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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】コルク栓の製造方法及びコルク栓
(51)【国際特許分類】
   B65D 39/00 20060101AFI20230830BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230830BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B65D39/00 100
B05D7/00 K
B05D7/00 P
B05D1/26 Z
B05D7/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019018873
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020125140
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穴吹 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】片山 竜雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 智久
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-027841(JP,U)
【文献】特開昭61-279556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0200606(US,A1)
【文献】特開2004-231244(JP,A)
【文献】国際公開第2004/020300(WO,A1)
【文献】特開2015-178366(JP,A)
【文献】特開2017-185470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B05D 1/00- 7/26
B27K 7/00
B41M 1/40
B41F 17/00
B41F 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のコルク成形体の側面及び端面に被膜を形成するコルク栓の製造方法であって、端面にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記端面に被膜を形成し、端面に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚い、コルク栓の製造方法。
【請求項2】
前記側面の被膜を、ローラー印刷によりコーティング剤を転写して形成する、請求項1に記載のコルク栓の製造方法。
【請求項3】
円柱状のコルク成形体の端面にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記端面に被膜を形成した後、複数の前記コルク成形体を互いに接触させることによって、前記端面の前記コーティング剤を側面に付着させる、コルク栓の製造方法。
【請求項4】
バレル処理によって複数の前記コルク成形体を互いに接触させる、請求項3に記載のコルク栓の製造方法。
【請求項5】
前記成形体の端面と側面との境界に面取り部が形成されており、前記面取り部にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記面取り部に被膜を形成する、請求項1~4のいずれかに記載のコルク栓の製造方法。
【請求項6】
前記端面、前記面取り部及び前記側面に形成された被膜がエラストマーである、請求項に記載のコルク栓の製造方法。
【請求項7】
前記成形体が、コルク粒が接着剤で接着されてなるものである、請求項1~のいずれかに記載のコルク栓の製造方法。
【請求項8】
円柱状のコルク成形体の側面及び端面に被膜が形成されてなるコルク栓であって、端面に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚い、コルク栓。
【請求項9】
前記成形体の端面と側面との境界に面取り部が形成されており、端面及び面取り部に形
成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚い、請求項に記載のコルク栓。
【請求項10】
端面全体に被膜が形成されており、側面の一部に被膜が形成されていない、請求項8に記載のコルク栓。
【請求項11】
