(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】検査システム、および検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/06 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
G01M3/06 G
(21)【出願番号】P 2021147978
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 旭
(72)【発明者】
【氏名】松本 暢二
(72)【発明者】
【氏名】田中 朋陽
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直之
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-094979(JP,U)
【文献】特開2017-111077(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174227(WO,A1)
【文献】特開平11-218461(JP,A)
【文献】特開2016-080609(JP,A)
【文献】特開2021-061168(JP,A)
【文献】特開2009-019972(JP,A)
【文献】特開2009-063596(JP,A)
【文献】登録実用新案第3047893(JP,U)
【文献】特開平01-267454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中において複数の対象物(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)と、
前記搬送部(25)によって搬送される前記対象物(10)を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データに基づき前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備え、
前記制御部(40)は、前記対象物(10)の前記第1方向の移動に伴う該対象物(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして前記気泡(B)を特定する
検査システム。
【請求項2】
前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す第1処理を行い、該第1処理において、前記2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を前記第1指標に基づき補正する
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さいことを示す条件が成立すると、該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う
請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項4】
水中において複数の対象物(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)と、
前記搬送部(25)によって搬送される前記対象物(10)を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データに基づき前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備え、
前記制御部(40)は、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置に基づき前記対象物(10)の漏洩箇所を特定し、
前記制御部(40)は、前記気泡(B)の位置と前記対象物(10)の漏洩箇所とを関連付けたデータと、前記最も低い位置にある気泡(B)の位置とに基づき、前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する
検査システム。
【請求項5】
前記制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)、またはテンプレートマッチングを用いて前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する
請求項1~4のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項6】
前記制御部(40)による前記気泡(B)の特定に応じて、該対象物(10)から気泡(B)が発生していること、または該対象物(10)が漏洩していることを報知する報知部(45)を備える
請求項1~5のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項7】
前記搬送部(25)は、前記対象物(10)を前記第1方向としての水平方向に移動させる
請求項1~6のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項8】
水中において密閉式のケーシング(11)を有する圧縮機(10)を搬送部(25)によって第1方向に移動させ、
前記搬送部(25)によって搬送される圧縮機(10)を撮像部(30)によって撮像し、
前記撮像部(30)が撮像した圧縮機(10)の画像データに基づき前記圧縮機(10)から発生する気泡(B)を制御部(40)によって特定し、
前記圧縮機(10)の前記第1方向の移動に伴う圧縮機(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして前記気泡(B)を特定する
検査方法。
【請求項9】
