(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】炭素ベース固体酸触媒及びその製造方法、並びにそれをバイオマス水熱転換に使用する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/08 20060101AFI20230830BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230830BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230830BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20230830BHJP
B01J 27/053 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B01J37/08
B01J37/04 102
B01J37/02 101Z
B01J37/06
B01J27/053 M
(21)【出願番号】P 2022514170
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2021094791
(87)【国際公開番号】W WO2022134443
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】202011536292.2
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 樹栄
(72)【発明者】
【氏名】熊 珊珊
(72)【発明者】
【氏名】徐 昊
(72)【発明者】
【氏名】朱 玲君
(72)【発明者】
【氏名】李 允超
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144741(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106824226(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103691483(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107501215(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102614917(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペクチンを炭素ベース前駆体として、ペクチンと芳香環マトリックスのイオン樹脂とを媒体中で混合した後に乾燥し、乾燥で得られたものを熱分解し、濃硫酸を用いてスルホン化処理を行い、炭素ベース固体酸触媒を得ることを含む、炭素ベース固体酸触媒の製造方法であって、
S1.ペクチンを水と混合し、さらに硫酸を添加して活性化させ、その後、混合物を芳香環マトリックスのイオン樹脂に入れる工程、
S2.工程S1の生成物を乾燥し、得られた物質を粉末に粉砕し、乾燥不活性ガス中で熱分解する工程、
S3.工程S2の熱分解後に得られた固体を濃硫酸でスルホン化処理する工程、
S4.工程S3の生成物を水で希釈した後にろ過し、ろ過後の濾物を、洗浄水から硫酸イオンが検出されな
くなるまで水で洗浄する工程、及び
S5.ろ過して得られた固体を乾燥する工程、
を含むことを特徴とする、
炭素ベース固体酸触媒の製造方法。
【請求項2】
ペクチンを炭素ベース前駆体として、ペクチンと芳香環マトリックスのイオン樹脂とを媒体中で混合した後に乾燥し、乾燥で得られたものを熱分解し、濃硫酸を用いてスルホン化処理を行い、炭素ベース固体酸触媒を得ることを含む、炭素ベース固体酸触媒の製造方法であって、
S1.ペクチンと水とを質量比1:4~10で混合し、さらに、硫酸を添加して活性化させ、その後、混合物を芳香環マトリックスのイオン樹脂に入れて、イオン樹脂とペクチンとの質量比が1:0.5~3である工程、
S2.工程S1の生成物を乾燥し、得られた黒色物質を粉末に粉砕し、乾燥不活性ガス中で0.5~3h熱分解する工程、
S3.工程S2の熱分解後に得られた固体を、20~120℃の条件下、濃硫酸でスルホン化処理する工程、
S4.工程S3の生成物を水で希釈した後にろ過し、ろ過後の濾物を、洗浄水から硫酸イオンが検出されな
くなるまで水で洗浄する工程、及び
S5.ろ過して得られた固体をオーブンで乾燥する工程、
を含むことを特徴とする、
炭素ベース固体酸触媒の製造方法。
【請求項3】
工程S1において、前記ペクチンは、ミカン皮ペクチン、ザボン皮ペクチン、レモン皮ペクチン、リンゴペクチン、バナナ皮ペクチンのうちの1種又は2種以上を含むことを特徴とする、
請求項
2に記載の炭素ベース固体酸触媒の製造方法。
【請求項4】
工程S2において、前記不活性ガスが窒素ガスであり、熱分解の温度が300~800℃、時間が1~2hであることを特徴とする、
請求項
2に記載の炭素ベース固体酸触媒の製造方法。
【請求項5】
