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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ポリウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/14 20060101AFI20230830BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230830BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C09J175/14
C09J11/06
C09J11/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019123166
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021008571
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-020981(JP,A)
【文献】特開平07-179837(JP,A)
【文献】特開2008-255216(JP,A)
【文献】特開昭53-136044(JP,A)
【文献】特開昭57-080421(JP,A)
【文献】特開2004-075982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0232956(US,A1)
【文献】特表2013-535534(JP,A)
【文献】特表2011-502852(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064902(WO,A1)
【文献】特開平04-059813(JP,A)
【文献】特開2013-216723(JP,A)
【文献】特開平05-263061(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111394048(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/14
C09J 11/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物と、
リシノール酸グリセリドと
下記式(1)で表される化合物Aとを含有し、前記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよく、
加硫ゴムに対して適用される、ポリウレタン系接着剤組成物。
【化1】
式(1)中、R は、アミノ基、水素原子、又は、炭化水素基であり、R 、R はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基、又は、水素原子である。
【請求項2】
前記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されている、請求項1に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記リシノール酸グリセリドの融点が、35℃以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物は、常温で液状である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
前記リシノール酸グリセリドが有する水酸基に対する前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が、0.3~1.8である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項6】
更に、フィラーを含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項7】
前記フィラーが、粘土である、請求項6に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項8】
前記フィラーの含有量が、当該ポリウレタン系接着剤組成物全量に対して、10~70質量%である、請求項6又は7に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項9】
前記化合物AのSP値が、20(MPa)1/2以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項10】
前記化合物Aの分子量が、1,000以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項11】
前記化合物Aの含有量が、当該ポリウレタン系接着剤組成物全量に対して、1~20質量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【請求項12】
前記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合が変性されたことにより、前記リシノール酸グリセリドが置換基を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)を利用し、自動車に装着されたタイヤの情報(例えば、空気圧、摩耗等)を監視するシステムがある。
【0003】
上記システムにおいて、上記のようなタイヤの情報を監視するために、通常、タイヤはその内部又は外部に電子機器又は電子機器を収容するケース(以下これらを「電子機器等」と称する。)を有するが、その際、上記電子機器等を例えば接着層でタイヤに固定する必要がある。
