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特許7339596画像処理装置、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】画像処理装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019062210
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020157699
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智哉
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124138(JP,A)
【文献】特開2019-014121(JP,A)
【文献】特開2005-041223(JP,A)
【文献】特開2009-018460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のための画像処理装置であって、
ユーザの指示に基づいて第1モードと第2モードとを含む複数個のモードの中から実行すべき印刷モードを選択するモード選択部と、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得部と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得部であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得部と、
特定の部分画像を印刷する特定の部分印刷の印刷方向を前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する方向決定部と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御部と、
を備え、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記方向決定部は、前記評価値に拘わらずに、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成部は、前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい場合に
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第1モードである場合には、
前記方向決定部は、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、前記第1方向に決定し、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成部は、前記評価値に拘わらずに、前記補正処理を実行することなく、前記部分印刷データを生成する、画像処理装置。
【請求項2】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のための画像処理装置であって、
ユーザの指示に基づいて第1モードと第2モードとを含む複数個のモードの中から実行すべき印刷モードを選択するモード選択部と、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得部と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得部であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得部と、
特定の部分画像を印刷する特定の部分印刷の印刷方向を前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する方向決定部と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御部と、
を備え、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記方向決定部は、前記評価値に拘わらずに、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成部は、前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい場合に
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第1モードである場合には、
前記方向決定部は、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、前記第1方向に決定し、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成部は、前記評価値に拘わらずに、前記補正処理を実行することなく、前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記印刷データ生成部は、前記対象画像データに対して、前記印刷画像の印刷で使用されるインクの量を低減するための低減処理を実行して、低減処理済みの前記対象画像データを生成し、前記低減処理済みの前記対象画像データを用いて、前記複数個の部分印刷データを生成し、
前記評価値取得部は、前記低減処理済みの前記対象画像データを用いて、前記評価値を取得する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記相違情報は、前記特定色空間の色値の複数個の代表値のそれぞれに対応する指標値であって前記色の相違の程度を示す前記指標値を記録したテーブルであり、
前記評価値取得部は、前記テーブルを用いて、前記部分画像内の複数個の画素に対応する複数個の前記指標値を取得し、該複数個の前記指標値を用いて前記評価値を取得する、画像処理装置。
【請求項4】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のための画像処理装置であって、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得部と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得部であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得部と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御部と、
を備え、
特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成部は、
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記相違情報は、前記特定色空間の色値の複数個の代表値のそれぞれに対応する指標値であって前記色の相違の程度を示す前記指標値を記録したテーブルであり、
前記印刷データ生成部は、
前記特定色空間において、前記複数個の代表値のうち、前記補正対象画素の値に最も近い第1代表値と、前記第1代表値からの距離が基準以下である複数個の第2代表値とを特定し、
前記テーブルを用いて、前記複数個の第2代表値の中から、前記第1代表値よりも前記色の相違が小さな特定の前記第2代表値を特定し、
前記補正対象画素の値が前記第1代表値よりも前記特定の第2代表値に近づくように、前記補正処理を実行する、画像処理装置。
【請求項5】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のための画像処理装置であって、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得部と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得部であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得部と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御部と、
を備え、
特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成部は、
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記評価値取得部は、補正済みの前記特定の部分画像のデータを用いて、補正済みの前記特定の部分画像について前記評価値を取得し、
前記印刷データ生成部は、
補正済みの前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、補正済みの前記特定の部分画像のデータに対して、再度、前記補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、補正済みの前記特定の部分画像のデータを用いて前記部分印刷データを生成する、画像処理装置。
【請求項6】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のための画像処理装置であって、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得部と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得部であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得部と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御部と、
を備え、
特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成部は、
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記評価値取得部は、前記特定の部分画像内に設定される複数個のブロックのそれぞれについて前記評価値を取得し、