工程S3において、工程S2の熱分解後に得られた固体と濃硫酸との質量比が1:3~8、スルホン化温度が80℃、スルホン化時間が10~48hであることを特徴とする、
請求項
2に記載の炭素ベース固体酸触媒の製造方法。
【請求項6】
前記芳香環マトリックスのイオン樹脂は、スルホン酸型スチレン-ジビニルベンゼンカチオン交換樹脂及びクロロメチル化ポリスチレン樹脂のうちの1種又は2種以上を含むことを特徴とする、
請求項
1に記載の炭素ベース固体酸触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しくて省エネルギーの化工材料を製造する技術分野に関し、主にペクチンの豊富なラジカル基を利用して、普通のペクチンを前駆体として炭素ベース固体酸触媒を製造し、芳香環マトリックスのイオン樹脂を添加して触媒効果を強化し、製造した触媒が普通のバイオマスの水熱解重合触媒反応に有効であり、価値のあるプラットホーム化合物を効率よく生産する目的を実現することに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的なエネルギー不足及び環境汚染の問題に対して、人類の環境保護意識及び省エネルギーの意識が徐々に高まっているので、化学工業における汚染問題がますます注目されている。中国の「社会にエコロジカルな光及び熱を供給し、地球の澄んだ水と青い空を取り戻す」という環境保護、省エネルギーの呼びかけに応えて、より多くの科学研究者は、環境に優しくて省エネルギーのアトムエコノミーの発展に力を注ぎ、ゼロエミッションの反応プロセスを提唱し、資源が豊かで無毒無害の反応原料の使用を推薦し、環境に優しくて高価値の製品を追求する。
【0003】
化学工業において、固体触媒が徐々に従来の均一系触媒に取って代わっている。均一系触媒と比べて、固体触媒が反応原料及び生成物から分離しやすく、回収及び循環使用が便利であり、同時に、不均一系触媒は、副生成物が少なく、コストが低いなどのメリットをさらに有するので、エネルギー資源開発及び環境保護等に対して重要な意義を有する。従来、幾つかの重要な反応過程、例えば、加水分解、合成、エステル化、脱水素及びアルキル化反応は、いずれもエコロジカルで高効率な酸性触媒の開発に力を注いでいる。ただし、Bronsted酸(塩酸、硫酸、酢酸、重炭酸、アンモニウムイオン)及びLewis酸(塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素、五塩化ニオブ及びランタン系元素のトリフラート)触媒は、分子又はイオンの形で触媒過程に参与するので、低い反応温度で優れた酸性触媒性能を示すことができる。従来の化学プロセスにおいて、通常、液状の酸性触媒が用いられ、膨大な数の活性点を有するが、装置への腐食がひどく、かつ、液状触媒の回収、再利用が困難であり、さらに、副生成物が多く、製品を分離しにくい等の問題が存在する。従って、担体と活性基の組み合わせにより、固体触媒にBronsted酸または(および)Lewis酸の酸性を有させ、現在の化学工業で使用されていて、従来の液状触媒に取って代わっていく固体酸触媒を形成した。
【0004】
固体酸触媒が発展されているが、幾つかの影響要素に制限されているため、大規模の工業化応用が難しい。例えば、担持型金属酸化物触媒は、通常、水素添加、脱水素、水素化分解、合成、加水分解、カルボニル化など、様々な重要な化工分野に用いられる。しかし、金属触媒、特に貴金属触媒原料は、高価であり、製造コストが高く、大規模の工業化応用が制限されている。また、反応原料の不純物及び固体副生成物が触媒表面に付着しやすく、触媒が不活性化しやすく、かつ、粉末が微細な触媒は、回収過程において損失しやすく、触媒のリサイクル性能が低下してしまい、また、活性基が人為的に担持され、活性点の数が限られているので、活性が制限されている。金属触媒の高コスト、及び粉末が微細な触媒の損失現象を克服するために、近年、コストを低下させ、酸性触媒の性能を向上させるために、炭素ベース固体酸触媒が迅速に発展され、炭素ベース触媒とは、芳香族炭化水素又は糖類化合物を不完全に炭酸化し、安定的な多環芳香族炭化水素炭素を形成し、さらに、その後のスルホン化により酸性活性点に担持させて得られるものであり、ここで、スルホン酸イオンは、共有結合により多環芳香族炭化水素炭素と結合し、硫酸に類似する高強度の酸性を実現するのみならず、スルホン酸基のグラフトをより安定的にし、環境に優しくて省エネルギーの固体スルホン酸材料であり、応用潜在性が非常に大きい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術における課題を解決し、炭素ベース固体酸触媒及びその製造方法並びにそれをバイオマス水熱転換に使用する方法を提供し、活性基が多いペクチンを炭素ベース前駆体として、芳香環構造のイオン樹脂で性能を強化した炭素ベース固体酸を触媒とし、温和条件下、バイオマスを水熱解重合触媒して高価値なプラットホーム化合物に転換することにある。
