(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】乾燥方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/20 20060101AFI20230830BHJP
C02F 11/13 20190101ALI20230830BHJP
F26B 3/08 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
F26B17/20 B ZAB
C02F11/13
F26B3/08
(21)【出願番号】P 2019094993
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】395004508
【氏名又は名称】株式会社永石エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】永石 恭二
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019472(JP,A)
【文献】特開2003-112032(JP,A)
【文献】特開2018-071796(JP,A)
【文献】実開昭60-023694(JP,U)
【文献】特開2010-038481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/20
C02F 11/13
F26B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をしたケーシングを横方向に配置して有し、そのケーシングの中心部分に、回転パイプを前記ケーシングと同軸芯状態で有しており、その回転パイプの外周面にその回転パイプと連通する複数の突出パイプを放射状に備え、かつ、前記した回転パイプの一方開口側は加熱源となる蒸気の導入部を備え、回転パイプの他方端には回転駆動力の伝達手段を連結してあり、前記したケーシングの上面には一箇所以上の対象物投入口を備え、前記したケーシングの側面から下方に向けた被処理物の排出口を備えている乾燥装置を使用し、前記した回転パイプの回転と同期して回転する複数の突出パイプによって、投入された対象物を攪拌して加熱し、排出口へ移送する乾燥方法であって、前記したケーシング内に予め複数個の
直径が略20mm程度のサイズとしたセラミックボールを投入し、そのセラミックボールを対象物と共に攪拌する乾燥方法において、前記
セラミックボールは、前記突出パイプの回転によって対象物と共にケーシングの
底付近で跳ね踊るように泳動させ、対象物に一層の加熱処理と破砕作用とともにケーシング内の吸湿作用も強化することを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
円筒状をしたケーシングを横方向に配置して有し、そのケーシングの中心部分に、回転パイプを前記ケーシングと同軸芯状態で有しており、その回転パイプの外周面にその回転パイプと連通する複数の突出パイプを放射状に備え、かつ、前記した回転パイプの一方開口側は加熱源となる蒸気の導入部を備え、回転パイプの他方端には回転駆動力の伝達手段を連結してあり、前記したケーシングの上面には一箇所以上の対象物投入口を備え、前記したケーシングの側面から下方に向けた被処理物の排出口を備えている乾燥装置であって、前記ケーシング内に複数個の
直径が略20mm程度のサイズとしたセラミックボールを収容してある乾燥装置において、前記
セラミックボールが前記突出パイプの回転によって対象物と共に前記ケーシングの
底付近で跳ね踊るように泳動することで対象物に一層の加熱処理と破砕作用とともにケーシング内の吸湿作用を行うためのものであることを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
前記したケーシングには粉塵除去のための集塵機が付設されていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記した放射状に備えられた突出パイプの少なくとも一つの先端にはスクレーパが備えられていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記したケーシングには水分を機外へ排出するためのキャリアエアーの吸い込み口が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記した突出パイプの先端開口は閉塞されていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記したケーシングには点検もしくはスクレーパ取り付け用の窓孔を設けてあることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