水中において複数の圧縮機(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)と、
前記搬送部(25)によって搬送される前記圧縮機(10)を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)が撮像した前記圧縮機(10)の画像データに基づき前記圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備え、
前記圧縮機(10)は、密閉式のケーシング(11)と、該ケーシング(11)に固定される吸入管(12)と、該吸入管(12)に設けられるアキュムレータ(15)とを備え、
前記制御部(40)は、前記ケーシング(11)、前記吸入管(12)、および前記アキュムレータ(15)における複数の接合部と、各接合部に対応する座標範囲とを関連付けたデータと、前記画像データにおける気泡(B)の座標位置とに基づいて、前記ケーシング(11)、前記吸入管(12)、および前記アキュムレータ(15)のどの接合部が漏洩しているかを特定する
検査システム。
【請求項10】
水中において密閉式のケーシング(11)を有する圧縮機(10)を搬送部(25)によって第1方向に移動させ、
前記搬送部(25)によって搬送される前記圧縮機(10)を撮像部(30)によって撮像し、
前記撮像部(30)が撮像した前記圧縮機(10)の画像データに基づき前記圧縮機(10)から発生する気泡(B)を制御部(40)によって特定し、
前記圧縮機(10)は、前記ケーシング(11)に固定される吸入管(12)と、該吸入管(12)に設けられるアキュムレータ(15)とを備え、
前記ケーシング(11)、前記吸入管(12)、および前記アキュムレータ(15)における複数の接合部と、各接合部に対応する座標範囲とを関連づけたデータと、前記画像データにおける気泡(B)の座標位置とに基づいて、前記ケーシング(11)、前記吸入管(12)、および前記アキュムレータ(15)のどの接合部が漏洩しているかを前記制御部(40)によって特定する
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム、および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイカスト製品を水槽内に浸漬し、ダイカスト製品から発生した気泡に基づきダイカスト製品を検査する検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、対象物をアクチュエータにより水槽中に入れ、対象物の検査を終了した後、対象物を再び水槽から出すようにしている(同文献の
図2)。このため、複数の対象物を連続的に検査できない。
【0005】
本開示の目的は、対象物の検査の効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、検査システムを対象とし、水中において複数の対象物(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)と、前記搬送部(25)によって搬送される前記対象物(10)を撮像する撮像部(30)と、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データに基づき前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備える。
【0007】
第1の態様では、搬送部(25)が、複数の対象物(10)が第1方向に移動させる。撮像部(30)は、搬送される対象物(10)を適宜撮像する。制御部(40)は、対象物(10)の画像データに基づき対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する。本態様では、複数の対象物(10)を搬送部(25)により移動させることで、各対象物(10)から気泡が発生するか否かを連続的に判定できる。これにより、検査効率を向上できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(40)は、前記対象物(10)の前記第1方向の移動に伴う該対象物(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして前記気泡(B)を特定する。
【0009】
第2の態様では、対象物(10)の第1方向に伴う位置の変化を考慮して気泡(B)を特定する。対象物(10)が第1方向に移動すると、対象物(10)の移動に伴い画像データ中の気泡候補の座標位置が変化するからである。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す第1処理を行い、前記制御部(40)は、前記第1処理において、前記2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を前記第1指標に基づき補正する。
【0011】
第3の態様の制御部(40)は、第1処理において、2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す。気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内である場合、気泡候補(C)は対象物(10)の一部(例えば光の反射部)である可能性が高いからである。一方、気泡候補(C)が対象物(10)の一部である場合、この気泡候補(C)は対象物(10)の第1方向の移動に伴い変化する。そこで、制御部(40)は、第1処理において、2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を第1指標に基づいて補正する。これにより、対象物(10)の移動を考慮できるので、対象物(10)の一部を気泡(B)と特定してしまう誤判定を抑制できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さいことを示す条件が成立すると、該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う。
