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特許7339657解析方法、製造方法、解析装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】解析方法、製造方法、解析装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20230830BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20230830BHJP
   G06F 113/26 20200101ALN20230830BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/23
G06F113:26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019185843
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060902
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真田 和昭
(72)【発明者】
【氏名】永田 員也
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-24179(JP,A)
【文献】特開2020-113078(JP,A)
【文献】特開2017-211887(JP,A)
【文献】特開2015-162221(JP,A)
【文献】特開2019-109696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析方法であって、
体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目まで粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、
前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目以上の粒子、及び各粒子の隙間を埋める前記第1の充填構造モデルの特性値を有するマトリクスを含む第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、
前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、
を含むことを特徴とする解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の解析方法であって、
前記第1の算出ステップにおいて前記第1の充填構造モデルの特性値を算出できなかった場合、または、前記第2の算出ステップにおいて前記第2の充填構造モデルの特性値を算出できなかった場合、前記kの値をデクリメントするデクリメントステップ、を含み、
前記第1の算出ステップ、及び前記第2の算出ステップは、デクリメントされたkの値に応じて、それぞれの処理を繰り返し実行する
ことを特徴とする解析方法。
【請求項3】
請求項2に記載の解析方法であって、
前記kの初期値は、n-1であり、
前記デクリメントステップは、前記kの値を1ずつデクリメントする
ことを特徴とする解析方法。
【請求項4】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析方法であって、
体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目までの粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、
前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目の粒子、及び各粒子の隙間を埋める算出済みの前記特性値を有するマトリクスからなる第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、
前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、
前記kの値をインクリメントするインクリメントステップと、
を含み、
前記第2の生成ステップ、及び前記第2の算出ステップは、インクリメントされた前記kの値に応じて、処理を繰り返し実行する
ことを特徴とする解析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の解析方法であって、
前記第1の算出ステップにおいて前記第1の充填構造モデルの特性値を算出できなかった場合、前記kの値をデクリメントするデクリメントステップ、を含み、
前記第1の生成ステップ、及び前記第1の算出ステップは、デクリメントされた前記kの値に応じて、処理を繰り返し実行する
ことを特徴とする解析方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の解析方法であって、
前記第1の充填構造モデル、及び前記第2の充填構造モデルは、RVE(Representative Volume Element)モデルである
ことを特徴とする解析方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の解析方法であって、
前記粒子の原料は、金属、金属酸化物、または金属窒化物であり、
前記マトリクスの原料は、樹脂である
ことを特徴とする解析方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の解析方法であって、
第1の算出ステップ、及び前記第2の算出ステップは、前記特性値として、熱特性値、熱機械特性値、力学特性値、及び電気特性値の少なくとも一つを算出する
ことを特徴とする解析方法。
【請求項9】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子、及び前記粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる粒子充填複合材料の製造方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の解析方法により得られた前記第2の充填構造モデルの特性値に基づく体積分率に従い、前記粒子及び前記マトリクスを配合する配合ステップ、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析装置であって、
前記粒子の少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定部と、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる充填構造モデルを生成する生成部と、