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は、ペクチンを炭素ベース前駆体として、ペクチンと芳香環マトリックスのイオン樹脂とを媒体中で混合した後に乾燥し、乾燥で得られたものを熱分解し、濃硫酸を用いてスルホン化処理を行い、炭素ベース固体酸触媒を得る炭素ベース固体酸触媒の製造方法を提供する。
【0007】
好ましくは、具体的な製造方法は下記の工程S1~S5を含む。
S1.ペクチンを水と混合し、さらに硫酸を添加して活性化させ、その後、混合物を芳香環マトリックスのイオン樹脂に入れる。
S2.工程S1の生成物を乾燥し、得られた物質を粉末に粉砕し、乾燥不活性ガス中で熱分解する。
S3.工程S2の熱分解後に得られた固体を濃硫酸でスルホン化処理する。
S4.工程S3の生成物を水で希釈した後にろ過し、ろ過後の濾物を、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで水で洗浄する。
S5.ろ過して得られた固体を乾燥する。
【0008】
好ましくは、具体的な製造方法は、下記の工程S1~S5を含む。
S1.ペクチンと水とを質量比1:4~10で混合し、さらに、硫酸を添加して活性化させ、その後、混合物を芳香環マトリックスのイオン樹脂に入れて、イオン樹脂とペクチンとの質量比が1:0.5~3である。
S2.工程S1の生成物を乾燥し、得られた黒色物質を粉末に粉砕し、乾燥不活性ガス中で0.5~3h熱分解する。
S3.工程S2の熱分解後に得られた固体を、20~120℃の条件下、濃硫酸でスルホン化処理する。
S4.工程S3の生成物を水で希釈した後にろ過し、ろ過後の濾物を、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで水で洗浄する。
S5.ろ過して得られた固体をオーブンで乾燥する。
【0009】
好ましくは、工程S1において、前記硫酸は、98質量%硫酸であり、硫酸と水との体積比が1:30である。本発明は、ペクチンについて特に限定されず、市販の乾燥ペクチン及び新たに製造した水分を含有する湿潤ペクチンのいずれであってもよく、好ましくは、前記ペクチンは、果物ペクチンであり、ミカン皮ペクチン、ザボン皮ペクチン、レモン皮ペクチン、リンゴペクチン、バナナ皮ペクチンのうちの1種又は2種以上を含む。
【0010】
好ましくは、工程S2において、工程S1の生成物は、110~120℃で一定の重量となるまで乾燥され、前記熱分解は、水平管炉中で行われ、不活性ガスが窒素ガスであり、熱分解の温度が300~800℃、時間が1~2hであり、好ましくは、熱分解の温度が300℃で、時間が1hである。
【0011】
好ましくは、工程S3において、工程S2の熱分解後に得られた固体と濃硫酸との質量比が1:3~8であり、濃硫酸を用いて磁気撹拌機能付きの油浴鍋中でスルホン化処理し、スルホン化温度が80℃、スルホン化時間が10~48hであり(好ましくは24hである)、前記濃硫酸が98質量%硫酸である。
【0012】
好ましくは、前記芳香環マトリックスのイオン樹脂は、スルホン酸型スチレン-ジビニルベンゼンカチオン交換樹脂及びクロロメチル化ポリスチレン樹脂のうちの1種又は2種以上を含み、スルホン酸型スチレン-ジビニルベンゼンカチオン交換樹脂は、Amberlyst 15型及び732型強酸性スチレンカチオン交換樹脂であることが好ましい。クロロメチル化ポリスチレン樹脂は、Merrifieldポリペプチド樹脂であることが好ましい。
【0013】
好ましくは、工程S5においてオーブン中で乾燥を行い、温度は80℃であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記製造方法を採用して製造された炭素ベース固体酸触媒をさらに提供する。当該触媒は、ペレットがはっきりとしており、損失しにくく、回収に便利である。
【0015】
本発明は、前記炭素ベース固体酸触媒を触媒として用い、バイオマス原料又は糖類化合物とを溶媒系内で混合し、水熱転換してフラン類プラットホーム化合物を得る、上記製造方法を採用して得られた炭素ベース固体酸触媒をバイオマス水熱転換に使用する方法をさらに提供する。
【0016】
好ましくは、炭素ベース固体酸触媒とバイオマス原料とを溶媒系内で混合して水熱転換を行い、ただし、炭素ベース固体酸触媒とバイオマス原料との質量比が1:1~10であり、反応温度が120~190℃、時間が0.5~3hであり、混合後の原料の濃度が0.012~0.32g/mlであり、前記溶媒系が有機溶媒、水又は両者の混合物である。
【0017】
好ましくは、前記有機溶媒は、γ-バレロラタトン(GVL)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、イソプロピルアルコール、イソブチル(メチル)ケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)のうちの1種又は2種以上を含む。
【0018】
好ましくは、水と有機溶媒の二相溶媒系を使用する場合、塩化物塩を添加することにより生成物収率をさらに向上させ、前記塩化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化銅、塩化アルミニウムのうちの1種又は2種以上を含む。
【0019】
