きさは、例えば、車両に装着された空気入りタイヤ100が、車両の重量で変形する際における変形量と同程度の変形量になる大きさの荷重を負荷する。
【0037】
次に、試験室10内の雰囲気の温度とオゾン濃度を調節する(ステップST4)。このうち、温度の調節は空調装置20によって行い、オゾン濃度の調節はオゾン供給装置30で行う。即ち、空調装置20の操作部に対して、所定の温度を入力して空調装置20を運転させることにより、試験室10内の雰囲気の温度を所定の温度に調節する。本実施形態では、試験室10内の雰囲気の温度は、30℃以上70℃以下の範囲内にする。同様に、オゾン供給装置30の操作部に対して、所定のオゾン濃度を入力してオゾン供給装置30を運転させて試験室10内にオゾンを供給することにより、試験室10内の雰囲気のオゾン濃度を所定の濃度に調節し、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させる。本実施形態では、空気入りタイヤ100を露出させるオゾンの濃度は、50pphm以上250pphm以下の範囲内にする。
【0038】
なお、試験室10内における空気入りタイヤ100の周囲の雰囲気の温度は、40℃以上60℃以下の範囲内であるのが好ましく、試験室10内で空気入りタイヤ100を露出させるオゾンの濃度は、120pphm以上180pphm以下の範囲内であるのが好ましい。このように、空調装置20で温度を調節し、オゾン供給装置30からオゾンを供給してオゾン濃度を調節することにより、所定の温度に調節した雰囲気下で空気入りタイヤ100をオゾンに露出させた状態で、空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷する。
【0039】
次に、規定時間を経過したか否かを判定する(ステップST5)。この場合における規定時間は、空気入りタイヤ100を実際に使用した際における、空気入りタイヤ100のトレッド部に形成される溝部102の溝底に発生するグルーブクラックを、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させた状態で荷重を負荷し続けることによって再現することのできる時間として、予め設定されている。詳しくは、規定時間は、車両を長期間停車させた際に、空気入りタイヤ100の溝部102の溝底に発生するグルーブクラックを再現することのできる時間として、予め設定されている。規定時間は、8時間以上40時間以下の範囲内で設定するのが好ましい。フラットスポット生成機41に空気入りタイヤ100を装着して荷重を負荷し、試験室10内のオゾン濃度を調節することにより空気入りタイヤ100をオゾンに露出させた状態にして試験を開始してからの経過時間が、この規定時間を経過したか否かを判定する。
【0040】
なお、規定時間を経過したか否かは、空気入りタイヤ100に荷重を負荷し、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させてからの経過時間をオペレータが計測し続けることにより、経過時間が規定時間を経過したか否かをオペレータが判定してもよい。または、空調装置20やオゾン供給装置30に、オペレータに対して音声や表示によって情報を報知する報知手段(図示省略)とタイマーとを設け、これらの装置の運転を開始してからの経過時間をタイマーで計測し、経過時間が規定時間を経過したか否かを、報知手段によってオペレータに報知してもよい。また、空調装置20やオゾン供給装置30にタイマーを設ける場合には、経過時間が規定時間を経過したら、これらの装置の運転を停止するようにしてもよい。
【0041】
これらのように計測した経過時間が、規定時間を経過していないと判定した場合(ステップST5、No判定)は、所定の温度に調節した雰囲気下で、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させた状態で空気入りタイヤ100に対して、荷重を負荷することを継続する。
【0042】
これに対し、経過時間が規定時間を経過したと判定した場合(ステップST5、Yes判定)は、空気入りタイヤ100をフラットスポット生成機41から取り外し、グルーブクラックの発生状況を観察し(ステップST6)、試験を終了する。つまり、所定の温度に調節した雰囲気下で、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させて空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷した状態での経過時間が、予め設定された所定の経過時間を経過したら、グルーブクラックの発生状況を目視等で観察する。