【0013】
第4の態様では、制御部(40)は、2つの画像データ中の気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さくなることを示す条件が成立すると、両者の気泡候補(C)が一致しているとみなし、これらの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする。
【0014】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置に基づき前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0015】
第5の態様では、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データがある場合、最も低い位置にある気泡(B)の位置は、対象物(10)の漏洩箇所に最も近くなる。このため、制御部(40)は、この気泡(B)の位置に基づき対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、前記制御部(40)は、前記気泡(B)の位置と前記対象物(10)の漏洩箇所とを関連付けたデータと、前記最も低い位置にある気泡(B)の位置とに基づき、前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0017】
第6の態様では、気泡(B)の位置と対象物(10)の漏洩箇所とを関連付けたデータをさらに用いることで、対象物(10)の漏洩箇所を分類できる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)、またはテンプレートマッチングを用いて前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する。
【0019】
第7の態様では、CNNまたはテンプレートマッチングを用いることで、気泡(B)の特定精度を向上できる。
【0020】
第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)による前記気泡(B)の特定に応じて、該対象物(10)から気泡(B)が発生していること、または該対象物(10)が漏洩していることを報知する報知部(45)を備える。
【0021】
第8の態様では、検査者などは、気泡(B)の発生や、対象物(10)の漏洩を報知部(45)によって知ることができる。
【0022】
第9の態様は、第1~第8のいずれか1つの態様において、前記搬送部(25)は、前記対象物(10)を前記第1方向としての水平方向に移動させる。
【0023】
第9の態様では、搬送部(25)が水中の対象物(10)を水平方向に移動させる。これにより、搬送部(25)の構成を簡素化できる。
【0024】
第10の態様は、検査方法を対象とし、水中において密閉式のケーシング(11)を有する圧縮機(10)を搬送部(25)によって第1方向に移動させ、前記搬送部(25)によって搬送される対象物(10)を撮像部(30)によって撮像し、前記撮像部(30)が撮像した対象物(10)の画像データに基づき前記対象物(10)から発生する気泡(B)を制御部(40)によって特定する。
【0025】
第10の態様では、圧縮機(10)から発生する気泡を特定できる。これにより、圧縮機(10)の漏洩を検査できる。
【0026】
第11の態様は、第10の態様において、前記圧縮機(10)の前記第1方向の移動に伴う前記圧縮機(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして前記気泡(B)を特定する。
【0027】
第11の態様では、圧縮機(10)の第1方向に伴う位置の変化を考慮して気泡(B)を特定する。圧縮機(10)が第1方向に移動すると、圧縮機(10)の移動に伴い画像データ中の気泡候補の座標位置が変化するからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検査システムの概略の平面図である。
【
図2】
図2は、水槽中の圧縮機を拡大した正面図である。
【
図4】
図4は、検査方法の第1のフローチャートである。
【
図5】
図5は、検査方法の第2のフローチャートである。
【
図6】
図6は、画像データ中の気泡候補の一例を示す。
【
図7】
図7は、2つの画像データにおける圧縮機の反射部の位置の変化を示す。
【
図8】
図8は、2つの画像データにおける気泡の位置の変化を示す。
【
図9】
図9は、3つの画像データにおける気泡の位置の変化を示す。
【
図10】
図10は、対象物の漏洩箇所と気泡の位置とを関連付けたデータの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0030】
本開示の実施形態に記載の各種のパラメータの具体的な数値は単なる一例であり、それに限られるものではない。
【0031】
(1)検査システムの構成
実施形態に係る検査システム(20)は、対象物における漏洩の有無を検査する。本例の対象物は、密閉型の圧縮機(10)である。検査システム(20)は、水中において圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する。検査システム(20)は、この気泡(B)に基づき圧縮機(10)における漏洩を判定する。
【0032】
図1および
図2に示すように、検査システム(20)は、水槽(21)と、搬送部(25)と、カメラ(30)を有する。
図3に示すように、検査システム(20)は、制御部(40)と、端末装置(45)とを有する。
