IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

特許7339608電動車両における電源ユニットの配置構造
<>
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図1
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図2
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図3
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図4
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図5
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図6
  • 特許-電動車両における電源ユニットの配置構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電動車両における電源ユニットの配置構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20230830BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20230830BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20230830BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K1/00
B62D21/00 A
B62D25/20 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021570655
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041649
(87)【国際公開番号】W WO2021145056
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2020006233
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 昇治
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151174(JP,A)
【文献】特開2014-193692(JP,A)
【文献】特開2014-46817(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044295(WO,A1)
【文献】特開2015-89806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 1/00
B62D 21/00
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる左右一対のサイドメンバが設けられた車体のフロアの下側で、前記左右一対のサイドメンバの前位置及び後位置の計4点の固定点から吊下支持され、サスペンションを介して左右の後輪を支持するリヤサスクロスメンバと、
前記フロアの下側で前記リヤサスクロスメンバに取り付けられ、少なくとも前記左右の後輪を駆動する走行用モータを含む駆動ユニットと、
前記フロアの上側に取り付けられ、少なくとも走行用バッテリからの電力を中継して前記走行用モータに供給するジャンクションボックスを含む電源ユニットと、
を備えた電動車両において、
前記左右一対のサイドメンバの前位置の2点の固定点と後位置の2点の固定点との間の前後方向における領域に設けられ、それぞれ前記フロアの上面に左右方向に延びて形成される上側前部フロアクロスメンバ及び上側後部フロアクロスメンバをさらに備え、
前記電源ユニットは、前後方向において前記上側前部フロアクロスメンバと前記上側後部フロアクロスメンバとの間に配設されている
ことを特徴とする電動車両における電源ユニットの配置構造。
【請求項2】
前記フロアの下面との間に閉断面を形成して左右方向に延びる下側前部フロアクロスメンバ及び下側後部フロアクロスメンバをさらに備え、
前記下側前部フロアクロスメンバは、前記上側前部フロアクロスメンバと平面視で前後方向に重なる領域を有し、
前記下側後部フロアクロスメンバは、前記上側後部フロアクロスメンバと平面視で前後方向に重なる領域を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両における電源ユニットの配置構造。
【請求項3】