【0043】
以上の実施形態に係るタイヤ試験方法は、所定の温度に調節した雰囲気下で、空気入りタイヤ100のタイヤ周方向における同じ位置に荷重を負荷するため、車両に装着された空気入りタイヤ100の実際の使用態様を再現して試験を行うことができる。具体的には、空気入りタイヤ100のタイヤ周方向における同じ位置に、継続的に荷重を負荷することにより、空気入りタイヤ100が装着された車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100に対する影響を、試験によって再現することができる。
【0044】
つまり、空気入りタイヤ100は、車両の走行時のみでなく、車両の停車時にも損傷が発生することがある。特に、車両が長期間停車する場合は、空気入りタイヤ100には、同じ部位に同じ方向の荷重が長期間継続して作用するため、これにより、グルーブクラックのような損傷が発生することがある。空気入りタイヤ100の損傷や耐久性等についての試験を行う際に、回転ドラムを用いて試験を行った場合、車両に走行時における空気入りタイヤ100の変化については再現することができるが、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化については、回転ドラムを用いた試験では大変困難なものになっている。これに対し、本実施形態では、空気入りタイヤ100のタイヤ周方向における同じ位置に荷重を負荷するため、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化を再現することができる。
【0045】
また、空気入りタイヤ100に荷重を負荷しながら試験を行う際には、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させながら行うため、空気入りタイヤ100の劣化を早めることができる。これにより、空気入りタイヤ100を装着した車両を長期間停車した状態における空気入りタイヤ100の変化を短時間で再現することができ、空気入りタイヤ100を実際に使用した際に溝部102に発生するグルーブクラックを、短時間で再現することができる。この結果、グルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0046】
また、空気入りタイヤ100を露出させるオゾンの濃度は、50pphm以上250pphm以下の範囲内であるため、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化の再現性を確保しつつ、より効率的に劣化を促進させて短時間で評価を行うことができる。つまり、オゾン濃度が50pphmである場合は、オゾン濃度が低過ぎるため、空気入りタイヤ100をオゾンに露出させても劣化が発生し難くなる虞がある。この場合、劣化を促進させることによって短時間で評価を行う、劣化促進評価の効率が悪くなり易くなる虞がある。また、オゾン濃度が250pphmを超える場合は、オゾン濃度が高過ぎるため、空気入りタイヤ100の通常に使用時における自然劣化との相関性が低下し、試験時における空気入りタイヤ100の変化が、空気入りタイヤ100を車両に装着して実際に使用した際における変化から乖離し易くなる虞がある。
【0047】
これに対し、空気入りタイヤ100を露出させるオゾンの濃度が、50pphm以上250pphm以下の範囲内である場合は、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化の再現性を確保しつつ、効率的に劣化を促進させて劣化促進評価を行うことができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0048】
また、試験室10内の雰囲気の温度は、30℃以上70℃以下の範囲内であるため、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化の再現性を確保しつつ、より効率的に劣化を促進させて短時間で評価を行うことができる。つまり、試験室10内の雰囲気の温度が30℃未満である場合は、温度が低過ぎるため、空気入りタイヤ100のオゾン反応性が低下し易くなり、劣化促進評価の効率が悪くなり易くなる虞がある。また、試験室10内の雰囲気の温度が70℃を超える場合は、温度が高過ぎるため、空気入りタイヤ100の熱老化現象が顕著になり、試験時における空気入りタイヤ100の変化が、空気入りタイヤ100を車両に装着して実際に使用した際における変化から乖離し易くなる虞がある。
【0049】