前記充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記充填構造モデルの特性値を算出する算出部と、を備え、
前記生成部は、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目まで粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む第1の充填構造モデルを生成し、
また、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目以上の粒子、及び各粒子の隙間を埋める前記第1の充填構造モデルの特性値を有するマトリクスを含む第2の充填構造モデルを生成し、
前記算出部は、
前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出し、
また、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する
ことを特徴とする解析装置。
【請求項11】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析するコンピュータに、
体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目まで粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、
前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目以上の粒子、及び各粒子の隙間を埋める前記第1の充填構造モデルの特性値を有するマトリクスを含む第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、
前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、
を含む処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析装置であって、
前記粒子の少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定部と、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる充填構造モデルを生成する生成部と、
充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記充填構造モデルの特性値を算出する算出部と、を備え、
前記生成部は、前記kの値を設定し、前記kの値に応じて、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目までの粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる第1の充填構造モデルを生成し、
また、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目の粒子、及び各粒子の隙間を埋める算出済みの前記特性値を有するマトリクスからなる第2の充填構造モデルを生成し、
前記算出部は、
前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出し、
また、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する
ことを特徴とする解析装置。
【請求項13】
体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析するコンピュータに、
体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目までの粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、
前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、
前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目の粒子、及び各粒子の隙間を埋める算出済みの前記特性値を有するマトリクスからなる第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、
前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、
前記kの値をインクリメントするインクリメントステップと、
を含む処理を実行させ、
前記第2の生成ステップ、及び前記第2の算出ステップは、インクリメントされた前記kの値に応じて、処理を繰り返し実行する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積が異なる複数の充填物を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する場合に用いて好適な解析方法、製造方法、解析装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
体積が異なる複数の充填物を含む粒子充填複合材料等の複合材料は、その微視構造がますます複雑細密化し、特性に影響を与える因子が多くなってきている。
【0003】
ここで、複合材料の特性とは、例えば、熱機械特性としての線膨張係数、力学特性としてのヤング率やポアソン比、熱特性としての熱伝導率、電気特性としての電気伝導率等を指す。
【0004】
このため、複合材料の特性は、多くの実験により評価する必要があり、研究開発のコストと時間を費やしているのが現状である。
【0005】
この対策として、数値シミュレーションを活用し、実験の補完をすることで、研究開発のコストと時間を削減しようとする取り組みが活発に行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-58453号公報
【文献】特開2014-193596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、複合材料の特性の発現には、複合材料を構成する材料の構造や特性の選定とそれらが形成する微視構造を適切に設計することが極めて重要である。現在、複合材料の微視構造を様々なスケールで詳細に表現して特性評価する数値シミュレーション手法として、代表体積要素モデル(以下、RVE(Representative volume element)モデルと称する)を用いた有限要素解析が注目されている。
【0008】
近年、電子機器等の放熱材料として、高い熱伝導率を有するセラミックス等の粒子と、粒子間の隙間を埋めるポリマーとを組み合わせた粒子充填複合材料が適用されている。
【0009】
