(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂発泡ブロック
(51)【国際特許分類】
C08J 9/228 20060101AFI20230830BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230830BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20230830BHJP
B29K 55/00 20060101ALN20230830BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C08J9/228 CET
B29C44/00 G
B29C44/36
B29K55:00
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2019143315
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 茂富
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】切畑 博貴
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 竜也
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013423(JP,A)
【文献】特開2002-264163(JP,A)
【文献】特開2003-064212(JP,A)
【文献】特開2004-202994(JP,A)
【文献】特開2006-213850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
B29C 39/00-39/44
B22C 1/00- 3/02
B29K 55/00
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるスチレン系樹脂発泡ブロックであって、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックは400mm以上の厚みを有する直方体状であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの平均見掛け密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)は0.03以上0.10以下であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)は
80%以上であり、
前記中心部における展開面積比Sdr(B)は0.01以上0.05以下であり、
前記展開面積比Sdr(B)に対する前記展開面積比Sdr(A)の比Sdr(A)/Sdr(B)は1.0以上
であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの表面には、型内成形時に蒸気を注入する蒸気注入孔の痕跡である蒸気孔跡が存在しており、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に占める前記蒸気孔跡の面積の割合は、0.5%以上2.0%以下である、スチレン系樹脂発泡ブロック。
【請求項2】
前記展開面積比Sdr(B)が0.02以上0.04以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡ブロック。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂発泡ブロックのスキン面を含む表層部分を除去した後、前記スチレン系樹脂発泡ブロックの厚み方向に9等分となるように前記スチレン系樹脂発泡ブロックをスライスして9枚の薄板を作製し、前記薄板の質量を体積で除することにより算出した前記各薄板の見掛け密度に基づいて得られる、前記スチレン系樹脂発泡ブロックの見掛け密度の変動係数が0.05以下である、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂発泡ブロック。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの50%圧縮強度が180kPa以上500kPa以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡ブロック。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)と前記スチレン系樹脂発泡ブロックの平均融着率(D)との比(C)/(D)が0.9以上1.1以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂発泡ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フルモールド鋳造に用いる消失模型として、スチレン系樹脂発泡粒子成形体が用いられている。鋳造しようとする鋳物の寸法が比較的大きい場合には、まず、スチレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより、直方体状を呈するスチレン系樹脂発泡ブロックを作製する。この樹脂発泡ブロックに切削加工を施すことにより、所望の形状を有するスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0003】
この種のスチレン系樹脂発泡ブロックにおいては、樹脂発泡ブロックの内部に存在するスチレン系樹脂発泡粒子同士を十分に融着させることが望まれている。しかし、樹脂発泡ブロックは、例えば、高さ2000mm、幅1000mm、厚み400mmといった大きな外寸法を有しているため、型内成形の際に、樹脂発泡ブロックの内部に存在する発泡粒子が表面に存在する発泡粒子に比べて加熱されにくい傾向がある。