端面及び面取り部の全体に被膜が形成されており、側面の一部に被膜が形成されていない、請求項9に記載のコルク栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルク成形体の表面に被膜を形成するコルク栓の製造方法に関する。また、表面に被膜が形成されたコルク栓に関する。
【背景技術】
【0002】
コルク栓は、密封性に優れるとともに、独特の風合いを有することから、ワインボトル等の飲料容器を密封するための栓として古くから用いられてきた。コルク栓として、天然コルク栓とともに、コルク粒が接着剤で接着されてなる圧搾コルク栓も広く使用されている。圧搾コルク栓は、コスト面等に優れるとともに、天然コルク栓を製造する際に発生したスクラップを破砕したコルク粒を原料として用いることができるため環境面でも優れる。
【0003】
しかしながら、コルク栓、特に圧搾コルク栓は密封性が十分ではない場合があった。具体的には、コルク栓に内容物の液体が浸透する場合等があり、その改善が求められていた。
【0004】
コルク栓の密封性を改善させる方法として、コルク栓の表面に被膜を形成する方法が知られている。例えば、バッチ式の混合機を用いて、コルク栓とコーティング剤とを混合することにより、コルク栓の表面に被膜を形成する方法が用いられている。しかしながら、当該方法では、均一な被膜を形成したり、膜厚を制御したりすることが難しかった。そのため、得られるコルク栓の密封性が不十分である場合や抜栓をスムーズに行えない場合等があった。
【0005】
特許文献1には、コルク栓の端面及び端面近傍の側面に樹脂をハケ塗り又はスプレー塗布することにより被膜を形成する方法が記載されている。しかしながら、当該方法は、手間が掛かる上に、均一な被膜を形成することが難しかった。特許文献2には、コルク栓の表面に樹脂粉末を付着させた後、当該樹脂粉末を加熱溶融させることにより被膜を形成する方法が記載されている。しかしながら、当該方法もまた、手間が掛かる上に、樹脂粉末の飛散を防止するための設備が必要であり高コストであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-231244号公報
【文献】特開2003-112114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、端面に均一な被膜を形成することができる簡便なコルク栓の製造方法を提供することを目的とする。また、密封性が高く、なおかつ抜栓をスムーズに行うことができるコルク栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、円柱状のコルク成形体の端面にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記端面に被膜を形成する、コルク栓の製造方法を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、前記成形体の端面と側面との境界に面取り部が形成されており、前記面取り部にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記面取り部に被膜を形成することが好ましい。
【0010】
前記製造方法において、複数の前記コルク成形体を互いに接触させることによって、前記端面の前記コーティング剤を前記側面に付着させることも好ましい。このとき、バレル処理によって複数の前記コルク成形体を互いに接触させることがより好ましい。
【0011】
前記製造方法において、さらに前記コルク成形体の側面にローラー印刷によりコーティング剤を転写して前記側面に被膜を形成することも好ましい。このとき、端面又は面取り部に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚いことがより好ましい。
【0012】
前記端面、前記面取り部及び前記側面に形成された被膜がエラストマーであることが好ましい。前記成形体が、コルク粒が接着剤で接着されてなるものであることも好ましい。
【0013】
上記課題は、円柱状のコルク成形体の側面及び端面に被膜が形成されてなるコルク栓であって、端面に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚い、コルク栓を提供することによっても解決される。このとき、前記成形体の端面と側面との境界に面取り部が形成されており、端面及び面取り部に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚いことが好ましい。
【0014】