粒子充填複合材料に高い熱伝導率を発現させるためには、複合材料の熱伝導率と粒子が形成する微視構造との関連性を十分に解明して材料設計することが重要であり、現在、粒子充填複合材料のRVEモデルを用いた有限要素解析が注目されている。
【0010】
しかしながら、高い熱伝導率を発現する粒子充填複合材料の内部では、様々な体積の粒子が高充填され、複雑な微視構造を形成しているため、有限要素解析による複合材料の熱伝導率予測は、非常に困難な状況である。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、粒子充填複合材料の特性値と等価な特性値を解析できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0013】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様に係る解析方法は、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析方法であって、体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目まで粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目以上の粒子、及び各粒子の隙間を埋める前記第1の充填構造モデルの特性値を有するマトリクスを含む第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記解析方法は、前記第1の算出ステップにおいて前記第1の充填構造モデルの特性値を算出できなかった場合、または、前記第2の算出ステップにおいて前記第2の充填構造モデルの特性値を算出できなかった場合、前記kの値をデクリメントするデクリメントステップ、を含むことができ、前記第1の算出ステップ、及び前記第2の算出ステップは、デクリメントされたkの値に応じて、それぞれの処理を繰り返し実行することができる。
【0015】
前記kの初期値は、n-1とすることができ、前記デクリメントステップは、前記kの値を1ずつデクリメントすることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る解析方法は、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析方法であって、体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目までの粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目の粒子、及び各粒子の隙間を埋める算出済みの前記特性値を有するマトリクスからなる第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、前記kの値をインクリメントするインクリメントステップと、を含み、前記第2の生成ステップ、及び前記第2の算出ステップは、インクリメントされた前記kの値に応じて、処理を繰り返し実行することを特徴とする。
【0017】
前記解析方法は、前記第1の算出ステップにおいて前記第1の充填構造モデルの特性値を算出できなかった場合、前記kの値をデクリメントするデクリメントステップ、を含むことができ、前記第1の生成ステップ、及び前記第1の算出ステップは、デクリメントされた前記kの値に応じて、処理を繰り返し実行することができる。
【0018】
前記第1の充填構造モデル、及び前記第2の充填構造モデルは、RVE(Representative Volume Element)モデルとすることができる。
【0019】
前記粒子の原料は、金属、金属酸化物、または金属窒化物とすることができ、
前記マトリクスの原料は、樹脂とすることができる。
【0020】
第1の算出ステップ、及び前記第2の算出ステップは、前記特性値として、熱特性値、熱機械特性値、力学特性値、及び電気特性値の少なくとも一つを算出することができる。
【0021】
本発明のさらに他の態様に係る製造方法は、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子、及び前記粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる粒子充填複合材料の製造方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の解析方法により得られた前記第2の充填構造モデルの特性値に基づく体積分率に従い、前記粒子及び前記マトリクスを配合する配合ステップ、を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明のさらに他の態様に係る解析装置は、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析装置であって、前記粒子の少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定部と、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる充填構造モデルを生成する生成部と、前記充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記充填構造モデルの特性値を算出する算出部と、を備え、前記生成部は、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目まで粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む第1の充填構造モデルを生成し、また、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目以上の粒子、及び各粒子の隙間を埋める前記第1の充填構造モデルの特性値を有するマトリクスを含む第2の充填構造モデルを生成し、前記算出部は、前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出し、また、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出することを特徴とする。
【0023】
本発明のさらに他の態様に係るプログラムは、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析するコンピュータに、体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目まで粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目以上の粒子、及び各粒子の隙間を埋める前記第1の充填構造モデルの特性値を有するマトリクスを含む第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、を含む処理を実行させることを特徴とする。