【0004】
従来、上記電子機器等をタイヤに固定するために、例えば、予め接着層を未加硫タイヤとともに加硫する方法がある(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、タイヤの内面及び/又は外面に固定される要素、例えば電子要素を受け取る準備ができているタイヤに関し、収容領域と、前記収容領域上に配置された接着層と、前記接着層上に配置された保護フィルムとを有する内面及び/又は外面を備えるタイヤであって、前記接着層の組成物は、エラストマーブロック単位の全てに対して、10%を超えるジエン単位のモル含有量を有するジエンエラストマーブロックを含むブロック熱可塑性エラストマ(TPE)に基づいている、タイヤ等が記載されている。
特許文献1では、接着層は未加硫タイヤブランクとともに加硫されている([0101]~[0105]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-501366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、未加硫のタイヤ(又はタイヤブランク)に例えば部分的に接着層を配置してこれらを加硫すると、加硫後のタイヤにおいて、電子機器等を取り付ける位置を自由に設定できないため、汎用性に欠けると考えられた。
また、タイヤにおける電子機器等を取り付ける位置を自由に設定するために、接着剤をタイヤの内部又は外部の広い部分又は全体に配置することは、生産性に欠けると考えられた。
このため、本発明においては、加硫ゴムに対して適用して、加硫ゴムを接着させることができる接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリイソシアネート化合物と、リシノール酸グリセリドとを含有し、上記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよい、ウレタン系接着剤組成物を、加硫ゴムに対して適用することによって、加硫ゴムを接着させることができることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] ポリイソシアネート化合物と、
リシノール酸グリセリドとを含有し、上記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよく、
加硫ゴムに対して適用される、ポリウレタン系接着剤組成物。
[2] 上記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されている、[1]に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[3] 上記リシノール酸グリセリドの融点が、35℃以下である、[1]又は[2]に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[4] 上記ポリイソシアネート化合物は、常温で液状である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[5] 上記リシノール酸グリセリドが有する水酸基に対する上記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が、0.3~1.8である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[6] 更に、フィラーを含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[7] 上記フィラーが、粘土である、[6]に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[8] 上記フィラーの含有量が、当該ポリウレタン系接着剤組成物全量に対して、10~70質量%である、[6]又は[7]に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[9] 更に、可塑剤を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[10] 上記可塑剤のSP値が、20(MPa)1/2以上である、[9]に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[11] 上記可塑剤の分子量が、1,000以下である、[9]又は[10]に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[12] 上記可塑剤の含有量が、当該ポリウレタン系接着剤組成物全量に対して、1~20質量%である、[9]~[11]のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤組成物。
[13] 上記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合が変性されたことにより、上記リシノール酸グリセリドが置換基を有する、[1]~[12]のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン系接着剤組成物は、加硫ゴムに対して適用して、加硫ゴムを接着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
【0011】
[ウレタン系接着剤組成物]
本発明のウレタン系接着剤組成物(本発明の組成物)は、
ポリイソシアネート化合物と、
リシノール酸グリセリドとを含有し、上記リシノール酸グリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよく、