前記印刷データ生成部は、前記複数個のブロックの中に、前記評価値によって示される前記色の相違が閾値より大きな1個以上のブロックがある場合に、前記補正処理を実行する、画像処理装置。
【請求項7】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
ユーザの指示に基づいて第1モードと第2モードとを含む複数個のモードの中から実行すべき印刷モードを選択するモード選択機能と、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得機能と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得機能であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得機能と、
特定の部分画像を印刷する特定の部分印刷の印刷方向を前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する方向決定機能と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御機能であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記方向決定機能は、前記評価値に拘わらずに、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成機能は、前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい場合に
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第1モードである場合には、
前記方向決定機能は、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、前記第1方向に決定し、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成機能は、前記評価値に拘わらずに、前記補正処理を実行することなく、前記部分印刷データを生成する、コンピュータプログラム。
【請求項8】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
ユーザの指示に基づいて第1モードと第2モードとを含む複数個のモードの中から実行すべき印刷モードを選択するモード選択機能と、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得機能と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得機能であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得機能と、
特定の部分画像を印刷する特定の部分印刷の印刷方向を前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する方向決定機能と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御機能であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記方向決定機能は、前記評価値に拘わらずに、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成機能は、前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい場合に
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第1モードである場合には、
前記方向決定機能は、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、前記第1方向に決定し、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成機能は、前記評価値に拘わらずに、前記補正処理を実行することなく、前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記印刷データ生成機能は、前記対象画像データに対して、前記印刷画像の印刷で使用されるインクの量を低減するための低減処理を実行して、低減処理済みの前記対象画像データを生成し、前記低減処理済みの前記対象画像データを用いて、前記複数個の部分印刷データを生成し、
前記評価値取得機能は、前記低減処理済みの前記対象画像データを用いて、前記評価値を取得する、コンピュータプログラム。
【請求項9】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得機能と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得機能であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得機能と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御機能であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成機能は、
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記相違情報は、前記特定色空間の色値の複数個の代表値のそれぞれに対応する指標値であって前記色の相違の程度を示す前記指標値を記録したテーブルであり、
前記印刷データ生成機能は、
前記特定色空間において、前記複数個の代表値のうち、前記補正対象画素の値に最も近い第1代表値と、前記第1代表値からの距離が基準以下である複数個の第2代表値とを特定し、
前記テーブルを用いて、前記複数個の第2代表値の中から、前記第1代表値よりも前記色の相違が小さな特定の前記第2代表値を特定し、
前記補正対象画素の値が前記第1代表値よりも前記特定の第2代表値に近づくように、前記補正処理を実行する、コンピュータプログラム。
【請求項10】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得機能と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得機能であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得機能と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御機能であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成機能は、
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記評価値取得機能は、補正済みの前記特定の部分画像のデータを用いて、補正済みの前記特定の部分画像について前記評価値を取得し、
前記印刷データ生成機能は、
補正済みの前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、補正済みの前記特定の部分画像のデータに対して、再度、前記補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、補正済みの前記特定の部分画像のデータを用いて前記部分印刷データを生成する、コンピュータプログラム。
【請求項11】
第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得機能と、
前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得機能であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得機能と、
前記対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御機能であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成機能は、
前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、
前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成し、
前記評価値取得機能は、前記特定の部分画像内に設定される複数個のブロックのそれぞれについて前記評価値を取得し、
前記印刷データ生成機能は、前記複数個のブロックの中に、前記評価値によって示される前記色の相違が閾値より大きな1個以上のブロックがある場合に、前記補正処理を実行する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、主走査を行いつつドットを形成する部分印刷と副走査とを繰り返し実行することで印刷を行う印刷実行部のための画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷ヘッドを第1方向に移動させる主走査と第2の方向に移動させる主走査との両方で印刷を実行する双方向印刷を行うプリンタが開示されている。双方向印刷は、一方向の主走査でのみ印刷を実行する片方向印刷と比較して、印刷速度を向上させることができる。
【0003】
双方向印刷では、画像内の同じ色を表現しようとしているにも関わらず、第1方向の主走査と第2方向の主走査とで異なる色が表現され得る。すなわち、印刷方向が異なると、インクの重なり順序が異なるため、観察者によって異なる色であると認識され得る。この現象が生じる可能性を低減するために、特許文献1では、バンド領域内の複数のブロック毎に予定インク量に関する指標値を算出し、指標値が閾値よりも大きい場合に、印刷方向を特定の方向(例えば、第1方向)に決定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-171143号公報
【文献】特開2010-194882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では、印刷方向が特定の方向に決定される結果、例えば、特定の方向の主走査が連続して行われ得るので、印刷速度が低下する可能性があった。