【0024】
本発明のさらに他の態様に係る解析装置は、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析する解析装置であって、前記粒子の少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定部と、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる充填構造モデルを生成する生成部と、充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記充填構造モデルの特性値を算出する算出部と、を備え、前記生成部は、前記kの値を変更し、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目までの粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる第1の充填構造モデルを生成し、また、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目の粒子、及び各粒子の隙間を埋める算出済みの前記特性値を有するマトリクスからなる第2の充填構造モデルを生成し、前記算出部は、前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出し、また、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出することを特徴とする。
【0025】
本発明のさらに他の態様に係るプログラムは、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子を含む粒子充填複合材料の特性値を解析するコンピュータに、体積が異なる前記n種類の粒子それぞれの少なくとも形態特定情報、体積分率、及び特性値を設定する設定ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順に1番目からk(kはnよりも小さい整数)番目までの粒子、及び各粒子の隙間を埋めるマトリクスからなる第1の充填構造モデルを生成する第1の生成ステップと、前記第1の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第1の充填構造モデルの特性値を算出する第1の算出ステップと、前記形態特定情報、及び前記体積分率に基づき、前記n種類の粒子のうちの体積が小さい順にk+1番目の粒子、及び各粒子の隙間を埋める算出済みの前記特性値を有するマトリクスからなる第2の充填構造モデルを生成する第2の生成ステップと、前記第2の充填構造モデルに対する要素分割、及び有限要素解析を行うことにより、前記第2の充填構造モデルの特性値を算出する第2の算出ステップと、前記kの値をインクリメントするインクリメントステップと、を含む処理を実行させ、前記第2の生成ステップ、及び前記第2の算出ステップは、インクリメントされた前記kの値に応じて、処理を繰り返し実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、粒子充填複合材料の特性値と等価な特性値を解析することが可能となる。
【0027】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、3粒子RVEモデルの一例を示す図である。
図2図2は、従来の特性値解析処理の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、2粒子均質化3粒子RVEモデルの一例を示す図である。
図4図4は、1粒子均質化3粒子RVEモデルの一例を示す図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る解析装置の構成例を示す図である。
図6図6は、第1の特性値解析処理の一例を説明するフローチャートである。
図7図7は、各粒子の平均サイズ及び体積分率の例を示す図である。
図8図8は、第1の特性値解析処理による解析値と実測値とを比較した図である。
図9図9は、第1の特性値解析処理による解析値と実測値とを比較した図である。
図10図10は、2粒子均質化3粒子RVEモデル、1粒子均質化3粒子RVEモデル、及び3粒子RVEモデルそれぞれの解析値を比較した図である。
図11図11は、第2の特性値解析処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、一実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0030】
<本実施形態の解析対象について>
初めに、本発明の実施形態が解析対象とする粒子充填複合材料について説明する。
【0031】
本実施形態は、体積が異なる複数の粒子(例えば、大粒子、中粒子、及び小粒子)と、各粒子の隙間を埋めるためのマトリクスとを含む粒子充填複合材料を解析対象とし、その特性値(例えば、熱伝導率)を解析する。
【0032】
粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物を原料とする。マトリクスは、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等のポリマー樹脂を原料とする。
【0033】
ただし、粒子充填複合材料に含まれる粒子の体積の種類は、大、中、小の3種類に限らず、2種類または4種類以上であってもよい。
【0034】
また、特性値は、熱特性を表す熱伝導率に限らず、熱機械特性を表す線膨張係数、力学特性(弾性特性)を表すヤング率やポアソン比、電気特性を表す電気伝導率を解析するようにしてもよい。
【0035】
<3粒子RVE(Representative volume element)モデルについて>
図1は、大粒子CP(Coarse Particles)、中粒子MP(Medium Particles)、及び小粒子FP(Fine Particles)、並びに各粒子の隙間を埋めるマトリクスPM(Polymer Matrix)を含む粒子充填複合材料をモデル化した3粒子RVEモデルの一例を示している。
【0036】
3粒子RVEモデルは、立方体であり、その一辺の長さ、各粒子のサイズ、各粒子の体積分率等が設定された後、モンテカルロシミュレーションを用いて、大きい粒子から順に、指定される体積分率になるまで各粒子同士が重ならないように分散、配置して生成される。なお、RVEモデルの生成には、MSCソフトウェア株式会社製のDigimat-FEを用いることができる。
【0037】
生成された3粒子RVEモデルの全ての境界においては、周期対称性が担保されており、3粒子RVEモデルに含まれる粒子及びマトリクスの界面は、完全に接着されているものとする。
【0038】