上記課題は、円柱状のコルク成形体の側面及び端面に被膜が形成されてなるコルク栓であって、端面全体に被膜が形成されており、側面の一部に被膜が形成されていない、コルク栓を提供することによっても解決される。このとき、前記成形体の端面と側面との境界に面取り部が形成されており、端面及び面取り部の全体に被膜が形成されており、側面の一部に被膜が形成されていないことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、コルク成形体に均一な被膜を形成することができるうえに、当該方法は簡便である。本発明のコルク栓は密封性が高く、なおかつ抜栓をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コルク成形体の外観の一例を示した図である。
図2】コルク成形体の回転軸を含む断面の一例を示した図である。
図3】パッドを用いてコルク成形体の端面にコーティング剤を転写する工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、円柱状のコルク成形体の端面にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記端面に被膜を形成する、コルク栓の製造方法である。
【0018】
被膜の形成に供されるコルク成形体として、天然のコルクが切削されてなるものやコルク粒が接着剤で接着されてなるもの等が用いられ、中でも後者が好ましい。コルク粒が接着剤で接着されてなるコルク栓は、コスト面や環境面で優れるが、内容物がコルク栓の内部に染み込み易く、密封性が不十分である場合があった。本発明の製造方法によれば、このようなコルク栓の端面等に均一な被膜が形成されるため、コルク栓の密封性が大幅に向上する。
【0019】
コルク粒が接着剤で接着されてなる成形体の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が採用される。
【0020】
初めにコルク粒と接着剤とを混合して混合物を得る。原料のコルク粒として、圧搾コルク栓の製造等に一般的に使用される、コルク樫の樹皮のコルク組織を破砕してなるコルク粒が用いられる。前記コルク粒は、天然コルク栓を製造する際に発生したスクラップを破砕したものであってもよい。
【0021】
前記コルク粒の平均粒径は、0.1~5mmが好ましい。このような平均粒径であるコルク粒を用いることにより、適度な硬さを有するコルク栓が得られ、オープナーの差し込みや抜栓をよりスムーズに行うことができるうえに、密封性もさらに向上する。前記平均粒径が0.1mm未満の場合、得られるコルク栓が硬くなり過ぎて、オープナーを差し込み難くなったり、栓を抜き難くなったりするおそれがある。
【0022】
前記接着剤は、特に限定されず、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0023】
前記コルク粒と前記接着剤とを混合する方法は、特に限定されず、前記コルク粒、前記接着剤、必要に応じて水や他の添加剤をミキサー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0024】
得られた混合物を成形して長尺の円柱状の中間体を得る。このときの成形方法として、前記混合物を円筒形状の型内に適量供給しながら、型内を摺動する平面状のプランジャーにより前記混合物を押圧し、円柱の回転軸方向に圧縮させて成形することが好ましい。このような中間体の製造方法として、特開昭60-224504号公報に記載された方法等が採用される。必要に応じて中間体を適当な長さに分割したり、研磨したりすることにより、コルク成形体が得られる。
【0025】
図1に、コルク成形体1の外観の一例を示し、図2に、コルク成形体の回転軸を含む断面の一例を示す。円柱状のコルク成形体1の端面2にパッド印刷によりコーティング剤を転写して端面2全体に被膜を形成する。コルク成形体1の端面2に被膜を形成することにより、得られるコルク栓の密封性が向上する。内容物と対向する端面に被膜が形成されていれば、このような効果が奏されるため、コルク成形体1の端面2、5の少なくとも一方に被膜を形成すればよい。どちらの端面2、5を内容物に向けて栓をすればよいか、コルク成形体1の形状や表示から容易に判断できない場合がある。また、被膜が形成されているかどうかを目視で判断することが難しい場合もある。したがって、コルク栓の向きに関わらず前記効果が奏される点からは、両端面2、5に被膜を形成することが好ましい。
【0026】
前記コーティング剤は、パッド印刷によりコルク成形体の端面に転写可能な液体のコーティング剤であれば特に限定されず、形成する被膜の種類に応じて選択すればよい。前記コーティング剤として、エラストマーの被膜を形成することが可能なポリマー成分を含むものが好ましい。前記ポリマー成分としては、シリコーンゴム、ポリウレタンゴムなどのゴム、又はエポキシ樹脂等の樹脂が挙げられ、なかでもシリコーンゴムが好ましい。
【0027】