【0033】
水槽(21)には水が溜められる。水槽(21)の側壁(22)は透明の材料(樹脂、ガラス、アクリル材料など)で構成される。
【0034】
搬送部(25)は、駆動源(26)と、該駆動源(26)によって駆動されるケーブル(27)と、ケーブル(27)に支持される複数のアーム(28)と有する。駆動源(26)は、例えば電動機によって構成される。ケーブル(27)は、水槽(21)の側壁(22)に沿うように第1方向(本例では、水平方向)に延びている。駆動源(26)は、ケーブル(27)を第1方向に搬送する。複数のアーム(28)のそれぞれの上端は、ケーブル(27)に固定される。複数のアーム(28)のそれぞれの下端は、圧縮機(10)を保持する。駆動源(26)によってケーブル(27)が駆動されると、ケーブル(27)およびアーム(28)とともに圧縮機(10)が水平方向に移動する。これにより、複数の圧縮機(10)は、水中において、カメラ(30)の撮像領域(A)を順に通過する。
【0035】
撮像部であるカメラ(30)は、水槽(21)の外部に配置される。カメラ(30)は、水槽(21)内の撮像領域(A)の動画を撮像する。カメラ(30)は、撮像領域(A)の圧縮機(10)を撮像し、圧縮機(10)の画像データを取得する。したがって、画像データ中には、圧縮機(10)が含まれる。圧縮機(10)に漏洩がある場合、画像データ中には、圧縮機(10)から発生した気泡(B)が含まれる。
【0036】
カメラ(30)と制御部(40)とは、第1通信線(W1)を介して互いに接続される。第1通信線(W1)は、有線または無線である。カメラ(30)は、制御部(40)の指令に基づき撮像領域(A)を撮像する。カメラ(30)が撮像する動画は、静止画である複数の画像データによって構成される。連続する画像データの間隔tは0.1秒である。言い換えると、カメラ(30)が取得する画像データのフレームレートは10fpsである。カメラ(30)は、撮像した圧縮機(10)の画像データを、第1通信線(W1)を介して制御部(40)に送信する。
【0037】
制御部(40)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0038】
制御部(40)は、カメラ(30)が取得した画像データを受信する。制御部(40)は、画像データに基づいて圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する。制御部(40)は、特定した気泡(B)に基づき圧縮機(10)の漏洩を判定する。
【0039】
制御部(40)は、記憶部(41)を有する。記憶部(41)は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などを含む。
【0040】
記憶部(41)は、カメラ(30)が取得した画像データを順次記憶する。加えて、記憶部(41)は、気泡(B)の位置(座標)と、圧縮機(10)の漏洩箇所とを関連付けたデータ(以下、第1データともいう)を記憶する。作業者は、検査する圧縮機(10)に応じた第1データを記憶部(41)に予め記憶させる。制御部(40)は、特定した気泡(B)の位置、および第1データに基づき、圧縮機(10)の漏洩箇所を特定する。
【0041】
端末装置(45)は、パーソナルコンピュータなどの作業者が使用する端末である。端末装置(45)は、タブレットやスマートフォンなどであってもよいし、検査用の専用端末であってもよい。
【0042】
制御部(40)と端末装置(45)とは、第2通信線(W2)を介して互いに接続される。第2通信線(W2)は、有線または無線である。制御部(40)と端末装置(45)とは、ネットワークを介して互いに接続されてもよい。
【0043】
制御部(40)は、圧縮機(10)の漏洩がありと判定した場合、そのことを示す信号を端末装置(45)に出力する。報知部である端末装置(45)は、画面の表示、光、音などによって、圧縮機(10)が漏洩していることを作業者に報知する。
【0044】
(2)圧縮機の概要
対象物である圧縮機(10)の概要について
図2を参照しながら説明する。
【0045】
圧縮機(10)は、回転式流体機械である。圧縮機(10)は、いわゆる高圧ドーム式である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、吸入管(12)と、吐出管(13)と、ターミナル(14)とを有する。ケーシング(11)は、中空の密閉容器である。ケーシング(11)は、胴体(11a)と、底部(11b)と、頂部(11c)とを有する。胴体(11a)は、軸方向の両端が開放する縦長の円筒状に形成される。底部(11b)は、胴体(11a)の長手方向(軸方向)の一端(
図2における下端)側の開放部を閉塞する。頂部(11c)は、胴体(11a)の長手方向(軸方向)の他端(
図2における上端)側の開放部を閉塞する。
【0046】
吸入管(12)は、胴体(11a)に固定される。吸入管(12)は、胴体(11a)の下部を径方向に貫通する。吸入管(12)には、アキュムレータ(15)が設けられる。アキュムレータ(15)は、液冷媒を貯める容器である。吸入管(12)は、圧縮機構のシリンダの内部へ冷媒を導く。
【0047】
吐出管(13)は、頂部(11c)に固定される。吐出管(13)は、頂部(11c)を軸方向に貫通する。吐出管(13)は、圧縮機構で圧縮された冷媒をケーシングの外部へ導く。
【0048】
ターミナル(14)は、ケーシング(11)の頂部に固定される。ターミナル(14)は、電源回路の電力を電動機に導くための中継端子を有する。
【0049】
ケーシング(11)の内部には、電動機と、駆動軸と、圧縮機構とが収容される(図示省略)。電動機が駆動軸を回転駆動すると、圧縮機構のシリンダの内部でピストンが回転する。これにより、流体(冷媒)は吸入管からシリンダの内部に流入する。圧縮機構は冷媒を圧縮する。圧縮機構で圧縮された冷媒は、ケーシングの内部に流出した後、吐出管を介してケーシングの外部へ流出する。