前記上側前部フロアクロスメンバ及び上側後部フロアクロスメンバの左右両端と前記下側前部フロアクロスメンバ及び下側後部フロアクロスメンバの左右両端とは、それぞれ前記左右のサイドメンバに連結されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電動車両における電源ユニットの配置構造。
【請求項4】
前記電源ユニットを上方から覆うユニットカバーをさらに備え、
前記ユニットカバーは、前部を前記上側前部フロアクロスメンバに連結され、後部を上側後部フロアクロスメンバに連結されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動車両における電源ユニットの配置構造。
【請求項5】
前記電源ユニットは、前記ジャンクションボックスを含む複数の機器からなり、
前記ユニットカバーは、前記ジャンクションボックスの直上に配設された第1ユニットカバー、及び前記ジャンクションボックス以外の機器の直上に配設された第2ユニットカバーからなり、
前記第1ユニットカバーは、前記第2ユニットカバーとは別個に脱着可能とされている
ことを特徴とする請求項4に記載の電動車両における電源ユニットの配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両における電源ユニットの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両には、走行用バッテリに対する電力の入出力を制御する各種電源ユニットが搭載されている。例えば電源ユニットとしては、走行用バッテリと走行用モータ等の電気負荷とを接続するジャンクションボックス、充電ステーション等での外部電源からの電力を走行用バッテリに充電する充電器、走行用バッテリからの直流電力を交流電力に変換して家電を使用可能とするDC-ACインバータ、或いは走行用モータを力行制御や回生制御するためのインバータ等が挙げられ、これらの電源ユニットは電力ケーブルを介して走行用バッテリや走行用モータ等の電気負荷と接続されている。
【0003】
車両の衝突時において、電源ユニットが破損したり電力ケーブルが断線したりするとショートの原因になるため、電源ユニットの設置位置や電力ケーブルの配索経路は入念に検討・設定されている。
例えば特許文献1には、後面衝突への対策を講じた後輪駆動の電動車両が開示されている。この電動車両では、車体のフロアの下側に吊下支持されたリヤサスクロスメンバにより左右の後輪を支持すると共に、サスクロスメンバ上に駆動ユニットとしてインバータを備えた走行用モータ及びトランスアクスルを取り付けて後輪を駆動している。フロアの下側において駆動ユニットの上方位置には電源ユニットとしてジャンクションボックス、充電器及びDC-ACインバータを配設し、各電源ユニット、走行用モータのインバータ及び走行用バッテリを電力ケーブルを介して接続している。そして、平面視でのリヤサスクロスメンバの輪郭線よりも内側に、電源ユニット及び駆動ユニットを配設している。強固なリヤサスクロスメンバは後面衝突時に容易に変形せず、これにより電源ユニットや駆動ユニットの破損防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-151174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、駆動ユニット及び電源ユニットを共にフロアの下側のリヤサスクロスメンバ上に配設した車体構造を前提としたものであるが、電源ユニットをフロアの上側に移設した車体構造も広く実施されている。このような車体構造においても、例えばジャンクションボックスと走行用モータのインバータとを電力ケーブルで接続する等の必要性から、電源ユニットは駆動ユニットの直上付近、即ち後面衝突の影響を受ける場所に設置される。そして、フロアを介してリヤサスクロスメンバから上方に離間した電源ユニットは、リヤサスクロスメンバによる保護作用が及び難くなるため、従来から有効な保護対策が要望されていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車体のフロアの上側に電源ユニットを配置した後輪駆動の車体構造において、後面衝突時に電源ユニットを確実に保護して破損を防止することができる電動車両における電源ユニットの配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の電動車両における電源ユニットの配置構造は、前後方向に延びる左右一対のサイドメンバが設けられた車体のフロアの下側で、前記左右一対のサイドメンバの前位置及び後位置の計4点の固定点から吊下支持され、サスペンションを介して左右の後輪を支持するリヤサスクロスメンバと、前記フロアの下側で前記リヤサスクロスメンバに取り付けられ、少なくとも前記左右の後輪を駆動する走行用モータを含む駆動ユニットと、前記フロアの上側に取り付けられ、少なくとも走行用バッテリからの電力を中継して前記走行用モータに供給するジャンクションボックスを含む電源ユニットと、を備えた電動車両において、前記左右一対のサイドメンバの前位置の2点の固定点と後位置の2点の固定点との間の前後方向における領域に設けられ、それぞれ前記フロアの上面に左右方向に延びて形成される上側前部フロアクロスメンバ及び上側後部フロアクロスメンバをさらに備え、前記電源ユニットは、前後方向において前記上側前部フロアクロスメンバと前記上側後部フロアクロスメンバとの間に配設されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
このように構成した電動車両における電源ユニットの配置構造によれば、後面衝突時に他車両はフロアの後部を変形させつつ前方へと侵入し、上側後部フロアクロスメンバに達する。フロアとの間で閉断面を形成する上側後部フロアクロスメンバは高い強度を有するため、他車両から激しい入力を受けても前方への変形が最小限に抑制される。従って、上側部フロアクロスメンバよりも前側に配設されている電源ユニットの破損が未然に防止される。
【0009】
その他の態様として、前記フロアの下面との間に閉断面を形成して左右方向に延びる下側前部フロアクロスメンバ及び下側後部フロアクロスメンバをさらに備え、前記下側前部フロアクロスメンバは、前記上側前部フロアクロスメンバと平面視で前後方向に重なる領域を有し、前記下側後部フロアクロスメンバは、前記上側後部フロアクロスメンバと平面視で前後方向に重なる領域を有することが好ましい(請求項2)。
【0010】
このように構成した電動車両における電源ユニットの配置構造によれば、上側前部フロアクロスメンバと下側前部フロアクロスメンバとが左右方向に延びる強固な構造体として一体化され、同じく上側後部フロアクロスメンバと下側後部フロアクロスメンバとについても左右方向に延びる強固な構造体として一体化されて強度が高められるため、後面衝突時の他車両からの入力による変形が一層抑制される。
【0011】
また別の態様として、前記上側前部フロアクロスメンバ及び上側後部フロアクロスメンバの左右両端と前記下側前部フロアクロスメンバ及び下側後部フロアクロスメンバの左右両端とが、それぞれ前記左右のサイドメンバに連結されることが好ましい(請求項3)。
このように構成した電動車両における電源ユニットの配置構造によれば、上側後部及び下側後部フロアクロスメンバの両端が左右のサイドメンバを介して上側前部及び下側前部フロアクロスメンバの両端に連結され、フロア上に平面視で略四角枠状をなす強固な構造体が形作られる。このため、左右のサイドメンバと上側前部及び下側前部フロアクロスメンバとにより、上側後部及び下側後部フロアクロスメンバの変形を抑制する作用が奏される。また、この略四角状をなす強固な構造体の下側に、各固定点を介して同じく強固なリヤサスクロスメンバが一体化されるため、リヤサスクロスメンバによっても上側後部及び下側後部フロアクロスメンバの変形を抑制する作用が奏される。
【0012】
また別の態様として、前記電源ユニットを上方から覆うユニットカバーをさらに備え、前記ユニットカバーが、前部を前記上側前部フロアクロスメンバに連結され、後部を上側後部フロアクロスメンバに連結されることが好ましい(請求項4)。
このように構成した電動車両における電源ユニットの配置構造によれば、ユニットカバーによっても上側後部及び下側後部フロアクロスメンバの変形を抑制する作用が奏される。
【0013】
また別の態様として、前記電源ユニットが、前記ジャンクションボックスを含む複数の機器からなり、前記ユニットカバーが、前記ジャンクションボックスの直上に配設された第1ユニットカバー、及び前記ジャンクションボックス以外の機器の直上に配設された第2ユニットカバーからなり、前記第1ユニットカバーが、前記第2ユニットカバーとは別個に脱着可能とされていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このように構成した電動車両における電源ユニットの配置構造によれば、第2ユニットカバーとは別個にジャンクションボックスの直上の第1ユニットカバーを脱着可能なため、その保守性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動車両における電源ユニットの配置構造によれば、車体のフロアの上側に電源ユニットを配置した後輪駆動の車体構造において、後面衝突時に電源ユニットを確実に保護して破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の電動車両の後部を示す底面図である。