【0004】
かかる問題に対し、例えば特許文献1には、発泡性樹脂粒子を予備発泡させた発泡粒子を金型内に充填し、金型表面に形成された蒸気吹き出し孔の開口率を4~25%とすることにより、金型内の発泡粒子同士を融着させて消失模型用発泡樹脂ブロックを成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、樹脂発泡ブロックが厚くなるほど、樹脂発泡ブロックの中心部が融着し難くなり、切削加工中に切削面から発泡粒子が脱落する粒飛びと呼ばれる現象が発生しやすいという問題があった。切削面から発泡粒子が脱落すると、消失模型となるスチレン系樹脂発泡成形体の表面に意図しない凹部が形成され、鋳造欠陥の発生を招くおそれがあった。
【0007】
一方で、鋳造欠陥は、樹脂発泡ブロック中の水分の影響によっても発生することがある。しかし、樹脂発泡ブロックが厚くなると、型内成形時に樹脂発泡ブロック内に残留した水分が、型内成形後に樹脂発泡ブロックの外部に放出されにくくなるという課題があり、早期に水分の含有量が低い量で安定し、鋳造欠陥の発生がない樹脂発泡ブロックを製造することが困難であった。また、水分に起因する鋳造欠陥の発生を抑制するためには、樹脂発泡ブロックを成形した後、比較的長い期間にわたって養生を行うことにより樹脂発泡ブロック内の水分を放散させる必要があり、生産効率の低下を招いていた。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、養生に要する時間を短縮することができ、鋳造欠陥が生じ難いスチレン系樹脂発泡ブロックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、スチレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるスチレン系樹脂発泡ブロックであって、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックは400mm以上の厚みを有する直方体状であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの平均見掛け密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)が0.03以上0.10以下であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)が80%以上であり、
前記中心部における展開面積比Sdr(B)が0.01以上0.05以下であり、
前記展開面積比Sdr(B)に対する前記展開面積比Sdr(A)の比Sdr(A)/Sdr(B)が1.0以上であり、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの表面には、型内成形時に蒸気を注入する蒸気注入孔の痕跡である蒸気孔跡が存在しており、
前記スチレン系樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に占める前記蒸気孔跡の面積の割合は、0.5%以上2.0%以下である、スチレン系樹脂発泡ブロックにある。
【発明の効果】
【0010】
前記スチレン系樹脂発泡ブロック(以下、適宜「樹脂発泡ブロック」と省略する。)の中心部の融着率(C)は、前記特定の範囲である。また、前記樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)、前記樹脂発泡ブロックの中心部における展開面積比Sdr(B)及び前記展開面積比Sdr(B)に対する前記展開面積比Sdr(A)の比Sdr(A)/Sdr(B)はそれぞれ前記特定の範囲内にある。即ち、前記樹脂発泡ブロックは、表面における発泡粒子同士の隙間の大きさが前記樹脂発泡ブロックの中心部における発泡粒子同士の隙間の大きさ以上となるように構成されている。
【0011】
前記の態様によれば、養生に要する時間を短縮することができ、鋳造欠陥が生じ難いスチレン系樹脂発泡ブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例における樹脂発泡ブロックの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例における成形工程の説明図である。
【
図3】
図3は、実施例における見掛け密度の測定のために用いる薄板の作製方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記スチレン系樹脂発泡ブロックは、スチレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより作製することができる。また、スチレン系樹脂発泡粒子は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることにより作製することができる。なお、以下において、「スチレン系樹脂発泡粒子」を「発泡粒子」、「発泡性スチレン系樹脂粒子」を「発泡性粒子」と省略することがある。
【0014】
[発泡性粒子]
発泡性粒子には、スチレン系樹脂と発泡剤とが含まれている。発泡性粒子には、更に、可塑剤や気泡核剤などの添加剤が含まれていてもよい。また、発泡性粒子の表面は、滑剤などの被覆剤によって覆われていてもよい。
【0015】
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体、2種以上のスチレン系単量体の共重合体、スチレン系単量体とスチレン系単量体以外の単量体との共重合体等を使用することができる。スチレン系樹脂中に含まれるスチレン系単量体に由来する構成単位の比率は、例えば50質量%以上とすることができる。スチレン系樹脂中に含まれるスチレン系単量体に由来する構成単位の比率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%、つまり、スチレン系樹脂がスチレン単独重合体であることがさらに好ましい。