好ましくは、前記バイオマス原料は、グルコース、キシロース、アラビノース、セロビオース、イヌリン、コーンスターチ、果皮、穀稈のうちの1種又は2種以上を含み、前記糖類化合物は、グルコース、キシロース、二糖類、多糖類のうちの1種又は2種以上を含む。
【0020】
好ましくは、前記フラン類プラットホーム化合物がフルフラール又は5-ヒドロキシメチルフルフラールである。
【0021】
本発明の目的は、活性基が多くてそれ自体が弱酸性を有するペクチンを前駆体として、芳香環構造のイオン樹脂により性能を強化した炭素ベース固体酸を触媒とする炭素ベース固体酸触媒の製造方法を提供することにある。さらに、従来の炭素ベース触媒が、バイオマスの水熱解重合触媒反応における、担体活性が低く、酸性活性基のグラフト数が限られ、触媒活性をさらに最適化する必要がある等の問題を含む不足に対して、有機溶媒を主とした溶媒系とし、製造した炭素ベース固体酸触媒を用いて温和条件下でバイオマスの水熱解重合触媒を高価値なプラットホーム化合物に転換することを実現する。ここで、ペクチンは、大量のトリガラクツロン酸を含有し、かなりのカルボキシ基の数を有し、それ自体が弱酸性を有し、バイオマスの水熱解重合において強酸性・弱酸性の活性点がそれぞれ重要な役割を果たすので、ペクチンを酸性触媒とする最大のメリットの1つは、それ自体の弱酸性の利用である。
【0022】
本発明は下記の有益な効果を有する。
1.85モル%と高いフルフラール収率を実現することができる。
2.複数の反応パラメータに適用可能であり、140~180℃で70モル%のフルフラール収率を実現することができる。
3.触媒回収率が90%に近い。
【0023】
本発明は以下のメリットを有する。
1.触媒は、ペレットがはっきりとしており、損失しにくく、回収に便利である。
2.触媒が水相においても高い性能を示すことができ、塩化ナトリウムを添加することにより水相と有機相とを分離し、触媒性能を向上させることができるとともに、水相と塩化ナトリウムを循環利用することができる。
3.炭酸化温度が相対的に低く、製造過程がエコロジカルで環境に優しい。
4.弱酸性を有して活性基が豊富なペクチンを前駆体として用い、触媒担体を製造することにより、有効の活性基グラフトを実現できるのみならず、担体自体がさらに水熱解重合過程に弱酸性を提供することができる。
5.製造された触媒は、五炭糖及び六炭糖の水熱転換を同時に実現することができ、高価値なプラットホーム化合物を製造する目的を実現することができる。
6.生産プロセスが簡単であり、大規模の生産に便利である。
【0024】
本発明の特徴及び利点を実施例と図面との組み合わせにより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1で製造した炭素ベース固体酸触媒の30000倍拡大した電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1で製造した炭素ベース固体酸触媒の10000倍拡大した電子顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、反応後の二相溶媒系であり、有機相がγ-バレロラタトンであり、分層を促進するために水相に0.16gの塩化ナトリウムを添加しており、有機:水=4:1(ml)である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例1で製造した炭素ベース固体酸触媒が赤外吸収スペクトルである。
【
図5】
図5は、比較例4の触媒の赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、活性基の数が多いペクチンを炭素ベース前駆体として利用し、同時に芳香環状構造をマトリックスとしたイオン樹脂を添加して液相の膨張を促進させ、固体酸表面の酸点の利用可能性を向上させ、300~800℃の温和条件で嫌気で炭酸化し、研磨後、濃硫酸を用いてスルホン化することにより、適応性が強く、回収性能が良好な高活性炭素ベース固体酸触媒を得ることができる。従来の特許技術及び文献の報告から見れば、本発明に類似する技術において同一炭素源を用いて芳香環マトリックスイオン樹脂とペクチン炭素ベース担体との組み合わせを用いた炭素ベース固体酸触媒製造技術がまだない。本発明で製造した触媒効果が明らかに向上し、様々な反応コンディションにおいても良い触媒性能を示すことができ、触媒がコークス化しにくく、ペレットがはっきりとしており、回収再利用に便利であり、具体的な効果については、実施例において詳しく説明する。
【0027】
本発明は、ペクチンを炭素ベース前駆体として、ペクチンと芳香環マトリックスのイオン樹脂とを媒体中で混合した後に乾燥し、乾燥で得られたものを熱分解し、濃硫酸を用いてスルホン化処理を行い、炭素ベース固体酸触媒を得る、炭素ベース固体酸触媒の製造方法を提供する。下記の工程を含む。
S1.ペクチンを水と混合し、さらに硫酸を添加して活性化させ、その後、混合物を芳香環マトリックスのイオン樹脂に入れる。
S2.工程S1の生成物を乾燥し、得られた物質を粉末に粉砕し、乾燥不活性ガス中で熱分解する。