図2】同じく電動車両の後部を示す後方より見た断面図である。
図3】同じく電動車両の後部を示す左側方より見た断面図である。
図4】リヤサスクロスメンバ上の駆動ユニットの配置を示す平面図である。
図5】フロア上の電源ユニットの配置を示す平面図である。
図6】電源ユニットと駆動ユニットとの位置関係及び接続状態を示す平面図である。
図7】フロア上の電源ユニットと第1及び第2ユニットカバーとの関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した電動車両における電源ユニットの配置構造の一実施形態を説明する。
図1は実施形態の電動車両の後部を示す底面図、図2は同じく電動車両の後部を示す後方より見た断面図、図3は電動車両の後部を示す左側方より見た断面図である。以下の説明では、車両に搭乗した運転者を主体として前後、左右及び上下方向を表現する。
【0018】
本実施形態の電動車両は、走行用動力源として後述する走行用モータ9及び図示しないエンジンを搭載したハイブリッド車両1である。図1,2に示すように、その車体を構成するフロア2の下面には左右一対のサイドメンバ3l,3rが設けられ、各サイドメンバ3l,3rはそれぞれフロア2との間で閉断面を形成して前後方向に延設されている。
図1に二点鎖線で示すように、フロア2の下側にはリヤサスクロスメンバ4が配設され、その左右両側が各サイドメンバ3l,3rから吊下支持されている。詳しくは図1に示す平面視において、左右のサイドメンバ3l,3rの前位置及び後位置には支持マウント5fl,5fr,5rl,5rr(本発明の計4点の固定点に相当するため、以下の説明でも固定点と称する)が設けられ、リヤサスクロスメンバ4の前部左右及び後部左右が各固定点5fl,5fr,5rl,5rrから吊下支持されている。また前位置の固定点5fl,5frからリヤサスクロスメンバ4の左右両側は前方に延設され、それぞれ一対のボルト6l,6rにより左右のサイドメンバ3l,3rに締結されている。
【0019】
リヤサスクロスメンバ4の左側部及び右側部には、それぞれ図示しないダブルウィッシュボーン式のサスペンションを介して左右の後輪7(右側のみ図示)が支持されている。当該サスペンションの構成は周知であるため、詳細は説明しないが、アッパアーム、ロアアーム、トーコントロールリンク、スプリング、アブソーバ等から構成されている。ハイブリッド車両1の走行中において路面からの入力や後輪7への駆動反力等に抗するために、リヤサスクロスメンバ4は厚肉の鋼板から製作されて高い強度を有すると共に、同じく高い強度の左右のサイドメンバ3l,3rから支持されている。
【0020】
図4はリヤサスクロスメンバ4上の駆動ユニットの配置を示す平面図、図5はフロア2上の電源ユニットの配置を示す平面図、図6は電源ユニットと駆動ユニットとの位置関係及び接続状態を示す平面図である。
図1,2,4に示すように、フロア2の下側においてリヤサスクロスメンバ4には、駆動ユニット8として走行用モータ9、走行用モータ9に一体的に設けられたインバータ10、及び減速機として機能するトランスアクスル11が支持マウント15を介して取り付けられている。本実施形態では走行用モータ9を挟んだ配置で、左側にトランスアクスル11が、右側にインバータ10が左右方向に並設されている。トランスアクスル11は走行用モータ9に対して同軸上に連結されると共に、走行用モータ9よりも前方に膨出した形状をなしている。この膨出部分の左右両側には駆動軸12の内端が連結され、各駆動軸12の外端に左右の後輪7が連結されている。
【0021】
インバータ10は走行用モータ9の右側に一体的に設けられると共に、その端子台10aは走行用モータ9よりも後方に突出し、端子台10aの左側面に後述するモータ側電力ケーブル42が接続される。そして、以上のようにしてリヤサスクロスメンバ4に取り付けられた駆動ユニット8の全ての領域は、平面視においてリヤサスクロスメンバ4の輪郭線よりも内側に配設されている。またフロア2の下側においてリヤサスクロスメンバ4よりも前側位置には、図示しない走行用動力源のエンジンの燃料を貯留する燃料タンク13が配設され、燃料タンク13の前側位置には走行用バッテリ14が配設されている。
【0022】
走行用モータ9はインバータ10により駆動制御される。例えば力行制御時には、走行用バッテリ14からの直流電力がインバータ10で三相交流電力に変換されて走行用モータ9に供給され、走行用モータ9の回転がトランスアクスル11内で減速されて駆動軸12を介して左右の後輪7が駆動される。また回生制御時には、左右の後輪7の回転が駆動軸12及びトランスアクスル11を介して走行用モータ9に伝達され、走行用モータ9により発電された三相交流電力がインバータ10により直流電力に変換されて走行用バッテリ14に充電される。
