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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/40 20060101AFI20230830BHJP
   E04D 13/158 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
E04D3/40 M
E04D13/158
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022501669
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048591
(87)【国際公開番号】W WO2021166444
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020025664
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長津 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐吾
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148082(JP,A)
【文献】特開平08-291606(JP,A)
【文献】特開2002-242395(JP,A)
【文献】特開平06-185160(JP,A)
【文献】特開2001-254491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/40
E04D 13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野地板と、
前記野地板の妻側の上面に固定されたのぼり木部材と、
前記のぼり木部材を覆うためのケラバ水切役物と
を備え、
前記ケラバ水切役物は、
前記野地板に重ねられるとともに前記のぼり木部材の反妻側の側壁部を覆うための水切部材と、
前記のぼり木部材の妻側の側壁部及び上壁部を覆うためのケラバ部材と
を有し、
前記水切部材は、前記水切部材の下部において前記水切部材の幅方向に延在されて前記野地板上に載置される載置片と、前記水切部材の幅方向に係る前記載置片の端部から起立されて前記のぼり木部材の反妻側の側壁部に沿わされる起立片と、前記起立片の上端から上方に延在されるとともに、前記水切部材の幅方向に関して前記載置片の反妻側端部に近づく方向に延在された第1斜片と、前記第1斜片の先端から下方かつ前記第1斜片の基端に近づく方向に折り返された第1折返片とを有し、
前記ケラバ部材は、前記ケラバ部材の上部において前記ケラバ部材の幅方向に延在されて前記のぼり木部材の上壁部に重ねられる天板と、前記ケラバ部材の幅方向に係る前記天板の一端から下方に向けて延出された下垂片と、前記ケラバ部材の幅方向に係る前記天板の他端から下方に延在されるとともに、前記ケラバ部材の幅方向に関して前記下垂片に近づく方向に延在された第2斜片と、前記第2斜片の先端から上方かつ前記第2斜片の基端に近づくように折り返された第2折返片とを有し、
前記水切部材及び前記ケラバ部材は、前記のぼり木部材の反妻側の側壁部を覆うように前記水切部材が配置されるとともに、前記のぼり木部材の妻側の側壁部及び上壁部を覆うように前記ケラバ部材が配置されたとき、前記第1及び第2折返片が互いに係合されるように構成されており
前記のぼり木部材は、のぼり木部材本体と、前記のぼり木部材本体から前記のぼり木部材の幅方向に係る外方に突出され、前記水切部材の前記第1斜片と前記ケラバ部材の前記天板との間の空間に進入される鍔部とを有しており、
前記のぼり木部材本体は、
前記のぼり木部材の下部において前記のぼり木部材の幅方向に延在された第1及び第2下壁部と、
前記幅方向に係る前記第1下壁部の一端から立設された第1側壁部と、
前記第1側壁部の上端から前記幅方向に延出された上壁部と、
前記幅方向に係る前記第2下壁部の一端から立設された第2側壁部と
を有し、
前記のぼり木部材の高さ方向に係る前記第2側壁部の延在幅は、前記のぼり木部材の高さ方向に係る前記第1側壁部の延在幅よりも短く、
前記鍔部は、
前記第2側壁部よりも前記幅方向に係る外方に向かって前記上壁部が延長された延長壁部と、
前記延長壁部の一端と前記第2側壁部の上端とを接続する接続壁部と
を有している、
屋根構造。
【請求項2】
前記水切部材を配置した後に前記ケラバ部材を配置する際に、前記第2折返片が前記第1折返片を乗り越えるとき、前記第2折返片の先端が前記第1斜片の下面に当接されるように、前記水切部材及び前記ケラバ部材が構成されている、