【0016】
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
また、スチレン系単量体と共重合可能なその他の単量体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等がある。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等がある。これらの単量体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の鎖式脂肪族炭化水素を使用することができる。発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
発泡性粒子の平均粒子径は、例えば、0.2mm以上15mm以下の範囲から適宜設定することができる。発泡性粒子の平均粒子径としては、粒度分布測定装置を用いて粒子本体の粒度分布測定を行い、測定された粒度分布における体積積算値63%での粒径(d63)の値を使用することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」等を使用することができる。
【0020】
[発泡粒子]
発泡性粒子を発泡させることにより発泡粒子を得ることができる。発泡の方法としては、例えば、撹拌装置の付いた円筒形の発泡機内で、発泡性粒子に蒸気等の加熱媒体を供給することにより、発泡性粒子を加熱して発泡させる方法がある。
【0021】
[樹脂発泡ブロック]
多数の発泡粒子を型内成形することにより、樹脂発泡ブロックを得ることができる。樹脂発泡ブロックの形状は、厚みが400mm以上の直方体状である。樹脂発泡ブロックは、例えば、高さ1800mm以上2430mm以下、幅900mm以上1220mm以下の直方体状を呈していてもよい。なお、前述した樹脂発泡ブロックの厚みとは、樹脂発泡ブロックの外寸法のうち最も小さい外寸法をいう。
【0022】
前記樹脂発泡ブロックは、中心部の融着率(C)、表面の展開面積比Sdr(A)、中心部の展開面積比Sdr(B)及びSdr(A)/Sdr(B)の値をそれぞれ前記特定の範囲内とすることにより、養生に要する時間を短縮するとともに、鋳造欠陥を低減することができる。かかる作用効果は、成形時には前記樹脂発泡ブロックの内部に蒸気が供給され難く、成形後には内部に存在する水分が抜けにくい傾向のある、厚みが比較的厚い樹脂発泡ブロックにおいて特に有効である。かかる観点からは、前記樹脂発泡ブロックの厚みは450mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがより好ましく、510mm以上であることがさらに好ましい。
【0023】
また、樹脂発泡ブロックの高さは1800mm以上2430mm以下であり、幅は900mm以上1220mm以下であることが好ましく、高さは1900mm以上2200mm以下であり、幅は950mm以上1100mm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
・融着率
前記樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)は80%以上である。樹脂発泡ブロックの中心部は、型内成形時に最も加熱されにくい部分であるため、発泡粒子同士の融着性を評価する上では中心部における融着率(C)が特に重要となる。樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)が低すぎる場合には、金型から樹脂発泡ブロックを取り出した後に、厚み方向の中心部に割れが生じやすくなり、樹脂発泡ブロックが得られなくなったり、消失模型用途として使用できなくなるおそれがある。
【0025】
また、中心部における融着率(C)が低すぎる場合には、樹脂発泡ブロックを切削して消失模型を作製する際に、切削面から発泡粒子が脱落する粒飛びと呼ばれる現象が発生しやすくなる。フルモールド鋳造においては、消失模型の形状がそのまま鋳物の形状となるため、粒飛びが発生した消失模型を用いて鋳造を行うと、鋳物の表面に粒飛びに起因する凹部が形成されやすくなる。従って、この場合には、鋳物の表面状態の悪化を招くおそれがある。
【0026】
前述した「樹脂発泡ブロックの中心部」とは、具体的には、以下の方法により特定される領域をいう。まず、樹脂発泡ブロックを厚み方向にスライスし、複数の薄板に分割する。薄板の枚数は特に限定されるものではないが、奇数枚、好ましくは9枚の薄板に分割することにより、樹脂発泡ブロックの中心部を含む薄板を得ることができる。上記のようにして得られた複数の薄板のうち、樹脂発泡ブロックの厚み方向の中央から得た薄板に、スライス面(幅×高さの面)の中央を円の中心とし、スライス面の全面積に対して30%の面積を有する円状の領域を設定する。そして、この円を底面とし、薄板の厚み方向に延在する円柱状の領域を樹脂発泡ブロックの中心部とすることができる。
【0027】
樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)は、例えば、以下の方法により算出することができる。上記のようにして得られた複数の薄板のうち、厚み方向の中央から採取した薄板における樹脂発泡ブロックの中心部から試験片を採取する。なお、試験片の数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。この試験片を概ね等分となるように割り、破断面を露出させる。この破断面に存在する発泡粒子の総数と、発泡粒子の内部において破断している発泡粒子の総数とを数える。そして、前者の値に対する後者の値の比を百分率(%)で表した値を、試験片の融着率とする。薄板から採取した試験片が1個である場合には、試験片の融着率を樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)とする。また、薄板から採取した試験片が複数である場合には、試験片の融着率の算術平均値を樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)とする。