S3.工程S2の熱分解後に得られた固体を濃硫酸でスルホン化処理する。
S4.工程S3の生成物を水で希釈した後にろ過し、ろ過後の濾物を、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで水で洗浄する。
S5.ろ過して得られた固体を乾燥する。
【0028】
さらに、具体的な製造方法は、下記の工程を含む。
S1.ペクチンと水とを質量比1:4~10で混合し、さらに、硫酸を添加して活性化させ、その後、混合物を芳香環マトリックスのイオン樹脂に入れて、イオン樹脂とペクチンとの質量比が1:0.5~3である。前記硫酸が98質量%硫酸であり、前記ペクチンが果物ペクチンであり、ミカン皮ペクチン、ザボン皮ペクチン、レモン皮ペクチン、リンゴペクチン、バナナ皮ペクチンのうちの1種又は2種以上を含む。
S2.工程S1の生成物を110~120℃で一定の重量となるまで乾燥し、得られた黒色物質を粉末に粉砕し、乾燥不活性ガス中で0.5~3h熱分解し、前記熱分解が水平管炉中で行われ、熱分解の温度が300~800℃である。
S3.工程S2の熱分解後に得られた固体を、20~120℃の条件下、濃硫酸でスルホン化処理する。
S4.工程S3の生成物を水で希釈した後にろ過し、ろ過後の濾物を、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで水で洗浄する。
S5.ろ過して得られた固体をオーブンで乾燥する。
【0029】
さらに、工程S2において、不活性ガスが窒素ガスであり、熱分解の温度が300℃、時間が1hである。
【0030】
さらに、工程S3において、工程S2の熱分解後に得られた固体と濃硫酸との質量比が1:3~8であり、濃硫酸を用いて磁気撹拌機能付きの油浴鍋中でスルホン化処理し、スルホン化温度が80℃、スルホン化時間が10~48hであり、前記濃硫酸が98質量%硫酸である。
【0031】
さらに、前記芳香環マトリックスのイオン樹脂は、スルホン酸型スチレン-ジビニルベンゼンカチオン交換樹脂及びクロロメチル化ポリスチレン樹脂のうちの1種又は2種以上を含む。
【0032】
また、本発明は、上記製造方法を採用して製造された炭素ベース固体酸触媒をさらに提供する。
【0033】
本発明は、前記炭素ベース固体酸触媒を触媒として用い、バイオマス原料又は糖類化合物とを溶媒系内で混合し、水熱転換してフラン類プラットホーム化合物を得る、上記製造方法を採用して得られた炭素ベース固体酸触媒をバイオマス水熱転換に使用する方法をさらに提供する。
【0034】
具体的な方法は、炭素ベース固体酸触媒とバイオマス原料とを溶媒系内で混合して水熱転換を行い、ただし、炭素ベース固体酸触媒とバイオマス原料との質量比が1:1~10であり、反応温度が120~190℃、時間が0.5~3hであり、混合後の原料の濃度が0.012~0.32g/mlであり、前記溶媒系が有機溶媒、水又は両者の混合物である。ただし、前記有機溶媒は、γ-バレロラタトン(GVL)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、イソプロピルアルコール、イソブチル(メチル)ケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)のうちの1種又は2種以上を含む。前記バイオマス原料は、グルコース、キシロース、アラビノース、セロビオース、イヌリン、コーンスターチ、果皮、穀稈のうちの1種又は2種以上を含み、前記糖類化合物は、グルコース、キシロース、二糖類、多糖類のうちの1種又は2種以上を含む。前記フラン類プラットホーム化合物がフルフラール又は5-ヒドロキシメチルフルフラールである。
【0035】
また、さらに、水と有機溶媒の二相溶媒系を使用する場合、塩化物塩を添加することにより生成物収率をさらに向上させ、前記塩化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化銅、塩化アルミニウムのうちの1種又は2種以上を含む。
【0036】
本発明の内容をより明瞭に説明するために、以下、実施例を挙げて詳しく説明するが、本発明は、挙げられた実施例に制限されず、本発明の保護範囲がこれにより制限されない。
【0037】
実施例1:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、140~180℃の反応温度下、フルフラール収率がいずれも71モル%よりも高く、最高収率が85モル%に達することができる。
【0038】
図1、
図2の電子顕微鏡写真を参照して、本発明で製造した触媒は、チャンネル構造が発達しており、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔構造が大量に存在し、活性基のグラフト及び反応物の転換に非常に有利であり、かつ、構造単位がはっきりとして整っているため、触媒酸性の調整に有利であることがわかったので、ペクチンを炭素ベース担体とした場合、合理的なチャンネル構造を形成しやすいことが実証され、固体酸炭素ベース担体としてのメリット及び応用潜在性が実証されている。
【0039】