加硫ゴムに対して適用される、ポリウレタン系接着剤組成物である。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明の組成物に含有されるリシノール酸グリセリドは、リシノール酸に由来する水酸基を有する。
このため、上記リシノール酸グリセリドは本発明の組成物に含有されるポリイソシアネート化合物と反応し、反応後にポリウレタン系接着剤となることができる。
【0013】
ここで、上記リシノール酸グリセリドにおいて、リシノール酸由来の二重結合が全て又は一部変性されていない場合、上記ポリウレタン系接着剤にはリシノール酸由来の二重結合が導入されるため、本発明の組成物は、加硫ゴムと親和性が高いと考えられる。
また、リシノール酸グリセリドにおいて、リシノール酸由来の二重結合が全て又は一部変性され、リシノール酸グリセリドが上記変性による置換基を有する場合、上記ポリウレタン系接着剤に上記置換基が導入されるため、上記置換基が、加硫ゴムと反応又は何らかの相互作用をする(これらをまとめて「反応性」と称する。)と考えられる。
上記のように、リシノール酸グリセリドに由来する上記二重結合及び/又は置換基によって、本発明の組成物は、加硫ゴムと、親和性及び/又は反応性を有し、これによって、本発明の組成物を加硫ゴムに対して適用すれば、本発明の組成物(又は本発明の組成物から得られるポリウレタン系接着剤)は加硫ゴムを接着させることができると、本発明者は推測する。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0014】
<ポリイソシアネート化合物>
本発明の組成物に含有されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族(上記脂肪族は、直鎖状、分岐状及び脂環式を含む概念である)ポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0015】
ポリイソシアネート化合物は、これらのうち、加硫ゴムとの接着性により優れ、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDI及び/又はポリメリックMDIがより好ましい。
ポリメリックMDIとは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。ポリメリックMDIは、重合度が異なるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの混合物であってもよい。
ポリメリックMDIは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートのほかに更にMDIを含んでもよい。
【0016】
上記ポリイソシアネート化合物は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、常温(23℃)で液状であることが好ましい。
常温で液状であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ポリメリックMDIが挙げられる。
【0017】
<リシノール酸グリセリド>
本発明の組成物に含有されるリシノール酸グリセリド(リシノール酸グリセライド)は、リシノール酸とグリセリンとのエステルである。上記リシノール酸グリセリドは、例えば、ひまし油系ポリオール由来であってもよい。ひまし油系ポリオールは、一般的には、脂肪酸(リシノール酸を主成分とする不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸を含む。)により構成されるグリセリドであり、ヒドロキシ基を複数有する。
また、本発明において、上記リシノール酸グリセリドにおける、リシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよい。本発明において、上記のとおり変性されたリシノール酸グリセリドとして、例えば、ひまし油系ポリオールが有する二重結合が変性されたものを使用することができる。
以下、本発明の組成物に含有されるリシノール酸グリセリド(上記リシノール酸グリセリドにおける、リシノール酸由来の二重結合は変性されている場合を含む。)を、「リシノール酸グリセリド」と称する場合がある。
【0018】
上記リシノール酸グリセリドを構成しうるリシノール酸は下記構造式で表される化合物である。リシノール酸は下記のとおり分子内に二重結合を有する。
【化1】
【0019】
上記リシノール酸グリセリドとしては、リシノール酸モノグリセリド(グリセリンが有する3つの水酸基のうちの1つがリシノール酸とエステル結合を形成する化合物)、リシノール酸ジグリセリド(グリセリンが有する3つの水酸基のうちの2つがリシノール酸とエステル結合を形成する化合物)及びリシノール酸トリグリセリド(グリセリンが有する3つの水酸基が全てリシノール酸とエステル結合を形成する化合物)からなる群から選ばれる1種、又は少なくとも2種を含む混合物が挙げられる。上記においてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもいなくてもよい。
上記リシノール酸グリセリドがリシノール酸モノ又はジグリセリドである場合、グリセリンの残基のヒドロキシ基に、リシノール酸以外の脂肪酸がエステル結合してもよい。上記残基のヒドロキシ基がそのまま存在してもよい。
【0020】
上記リシノール酸グリセリド(リシノール酸モノ、ジ又はトリグリセリド)は、リシノール酸由来の水酸基及びグリセリン由来の水酸基を1分子当たり合計で少なくとも3つ有するポリオールを含むことが好ましい。