記した蒸気の導入部の中心部分にはドレン排出用のパイプを備えていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記した回転パイプ及び突出パイプは鉄もしくはステンレス鋼を素材としてあることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥方法及びその装置に関し、特に、含水汚泥、スラッジ、生ゴミ、飼料等の含まれている水分を乾燥して脱水し、軽量化したり、付着粘着性を解消して、廃棄や次工程での原料もしくは製品として供給するための乾燥方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した乾燥装置として、ケーシング内に回転軸を設け、その回転軸の周囲に、対象物を乾燥させるための熱伝達手段及び対象物の攪拌のためパドルを複数個列設したり、加熱管を束として構成したもの等が知られている。
【0003】
しかし、この従来の乾燥装置にあっては、構造が複雑となり、部分破損しても修理が困難で全体の交換を余儀なくされ、また、対象物に対して熱源の伝達も決して十分なものではない。加えて、多くの場合、素材としてステンレス鋼を用いるため、製品価格が高騰してしまう要因となっている。
【0004】
そこで、本願出願人は特開2018-71796号として公開されている乾燥装置を開陳した。しかしながら、この乾燥装置をもってしても、例えば茶飲料を注出した残滓の茶殻、特に麦茶殻は蛋白質を含有しているためベタ付きが生じ、乾燥破砕後も排出は困難なものとなっている。麦茶は大麦、裸麦を殻付きのまま焙じたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明が解決しようとする課題は、特許文献として示した乾燥装置は、対象から水分を乾燥して脱水することは十分に効を奏し、十分な乾燥を得られるが、例えば麦茶殻等の蛋白質を含有する対象物、その他脂質や糖質を含有する対象物にあってはその特質に対して十分な乾燥を行ない得ず、処理してもベタ付きが生じ、良好に排出や次工程への供給ができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本願発明に係る乾燥方法は、円筒状をしたケーシングを横方向に配置して有し、そのケーシングの中心部分に、回転パイプを前記ケーシングと同軸芯状態で有しており、その回転パイプの外周面にその回転パイプと連通する複数の突出パイプを放射状に備え、かつ、前記した回転パイプの一方開口側は加熱源となる蒸気の導入部を備え、回転パイプの他方端には回転駆動力の伝達手段を連結してあり、前記したケーシングの上面には一箇所以上の対象物投入口を備え、前記したケーシングの側面から下方に向けた被処理物の排出口を備えている乾燥装置を使用し、前記した回転パイプの回転と同期して回転する複数の突出パイプによって、投入された対象物を攪拌して加熱し、排出口へ移送する乾燥方法であって、前記したケーシング内に予め複数個の直径が略20mm程度のサイズとしたセラミックボールを投入し、そのセラミックボールを対象物と共に攪拌する乾燥方法において、前記セラミックボールは、前記突出パイプの回転によって対象物と共にケーシングの底付近で跳ね踊るように泳動させ、対象物に一層の加熱処理と破砕作用とともにケーシング内の吸湿作用も強化することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明に係る乾燥装置は、円筒状をしたケーシングを横方向に配置して有し、そのケーシングの中心部分に、回転パイプを前記ケーシングと同軸芯状態で有しており、その回転パイプの外周面にその回転パイプと連通する複数の突出パイプを放射状に備え、かつ、前記した回転パイプの一方開口側は加熱源となる蒸気の導入部を備え、回転パイプの他方端には回転駆動力の伝達手段を連結してあり、前記したケーシングの上面には一箇所以上の対象物投入口を備え、前記したケーシングの側面から下方に向けた被処理物の排出口を備えている乾燥装置であって、前記ケーシング内に複数個の直径が略20mm程度のサイズとしたセラミックボールを収容してある乾燥装置において、前記セラミックボールが前記突出パイプの回転によって対象物と共に前記ケーシングの底付近で跳ね踊るように泳動することで対象物に一層の加熱処理と破砕作用とともにケーシング内の吸湿作用を行うためのものであることを特徴としている。
【0010】