これに対し、試験室10内の雰囲気の温度が、30℃以上70℃以下の範囲内である場合は、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化の再現性を確保しつつ、効率的に劣化を促進させて劣化促進評価を行うことができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0050】
また、試験を行う際には、空気入りタイヤ100の内圧を最大空気圧の60%以上100%以下の範囲内にして行うため、空気入りタイヤ100の実際の使用時の状態に、より近付けて試験を行うことができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0051】
また、以上の実施形態に係るタイヤ試験装置1は、空調装置20と、オゾン供給装置30と、負荷機構装置40とを備え、負荷機構装置40は、空気入りタイヤ100に対して、タイヤ周方向における同じ位置に荷重を負荷するため、車両に装着された空気入りタイヤ100の実際の使用態様を再現して試験を行うことができる。具体的には、空気入りタイヤ100のタイヤ周方向における同じ位置に、継続的に荷重を負荷することにより、空気入りタイヤ100が装着された車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100に対する影響を再現することができる。これにより、タイヤ試験装置1は、車両が長期間停車した際における、空気入りタイヤ100の変化を再現することができる。
【0052】
また、タイヤ試験装置1は、オゾン供給装置30によって試験室10内にオゾンを供給するため、空気入りタイヤ100の劣化を早めることができる。これにより、空気入りタイヤ100を装着した車両を長期間停車した状態における空気入りタイヤ100の変化を短時間で再現することができ、空気入りタイヤ100を実際に使用した際に溝部102に発生するグルーブクラックを、短時間で再現することができる。この結果、グルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0053】
また、負荷機構装置40は、リムホイール110に連結される連結部材47と、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101に接触する接触面43との距離を変化させることにより、空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷するため、空気入りタイヤ100に対して、適切な荷重を負荷することができる。つまり、空気入りタイヤ100は、リムホイール110が車両に取り付けられることにより車両に装着され、車両に停車時に空気入りタイヤ100に作用する荷重は、車両の重量がリムホイール110に伝わることにより、リムホイール110から空気入りタイヤ100に対して負荷される。このため、空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷する際に、連結部材47と接触面43との距離を変化させ、リムホイール110と接触面43との距離を変化させることによって負荷することにより、車両に停車時に空気入りタイヤ100に荷重が作用する態様と同等の態様で、空気入りタイヤ100に荷重を負荷することができる。従って、空気入りタイヤ100に対して適切な荷重を負荷することができ、空気入りタイヤ100を実際に使用した際に溝部102に発生するグルーブクラックを、より高い精度で再現することができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0054】
また、負荷機構装置40には、接地定盤42に立設する支柱44を有し、支柱44に沿って連結部材47を上下方向に移動させるフラットスポット生成機41を用いるため、簡易な構成で負荷機構装置40を実現することができる。この結果、グルーブクラックについての市場再現性を、低コストで向上させることができる。
【0055】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、空気入りタイヤ100に負荷する荷重は規定していないが、空気入りタイヤ100に負荷する荷重を規定してもよい。
図4は、実施形態に係るタイヤ試験装置1の変形例であり、荷重センサ50を設ける場合の説明図である。フラットスポット生成機41には、