上記リシノール酸グリセリドは、1分子当たり水酸基を合計で3つ有することが好ましい。
【0021】
上記リシノール酸グリセリド(上記変性されている場合を含む)がひまし油系ポリオール由来である場合(上記ひまし油系ポリオールが変性されている場合を含む)、上記リシノール酸グリセリドを含む上記ひまし油系ポリオールは、1分子当たり水酸基を平均で2.5個以上有することが好ましい。なお、上記水酸基は、上記変性による官能基(例えばカルボキシ基中のOH)を含まない。
【0022】
上記リシノール酸グリセリドは、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、リシノール酸トリグリセリドを含むことが好ましい。
上記リシノール酸トリグリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもいなくてもよいが、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、上記リシノール酸トリグリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合の少なくとも一部が変性されていることが好ましい。
【0023】
上記リシノール酸グリセリドがリシノール酸トリグリセリドを含む場合、上記リシノール酸グリセリドは、リシノール酸トリグリセリド以外に更に、リシノール酸モノグリセリド及び/又はリシノール酸ジグリセリドを含むことができる。上記の場合、リシノール酸ジグリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合の少なくとも一部が変性されていてもよい。リシノール酸モノグリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよい。
【0024】
変性されていないリシノール酸トリグリセリドは、例えば、下記式(1)で表わすことができる。
【化2】
【0025】
上記式(1)で表されるリシノール酸トリグリセリドにおいて、リシノール酸由来の二重結合が変性されている場合、いずれの二重結合が変性されているかは特に制限されない。
【0026】
(変性)
本発明において、上記リシノール酸グリセリドにおけるリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよい。
【0027】
上述のとおり、本発明において、上記のとおり変性されたリシノール酸グリセリドとして、例えば、ひまし油系ポリオールが有する二重結合(具体的には、ひまし油系ポリオールを構成する不飽和脂肪酸(例えば、主成分としてのリシノール酸を含み、その他にオレイン酸、リノール酸を含んでもよい。))が変性されたもの(変性ひまし油系ポリオール)を使用することができる。
変性ひまし油系ポリオールは、上記のとおりリシノール酸由来の二重結合が変性されたリシノール酸グリセリドを含むことができる。つまり、本発明の組成物が変性リシノール酸グリセリドを含有する場合、本発明の組成物は変性リシノール酸グリセリドとして変性ひまし油系ポリオールを含有することができる。(以下同様)
【0028】
上記リシノール酸グリセリドにおけるリシノール酸由来の二重結合(又は、ひまし油系ポリオールを構成する上記不飽和脂肪酸由来の二重結合。以下同様。)は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、変性されていることが好ましい。
リシノール酸由来の二重結合が変性されているリシノール酸グリセリドを以下「変性リシノール酸グリセリド」と称する場合がある。
【0029】
上記リシノール酸グリセリドにおけるリシノール酸由来の二重結合が変性されている場合、二重結合の全て又は一部が変性されていればよい。
上記リシノール酸グリセリドは、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、上記二重結合の少なくとも一部が変性されていることが好ましく、上記二重結合の全てが変性されていることがより好ましい。
【0030】
上記リシノール酸グリセリドにおけるリシノール酸由来の二重結合が変性された場合、上記変性により、変性リシノール酸グリセリドは置換基を有することができる。
上記置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基若しくはこれらの組み合わせ;
カルボキシ基のような官能基が挙げられる。
上記置換基と変性リシノール酸グリセリドにおけるリシノール酸骨格とは、直接又は2価の連結基を介して結合することができる。上記連結基は特に制限されない。
【0031】
上記置換基は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、極性基であることが好ましく、酸基であることがより好ましく、カルボキシ基が更に好ましく、上記二重結合のすべてがカルボキシ基で変性されていることが特に好ましい。
【0032】
上記リシノール酸グリセリドは、なかでも、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、
リシノール酸由来の二重結合が変性されていてもよいリシノール酸トリグリセリドを含むことが好ましく、
リシノール酸由来の二重結合が変性された変性リシノール酸トリグリセリドを含むことがより好ましく、
リシノール酸由来の二重結合がカルボキシ基で変性されたカルボキシ変性リシノール酸トリグリセリドを含むことが更に好ましく、
リシノール酸由来の二重結合が全てカルボキシ基で変性された全カルボキシ変性リシノール酸トリグリセリドを含むことが特に好ましい。
