(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】熱源装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
F24H 15/12 20220101AFI20230830BHJP
F24H 7/04 20060101ALI20230830BHJP
F24H 15/215 20220101ALI20230830BHJP
F24H 15/238 20220101ALI20230830BHJP
F24H 15/242 20220101ALI20230830BHJP
F24H 15/34 20220101ALI20230830BHJP
【FI】
F24H15/12
F24H7/04 B
F24H15/215
F24H15/238
F24H15/242
F24H15/34
(21)【出願番号】P 2019102435
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000170130
【氏名又は名称】パーパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 栄次
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237084(JP,A)
【文献】特開2003-130448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒と外部熱源の熱を熱交換させる第1の熱交換部と、
前記熱媒を循環させる循環路と、
前記循環路上に接続されており、設定した圧力状態で前記熱媒を貯める熱媒タンクと、
前記第1の熱交換部で加熱された前記熱媒と給水を熱交換する第2の熱交換部と、
前記循環路内に前記熱媒を圧送するポンプと、
前記第2の熱交換部に接続された給水管に流れる給水の流量を検出する流量センサと、
前記給水管に流れる給水の温度を検出する水温センサと、
設定温度、給水の温度情報および流量情報により決まる必要熱量情報、および該流量情報に基づいて設定される水圧情報に応じて、前記熱媒の水圧が前記第2の熱交換部に流れる給水の水圧よりも低くなるように前記ポンプおよび前記熱媒の温度を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
前記第2の熱交換部は、前記熱媒と前記給水との間に伝熱させる単一のプレートを備えることを特徴とする請求項1に記載の熱源装置。
【請求項3】
前記循環路上に設置され、前記第1の熱交換部で加熱された高温の前記熱媒を取込み、前記第2の熱交換部に流す経路とその他熱媒負荷に流す経路のいずれかまたは両方に分配して前記熱媒を流す分配手段と、
を備え、前記制御部は、給湯要求に応じて前記分配手段の前記経路に対する分配比率を設定し、前記分配手段を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱源装置。
【請求項4】
さらに、前記熱媒タンク内の前記熱媒の水位を計測する水位検出手段を備え、
前記制御部は、前記水位検出手段の検出情報の変化により前記熱媒の循環異常を判断して、異常状態の報知情報を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載の熱源装置。
【請求項5】
さらに、前記熱媒の温度を検出する熱媒温度センサを備え、
前記制御部は、前記必要熱量情報により設定される前記熱媒の設定温度と前記熱媒温度センサで取得した温度情報を対比し、この対比結果に基づいて前記第1の熱交換部または前記第2の熱交換部のいずれの異常かを判定することを特徴とする請求項4に記載の熱源装置。
【請求項6】
さらに、前記熱媒タンクの前記熱媒を前記第1の熱交換部をバイパスして前記分配手段に流入させるバイパス管を備え、
前記分配手段は、前記バイパス管を通じて流入した前記熱媒を負荷に流し、または前記バイパス管を通じて流入した前記熱媒と前記第1の熱交換部から流入した前記熱媒とを混合して負荷に流すことを特徴とする請求項3に記載の熱源装置。
【請求項7】
前記熱媒タンクは内部が大気圧となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかの請求項に記載の熱源装置。
【請求項8】
循環路上に接続された熱媒タンクに設定した圧力状態で熱媒を貯める工程と、
前記熱媒と外部熱源の熱を第1の熱交換部で熱交換させる工程と、
前記第1の熱交換部で加熱された高温の前記熱媒と給水を第2の熱交換部で熱交換する工程と、
前記第2の熱交換部に接続された給水管に流れる給水の流量を流量センサで検出する工程と、
前記給水管に流れる給水の温度を水温センサで検出する工程と、
設定温度、給水の温度情報および流量情報により決まる必要熱量情報、および該流量情報に基づいて設定される水圧情報に応じて、前記熱媒の水圧が前記第2の熱交換部に流れる給水の流水圧よりも低くなるようにポンプおよび前記熱媒の温度を制御する工程と、
を含むことを特徴とする熱源装置の制御方法。
【請求項9】
前記第1の熱交換部で加熱された高温の前記熱媒を分配手段で取込み、前記熱媒を前記第2の熱交換部に流す経路とその他熱媒負荷に流す経路のいずれかまたは両方に分配して流す工程と、
給湯要求に応じて前記分配手段の前記経路に対する分配比率を設定し、前記分配手段を制御する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の熱源装置の制御方法。
【請求項10】
さらに、前記熱媒タンク内の前記熱媒の水位を
水位検出手段で計測する工程と、
前記水位検出