図1に示された3粒子RVEモデルにおける大粒子CPの体積分率Vf 、中粒子MPの体積分率V 、及び小粒子FPの体積分率V は、それぞれ次式(1)~(3)によって表される。
【0039】
【数1】
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
ここで、Vは大粒子CPの体積、Vは中粒子MPの体積、Vは小粒子FPの体積、Vはマトリクスの体積である。
【0042】
<RVEモデルに対する従来の特性値解析処理>
次に、図2は、RVEモデルに対する従来の特性値解析処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
はじめに、コンピュータによって構成される解析装置により、ユーザからの入力に基づいて、粒子充填複合材料を構成する構成材料の設定が行われる(ステップS1)。具体的には、構成材料(各粒子及びマトリクス)の原料と、構成材料の特性値を設定する。例えば、原料としては、アルミナ、窒化アルミニウム、エポキシ樹脂等を設定し、さらに、各構成材料の特性値(熱伝導率等)を設定する。
【0044】
次に、解析装置により、ユーザからの入力に基づいて、構成材料の相の設定が行われる(ステップS2)。具体的には、各構成材料と相(粒子またはマトリクス)とを対応付けて、粒子については、形状(球状、繊維状(円柱状)、多面体状等)、サイズ、体積分率を設定する。なお、体積が異なる複数の粒子をRVEモデルに含める場合、体積が異なる粒子毎に構成材料を対応付ける。
【0045】
次に、解析装置により、ユーザから入力される、生成するRVEモデルのサイズとしての立方体の一辺の長さに基づき、RVEモデルが生成される(ステップS3)。
【0046】
RVEモデルは、そのサイズが大きいほど、RVEモデルに含まれる粒子数が多くなるので、特性値の解析精度を上げることができる。しかしながら、RVEモデルのサイズが大きいほど、後述する要素分割が困難となって、演算量が増大することになる。よって、解析精度を重視するか、演算量を重視するかによってRVEモデルのサイズを決定する必要がある。
【0047】
次に、解析装置により、生成されたRVEモデルの要素分割を行い、有限要素モデルを生成する(ステップS4)。具体的には、フリーメッシュ法を用い、RVEモデルを複数の要素に分割する。要素には、RVEモデルよりもサイズが小さい四面体要素を採用する。四面体要素は、そのサイズが小さいほど、RVEモデルを分割し易くなる。しかしながら、RVEモデルを分割する四面体要素の数が増えて演算量が増大することになる。よって、RVEモデルの分割のし易さを重視するか、演算量を重視するかによって四面体要素のサイズを決定する必要がある。なお、要素は、四面体に限らず、五面体、六面体等の他の多面体を採用してもよい。
【0048】
次に、解析装置により、RVEモデルを要素分割した有限要素モデルに対して境界条件が設定される(ステップS5)。具体的には、本実施形態の場合、熱特性を解析するので、有限要素モデルの各境界における温度を設定する。なお、力学特性を解析する場合には、有限要素モデルの各境界における変位量を設定し、電気特性を解析する場合には、有限要素モデルの各境界における電位を設定すればよい。
【0049】
次に、解析装置により、有限要素解析を行う(ステップS6)。具体的には、有限要素モデルに対して設定された境界条件に基づいて連立一次方程式を構築し、ソルバーを用いて連立一次方程式の解を数値的に求める。
【0050】
次に、解析装置により、ソルバーを用いて求めた連立一次方程式の解に基づき、RVEモデルの特性値を算出する(ステップS7)。なお、粒子がランダムに分散しているRVEモデルに対しては、3軸方向それぞれの特性値が算出されるが、RVEモデルの特性値としては、3軸方向それぞれの特性値の平均値を採用すればよい。
【0051】
なお、上述したステップS3のRVEモデルの生成、ステップS4のRVEモデルの要素分割、ステップS6の有限要素解析、ステップS7の特性値算出には、上述したDigimat-FE等を利用することができる。
【0052】
以上で、RVEモデルに対する従来の特性値解析処理は終了される。上述した従来の特性値解析処理によれば、3粒子RVEモデルのようにスケールが異なる複数の粒子を含むRVEモデルであっても、演算時間は要するが、その特性値を解析することができる。
【0053】
ただし、RVEモデルに含まれる粒子どうしのサイズの差が大きいと、要素分割が不十分となり、連立一次方程式の解が求まらず、解析が中断されることもある。
【0054】
そこで、以下においては、RVEモデルに含まれる粒子どうしのサイズの差を小さくし得る方法について説明する。
【0055】
<2粒子均質化3粒子RVEモデルについて>
次に、図3は、大粒子CP、中粒子MP、及び小粒子FP、並びにマトリクスPMを含む粒子充填複合材料をモデル化した2粒子均質化3粒子RVEモデルの一例を示している。
【0056】
2粒子均質化3粒子RVEモデルは、図1に示された3粒子RVEモデルのうち、大粒子CPが占める領域以外の領域、すなわち、中粒子MP、小粒子FP、及びマトリクスPMが占める領域において中粒子MP、小粒子FP、及びマトリクスPMが均質化されていると見做したものである。以下、3粒子RVEモデルのうち、中粒子MP、小粒子FP、及びマトリクスPMが占める領域における所定サイズの立方体を2粒子均質化RVEモデルと称する。
【0057】
2粒子均質化RVEモデルは、本発明のn=3、k=2における第1の充填構造モデルに相当し、2粒子均質化3粒子RVEモデルは、本発明のn=3、k=2における第2の充填構造モデルに相当する。
【0058】
なお、2粒子均質化3粒子RVEモデルにおける大粒子CP、中粒子MP、及び小粒子FPそれぞれの体積分率は、上述した式(1)~(3)によって表されるが、2粒子均質化RVEモデルにおける中粒子MPの体積分率V M’、及び小粒子FPの体積分率V F’は、それぞれ次式(4),(5)によって表される。
【0059】
【数4】
【0060】
【数5】
2粒子均質化3粒子RVEモデルの場合、2粒子均質化RVEモデルに対して従来の特性値解析処理を行うことにより、2粒子均質化RVEモデルの特性値を算出し、算出した2粒子均質化RVEモデルの特性値を用いて、2粒子均質化3粒子RVEモデルの特性値を算出することができる。
【0061】
2粒子均質化RVEモデルは、含まれる中粒子MPと小粒子FPとのサイズの差が、3粒子RVEモデルに含まれる大粒子CPと小粒子FPとのサイズの差に比べて小さい。よって、2粒子均質化RVEモデルは、3粒子RVEモデルに比べて、従来の特性値解析処理を行った場合の演算量を削減でき、演算時間を短縮できる。
【0062】
2粒子均質化3粒子RVEモデルは、大粒子CPと、均質化されている物質(2粒子均質化RVEモデル)から構成されるので、3粒子RVEモデルに比べて、容易に特性値を算出できる。
【0063】
<1粒子均質化3粒子RVEモデルについて>