【0023】
図3,5に示すように、フロア2の上面には上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17が設けられ、フロア2の下面には下側前部及び下側後部フロアクロスメンバ18,19が設けられている。詳しくは、フロア2の上面において、上側前部フロアクロスメンバ16は前位置の左右の固定点5fl,5frの間に設けられ、上側後部フロアクロスメンバ17は後位置の左右の固定点5rl,5rrの間に設けられ、それぞれフロア2の上面との間で閉断面を形成しつつ左右方向に延設されて、両端が左右のサイドメンバ3l,3rに連結されている。またフロア2の下面において、下側前部フロアクロスメンバ18は前位置の左右の固定点5fl,5frの間に設けられ、下側後部フロアクロスメンバ19は後位置の左右の固定点5rl,5rrの間に設けられ、それぞれフロア2の下面との間で閉断面を形成しつつ左右方向に延設されて、両端が左右のサイドメンバ3l,3rに連結されている。
【0024】
図3に示すように、各フロアクロスメンバ16~19は、それぞれフロア2との間で閉断面をなす本体16a~19aとフロア2に接合される前後両側のフランジ16b~19b,16c~19cとからなる。そして、上側前部フロアクロスメンバ16と下側前部フロアクロスメンバ18とは、本体16a,18a及びフランジ16b,16c,18b,18cの全ての領域が前後方向で互いに重ねられている。また、上側後部フロアクロスメンバ17と下側後部フロアクロスメンバ19との位置関係については、上側後部フロアクロスメンバ17の後側フランジ17cと下側後部フロアクロスメンバ19の前側フランジ19bとが前後方向で互いに重ねられている。
【0025】
フロア2を挟んで前後方向に重なる領域を有することにより、上側前部フロアクロスメンバ16と下側前部フロアクロスメンバ18、及び上側後部フロアクロスメンバ17と下側後部フロアクロスメンバ19は、それぞれ一体化されて左右方向に延設されている。このため、例えば互いが前後方向に離間して配置された場合に比較して、大幅に強度が高められている。そして、これらの各フロアクロスメンバ16~19を介して左右のサイドメンバ3l,3rが連結されることにより、フロア2上には平面視で略四角枠状をなす強固な構造体が形作られている。
【0026】
図3~5に示すように、フロア2上には、電源ユニット20として左側よりジャンクションボックス21、充電器22(本発明の複数の機器に相当)及びDC-ACインバータ23(本発明の複数の機器に相当)が取り付けられている。周知のようにジャンクションボックス21は、走行用バッテリ14と走行用モータ9等の各種電気負荷とを接続する機器であり、充電器22は、充電ステーション等での外部電源からの電力を充電ポート30を介して走行用バッテリ14に充電する機器であり、DC-ACインバータ23は、走行用バッテリ14の直流電力を100Vの交流電力に変換して家電を使用可能とする機器である。
【0027】
端的に表現すると電源ユニット20は、上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17を利用してフロア2上に取り付けられている。図3,5に基づきジャンクションボックス21を例にして取付状態を説明すると、上側前部フロアクロスメンバ16上にはL字状をなす前部ブラケット24の一側面がボルト25により固定され、前部ブラケット24の他側面はジャンクションボックス21の前面にボルト26により固定されている。同様に上側後部フロアクロスメンバ17上にはL字状をなす後部ブラケット27の一側面がボルト28により固定され、後部ブラケット27の他側面はジャンクションボックス21の後面にボルト29により固定されている。結果としてジャンクションボックス21の前部は前部ブラケット24を介して上側前部フロアクロスメンバ16から支持・固定され、後部は後部ブラケット27を介して上側後部フロアクロスメンバ17から支持・固定されている。
【0028】
後部ブラケット27には略三角状をなす脆弱部27aが屈曲形成されており、他車による後面衝突時には脆弱部27aが屈曲変形して衝撃の吸収作用を奏する。充電器22及びDC-ACインバータ23についても、重複する説明はしないが同様の取付状態となっている。
図7はフロア2上の電源ユニット20と第1及び第2ユニットカバーとの関係を示す平面図である。
【0029】