そして、本願発明に係る乾燥装置は、前記したケーシングには粉塵除去のための集塵機が付設されていることを特徴とし、前記した放射状に備えられた突出パイプの少なくとも一つの先端にはスクレーパが備えられていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る乾燥装置は、前記したケーシングには水分を機外へ排出するためのキャリアエアーの吸い込み口が備えられていることを特徴とし、前記した突出パイプの先端開口は閉塞されていることを特徴とし、前記したケーシングには点検もしくはスクレーパ取り付け用の窓孔を設けてあることを特徴とし、前記した蒸気の導入部の中心部分にはドレン排出用のパイプを備えていることを特徴とし、前記した回転パイプ及び突出パイプは鉄もしくはステンレス鋼を素材としてあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係る乾燥方法及びその装置は上記のように構成されている。ケーシング内に予めセラミック小塊物、それもセラミックボールが複数個投入収容されているので、このセラミック小塊物が回転パイプの回転と同期して回転する複数の突出パイプによって対象物と共に攪拌動作され、ケーシングの底部近くで跳ね踊るように泳動する。このセラミック小塊物の吸湿作用及び赤外線や遠赤外線の放射効によって対象物はより一層の乾燥効果を得ることとなり、更にはセラミック小塊物は一種のメディアとしても作用して乾燥した対象物の破砕効果も高めることとなる。そのため、例え蛋白質や、その他脂質、糖質を含有した対象物であっても十分に乾燥され、破砕されるので、ベタ付くこともなく、良好に排出することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を実施した乾燥装置の構造を示す内部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。図中1は本発明を実施した乾燥装置を示している。この乾燥装置1は円筒状をしたケーシング2を有しており、このケーシング2は横方向(水平方向)に中心軸を設定して設けられている。このケーシング2の周面には蒸気の導入口10a、10aからの蒸気の流通部2aが形成されており、加熱面積をより一層増やした構造となっている。
【0016】
このケーシング2内には、このケーシング2と同軸芯状として回転パイプ3を有している。この回転パイプ3の外周面には複数の突出パイプ4、4‥が放射状に設けられている。本実施例にあって、この突出パイプ4、4‥は回転パイプ3の仮想の中心点から直角方向に突設され、その仮想の中心点から45度ピッチで八本が設けられているもので、この突出パイプ4、4‥の群が等間隔で設けられたものとなっている。この突出パイプ4、4‥の取り付けは熔着が用いられており、損傷した場合の交換も容易なものとしている。
【0017】
本実施例では、このように構成されているが、突出パイプ4、4‥の本数はこれに限定されるものではなく、また、放射状とする構成も平面的なものではなく、千鳥状の配置とすることも勿論可能なものであり、突出パイプ4、4‥の先端開口はメクラ板(底板)により閉塞され、このメクラ板も熱源伝達の一つの面として作用する。
【0018】
また、この突出パイプ4、4‥群のうち少なくとも一つの先端にはスクレーパ5が備えられており、後述するように、ケーシング2内に投入された対象物がケーシング2の内壁面に付着してしまった場合、これを掻き取ることができるようになっている。
【0019】
図中6は、ケーシング2の一方側上面に設けられている対象物、例えば含水汚泥、スラッジ、生ゴミ、飼料、茶殻等の投入口である。この対象物の投入はコンベアや汚泥ポンプ等が使用されることとなる。
【0020】
図中7、7は点検用の窓孔であるが、必要に応じ、ここにも図示している投入口6の他に第二、第三の投入口を形成したり、対象物が付着性、粘着性の強い場合、下向きにスクレーパを取り付け、対象物を掻き取り、砕きやすくする構成とすることもできる。
【0021】
また、図中8はケーシング2の上面で投入口6と点検用の窓孔7の間に設置されたバグフィルター集塵機を示しており、8aはカートリッジを示している。このバグフィルター集塵機8はカートリッジ8aでの目詰まりの虞があるので、逆洗用圧縮空気の接続口となる配管8cからのエアで洗浄することもできる。粉塵が多い対象物の場合、バグフィルター集塵機8に代え、サイクロン集塵機を使用することもできる。尚、8bは蒸発ガス出口を示している。
【0022】
ケーシング2の一次側、それも投入口6が設けられている側の端面にはフランジ接合で保持部9が取り付けられ、その保持部9には、加熱源となる蒸気の導入口10が支持されている。この導入口10は回転パイプ3の一方側開口と連通し、回転パイプ3内へ蒸気を送り込むようになっており、この蒸気は回転パイプ3内を通り、その回転パイプ3の外周に熔着で取り付けられた突出パイプ4、4‥内にも行き亘るものとなっている。
【0023】
尚、前記した蒸気の導入口10a、10aから導入された蒸気は周囲との熱交換でドレンとなってドレン排出口10bから回収され、排水溝等に放流される。