【0028】
樹脂発泡ブロックの中心部における融着率(C)と樹脂発泡ブロックの平均融着率(D)の比(C)/(D)は、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。この場合には、前述した粒飛びの発生をより効果的に抑制することができる。
【0029】
樹脂発泡ブロックの平均融着率(D)は、例えば、以下の方法により算出することができる。まず、樹脂発泡ブロックの中心部の融着率(C)の算出方法と同様に、樹脂発泡ブロックを厚み方向にスライスし、複数の薄板に分割する。
【0030】
これら複数の薄板のそれぞれについて、前述した樹脂発泡ブロックの中心部の融着率(C)の算出方法と同様の方法により融着率を算出する。以上により得られた薄板の融着率の算術平均値を、樹脂発泡ブロックの平均融着率(D)とする。
【0031】
・展開面積比
前記樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)は0.03以上0.1以下である。ここで、「展開面積比Sdr」とは、ISO 25178に規定される表面粗さを表す指標である。展開面積比Sdrは、発泡粒子の接着面積や接着強度が関連する融着率とは異なり、発泡粒子間の間隙に依存する指標である。展開面積比Sdrは、具体的には、評価対象となる領域を完全な平坦面と仮定した場合の面積に対する実際の表面積の増加率を意味し、展開面積比Sdrの値が大きいほど表面の凹凸が大きいことを示す。評価対象となる領域が完全な平坦面である場合、展開面積比Sdrの値は0となる。
【0032】
樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)を前記特定の範囲とすることにより、樹脂発泡ブロックの表面からの水分の放散を促進することができる。その結果、樹脂発泡ブロック中の水分の含有量を早期に低減する、または、型内成形後の養生に要する時間を短縮し、生産効率を向上させる等の作用効果を奏することができる。かかる作用効果をより高める観点から、樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)は、0.04以上0.095以下であることが好ましく、0.05以上0.09以下であることがより好ましい。
【0033】
樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)が小さすぎる場合には、樹脂発泡ブロックの表面に存在する発泡粒子同士の隙間が狭くなるため、水分が放散されにくくなる。そのため、この場合には、樹脂発泡ブロック中の水分の含有量の増大や、生産効率の低下を招くおそれがある。一方、樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)が大きすぎる場合には、切削加工の際に発泡粒子同士の隙間が広がりやすくなり、鋳造欠陥の増加を招くおそれがある。
【0034】
また、前記樹脂発泡ブロックの中心部における展開面積比Sdr(B)は0.01以上0.05以下である。展開面積比Sdr(B)の値としては、前述した中心部の融着率(C)と同様に、樹脂発泡ブロックを厚み方向にスライスして複数の薄板に分割した後、樹脂発泡ブロックの厚み方向の中央から採取した薄板の表面の展開面積比Sdrの値を使用する。
【0035】
樹脂発泡ブロックの中心部の展開面積比Sdr(B)が前記特定の範囲である場合には、樹脂発泡ブロックに切削加工を施すことにより、切削表面の隙間が少なく、密度のバラつきの小さい消失模型を得ることができる。そして、かかる消失模型を用いてフルモールド鋳造を行うことにより、表面状態の良好な鋳物を容易に得ることができる。かかる作用効果をより高める観点からは、展開面積比Sdr(B)の値は、0.02以上0.04以下であることがさらに好ましい。
【0036】
更に、前記樹脂発泡ブロックの中心部の前記展開面積比Sdr(B)に対する表面の展開面積比Sdr(A)の比Sdr(A)/Sdr(B)は1.0以上である。つまり、前記樹脂発泡ブロックは、特異的に、表面に存在する隙間の大きさが中心部に存在する隙間の大きさと同程度か、または表面に存在する隙間の大きさが中心部に存在する隙間の大きさよりも適度に大きくなるように構成されている。これにより、消失模型として利用される樹脂発泡ブロックの内部において発泡粒子同士の隙間を小さくし、消失模型としては不要な部分である樹脂発泡ブロックの最表面において適度に隙間を形成するという理想的な状態を実現することができる。その結果、水分の含有量を低減する効果及び水分の放散を促進する効果を得ることができる。
【0037】
また、Sdr(A)/Sdr(B)の値が前記特定の範囲内である場合には、切削加工した際に、切削面における発泡粒子同士の隙間の拡大を抑制することができる。その結果、鋳造欠陥の発生を抑制し、良好な表面状態を有する鋳物を容易に得ることができる。かかる作用効果をより高める観点から、Sdr(A)/Sdr(B)の値は、1.1以上であることがより好ましい。一方、Sdr(A)/Sdr(B)の値は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。
【0038】
そして、前記発泡樹脂ブロックは、表面の展開面積比Sdr(A)、中心部の展開面積比Sdr(B)及びこれらの比Sdr(A)/Sdr(B)が前記特定の関係を満足することにより、樹脂発泡ブロックの表面及び中心部のそれぞれにおける発泡粒子同士の隙間の大きさを最適な大きさにすることができる。すなわち、発泡樹脂ブロックの中心部においては、発泡粒子同士の隙間を適度に確保することができるため、切削加工した際に切削面における発泡粒子同士の隙間の拡大を抑制することができる。その結果、良好な表面状態を有する鋳物を得ることができる。さらに、樹脂発泡ブロックの中心部に存在する水分が発泡粒子同士の隙間を通過しやすくなるため、中心部からその周辺への水分の放散を促進することもできる。また、樹脂発泡ブロックの表面は、中心部に比べて発泡粒子同士の隙間が大きいため、樹脂発泡ブロックの内部から外部への水分の放散が促進される。これらの結果、前記樹脂発泡ブロックは、養生時間を短縮するとともに、鋳造欠陥の発生を抑制することができる。