請求項1記載の屋根構造。
【請求項3】
前記のぼり木部材は、金属板の成形体である、
請求項1又は請求項2に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の妻側における屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の屋根構造及びそれに用いるケラバ水切役物としては、例えば下記の特許文献1等に示されている屋根構造及びそれに用いるケラバ水切役物を挙げることができる。すなわち、従来構成では、屋根の妻側に配置されるケラバ水切役物(ケラバカバー材)を、水切部材(水切り部)とケラバ部材(カバー部)との二つの部材により構成している。水切部材は、野地板に重ねられるとともにのぼり木部材の反妻側の側壁部を覆うための部材である。ケラバ部材は、のぼり木部材の妻側の側壁部及び上壁部を覆うための部材である。
【0003】
水切部材には、のぼり木部材の反妻側の側壁部に沿うように起立された起立片と、起立片の上端部から反妻側に延出された係止辺とが設けられている。ケラバ部材には、のぼり木部材及び水切部材の係止辺の上方に配置される天板と、天板の反妻側端部から下方かつ妻側に延出された斜辺とが設けられている。野地板の上に水切部材を配置した後、ケラバ部材の天板と斜辺との間に係止辺を進入させるようにケラバ部材が配置される。例えば釘等の緊結部材により、野地板に水切部材が緊結されるとともに、のぼり木部材にケラバ部材が緊結される。一般に、のぼり木部材は木製の角材により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-148082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋根は直射日光や風雨に曝される。このため、のぼり木部材が木製の角材により構成されている場合、のぼり木部材は大きな温度変化に曝されて徐々に劣化し、のぼり木部材へのケラバ部材の緊結が弱まってしまう。
【0006】
上記のような従来構成では、ケラバ部材の天板と斜辺との間に水切部材の係止辺を進入させているだけであるので、のぼり木部材へのケラバ部材の緊結が弱まった際に台風等の強風に耐えることができず、ケラバ部材が吹き飛ばされる虞がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、強風によりケラバ部材が吹き飛ばされる虞を低減できる屋根構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る屋根構造は、野地板と、野地板の妻側の上面に固定されたのぼり木部材と、のぼり木部材を覆うためのケラバ水切役物とを備え、ケラバ水切役物は、野地板に重ねられるとともにのぼり木部材の反妻側の側壁部を覆うための水切部材と、のぼり木部材の妻側の側壁部及び上壁部を覆うためのケラバ部材とを有し、水切部材は、水切部材の下部において水切部材の幅方向に延在されて野地板上に載置される載置片と、水切部材の幅方向に係る載置片の端部から起立されてのぼり木部材の反妻側の側壁部に沿わされる起立片と、起立片の上端から上方に延在されるとともに、水切部材の幅方向に関して載置片の反妻側端部に近づく方向に延在された第1斜片と、第1斜片の先端から下方かつ第1斜片の基端に近づく方向に折り返された第1折返片とを有し、ケラバ部材は、ケラバ部材の上部においてケラバ部材の幅方向に延在されてのぼり木部材の上壁部に重ねられる天板と、ケラバ部材の幅方向に係る天板の一端から下方に向けて延出された下垂片と、ケラバ部材の幅方向に係る天板の他端から下方に延在されるとともに、ケラバ部材の幅方向に関して下垂片に近づく方向に延在された第2斜片と、第2斜片の先端から上方かつ第2斜片の基端に近づくように折り返された第2折返片とを有し、水切部材及びケラバ部材は、のぼり木部材の反妻側の側壁部を覆うように水切部材が配置されるとともに、のぼり木部材の妻側の側壁部及び上壁部を覆うようにケラバ部材が配置されたとき、第1及び第2折返片が互いに係合されるように構成されており、のぼり木部材は、のぼり木部材本体と、のぼり木部材本体からのぼり木部材の幅方向に係る外方に突出され、水切部材の第1斜片とケラバ部材の天板との間の空間に進入される鍔部とを有しており、のぼり木部材本体は、のぼり木部材の下部においてのぼり木部材の幅方向に延在された第1及び第2下壁部と、幅方向に係る第1下壁部の一端から立設された第1側壁部と、第1側壁部の上端から幅方向に延出された上壁部と、幅方向に係る第2下壁部の一端から立設された第2側壁部とを有し、のぼり木部材の高さ方向に係る第2側壁部の延在幅は、のぼり木部材の高さ方向に係る第1側壁部の延在幅よりも短く、鍔部は、第2側壁部よりも幅方向に係る外方に向かって上壁部が延長された延長壁部と、延長壁部の一端と第2側壁部の上端とを接続する接続壁部とを有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の屋根構造によれば、水切部材及びケラバ部材は、第1及び第2折返片が互いに係合されるように構成されているので、強風によりケラバ部材が吹き飛ばされる虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1による屋根構造を示す正面図である。