【0033】
上記リシノール酸グリセリドが変性リシノール酸トリグリセリドを含む場合、上記リシノール酸グリセリドは、変性リシノール酸トリグリセリド以外に更に、変性されていないリシノール酸トリグリセリド、リシノール酸モノグリセリド及びリシノール酸ジグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。上記の場合、上記リシノール酸ジグリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合の少なくとも一部が変性されていてもよい。上記リシノール酸モノグリセリドにおいてリシノール酸由来の二重結合は変性されていてもよい。
【0034】
(リシノール酸グリセリドの融点)
上記リシノール酸グリセリドの融点は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、+35℃以下であることが好ましく、-50℃~0℃であることがより好ましい。
本発明において、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定されたリシノール酸グリセリドの発熱ピーク温度を、リシノール酸グリセリドの融点とすることができる。
【0035】
上記リシノール酸グリセリドとして市販品を使用することができる。
上記市販品としては、例えば、伊藤製油社製URIC H-30等が挙げられる。
【0036】
(NCO/OH)
上記リシノール酸グリセリド(上記変性されている場合を含む)又は上記リシノール酸グリセリドを含む上記ひまし油系ポリオール(上記変性されている場合を含む)が有する水酸基に対する上記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH。インデックスとも称する。)は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、0.3~1.8であることが好ましく、0.9~1.3であることがより好ましい。なお、上記水酸基は、上記変性による官能基(例えばカルボキシ基中のOH)を含まない。
【0037】
(リシノール酸グリセリドの含有量)
上記シノール酸グリセリド(上記変性されている場合を含む)の含有量は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、上記ポリイソシアネート化合物10質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、7~20質量部であることがより好ましく、8~15質量部が更に好ましく、8~12質量部がより更に好ましい。
【0038】
(フィラー)
本発明の組成物は、更に、フィラーを含有することができる。
本発明の組成物は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、更に、フィラーを含有することが好ましい。
【0039】
上記フィラーとしては、例えば、粘土、シリカ、炭酸カルシウムが挙げられる。
上記フィラーは表面処理されていてもよい。表面処理に使用される表面処理剤は特に制限されない。例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステルが挙げられる。
【0040】
上記フィラーは、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、粘土が好ましい。
上記粘土としては、例えば、ベントナイトが挙げられる。
天然に存在するベントナイトは、通常、粘土鉱物(例えばモンモリロナイト)以外に石英や長石などの不純物を含む。
上記ベントナイトは、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、精製ベントナイトが好ましい。
精製ベントナイトは、天然に存在するベントナイトよりも、主成分であるモンモリロナイトの純度を高めたベントナイトを意味する。
【0041】
(フィラーの含有量)
上記フィラーの含有量は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、本発明の組成物(当該ポリウレタン系接着剤組成物)全量に対して、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%がより好ましく、20~50質量%が更に好ましい。
【0042】
(可塑剤)
本発明の組成物は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、更に、可塑剤を含有することが好ましい。
【0043】
上記可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP)、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、オレイン酸ブチルのようなエステル化合物;
アロマオイル;
下記式(1)で表される化合物A等が挙げられる。
【化3】

式(1)中、R1は、アミノ基(-NH2)、水素原子、又は、炭化水素基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基、又は、水素原子である。
【0044】
上記可塑剤は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、上記式(1)で表される化合物Aが好ましい。
これは、可塑剤としての式(1)で表される化合物Aが、加硫ゴムに浸透することができるためであると本発明者は推測する。