【0050】
(3)検査システムの動作
検査システム(20)の動作について詳細に説明する。
【0051】
検査システム(20)の動作中には、搬送部(25)がケーブル(27)を第1方向に移動させる。これにより、ケーブル(27)の各アーム(28)に支持される複数の圧縮機(10)が、撮像領域(A)を順に通過する。カメラ(30)は、撮像領域(A)を通過する圧縮機(10)のモノクロ動画を撮像する。カメラ(30)は、撮像した圧縮機(10)の画像データを制御部(40)に順次送る。カメラ(30)は、圧縮機(10)のカラー動画を撮像してもよい。
【0052】
制御部(40)が、カメラ(30)から画像データを取得すると、
図4および
図5に示すステップに従い、制御部(40)が圧縮機(10)の漏洩を判定する。なお、画像データは、細分化された複数の画素(ピクセル)の集合体である。
【0053】
ステップS11において、制御部(40)は、画像データのトリミングを行う。ステップS11では、制御部(40)は画像データのうち不要な領域を削除する。この不要な領域は、例えば水槽(21)外の領域や圧縮機(10)から遠く離れた領域を含む。
【0054】
ステップS12において、制御部(40)は、二値化処理を行う。具体的には、制御部(40)は、画像データの輝度値に基づき二値化処理を行う。画像データの輝度値の範囲が0~255の範囲である場合、二値化処理の輝度値の閾値を例えば200とする。この場合、制御部(40)は、画像データの各画素のうち、輝度値が200以上の画素の輝度値を255に変更する。制御部(40)は、画像データの各画素のうち、輝度値が200未満の画素の輝度値を0に変更する。この二値化処理により、画像データは、実質的には白の画素と黒の画素とからなる画像データに変換される。
【0055】
ステップS13において、制御部(40)は、ブロブ解析を行い、画像データのうち白い塊の領域を気泡候補(C)として抽出する。この処理により、気泡候補(C)の面積や外接矩形を求めることができる。
図6は、画像データ中の気泡候補(C)の一例である。1つの矩形状のブロックが1つの画素を表す。
【0056】
ステップS14において、制御部(40)は、気泡候補(C)の面積に基づいて気泡候補(C)を気泡の特定対象から外すか否かを判定する。具体的には、ステップS14において、制御部(40)は、ステップS13の処理を経た画像データ(
図6を参照)のうち、白い画素からなる塊(bl)の面積を求める。制御部(40)は、ステップS14において、この面積が所定の範囲内である場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。ステップS14において、制御部(40)は、この面積が所定の範囲外である場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。
【0057】
ステップS15において、制御部(40)は、白い画素からなる塊(bl)の縦横比に基づいて気泡候補(C)を気泡の特定対象から外すか否かを判定する。具体的には、ステップS15において、制御部(40)は、塊(bl)の外接矩形(
図6の一点鎖線で示す囲んだ部分)を抽出する。制御部(40)は、外接矩形の縦方向の長さhと、横方向の長さwとの縦横比h/wを求める。ここで、hは、気泡候補(C)の鉛直方向の最大高さに相当する。wは、気泡候補(C)の水平方向の最大幅に相当する。ステップS15において、h/wが所定値(例えば0.5)未満である場合、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。ステップS15において、h/wが所定値(2.0)よりも大きい場合、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。言い換えると、本例のステップS15では、h/wが0.5~2.0の範囲内であれば、制御部(40)が気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。
【0058】
ステップS16において、制御部(40)は、LoG(Laplacian of Gaussian)フィルタを用いて気泡候補(C)を判定する。制御部(40)は、対象データの各画素の輝度を求める。LoGフィルタは、一般的な気泡の輝度分布に対応したフィルタである。気泡は、その中心において輝度が高く、中心から外周側に向かうほど輝度が低くなる特徴がある。LoGフィルタでは、この気泡の輝度の特徴に対応するように、気泡候補(C)の各画素の座標に対応する数値が設定される。具体的には、LoGフィルタでは、その中心における数値が低く、その外周側における数値が大きくなる。本例のLoGフィルタでは、その中心側の数値が負の方向に大きい値となり、外周側の数値は負の方向に小さい値、あるいは正の値になる。ステップS16では、制御部(40)が、気泡候補(C)に対してLoGフィルタを用いて畳み込み演算する。
【0059】
具体的には、制御部(40)は、気泡候補(C)の各画素の輝度と、LoGフィルタの各画素の座標に対応する数値とをそれぞれ掛け合わせる。次いで、制御部(40)は、気泡候補(C)の全ての画素毎に掛け合わせた値を足し合わせ、フィルタ処理後の値Nを得る。例えば気泡候補(C)の輝度が気泡の特徴に近い場合、ここで得られた値Nは比較的小さくなり、例えば負の値になる。逆に、気泡候補(C)の輝度が気泡の特徴から遠い場合、ここで得られたNは比較的大きくなり、例えば正の値となる。制御部(40)は、フィルタ処理後の値Nが、所定の閾値(例えば0)よりも小さい場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。制御部(40)は、フィルタ処理後の値Nが、上記閾値(例えば0)以上の場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。