図4を参照して、赤外吸収スペクトルにおいて、触媒に-OHを大量に含有することが示されており、これらのヒドロキシ基は、主にペクチン表面の大量の活性基に由来し、かつ、弱酸性基-COOHが大量に存在し、また、触媒もかなりの数のO=S=O基及び-SO
3H基をグラフトし、ペクチンを固体酸炭素ベース担体とした場合、それ自体に存在する弱酸性及び大量の活性基が酸性触媒の製造と、酸点のグラフト及び合理的な分布に非常に有利であることが実証されている。
【0040】
【0041】
表1は、本発明における実施例1で製造した触媒の酸度測定結果、及び単純なペクチンの酸度測定であり、その結果、本発明で製造した触媒は合理的な酸度を有することが実証されているのみならず、ペクチンそれ自体が一定の弱酸性を有し、炭素ベース固体酸の製造に有利であることも実証されている。
【0042】
実施例2:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて100℃の条件下で24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、130℃の反応温度下で、フルフラール収率が57.6モル%であった。
【0043】
実施例3:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、450℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、190℃の反応温度下で、フルフラール収率が69.8モル%であった。
【0044】
実施例4:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、800℃の乾燥窒素ガス下、水平管炉中で0.5h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース、2mlのγ-バレロラタトン、及び3mlの脱イオン水を添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が52.9モル%であった。
【0045】
実施例5:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で3h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース、4mlのγ-バレロラタトン及び1mlの脱イオン水を添加し、さらに0.16gのNaClを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が70.6モル%であった。
【0046】
実施例6:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、36hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのジメチルスルフォキサイドを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が74.3モル%であった。
【0047】
実施例7:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で2h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.16gのキシロース及び5mlのジメチルスルフォキサイドを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率がいずれも69.2モル%であった。
【0048】
実施例8:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、20℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.10gのアラビノース及び5mlのジメチルスルフォキサイドを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率がいずれも32.09モル%であった。
【0049】
実施例9:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに、1mlの濃硫酸(98%)を添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が77.6モル%であった。
【0050】
実施例10:
2gの乾燥リンゴペクチンと20mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した4gの732強酸性スチレンカチオン交換樹脂中に徐々に添加した。110~120℃で24h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのアラビノース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で2h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が17.1モル%であった。