手段の検出情報の変化により前記熱媒の循環異常を判断する工程と、
異常状態の報知情報を出力する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の熱源装置の制御方法。
【請求項11】
さらに、熱媒温度センサで前記熱媒の温度を検出する工程と、
前記必要熱量情報により設定される前記熱媒の設定温度と前記熱媒温度センサで取得した温度情報を対比する工程と、
この対比結果に基づいて前記第1の熱交換部または前記第2の熱交換部のいずれの異常かを判定する工程と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の熱源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部熱源から取り込んだ熱を利用して給水や浴槽水の追焚、暖房を行う熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱源装置には、たとえば筐体内に燃焼手段などの放熱もしくは加熱する手段を備えておらず、外部熱源の熱を回収した熱源熱媒を取り込んで、給湯や浴槽水の追焚や暖房機能に利用するものがある。
【0003】
このような熱源装置に関し、外部から供給される熱源熱媒を給湯や風呂の追焚、暖房などの熱源として上水と熱交換することや、給湯温度の調整をするミキシングバルブと熱交換器へ供給される上水の流量を調製する定流量弁を有するものがある(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外部にある熱供給プラントや他の熱源機器等から出た熱を熱源装置の熱源として利用する場合、熱源装置の内部に高温の熱媒を流入させている。このような熱媒は、水道などの給水圧力よりも高圧で流れている。そのため、従来のように、熱源装置内に熱媒を分岐させて給水や浴槽水または暖房用の熱媒と直接熱交換させる場合、たとえば経年劣化や異常圧力などによって熱交換管の破損が生じると、熱媒が給水や浴槽水側の管路内に流入するおそれがある。熱媒は、たとえば熱源機器や熱供給プラントで放出された熱を回収し、熱源装置側での放熱を繰り返し行っており、水や水蒸気のほか、不凍液、油、その他の液体などが用いられる。これらの熱媒は、人体内に取り込むことができないものや、上水のように衛生管理されたものでない。よって熱媒が上水や浴槽水に混入するのを防止する必要がある。
【0006】
給湯や浴槽水の追焚機能を備える熱源装置では、たとえば給水や浴槽水の熱交換器を複数枚の伝熱プレートを重ね合わせ、熱媒が流れる流路と給水または浴槽水が流れる流路を複雑化した所謂プレート式熱交換器を用いるものがある。プレート式熱交換器には、二流体の間に単一の伝熱プレートを配置して熱交換させるシングルプレート式熱交換器や、伝熱プレートが二重構造となっていることで伝熱プレートの破損等による二流体混合の可能性を低減させた信頼性の高いダブルウォール式熱交換器などがある。この二流体混合を防ぐ構造となっているダブルウォール式熱交換器は、熱媒と給水とを直接熱交換させるときなどに使用される。
しかしながら、このダブルウォール構造の熱交換器は、熱媒を流す流路と給水または浴槽水を流す流路との熱伝導性が低くなるため、熱交換の効率が低下する場合がある。また熱交換効率を高めるために、熱媒と給水または浴槽水を流す面積を多くとり、複数回の熱交換が行えるように内部の流路を複雑化する必要がある。このような熱交換器について本願の発明者は、管内での流路抵抗が増加して圧力損失の増大を招くおそれがあるほか、製造コストの増加、熱源装置の大型化を招くおそれが高くなるとの知見を得た。
さらに、熱源装置は、たとえば外部熱源からの熱媒の流量や流入圧力を調整する処理を行うことや、流入圧力を制御するための制御手段を介在させることで、コストの増加や処理内容の複雑化を招くことになる。
斯かる課題について、特許文献1には開示や示唆はなく、この特許文献1によっては解決することはできない。
【0007】
そこで、本発明の熱源装置では、給水に対する熱媒の混入を防止して、熱源装置から供給する湯の清浄性を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の熱源装置の一側面は、熱媒と外部熱源の熱を熱交換させる第1の熱交換部と、前記熱媒を循環させる循環路と、前記循環路上に接続されており、設定した圧力状態で前記熱媒を貯める熱媒タンクと、前記第1の熱交換部で加熱された前記熱媒と給水を熱交換する第2の熱交換部と、前記循環路内に前記熱媒を圧送するポンプと、前記第2の熱交換部に接続された給水管に流れる給水の流量を検出する流量センサと、前記給水管に流れる給水の温度を検出する水温センサと、設定温度、給水の温度情報および流量情報により決まる必要熱量情報、および該流量情報に基づいて設定される水圧情報に応じて、前記熱媒の水圧が前記第2の熱交換部に流れる給水の水圧よりも低くなるように前記ポンプおよび前記熱媒の温度を制御する制御部とを備える。
【0009】
上記熱源装置において、前記第2の熱交換部は、前記熱媒と前記給水との間に伝熱させる単一のプレートを備えてよい。
上記熱源装置において、前記循環路上に設置され、前記第1の熱交換部で加熱された高温の前記熱媒を取込み、前記第2の熱交換部に流す経路とその他熱媒負荷に流す経路のいずれかまたは両方に分配して前記熱媒を流す分配手段とを備え、前記制御部は、給湯要求に応じて前記分配手段の前記経路に対する分配比率を設定し、前記分配手段を制御してよい。
上記熱源装置において、さらに、前記熱媒タンク内の前記熱媒の水位を計測する水位検出手段を備え、前記制御部は、前記水位検出手段の検出情報の変化により前記熱媒の循環異常を判断して、異常状態の報知情報を出力してよい。