【0006】
本明細書は、双方向印刷において、印刷速度の低下を抑制しつつ、色の相違が目立つことを抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]第1種のインクを吐出する第1種のノズルと、前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なり、第2種のインクを吐出する第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドを備える印刷実行部であって、前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って移動させる主走査を実行しつつ前記印刷ヘッドによって前記印刷媒体にドットを形成する部分印刷と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に前記印刷媒体を移動させる副走査と、を繰り返し実行することで印刷を行う、前記印刷実行部のための画像処理装置であって、特定色空間の色値を用いて対象画像を示す対象画像データを取得する画像取得部と、前記対象画像データを用いて、前記対象画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記部分画像を印刷する前記部分印刷が前記主走査方向に沿う第1方向で行われる場合に印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違を示す評価値を取得する評価値取得部であって、前記評価値は、前記特定色空間の色値と前記色の相違の程度とを対応付ける相違情報を用いて取得される、前記評価値取得部と、
前記対象画像データを用いて、前記複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記複数個の部分印刷データを用いて、前記複数回の部分印刷を前記印刷実行部に実行させることによって、前記対象画像データに基づく印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部であって、前記複数回の部分印刷は、前記第1方向で行われる前記部分印刷と、前記第2方向で行われる前記部分印刷と、を含む、前記印刷制御部と、を備え、特定の前記部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい特定の場合に、前記印刷データ生成部は、前記相違情報を用いて、前記特定の部分画像内の複数個の画素の中から前記色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し、前記相違情報を用いて、前記補正対象画素の色を前記色の相違が小さな色に変換する補正処理を実行し、補正済みの前記特定の部分画像データを用いて前記部分印刷データを生成する、画像処理装置。
【0009】
上記構成によれば、部分印刷が第1方向で行われる場合に印刷される画像と第2方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違が基準より大きい場合に、色の相違の原因である画素が補正される。この結果、双方向印刷において色の相違が目立つことを抑制することができる。また、例えば、色の相違が基準より大きい場合に印刷方向を変更する訳ではないので、特定の方向での部分印刷が連続することを抑制して、印刷速度の低下を抑制できる。したがって、双方向印刷において、印刷速度の低下を抑制しつつ、色の相違が目立つことを抑制することができる
[適用例2]
適用例1に記載の画像処理装置であって、さらに、
ユーザの指示に基づいて第1モードと第2モードとを含む複数個のモードの中から実行すべき印刷モードを選択するモード選択部と、
前記特定の部分印刷の印刷方向を前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する方向決定部と、
を備え、
前記印刷モードが前記第1モードである場合には、
前記方向決定部は、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、前記第1方向に決定し、前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成部は、前記評価値に拘わらずに、前記補正処理を実行することなく、前記部分印刷データを生成し、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記方向決定部は、前記評価値に拘わらずに、前記特定の部分印刷の印刷方向を、直前の前記部分印刷の印刷方向とは異なる方向に決定し、
前記印刷データ生成部は、前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が基準より大きい場合に、前記補正処理を実行して、前記部分印刷データを生成する、画像処理装置。
[適用例3]
適用例2に記載の画像処理装置であって、
前記印刷モードが前記第2モードである場合には、
前記印刷データ生成部は、前記対象画像データに対して、前記印刷画像の印刷で使用されるインクの量を低減するための低減処理を実行して、低減処理済みの前記対象画像データを生成し、前記低減処理済みの前記対象画像データを用いて、前記複数個の部分印刷データを生成し、
前記評価値取得部は、前記低減処理済みの前記対象画像データを用いて、前記評価値を取得する、画像処理装置。
[適用例4]
適用例1~3のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記相違情報は、前記特定色空間の色値の複数個の代表値のそれぞれに対応する指標値であって前記色の相違の程度を示す前記指標値を記録したテーブルであり、
前記評価値取得部は、前記テーブルを用いて、前記部分画像内の複数個の画素に対応する複数個の前記指標値を取得し、該複数個の前記指標値を用いて前記評価値を取得する、画像処理装置。
[適用例5]
適用例1~4のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記相違情報は、前記特定色空間の色値の複数個の代表値のそれぞれに対応する指標値であって前記色の相違の程度を示す前記指標値を記録したテーブルであり、
前記印刷データ生成部は、
前記特定色空間において、前記複数個の代表値のうち、前記補正対象画素の値に最も近い第1代表値と、前記第1代表値からの距離が基準以下である複数個の第2代表値とを特定し、
前記テーブルを用いて、前記複数個の第2代表値の中から、前記第1代表値よりも前記色の相違が小さな特定の前記第2代表値を特定し、
前記補正対象画素の値が前記第1代表値よりも前記特定の第2代表値に近づくように、前記補正処理を実行する、画像処理装置。
[適用例6]
適用例1~5のいずれかに画像処理装置であって、
前記評価値取得部は、補正済みの前記特定の部分画像のデータを用いて、補正済みの前記特定の部分画像について前記評価値を取得し、
前記印刷データ生成部は、
補正済みの前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準より大きい場合に、補正済みの前記特定の部分画像のデータに対して、再度、前記補正処理を実行し、
補正済みの前記特定の部分画像の前記評価値によって示される前記色の相違が前記基準以下である場合に、補正済みの前記特定の部分画像のデータを用いて前記部分印刷データを生成する、画像処理装置。
[適用例7]
適用例1~6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記評価値取得部は、前記特定の部分画像内に設定される複数個のブロックのそれぞれについて前記評価値を取得し、
前記印刷データ生成部は、前記複数個のブロックの中に、前記評価値によって示される前記色の相違が閾値より大きな1個以上のブロックがある場合に、前記補正処理を実行する、画像処理装置。
【0010】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、印刷実行部の制御方法、印刷方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の画像処理システム1000を示す説明図である。
図2】印刷実行部290による印刷の説明図である。
図3】相違テーブル134の作成処理の手順を示すフローチャートである。
図4】印刷処理のフローチャートである。
図5】インク使用量低減処理のためのトーンカーブの一例を示す図である。
図6】印刷方向決定処理のフローチャートである。
図7】部分画像と複数のブロックとの説明図である。
図8】色差低減処理のフローチャートである。
図9】寄与度算出テーブルDTの一例を示す図である。
図10】代表値RVmxを中心とするRGB色空間の一部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施例
A-1.システムの構成
図1は、実施例の画像処理システム1000を示す説明図である。画像処理システム1000は、画像処理装置100と、画像処理装置100に接続された複合機200と、を含んでいる。後述するように、複合機200は、画像を印刷する印刷実行部290を有している。
【0013】
画像処理装置100は、パーソナルコンピュータである(例えば、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ)。画像処理装置100は、プロセッサ110と、揮発性記憶装置120と、不揮発性記憶装置130と、表示部140と、操作部150と、通信インタフェース170と、を有している。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0014】
プロセッサ110は、データ処理を行う装置であり、例えば、CPUである。揮発性記憶装置120は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置130は、例えば、フラッシュメモリやハードディスクである。
【0015】