図2図1の垂木部材を示す斜視図である。
図3図1ののぼり木部材を示す斜視図である。
図4図3ののぼり木部材の変形例を示す斜視図である。
図5図1の水切部材を示す斜視図である。
図6図1のケラバ部材を示す斜視図である。
図7図1のケラバ部材の配置方法を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態2による屋根構造を示す正面図である。
図9図8ののぼり木部材を示す斜視図である。
図10図8の屋根構造の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による屋根構造を示す正面図である。図1に示すように、本実施の形態の屋根構造は、野地板1、屋根材2、のぼり木部材3、垂木部材4、破風板5及びケラバ水切役物6を含んでいる。
【0014】
野地板1は、建物の上部に配置された板体である。野地板1の上にルーフィング1aが敷かれており、そのルーフィング1aを介して野地板1の上に複数の屋根材2が配置されている。屋根材2には、瓦若しくはスレート等の窯業系屋根材及び金属屋根材が含まれる。
【0015】
のぼり木部材3は、野地板1の妻側の上面に固定された部材である。妻側とは、屋根の軒方向にかかる屋根の端部に近い側を意味する。のぼり木部材3は、屋根の妻側端部において、屋根の軒端と棟端との間で軒棟方向に延在されている。のぼり木部材3は、例えばビス又は釘等により構成される緊結部材7によって野地板1に緊結されている。本実施の形態の緊結部材7は、ビスによって構成されている。本実施の形態では、のぼり木部材3の上方からのぼり木部材3に打ち込まれた緊結部材7が野地板1を貫通して垂木部材4まで到達することにより、のぼり木部材3が野地板1及び垂木部材4に緊結されている。
【0016】
垂木部材4は、野地板1の下部に配置された部材である。破風板5は、野地板1の妻側の下部に配置された板状の部材である。垂木部材4及び破風板5は、のぼり木部材3と同様に屋根の軒端と棟端との間で軒棟方向に延在されている。
【0017】
ケラバ水切役物6は、のぼり木部材3を覆うための部材である。本実施の形態のケラバ水切役物6は、野地板1の妻側端部も覆っている。ケラバ水切役物6は、のぼり木部材3及び垂木部材4と同様に、屋根の軒端と棟端との間で軒棟方向に延在されている。
【0018】
本実施の形態のケラバ水切役物6は、2つの部材に分割されている。すなわち、本実施の形態のケラバ水切役物6には、水切部材61及びケラバ部材62が設けられている。
【0019】
水切部材61は、野地板1に重ねられるとともに、のぼり木部材3の反妻側の側壁部である第2側壁部303を覆っている。水切部材61は、ルーフィング1aと屋根材2との間に介在されている。ルーフィング1aは、水切部材61と野地板1との間に介在されている。のぼり木部材3の反妻側の側壁部とは、のぼり木部材3の一対の側壁部のうち、屋根の妻側端部からより遠い位置に配置された側壁部である。
【0020】
ケラバ部材62は、のぼり木部材3の妻側の側壁部である第1側壁部301及び上壁部302を覆っている。のぼり木部材3の妻側の側壁部とは、のぼり木部材3の一対の側壁部のうち、屋根の妻側端部により近い位置に配置された側壁部である。ケラバ部材62は、のぼり木部材3の妻側において、ケラバ部材62の妻側から打ち込まれた緊結部材7によってのぼり木部材3に緊結されている。ケラバ部材62は、のぼり木部材3の反妻側において水切部材61に係合されている。
【0021】
<垂木部材について>
次に、図2及び図1を参照しながら垂木部材4について説明する。図2は、図1の垂木部材4を示す斜視図である。図2に示すように、本実施の形態の垂木部材4は閉鎖断面を有する角形金属管によって構成されている。より具体的には、本実施の形態の垂木部材4は、長壁40及び短壁41を有する断面長方形状の角形金属管によって構成されている。長壁40及び短壁41は、垂木部材4の壁部を構成する。図1に示すように、本実施の形態の垂木部材4は、長壁40の延在方向を上下方向とし、短壁41の上に野地板1が載せられるように適合されている。但し、角形金属管の断面形状は、任意であり、例えば正方形又は台形等の他の形状であってもよい。