このため、本発明の組成物が更に上記化合物Aを含有し、加硫ゴムに対して適用された場合、上記化合物Aが加硫ゴムに浸透し、上記化合物Aの浸透とともに、上記ポリイソシアネート及び/又は上記リシノール酸グリセリドも加硫ゴムに浸透し、上記ポリイソシアネート及び/又は上記リシノール酸グリセリドによるアンカー効果が得られると本発明者は考える。
【0045】
(化合物A)
上記化合物Aは、下記式(1)で表される化合物である。
【化4】

式(1)中、R1は、アミノ基(-NH2)、水素原子、又は、炭化水素基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基、又は、水素原子である。
【0046】
上記式(1)において、R1としての炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又は、これらの組合せが挙げられる。炭化水素基は不飽和結合を有してもよい。
炭化水素基の炭素数は、20以下が好ましく、1~15がより好ましい。
炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のような脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0047】
上記式(1)において、ヘテロ原子は特に制限されない。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン等が挙げられる。ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を構成してもよい。
1がアミノ基である場合、R2、R3はそれぞれ独立に炭化水素基、又は、水素原子であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
1が水素原子である場合、R2、R3はそれぞれ独立に炭化水素基である、又は、R2が炭化水素基であり、R3が水素原子であることが好ましい態様として挙げられる。
【0048】
化合物Aとしては、例えば、R1がアミノ基である化合物;R1が水素原子である化合物;R1が炭化水素基である化合物が挙げられる。
1がアミノ基である化合物としては、例えば、尿素(NH2CONH2)が挙げられる。
1が水素原子である化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-N-イソプロピルホルムアミドが挙げられる。
1が炭化水素基である化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-N-イソプロピルアセトアミドが挙げられる。
【0049】
上記化合物Aは、加硫ゴムとの接着性により優れ、アンカー効果が高いという観点から、R1がアミノ基である化合物、R1が水素原子である化合物が好ましく、尿素、N,N-ジメチルホルムアミドがより好ましい。
【0050】
(可塑剤のSP値)
上記可塑剤のSP値は、加硫ゴムとの接着性により優れ、アンカー効果が高いという観点から、20(MPa)1/2以上であることが好ましい。
上記SP値の上限は特に制限されない。例えば、30(MPa)1/2以下とできる。
【0051】
本発明において、SP値(溶解度パラメーター)は、文献Properties ofPolymers 3rd Edition Part3およびPart4にある、分子体積と分子凝集エネルギー値を、ポリウレタンおよびエポキシ樹脂の化学構造に当てはめて算出した。
【0052】
SP値が20(MPa)1/2以上である可塑剤としては、例えば、尿素、N,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0053】
(可塑剤の分子量)
上記可塑剤の分子量は、加硫ゴムとの接着性により優れ、アンカー効果が高いという観点から、1,000以下であることが好ましく、50~200がより好ましく、60~100が更に好ましい。
【0054】
上記可塑剤の分子量は例えば従来公知の方法で測定できる。
上記可塑剤が低分子量化合物である場合(重合体でない場合)、上記可塑剤の分子量は例えば従来公知の方法で測定すればよい。
【0055】
(可塑剤の含有量)
上記可塑剤の含有量は、加硫ゴムとの接着性により優れるという観点から、本発明の組成物(当該ポリウレタン系接着剤組成物)全量に対して、1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0056】
本発明の組成物は1液型又は2液型とすることができる。
(2液型の接着剤組成物)
本発明の組成物が2液型である場合、2液型の接着剤組成物は、主剤と硬化剤(広義の硬化剤)とを有することができる。
・主剤
上記主剤が、上記ポリイソシアネート化合物を少なくとも含めばよい。上記主剤が、上記ポリイソシアネート化合物のみであってもよい。
【0057】
・硬化剤
上記(広義の)硬化剤が、1分子中に複数の活性水素含有基を有する化合物(狭義の硬化剤)を含むことができる。上記狭義の硬化剤は、上記ポリイソシアネート化合物と実質的に反応して接着剤組成物を硬化させる化合物を意味する。上記広義の硬化剤は、上記狭義の硬化剤を少なくとも含めばよい。
上記狭義の硬化剤としては、上記リシノール酸グリセリドが挙げられる。
【0058】
(他の任意成分)
本発明の組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記リシノール酸グリセリド以外のポリオール、硬化触媒、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料(染料)、接着付与剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