上記熱源装置において、さらに、前記熱媒の温度を検出する熱媒温度センサを備え、前記制御部は、前記必要熱量情報により設定される前記熱媒の設定温度と前記熱媒温度センサで取得した温度情報を対比し、この対比結果に基づいて前記第1の熱交換部または前記第2の熱交換部のいずれの異常かを判定してよい。
上記熱源装置において、さらに、前記熱媒タンクの前記熱媒を前記第1の熱交換部をバイパスして前記分配手段に流入させるバイパス管を備え、前記分配手段は、前記バイパス管を通じて流入した前記熱媒を負荷に流し、または前記バイパス管を通じて流入した前記熱媒と前記第1の熱交換部から流入した前記熱媒とを混合して負荷に流してよい。
上記熱源装置において、前記熱媒タンクは内部が大気圧となってよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の熱源装置の制御方法の一側面は、循環路上に接続された熱媒タンクに設定した圧力状態で熱媒を貯める工程と、前記熱媒と外部熱源の熱を第1の熱交換部で熱交換させる工程と、前記第1の熱交換部で加熱された高温の前記熱媒と給水を第2の熱交換部で熱交換する工程と、前記第2の熱交換部に接続された給水管に流れる給水の流量を流量センサで検出する工程と、前記給水管に流れる給水の温度を水温センサで検出する工程と、設定温度、給水の温度情報および流量情報により決まる必要熱量情報、および該流量情報に基づいて設定される水圧情報に応じて、前記熱媒の水圧が前記第2の熱交換部に流れる給水の流水圧よりも低くなるようにポンプおよび前記熱媒の温度を制御する工程とを含む。
【0011】
上記熱源装置の制御方法において、前記第1の熱交換部で加熱された高温の前記熱媒を分配手段で取込み、前記熱媒を前記第2の熱交換部に流す経路とその他熱媒負荷に流す経路のいずれかまたは両方に分配して流す工程と、給湯要求に応じて前記分配手段の前記経路に対する分配比率を設定し、前記分配手段を制御する工程とを含んでよい。
上記熱源装置の制御方法において、さらに、前記熱媒タンク内の前記熱媒の水位を水位検出手段で計測する工程と、前記水位検出手段の検出情報の変化により前記熱媒の循環異常を判断する工程と、
異常状態の報知情報を出力する工程とを含んでよい。
上記熱源装置の制御方法において、さらに、熱媒温度センサで前記熱媒の温度を検出する工程と、前記必要熱量情報により設定される前記熱媒の設定温度と前記熱媒温度センサで取得した温度情報を対比する工程と、この対比結果に基づいて前記第1の熱交換部または前記第2の熱交換部のいずれの異常かを判定する工程とを含んでよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 外部熱源から供給される熱と給水または浴槽水を直接熱交換させないことで、熱交換器に異常が生じても、給水や浴槽水に異物が混入するのを防止でき、給水の清浄性が維持できる。
(2) 外部熱源と熱交換した熱媒を上水の圧力よりも低い圧力で熱源装置内に循環させ、この熱媒と給水や浴槽水とを熱交換することで、熱交換器の異常発生により熱媒管路から給水管側に熱媒が流出するのを防止できる。
(3) 給水や浴槽水に対し、熱交換器の異常による異物の混入の可能性を減らせるので、熱源装置の信頼性が高められる。
(4) 給湯用熱交換器に所謂シングルプレートの熱交換ユニットを利用した場合でも、給水の信頼性を維持するとともに、熱源装置の製造コストの高騰を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施の形態に係る熱源装置の構成例を示す図である。
【
図2】熱交換部における圧力状態の一例を示す図である。
【
図3】熱源装置の制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施例1に係る熱源装置の構成例を示す図である。
【
図5】熱源装置の制御ブロックの一例を示す図である。
【
図6】制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【
図7】熱源装置の制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施例2に係る熱源装置の機能構成例を示す図である。
【
図9】熱交換器の異常判定機能部の一例を示すブロック図である。
【
図10】熱源装置の制御処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔一実施の形態〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る熱源装置の構成例を示している。
図1に示す構成は一例であり、本発明が係る構成に限定されない。
熱源装置2は、供給された上水Wと熱交換して湯HWを生成するほか、浴槽水BWの加熱処理、その他の熱負荷側に対して所定温度の熱媒を供給する手段の一例である。熱源装置2は、たとえば
図1に示すように、筐体内にバーナーなどの熱源を備えず、筐体外部にある外部熱源4から熱が供給される。この熱源装置2は、たとえば熱媒Hbを貯留する熱媒タンク6、第1の熱交換部8、第2の熱交換部10、熱源供給回路12、循環路14、ポンプ16を有する。
【0015】
外部熱源4は、たとえば熱供給プラントやヒートポンプ、エンジン発電機や燃料電池の発電時の排熱エネルギーのほか、太陽熱エネルギーなどを熱源装置2側へ供給する手段の一例である。熱源装置2と外部熱源4は、たとえば熱源供給回路12で接続されている。この熱源供給回路12は、外部熱源4の熱を回収して搬送する熱源熱媒Haを流す手段の一例であり、熱源装置2の第1の熱交換部8を介して熱源熱媒Haを循環させる循環路である。熱源熱媒Haは、熱源供給回路12を通じて第1の熱交換部8での熱交換により放熱し、外部熱源4に流される。