図4に示すように、接地定盤42の接触面43に、荷重を検出可能な荷重センサ50が載置し、空気入りタイヤ100に負荷される荷重を検出できるようにしてもよい。荷重センサ50は、シート状に形成されるものを用いるのが好ましい。シート状に形成される荷重センサ50を使用し、接触面43上に載置することにより、荷重センサ50自身が、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101に接触する接触面43を構成するようにすることができる。空気入りタイヤ100の荷重を検出するために配置する荷重センサ50は、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101に接触することができるように、2本の支柱44の間に配置する。また、荷重センサ50は、情報を表示する表示部(図示省略)に接続されており、検出した荷重を表示部で表示することが可能になっている。
【0056】
荷重センサ50を有するフラットスポット生成機41に、空気入りタイヤ100を装着する際には、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101における、接触面43に対向する部分を、接触面43における荷重センサ50が配置されている位置に接触させる。即ち、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101を、接触面43における荷重センサ50が配置されている位置に接触させる状態で、空気入りタイヤ100を接地定盤42上に載置し、支柱44と連結部材47とによって空気入りタイヤ100を支持する。
【0057】
荷重センサ50を備えるフラットスポット生成機41に空気入りタイヤ100を装着して、空気入りタイヤ100に荷重を負荷する際には、荷重を荷重センサ50によって測定しながら負荷する。つまり、空気入りタイヤ100は、荷重センサ50に接触した状態になっているため、空気入りタイヤ100に負荷された荷重は、荷重センサ50によって検出可能になっている。このため、空気入りタイヤ100に負荷する荷重は、荷重センサ50で検出する荷重に基づいて調節する。詳しくは、荷重センサ50で検出した荷重は、荷重センサ50に接続される表示部に表示されるため、表示部に表示される荷重を視認しながら拘束部材46を回転させ、連結部材47の上下方向における位置を調節する。これにより、空気入りタイヤ100に負荷する荷重を、所定の範囲内にする。拘束部材46は、支柱44のネジ山と螺合しているため、連結部材47の上下方向における調節することにより荷重を調節したら、拘束部材46の回転をその位置で止めることにより、連結部材47の上下方向における位置を維持することができ、荷重を維持することができる。
【0058】
このようにして調節する、空気入りタイヤ100に負荷する荷重は、空気入りタイヤ100の最大負荷能力の40%以上100%以下の範囲内にする。なお、空気入りタイヤ100に負荷する荷重は、空気入りタイヤ100の最大負荷能力の50%以上70%以下の範囲内であるのが好ましい。ここでいう最大負荷能力は、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0059】
空気入りタイヤ100に負荷する荷重を測定可能とし、試験を行う際には、空気入りタイヤ100に負荷する荷重を、空気入りタイヤ100の最大負荷能力の40%以上100%以下の範囲内にすることにより、空気入りタイヤ100の実際の使用時の状態に、より近付けて試験を行うことができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、フラットスポット生成機41に空気入りタイヤ100を装着して試験を開始したら、空気入りタイヤ100の周囲の雰囲気等の各条件は変更していないが、試験の途中で条件を変更してもよい。例えば、空気入りタイヤ100に荷重を負荷する時間の経過に伴って、空気入りタイヤ100の内圧を低下させてもよい。空気入りタイヤ100の内圧は、試験を開始してからの経過時間が規定時間を経過するまでの間に、1回、または複数回、低下させてもよい。この場合における内圧は、内圧を計測しながらオペレータが調節する。
【0061】
空気入りタイヤ100の内圧は、車両を走行させずに停車させているだけでも、徐々に低下していくことがあるため、試験の開始後、荷重を負荷する時間の経過に伴って空気入りタイヤ100の内圧を低下させることにより、車両が長期間停車した際における空気入りタイヤ100の変化を、より高い精度で再現することができる。空気入りタイヤ100の内圧を低下させる度合いは、24時間で、20kPa以上30kPa以下の範囲内の程度で低下するのが好ましい。これにより、空気入りタイヤ100を実際に使用した際に溝部102に発生するグルーブクラックを、より高い精度で再現することができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0062】