【0039】
・平均見掛け密度
前記樹脂発泡ブロックの平均見掛け密度は10kg/m3以上100kg/m3以下である。この場合には、強度などの機械的物性を確保しつつ、樹脂発泡ブロックの質量を低減することができる。かかる特性を有する樹脂発泡ブロックは、消失模型用途に特に好適である。
【0040】
また、前記見掛け密度の変動係数は、0.05以下であることが好ましい。この場合には、樹脂発泡ブロック内における機械的物性等のバラつきをより低減することができる。これにより、切削加工によって得られる消失模型の機械的物性等のバラつきをより低減し、良好な鋳造性を有する消失模型を得ることができる。
【0041】
平均見掛け密度dav及び見掛け密度の変動係数dCVは、樹脂発泡ブロック内の複数の位置から採取した試験片の見掛け密度dに基づき、以下の式(1)及び式(2)により算出される値である。なお、下記式(1)~(2)におけるnは測定した試験片の総数を示す記号であり、記号diはi番目の試験片の見掛け密度を示す記号である。
【0042】
【0043】
【0044】
nの値を大きくするほど、より正確な平均見掛け密度dav及び見掛け密度の変動係数dcvの値を算出することができる。nの値は、例えば、5以上であればよい。
【0045】
なお、前述した樹脂発泡ブロックから採取した試験片の見掛け密度は、測定対象の試験片の質量を、前記試験片の外形寸法から算出した体積で除することにより算出することができる。
【0046】
・圧縮応力
前記樹脂発泡ブロックの50%圧縮応力は180kPa以上500kPa以下であることが好ましい。かかる50%圧縮応力を備えた樹脂発泡ブロックは、フルモールド鋳造法に用いる消失模型として好適である。
【0047】
[樹脂発泡ブロックの製造方法]
前記樹脂発泡ブロックの製造方法は、種々の態様を取り得る。例えば、前記樹脂発泡ブロックの製造方法は、金型内に発泡粒子を充填する充填工程と、金型内の発泡粒子を加熱して型内成形を行う成形工程と、を有していてもよい。
【0048】
前記樹脂発泡ブロックの型内成形に用いる金型は、所望する樹脂発泡ブロックの形状に対応したキャビティを有している。また、金型の壁面には、金型内に蒸気を注入する複数の蒸気注入孔が設けられている。より具体的には、蒸気注入孔は、金型の壁面のうち、少なくとも樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に対面する壁面に設けられている。蒸気注入孔は、樹脂発泡ブロックの側周面、つまり、厚み方向の端面以外の面に対面する壁面に設けられていてもよい。
【0049】
樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に対面する金型の壁面に占める蒸気注入孔の面積率は、0.5%以上2.0%以下であることが好ましい。従来、樹脂発泡ブロックの内部を融着させようとして、単に金型に注入する蒸気の圧力を高くした場合には、金型の壁面近傍に存在する発泡粒子が優先して二次発泡してしまい、蒸気を樹脂発泡ブロックの内部にまで行き渡らせることが難しくなるおそれがあった。
【0050】
これに対し、成形工程において、前述したような比較的狭い蒸気注入孔から金型内に蒸気を供給することにより、金型に吹き込まれる蒸気の勢いを強くしつつ、金型に充填された発泡粒子同士の空隙に蒸気を流入させやすくすることができる。その結果、金型に充填された発泡粒子間の間隙を通って樹脂発泡ブロックの中心部に十分な量の蒸気を到達させ、中心部に存在する発泡粒子を加熱することが容易となる。また、前述したような比較的狭い蒸気注入孔から金型内に蒸気を供給する場合、金型の壁面近傍に存在する発泡粒子は、中心部に存在する発泡粒子に比べて緩やかに加熱されやすくなる。
【0051】
したがって、蒸気注入孔の面積率を前記特定の範囲とすることにより、樹脂発泡ブロックの中心部の発泡粒子を十分に二次発泡させ、かつ、表層部分の発泡粒子の二次発泡を中心部よりも抑制することができる。その結果、樹脂発泡ブロックの中心部における発泡粒子同士の間隙が適度に狭く、かつ、樹脂発泡ブロックの表面における発泡粒子同士の間隙が中心部よりも大きいという理想的な状態を実現することが可能となる。
【0052】
更に、蒸気注入孔の面積率を前記特定の範囲とし、金型に吹き込まれる蒸気の勢いを強くすることにより、金型に供給する蒸気の圧力が変動した場合にも樹脂発泡ブロックの中心部に十分な量の蒸気を供給することができる。その結果、製造安定性をより向上させ、長期間にわたって連続して樹脂発泡ブロックを製造する際の特性のバラつきをより低減することができる。
【0053】
これらの作用効果をより高める観点からは、樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に対面する金型の壁面に占める蒸気注入孔の面積率を、0.5%以上1.8%以下とすることがより好ましく、0.6%以上1.5%以下とすることがさらに好ましい。なお、蒸気注入孔の面積は、蒸気の流れ方向に直交する断面における開口面積の最小値とする。すなわち、例えば金型の外側から内側に向かって拡開する先広がり形状等のように、蒸気注入孔の周縁面が金型の内表面に対して傾斜している場合には、蒸気注入孔の面積は、蒸気注入孔の周縁面のうち、最も内側の端縁によって囲まれた部分の面積である。
【0054】
複数の蒸気注入孔は、等間隔に配置されていることが好ましい。この場合には、金型内に吹き込む蒸気の量のバラつきを低減し、金型内の発泡粒子を均一に加熱することができる。これにより、樹脂発泡ブロックの見掛け密度のバラつきをより低減することができる。