不揮発性記憶装置130は、コンピュータプログラム132と、相違テーブル134と、を格納している。プロセッサ110は、コンピュータプログラム132を実行することによって、種々の機能を実現する。コンピュータプログラム132によって実現される機能と、相違テーブル134については、後述する。プロセッサ110は、コンピュータプログラム132の実行に利用される種々の中間データを、記憶装置(例えば、揮発性記憶装置120、不揮発性記憶装置130のいずれか)に、一時的に格納する。本実施例では、コンピュータプログラム132と相違テーブル134とは、複合機200の製造者によって提供されたデバイスドライバに含まれている。
【0016】
表示部140は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。操作部150は、ユーザによる操作を受け取る装置であり、例えば、キーボードやマウスである。ユーザは、操作部150を操作することによって、種々の指示を画像処理装置100に入力可能である。
【0017】
通信インタフェース170は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、USBインタフェース、有線LANインタフェース、IEEE802.11の無線インタフェース)。通信インタフェース170には、複合機200が接続されている。
【0018】
複合機200は、プロセッサ210と、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230と、表示部240と、操作部250と、通信インタフェース270と、スキャナ部280と、印刷実行部290と、を有している。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0019】
プロセッサ210は、データ処理を行う装置であり、例えば、CPUである。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。
【0020】
不揮発性記憶装置230は、コンピュータプログラム232を格納している。プロセッサ210は、コンピュータプログラム232を実行することによって、種々の機能を実現する。例えば、プロセッサ110は、コンピュータプログラム232を実行することによって、ユーザの指示に従って複合機200を制御し、複合機200に画像を印刷させるプリンタドライバとして機能する(詳細は後述)。プロセッサ210は、コンピュータプログラム232の実行に利用される種々の中間データを、記憶装置(例えば、揮発性記憶装置220、不揮発性記憶装置230のいずれか)に、一時的に格納する。本実施例では、コンピュータプログラム232と相違テーブル134とは、複合機200の製造者によって、ファームウェアとして、不揮発性記憶装置230に予め格納されている。
【0021】
表示部240は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。操作部250は、ユーザによる操作を受け取る装置であり、例えば、表示部240上に重ねて配置されたタッチパネルである。ユーザは、操作部250を操作することによって、種々の指示を複合機200に入力可能である。
【0022】
通信インタフェース270は、他の装置と通信するためのインタフェースである。本実施例では、通信インタフェース270は、画像処理装置100の通信インタフェース170に接続されている。
【0023】
スキャナ部280は、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて光学的に原稿等の対象物を読み取ることによって、読み取った画像(「スキャン画像」と呼ぶ)を表すスキャンデータを生成する。スキャンデータは、例えば、カラーのスキャン画像を表すRGBのビットマップデータである。
【0024】
印刷実行部290は、用紙(印刷媒体の一例)上に画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷実行部290は、印刷ヘッド292と、主走査部294と、搬送部296と、を有している。詳細は後述するが、印刷実行部290は、シアンCとマゼンタMとイエロYとのそれぞれのインクを用いるインクジェット式の印刷装置である。なお、利用可能な複数種類のインクの組み合わせとしては、CMYに限らず、他の種々の組み合わせ(例えば、シアンCとマゼンタMとイエロYとブラックK)を採用可能である。
【0025】
複合機200は、他の装置(例えば、画像処理装置100)によって供給された印刷データを用いて、印刷実行部290に画像を印刷させることができる。また、複合機200は、ユーザの指示に従ってスキャナ部280を駆動し、対象物を光学的に読み取ることによって、対象物を表すスキャンデータを生成する。そして、複合機200は、スキャンデータによって表される画像を印刷実行部290に印刷させることができる。
【0026】
図2(A)は、用紙PM上の部分領域PAa~PAfと、印刷ヘッド292の移動方向と、の説明図である。主走査部294(図1)は、印刷ヘッド292を主走査方向に沿って移動させる主走査を実行する装置である。図中の順方向D1と逆方向D2とは、主走査方向に沿う方向である。逆方向D2は、順方向D1の反対方向である。図示を省略するが、主走査部294は、例えば、主走査方向にスライド可能に印刷ヘッド292を支持するレールと、複数のプーリと、複数のプーリに巻き掛けられるとともに一部が印刷ヘッド292に固定されたベルトと、プーリを回転させるモータと、を有している。モータがプーリを回転させることによって、印刷ヘッド292は、主走査方向に移動する。
【0027】
図中には、副走査方向D3が示されている。搬送部296(図1)は、印刷ヘッド292に対して副走査方向D3に用紙PMを搬送する装置である。図示を省略するが、搬送部296は、例えば、印刷ヘッド292に対向する位置で用紙PMを支持する台と、印刷ヘッド292よりも上流側に配置された上流ローラと、印刷ヘッド292よりも下流側に配置された下流ローラと、それらのローラを回転させるモータと、を有している。用紙PMは、回転するローラによって副走査方向D3に搬送される。本実施例では、副走査方向D3は、主走査方向(例えば順方向D1)に交差する方向(本実施例では垂直な方向)である。
【0028】
図2(B)は、印刷ヘッド292の下面におけるノズル配列の説明図である。図示するように、印刷ヘッド292の下面には、シアンCのインクを吐出するためのノズル群NgCと、マゼンタMのインクを吐出するためのノズル群NgMと、イエロYのインクを吐出するためのノズル群NgYとが、形成されている。1つのノズル群の複数のノズルNzの副走査方向D3の位置は、互いに異なっている。本実施例では、1つのノズル群の複数のノズルNzは、副走査方向D3に沿って並んでいる。複数のノズルNzの間で、主走査方向の位置は同じである。ただし、少なくとも一部のノズルNzの間で、主走査方向の位置が異なっていてもよい。また、3つのノズル群NgC、NgM、NgYは、主走査方向の位置が互いに異なっている。印刷ヘッド292は、複数のノズル群NgC、NgM、NgYの複数のノズルNzから用紙PMに向かってインク滴を吐出することによって、用紙PMにドットを形成する。
【0029】
図2(A)に示すように、印刷実行部290(図1)は、主走査部294による主走査を行いつつ、印刷ヘッド292によって用紙PMにドットを形成することで、1回の部分印刷を実行する。1回の部分印刷では、用紙PM上の主走査方向に延びるバンド状の部分領域PAa~PAf上に画像を印刷する。印刷すべき画像の一部の画像であり、1回の部分印刷で1つの部分領域(例えば、PAa)に印刷される画像を、部分画像とも呼ぶ。印刷実行部290は、一回の部分印刷が完了したことに応じて、用紙PMを、副走査方向D3に搬送する。搬送量は、1つの部分領域(例えば、PAa)の副走査方向D3の幅(すなわち、1つの部分画像の幅)と同じである。印刷実行部290は、部分印刷と用紙PMの搬送とを、交互に繰り返すことによって、用紙PM上に画像の全体を印刷する。順方向D1の部分印刷で印刷される部分画像を「順方向部分画像」とも呼び、逆方向D2の部分印刷で印刷される部分画像を「逆方向部分画像」とも呼ぶ。
【0030】
図2(A)中の部分領域PAa、PAc、PAe、PAfは、順方向D1の部分印刷によって部分画像が印刷される部分領域である(「順方向部分領域」とも呼ぶ)。部分領域PAb、PAdは、逆方向D2の部分印刷によって部分画像が印刷される部分領域である(「逆方向部分領域」とも呼ぶ)。図2(A)の例では、順方向部分領域と逆方向部分領域とが、原則として、副走査方向D3に向かって交互に並んでいる。印刷ヘッド292は、主走査方向に沿う往復移動のうち順方向D1の移動と逆方向D2の移動との双方で部分画像を印刷するので、印刷を高速に行うことができる。ただし、後述する通常モードでは、図2(A)の2個の部分領域PAe、PAfのように、順方向D1の複数回の部分印刷が連続して実行される場合がある。
【0031】
図2(C)は、用紙PM上のインクの重ね順の説明図である。図中には、副走査方向D3を向いて見た印刷ヘッド292と用紙PMとが示されている。図中の右部には、順方向部分領域(例えば、PAa)内の位置PS1上のインクの重ね順が、用紙PMの表面から順番にC、M、Yの順であることが示されている。順方向D1に移動する印刷ヘッド292が同じ位置PS1に3種類のインクを重ねる場合、3つのノズル群NgC、NgM、NgYのインクの吐出順は、NgC、NgM、NgYの順である。図中の左部には、逆方向部分領域(例えば、PAb)内の位置PS2上のインクの重ね順が、用紙PMの表面から順番にY、M、Cの順であることが示されている。逆方向D2に移動する印刷ヘッド292が同じ位置PS2に3種類のインクを重ねる場合、3つのノズル群NgC、NgM、NgYのインクの吐出順は、NgY、NgM、NgCの順である。このように、逆方向D2の部分印刷によるインクの重ね順(すなわち、インクの吐出順)は、順方向D1の部分印刷によるインクの重ね順(インクの吐出順)の反対の順である。
【0032】
印刷された2つの色の間でインクの重ね順が異なる場合、重ねられたインクの種類と各種インクのそれぞれの量とが同じ場合であっても、2つの色が異なって見える場合がある。例えば、図2(C)の位置PS1の色と位置PS2の色とが異なって見える場合がある。このために、順方向D1で印刷される画像と逆方向D2で印刷される画像との間では、互いに同じドットデータを用いて印刷したとしても、印刷される色味が互いに異なる場合がある。このように、順方向D1で印刷される画像と逆方向D2で印刷される画像との間で生じる色の相違を「方向間色差」とも呼ぶ。