【0051】
実施例11:
2gの乾燥リンゴペクチンと15mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した1gのAmberlystイオン樹脂中に徐々に添加した。110~120℃で24h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、10hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのグルコース、4mlのテトラヒドロフラン及び1mlの脱イオン水を添加し、さらに0.16gのNaClを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、160℃の反応温度下、5-ヒドロキシメチルフルフラール収率が33.1モル%であった。
【0052】
実施例12:
2gの乾燥ミカンペクチンと20mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gの732強酸性スチレンカチオン交換樹脂中に徐々に添加した。110~120℃で24h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、90℃の条件下、48hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.15gのキシロース及び5mlのジメチルスルフォキサイドを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が48.8モル%であった。
【0053】
実施例13:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/3gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.01g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が68.5モル%であった。
【0054】
実施例14:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下、0.5h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が70.6モル%であった。
【0055】
実施例15:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース、4mlのγ-バレロラタトン、及び1mlの脱イオン水を添加し、さらに0.16gのNaClを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が68.7モル%であった。
【0056】
実施例16:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下、3h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が65.5モル%であった。
【0057】
実施例17:
8gの乾燥ミカン皮ペクチンと30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース、4mlのγ-バレロラタトン、及び1mlの脱イオン水を添加し、さらに0.08gのNaClを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、170℃の反応温度下、フルフラール収率が66.7モル%であった。
【0058】
実施例18:
新鮮なミカン皮を20g(乾燥品であれば8g)秤量し、清水で洗浄した後、250mlビーカーに入れ、120mlの水を添加し、90℃に加熱して5~10min温度維持し、酵素を不活性化させた。水で洗い流した後にサイズが3~5mmのペレットに切り出し、50℃程度の温水で、水が無色となり、果皮に異臭がなくなるまですすぎ洗いした。1回のすすぎ洗い当たりに果皮をナイロン布で絞り、さらに次のすすぎ洗いを行う。処理した果皮ペレットをビーカーに入れて、0.2mol/の塩酸を、果皮を浸漬するとなるまで添加し、溶液のpHを2.0~2.5に調節した。90℃に加熱し、定温水浴中で40min温度維持し、温度維持期間において撹拌し続き、熱いうちに、ナイロン布(100メッシュ)を敷いたブフナー漏斗で吸引ろ過し、濾液を収集した。濾液に0.5%~1%の活性炭を添加し、80℃に加熱し、20min脱色し、熱いうちに吸引ろ過した(例えば、ミカン皮を清潔にすすぎ洗いし、濾液が澄むとなると、脱色を停止する)。濾液が冷却した後、6mol/Lアンモニウム水溶液でpH3~4となるように調節し、撹拌しながら95%エタノール溶液を添加し、エタノールの添加量は、元の濾液の体積の1.5倍であった(その中のエタノールを50質量%~60質量%とする)。エタノールの添加過程において、ペクチン状物質の析出が見られ、20min静置した後、ナイロン布でろ過し、濾物を100mlビーカーに移行し、30mlの無水エタノールを添加して洗浄し、さらにナイロン布でろ過し、押し出しにより湿潤ペクチンを得た。