【0022】
角形金属管の素材としては、冷延鋼板、ステンレス鋼板若しくはアルミニウム板又はこれらに表面処理を施したものを使用することができる。表面処理には、めっき及び塗装が含まれる。特に、めっきには、Zn-Al-Mg合金めっきが含まれる。角形金属管の肉厚は、0.8mm程度とすることができる。
【0023】
短壁41には、垂木部材4の長手方向に延在されたリブ43が設けられている。このようなリブ43が短壁41に設けられていることで、垂木部材4の長手方向に直交する方向に沿って垂木部材4に加えられる外力に対する垂木部材4の剛性を向上できる。本実施の形態のリブ43は、短壁41の幅方向に間隔を置いて配置された複数の凹部を有している。本実施の形態の複数の凹部は、第1及び第2凹部群431,432を形成している。第1及び第2凹部群431,432は、短壁41の幅方向に係る中央部に形成された平板部433の両側に配置されている。なお、リブ43は、短壁41の幅方向に間隔を置いて配置された複数の凸部を有していてもよい。
【0024】
垂木部材4には、垂木部材4を構成する金属板(素材金属板)の両側部がカシメられたカシメ部45が設けられている。換言すると、本実施の形態の垂木部材4では、素材金属板の両側部を溶接により接合していない。素材金属板として表面処理を施した金属板を用いる場合、素材金属板の両側部を溶接すると、接合部の表面処理が除去されてしまう。表面処理が除去されると接合部から腐食が生じやすくなる。また、接合部に対して表面処理の補修を行う必要が生じる。素材金属板の両側部をカシメにより接合することで、このような問題の発生を回避することができる。本実施の形態のカシメ部45は、素材金属板の両側部がハゼ折りされたハゼ折り部により構成されている。
【0025】
図1に示しているように、のぼり木部材3を緊結する緊結部材7は、垂木部材4の上方から短壁41を貫通して垂木部材4の内側に進入している。短壁41の内側には、緊結部材7を取り囲むように打ち抜きバリ41aが形成される。打ち抜きバリ41aは、緊結部材7に絡みつき緊結部材7の引き抜きを阻害する。
【0026】
なお、垂木部材4が必ず金属管でなければならないわけでなく、例えば木材等の他の材料によって垂木部材4を構成してもよい。木材又は他の材料により垂木部材4を構成するとき、垂木部材4は中実構造であってもよい。すなわち、垂木部材4の内部が空洞でなくてもよい。
【0027】
<のぼり木部材について>
次に、図3図4及び図1を参照しながら、のぼり木部材3について説明する。図3は、図1ののぼり木部材3を示す斜視図である。図4は、図3ののぼり木部材3の変形例を示す斜視図である。図3に示すように、本実施の形態ののぼり木部材3は断面形状が非矩形の異形部材によって構成されている。具体的には、のぼり木部材3は、のぼり木部材本体30と、のぼり木部材本体30からのぼり木部材3の幅方向3aに係る外方に突出された鍔部31とを有している。
【0028】
のぼり木部材本体30は、のぼり木部材3の鍔部31を除く部分である。本実施の形態ののぼり木部材本体30は、断面矩形の外形を有している。本実施の形態ののぼり木部材本体30には、第1下壁部300、第1側壁部301、上壁部302、第2側壁部303及び第2下壁部304が設けられている。
【0029】
第1及び第2下壁部300,304は、のぼり木部材3の下部において、のぼり木部材3の幅方向3aに延在された壁部である。第1及び第2下壁部300,304は幅方向3aに互いに離間して設けられており、これら第1及び第2下壁部300,304の間には開口305が設けられている。幅方向3aに係るのぼり木部材3の下部の中央位置は開口305の位置に設けられている。但し、図4に示すように、のぼり木部材3が閉鎖断面を有していてもよい。すなわち、第1及び第2下壁部300,304が互いに接続されていてもよい。
【0030】
第1側壁部301は、幅方向3aに係る第1下壁部300の一端から立設された壁部である。第1側壁部301と第1下壁部300との間の角度は、任意であるが、本実施の形態では90°とされている。
【0031】
上壁部302は、第1側壁部301の上端からのぼり木部材3の幅方向3aに延出された壁部である。第1側壁部301と上壁部302との間の角度は、任意であるが、本実施の形態では90°とされている。
【0032】
第2側壁部303は、幅方向3aに係る第2下壁部304の一端から立設された壁部である。第2側壁部303と第2下壁部304との間の角度は、任意であるが、本実施の形態では90°とされている。のぼり木部材3の高さ方向3bに係る第2側壁部303の延在幅は、屋根材2の厚み以上に設定される。