【0055】
金型に吹き込む蒸気の勢いをより強くする観点からは、蒸気注入孔は、金型の壁面に取り付けられたコアベントに設けられたものでなく、金型の壁面に形成されたスリットであることが好ましい。スリットの寸法は、長さ30mm以上100mm以下、幅0.5mm以上2mm以下であることが好ましく、長さ30mm以上100mm以下、幅0.8mm超1.5mm以下であることがより好ましい。金型の壁面に形成したスリットから蒸気を注入することにより、金型に吹き込まれる蒸気の勢いをより強くすることができる。その結果、製造安定性をより向上させ、長期間にわたって連続して樹脂発泡ブロックを製造する際の特性のバラつきをより低減することができる。また、金型の壁面に、上記のスリットが略均等に配列されるようにすることが好ましい。
【0056】
前述の作用効果をさらに高める観点からは、個々の蒸気注入孔の形状をスリット状とした上で、樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に対面する金型の壁面に占める蒸気注入孔の面積率を0.5%以上2.0%以下とすることがより好ましい。このように、個々の蒸気注入孔の開口を絞った上で、金型の壁面に占める蒸気注入孔の面積率を小さくすることにより、金型に吹き込まれる蒸気の勢いを強くしつつ、金型に充填された発泡粒子同士の空隙に蒸気を流入させやすくすることができる。その結果、製造安定性をより向上させ、長期間にわたって連続して樹脂発泡ブロックを製造する際の特性のバラつきをより低減することができる。
【0057】
充填工程においては、金型内に発泡粒子を充填する。充填工程が完了した時点では、金型内に充填された発泡粒子は融着しておらず、発泡粒子同士の間に隙間が存在している。充填工程を完了した後、必要に応じて、金型内のガスを排気して金型内を負圧にしてもよい。この場合には、後の成形工程において、金型内への蒸気の注入をより容易に行うことができる。
【0058】
成形工程においては、金型の壁面のうち、樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に対面する壁面に存在する蒸気注入孔から金型内に蒸気を注入する。金型内に蒸気を注入すると、金型内の発泡粒子が二次発泡によって体積を増しながら相互に融着する。そして、発泡粒子の膨張が金型によって規制されることにより、金型のキャビティ形状に対応した樹脂発泡ブロックが形成される。
【0059】
また、成形工程における蒸気の供給方法は種々の態様をとり得る。例えば、成形工程においては、発泡粒子の膨張によって金型が受ける面圧に応じて蒸気の供給量を調整してもよい。この場合、成形工程中に、金型が受ける面圧の最高値が0.9~1.0kg/cm2の範囲となるように蒸気の供給量を調整することが好ましい。
【0060】
このようにして、前記特定の蒸気注入孔から金型内に蒸気を供給するとともに、蒸気の供給量及び加熱時間を制御することにより、樹脂発泡ブロックの中心部に十分な量の蒸気を供給しつつ、表面に適度な空隙を有する樹脂発泡ブロックを容易に作製することができる。
【0061】
・蒸気孔跡の面積率
前述の方法により得られたスチレン系樹脂発泡ブロックの表面には、型内成形時に蒸気を注入する蒸気注入孔の痕跡である蒸気孔跡が存在している。なお、前述した蒸気孔跡とは、蒸気孔部分に発泡粒子が押し付けられることにより、蒸気注入孔が転写された部分をいう。
【0062】
厚み方向の端面に占める前記蒸気孔跡の面積の割合は0.5%以上2.0%以下であることが好ましい。すなわち、樹脂発泡ブロックは、厚み方向の端面に対面する壁面に占める蒸気注入孔の面積率が0.5%以上2.0%以下である金型を用いて作製されていることが好ましい。前述したように、金型の蒸気注入孔の面積率を前記特定の範囲とすることにより、型内成形時に蒸気注入孔から蒸気を勢いよく吹き込むことができる。これにより、樹脂発泡ブロックの内部における発泡粒子の融着性をより向上させることができるとともに、見掛け密度のバラつきをより低減することができる。それ故、かかる金型を用いて作製された樹脂発泡ブロックは、消失模型として利用される樹脂発泡ブロックの内部において発泡粒子同士の隙間を小さくし、消失模型としては不要な樹脂発泡ブロックの表層部分においては適度に隙間を形成するという、水分の放散に理想的な状態を有している。
【実施例】
【0063】
以下に、前記樹脂発泡ブロックの実施例及び比較例について説明する。本例の樹脂発泡ブロック1は、
図1に示すように直方体状を呈している。また、樹脂発泡ブロック1の表面には、型内成形時に使用した金型の蒸気注入孔の痕跡である、蒸気孔跡11が複数形成されている。本例の樹脂発泡ブロック1は、具体的には高さ約2025mm、幅約1020mm、厚み約520mmの直方体状を呈している。以下に、樹脂発泡ブロックの製造方法を説明する。
【0064】
(実施例1~実施例2、比較例1~比較例2)
まず、発泡性スチレン系樹脂粒子11.6kgを容積700Lの加圧バッチ発泡機内に投入した。この発泡機内にスチームを供給して発泡性樹脂粒子を加熱することにより、発泡性樹脂粒子を発泡させて嵩密度が約16.6kg/m3の発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を室温で1日間熟成した。
【0065】
その後、
図2に示すように、EPSブロック成形機(DAISEN株式会社製「VS-2000」)の金型2に発泡粒子10を充填した(充填工程)。なお、金型としては、
図2に示すように、樹脂発泡ブロック1の外寸法に対応した直方体状のキャビティ21を備えた金型2を使用した。金型2の壁面22には、金型2内に蒸気を注入するための複数の蒸気注入孔221が設けられている。
【0066】
より詳細には、本例のEPSブロック成形機は、蒸気配管の口径面積に対する蒸気注入孔221の面積比率が15~20%となるように構成されている。金型2の蒸気注入孔221は、幅1mm、長さ40mmのスリット状の孔である。金型2における樹脂発泡ブロック1の厚み方向の端面12(