得られた9gの湿潤ペクチン(8gの乾燥ペクチンを用いてもよく、乾燥ペクチンの製造方法は、湿潤ペクチンを表面皿に広げ、60~70℃のオーブンで乾燥し、オーブンで乾燥したペクチンを粉砕してふるいにかけ、乾燥ペクチンを作製する。)と30mlの脱イオン水とを混合し、さらに1mlの濃硫酸(98%)を添加し、その後、混合物を、予め乾燥した8gのAmberlyst 15イオン樹脂に徐々に添加した。110~120℃で48h乾燥し、得られた黒色物質を、300℃、乾燥窒素ガス下、水平管炉中で1h熱分解した。濃硫酸(1gの固体/5gのH2SO4)を用いて、80℃の条件下、24hのスルホン化処理を行い、加熱装置が磁気撹拌機能付きの油浴鍋である。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。得られた黒色固体を80℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた黒色固体を0.05g取って10mlの試験管に入れ、0.1gのキシロース及び5mlのγ-バレロラタトンを添加し、マイクロ波加熱条件下で1h反応させ、在180℃の反応温度下、フルフラール収率が71モル%であった。
【0059】
比較例1
文献(Antonyraj C A, Haridas A.Catalysis Communications, 2018, 104: 101-105.)に報告されているように、粗製リグニンを用いて縦型管炉中で、窒素ガス雰囲気下、450℃で1h熱分解した。得られた熱分解固体生成物を3g取って150ml丸底フラスコに入れ、100mlの濃硫酸(98%)を添加し、60℃の油浴鍋中で18h磁気撹拌した。大量の脱イオン水で希釈した後、得られた黒色物質をろ過により収集し、洗浄水から硫酸イオンが検出されないとなるまで脱イオン水で複数回洗浄した。さらに、100℃のオーブン中で一定の重量となるまで乾燥した。12mlの6.67wt.%キシロース溶液(添加したキシロースの質量が0.08gであることに該当)と、28mlのMIBKとを取って、0.2gの上記得られた触媒と混合し、175℃で3h反応させ、得られたフルフラール収率が58.8モル%であった。
【0060】
比較例2
文献(王莉、張朱.広州化工.2017,45(18):47-48.)および文献(周文俊、周宇、張霞忠、曽杉.高等学校化学学報.2016,37(4):669-673.)によれば、両者はいずれもペクチンを担体として触媒を製造し、浸漬法によりペクチンを利用して活性基を吸着し、本発明においてペクチンを炭素ベース前駆体として応用する方法とは全く異なり、かつ、ペクチンは、その反応自体に対して何ら触媒効果もなく、一方、本発明ではペクチンそれ自体が有する弱酸性を利用して、触媒系の酸性強度を強化し、触媒の強弱酸点分布を最適化した。また、比較例の文献における応用場面がそれぞれベンズアルデヒドの酸化により安息香酸を製造する場面、及びSuzuki反応であり、本発明で製造した触媒の適用するバイオマス水熱転換分野とは全く異なる。
【0061】
比較例3
文献(Ma Y, You S, JingB, et al.International journal of hydrogen energy.2019, 44(31):16624-16638.)および文献(Fan Y, Liu P, YangZ, et al.Electrochimica acta.2015, 163:140-148.)によれば、2件の文献には、ペクチンを炭素源として用い、電極材料を製造したが、それはペクチンがゲル化、乳化及び安定化機能を有し、シリカテンプレート及びFe種を導入して多孔質構造を形成することに有利であると報告されている。従って、本発明における応用場面とは全く異なり、かつ、本発明においてペクチンが多孔質構造を形成しやすいという物理性質、及び弱酸性と表面活性基が豊富な化学性質を十分に利用し、ペクチンに対する総合的な利用を実現し、ペクチンを利用して製造された炭素ベース固体酸触媒は、酸点分布の最適化を実現できるのみならず、十分に発達するチャンネル構造及び豊富なラジカル基を保証することができ、活性基のグラフトに非常に有利である。
【0062】
比較例4
文献(梁玉、陳志浩,梁宝炎,等.高等学校化学学報,2016,37(6):1123-1127.)は、籾殻を熱分解して炭素ベース固体酸触媒の担体として用い、キシロースの水熱転換を触媒するフルフラールを生産する。
図5は、その触媒のFTIR図であり、本発明におけるFTIR(
図4)と比べて、その活性基の特徴ピーク、特に-OHの特徴ピークが明らかに本発明のように顕著ではない。その触媒効果も本発明に劣っていることが実証され、180℃、8hにおいて最高生産量が75.8%に達し、一方、本発明で製造した触媒は、170℃、1hにおいてフルフラール収率が85%に達することができ、ペクチンを炭素ベース固体酸担体とするメリットがさらに証明されている。
【0063】
上記実施例は、本発明を制限するものではなく、本発明を説明するものであり、本発明を簡単に変換した後の方案がいずれも本発明の保護範囲に属する。