【0033】
鍔部31は、第2側壁部303から幅方向3aに係る外方(第1側壁部301から遠ざかる方向)に向かって突出された部分である。鍔部31は、第2側壁部303の上部に配置されている。第2側壁部303の外面を基準とする幅方向3aに係る鍔部31の突出幅は、20~100mmであることが好ましい。突出幅を20mm以上とすることで、屋根材2の切断面に向かう日光を遮ることができる。突出幅を100mm以下とすることで、強風時にのぼり木部材3等が受ける圧力抵抗を抑えることができる。
【0034】
鍔部31の断面形状は矩形又は台形等の任意の形状とすることができるが、本実施の形態の鍔部31の断面形状は三角形とされている。本実施の形態の鍔部31は、延長壁部310及び接続壁部311を有している。
【0035】
延長壁部310は、第2側壁部303よりも幅方向3aに係る外方に向かって上壁部302が延長された壁部である。
【0036】
接続壁部311は、延長壁部310の一端と第2側壁部303の上端とを接続する壁部である。本実施の形態の接続壁部311は、延長壁部310の先端から第2側壁部303の上端に向かってのぼり木部材3の高さ方向3bに対して傾斜して延在されている。本実施の形態では延長壁部310と接続壁部311との間の角度は鋭角とされている。これら延長壁部310と接続壁部311との間の角度は、屋根材2の切断面に向かう日光を鍔部31によって遮ることができるように、第2側壁部303の外面を基準とする幅方向3aに係る鍔部31の突出幅とともに決めることができる。上述のように鍔部31の突出幅を20~100mmとしたとき、延長壁部310と接続壁部311との間の角度は20°以上かつ60°以下であることが好ましい。本実施の形態では、延長壁部310と接続壁部311との間の角度が38°とされている。
【0037】
本実施の形態ののぼり木部材3は、金属板の成形体である。具体的には、のぼり木部材3は金属板が折り曲げられることにより成形されたものである。上述の第1下壁部300、第1側壁部301、上壁部302、第2側壁部303及び第2下壁部304並びに延長壁部310及び接続壁部311は互いに一体に形成されている。のぼり木部材3が金属板の成形体であることにより、のぼり木部材3が木材によって構成される場合と比較して、のぼり木部材3の劣化によりのぼり木部材3及びケラバ部材62の緊結が弱まる虞を低減できる。
【0038】
図1に示すように、本実施の形態ののぼり木部材3は、第1及び第2下壁部300,304を野地板1の上面に載せるように配置される。このとき、第1下壁部300及び第1側壁部301が屋根の妻側に位置するように配置される。また、第2側壁部303、第2下壁部304及び鍔部31が反妻側に位置するように配置される。換言すると、第2側壁部303、第2下壁部304及び鍔部31は、第1下壁部300及び第1側壁部301と比較して、屋根の妻側端部から離れた位置に配置される。
【0039】
第1下壁部300は妻側の下壁部を構成し、第2下壁部304は反妻側の下壁部を構成する。第1下壁部300は、幅方向3aに係るのぼり木部材3の下部の中央位置よりも妻側に位置する。また、第2下壁部304は、中央位置よりも反妻側に位置する。第1側壁部301はのぼり木部材3の妻側の側壁を構成し、第2側壁部303はのぼり木部材3の反妻側の側壁を構成する。
【0040】
のぼり木部材3を緊結するための緊結部材7は、上壁部302の上方から上壁部302、第2下壁部304及び野地板1を貫通するように垂木部材4に打ち込まれる。すなわち、緊結部材7は、幅方向3aに係るのぼり木部材3の下部の中央位置よりも妻側端部から離れた位置で野地板1を貫通する。このように緊結部材7が打ち込まれることで、野地板1の妻側端部が破損する虞を低減できる。但し、状況によっては、上壁部302及び第1下壁部300を貫通するようにのぼり木部材3に緊結部材7を打ち込んでのぼり木部材3を緊結してもよい。また、第1及び第2下壁部300,304の両方をそれぞれ貫通するようにのぼり木部材3に緊結部材7を打ち込んでもよい。
【0041】
ケラバ部材62を緊結するための緊結部材7は、第1側壁部301を貫通してのぼり木部材3の内側に進入している。第1側壁部301の内側には、緊結部材7を取り囲むように打ち抜きバリ301aが形成されている。打ち抜きバリ301aは、緊結部材7に絡みつき緊結部材7の引き抜きを阻害する。
【0042】
鍔部31の下方には屋根材2の端部が収められる。すなわち、本実施の形態の屋根構造を鉛直方向上方から見たとき、鍔部31が屋根材2の端部を覆っている。また、図1に示すようにのぼり木部材3、水切部材61及びケラバ部材62が配置された際に、後述の水切部材61の第1斜片612とケラバ部材62の天板620との間の空間に鍔部31が進入されている。鍔部31は、例えば作業員の踏み潰し及び飛来物の衝突等の外力によって屋根材2の端部、水切部材61及びケラバ部材62が破損する虞を低減できる。