熱媒タンク6は、熱源装置2内に配置された循環路14に流れる熱媒Hbを貯留する手段の一例である。循環路14は、熱源装置2内部に配置されており、第1の熱交換部8や第2の熱交換部10のほか、浴槽水熱交換部22やその他の負荷24などに熱媒Hbを循環させる手段の一例である。熱媒タンク6には、たとえば第2の熱交換部10や浴槽水熱交換部22またはその他負荷24などで熱交換した後であって、熱源熱媒Haとの熱交換前の熱媒Hbが溜められる。そして、熱媒タンク6は、熱源装置2への給湯要求や浴槽水BWの追焚要求などの発生により熱媒Hbを循環路14に流す。熱媒タンク6では、たとえばタンク内に溜められた熱媒Hbの圧力を所定の値以下となるように維持している。これにより、熱源装置2では熱媒Hbを熱媒タンク6内に一時的に貯留させることで、循環路14を流れる熱媒Hbの流水圧を任意の値の範囲内に調整している。
【0016】
第1の熱交換部8は、熱源熱媒Haと熱媒Hbとを熱交換させる手段の一例であり、たとえば熱源供給回路12が接続される本体内部に熱源熱媒Haを流す熱源流路を有し、循環路14が接続される本体内部に熱媒Hbを流す熱媒流路を有する。この熱源流路と熱媒流路の間には、たとえば熱媒同士を遮断するとともに熱源熱媒Haの熱を伝える伝熱部として、伝熱プレートを有する。
第2の熱交換部10は、熱源装置2の内部において、循環路14内に流れる熱媒Hbと上水Wとを熱交換させる手段の一例であり、循環路14が接続されて熱媒Hbを流す熱媒流路、および給水管が接続されて上水Wを流す上水流路を有する。第2の熱交換部10の内部には、たとえば熱媒流路と上水流路が並列、または近接して形成されており、熱媒流路と上水流路の間に熱媒Hbと上水Wの伝熱部として、所謂シングルプレートという1枚の伝熱プレートを有する。第2の熱交換部10では、伝熱プレートを通じて熱交換が行われる。伝熱プレートは、たとえば伝熱効率がよく、かつ一定以上の剛性または強度を備えた金属材料で構成される。
ポンプ16は、循環路14内に熱媒Hbを圧送する手段の一例であり、たとえば給湯要求や浴槽水の追焚要求、その他の負荷24からの熱媒Hbの供給要求に応じて起動する。またポンプ16は、たとえば給湯要求など以外にも、熱媒Hbの保温制御などにより起動する場合もある。
【0017】
そのほか熱源装置2は、浴槽18内の浴槽水BWを循環させる追焚管路20が浴槽水熱交換部22に接続されている。浴槽水熱交換部22は、追焚管路20を流れる浴槽水BWと循環路14内の熱媒Hbとを熱交換させる手段の一例である。浴槽水熱交換部22は、たとえば浴槽水BWと熱媒Hbの間で伝熱させる1枚の伝熱プレートを有する。
その他負荷24は循環路14に接続されており、流入する熱媒Hbの熱を利用する暖房装置などが含まれる。その他負荷24には、たとえば第1の熱交換部8で加熱された高温の熱媒Hbを取込んで放熱する高温端末と、第1の熱交換部8で加熱された熱媒Hbまたは第1の熱交換部8をバイパスした熱媒Hb、もしくはこれらの熱媒Hbを混合して温度調整された低温の熱媒Hbを取り込んで放熱する低温端末を含む。
【0018】
さらに熱源装置2には、給湯要求や追焚要求、その他負荷による熱媒供給要求に対して、熱媒Hbの流動制御によって給湯、追焚、暖房運転を制御する制御部26を備える。またこの制御部26は、たとえば給水管内の上水Wの流動状態の監視や、循環路14内の熱媒Hbの流動状態の監視処理などを行ってもよい。
【0019】
<循環路14内の圧力状態について>
この熱源装置2では、熱媒タンク6に熱媒Hbを溜めるとともに、ポンプ16を制御することで、循環路14に流れる熱媒Hbの流動制御を行う。熱源装置2には、たとえば
図2に示すように、熱源供給回路12内に所定の圧力Pαで熱媒Haが流動する。また循環路14には、ポンプ16の圧送により設定された圧力Pβで熱媒Hbが循環する。また、第2の熱交換部10には、たとえば上水Wの供給源で付加された給水圧Pγにより上水Wが流入する。
この熱源装置2の流動制御では、第1の熱交換部8を流れる熱媒Haの水圧Pαよりも第1の熱交換部8を流れる熱媒Hbの循環圧力Pβが小さく、かつ第2の熱交換部10に流入する上水Wの水圧Pγよりも第2の熱交換部10に流れる熱媒Hbの循環圧力Pβが小さくなるように制御する。つまり制御部26は、給湯要求によって上水Wが流入すると、ポンプ16を駆動させて熱媒Hbを循環させる。このとき制御部26は、たとえば上水Wの温度や給湯設定温度、熱源熱媒Haの温度、熱媒Hbの温度などを取込んで、熱媒Hbの必要流量を算出する。また制御部26はたとえば上水Wの水圧Pγを取得し、ポンプ16の圧送能力を調整する。上水Wの水圧Pγは、たとえば給水管に水圧計を設置して計測してもよく、または給水管内に流れる上水Wの流量や給水管の管径などを利用して算出するほか、熱源装置2が接続される給水管の給水圧力データをあらかじめ取得しておき、給水量などの情報に基づいて換算してもよい。
【0020】
<流動制御>
図3は、熱源装置の制御処理を示している。
図3に示す処理内容や処理手順は一例であり、本発明が係る構成に限定されない。この制御処理は、本発明の熱源装置の制御方法の一例である。
熱源装置2の制御部26は、給湯要求が発生すると(S1)、ポンプ16の起動制御を行う(S2)。制御部26は、発生した給湯要求に対し、給水温度や熱媒Hbの温度などの情報を利用して必要な熱媒循環量などを算出する。
また、ポンプの起動制御では、ポンプ16のイニシャライズ処理を含むとともに、給湯要求に応じて設定された熱媒Hbの流量に応じた通常動作を開始させればよい。