【0060】
ステップS17において、制御部(40)は、CNNまたはテンプレートマッチングにより、ステップS12~S16とは別に気泡候補(C)を抽出する。CNNやテンプレートマッチングは、ステップS12の二値化処理をせずとも、気泡を特定できる長所がある。
【0061】
制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)で作成した学習済みモデル(CNNモデル)に基づき画像データから気泡候補(C)を抽出する。CNNモデルを構築するための教師データとして、気泡を含む画像データを用いる。構築されたCNNモデルは、制御部(40)の記憶部(41)に記憶される。制御部(40)は、CNNモデルを用いて、画像データのうち教師データの気泡と類似する部分を気泡候補(C)として抽出する。
【0062】
制御部(40)は、CNNに代えて、テンプレートマッチングを用いて画像データから気泡候補(C)を抽出してもよい。この場合、制御部(40)は、対象となる画像データ(対象データ)と、予め用意した気泡を含む画像データ(比較データ)とを比較する。具体的には、制御部(40)は、対象データのうち気泡と推測した部分の輝度と、比較データの気泡部分の輝度との一致率が75%以上である場合、対象データの部分を気泡候補(C)として抽出する。厳密には、制御部(40)は、対象データの各画素の輝度と、比較データにおけるこれらの画素に対応するそれぞれの画素の輝度との一致率を求める。の一致率の平均値が75%以上である場合、この部分を気泡候補(C)として抽出する。
【0063】
ステップS18およびステップS19では、画像データ中において、気泡でない部分(例えば配管における光の反射部)を気泡と誤検知しないための処理が行われる。
【0064】
図7に示すように、圧縮機(10)の配管の一部が白く反射する場合、制御部(40)は、この反射部(R)を気泡と誤認識してしまう可能性がある。そこで、制御部(40)は、対象となる画像データ(以下、第1画像データという)の気泡候補(C)と、第1画像データより1つ前に取得した画像データ(以下、第2画像データという)の気泡候補(C)の座標を比較する。両者の気泡候補(C)の座標が変化していない条件が成立すると、制御部(40)は、第1画像データの気泡候補(C)を気泡の特定対象から除外する(ステップS25)。ステップS19の条件が成立しない場合、制御部(40)は第1画像データの気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。
【0065】
ところで、圧縮機(10)などの反射部(R)は、気泡(B)と異なり、搬送部(25)によって水中を移動する。このため、圧縮機(10)の第1方向(水平方向)の移動を考慮せずに第1画像データの座標位置を求めると、第1画像データと第2画像データの位置のずれが大きくなり、ステップS19において誤判定が生じる。そこで、本実施形態の制御部(40)は、ステップS18において、圧縮機(10)の水平方向の移動に伴う圧縮機(10)の位置の変化を考慮して、第1画像データの気泡候補(C)の位置を補正する。
【0066】
具体的には、例えば圧縮機(10)の移動速度をv、カメラ(30)の撮像動作の間隔をtとする。この場合、圧縮機(10)の移動に伴う第1画像データと第2画像データにおける気泡候補(C)のx座標の変化量はΔx=vtで表すことができる。第1画像データの気泡候補(C)の位置P1の座標が(x1,y1)であるとすると、補正後の座標は(x1-vt,y1)となる。本例では、変化量Δx(=vt)が第1指標となる。
【0067】
ステップS19では、制御部(40)は、第1画像データの気泡候補(C)の補正後の位置P1の座標(x1-vt,y1)と、第2画像データの気泡候補(C)の位置P2の座標(x2,y2)とを比較する。両者の座標の位置のずれは、以下の式[数1]で表すことができる。
【0068】
【0069】
ステップS19において、制御部(40)は、ΔPが所定値より小さい場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。制御部(40)は、ΔPが所定値以上である場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象に維持する。ここで、所定値は、例えば10ピクセル(1.4mm/0.1秒に相当)である。所定値はゼロであってもよい。
【0070】
ステップS18、ステップS19、およびステップS25は、本開示の第1処理に対応する。
【0071】
ステップS20において、制御部(40)は、気泡候補(C)が上昇しているか否かを判定する。気泡候補(C)が上昇していれば、この気泡候補(C)が気泡(B)である可能性が高いからである。ステップS20では、例えば
図8に示すように、制御部(40)は、第1画像データの気泡候補(C)の位置P1(
図8(B)を参照)と、第2画像データの気泡候補(C)の位置P2(
図8(A)を参照)とを比較する。
【0072】
具体的には、制御部(40)は、以下の条件1と条件2の判定を行う。本例の制御部(40)は、条件1と条件2の双方が成立する場合、第1画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする。制御部(40)は、条件1と条件2の一方、あるいは両方が成立しない場合、第1画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す(ステップS25)。
【0073】