図1参照)に対面する壁面22aに占める蒸気注入孔221の面積率は、蒸気注入孔221の数を調整することにより、表1に示す値に調整されている。また、壁面22a以外の金型2の壁面22においても、蒸気注入孔221の面積率が表1に示す値に調整されている。
【0067】
金型内を排気した後、樹脂発泡ブロックの厚み方向における一方側の蒸気注入孔から金型内に蒸気を注入して金型内の発泡粒子を予備加熱した。その後、樹脂発泡ブロックの厚み方向における両側の蒸気注入孔から、金型が受ける面圧が表1に示す値となるように注入量を制御しながら金型内に蒸気を注入して金型内の発泡粒子を本加熱し、発泡粒子を二次発泡させつつ相互に融着させた(成形工程)。なお、本加熱において金型内に注入した蒸気の圧力はゲージ圧で0.3~0.4MPa(G)とした。成形工程における面圧の最高値及び加熱時間は、表1に示す通りであった。
【0068】
次いで、金型が受ける面圧が-0.05kg/cm2になるまで金型内を冷却した。面圧が-0.05kg/cm2に到達した時点で冷却を停止し、金型から樹脂発泡ブロックを取り出した。金型内の冷却を開始してから冷却を停止するまでに要した時間は、表1の「放冷時間」に示した通りであった。また、金型内への発泡粒子の充填を開始してから樹脂発泡ブロックを取り出すまでに要した時間は、表1の「成形サイクル」に示した通りであった。
【0069】
(実施例3、比較例3)
実施例1等と同様に発泡粒子を作製した後、ブロック成形機(笠原工業株式会社製「PEONY-205DS」)の金型に発泡粒子を充填した(充填工程)。より詳細には、本例のブロック成形機は、蒸気配管の口径面積に対する蒸気注入孔221の面積比率が5~10%となるように構成されている。また、本例において使用した金型2の蒸気注入孔221は、幅1mm、長さ70mmのスリット状の孔である。金型2における樹脂発泡ブロック1の厚み方向の端面12に対面する壁面22aに占める蒸気注入孔221の面積率は、蒸気注入孔221の数を調整することにより、表2に示す値に調整されている。また、壁面22a以外の金型2の壁面22においても、蒸気注入孔221の面積率が表2に示す値に調整されている。
【0070】
金型内を排気した後、樹脂発泡ブロックの厚み方向における一方側の蒸気注入孔から金型内に蒸気を注入すると共に、他方側の蒸気注入孔から金型内のガスを排気して金型内の発泡粒子を予備加熱した。その後、樹脂発泡ブロックの厚み方向における両側の蒸気注入孔から、金型が受ける面圧が表2に示す値となるように注入量を制御しながら金型内に蒸気を注入して金型内の発泡粒子を本加熱し、発泡粒子を二次発泡させつつ相互に融着させた(成形工程)。成形工程における面圧の最高値及び加熱時間は、表2に示す通りであった。
【0071】
次いで、金型が受ける面圧が-0.10kg/cm2に到達するまで金型内を冷却した。面圧が-0.10kg/cm2に到達した時点で金型の冷却を停止し、金型から樹脂発泡ブロックを取り出した。金型内の冷却を開始してから冷却を停止するまでに要した時間は、表2の「放冷時間」に示した通りであった。また、金型内への発泡粒子の充填を開始してから樹脂発泡ブロックを取り出すまでに要した時間は、表2の「成形サイクル」に示した通りであった。
【0072】
以上により得られた実施例1~3及び比較例1~3の樹脂発泡ブロックの展開面積比Sdr、融着率、見掛け密度、鼓形収縮量、含水率及び圧縮強度を、以下の方法により評価した。
【0073】
「展開面積比Sdr」
展開面積比Sdrは、3D形状測定機(株式会社キーエンス製「VR-3000」)を用いて測定することができる。表1及び表2に、実施例及び比較例の樹脂発泡ブロックの表面における展開面積比Sdr(A)及び樹脂発泡ブロックの中心部における展開面積比Sdr(B)の値を示す。
【0074】
樹脂発泡ブロックの表面の展開面積比Sdr(A)は、以下の方法により測定して得られた値である。まず、樹脂発泡ブロックの表面(スキン面)から5か所の測定位置を無作為に選択した。そして、各測定位置において、測定視野を18mm×24mmとして展開面積比Sdrを測定した。以上により得られた5か所の展開面積比Sdrの平均値を表面の展開面積比Sdr(A)とした。
【0075】
樹脂発泡ブロックの中心部の展開面積比Sdr(B)は、以下の方法により測定して得られた値である。まず、
図3に示すように、高さ約2025mm、幅約1020mm、厚み約520mmの樹脂発泡ブロック1から、ニクロム線を用い、厚み方向の両端面12を、つまり、スキン面を含む表層部分を除去した。次いで、厚み方向に9等分となるように樹脂発泡ブロック1をスライスして9枚の薄板13を作製した。そして、これらの薄板13のうち、厚み方向の中央の薄板131の表面を薄く切削し、スライス時に形成された溶融部分を除去すると共に切削面を露出させた。
【0076】
この切削面(つまり、高さ2025mm×幅1020mmの面)に、切削面の中央を円の中心とし、切削面の全面積に対して30%の面積を有する円状の領域を設定した。この円状の領域内から5か所の測定位置を無作為に選択し、各測定位置において、測定視野を18mm×24mmとして展開面積比Sdrを測定した。以上により得られた5か所の展開面積比Sdrの平均値を樹脂発泡ブロックの中心部の展開面積比Sdr(B)とした。
【0077】
「最大鼓形収縮量」
樹脂発泡ブロックの厚み方向の端面に定規を当接させた状態で、定規と樹脂発泡ブロックの端面との隙間の最大値を測定し、この値を最大鼓形収縮量とした。実施例及び比較例の最大鼓形収縮量は表1及び表2に示す通りであった。
【0078】
「平均見掛け密度及び見掛け密度の変動係数」
図3に示すように、ニクロム線を用い、樹脂発泡ブロック1における厚み方向の両端面12、つまり、スキン面を含む表層部分を除去した。次いで、厚み方向に9等分となるように樹脂発泡ブロック1をスライスして9枚の薄板13を作製した。これらの薄板13の質量を体積で除することにより、各薄板13の見掛け密度を算出した。表1及び表2の「平均見掛け密度」、「標準偏差」、「変動係数」には、これらの薄板13の見掛け密度に基づいて算出した、見掛け密度の平均値、標準偏差及び変動係数を記載した。