【0021】
熱源装置2では、ポンプ16の起動により循環路14内に熱媒Hbが循環すると、第1の熱交換部8で外部熱源4からの熱と熱媒Hbの熱交換が行われる(S3)。そして熱源装置2は、加熱された熱媒Hbが循環路14を通じて第2の熱交換部10に流入すると、上水Wと熱交換させ(S4)、湯HWを出湯する。
このとき制御部26では、ポンプ16の動作制御として(S5)、熱媒Hbが循環する圧力Pβと上水Wの水圧Pγとを比較して、水圧Pγ>圧力Pβとなるようにポンプ16の駆動量を調整する。
【0022】
<一実施の形態の効果>
斯かる構成によれば次のいずれかの効果が得られる。
(1) 循環路内に流れる熱媒Hbの水圧が上水Wの水圧よりも低くなるように流すことで、熱交換器に異常が発生した場合でも湯に熱媒Hbが混入するのを防止でき、給湯の清浄性を維持できる。
(2) 水圧調整による上水W側への熱媒Hbの混入を防止することで、給湯用の第2の熱交換部10をシングルプレートで構成することができ、熱交換効率の向上、熱交換器の小型化を実連できる。
(3) 第2の熱交換部10をシングルプレートで構成することで、上水Wとの熱交換効率の向上による省エネ化が図れるとともに、熱交換器の部品数の低減などによる低コスト化が図れる。
【実施例1】
【0023】
図4は実施例1に係る熱源装置を示す図である。
図4に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この熱源装置30は、熱供給系統として、図示しない外部熱源に接続されており、熱源熱媒Haを流す熱源往き管32-1と熱源戻り管32-2を有する。この熱源往き管32-1および熱源戻り管32-2は、熱源供給回路12の一例であり、熱源装置30内に流れる熱媒Hbである暖房水を加熱する暖房水熱交換器34に接続されている。また熱源往き管32-1には、熱媒制御弁36を有する。この熱媒制御弁36は、熱源装置30内への熱源熱媒Haの流入量を調整する手段の一例であり、給湯要求や浴槽水の追焚要求、暖房負荷からの動作指示、またはその他要求に対し、必要な熱量に応じて開閉制御を行えばよい。そのほか、熱源供給回路には、たとえば熱源往き管32-1上に流入する熱源熱媒Haの流入温度を検出する温度センサ38や熱源戻り管32-2に流れる熱交換後の熱源熱媒Haの温度を検出する温度センサ40を有する。
【0024】
熱源装置30には、熱媒Hbである暖房水の循環系統として、タンク44内に貯めた暖房水を暖房水熱交換器34に流す供給管路46-1や暖房水熱交換器34をバイパスして流すバイパス管路46-2を有する。供給管路46-1を通じて流され加熱された暖房水とバイパス管路46-2を流れる暖房水は、与熱分配弁48で合流して、給湯負荷や暖房負荷などに流される。供給管路46-1には、タンク44から流れてくる暖房水の温度を検出する温度センサ47を有する。与熱分配弁48は、本発明の分配手段の一例であり、第2の熱交換部である給湯熱交換器54に暖房水を流す給湯加熱管路46-3を含み、暖房水を暖房負荷に流す高温暖房負荷管路46-4および低温暖房負荷管路46-5などの複数の経路が接続される。そして熱源装置30には、これらの暖房負荷を通過した暖房水をタンク44に戻す熱媒戻り管路46-6を有する。
さらに給湯加熱管路46-3は、タンク44側に接続しており、給湯熱交換器54において上水Wと熱交換した後の暖房水をタンク44側に流す。
与熱分配弁48は、熱媒負荷からの必要熱量に応じて暖房水を分配し各負荷に流す手段の一例であり、たとえば混合弁50と分配弁52などの複数の弁を有する。与熱分配弁48にはたとえば混合弁50にバイパス管路46-2が接続されており、暖房水がタンク44からバイパス管路46-2を流れて直接この混合弁50に流入する。分配弁52には、暖房水熱交換器34で加熱された暖房水が流入する。与熱分配弁48は、負荷からの熱の供給要求に応じて混合弁50や分配弁52の開度を調整して暖房水の温度や供給量を調整する。
【0025】
給湯熱交換器54は、本発明の第2の熱交換部10の一例であり、シングルの伝熱プレートを有する。この給湯熱交換器54には、熱交換部の入側に給水管56-1が接続され、熱交換部の出側に出湯管56-2が接続されている。給水管56-1は、熱源装置30内に上水Wを流入させる管路であり、たとえば一端側を水道管や図示しない分配管などに接続されている。これにより給水管56-1には、たとえば熱源装置30が設置された施設に接続された水道の水圧、または複数の施設や住宅に対する分配管に対して供給される給水圧が負荷される。
さらに給水管56-1には、たとえば上水Wと熱交換後の湯HWとを混合させるバイパス管58を有するほか、上水Wのバイパス量を制御するミキシング弁60や上水Wの入水温度を検出する温度センサ62、給水量を検出する水量センサ64を有する。出湯管56-2には、たとえば熱源装置30からの出湯量を調整する水制御弁66、熱交換後の湯HWの温度を検出する温度センサ68、熱源装置30からの出湯温度を検出する温度センサ70を有する。また出湯管56-2には、浴槽18側に注湯する注湯管72が接続されてもよい。
【0026】
高温暖房負荷管路46-4には、高温暖房端末74が接続されており、分配弁52で分配された高温の暖房水が流される。また低温暖房負荷管路46-5には、低温暖房端末76が接続されており、混合弁50を通じて温度調整された低温の暖房水が流される。高温暖房負荷管路46-4または低温暖房負荷管路46-5を通じて流された暖房水は、それぞれの暖房負荷において放熱した後に、熱媒戻り管路46-6を通じてタンク44に流される。低温暖房負荷管路46-5上には、暖房負荷に流される暖房水の温度を検出する温度センサ78を備える。