また、試験の途中で条件を変更する際には、空気入りタイヤ100への荷重の負荷を継続しつつ、試験室10内における空気入りタイヤ100の周囲の雰囲気の温度を変化させてもよい。車両が長期間停車する場合には、例えば季節が変わることにより、気温が変化することがある。このため、荷重を負荷しながら試験を行う際に、空気入りタイヤ100の周囲の雰囲気の温度を変化させることにより、グルーブクラックへの温度の変化の影響も含めて、グルーブクラックを再現することができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0063】
また、上述した実施形態では、オゾン供給装置30は、空気入りタイヤ100から離れた位置から試験室10内にオゾンを供給しているが、オゾン供給装置30は、空気入りタイヤ100と接地定盤42とが接触する部分付近にオゾンを供給してもよい。例えば、接地定盤42の接触面43付近に、オゾン供給装置30から供給されたオゾンを噴射するオゾン噴射部(図示省略)を配置し、空気入りタイヤ100のトレッド接地面101と接地定盤42の接触面43とが接触する部分付近に、オゾン噴射部からオゾンを噴射してもよい。車両を長期間停車した際に発生するグルーブクラックは、溝部102における、接地面の近傍に位置する部分に発生するため、車両を長期間停車した際に発生するグルーブクラックを再現する際には、少なくとも、トレッド接地面101と接触面43とが接触する部分付近にオゾンを供給すればよい。
【0064】
また、このようにオゾン噴射部によって、トレッド接地面101と接触面43とが接触する部分付近にオゾンを噴射した場合、オゾンを用いた劣化促進評価を、効果的に行うことができる。つまり、オゾン噴射部は、空気入りタイヤ100の接地面の近傍にオゾンを集中的に噴射するため、流速が速いオゾン気流を空気入りタイヤ100に噴射することができ、オゾンが消費されて反応性が低くなった空気を、流速が速いオゾンで除去することができる。このため、空気入りタイヤ100に対して新しい活性のオゾン分子が衝突する確率を増大させることができ、オゾンによって劣化を促進させる際における反応性を向上させることができる。これにより、オゾンによって効率的に劣化を促進させて、劣化促進評価を効果的に行うことができる。この結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0065】
さらに、オゾン噴射部によってトレッド接地面101と接触面43とが接触する部分付近にオゾンを噴射した場合、空気入りタイヤ100のサイドウォール部に発生するクラックであるサイドクラックも再現し易くすることができる。つまり、空気入りタイヤ100のサイドウォール部のうち、車両の幅方向における外側に位置するサイドウォール部は、太陽光が当たるため、紫外線も照射され易く、紫外線によって劣化し易くなっている。このため、この劣化に伴ってサイドクラックが発生し易くなっているが、オゾン噴射部から空気入りタイヤ100の接地面の近傍にオゾンを噴射することにより、サイドウォール部における接地面の近傍の部分もオゾンに曝され易くなる。これにより、サイドウォール部も、オゾンによって劣化を促進させることができ、車両を長期間停車した際に発生するサイドクラックも、短時間で再現することができる。この結果、サイドクラックについての市場再現性も向上させることができる。
【0066】
また、上述した実施形態では、フラットスポット生成機41の連結部材47は、ボルト49を用いることにより、空気入りタイヤ100に装着されたリムホイール110に対して連結することが可能になっているが、連結部材47は、これ以外の手法によってリムホイール110に連結してもよい。連結部材47は、例えば、リムホイール110と一体に形成されることにより、リムホイール110に連結されていてもよい。支柱44に対して支柱44の延在方向に相対移動可能な連結部材47は、リムホイール110と一体で移動できるようにリムホイール110に連結することができれば、その手法は問わない。
【0067】
また、上述した実施形態では、負荷機構装置40にフラットスポット生成機41が用いられているが、負荷機構装置40は、フラットスポット生成機41以外であってもよい。負荷機構装置40は、例えば、電力によって駆動する動力源を有し、動力源で発生する動力によって、空気入りタイヤ100に荷重を負荷するように構成されていてもよい。この場合、空気入りタイヤ100に負荷される荷重を検出しながら、動力源によって荷重を負荷することにより、空気入りタイヤ100に負荷する荷重が所定に範囲内になるように制御するのが好ましい。
【0068】