次に、図4は、大粒子CP、中粒子MP、及び小粒子FP、並びにマトリクスPMを含む粒子充填複合材料をモデル化した1粒子均質化3粒子RVEモデルの一例を示している。
【0064】
1粒子均質化3粒子RVEモデルは、図1に示された3粒子RVEモデルのうち、大粒子CP、及び中粒子MPが占める領域以外の領域、すなわち、小粒子FP、及びマトリクスPMが占める領域において小粒子FP、及びマトリクスPMが均質化されていると見做したものである。以下、3粒子RVEモデルのうち、小粒子FP、及びマトリクスPMが占める領域における所定サイズの立方体を1粒子均質化RVEモデルと称する。
【0065】
1粒子均質化RVEモデルは、本発明のn=3、k=1における第1の充填構造モデルに相当し、1粒子均質化3粒子RVEモデルは、本発明のn=3、k=1における第2の充填構造モデルに相当する。
【0066】
なお、1粒子均質化3粒子RVEモデルにおける大粒子CP、中粒子MP、及び小粒子FPそれぞれの体積分率は、上述した式(1)~(3)によって表されるが、1粒子均質化RVEモデルにおける小粒子FPの体積分率V F’は、次式(6)によって表される。
【0067】
【数6】
1粒子均質化3粒子RVEモデルの場合、初めに1粒子均質化RVEモデルに対して従来の特性値解析処理を行うことにより、1粒子均質化RVEモデルの特性値を算出し、算出した1粒子均質化RVEモデルの特性値を用いて、1粒子均質化3粒子RVEモデルの特性値を算出することができる。
【0068】
1粒子均質化RVEモデルは、小粒子FP及びマトリクスPMによって構成されるので、3粒子RVEモデルに比べて、容易に特性値を算出できる。
【0069】
1粒子均質化3粒子RVEモデルは、大粒子CP、中粒子MP、及び均質化されている物質(1粒子均質化RVEモデル)から構成され、含まれる大粒子CPと中粒子MPとのサイズの差は、3粒子RVEモデルに含まれる大粒子CPと小粒子FPとのサイズの差に比べて小さい。よって、1粒子均質化RVEモデルは、3粒子RVEモデルに比べて、従来の特性値解析処理を行った場合の演算量を削減でき、演算時間を短縮できる。
【0070】
<本発明の一実施形態に係る解析装置10の構成例>
次に、図5は、本発明の一実施形態に係る解析装置10の構成例を示している。
【0071】
解析装置10は、体積が異なるn(nは2以上の整数)種類の粒子と、各粒子の隙間を埋めるマトリクスを含む粒子充填複合材料を解析対象とし、その特性値を解析するものである。
【0072】
解析装置10は、処理部11、記憶部12、入力部13、通信部14、及び表示部15を備える。解析装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータからなる。
【0073】
処理部11は、コンピュータが有するCPU(Central Processing Unit)に相当し、解析装置10の全体を制御する。また、処理部11は、所定のプログラムを実行することにより、材料・相設定部111、RVEモデル生成部112、要素分割部113、境界条件設定部114、及び解析部115の各機能ブロックを実現する。
【0074】
記憶部12は、コンピュータが有するメモリやストレージに相当し、材料DB(Data Base)121を記憶する。材料DB121には、粒子充填複合材料の構成材料となり得る原料に関する情報(各特性における特性値等)が格納されている。また、記憶部12は、処理部11の各機能ブロックによる各種演算の作業領域として使用される。
【0075】
入力部13は、コンピュータが有するキーボード、マウス等の入力デバイスに相当し、ユーザからの各種入力を受け付けて処理部11に出力する。通信部14は、コンピュータが有する通信モジュールに相当し、ネットワークを介して他の装置と通信を行う。表示部15は、コンピュータが有するディスプレイに相当し、解析結果等を表示する。
【0076】
材料・相設定部111は、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、粒子充填複合材料を構成する構成材料の原料、粒子の形状、サイズ、特性値、及び体積分率等を設定する。材料・相設定部111は、材料DB121を参照して、材料の特性値を設定することができる。材料・相設定部111は、本発明の設定部に相当する。
【0077】
ここで、粒子の形状については、例えば、球状、繊維状(円柱状)、多面体状等を選択して設定できるようにしてもよい。粒子のサイズについては、粒子の形状が球状である場合には直径、繊維状(円柱状)である場合には直径及び長さ、多面体状である場合には一辺の長さを設定すればよい。粒子の形状及びサイズは、本発明の形態特定情報に相当する。
【0078】
RVEモデル生成部112は、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、RVEモデルを生成する。RVEモデル生成部112は、本発明の生成部に相当する。
【0079】
要素分割部113は、生成されたRVEモデルの要素分割を行う。境界条件設定部114は、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、RVEモデルを要素分割した各有限要素モデルに対して境界条件を設定する。解析部115は、有限要素解析を行い、RVEモデルの特性値を算出する。要素分割部113、境界条件設定部114、及び解析部115は、本発明の算出部に相当する。
【0080】
<解析装置10による第1の特性値解析処理の一例>
次に、図6は、解析装置10による第1の特性値解析処理の一例を説明するフローチャートである。
【0081】
第1の特性値解析処理は、ユーザからの所定の開始操作に応じて開始される。
【0082】
はじめに、材料・相設定部111が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、粒子充填複合材料の構成材料を設定する(ステップS11)。具体的には、ユーザからの入力に基づき、体積が異なるn種類の粒子、及びマトリクスの原料と、構成材料(原料)の特性値を設定する。
【0083】
次に、材料・相設定部111が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、粒子充填複合材料の構成材料の相を設定する(ステップS12)。具体的には、n種類の粒子及びマトリクスそれぞれと、構成材料とを対応付ける。さらに、各粒子については、形状、サイズ、及び体積分率を設定する。なお、体積分率については、同一の粒子であっても、以降に生成するk粒子均質化RVEモデルのkの値によってその値が異なるので設定時に注意が必要である。
【0084】