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記コーティング剤がポリマー以外の成分を含有していてもよい。また、前記コーティング剤が液体媒体を含有していても構わない。当該液体媒体としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。前記コーティング剤が湿気硬化性である場合は、水以外の液体媒体が用いられる。前記コーティング剤における、前記液体媒体に対する固形分の質量比(固形分/液体媒体)は、通常0.1/99.9~50/50である。
【0028】
前記コーティング剤をパッド7に付着させた後、パッド7をコルク成形体1の端面2に押し当てることにより、端面2全体に前記コーティング剤を転写する。図3に、パッド7を用いてコルク成形体1の端面2にコーティング剤を転写する工程の模式図を示す。前記パッド7として、通常シリコーンエラストマー等のエラストマーからなる柔軟なパッド7が用いられ、中でもシリコーンエラストマーからなるパッド7が好ましい。このような柔軟なパッド7を用いて前記コーティング剤を転写することにより、コルク成形体1の端面2に前記コーティング剤を均一に転写することができるため、密封性が高いコルク栓が得られる。
【0029】
前記コルク成形体の端面に形成される被膜は、本発明の効果を阻害しないものであれば特に限定されないが、エラストマーであることが好ましい。当該エラストマーとしては、シリコーンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、エポキシ系エラストマーが好ましく、シリコーンエラストマーがより好ましい。
【0030】
前記コルク成形体の端面に形成される被膜がポリマー以外の他の成分を含有する場合、その含有量は、通常50質量%以下であり、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0031】
前記コルク成形体の端面に形成される被膜の厚みは、3~20μmが好ましい。当該厚みが3μm未満の場合、得られるコルク栓の密封性が不十分になるおそれがある。前記厚みは5μm以上がより好ましい。一方、前記厚みが20μmを超える場合、被膜が剥がれた際に、その被膜が異物となるおそれがある。前記厚みは10μm以下がより好ましい。前記コルク成形体の端面や、後述する面取り部及び側面に形成される被膜の厚みは、液体媒体を用いて前記コーティング剤中のポリマーを希釈する方法や、パッド7でコーティング剤を転写する回数などにより調整することができる。本発明において、被膜の厚みは平均厚みを意味する。前記コルク成形体の端面や後述する面取り部又は側面に被膜が形成されていない部分があるときは、当該部分の厚みをゼロとして、各部分の平均厚みを求める。
【0032】
前記コルク成形体1の端面2と側面4との境界に面取り部3が形成されており、面取り部3にパッド印刷によりコーティング剤を転写して、面取り部3に被膜を形成することが好ましい。本発明では、柔軟なパッド7を用いて前記コーティング剤を転写するため、前記コルク成形体1に面取り部3が形成されている場合、図3(右図)に示されるように、端面2と面取り部3に同時に前記コーティング剤を転写することができる。しかも、端面2と同様に、面取り部3にも均一に前記コーティング剤が転写される。コルク栓の密封性がさらに向上する点から、面取り部3全体に被膜を形成することが好ましい。面取り部3に形成される被膜の厚みは、端面2に形成される被膜と同様の範囲であることが好ましい。
【0033】
コルク栓の抜栓をスムーズに行うことができるようになる点から、本発明の製造方法において、さらにコルク成形体1の側面4に被膜を形成することが好ましい。側面4の被膜の形成に用いられるコーティング剤としては、端面2の被膜の形成に用いられるものとして上述した材料が挙げられる。側面4の被膜の形成に用いられるコーティング剤には、通常、端面2の被膜の形成に用いられるコーティング剤と同じ材料が用いられる。側面4に被膜を形成する方法としては、端面に被膜が形成された複数のコルク成形体1を互いに接触させることによって、端面2の前記コーティング剤を側面4に付着させる方法が好ましい。このような方法によって側面4に被膜を形成する場合、通常側面4には、被膜が形成される部分と被膜が形成されない部分とが混在すると考えられる。しかしながら、側面4の一部に被膜が形成されていなくても抜栓をスムーズに行うことができるようになるうえに、当該方法は、簡便であり、コスト面で優れる。コルク成形体1の面取り部3にも被膜が形成されている場合には、複数のコルク成形体1を互いに接触させることによって、端面2又は面取り部3の前記コーティング剤を側面4に付着させることが好ましい。
【0034】