【0043】
なお、のぼり木部材3が必ず金属板の成形体でなければならないわけでなく、図3に示す外形を有する木材又は他の材料によりのぼり木部材3が構成されてもよい。木材又は他の材料によりのぼり木部材3を構成しても、鍔部31が設けられていることにより、屋根材2の端部等が破損する虞を低減できる。木材又は他の材料によりのぼり木部材3を構成するとき、のぼり木部材3は中実構造であってもよい。すなわち、のぼり木部材3の内部が空洞でなくてもよい。
【0044】
<水切部材について>
次に、図5及び図1を参照しながら水切部材61について説明する。図5は、図1の水切部材61を示す斜視図である。図5に示すように、本実施の形態の水切部材61は、載置片610、起立片611、第1斜片612及び第1折返片613を有している。本実施の形態の水切部材61は、金属板の成形体である。具体的には、水切部材61は金属板が折り曲げられることにより成形されたものである。上述の載置片610、起立片611、第1斜片612及び第1折返片613は互いに一体に形成されている。
【0045】
載置片610は、水切部材61の下部において水切部材61の幅方向61aに延在する板状部分である。本実施の形態の載置片610は平板状に形成されているが、凹凸状のリブが載置片610に形成されていてもよい。幅方向61aに係る載置片610の一端には、載置片610を構成する金属板が載置片610の上面側に180°折り返された端部折返部610aが設けられている。図1に示すように、載置片610は野地板上に載置される部分である。端部折返部610aが設けられた載置片610の一端は、幅方向61aに係る載置片610の他端よりも屋根の妻側端部から離れた位置(反妻側)に配置される。載置片610の他端は、載置片610の反妻側端部を構成する。端部折返部610aは、載置片610の上面に載せられた屋根材2と載置片610との間に隙間を形成する。
【0046】
起立片611は、幅方向61aに係る載置片610の他端から起立された壁部であり、のぼり木部材3の第2側壁部303(反妻側の側壁部)に沿わされる。載置片610と起立片611との間の角度は、のぼり木部材3の第2側壁部303と第2下壁部304との間の角度に基づいて決定することができる。本実施の形態では、載置片610と起立片611との間の角度は90°に設定されている。水切部材61の高さ方向61bに係る起立片611の延在幅は、のぼり木部材3の第2側壁部303の延在幅よりも短く設定されている。
【0047】
第1斜片612は、起立片611の上端から上方に延在されるとともに、幅方向61aに関して載置片610の反妻側端部(端部折返部610aが設けられた載置片610の一端)に近づく方向に延在された壁部である。第1斜片612は、水切部材61の高さ方向61bに対して傾斜して延在されている。起立片611と第1斜片612との間の角度は、のぼり木部材3の接続壁部311に第1斜片612が沿うように、のぼり木部材3の接続壁部311と第2側壁部303との間の角度に基づいて決定することができる。本実施の形態では、起立片611と第1斜片612との間の角度は110°とされている。第1斜片612の延在幅は、のぼり木部材3の鍔部31(接続壁部311)の延在幅よりも短く設定されることが好ましい。すなわち、第1斜片612の先端が鍔部31から突出しないように第1斜片612の延在幅が設定されることが好ましい。
【0048】
第1折返片613は、第1斜片612の先端から下方かつ第1斜片612の基端に近づく方向に折り返された壁部である。第1斜片612と第1折返片613との間の角度は、鋭角とされている。本実施の形態では、第1斜片612と第1折返片613との間の角度が20°とされている。第1斜片612の延在幅は、接続壁部311の延在幅の40~70%であることが好ましい。
【0049】
<ケラバ部材について>
次に、図6及び図1を参照しながら、ケラバ部材62について説明する。図6は、図1のケラバ部材62を示す斜視図である。図6に示すように、本実施の形態のケラバ部材62は、天板620、下垂片621、第2斜片622及び第2折返片623を有している。本実施の形態のケラバ部材62は、金属板の成形体である。具体的には、ケラバ部材62は金属板が折り曲げられることにより成形されたものである。上述の天板620、下垂片621、第2斜片622及び第2折返片623は互いに一体に形成されている。
【0050】