図3,7に示すように、ジャンクションボックス21の直上には第1ユニットカバー31が配設され、充電器22及びDC-ACインバータ23の直上には第2ユニットカバー32が配設されている。第1及び第2ユニットカバー31,32は左右に隣接し、ジャンクションボックス21と充電器22との間において、第2ユニットカバー32の側縁に第1ユニットカバー31の側縁が重ねられている。結果として、両ユニットカバー31,32は全体として1つの下方に開口する四角箱状をなし、その周囲に形成されたフランジ31a,32aは、上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17の上面及び左右のサイドメンバ3l,3rの上面にそれぞれ重ねられている。
【0030】
図示はしないがフランジ31a,32aの複数箇所にはボルト孔が貫設され、一部のボルト孔の箇所は、上側後部フロアクロスメンバ17の上面に突設されたスタッドボルト33及びナット34により上側後部フロアクロスメンバ17上に締結されている。また、残りのボルト孔の箇所は、ボルト35により上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17の上面に締結されている。また、図示はしないが充電器22上には雌ネジが設けられ、この雌ネジの箇所でも第2ユニットカバー32がボルト36により締結されている。なお、スタッドボルト33及びボルト35,36の数や位置は任意に変更可能である。
【0031】
以上により第1及び第2ユニットカバー31,32がフロア2上に固定され、電源ユニット20は、これらのユニットカバー31,32に上方から覆われて内部に収容されている。第2ユニットカバー32の側縁に第1ユニットカバー31の側縁が重ねられているため、上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17の上面に第2ユニットカバー32を締結したままの状態で、第1ユニットカバー31のみを脱着可能となっている。
【0032】
なお、一部の締結箇所にスタッドボルト33を使用しているのは、ユニットカバー31,32の取付時において、まずフランジ31a,32aのボルト孔にスタッドボルト33を挿通してユニットカバー31,32を位置決めすることで、続くボルト35,36の締結作業を行い易くするためである。また、充電器22上のボルト36による締結箇所は、何らかの要因により第2ユニットカバー32の上面に荷重が加えられた場合の破損防止のためである。
【0033】
第1及び第2ユニットカバー31,32は鋼板を折曲形成して製作されると共に、前後方向に延びる多数のリブ37(図7に一部を示す)が形成されて強度が高められている。そして、このような第1及び第2ユニットカバー31,32を介して上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17が互いに連結されることにより、両フロアクロスメンバ16,17の前後方向への相対的な位置変位が規制されている。
【0034】
ユニットカバー31,32の直上には3列目シート38が配設され、その前部及び後部が図示しないブラケットを介してフロア2上に取り付けられている。3列目シート38に着座する乗員への配慮のために、第1及び第2ユニットカバー31,32は、電源ユニット20から放射される電磁波の遮断作用、及び乗員がこぼしたジュース等からの電源ユニット20の保護作用を奏する。また第1及び第2ユニットカバー31,32は、その内面に貼着された図示しない吸音材によりフロア2からの走行音等を遮断する作用も奏する。
【0035】
第2ユニットカバー32とは別個に第1ユニットカバー31のみを脱着可能とした理由は、以下の要請に基づくものである。
故障しない限り保守を要しない充電器22及びDC-ACインバータ23に対して、ジャンクションボックス21は、内蔵しているヒューズの交換或いは以下に述べる電力ケーブルの接続箇所の点検等のように、保守を必要とする機会が多い。第1及び第2ユニットカバー31,32を一体化すると大型化して扱い難い上に、脱着するボルト数も増加して煩雑になる。そこで、第2ユニットカバー32とは別個に第1ユニットカバー31のみを脱着可能としているのであり、これによりジャンクションボックス21の保守性を向上することができる。
【0036】
図5に示すように、フロア2の上側で且つ電源ユニット20の前側において、ジャンクションボックス21と充電器22を接続する電力ケーブル40が、ジャンクションボックス21の車両外側の側面と充電器22のジャンクションボックス21側の側面に接続され、同様に、ジャンクションボックス21とDC-ACインバータ23を接続する電力ケーブル41が、ジャンクションボックス21の車両外側の側面とDC-ACインバータ23の前面に接続されている。また図2,3,6に示すように、ジャンクションボックス21の下面には端子台21aが設けられ、フロア2に形成された貫通孔2aに嵌め込まれて下方に突出している。端子台21aの後面にはモータ側電力ケーブル42の一端が接続され、その他端はインバータ10の端子台10aの左側面に接続されている。図6から判るように、駆動ユニット8のみならずモータ側電力ケーブル42についても、平面視でのリヤサスクロスメンバ4の輪郭線よりも内側に配設されている。