複数のコルク成形体1を互いに接触させる方法としては、バレル処理等が挙げられる。ただし、バレル処理でなくても、複数のコルク成形体1を互いに接触させて、コルク成形体1の端面に形成された被膜の一部を、コルク成形体1の側面に付着させることが可能な処理であれば、その他の処理を適用してもよい。バレル処理の条件は、コルク成形体1の形状、前記コーティング剤の種類、処理するコルク成形体1の数量等に応じて適宜調整すればよいが、通常、処理数100~5000個/バッチ、回転速度10~200rpm、処理時間5~180分、処理温度5~40℃である。
【0035】
コルク成形体1の側面4に被膜を形成する方法として、前記コルク成形体1の側面4にローラー印刷によりコーティング剤を転写して前記側面4に被膜を形成する方法も好ましい。このような方法によってコルク成形体1の側面4に被膜を形成することにより、コルク栓の抜栓を極めてスムーズに行うことができるようになる。このとき、側面4全体に被膜を形成することがより好ましい。ここで、ローラー印刷とは、転写用のロールの表面にコーティング剤を付着させた後、当該ロールを用いて前記コルク成形体1の側面4に前記コーティング剤を転写する方法を意味する。前記ロールとしては、周面がシリコーンエラストマー等のエラストマーで覆われたものが好適に用いられる。柔軟なエラストマーで覆われたロールを用いて前記コーティング剤を転写することにより、コルク成形体1の側面4に前記コーティング剤を均一に転写することができる。
【0036】
前記コルク成形体1の側面及び端面に被膜が形成されており、前記端面全体に被膜が形成されており、前記側面の一部に被膜が形成されていないことが好ましい。側面の被膜と端面の被膜は、それぞれ異なる効果を有し前記側面の一部に被膜が形成されていなくても抜栓性が向上する。また、このような側面の被膜は、上述したように、前記コルク成形体を互いに接触させることによって、簡便に形成できるうえに、コーティング剤の使用量を抑えることもできるため、優れた密栓性及び抜栓性を維持しつつ、コストを低減することができる。面取り部が形成されている場合、面取り部全体に被膜が形成されていることが好ましい。
【0037】
前記コルク成形体の端面に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚いことも好ましい。側面の被膜と端面の被膜は、それぞれ異なる効果を有し、側面の被膜が比較的薄くても抜栓性が向上する。コルク成形体の端面にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記端面に被膜を形成し、さらに前記コルク成形体の側面にローラー印刷によりコーティング剤を転写して前記側面に被膜を形成する方法により、側面の膜厚と端面の膜厚を変えることができる。また、コルク成形体の端面にパッド印刷によりコーティング剤を転写して前記端面に被膜を形成し、複数の前記コルク成形体を互いに接触させることによって、前記端面の前記コーティング剤を前記側面に付着させる方法によれば、通常側面の被膜が端面の被膜より薄くなる。側面の被膜を端面の被膜より薄くして、コーティング剤の使用量を抑えることにより、優れた密栓性及び抜栓性を維持しつつ、コストを低減することができる。面取り部が形成されている場合、面取り部の被膜も端面の被膜の一部とみなして、端面の膜厚を求める。端面に形成された被膜に対する側面に形成された被膜の厚み比(側面/端面)は、0.1~0.9が好ましい。厚み比(側面/端面)は0.5以下がより好ましい。
【0038】
こうして得られる、円柱状のコルク成形体の端面に被膜が形成されてなるコルク栓は密封性が高いうえに、コスト面でも優れる。特に、本発明の円柱状のコルク成形体の側面及び端面に被膜が形成されてなるコルク栓であって、端面に形成された被膜が側面に形成された被膜よりも厚いコルク栓や、円柱状のコルク成形体の側面及び端面に被膜が形成されてなるコルク栓であって、端面全体に被膜が形成されており、側面の一部に被膜が形成されていないコルク栓によれば、抜栓もスムーズに行うこともできる。これらのコルク栓は、ワインボトルやウィスキーボトル等の飲料容器、食品容器、薬品容器等の栓として好適に用いられる。
【実施例
【0039】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0040】
[被膜厚みの測定]
コルク成形体の端面及び面取り部に形成された被膜の平均厚みを下記式により求めた。
【0041】
【数1】
【0042】
式中、Aは被膜形成後のコルク成形体の質量(g)、Bは被膜形成前のコルク成形体の質量(g)、Cは被膜の比重(g/cm)、Dは両端面及び両面取り部の合計面積(cm)である。
【0043】
実施例1