【0033】
方向間色差は、複数種類のインクの重なり順に加えて、各インクの量や各インクの材料などに応じて変化し得る。このために、方向間色差の程度は、印刷実行部290の特性や色によっても異なる場合がある。これに鑑みて、本実施例では、方向間色差を抑制するために、後述する印刷処理で、相違テーブル134が用いられる(詳細は後述)。
【0034】
A-2.相違テーブル
相違テーブル134は、RGB色空間CCの色値(RGB値とも呼ぶ)と、上述した方向間色差の程度を示す指標値PV(後述)と、を対応付けて記録したルックアップテーブルである。
【0035】
図3は、相違テーブル134の作成処理の手順を示すフローチャートである。相違テーブル134は、例えば、複合機200の出荷よりも前に、複合機200の製造者によって、作成される。S100では、相違テーブル134の作成者は、印刷実行部290に、順方向D1の片方向印刷で複数のカラーパッチ(図示省略)を印刷させる。順方向D1の片方向印刷では、順方向D1の部分印刷のみが繰り返し実行される。本実施例では、複数のカラーパッチは、RGB値の複数の代表値RV(グリッド値とも呼ぶ)に、それぞれ対応付けられている。
【0036】
図3の下部には、RGB色空間CCが示されている。図中では、立法体のRGB色空間CCの8つの頂点のそれぞれに、色を示す符号(具体的には、黒頂点Vk(0,0,0)、赤頂点Vr(255,0,0)、緑頂点Vg(0,255,0)、青頂点Vb(0,0,255)、シアン頂点Vc(0,255,255)、マゼンタ頂点Vm(255,0,255)、イエロ頂点Vy(255,255,0)、白頂点Vw(255,255,255))が付されている。括弧内の数字は、(R、G、B)の各色成分の値を示している。複数個の代表値RVのR(赤)の値は、Rの範囲(ここでは、ゼロから255)をQ等分して得られるQ+1個の値のうちのいずれかである(Qは、例えば、9、17など)。各代表値RVのG(緑)とB(青)とのそれぞれの値も同様である。
【0037】
複数のカラーパッチを印刷する際には、複数のカラーパッチのそれぞれに対応するRGB値の代表値RVが、印刷用の色材の色成分に対応するCMY色空間の色値(CMY値とも呼ぶ)に変換される。CMY値を有するパッチ画像データに対してハーフトーン処理が行われ、ハーフトーン処理の結果に従って複数のカラーパッチを表す印刷データが生成される。印刷実行部290は、印刷データに従って複数のカラーパッチを印刷する。色変換処理とハーフトーン処理と印刷データの生成処理とは、複合機200を用いる後述の印刷処理のものと同じであり、例えば、複合機200のプロセッサ210によって実行される。この代わり、複合機200に接続された他のデータ処理装置によって、色変換処理とハーフトーン処理と印刷データの生成処理とが行われてもよい。
【0038】
S105では、作成者は、印刷実行部290に、逆方向D2の片方向印刷で複数のカラーパッチを印刷させる。逆方向D2の片方向印刷では、逆方向D2の部分印刷のみが繰り返し実行される。S105にて、複数のカラーパッチを印刷するために用いられる印刷データは、S100にて用いられる印刷データと同一である。
【0039】
図3のS110では、作成者は、順方向D1で印刷された複数のカラーパッチと、逆方向D2で印刷された複数のカラーパッチとのそれぞれを、分光測色機を用いて測色する。これにより、各カラーパッチについて、2個の測色値、すなわち、順方向D1で印刷される場合の色を示す測色値と逆方向D2で印刷される場合の色を示す測色値と、が取得される。測色値は、例えば、印刷実行部290などのデバイスに依存しない色空間の色値、本実施例では、CIELAB色空間の色値(以下、Lab値とも呼ぶ)である。
【0040】
S120では、作成者は、複数の代表値RVのそれぞれの色差dMを算出する。色差dMは、1つの代表値RVに対応付けられたカラーパッチの2個の測色値の間の色差である。色差dMの算出式としては、例えばCIE1987 L*a*b*色差式が用いられる。このような色差dMは、CIELAB色空間内における2つの色の間の距離(ここでは、ユークリッド距離)によって、表されている。
【0041】
S130では、作成者は、複数の代表値RVのそれぞれの色差dMに基づく指標値PVを、複数の代表値RVに対応付けてルックアップテーブルに格納する。これによって、相違テーブル134が生成される。例えば、指標値PVは、算出された複数の色差dMの最大値が1になるように、複数の代表値RVのそれぞれの色差dMを正規化した値である。
【0042】
A-3.印刷処理
図4は、印刷処理のフローチャートである。本実施例では、画像処理装置100のプロセッサ110が、コンピュータプログラム132に従って、図4の処理を進行する。プロセッサ110は、操作部150に入力されたユーザの印刷指示を取得した場合に、図4の処理を開始する。
【0043】
なお、本実施例では、印刷モードとして、通常モードとインクセーブモードとのいずれかが選択される。通常モードとインクセーブモードとの選択指示は、図示しない選択画面を介してユーザによって入力される。プロセッサ110は、印刷モードの選択指示を、上述の印刷指示とともに取得する。
【0044】
S200では、プロセッサ110は、印刷対象の画像データを取得する(「対象画像データ」とも呼ぶ)。例えば、プロセッサ110は、ユーザ、または、アプリケーションプログラムからの印刷開始指示で指定された画像データを、対象画像データとして取得する。本実施例では、対象画像データが、ビットマップデータであり、対象画像データの各画素の画素値が、0~255の256階調のR(赤)G(緑)B(青)の階調値で表されていることとする。指定された画像データの形式がビットマップ形式とは異なる形式である場合には(例えば、EMF(Enhanced Meta File)形式)、プロセッサ110は、データ形式を変換(例えば、ラスタライズ)することによって生成されるビットマップデータを、対象画像データとして用いる。また、画像データの画素密度が、印刷処理用の所定の画素密度と異なる場合、プロセッサ110は、画像データの画素密度を印刷処理用の画素密度に変換する処理を実行する。
【0045】
S202では、プロセッサ110は、対象画像データによって表される対象画像のうちの未処理の1つの部分画像を表す部分画像データを、注目部分画像データとして取得する。本実施例では、対象画像は、副走査方向D3に並ぶ複数の部分画像に区分される。用紙PMの搬送方向が副走査方向D3であるので、複数の部分画像は、副走査方向D3に反対の方向に向かって1つずつ順番に印刷される。S202では、プロセッサ110は、未処理の1以上の部分画像のうち、副走査方向D3側の端に位置する部分画像(すなわち、未処理の1以上の部分画像のうち最も先に印刷される部分画像)を選択し、選択した部分画像を表す部分画像データを、注目部分画像データとして取得する。以下、注目部分画像データによって示される部分画像を、注目部分画像とも呼ぶ。
【0046】
S205では、プロセッサ110は、上述した印刷モードの選択指示に基づいて、印刷モードがインクセーブモードであるか通常モードであるかを判断する。インクセーブモードでは、通常モードと比較して、印刷に用いられるインクの量が低減される。このために、インクセーブモードで印刷される画像の色は、通常モードと比較して薄い色になる。印刷モードが通常モードである場合には(S205:NO)、プロセッサ110は、S210に処理を進める。印刷モードがインクセーブモードである場合には(S205:YES)、プロセッサ110は、S215に処理を進める。
【0047】
S210では、プロセッサ110は、注目部分画像データを用いて、印刷方向決定処理を実行する。これによって、注目部分画像を印刷するための部分印刷(「注目部分印刷」とも呼ぶ)の方向は、順方向D1と逆方向D2とのいずれかに決定される。詳細は後述するが、プロセッサ110は、注目部分画像の方向間色差の程度を評価する。プロセッサ110は、この評価結果を表す評価値を、注目部分画像データによって表される画素値と、相違テーブル134とを参照して、算出する。評価値によって表される方向間色差が基準より大きい場合には、プロセッサ110は、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向に拘わらずに、所定の方向(本実施例では、順方向D1)に決定する。評価値によって表される方向間色差が基準以下である場合には、プロセッサ110は、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向とは異なる方向(反対の方向)に決定する。
【0048】
S215では、プロセッサ110は、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向とは異なる方向(反対の方向)に決定する。インクセーブモードでは、通常モードとは異なり、評価値とは無関係に、注目部分印刷の方向が決定される。
【0049】
S220では、プロセッサ110は、注目部分画像データに対して、インク使用量低減処理を実行する。図5は、インク使用量低減処理のためのトーンカーブの一例を示す図である。トーンカーブは、0~255の値を取る入力値Vinと出力値Voutとの対応関係を規定している。プロセッサ110は、注目部分画像データの各画素の値(RGB値)の各成分値に対して図5のトーンカーブを適用する。この結果、注目部分画像の明度が全体的に高くされる。換言すれば、注目部分画像の印刷時の濃度が全体的に低くされる。このように、インクセーブモードでは、本処理が実行されることによって、印刷で使用されるインクの量が低減される。
【0050】
S225では、プロセッサ110では、インク使用量低減処理済みの注目部分画像データを用いて、色差低減処理を実行する。詳細は後述するが、プロセッサ110は、注目部分画像の方向間色差の程度を評価する。プロセッサ110は、この評価結果を表す評価値を、注目部分画像データによって表される画素値と、相違テーブル134とを参照して、算出する。評価値によって表される方向間色差が基準より大きい場合には、プロセッサ110は、方向間色差を低減するための補正処理を実行して、補正済みの注目部分画像データを生成する。評価値によって表される方向間色差が基準以下である場合には、プロセッサ110は、補正処理を実行しない。