【0027】
その他、熱源装置30には、浴槽18内の浴槽水BWを循環させる追焚循環路が接続された浴槽水熱交換器82を有する。浴槽水熱交換器82は、たとえば高温暖房負荷管路46-4から分岐された管路が接続されており、流入した高温の暖房水と浴槽水BWを熱交換させて、浴槽水BWの追焚を実行する。追焚循環路80は、管路上に浴槽水BWの温度を検出する温度センサ84や、循環ポンプ86などを備えている。
熱源装置30は、外部リモコンとして浴室リモコン装置88や台所リモコン装置90などを有する。浴室リモコン装置88や台所リモコン装置90は、熱源装置30の制御部26と有線または無線通信によって接続されており、給湯温度の設定や暖房負荷の操作、追焚実行操作などの入力操作のほか、熱源装置30の状態情報を報知する手段の一例である。
【0028】
<タンク44の構成例について>
タンク44は、熱源装置30内に循環する熱媒Hbを一時的に貯留させることで、水圧を調整している。タンク44は、たとえば天井側の一部または全部が開放されている。これにより貯留している暖房水には、たとえば水面に対して大気圧または熱源装置30の筐体内に作用する圧力が負荷される。
これにより熱源装置30には、内部に循環する熱媒について、タンク44内で負荷される圧力とポンプ16の圧送力とを管理することができる。そして、この熱源装置30では、暖房水熱交換器34に流入する暖房水の圧力が熱源往き管32-1および熱源戻り管32-2内での熱源熱媒に作用する圧力よりも小さくなるようにポンプ16を制御する。さらに熱源装置30は、給湯熱交換器54に流入する暖房水の圧力が、給水管56-1に流れる上水Wの水圧よりも小さくなるようにポンプ16を制御する。
【0029】
<制御部26内の構成について>
制御部26には、たとえば
図5に示すように、熱源装置の動作制御機能部として、給水圧データベース94、必要熱量算出部96、熱媒供給制御部98を有する。
給水圧データベース94は、給水管56-1に流れる上水Wの水圧情報が格納されている。給水圧データベース94には、たとえば熱源装置30の設置時などに計測した水道圧情報や、熱源装置30の設置高さや給水流量などが記憶されてもよい。
必要熱量算出部96は、たとえば浴室リモコン装置88や台所リモコン装置90を通じて設定される給湯設定温度や温度センサ62で検出した給水温度情報、水量センサ64で検出した給水流量とともに、熱媒Hb側の暖房水温度情報などを利用して、暖房水の循環流量を算出すればよい。
熱媒供給制御部98は、必要熱量算出部96で算出された暖房水の循環流量に応じたポンプ16の動作制御を行う手段の一例である。熱媒供給制御部98では、たとえば上水W側の給水圧力よりも暖房水の循環圧力が高くならないようにしつつ、熱媒負荷が必要とする熱量を供給可能な暖房水の循環流量となるようにポンプ16の能力を調整する。
【0030】
<制御部26の構造について>
図6は、制御部のハードウェア構成例を示している。
図6に示す構成は一例である。
この制御部26は、コンピュータによって構成されており、給湯要求や追焚処理、暖房の運転制御などを行うとともに、熱源装置内部で循環させる暖房水の水圧の監視および調整を実行する。
【0031】
制御部26は、たとえば
図6に示すように、プロセッサ100、メモリ部102、タイマー104、報知部106、システム通信部108、入出力(I/O)部110を有する。
プロセッサ100は、メモリ部102にあるOS(Operating System)や給湯制御プログラムを実行する。またプロセッサ100は、システム通信部108を介して浴室リモコン装置88や台所リモコン装置90から入力される設定温度情報や動作指示などを参照するとともに、熱源装置30の内部状態情報を通知する。
メモリ部102は、OSや制御プログラムの他、給湯制御に必要なデータを格納するとともに、熱源装置30内部に設置した温度センサ38、40、47、62、68、70、78、84の検出温度情報などを格納する。このメモリ部102にはROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)が含まれる。このメモリ部102にはデータを格納するハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶素子が用いられる。RAMは情報処理のワークエリアを構成する。
【0032】
タイマー104は計時手段の一例であり、たとえば給湯要求が発生してからの経過時間やポンプ16の動作継続時間などの時間情報を出力する。
報知部106は、熱源装置30に異常が発生した場合や、熱媒Hbの暖房水の循環監視結果などにより、異常状態情報を生成する手段の一例である。報知部106には、たとえばスピーカなどが含まれており、生成した音声データを利用して、ユーザーに対する熱源装置30の異常発生音声情報を報知してもよい。
I/O部110は、水量センサ64、温度センサ38、40、47、62、68、70、78、84、水位センサ92からの検出情報が入力される。そしてI/O部110は、制御部26内での演算処理に基づく制御指示を分配弁52や混合弁50、ミキシング弁60、ポンプ16などに対して制御指示が通知される。
【0033】
<制御処理>
図7は、熱源装置の制御処理例を示している。
図7に示す処理手順や処理内容は、本発明の熱源装置の制御方法の一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