コルク粒(2号粒、粒径1~2mm)100質量部、ウレタン系接着剤15質量部を混合して混合物を得た。特開昭60-224504号公報に記載された製造方法により、得られた混合物の圧縮成形を行った。前記混合物を前記製造方法に基づき、平面を有するプランジャーで回転軸方向に圧縮することにより、棒状の中間体を得た。
【0044】
その後、棒状の中間体を直径25.5mm、長さ40mmの円柱状に分割してから、研磨することにより、端面と側面との境界に面取り部が形成された、直径23.5mm、長さ38mm、密度0.3g/cmの円柱状のコルク成形体を得た。
【0045】
液状のシリコーン系コーティング剤を用いて、以下のように、得られたコルク成形体にシリコーンエラストマーからなる被膜を形成する。まず、得られたコルク成形体をパッド印刷機にセットした。ドーム状のシリコーンエラストマーからなるパッドを前記コーティング剤に浸漬させることにより、当該パッド表面に前記コーティング剤を均一に付着させた。当該シリコーンパッドを前記コルク成形体の端面及び面取り部に押し当てて変形させることにより、コーティング剤を端面及び面取り部の全体に同時に転写した。前記コルク成形体の他方の端面及び面取り部にも上記と同様にしてコーティング剤を転写した。端面及び面取り部に形成された被膜の平均厚みは50μmであった。
【0046】
次に、バレル処理機(容量100L)を用いて、コーティング剤が転写された前記コルク成形体1000個を回転速度50rpm、温度25℃にて60分間処理した。バレル処理された前記コルク成形体を室温、相対湿度40%以上にて24時間静置してコーティング剤を硬化させることによりコルク栓を得た。
【0047】
[染色試験]
得られたコルク栓を染色液に3秒間浸漬した。表面の染色液をふき取ってから、目視でコルク栓を観察したところ、端面及び面取り部は着色しておらず、側面は不均一に着色していた。この結果から、端面及び面取り部の全体に被膜が形成されているが、側面の一部において被膜が形成されていないものと考えられる。
【0048】
[密封性の評価]
ワインボトル(開口部の内径19mm)にワインを充填した後、得られたコルク栓で栓をした。当該ワインボトルを横向きにして、ワインとコルク栓とが接触する状態で30℃(初日)から40℃(5日目)まで段階的に昇温させながら、6日間静置した。さらに、室温で1日静置した後にコルク栓を目視で観察したところ、コルク栓にワインがほとんど浸透していなかった。
【0049】
[抜栓性の評価]
ワインボトル(開口部の内径19mm)にワインを充填した後、得られたコルク栓で栓をした。前記コルク栓にオープナーを差し込んだ後、当該コルク栓を引き抜いたところ、滑らかにコルク栓を引き抜くことができた。
【0050】
実施例2
被膜の平均厚みが5μmとなるように端面及び面取り部に転写されるコーティング剤の量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして両側の端面及び面取り部にコーティング剤が転写された円柱状のコルク成形体を得た。当該コルク成形体をローラー印刷機にセットした。また、縦74mm、横40mmの長方形の凹部が設けられた版を準備し、当該版の凹部に実施例1と同様のコーティング剤を満たした。そして、周面がシリコーンエラストマーで覆われたロールを当該版の上で転がすことにより、ロール表面に前記コーティング剤を均一に付着させた。当該ロールを用いて前記コルク成形体の側面全体にコーティング剤を転写した。前記コルク成形体を室温、相対湿度40%以上にて24時間静置することにより、前記コーティング剤を硬化させた。得られたコルク栓に形成された被膜の厚みを測定したところ、端面及び面取り部に形成された被膜の平均厚みは5μm、側面に形成された被膜の平均厚みは2μmであった。なお、側面に形成された被膜の平均厚みは、Dを側面の面積とした以外は、端面及び面取り部に形成された被膜の平均厚みと同様にして求めた。
【0051】
得られたコルク栓の評価を実施例1と同様にして行った。染色試験を行ったところ、端面、面取り部及び側面のいずれも着色していなかった。この結果から、端面、面取り部及び側面の全体に被膜が形成されていると考えられる。密封性の評価を行った結果、コルク栓にワインがほとんど浸透していなかった。抜栓性の評価を行った結果、滑らかにコルク栓を引き抜くことができた。
【0052】
比較例1
被膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコルク栓の製造を行った。実施例1と同様にして被膜が形成されていないコルク栓の密封性を評価したところ、コルク栓全体にワインが浸透していた。実施例1と同様にして被膜が形成されていないコルク栓の抜栓性を評価したところ、コルク栓を引き抜く途中で引っ掛かるような感触があった。
【符号の説明】
【0053】
1 コルク成形体
2、5 端面
3、6 面取り部
4 側面
7 パッド
図1
図2
図3