次に、RVEモデル生成部112が、kの初期値にn-1に設定する(ステップS13)。次に、RVEモデル生成部112が、入力部13を用いてユーザが入力するRVEモデルのサイズ(立方体の一辺の長さ)に基づき、体積が小さい方からk番目までの粒子及びマトリクスを含むk粒子均質化RVEモデルを生成する(ステップS14)。具体的には、モンテカルロシミュレーションを用いて、大きい粒子から順に、各粒子同士が重ならないように分散、配置してn粒子RVEモデルを生成する。例えば、nが3である場合、中粒子、小粒子、及びマトリクスを含む2粒子均質化RVEモデルを生成する。
【0085】
次に、ステップS14で生成されたk粒子均質化RVEモデルの特性値を算出する(ステップS15)。具体的には、要素分割部113が、k粒子均質化RVEモデルの要素分割を行い、境界条件設定部114が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、k粒子均質化RVEモデルを分割した各有限要素モデルに対して境界条件を設定する。さらに、解析部115が、有限要素モデルに対して設定された境界条件に基づいて連立一次方程式を構築し、ソルバーを用いて連立一次方程式の解を求め、求めた解に基づき、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出する。例えば、nが3である場合、2粒子均質化RVEモデルの特性値を算出する。ただし、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できないこともある。
【0086】
次に、解析部115が、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できたか否かを判定する(ステップS16)。
【0087】
ここで、解析部115がk粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できたと判定した場合(ステップS16でYES)、次に、RVEモデル生成部112が、入力部13を用いてユーザが入力するRVEモデルのサイズに基づき、k粒子均質化n粒子RVEモデルを生成する(ステップS17)。具体的には、体積が小さい順にk+1番目以上の粒子と、ステップS15で算出できたk粒子均質化RVEモデルの特性値を有するマトリクスとを含むRVEモデルを生成すればよい。例えば、nが3、kが2である場合、大粒子と、2粒子均質化RVEモデルの特性値を有するマトリクスを含むRVEモデルを生成すればよい。
【0088】
次に、ステップS17で生成されたk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出する(ステップS18)。具体的には、要素分割部113が、k粒子均質化n粒子RVEモデルの要素分割を行い、境界条件設定部114が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、k粒子均質化n粒子RVEモデルを分割した各有限要素モデルに対して境界条件を設定する。さらに、解析部115が、有限要素モデルに対して設定された境界条件に基づいて連立一次方程式を構築し、ソルバーを用いて連立一次方程式の解を求め、求めた解に基づき、k粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出する。例えば、nが3、kが2である場合、2粒子均質化3粒子RVEモデルの特性値を算出する。ただし、k粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出できないこともある。
【0089】
次に、解析部115が、k粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出できたか否かを判定する(ステップS19)。ここで、解析部115がk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出できたと判定した場合(ステップS19でYES)、該第1の特性値解析処理は終了される。
【0090】
なお、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できなかったと判定された場合(ステップS16でNO)、または、k粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出できなかったと判定された場合(ステップS19でNO)、次に、RVEモデル生成部112が、kは1であるか否かを判定する(ステップS20)。ここで、RVEモデル生成部112がkは1ではないと判定した場合(ステップS20でNO)、kを1だけデクリメントし(ステップS21)、処理をステップS14に戻して、ステップS14以降の処理を繰り返す。例えば、nが3である場合、現在のkは2であって1ではないので、kを1にデクリメントし、ステップS14以降の処理が繰り返される。
【0091】
その後、RVEモデル生成部112が、kは1であると判定した場合(ステップS20でYES)、k粒子均質化RVEモデルの特性値、またはk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値が算出されないまま該第1の特性値解析処理は終了されることになる。
【0092】
上述した第1の特性値解析処理によれば、体積が異なるn種類の粒子、及びマトリクスを含む粒子充填複合材料を、k粒子均質化n粒子RVEモデルとして解析するので、n粒子RVEモデルとして解析する場合に比べて、RVEモデルに含まれる粒子どうしのサイズの差を小さくでき、要素分割をより確実に実行できる。よって、要素解析が中断されてしまうことを抑止できる。また、n粒子RVEモデルに対して従来の特性値解析処理を行う場合に比べ、要する時間を大幅に減少させることができる。
【0093】
<変形例>
次に、第1の特性値解析処理の変形例について説明する。第1の特性値解析処理では、kの初期値をn-1として、k粒子均質化RVEモデルやk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出できない場合、kの値を1ずつデクリメントした。
【0094】
第1の変形例としては、kの初期値をn-1よりも小さな値にしてもよい。また、k粒子均質化RVEモデルやk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出できない場合、kの値を1よりも大きな所定値ずつデクリメントしてもよい。これにより、nの値が比較的大きい場合において、最終の目的とするk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値をより早く算出することができる。
【0095】
第1の特性値解析処理では、n粒子RVEモデルの特性値を直接的には解析していない。第2の変形例としては、第1の特性値解析処理を実行する前に従来の特性値解析処理(図2)を実行するようにし、その結果、n粒子RVEモデルの特性値を算出できなかった場合にのみ、第1の特性値解析処理のステップS13以降を実行するようにしてもよい。
【0096】