【0079】
「含水率」
実施例及び比較例のそれぞれについて、成形直後の樹脂発泡ブロックの含水率と、成形後、常温常湿の環境下に2週間放置した後の樹脂発泡ブロックの含水率とを測定した。これらの値は、表1及び表2に示す通りであった。なお、樹脂発泡ブロック1中の水分の含有量は、具体的には、予め質量を測定した樹脂発泡ブロック1を乾燥させ、乾燥前の質量から乾燥後の質量の合計を差し引くことにより算出することができる。この樹脂発泡ブロック中の水分の含有量を、乾燥前の質量に対する百分率で表した値を樹脂発泡ブロックの含水率とした。樹脂発泡ブロックの含水率は、消失模型として使用される際に、鋳造欠陥を防止する観点からは、4.0%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがさらに好ましい。
【0080】
「融着率」
ニクロム線を用い、樹脂発泡ブロック1における厚み方向の両端面12、つまり、スキン面を含む表層部分を除去した。次いで、厚み方向に9等分となるように樹脂発泡ブロック1をスライスして9枚の薄板13を作製した。そして、これらの薄板13の表面を薄く切削し、スライス時に形成された溶融部分を除去すると共に切削面を露出させた。
【0081】
次いで、個々の薄板13の切削面に、切削面の中央を円の中心とし、切削面の面積に対して30%の面積を有する円状の領域を設定した。この円状の領域から縦100mm×横100mm×厚み15mmの直方体形状の試験片を5個切り出した。
【0082】
次に、試験片の側周面(つまり、縦100mm×厚み15mmの面、または、横100mm×厚み15mmの面のいずれか)を接着剤にて剥離強度測定用冶具に固定し、テンシロン万能試験機を用いて2mm/分の引張速度で引張試験を行った。引張試験によって試験片を破断させた後、破断面を目視観察し、破断面に露出した発泡粒子のうち、発泡粒子自体が破断している発泡粒子の数と、発泡粒子同士の界面が剥離した発泡粒子の数とを計測した。破断面に露出した発泡粒子の総数に対する、発泡粒子の内部で破断した発泡粒子の数を百分率で表した値を、各試験片の融着率(%)とした。そして、同一の薄板13から作製した試験片の融着率の算術平均値を、この薄板13の融着率とした。
【0083】
表1及び表2の「中心部の融着率(C)」欄には、厚み方向の中央に配置されていた薄板131の融着率を記載した。また、「平均融着率(D)」欄には、9枚の薄板13のそれぞれについて、上記の方法で算出した融着率の算術平均値を記載した。
【0084】
「圧縮応力」
薄板13から、樹脂発泡ブロック1の厚み方向と試験片の厚み方向とが一致するようにして、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を採取した。この試験片を用いて、JIS K6767(1999年)に準拠して圧縮応力-ひずみ試験を行い、ひずみ50%における圧縮荷重を測定した。そして、ひずみ50%における厚み方向の圧縮荷重を試験片の受圧面積で除した値を圧縮応力(50%圧縮応力)とした。なお、圧縮応力-ひずみ試験には万能試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフ(登録商標)」)を使用し、試験中の試験速度は10mm/分とした。
【0085】
【0086】
【0087】
表1及び表2に示すように、実施例1~3の樹脂発泡ブロックにおける、表面の展開面積比Sdr(A)、中心部の展開面積比Sdr(B)、前記展開面積比Sdr(B)に対する前記展開面積比Sdr(A)の比Sdr(A)/Sdr(B)及び平均見掛け密度は前記特定の範囲内にある。そのため、実施例1~3の樹脂発泡ブロックは、製造過程で樹脂発泡ブロック内に残存した水分が外部に放出され易く、発泡ブロック中の水分を早期に低減することができる。
【0088】
一方、比較例1においては、厚み方向の中心部に到達した蒸気の量が不足したため、樹脂発泡ブロックの表面が過度に加熱され、表面における発泡粒子同士の隙間が狭くなった。さらに、表面における発泡粒子同士の隙間が狭くなった結果、樹脂発泡ブロック中の水分が樹脂発泡ブロックの外部へ放散されにくくなった。また、樹脂発泡ブロックの中心部においては発泡粒子同士の融着が不十分となり、発泡粒子同士の隙間も大きくなった。さらに、樹脂発泡ブロックの中心部における発泡粒子同士の融着が不十分となった結果、粒飛びが発生しやすくなった。
【0089】
比較例2は、比較例1よりも型内成形に用いた金型の開口率が大きいため、比較例1よりもさらに樹脂発泡ブロックの表面が加熱されやすくなった。その結果、樹脂発泡ブロックの表面における発泡粒子同士の隙間が狭くなった。さらに、表面における発泡粒子同士の隙間が狭くなった結果、樹脂発泡ブロック中の水分が樹脂発泡ブロックの外部へ放散されにくくなった。また、樹脂発泡ブロックの中心部においては発泡粒子同士の融着が不十分となり、発泡粒子同士の隙間も大きくなった。さらに、樹脂発泡ブロックの中心部における発泡粒子同士の融着が不十分となった結果、粒飛びが発生しやすくなった。
【0090】
比較例3は、成形機を変えて行った例であり、型内成形に用いた金型の開口率が大きいため、実施例3に対して樹脂発泡ブロックの中心部に到達した蒸気の量が不足した。その結果、樹脂発泡ブロックの表面における発泡粒子同士の隙間が狭くなった。さらに、表面における発泡粒子同士の隙間が狭くなった結果、樹脂発泡ブロック中の水分が樹脂発泡ブロックの外部へ放散されにくくなった。また、樹脂発泡ブロックの中心部においては発泡粒子同士の融着が不十分となり、発泡粒子同士の隙間も大きくなった。さらに、樹脂発泡ブロックの中心部における発泡粒子同士の融着が不十分となった結果、粒飛びが発生しやすくなった。
【符号の説明】
【0091】
1 樹脂発泡ブロック
11 蒸気孔跡
12 端面