【0051】
S230では、プロセッサ110は、注目部分画像データに対して色変換処理を実行する。色変換処理の対象とされる注目部分画像データは、印刷モードが通常モードである場合には、S200で取得された注目部分画像データである。色変換処理の対象とされる注目部分画像データは、印刷モードがインクセーブモードであり、かつ、S225の色差低減処理にて補正処理が実行された場合には、補正済みの注目部分画像データであり、印刷モードがインクセーブモードであり、かつ、S225の色差低減処理にて補正処理が実行されなかった場合には、インク使用量低減処理済みの注目部分画像データである。色変換処理では、注目部分画像データの各画素の画素値は、RGB値からCMY値に変換される。RGB値とCMY値との間の対応関係は、不揮発性記憶装置130に予め格納されたルックアップテーブル(図示省略)によって予め規定されている。プロセッサ110は、このルックアップテーブルを参照して、色変換を実行する。
【0052】
S235では、プロセッサ110は、色変換済の注目部分画像データに対して、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理としては、いわゆる誤差拡散法に従った処理が行われる。この代わりに、ディザマトリクスを用いる方法を採用してもよい。
【0053】
S240では、プロセッサ110は、ハーフトーン処理の結果を用いて、注目部分画像を印刷するための部分印刷データを生成する。部分印刷データは、複合機200の印刷実行部290の制御部298によって解釈可能な形式のデータである。部分印刷データは、注目部分印刷の方向(順方向D1または逆方向D2)を表す情報と、ハーフトーン処理の結果(インクドットのパターン)を表す情報と、注目部分印刷の後の用紙PMの搬送処理の搬送量を表す情報と、を含んでいる。
【0054】
S245では、プロセッサ110は、生成した部分印刷データを、複合機200に送信する。複合機200のプロセッサ210は、部分印刷データに従って、印刷実行部290(印刷ヘッド292と主走査部294と搬送部296)を制御することによって、注目部分印刷と搬送処理とを実行する。これにより、注目部分画像が印刷される。
【0055】
S250では、画像処理装置100のプロセッサ110は、全ての部分画像データを処理したか否かを判断する。未処理の部分画像データが残っている場合には(S250:NO)、プロセッサ110は、S202に移行し、未処理の部分画像データの処理を実行する。全ての部分画像データが処理された場合には(S250:YES)、プロセッサ110は、印刷処理を終了する。
【0056】
このように、画像処理装置100のプロセッサ110は、対象画像データを用いて、複数回の部分印刷のための複数個の部分印刷データを生成し(S240)、生成した複数個の部分印刷データを複合機200に供給する(S245)。これによって、複合機200(ひいては、印刷実行部290)は、部分画像を印刷するための部分印刷と、印刷ヘッド292に対して用紙PMを副走査方向D3に移動させる副走査とを、繰り返し実行して、対象画像データに基づく印刷画像を印刷する。
【0057】
A-4.印刷方向決定処理
図4のS210の印刷方向決定処理について説明する。図6は、印刷方向決定処理のフローチャートである。S300では、プロセッサ110は、注目部分画像を、複数のブロックBLに分割する。図7は、部分画像と複数のブロックとの説明図である。図7の部分画像BI(k)は、k番目に処理される部分画像を示している(kは整数)。部分画像BI(k)は、複数のブロックBLに区分される。ブロックBLの形状は、矩形状である。複数のブロックBLは、主走査方向(例えば順方向D1)と副走査方向D3とに沿って格子状に隙間無く配置されている。ブロックBLの副走査方向D3の高さBHと主走査方向の幅BWとは、予め決められている。本実施例では、注目部分画像上での複数のブロックBLの配置は、予め決められている。
【0058】
S305では、プロセッサ110は、注目部分画像の複数のブロックBLのうち未処理の1つのブロックBLを注目ブロックとして選択する。
【0059】
S310では、プロセッサ110は、相違テーブル134を用いて、注目ブロックの評価値EVを算出する。評価値EVは、注目部分印刷が順方向D1で行われる場合に印刷される画像と逆方向D2で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違(上述の方向間色差)の程度を示す値である。具体的には、プロセッサ110は、注目ブロックに含まれる複数の画素のそれぞれの画素の値(RGB値)と相違テーブル134とを用いて、複数の画素のそれぞれの指標値PVを特定する。相違テーブル134の複数の代表値RVのうち、特定の画素の値に最も近い特定の代表値RVが特定され、相違テーブル134にて該特定の代表値に対応付けられた指標値PVが、特定の画素の指標値PVとされる。そして、プロセッサ110は、複数の画素の指標値PVの平均値を、注目ブロックの評価値EVとして算出する。
【0060】
S315ではプロセッサ110は、評価値EVが、所定の閾値Thより大きいか否かを判断する。評価値EVが閾値Thより大きい場合には(S315:YES)、S330で、プロセッサ110は、注目部分印刷の方向を所定の方向(ここでは、順方向D1)に決定する。注目部分印刷の方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0061】
評価値EVが閾値Th以下である場合には(S315:NO)、S320で、プロセッサ110は、注目部分画像の全てのブロックの処理が終了したか否かを判断する。未処理のブロックが残っている場合には(S320:NO)、プロセッサ110は、S305に移行して、未処理のブロックの処理を実行する。全てのブロックの処理が終了した場合には(S320:YES)、S325で、プロセッサ110は、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向とは異なる方向に決定する。すなわち、直前の部分印刷の方向が順方向D1である場合には、注目部分印刷の方向は逆方向D2に決定され、直前の部分印刷の方向が逆方向D2である場合には、注目部分印刷の方向は順方向D1に決定される。注目部分印刷の方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0062】
以上の説明から解るように、通常モードでは、上記印刷方向決定処理が行われるので、評価値EVが閾値Thより大きい部分画像、換言すれば、方向間色差が目立つと考えられる部分画像は、常に、順方向D1で印刷される。このために、通常モードでは、方向間色差が目立つことを抑制できる。通常モードでは、順方向D1の部分印刷が連続する場合がある。順方向D1の部分印刷が連続する場合には、1回目の順方向D1の部分印刷の後に、印刷を行うことなく逆方向D2の主走査が行われた後に、2回目の順方向D1の部分印刷が行われる。この場合には、印刷を行うことなく逆方向D2の主走査が行われる分だけ、順方向D1の部分印刷と逆方向D2の部分印刷とが交互に行われる場合と比較して印刷時間が遅くなる。このように、通常モードでは、方向間色差が目立つことを抑制できる反面、印刷速度が遅くなる場合がある。
【0063】
A-5.色差低減処理
図4のS225の色差低減処理について説明する。図8は、色差低減処理のフローチャートである。S400では、図6のS300と同様に、プロセッサ110は、注目部分画像を、複数のブロックBLに分割する(図7)。S405では、図6のS305と同様に、プロセッサ110は、注目部分画像の複数のブロックBLのうち未処理の1つのブロックBLを注目ブロックとして選択する。
【0064】
S410では、図6のS310と同様に、プロセッサ110は、相違テーブル134を用いて、注目ブロックの評価値EVを算出する。S415では、図6のS315と同様に、プロセッサ110は、評価値EVが、所定の閾値Thより大きいか否かを判断する。
【0065】
評価値EVが閾値Thより大きい場合には(S415:YES)、S422にて、プロセッサ110は、注目ブロック内の複数個の画素のRGB値を用いて、寄与度算出テーブルDTを作成する。図9は、寄与度算出テーブルDTの一例を示す図である。寄与度算出テーブルDTは、代表値RVのリストと、代表値RVに対応付けられた画素の数Nのリストと、寄与度DVのリストと、を含む。
【0066】
プロセッサ110は、注目ブロックの複数個の画素のRGB値を参照して、各画素をRGB色空間CCの複数個の代表値RVのうち、その画素のRGB値とのユークリッド距離が最も近い代表値RVに対応付ける。プロセッサ110は、複数個の代表値RVのそれぞれに対応付けられた画素の数Nをカウントして、寄与度算出テーブルDTに記録する。プロセッサ110は、複数個の代表値RVのそれぞれについて寄与度DVを算出して、寄与度算出テーブルDTに記録する。特定の代表値の寄与度DVは、該特定の代表値に対応付けられた画素の数Nに、相違テーブル134にて該特定の代表値に対応付けられた指標値PVを、乗じた値である(DV=(N×PV))。図9の例では、代表値RVa、RVb、RVcに対応付けられた画素の数Na、Nb、Ncと、代表値RVa、RVb、RVcの寄与度DVa、DVb、DVcと、が記録されている。
【0067】
S425では、プロセッサ110は、寄与度算出テーブルDTを参照して、寄与度DVが最大の代表値RVmxを特定する。
【0068】
S430では、プロセッサ110は、注目部分画像に含まれる複数個の画素のうち、寄与度DVが最大の代表値RVmxに対応する画素を、補正対象画素として決定する。代表値RVmxに対応する画素は、その画素のRGB値に最も近い代表値RVが代表値RVmxである画素である。寄与度DVが最大の代表値RVmxに対応する画素は、評価値EVが基準以上である原因になった画素であるので、方向間色差の原因である画素である、と言うことができる。
【0069】