条件1)制御部(40)は、X座標(水平方向)において、位置P1と位置P2とを比較する。制御部(40)は、第1画像データの気泡候補(C)の位置P1の座標x1の位置が、第2画像データの気泡候補(C)の位置P2の座標x2に対して所定の範囲内であるかを判定する。ここで、所定の範囲は、-50ピクセル~+50ピクセル(-7mm~+7mm/0.1秒に相当)の範囲である。連続する画像データにおいて、気泡(B)が上昇したとしても、厳密には気泡(B)のX座標の位置は変化しない。しかしながら、本判定では、カメラ(30)の撮像時の誤差や制御部(40)の処理の誤差などを考慮して、X座標における位置P1と位置P2の間のわずかなずれを許容している。
【0074】
条件2)制御部(40)は、Y座標(鉛直方向)において、位置P1と位置P2とを比較する。制御部(40)は、第1画像データの気泡候補(C)の位置P1の座標y1が、第2画像データの気泡候補(C)の位置P2の座標y2に対して所定の範囲内であるかを判定する。ここで、所定の範囲は、例えば40~200ピクセル(5.6mm~28mm/0.1秒に相当)の範囲である。連続する画像データにおいて、気泡(B)が上昇すると、第1画像データの気泡候補(C)は、第2画像データの気泡候補(C)よりも上方に移動する。このため、この範囲の下限は、0よりも大きい所定値としている。また、気泡(B)が上方に移動するとしても、その上昇速度には上限がある。このため、この範囲にも所定の上限値を設定している。
【0075】
ステップS21において、制御部(40)は、第1画像データの気泡候補(C)の輝度が、第2画像データの気泡候補(C)の輝度と近いことを示す条件が成立すると、第1画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う。厳密には、制御部(40)は、この条件が成立すると、第1画像データの気泡候補(C)を気泡(B)と判定する(ステップS S22)。ステップS21において、この条件が成立しない場合、第1画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から除外する(ステップS25)。
【0076】
具体的には、ステップS21において、制御部(40)は、第1画像データおよび第2画像データにおいて、二値化処理がされていない画像データの気泡候補(C)を比較する。まず、第1画像データにおいて、気泡候補(C)の外接矩形を求め、この外接矩形を第2画像データの気泡候補(C)に当てはめる。制御部(40)は、第1画像データおよび第2画像データにおいて、外接矩形を基準として同一の座標となる画素の一致率を順に求める。ステップS21において、外接矩形内の全ての画素の一致率の平均が75%以上である場合、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする。この一致率が75%未満である場合には、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡(B)と判定する。
【0077】
以上のようにして気泡(B)が特定されると、ステップS23において、制御部(40)は、第1画像データにおいて特定された気泡(B)と、この気泡(B)に対応する第2画像データの気泡(B)とに、同じアドレスを関連付ける。これらの気泡(B)は、ステップS21において、一致率が75%以上であると判定されたものである。このように各画像データの気泡(B)にアドレスを付与することで、複数の画像データにおいて同一の気泡(B)を特定できる。
【0078】
図5に示すように、ステップS24において制御部(40)が漏洩ありと判定すると、ステップS31において、制御部(40)は、気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置の座標を特定する。本例の制御部(40)は、
図9に示すように、連続する3つの画像データのうち、最も低い位置の気泡(B)の位置の座標を特定する。ここで、これらの3つの画像データのうち、最新の画像データ(第1画像データ)の気泡(B)と、それよりも1つ前の画像データ(第2画像データ)の気泡(B)には、ステップS23において、同一のアドレスが付与される。同様に、第2画像データの気泡(B)と、それよりも前の画像データ(第3画像データ)の気泡(B)には、ステップS23において、同一のアドレスが付与される。したがって、第1画像データの気泡(B)を特定できれば、これよりも2つ前の第3画像データの気泡(B)を特定でき、第3画像データの気泡(B)の座標位置P3を取得できる。
【0079】
第3画像データの気泡(B)の座標位置P3(x3,y3)は、第1画像データの気泡(B)の座標位置P1(x1,y1)および第2画像データの気泡(B)の座標位置P2(x2,y2)よりも下方にある。したがって、第3画像データの気泡(B)の座標位置P3は、圧縮機(10)から気泡(B)が発生した箇所を示す指標となる。
【0080】
ステップS32において、制御部(40)は、記憶部(41)に記憶された第1データと、第3画像データの気泡(B)の座標位置P3とに基づいて、圧縮機(10)の漏洩箇所を特定する。
【0081】
図10に示すように、第1データでは、圧縮機(10)の漏洩箇所と、その漏洩箇所に対応する気泡(B)の座標位置(x,y)の範囲が関連付けられている。漏洩箇所の項目としては、ケーシング(11)の胴体(11a)と頂部(11c)の接合部、ケーシング(11)の胴体(11a)と頂部(11c)の接合部、ケーシング(11)の胴体(11a)と吸入管(12)の接合部、吸入管(12)とアキュムレータ(15)の接合部、頂部(11c)と吐出管(13)の接合部、頂部(11c)とターミナル(14)の接合部などが挙げられる。第1データは、これらの項目に対応する座標の範囲を含んでいる。
【0082】
ステップS32において、制御部(40)は、ステップS31で取得した気泡(B)の座標位置P3が、第1データのどの座標範囲に属するかを判定する。例えばステップS31において取得した気泡(B)の座標xがa~bの範囲であり、座標yがc~dの範囲である場合、制御部(40)は、胴体(11a)と頂部(11c)の接合部を漏洩箇所として特定する。