また、上述した実施形態に係るタイヤ試験方法は、他の試験と共に行ってもよい。例えば、上述した実施形態に係るタイヤ試験方法の前、または後に、空気入りタイヤ100の内圧を所定の内圧にし、所定の荷重を負荷させた状態で、屋外の日陰に長時間曝す暴露試験を行ってもよい。車両が屋外で長期間停車する場合、日陰に長時間駐車することもあるため、日陰での暴露試験を追加で行うことにより、長期間停車する車両に装着される空気入りタイヤ100の環境を再現することができる。これにより、より高い精度でグルーブクラックを再現することができる。
【0069】
または、上述した実施形態に係るタイヤ試験方法の前、または後に、オゾンは供給せず、高温の雰囲気化に空気入りタイヤ100を放置する試験を行ってもよい。高温の雰囲気下に空気入りタイヤ100を放置する試験を追加で行うことにより、高温によってゴムが硬化することの影響も再現することができ、高温の環境で使用する空気入りタイヤ100に発生するグルーブクラックを、より高い精度で再現することができる。これらの結果、より確実にグルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【0070】
[実施例]
図5は、タイヤ試験方法の評価結果を示す図表である。以下、上述したタイヤ試験方法について、本発明に係るタイヤ試験方法と、本発明に係るタイヤ試験方法と比較する比較例のタイヤ試験方法とについて行なった評価試験について説明する。
【0071】
評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが225/65R17サイズの空気入りタイヤ100を、JATMA標準のリムホイール110にリム組みし、空気圧は最大空気圧の90%、荷重は最大負荷能力の60%に調整し、試験室10内は、オゾン濃度が150pphmのオゾン雰囲気で、温度を50℃に調整して行った。
【0072】
評価方法は、それぞれのタイヤ試験方法での試験の完了後、最終的に発生したグルーブクラックの数を数え、グルーブクラックの数を、後述する実車例のグルーブクラックの数を100とする指数で表すことにより評価した。詳しくは、グルーブクラックは、グルーブクラックの長さを各溝部102で測定し、長さが1mm以上の肉眼で確認できるグルーブクラックを全て数えて、後述する実車例のグルーブクラックの数を100とする指数で表すことにより評価した。この評価は、指数が大きいほどグルーブクラックの数が多いことを示していると共に、100に近いほど、発生したグルーブクラックの数が実車例に近く、グルーブクラックの再現性に優れていることを示している。
【0073】
なお、グルーブクラックは、グルーブクラックの長さに応じて、大(25mm以上)、中(5mm以上25mm未満)、小(5mm未満)の3つに分類し、大、中、小の割合を評価してもよい。または、グルーブクラックの長さに関わらず、発生したグルーブクラックの数に応じて、L(無数)、M(多数)、S(少数)の3種類に分類し、空気入りタイヤ100ごとにL、M、Sによって評価を行ってもよい。
【0074】
評価試験は、本発明に係るタイヤ試験方法の一例である実施例と、本発明に係るタイヤ試験方法と比較するタイヤ試験方法である比較例との2種類を、空気入りタイヤ100を実際に車両に装着して使用した実車例と比較することにより行った。
【0075】
このうち、比較例は、空気入りタイヤ100のオゾンへの露出は行うものの、空気入りタイヤ100に対して荷重は負荷しない。これに対し、本発明に係るタイヤ試験方法の一例である実施例は、空気入りタイヤ100のオゾンへの露出を行うと共に、空気入りタイヤ100に対して荷重を負荷する試験を行った。この実施例では、空気入りタイヤ100に負荷する荷重は、空気入りタイヤ100の最大負荷能力の60%の荷重を負荷した。
【0076】
これらのように、タイヤ試験方法の評価試験を行った結果、
図5に示すように、実施例に係るタイヤ試験方法は、比較例と比較して、グルーブクラックの指数が実車例に近くなっており、グルーブクラックの発生数が、実車例に近くなることが分かった。つまり、実施例に係るタイヤ試験方法は、グルーブクラックについての市場再現性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 タイヤ試験装置
10 試験室
20 空調装置
25 温度センサ
30 オゾン供給装置
35 オゾン濃度センサ
40 負荷機構装置
41 フラットスポット生成機
42 接地定盤
43 接触面
44 支柱
46 拘束部材
47 連結部材
50 荷重センサ
100 空気入りタイヤ
101 トレッド接地面
102 溝部
110 リムホイール