また、本発明の組成物が2液型の場合、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
なお、上記リシノール酸グリセリド以外のポリオールは、硬化剤に添加することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0059】
・硬化触媒
上記硬化触媒は、特に限定されないが、具体的には、例えば、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸などカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;オクチル酸ビスマスなどのビスマス触媒;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ系触媒;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP-30)、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物などの第三級アミン触媒等が挙げられる。
硬化触媒は、スズ系触媒が好ましい。
硬化触媒の量は、適宜選択することができる。
【0060】
(製造方法)
本発明の組成物が1液型である場合、その製造方法は、特に限定されず、例えば、上記必須成分を、必要に応じて使用することができる他の任意成分と混合する方法によって製造することができる。
【0061】
本発明の組成物が2液型の場合、その製造方法は、特に限定されず、例えば、上記主剤、上記硬化剤をそれぞれ別の容器に入れて、各容器内を窒素ガス雰囲気下で混合する方法により製造することができる。
また、2液型の使用方法としては上記主剤と上記硬化剤とを混合して使用すればよい。
【0062】
<加硫ゴムに対して適用される>
本発明の組成物は、加硫ゴムに対して適用される。
本発明の組成物が適用される加硫ゴムは、加硫されたゴム(加硫後のゴム)であれば特に制限されない。
上記加硫は硫黄による加硫であることが好ましい。
上記加硫ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム(例えばスチレンブタジエンゴム)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)のようなジエン系ゴムの加硫ゴムが挙げられる。
【0063】
上記加硫ゴムは、本発明の組成物との接着性に優れるという観点から、ハロゲン化ブチルゴムを含むことが好ましい。
上記加硫ゴムは、上記ジエン系ゴムのほかに、更に、非ジエン系ゴム、熱可塑性樹脂を含んでもよい。
【0064】
また、上記加硫ゴムは、ゴム成分のほかに、更に、カーボンブラック又はシリカのような充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、オイル(例えば、プロセスオイル、アロマオイル)、液状ポリマー、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を含むことができる。
【0065】
上記加硫ゴムとしては、例えば、ジエン系ゴム、必要に応じて使用することができる、非ジエン系ゴム、熱可塑性樹脂、上記各種添加剤を含むゴム組成物を加硫したものが挙げられる。
上記加硫の条件は特に制限されない。
【0066】
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、まず、本発明の組成物を加硫ゴムに適用する(適用工程)。
本発明の組成物を加硫ゴムに適用する方法は特に制限されない。
本発明の組成物を加硫ゴムに適用したときの厚さとしては、例えば、0.5~2.0mmとすることができる。
【0067】
(加硫ゴム同士)
本発明の組成物は、上述のとおり、加硫ゴムを接着できる。
また、本発明の組成物は、加硫ゴム同士を接着させることができる。
このとき、加硫ゴムの種類は同じであっても異なってもよい。
本発明の組成物を用いて加硫ゴム同士を接着させる場合、一方の加硫ゴム又は両方の加硫ゴムに本発明の組成物を適用することができる。
【0068】
部材としての加硫ゴムとしては、例えば、タイヤの内部若しくは外部の表面を構成する加硫ゴム、電子機器を収容するケースとしての加硫ゴムが挙げられる。
上記ケースとして加硫ゴムが用いられる場合、上記ケースは、例えば、電子機器の全体又は一部を覆った状態であればよい。
ケースに収容される電子機器は特に制限されない。
【0069】
本発明の組成物を用いて、例えば、タイヤの内部又は外部を構成する加硫ゴムXと電子機器を収容する加硫ゴムYとを接着させる場合、まず、一方の加硫ゴム又は両方の加硫ゴムに本発明の組成物を適用すればよい。
次いで、本発明の組成物を介するように上記加硫ゴムXと上記加硫ゴムYを配置すればよい。
【0070】
・硬化工程
次に、本発明の組成物を適用した加硫ゴムを、例えば、10~80℃、20~80%相対湿度(%RH)の条件下に置いて養生させることによって、本発明の組成物による接着層(ポリウレタン系接着剤)を有する積層体を得ることができる。
また、複数の加硫ゴムが本発明の組成物を介して配置された場合、本発明の組成物を介して配置された状態の複数の加硫ゴムを、例えば、上記と同様の条件下に置いて養生させることによって、本発明の組成物による接着層(ポリウレタン系接着剤)を介した積層体を得ることができる。
【実施例
【0071】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0072】
<接着剤組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いた。