【0037】
また、電源ユニット20の中でジャンクションボックス21は最も左側に配置されているため、図1に示すように、その端子台21aも車幅内の左側に位置している。そして、このような左右方向の端子台21aの位置に対応して、走行用バッテリ14の端子台14aも車幅内の左側に設けられてバッテリ側電力ケーブル43の一端が接続されている。バッテリ側電力ケーブル43は燃料タンク13の左側を迂回するように配索されて、その他端がジャンクションボックス21の端子台21aに接続されている。
【0038】
走行用バッテリ14と充電器22、DC-ACインバータ23及び走行用モータ9のインバータ10との間の電力の遣り取りは、ジャンクションボックス21を中継して行われる。例えば、走行用バッテリ14からの直流電力がジャンクションボックス21を介してDC-ACインバータ23に供給され、100Vの交流電力に変換されて家電の作動に利用される。また、充電ステーション等で外部電源から供給された交流電力が充電器22により直流電力に変換され、ジャンクションボックス21を介して走行用バッテリ14に充電される。また、走行用モータ9の力行制御時には、走行用バッテリ14の直流電力がジャンクションボックス21を介してインバータ10に供給され、三相交流電力に変換されて走行用モータ9に供給され、一方、回生制御時には、走行用モータ9により発電された三相交流電力がインバータ10により直流電力に変換され、ジャンクションボックス21を介して走行用バッテリ14に充電される。
【0039】
一方、車体の走行用バッテリ14よりも前側には、走行用動力源として図示しないエンジンが搭載されている。エンジンの排気管44は走行用バッテリ14及び燃料タンク13の右側を迂回して後方へと取り回され、走行用モータ9の下側を経て図示しない消音器及び排気浄化装置に連結されている。
次いで、本発明の特徴部分である電源ユニット20の配置構造、及び後面衝突が発生したときの電源ユニット20に対する保護作用について述べる。
【0040】
図3,5から判るように、全ての電源ユニット20は、前後方向において上側前部フロアクロスメンバ16と上側後部フロアクロスメンバ17との間に配設されている。詳しくは、全ての電源ユニット20の前面が上側前部フロアクロスメンバ16の後縁よりも後方に位置し、全ての電源ユニット20の後面が上側後部フロアクロスメンバ17の前縁よりも前方に位置している。なお、電源ユニット20とフロアクロスメンバ16,17やサイドメンバ3l,3rとの位置関係は上記に限るものではなく、例えば電源ユニット20の前面や後面がフロアクロスメンバ16,17の閉断面を形成する本体16a,17aと重なっていてもよい。
【0041】
後面衝突時には他車両がフロア2の後部を変形させつつ前方へと侵入し、上側後部フロアクロスメンバ17に達する。フロア2との間で閉断面を形成する上側後部フロアクロスメンバ17はある程度の強度を有するため、他車両から激しい入力を受けても前方への変形、例えば前方への屈曲変形等がより抑制される。従って、上側後部フロアクロスメンバ17よりも前側に配設されている各電源ユニット20の破損を未然に防止できると共に、例えばジャンクションボックス21の端子台21aに接続されているモータ側電力ケーブル42の断線等も未然に防止することができる。
【0042】
また、このような上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17に対する位置関係と同じく、全ての電源ユニット20は、前後方向において下側前部フロアクロスメンバ18と下側後部フロアクロスメンバ19との間に配設されている。詳しくは、全ての電源ユニット20の前面が下側前部フロアクロスメンバ18の後縁よりも後方に位置し、全ての電源ユニット20の後面が下側後部フロアクロスメンバ19の前縁よりも前方に位置している。
【0043】
しかも、上側前部フロアクロスメンバ16と下側前部フロアクロスメンバ18とは、本体16a,18a及びフランジ16b,16c,18b,18cの全ての領域が前後方向で互いに重ねられ、上側後部フロアクロスメンバ17と下側後部フロアクロスメンバ19についても、互いのフランジ1c,19bが前後方向に重ねられ、それぞれ左右方向に延びる強固な構造体として一体化されている。
【0044】
このように上側後部及び下側後部フロアクロスメンバ17,19が互いに一体化することで強度が高められ、後面衝突時の他車両からの入力による変形をより抑制して電源ユニット20等の一層の保護を達成することができる。