制御部26は、熱媒負荷からの要求が発生すると(S11)、ポンプ16を起動させて(S12)、熱媒Hbの循環準備を開始する。熱媒負荷は、たとえば給湯要求や追焚要求、暖房負荷からの熱媒要求のいずれかまたはこれらの組み合せである。このとき制御部26では、たとえば給湯の設定温度や上水Wの流量、温度情報、浴槽水BWの温度情報、暖房設備の設定温度情報などを取り込み、熱媒Hbを通じて供給する必要熱量の算出などを行う。
【0034】
熱源装置30では、暖房水熱交換器34にて熱源からの熱と暖房水の熱交換が行われるとともに(S13)、与熱分配弁48に対して制御部26から熱媒要求に応じた暖房水の供給指示が通知されて、混合弁50や分配弁52の開閉制御を行い、熱媒負荷に対して必要な熱量に応じた暖房水の供給を実行する(S14)。
そして制御部26は、熱媒負荷のうち給湯熱交換器54側に流す暖房水の流量情報に対し、給水管56-1に流れる上水Wの流量情報などに基づいて取得した給水の水圧を比較して、暖房水の循環圧力が給水の水圧よりも低い値になるようにポンプ16の動作制御を行う(S15)。
熱媒負荷からの必要熱量に応じて暖房水の循環量を流した場合であって、給水管56-1を流れる上水の給水圧よりも高くなる場合には、たとえばポンプ16の圧送力を減らすとともに、与熱分配弁48の開閉制御により、算出した暖房水よりも高温状態にした暖房水を給湯熱交換器54側に流すようにすればよい。そして、給湯要求温度に対して給水管56-1上のミキシング弁60の開度調整によって、低温の上水Wと熱交換後の高温の湯HWとの混合比率を調整してもよい。
【0035】
<実施例1の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 熱源装置内の少なくとも給湯熱交換器54に流入させる暖房水の水圧が給水管56-1内を流れる上水の水圧よりも低くすることで、熱交換器の異常により暖房水が給水管路56-1内に流入するのを防止できる。
(2) 熱媒負荷から要求される必要熱量に基づく熱媒の循環量と給水管56-1側の水圧条件に応じてポンプ16を調整することで、設定された温度での給湯や追焚、暖房機能の利用を可能にするとともに、給湯の清浄性を保つことができる。
(3) ポンプの動作制御による暖房水の水圧制御により、給湯熱交換54の熱交換器をシングルプレートで構成することができ、熱交換効率の向上、熱交換器の小型化を実連できる。
(4) 給湯熱交換器54をシングルプレートで構成することで、上水Wとの熱交換効率の向上による省エネ化が図れるとともに、熱交換器の部品数の低減などによる低コスト化が図れる。
【実施例2】
【0036】
図8は、実施例2に係る熱源装置の構成例を示している。
図8に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この実施例2では、熱源装置30の異常判定機能について特定する。熱源装置30は、たとえば
図8に示すように熱媒タンク6に水位センサ92を有する。この熱源装置30では、たとえば内部に流れる熱媒Hbの容量が所定の範囲内に設定されており、この熱媒Hbの増減変動で熱源装置30内部の異常を判定する。熱媒Hbの監視機能として、熱媒タンク6内に設置した水位センサ92を利用する。つまり、熱源装置30では、熱媒タンク6内に基準水位Xを設定し、この水位Xよりも熱媒の水位が変化した場合、熱源装置30内部、特に循環路14や熱交換器に異常が発生したと判断する。
【0037】
水位センサ92は長さの異なる複数本の電極を有している。これらの電極は、たとえば最も長い共通電極(COM)112と、次に長い第1の電極114、最も短い第2の電極116である。共通電極112は、水位検出のための端子の一部であり、循環路内の異常がなければ一部が常に熱媒Hbである暖房水に接触した状態となる。第1の電極114は、熱媒タンク6内に貯められた暖房水の水位の低レベルを検出する手段の一例である。熱源装置30では、たとえば共通電極112と第1の電極114の間での通電により熱媒タンク6内の水位が低レベル水位X2よりも高いと判断する。第2の電極116は、熱媒タンク6内に貯められた暖房水の水位の高レベルを検出する手段の一例である。熱源装置30では、たとえば共通電極112と第2の電極116の間の通電により熱媒タンク6内の水位が高レベル水位X1に達していると判断する。
水位センサ92は、制御部26に対して有線または無線などで接続されており、電極の通電状況の情報が逐次または定期的に制御部26よって取得される。
【0038】
<制御部26内の機能部について>
制御部26には、たとえば
図9に示すように、タンク内水位監視機能部120、タンク内温度監視機能部122、熱交換器異常判断機能部124を有する。これらの機能部は、たとえばプロセッサ100が熱源装置30の動作制御プログラムの演算処理によって実行される処理機能を特定したものである。
タンク内水位監視機能部120は、たとえば水位センサ92から水位情報を取得し、その水位の確認や水位の変化の有無などを監視し、記憶する機能部の一例である。
タンク内温度監視機能部122は、たとえば図示しないタンク内の温度センサや循環路14上に設置された温度センサから熱媒Hbの温度情報を収集し、その変化を監視する機能部の一例である。
熱交換器異常判断機能部124は、タンク内水位監視機能部120の水位監視結果とタンク内温度監視機能部122の温度監視結果とを受けて、熱交換器の異常を判断する機能部の一例である。熱交換器異常判断機能部124は、たとえば熱媒タンク6内の水位が基準水位Xに対して所定の範囲を超えた場合であって、熱媒Hbの温度変化の状態により、第1の熱交換部8または第2の熱交換部10に異常が発生しているか、またはその他の部分に異常が発生しているかを判断する。この異常判断では、タンク内の水位情報や温度情報のほか、たとえば給湯設定温度や暖房設定温度、その他の入力情報などを参照してもよい。