【0083】
ステップS33では、制御部(40)は、これまでの処理で得た情報を含む第1信号を端末装置(45)に出力する。第1信号は、圧縮機(10)が漏洩していることを示す情報を含む。加えて、第1信号は、圧縮機(10)から気泡(B)が発生していることを示す情報、気泡(B)の座標位置、圧縮機(10)の漏洩箇所を含んでいる。
【0084】
端末装置(45)に第1信号が入力されと、端末装置(45)は、画面の表示、光、音などによって、圧縮機(10)が漏洩していることや圧縮機(10)から気泡(B)が発生していることを作業者に報知する。加えて、端末装置(45)は、作業者の操作に伴い気泡(B)の座標位置や、圧縮機(10)の漏洩箇所を画面に表示する。これにより、作業者は、気泡(B)の発生箇所や圧縮機(10)の漏洩箇所を知ることができる。端末装置は、音声などにより気泡(B)の発生箇所や圧縮機(10)の漏洩箇所を作業者に知らせてもよい。
【0085】
(4)特徴
(4-1)
実施形態の検査システム(20)では、搬送部(25)によって複数の圧縮機(10)を第1方向(水平方向)に移動させ、撮像領域(A)を通過する圧縮機(10)をカメラ(30)によって順次撮像する。このため、複数の圧縮機(10)の気泡の特定、および複数の圧縮機(10)の漏洩箇所の判定を連続的に行われる。したがって、圧縮機(10)の検査効率を向上できる。具体的には、気泡の検査を自動化でき、検査作業の省人化を図ることができる。
【0086】
(4-2)
制御部(40)は、圧縮機(10)の第1方向の移動に伴う圧縮機(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして気泡(B)を特定する。具体的には、制御部(40)は、カメラ(30)が撮像した対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す第1処理を行う。制御部(40)は、第1処理において、2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を第1指標に基づき補正する。
【0087】
このように、圧縮機(10)の移動を考慮して気泡候補(C)の位置を補正することで、
図7に示すように、圧縮機(10)の一部(反射部(R))の位置が移動することに起因して、この反射部(R)を気泡(B)と誤判定してしまうことを抑制できる。
【0088】
(4-3)
制御部(40)は、カメラ(30)が撮像した対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さいことを示す条件が成立すると、2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う。これにより、気泡(B)の特定の精度を向上できる。
【0089】
(4-4)
制御部(40)は、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置に基づき圧縮機(10)の漏洩箇所を特定する。同じ気泡(B)が特定された複数の画像データがある場合、最も低い位置にある気泡(B)(例えば
図9の第3画像データ中の気泡(B))の位置は、対象物(10)の漏洩箇所に最も近くなる。このため、この気泡(B)の位置は、圧縮機(10)の対象物(10)の漏洩箇所を特定するために有用である。
【0090】
具体的には、制御部(40)は、気泡(B)の位置と圧縮機(10)の漏洩箇所とを関連付けたデータと、最も低い位置にある気泡(B)の位置とに基づき、前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する。これにより、気泡(B)の位置に応じて圧縮機(10)の漏洩箇所を正確に分類できる。
【0091】
(4-5)
制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)、またはテンプレートマッチングを用いて圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する。これらの判定により、画像データの二値化処理をせずとも、気泡(B)を正確に特定できる。
【0092】
(4-6)
制御部(40)による気泡(B)の特定に応じて、圧縮機(10)から気泡(B)が発生していること、または圧縮機(10)が漏洩していることを報知する報知部(端末装置(45))を備える。これにより、検査者などは、圧縮機(10)から気泡が発生していることや、圧縮機(10)の漏洩を速やかに把握できる。加えて、端末装置(45)は、気泡(B)の漏洩箇所を検査者に知らせるため、検査者は速やかに対策を講じることができる。
【0093】
(5)その他の実施形態
対象物は、圧縮機に限られず、気泡によって漏洩箇所を判定できるものであればよい。
【0094】
搬送部が対象物を移動させる第1方向は、必ずしも水平方向でなくてもよく、水平方向に対して傾いていてもよい。
【0095】
搬送部は、水中で搬送部を移動させるための水流を形成する手段であってもよい。
【0096】
撮像部は、カメラでなくてもよく、光学センサであってもよい。
【0097】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0098】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上に説明したように、本開示は、検査システム、および検査方法について有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 圧縮機(対象物)
11 ケーシング
20 検査システム
25 搬送部
30 カメラ(撮像部)
40 制御部
45 報知部