天板620は、ケラバ部材62の上部においてケラバ部材62の幅方向62aに延在された板状部分である。本実施の形態の天板620は平板状に形成されているが、凹凸状のリブが天板620に形成されていてもよい。図1に示すように、天板620は、のぼり木部材3の上壁部302に重ねられる。幅方向62aに係る天板620の延在幅は、のぼり木部材3の上壁部302の延在幅よりも長い。
【0051】
下垂片621は、幅方向62aに係る天板620の一端から下方に向けて延出された壁部である。ケラバ部材62の高さ方向62bに係る下垂片621の延在幅は、図1に示すように天板620がのぼり木部材3の上壁部302に重ねられた際に下垂片621の下端が破風板5の側方に達するように設定することができる。下垂片621の下端には、下垂片621を構成する金属板が下垂片621の内側に180°折り返された端部折返部621aが設けられている。端部折返部621aは、破風板5と下垂片621との間に隙間を形成する。
【0052】
天板620と下垂片621との間の角度は、90°より大きくかつ100°以下であることが好ましい。90°より大きいことで、図1のようにケラバ部材62を配置する際に下垂片621の下端とのぼり木部材3の上壁部302とが干渉する虞を低減できる。また、100°以下であることで、緊結部材7により下垂片621をのぼり木部材3に緊結した後に下垂片621とのぼり木部材3との間に不必要な隙間が生じる虞を低減できる。天板620と下垂片621との間の角度は95°以下であることがより好ましい。本実施の形態では、天板620と下垂片621との間の角度は93°とされている。
【0053】
第2斜片622は、幅方向62aに係る天板620の他端から下方に延在されるとともに、幅方向62aに関して下垂片621に近づく方向に延在された壁部である。第2斜片622は、ケラバ部材62の高さ方向62bに対して傾斜して延在されている。天板620と第2斜片622との間の角度は、図1に示すように水切部材61及びケラバ部材62が配置された際に第2斜片622の先端が水切部材61の第1斜片612の下方に位置できるように、のぼり木部材3の延長壁部310と接続壁部311との間の角度よりも大きく設定される。本実施の形態では、天板620と第2斜片622との間の角度が43°に設定されている。
【0054】
第2折返片623は、第2斜片622の先端から上方かつ第2斜片622の基端に近づくように折り返された壁部である。
【0055】
水切部材61及びケラバ部材62は、図1に示すようにのぼり木部材3の第2側壁部303(反妻側の側壁部)を覆うように水切部材61が配置されるとともに、のぼり木部材3の第1側壁部301(妻側の側壁部)及び上壁部302を覆うようにケラバ部材62が配置されたとき、第1及び第2折返片613,623が互いに係合されるように構成されている。換言すると、水切部材61及びケラバ部材62は、図1に示すように水切部材61及びケラバ部材62が配置された際に第2折返片623の先端が第1折返片613の先端よりも軒側かつ上方に位置し、反妻側への第2斜片622の変位を第1及び第2折返片613,623が規制するように構成されている。このような構成は、例えば第1斜片612と第1折返片613との間の角度及び第1折返片613の延在幅、並びに第2斜片622と第2折返片623との間の角度及び第2折返片623の延在幅等の設定により実現可能である。
【0056】
水切部材61及びケラバ部材62は、図1に示すように水切部材61及びケラバ部材62が配置された際に第2折返片623の先端が水切部材61の第1斜片612の下面に当接されるように構成されていることが好ましい。
【0057】
次に、図7は、図1のケラバ部材62の配置方法を示す説明図である。図7において、(a)はケラバ部材62の配置開始直後の状態を示し、(b)はケラバ部材62の配置途中の状態を示し、(c)はケラバ部材62の配置完了の状態を示している。(a)に示すように、緊結部材7によりのぼり木部材3を緊結するとともに水切部材61及び屋根材2を配置した後に、ケラバ部材62の配置を開始する。ケラバ部材62は、のぼり木部材3の鍔部31及び水切部材61の第1斜片612の下方に第2斜片622の先端を潜り込ませた状態で、図中の矢印Aのようにケラバ部材62全体を回動させてのぼり木部材3の上壁部302に天板620を重ねつつ、図中左側の妻側にケラバ部材62全体をスライドさせる。
【0058】
このとき、(b)に示すように、水切部材61の第1折返片613とケラバ部材62の第2折返片623との接触によって、ケラバ部材62の天板620と第2斜片622との間が弾性変形により押し広げられながら、第2折返片623が第1折返片613を乗り越えていく。
【0059】