本実施例において、接着剤組成物を2液型とした。
下記第1表に示すポリイソシアネート化合物を2液型接着剤組成物の主剤とした。
一方、下記第1表に示す、ポリイソシアネート化合物以外の成分を用いてこれらを混合し各硬化剤を得た。
上記主剤と、上記のとおり得られた各硬化剤とを撹拌機で混合し、接着剤組成物を製造した。
【0073】
<評価(加硫ゴム接着性)>
上記のとおり製造された各接着剤組成物を用いて、以下の加硫ゴム接着性(加硫ゴムに対する接着性)の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0074】
加硫ゴム接着性の評価にあたり、まず、以下のとおり加硫ゴムを調製した。
・加硫ゴムの調製
以下の「加硫ゴム用ゴム組成物」に示す成分から、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混合することにより、ゴム組成物を調製した。
上記のとおり調製されたゴム組成物を使用して所定形状の金型中で、170℃、10分間加硫して加硫ゴムを作製した。
【0075】
((加硫ゴム用ゴム組成物))
・ハロゲン化ブチルゴム100質量部(臭素化イソブチレンイソプレンラバー、EXXON CHEMICAL社製)
・カーボンブラック25質量部(新日化カーボン社製ニテロン#GN、N2SAが35m2/g
・酸化亜鉛3質量部(正同化学工業社製酸化亜鉛3種)
・硫黄3質量部(鶴見化学工業社製サルファックス5)
・加硫促進剤2質量部(大内新興化学工業社製DM-PO)
【0076】
・試験体の調製
・・適用工程
上記のとおり製造された各接着剤組成物を、上記加硫ゴムに1.0mmの厚さで塗布した。
【0077】
・・硬化工程
接着剤組成物を塗布した加硫ゴムを25℃、50%相対湿度の条件下に180分間置いて養生させ、加硫ゴムの上に接着剤組成物による接着層(ポリウレタン系接着剤)を有する試験体を得た。
【0078】
・・碁盤目試験
上記試験体が有する接着層に、カッターナイフで1mmピッチで切れ込みを入れ、基盤目を100個(縦10行×横10列)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を加硫ゴムに対して直角に保ちながら瞬間的に引き離す碁盤目剥離試験を行った。
碁盤目剥離試験後の試験体において、加硫ゴムの上に残った基盤目の数を調べた。
【0079】
・・評価基準
加硫ゴムの上に残った基盤目の数が、10個以上である場合、これを加硫ゴム(同士)に対する接着性に優れると評価した。
上記基盤目の数が10個以上である場合、上記数が多いほど、加硫ゴム(同士)に対する接着性により優れると評価した。
上記基盤目の数が、10個未満である場合、これを加硫ゴム(同士)に対する接着性が劣ると評価した。
【0080】
【表1】
【0081】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・ポリイソシアネート化合物 ポリメリックMDI:ポリメリックMDI(商品名スミジュール44V10、住化バイエルウレタン社製)融点-25℃(常温で液状)。1分子当たりイソシアネート基の官能基数の平均値:2.4個
【0082】
(リシノール酸グリセリド)
・リシノール酸グリセリド1(カルボキシ変性 H-30):リシノール酸グリセリドを含むひまし油系ポリオールである。上記リシノール酸グリセリドはリシノール酸トリグリセリドを含む(リシノール酸モノ、ジ、トリグリセリドの混合物である)。上記ひまし油系ポリオール(上記リシノール酸グリセリドを含む)の二重結合がカルボキシ変性されている。1分子当たりの官能基数(末端水酸基。なお上記官能基数はカルボキシ基を含まない))は2.7である。上記ひまし油ポリオール中の上記リシノール酸グリセリドの量の含有量は45質量%である。伊藤製油社製URIC H-30。分子量700。融点-30℃。
【0083】
・(比較)ポリプロピレングリコール:AGC社製エクセノールPPG。数平均分子量700。融点-65℃。
・(比較)1,6-ヘキサンジオールアジペート:ADEKA社製F7-67。数平均分子量1,000。融点60℃。1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸のポリエステルポリオール
【0084】
(可塑剤)
・可塑剤1 DINP:ジイソノニルフタレート(DINP)、ジェイプラス社製。SP値16.5(MPa)1/2。分子量419。
・可塑剤2 アロマオイル:商品名ダイアナフレシア32、出光石油化学社製。SP値14.5(MPa)1/2。分子量650
【0085】
・可塑剤3 ジメチルホルムアミド:和光純薬社製。SP値20.1(MPa)1/2。分子量73。上記式(1)で表される化合物Aに該当する。
・可塑剤4 尿素:和光純薬社製。SP値22(MPa)1/2。分子量60。上記式(1)で表される化合物Aに該当する。
【0086】
(フィラー)
・フィラー1 ベントナイト:商品名クニピア、クニミネ工業社製。精製ベントナイト
・フィラー2 シリカ:商品名R923、日本アエロジル社製
・フィラー3 表面処理炭酸カルシウム:商品名カルファイン200、丸尾カルシウム社製
【0087】
第1表に示す結果から明らかなように、リシノール酸グリセリドを含有せず、代わりにポリプロピレングリコールを含有する比較例1を加硫ゴムに対して適用した場合、加硫ゴムに対する接着性が劣った。
リシノール酸グリセリドを含有せず、代わりに1,6-ヘキサンジオールアジペートを含有する比較例2を加硫ゴムに対して適用した場合、加硫ゴムに対する接着性が劣った。
【0088】
これに対して、本発明の組成物は、これを加硫ゴムに対して適用して、加硫ゴムを接着させることができた。