加えて、上側後部及び下側後部フロアクロスメンバ17,19の左右両端は、左右のサイドメンバ3l,3rを介して上側前部及び下側前部フロアクロスメンバ16,18の左右両端に連結され、フロア2上に平面視で略四角枠状をなす強固な構造体を形作っている。このため、後面衝突時の他車両からの入力により上側後部及び下側後部フロアクロスメンバ17,19が変形する際には、これらの左右のサイドメンバ3l,3rと上側前部及び下側前部フロアクロスメンバ16,18とを変形させる必要が生じる。換言すると、左右のサイドメンバ3l,3rと上側前部及び下側前部フロアクロスメンバ16,18とが上側後部及び下側後部フロアクロスメンバ17,19の変形を抑制する機能を果たし、これにより電源ユニット20等の一層の保護を達成することができる。
【0045】
加えて、上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17は、十分な強度を有する第1及び第2ユニットカバー31,32を介して互いに連結されている。従って、これらのユニットカバー31,32も後部のフロアクロスメンバ17,19の変形を抑制する機能を果たし、この点も電源ユニット20等の保護に貢献する。
一方、上側前部及び下側前部フロアクロスメンバ16,18の左右両端は、左右のサイドメンバ3l,3r上の前位置の固定点5fl,5frを介してリヤサスクロスメンバ4の前部左右に連結されている。同様に、上側後部及び下側後部フロアクロスメンバ17,19の左右両端は、左右のサイドメンバ3l,3r上の後位置の固定点5rl,5rrを介してリヤサスクロスメンバ4の後部左右に連結されている。結果として、各フロアクロスメンバ16~19及び左右のサイドメンバ3l,3rにより形作られた略四角状をなす強固な構造体の下側に、各固定点5fl,5fr,5rl,5rrを介して同じく強固なリヤサスクロスメンバ4が一体化されている。このため後面衝突時には、高い強度を有するリヤサスクロスメンバ4が他車両の前方への進入を防ぐだけでなく、各固定点5fl,5fr,5rl,5rrを介して上側後部及び下側後部フロアクロスメンバ17,19の左右両端の前方への位置変位、ひいては後部のフロアクロスメンバ17,19の前方への変形を抑制する機能を果たし、この点も電源ユニット20等の保護に貢献する。
【0046】
また、図1,3に示すように本実施形態では、電源ユニット20と同じく駆動ユニット8についても、前後方向において前部のフロアクロスメンバ16,18と後部のフロアクロスメンバ17,19との間に配設されており、さらに駆動ユニット8は、下側に位置するリヤサスクロスメンバ4の輪郭線(図1に二点鎖線で示す)よりも内側に配設されている。従って、他車両の後面衝突時には、重複する説明はしないが、フロアクロスメンバ16~19、左右のサイドメンバ3l,3r及びリヤサスクロスメンバ4により電源ユニット20の場合と同様の保護作用が奏され、モータ側電力ケーブル42を含めた駆動ユニット8の破損を未然に防止することができる。
【0047】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではハイブリッド車両1における電源ユニット20の配置構造として具体化したが、電源ユニット20を備えた電動車両であれば任意に変更可能であり、例えば走行用動力源としてモータを搭載した電気自動車に適用してもよい。
また上記実施形態では、リヤサスクロスメンバ4上に駆動ユニットとして走行用モータ9、インバータ10及びトランスアクスル11を配設し、フロア2の上側に電源ユニット20としてジャンクションボックス21、充電器22及びDC-ACインバータ23を配設したが、それらの種別や配置はこれに限るものではない。例えば、走行用モータ9、インバータ10及びトランスアクスル11の配列を変更したり、或いは、インバータ10を電源ユニット20の1つとしてフロア2の上側に配設したりしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電動車両
2 フロア
3l,3r サイドメンバ
4 リヤサスクロスメンバ
5fl,5fr,5rl,5rr 固定点
7 後輪
8 駆動ユニット
9 走行用モータ
14 走行用バッテリ
16 上側前部フロアクロスメンバ
17 上側後部フロアクロスメンバ
18 下側前部フロアクロスメンバ
19 下側後部フロアクロスメンバ
20 電源ユニット
21 ジャンクションボックス
22 充電器(複数の機器)
23 DC-ACインバータ(複数の機器)
31,32 ユニットカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7