S440では、プロセッサ110は、寄与度DVが最大の代表値RVmxの6個の近接代表値RV1~RV6を特定する。図10は、代表値RVmxを中心とするRGB色空間CCの一部分PCCを示す図である。図10に示すように、6個の近接代表値RV1~RV6は、複数個の代表値RVのうち、寄与度DVが最大の代表値RVmxに最も近い6個の代表値である。代表値RVの格子の一辺の長さLth(図10)を基準とすると、6個の近接代表値RV1~RV6は、代表値RVmxからの距離が基準Lth以下である代表値、とも言うことができる。6個の近接代表値RV1~RV6は、代表値RVmxに対して、それぞれ、R軸の正方向、R軸の負方向、G軸の正方向、G軸の負方向、B軸の正方向、B軸の負方向に隣接する代表値である。
【0070】
S440では、プロセッサ110は、6個の近接代表値RV1~RV6の中から、相違テーブル134にて最小の指標値PVが対応付けられた代表値を特定する。本ステップにて特定された代表値を補正先の代表値RVamとも呼ぶ。寄与度DVが最大の代表値RVmxに対応付けられた指標値PVは比較的大きいので、補正先の代表値RVamに対応付けられる指標値PVは、代表値RVmxに対応付けられた指標値PVよりも小さい。
【0071】
S445では、プロセッサ110は、特定された補正先の代表値RVamに基づいて、補正ベクトルAVを決定する。補正ベクトルAVは、RGB色空間CCにおいて、寄与度DVが最大の代表値RVmxを始点とし、補正先の代表値RVamを終点とするベクトルである。図10には、代表値RVmxに対してR軸の正方向に隣接する近接代表値RV1が補正先の代表値RVamである場合の補正ベクトルAVが例示されている。
【0072】
代表値RVmxの各成分値を(Rmx、Gmx、Bmx)とし、補正先の代表値RVamの各成分値を(Ram、Gam、Bam)とすると、補正ベクトルAVの各成分値(ΔR、ΔG、ΔB)は、以下の式(1)~(3)で表される。
ΔR=Ram-Rmx …(1)
ΔG=Gam-Gmx …(2)
ΔB=Bam-Bmx …(3)
補正ベクトルAVは、RGBの各成分の補正量ΔR、ΔG、ΔBを示すベクトルである。
【0073】
S450では、プロセッサ110は、補正ベクトルAVに基づいて、S430にて特定された補正対象画素を補正する。具体的には、補正前の補正対象画素のRGB値(R、G、B)は、補正後のRGB値(R+ΔR、G+ΔG、B+ΔB)に変換される。これにより、補正対象画素のRGB値は、代表値RVmxよりも補正先の代表値RVamに近づくように補正される。
【0074】
補正対象画素の補正が終了すると、プロセッサ110は、S410に戻って、注目ブロックの評価値EVを、補正後の注目部分画像データを用いて再計算する。プロセッサ110は、再計算された評価値EVが閾値Thより大きい場合には(S415:YES)、S422~S450の処理を、再度、実行して、さらに補正を行う。この結果、評価値EVが基準以下になるまで、補正が繰り返される。
【0075】
評価値EVが閾値Th以下である場合には(S415:NO)、S320で、プロセッサ110は、注目部分画像の全てのブロックの処理が終了したか否かを判断する。未処理のブロックが残っている場合には(S420:NO)、プロセッサ110は、S405に移行して、未処理のブロックの処理を実行する。全てのブロックの処理が終了した場合には(S420:YES)、プロセッサ110は、色差低減処理を終了する。
【0076】
以上説明した本実施例によれば、プロセッサ110は、対象画像データを用いて、複数個の部分画像のそれぞれについて、ブロックBLごとに評価値EVを取得する(図8のS410)。インクセーブモードでは、注目部分画像の評価値EVによって示される色の相違が基準より大きい場合に(図8のS415にてYES)、プロセッサ110は、相違テーブル134を用いて、注目部分画像内の複数個の画素の中から色の相違の原因である画素を含む補正対象画素を特定し(図8のS422~S430)、相違テーブル134を用いて、補正対象画素の色を方向間色差が小さな色に変換する補正処理を実行する(図8のS435~S450)。プロセッサ110は、補正済みの注目部分画像データを用いて部分印刷データを生成する(図4のS230~S240)。この結果、注目部分印刷が順方向D1で行われる場合に印刷される画像と逆方向D2で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違(方向間色差)が基準より大きい場合に、色の相違の原因である画素が補正される。この結果、双方向印刷において色の相違が目立つことを抑制することができる。また、例えば、色の相違が基準より大きい場合に印刷方向を変更する訳ではないので、例えば、順方向D1での部分印刷が連続することを抑制して、印刷速度の低下を抑制できる。したがって、双方向印刷において、印刷速度の低下を抑制しつつ、色の相違が目立つことを抑制することができる。例えば、通常モードでは、色の相違が基準より大きい場合には順方向D1での部分印刷が連続し得るので(図6のS315にてYES、S330)。印刷速度が低下し得るが、インクセーブモードでは、このような印刷速度の低下を抑制できる。
【0077】
さらに、上記実施例によれば、印刷モードが通常モードである場合には(図4のS205にてNO)、プロセッサ110は、評価値EVによって示される色の相違が基準より大きい場合に(図6のS315にてYES)、注目部分印刷の方向を、順方向D1に決定し(図6のS330)、評価値EVによって示される色の相違が基準以下である場合に(図6のS315にてNO)、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向とは異なる方向に決定する(図6のS325)。通常モードでは、プロセッサ110は、評価値EVに拘わらずに、補正処理(図8のS435~S450)を実行することなく、部分印刷データを生成する(図4のS230~S240)。印刷モードがインクセーブモードである場合には(図4のS205にてYES)、プロセッサ110は、評価値EVに拘わらずに、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向とは異なる方向に決定する(図4のS215)。インクセーブモードでは、プロセッサ110は、評価値EVによって示される色の相違が基準より大きい場合に(図8のS415にてYES)、上述した補正処理(図8のS435~S450)を実行して部分印刷データを生成する。この結果、通常モードでは、色の相違が基準より大きい場合に、連続して同じ順方向D1で部分印刷が行われる分、印刷速度が低下するものの、色の相違が目立つことを抑制しつつ、補正を行わない分、色みの変化を抑制できる。インクセーブモードでは、色の相違が基準より大きい場合に、補正処理を行う分、色みが変化し得るものの、色の相違が目立つことを抑制しつつ、連続して同じ方向で部分印刷を行わない分、印刷速度の低下を抑制できる。
【0078】
さらに、上記実施例によれば、インクセーブモードでは、プロセッサ110は、対象画像データに対して、インク使用量低減処理(図4のS220)を実行して、低減処理済みの対象画像データを生成し、低減処理済みの対象画像データを用いて、複数個の部分印刷データを生成する(図4のS225、S230~S240)。インクセーブモードでは、プロセッサ110は、低減処理済みの対象画像データを用いて、評価値EVを取得する(図8のS410)。このように、インクセーブモードでは、インク使用量低減処理が実行されるので、通常モードよりも使用されるインクの量を低減できる。インクセーブモードでは、インク使用量低減処理によって既に元の画像から色味が変化し得るので、補正処理(図8のS435~S450)による色味の変化は許容されやすいと考えられる。本実施例によれば、インクセーブモードでは、色みが変化し得るものの、色の相違が目立つことや印刷速度の低下を抑制できるので、印刷モードに応じた適切な印刷が実行される。
【0079】
さらに、上記実施例では、プロセッサ110は、相違テーブル134を用いて、注目部分画像の複数個の画素(より具体的には、注目ブロック内の複数個の画素)に対応する複数個の指標値PVを取得し、該複数個の指標値PVを用いて評価値EVを取得する(図8のS410)。この結果、相違テーブル134を用いて、適切な評価値EVを容易に取得できる。
【0080】
さらに、上記実施例では、プロセッサ110は、RGB色空間CCにおいて、複数個の代表値RVのうち、RGB色空間において補正対象画素のRGB値に最も近い代表値RVmxからの距離が基準Lth以下である複数個の近接代表値RV1~RV6を特定する(図8のS435)。プロセッサ110は、相違テーブル134を用いて、近接代表値RV1~RV6の中から、代表値RVmxよりも対応付けられる指標値PVが小さな補正先の代表値RVam、換言すれば、色の相違がより小さな代表値RVamを特定する(図8のS440)。プロセッサ110は、補正対象画素のRGB値が代表値RVmxよりも補正先の代表値RVamに近づくように、補正処理を実行する(図8のS445、S450)。この結果、補正対象画素の色味が過度に変化することを抑制しつつ、色の相違を適切に小さくすることができる。
【0081】
プロセッサ110は、補正処理(図8のS435~S450)によって補正済みの注目部分画像データを用いて、再度、評価値EVを算出し(図8のS410)、該評価値EVによって示される色の相違が基準より大きい場合に(図8のS415にてYES)、補正済みの注目部分画像データに対して、再度、補正処理を実行する(図8のS435~S450)。補正済みの注目部分画像の評価値EVによって示される色の相違が前記基準以下である場合に(図8のS415にてNO)、プロセッサ110は、補正済みの注目部分画像データを用いて部分印刷データを生成する。この結果、補正処理が繰り返されることによって、確実に色の相違を小さくすることができる。
【0082】
さらに、上記実施例によれば、プロセッサ110は、注目部分画像内に設定される複数個のブロックBLのそれぞれについて評価値EVを取得する(図8のS400~S410)。プロセッサ110は、複数個のブロックBLの中に、評価値によって示される色の相違が閾値Thより大きな1個以上のブロックがある場合に、注目部分画像の色の相違が基準より大きいと判断して、注目補正処理を実行する(図8のS415~450)。この結果、注目部分画像の色の相違が基準より大きいか否かを適切に判断することができる。例えば、注目部分画像の一部に局所的に色の相違が大きい部分がある場合等に、注目部分画像の色の相違が基準より大きいと適切に判断できる。