【0039】
<熱源装置の制御処理>
図10は、熱源装置の制御処理例を示すフローチャートである。
図10に示す処理手順や処理内容は一例である。
制御部26は、たとえば熱源装置30の運転開始ととともに、または所定のタイミングにて熱交換器異常判断処理を開始すると(S21)、水位センサ92からの水位検出情報を取得して(S22)、熱媒タンク6内の水位異常の判断を行う。制御部26は、水位に所定値以上の変化があるか否かを判断する(S23)。熱媒Hbの水位が基準水位Xよりも高い所定水位として高レベル水位X1を超えている場合(S23のYES)、熱媒Hbの温度監視処理に移行する(S24)。熱媒Hbの水位が基準水位Xに対して変化が無い、または小さな変位である場合(S23のNO)には、熱交換機器異常判断処理を継続し、または次の判断タイミングまで待機すればよい。
【0040】
制御部26は、たとえば熱媒タンク6内、または循環路14上の熱媒温度を取得するとともに、熱媒負荷からの熱媒要求に応じて設定された温度情報などから、熱媒温度を監視する(S24)。制御部26は、熱媒Hbの温度が設定温度よりも高いか否かを判断する(S26)。その判断の結果、熱媒Hbの温度が設定温度よりも高い場合(S25のYES)、第1の熱交換部8の異常と判断し(S26)、熱媒Hbの温度が設定温度よりも高い場合(S25のNO)、第2の熱交換部の異常と判断する(S27)。この熱源装置30は、上記した一実施の形態および実施例1で説明したように、循環路14内に対する熱媒Hbの循環圧力が上水Wの水圧、および外部熱源4から流入する熱媒熱源の水圧よりも低くなるようにポンプ16を制御している。そのため熱媒タンク6内における水位の急激な変化は循環路やいずれかの熱交換部で発生した異常と推定する。さらに、熱媒タンク6内の熱媒Hbの温度が高温になれば熱源熱媒が流入している可能性がある。また熱媒タンク6内の熱媒の温度が低温になれば循環路内に上水Wが流入している可能性がある。
制御部26は、熱交換部の異常判断の結果を報知部106やリモコン装置を通じて熱源装置30のユーザーに報知する(S28)。
【0041】
<実施例2の効果>
斯かる構成によれば、以下のいずれかの効果が得られる。
(1) 既述した一実施の形態および実施例1と同様の効果が得られる。
(2) 熱媒タンクの貯留状態を監視することで熱交換器の異常を判断することができ、熱源装置の信頼性を向上させることができる。
(3) 熱交換器に異常が発生した場合でも、熱媒Hbが出湯管や外部熱源に流出するのを防止でき、給湯の清浄性を維持できるほか、熱媒の流出により外部熱源に対して影響を与えるのを防止できる。
〔他の実施の形態〕
【0042】
以上説明した実施形態および実施例について変形例を以下に列挙する。
(1) 上記実施の形態では、熱媒Hbである暖房水を貯める熱媒タンク6やタンク44が大気開放型である場合を示したがこれに限らない。熱媒タンク6やタンク44は、たとえば内部を密閉状態にするとともに、貯留している熱媒Hbに作用する圧力を所定の値に維持管理してもよい。タンク内の圧力制御は、たとえば減圧手段などを利用してもよい。
【0043】
(2) 熱源装置30は、熱交換器の異常判断機能として、たとえばタイマー104の計時機能を利用し、熱媒タンク6内の温度変化や水位変化の傾向情報を組み合せて異常のレベルを判断するようにしてもよい。これにより、熱交換器に発生した異常が緊急性を要するものか否かを判断して、報知部106やリモコン装置に表示してもよく、または熱源装置30の運転を強制的に停止させるようにしてもよい。
【0044】
(3) 上記実施例2では、熱媒タンク6内の熱媒Hbの水位と温度変化を組み合せて熱交換器の異常を判断する場合を示したがこれに限らない。熱交換器の異常判定では、たとえば熱媒Hbの温度情報または水位情報のいずれか一方のみを利用して判断してもよい。
【0045】
以上説明したように、本発明の技術の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の、熱源装置およびその制御方法では、外部熱源熱媒と給水とを直接熱交換させず、かつ熱源装置内で循環している熱媒側の水圧を給水圧よりも低くすることで、給湯用の熱交換器にシングルプレートを利用することができ、有用である。
【符号の説明】
【0047】
2、30 熱源装置
4 外部熱源
6 熱媒タンク
8 第1の熱交換部
10 第2の熱交換部
12 熱源供給回路
14 循環路
16 ポンプ
18 浴槽
22 浴槽水熱交換部
24 その他の負荷
26 制御部
32-1 熱源往き管
32-2 熱源戻り管
34 暖房水熱交換器
36 熱媒制御弁
38、40、47、62、68、70、78、84 温度センサ
44 タンク
46-1 供給管路
46-2 バイパス管路
46-3 給湯加熱管路
46-4 高温暖房負荷管路
46-5 低温暖房負荷管路
46-6 熱媒戻り管路
48 与熱分配弁
50 混合弁
52 分配弁
54 給湯熱交換器
56-1 給水管
56-2 出湯管
58 バイパス管
60 ミキシング弁
64 水量センサ
66 水制御弁
72 注湯管
74 高温暖房端末
76 低温暖房端末
80 追焚循環路
82 浴槽水熱交換器
86 循環ポンプ
88 浴室リモコン装置
90 台所リモコン装置
92 水位センサ
94 給水圧データベース
96 必要熱量算出部
98 熱媒供給制御部
100 プロセッサ
102 メモリ部
104 タイマー
106 報知部
108 システム通信部
110 入出力(I/O)部
112 共通電極(COM)
114 第1の電極
116 第2の電極
120 タンク内水位監視機能部
122 タンク内温度監視機能部
124 熱交換器異常判断機能部