【0024】
ケーシング2の他方側には、その側面から被処理物を受け入れ、外方下方へ排出する排出口11が設けられており、その近傍の上部にはキャリアエアーの吸込み口12が設けられている。このキャリアエアーの吸込み口12は真空式と異なり、水分を機外へ排出するためのエアが必要となるためその取り込み口となり、その管径は6インチ程度で十分である。
【0025】
さらに、このケーシング2の他方側には保持部13が取り付けられており、この保持部13に回転パイプ3に回転力を伝達するためのプランマブロックの軸受け14が保持され、その軸受け14が回転パイプ3に連結されている。
【0026】
この軸受け14に支持される回転軸にはスプロケット15が装着されている。一方、図中16は駆動用のモータであり、このモータ16には減速機17を介して、軸にスプロケット18が装着され、このスプロケット18と前記したスプロケット15にはチェーン19が掛け回されている。即ち、モータ16の駆動力(回転力)はチェーン19によって軸受け14で支持されている回転軸は伝動され、回転パイプ3を回転させるものとなっている。
【0027】
また、本実施例における乾燥装置1にあって少なくとも回転パイプ3、突出パイプ4、4‥は本実施例の標準製品ではステンレス鋼ではなく、素材として鉄を使用しており、材料費を低くして、装置全体の価格も低廉なものとして需要者に供給することができるものとしている。尚、腐食等の懸念がある場合はステンレス鋼を使用することも勿論可能である。
【0028】
さらに、図中20、20‥はセラミックボールであり、このセラミックボールは直径が略20mm程度のものが使用され、複数個が予めケーシング2内に投入収容されている。このセラミックボール20、20‥は突出パイプ4、4の回転によって対象物と共にケーシング2内の底部近くで跳ね踊るように泳動する。このセラミックボール20、20‥は対象物の加熱を伝熱特性に加え、赤外線や遠赤外線の放射によって補強し、その特性からケーシング2内の吸湿作用も強化する。
【0029】
本実施例に係る乾燥装置1は上記のように構成されている。蒸気の導入口10から加熱源としての蒸気が回転パイプ3内に導入されると、この蒸気は熔接されている突出パイプ4、4‥内にも行き亘る。駆動モータ16が稼働されると、その回転力はスプロケット18、15に掛け回されたチェーン19によって回転パイプ3に伝達される。
【0030】
回転パイプ3の回転に同期して突出パイプ4、4‥も回転パイプ3の軸芯方向に対して交叉する方向に回転する。この回転によって、投入口6から投入された対象物は攪拌され、満遍なく加熱されていくこととなり、加熱された対象物を破砕する。また、対象物が付着性、粘着性が強い場合、ブリッジが形成される虞もあるが、突出パイプ4、4‥の回転がこのブリッジブレーカーとしても作用し、スクレーパ5がケーシング2の内面に付着した対象物を掻き落とし破砕する。この突出パイプ4、4‥の回転により、対象物と共にセラミックボール20、20‥もケーシング2の底付近で跳ね踊るように泳動し、対象物に一層の加熱処理と破砕作用を行なうこととなる。
【0031】
そして、突出パイプ4、4‥の回転及びセラミックボール20,20‥によって乾燥破砕処理された対象物はケーシング2内を移送され排出口11より外部に排出され、次の工程へ送られることとなる。尚、
図2中、黒くしてあるパートは蒸気が流通されている部分を示している。この際、セラミックボール20、20‥はその重量、及び体積によって排出されてしまうことはない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本実施例では対象物を大概的に含水汚泥の処理としているが、その他、スラッジや茶殻を含めた生ゴミ、或いは飼料の加工としても実施することができるものとなっている。また、駆動モータ16からの回転力の伝達もスプロケットとチェーンの組み合せに限らず、プーリとベルトの組み合せやギア群を用いることも勿論可能である。さらに、セラミック小塊物としてのセラミックボールは球体であるため突出パイプの損傷を少ないものとできるが、このボールのほかにも楕円形としたり多角形状のもの等とすることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 乾燥装置
2 ケーシング
2a 蒸気の流通部
3 回転パイプ
4 突出パイプ
5 スクレーパ
6 投入口
7 点検用の窓孔
8 バグフィルター集塵機
8a カートリッジ
8b 蒸発ガス出口
8c 配管
9,13 保持部
10,10a 蒸気の導入口
10b ドレン排出口
11 排出口
12 キャリアエアーの吸込み口
14 軸受け
15,18 スプロケット
16 駆動用モータ
17 減速機
19 チェーン
20 セラミックボール