【0083】
以上の説明から解るように、本実施例の相違テーブル134は、相違情報の例である。本実施例の通常モードは、第1モードの例であり、インクセーブモードは、第2モードの例である。本実施例の寄与度DVが最大の代表値RVmxは、第1代表値の例であり、近接代表値RV1~RV6は、第2代表値の例であり、補正先の代表値RVamは、特定の第2代表値の例である。
【0084】
B.変形例
(1)上記実施例では、インクセーブモードにおいて、注目部分画像データに対して補正処理が実行される実行条件は、「少なくとも1つのブロックBLの評価値EVが所定の閾値Thより大きいこと」である。これに代えて、他の種々の条件を採用可能である。例えば、上記の実行条件は、「注目部分画像の複数のブロックBLのうち評価値EVが閾値以上であるブロックBLの割合が、所定の割合閾値以上であること」を含んでも良い。
【0085】
また、上記実施例では、評価値EVは、ブロックBLごとに算出されるが、これに限られない。例えば、部分画像ごとに1個の評価値が算出されても良い。この場合には、例えば、注目部分画像内の複数個の画素のそれぞれについて、画素のRGB値に応じた指標値PVが特定され、該複数個の画素の指標値PVの合計や平均が評価値として用いられる。また、プロセッサ110は、評価値EVとして、例えば、相違テーブル134を参照して、注目部分画像の平均色に対応する1個の指標値PVを取得しても良い。
【0086】
さらには、インクセーブモードであるか通常モードであるかに関わらずに、補正処理が実行されても良い。
【0087】
一般的には、複数個の部分画像のそれぞれについて算出される評価値によって示される色の相違(方向間色差)が基準より大きい特定の場合に、補正処理が実行されることが好ましい。
【0088】
(2)上記実施例では、印刷モードがインクセーブモードである場合には、上述の実行条件が満たされることを条件に補正処理が実行され、印刷モードが通常モードである場合には、補正処理が実行されない。これに代えて、例えば、印刷モードに関わらずに、上述した補正処理の実行条件が満たされる場合には、補正処理が実行されても良い。
【0089】
また、例えば、複合機200は、印刷モードとして、画質よりも速度を重視する高速モードと、速度よりも画質を重視する高画質モードと、を選択可能であっても良い。この場合には、例えば、印刷モードが高速モードである場合には、上述の実行条件が満たされることを条件に補正処理が実行され、印刷モードが高画質モードである場合には、補正処理が実行されなくても良い。
【0090】
(3)上記実施例では、インクセーブモードにおいて、評価値EVが閾値Th未満になるまで繰り返し補正処理が行われる。これに代えて、補正処理が所定回数(1~数回)だけ繰り返されても評価値EVが閾値Thより大きい場合には、プロセッサ110は、注目部分印刷の方向を、直前の部分印刷の方向に拘わらずに、順方向D1に決定し、補正前の注目部分画像データを用いて、部分印刷データを生成しても良い。
【0091】
(4)上記実施例では、相違情報として、相違テーブル134が用いられているが、これに限られない。例えば、相違情報は、RGB値が入力値として入力されると指標値PVを出力することができる所定の関数(算出式を示す情報)であっても良い。
【0092】
(5)上記実施例では、RGB画像データである注目部分画像データを用いて評価値EVが算出され、RGB画像データである注目部分画像データに対して補正処理が実行されている。これに代えて、例えば、RGB画像データをCMYK画像データに変換した後に、CMYK画像データに対して補正処理が実行されても良い。また、CMYK画像データを用いて評価値EVが算出されても良い。
【0093】
(6)上記実施例の補正処理では、上述したように、寄与度DVが最大である代表値RVmxの6個の近接代表値RV1~RV6の中から補正先の代表値RVamが特定され、該補正先の代表値RVamに近づくように補正対象画素の色が変換される。補正処理の態様はこれに限られない。例えば、補正先の代表値RVamは、例えば、6個の近接代表値RV1~RV6の次に、代表値RVmxに近い12個の代表値RVxを含めた18個の代表値の中から特定されても良い。図10には、12個の代表値RVxのうちの3個にだけ符号が付されている。また、濃度が高いほど色の相違(方向間色差)が大きくなる傾向があるので、補正対象画素の濃度を低下させる補正が行われても良い。
【0094】
(7)また、上記実施例では、補正対象画素は、寄与度DVが最大である代表値RVamに基づいて決定されているがこれに限られない。例えば、補正対象画素は、寄与度DVが2番目までの2個の代表値、あるいは、寄与度DVが3番目までの3個の代表値に基づいて決定されても良い。
【0095】
(8)ブロックBLの評価値EVの特定に用いられる画素としては、ブロックBLに含まれる複数の画素のうちの一部であってもよい。例えば、ブロックBL内から均等に選択された複数の画素(例えば、一つおきに選択された複数の画素)を用いてもよい。一般的には、ブロックBLの評価値EVは、ブロックBLに含まれる複数の画素のうち1個以上の画素のそれぞれの画素値を用いて特定されることが好ましい。
【0096】
また、ブロックBLの評価値EVとしては、ブロックBL内の1個以上の画素のそれぞれの画素値に応じて決まる種々の値を採用可能である。例えば、ブロックBL内の1個以上の画素のそれぞれの指標値PVの平均値に代えて、例えば、最大値、中央値、最頻値、最小値のいずれかを用いてもよい。また、ブロックBL内の1個以上の画素のそれぞれの画素値を総合して得られる1つの画素値に対応付けられた指標値PVを、ブロックBLの評価値EVとして用いてもよい。複数の画素値を総合して1つの画素値を特定する方法としては、例えば、複数の画素値の平均値、最大値、中央値、最頻値、最小値のいずれかを用いる方法を採用可能である。
【0097】
(9)主走査部294の構成としては、上記の各実施例の構成に代えて、印刷ヘッド292を主走査方向に沿って往復移動させることが可能な他の任意の構成を採用可能である。また、搬送部296の構成としては、上記の各実施例の構成に代えて、用紙PMを副走査方向に搬送可能な他の任意の構成を採用可能である。また、印刷実行部290が利用可能なインク(より一般的には、色材)の総数は、2以上の任意の数を採用可能である。例えば、シアンC、マゼンタM、イエロYに加えてブラックのインクを利用可能でもよい。印刷ヘッド292には、利用可能なインクの種類の総数と同じ数のノズル群が設けられていることが好ましい。すなわち、印刷ヘッド292は、L個(Lは2以上の整数)のノズル群を備え、L個のノズル群は、互いに異なるL種類の色材を、それぞれ吐出することが好ましい。この構成によれば、印刷ヘッド292が、最小限の数のノズル群を備えるので、印刷ヘッド292の構成を簡略化できる。なお、このような構成では、印刷ヘッド292の複数のノズル群から任意に選択された2個のノズル群が、互いに異なる種類のインクを吐出する。
【0098】
(10)図3で説明した相違テーブル134の作成は、複合機200の製造者ではなく、ユーザの指示に従って行われてもよい。例えば、複合機200のプロセッサ210が、ユーザの指示に従って、図3のS100~S150を実行しても良い。例えば、プロセッサ210は、図3のS100、105のパッチの印刷を、印刷実行部290を制御して実行し、S110のパッチの測色を、スキャナ部280を制御して実行する。ユーザの指示による相違テーブル134の作成は、複合機200の出荷後に、行われてよい。
【0099】
(11)画像処理装置100の代わりに、複合機200のプロセッサ210が、コンピュータプログラム232に従って、図4の印刷処理を実行してもよい。この場合、複合機200のプロセッサ210が、画像処理装置として動作する。
【0100】
(12)図1の画像処理装置100は、パーソナルコンピュータとは異なる種類の装置(例えば、デジタルカメラ、スキャナ)であってもよい。また、印刷実行部を含む装置は、複合機200とは異なる種類の装置(例えば、単機能のプリンタ)であってもよい。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、画像処理装置による画像処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、画像処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが画像処理装置に対応する)。
【0101】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図4のS230、S235、S240の機能の全部または一部を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0102】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0103】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0104】
100…画像処理装置、110…プロセッサ、120…揮発性記憶装置、130…不揮発性記憶装置、132…コンピュータプログラム、134…相違テーブル、140…表示部、150…操作部、170…通信インタフェース、200…複合機、210…プロセッサ、220…揮発性記憶装置、230…不揮発性記憶装置、232…コンピュータプログラム、240…表示部、250…操作部、270…通信インタフェース、280…スキャナ部、290…印刷実行部、292…印刷ヘッド、294…主走査部、296…搬送部、298…制御部、1000…画像処理システム、D1…順方向、D2…逆方向、D3…副走査方向、DT…寄与度算出テーブル、AV…補正ベクトル、PV…指標値、RV…代表値、DV…寄与度、EV…評価値、Nz…ノズル
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10