本実施の形態の態様では、第2折返片623が第1折返片613を乗り越えたとき、第2折返片623の先端が第1斜片612の先端に当接する。この当接時に「カチ」という装着音が発生する。この装着音により、第2折返片623が第1折返片613を乗り越えて、第1及び第2折返片613,623が互いに係合したことを作業員が明確に認識できる。
【0060】
第2折返片623が第1折返片613を乗り越えた後、妻側から下垂片621に緊結部材7を打ち込み、ケラバ部材62をのぼり木部材3に緊結する。
【0061】
このような屋根構造及びケラバ水切役物6では、第1及び第2折返片613,623が互いに係合されるように水切部材61及びケラバ部材62が構成されているので、仮に緊結部材7によるケラバ部材62の緊結が弱まったとしても第1及び第2折返片613,623の係合によりケラバ部材62の反妻側への変位を規制でき、強風によりケラバ部材が吹き飛ばされる虞を低減できる。
【0062】
また、水切部材61を配置した後にケラバ部材62を配置する際に、第2折返片623が第1折返片613を乗り越えるとき、第2折返片623の先端が第1斜片612の下面に当接されるように、水切部材61及びケラバ部材62が構成されているので、第2折返片623の先端が第1斜片612の先端に当接した際に「カチ」という装着音を発生させることができ、この装着音により、第2折返片623が第1折返片613を乗り越えて、第1及び第2折返片613,623が互いに係合したことを作業員が明確に認識できる。また、より確実に第1及び第2折返片613,623を互いに係合できる。
【0063】
さらに、のぼり木部材本体30からのぼり木部材3の幅方向3aに係る外方に突出された鍔部31が、水切部材61の第1斜片612とケラバ部材62の天板620との間の空間に進入されるので、例えば作業員の踏み潰し及び飛来物の衝突等の外力によって屋根材の端部、水切部材及びケラバ部材が破損する虞を低減できる。
【0064】
さらにまた、のぼり木部材3が金属板の成形体であるので、のぼり木部材3が木材によって構成される場合と比較して、のぼり木部材3の劣化により緊結部材7によるケラバ部材62の緊結が弱まる虞を低減できる。
【0065】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2による屋根構造を示す正面図であり、図9図8ののぼり木部材3を示す斜視図である。実施の形態2による屋根構造は、実施の形態1の屋根構造からのぼり木部材3の形状が変更されている。
【0066】
図8及び図9に示すように、本実施の形態2ののぼり木部材本体30は、第1下壁部300、第1側壁部301、上壁部302、第2側壁部303及び第2下壁部304に加えて、第3下壁部306及び第3側壁部307を有している。
【0067】
第3下壁部306は、第1下壁部300の先端に折返部306aを介して接続されているとともに、第1下壁部300の下方において幅方向3aに延在されている。第3側壁部307は、第3下壁部306の先端から下方に延出されている。第3側壁部307は、第1側壁部301の延長線上に延在されている。
【0068】
実施の形態1では、第2下壁部304が第2側壁部303の下端から第1下壁部300に近づく方向に向かって延出されるように説明した。しかしながら、本実施の形態2の第2下壁部304は、第2側壁部303の下端から第1下壁部300から遠ざかる方向に向かって延出されている。第2側壁部303を基準とする第1下壁部300の突出幅は、第2側壁部303を基準とする鍔部31の突出幅よりも大きくすることができる。
【0069】
図8に示すように、本実施の形態2ののぼり木部材3は、第2及び第3下壁部304,306を野地板1の上面に載せるように配置される。このとき、第3側壁部307は、野地板1及び破風板5の側方に位置される。ケラバ部材62の下垂片621、第3側壁部307及び破風板5を貫通するように、下垂片621の外側から破風板5に向かって緊結部材7を打ち込むことができる。これにより、ケラバ部材62及びのぼり木部材3を破風板5に固定することができる。
【0070】
また、第2下壁部304を貫通するように第2下壁部304の上方から野地板1に向かって緊結部材7を打ち込むことができる。これにより、のぼり木部材3を野地板1に固定することができる。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0071】
図10は、図8の屋根構造の変形例を示す説明図である。図10に示すように、実施の形態2ののぼり木部材3を、第1折返片613を有しない水切部材61及び第2折返片623を有しないケラバ部材62と組み合わせて使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10