<特性値の実測値と、特性値解析処理による解析値の比較>
次に、大粒子、中粒子、及び小粒子、並びにマトリクスを含む粒子充填複合材料の熱伝導率の実測値と、粒子充填複合材料をモデル化した3粒子RVEモデル、2粒子均質化3粒子RVEモデル、及び1粒子均質化3粒子RVEモデルに対する第1の特性値解析処理による熱伝導率の解析値を比較する。
【0097】
粒子充填複合材料に含まれる大粒子、中粒子、及び小粒子の原料はアルミナとし、その熱伝導率は30W/mKとした。マトリクスの原料はエポキシ樹脂とし、その熱伝導率は0.2W/mKとした。
【0098】
粒子充填複合材料の熱伝導率の実測には、株式会社レスカ製の熱伝導率測定装置TCM1001を用い、定常法による熱伝導率測定を行なった。
【0099】
図7は、実測を行った粒子充填複合材料、及び解析を行ったRVEモデルにおける大粒子、中粒子、及び小粒子それぞれの平均サイズと体積分率との複数の組み合わせの例を示している。ただし、各組合せの全粒子体積分率は57.8%に統一している。各粒子の体積分率は、Intelligensys社製の粒子充填解析ソフトMacroPacを用いて、各粒子の組み合わせにおいて全粒子体積分率が最も高くなるように決定した。
【0100】
次に、図8は、大粒子のサイズを71μm、中粒子のサイズを28μmに固定し、小粒子のサイズを2μm、4μm、8μmに変化させた場合の粒子充填複合材料の熱伝導率の実測値と、粒子充填複合材料をモデル化した1粒子均質化3粒子RVEモデルの熱伝導率の解析値を比較した図である。
【0101】
同図に示されるように、小粒子のサイズがいずれの場合でも、解析結果と実測結果がほぼ一致した。すなわち、第1の特性値解析処理によるRVEモデルの特性値の解析値は、元の粒子充填複合材料の特性値の実測値とほぼ等価であった。これは、大粒子、中粒子に比べて、小粒子が十分に小さいためであると考えられる。
【0102】
次に、図9は、大粒子のサイズを71μm、小粒子のサイズを2μmに固定し、中粒子のサイズを16μm、28μmに変化させた場合の粒子充填複合材料の熱伝導率の実測値と、粒子充填複合材料をモデル化した1粒子均質化3粒子RVEモデルの熱伝導率の解析値を比較した図である。
【0103】
同図に示されるように、中粒子のサイズがいずれの場合でも、解析結果と実測結果がほぼ一致した。すなわち、第1の特性値解析処理によるRVEモデルの特性値の解析値は、元の粒子充填複合材料の特性値の実測値とほぼ等価であった。これは、大粒子に比べて、中粒子が十分に小さいためであると考えられる。
【0104】
次に、図10は、大粒子のサイズを71μm、中粒子のサイズを28μm、小粒子のサイズを16μmとした場合の粒子充填複合材料をモデル化した2粒子均質化3粒子RVEモデル、1粒子均質化3粒子RVEモデル、及び3粒子RVEモデルそれぞれの熱伝導率の解析値を比較した図である。
【0105】
なお、2粒子均質化3粒子RVEモデル、及び1粒子均質化3粒子RVEモデルの解析値は、本実施形態による第1の特性値解析処理(図6)によって得たものであり、3粒子RVEモデルの解析値は、上述した従来の特性値解析処理(図2)によって得たものである。
【0106】
同図に示されるように、2粒子均質化3粒子RVEモデル、及び1粒子均質化3粒子RVEモデルそれぞれの解析値は、3粒子RVEモデルの解析値に近い値となった。また、本実施形態による第1の特性値解析処理は、従来の特性値解析処理に比べて、要する時間を大幅に削減できた。
【0107】
したがって、図8図10より、解析装置10による特性値解析処理の有効性を検証できた。
【0108】
<解析装置10による第2の特性値解析処理>
次に、図11は、解析装置10による第2の特性値解析処理の他の一例を説明するフローチャートである。
【0109】
第2の特性値解析処理は、ユーザからの所定の開始操作に応じて開始される。なお、第2の特性値解析処理におけるステップS31~S36の処理は、第1の特性値解析処理(図6)におけるステップS1~S16の処理と同様なので、その具体的な説明は適宜省略する。
【0110】
はじめに、材料・相設定部111が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、粒子充填複合材料の構成材料を設定する(ステップS31)。次に、材料・相設定部111が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、粒子充填複合材料の構成材料の相を設定する(ステップS32)。次に、RVEモデル生成部112が、kの初期値にn-1に設定する(ステップS33)。次に、RVEモデル生成部112が、入力部13を用いてユーザが入力したRVEモデルのサイズ(立方体の一辺の長さ)に基づき、体積が小さい方からk番目までの粒子及びマトリクスを含むk粒子均質化RVEモデルを生成する(ステップS34)。
【0111】
次に、ステップS34で生成されたk粒子均質化RVEモデルの特性値を算出する(ステップS35)。ただし、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できないこともある。
【0112】
次に、解析部115が、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できたか否かを判定する(ステップS36)。
【0113】
ここで、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できなかったと判定された場合(ステップS36でNO)、次に、RVEモデル生成部112が、kは1であるか否かを判定する(ステップS37)。ここで、RVEモデル生成部112がkは1ではないと判定した場合(ステップS37でNO)、kを1だけデクリメントし(ステップS38)、処理をステップS34に戻して、ステップS34以降の処理を繰り返す。なお、RVEモデル生成部112が、kは1であると判定した場合(ステップS37でYES)、k粒子均質化RVEモデルの特性値が算出されないまま該第2の特性値解析処理は終了されることになる。
【0114】
一方、解析部115がk粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できたと判定した場合(ステップS36でYES)、次に、RVEモデル生成部112が、k粒子均質化k+1粒子RVEモデルを生成する(ステップS39)。
【0115】
具体的には、体積が小さい順にk+1番目以上の粒子と、ステップS35で算出できたk粒子均質化RVEモデルの特性値を有するマトリクスとを含むRVEモデルを生成すればよい。例えば、nが5、現在のkが2である場合、体積が小さい順に3~5番目の粒子と、2粒子均質化RVEモデルの特性値を有するマトリクスとを含むRVEモデルを生成すればよい。
【0116】
次に、ステップS39で生成されたk粒子均質化k+1粒子RVEモデルの特性値を算出する(ステップS40)。具体的には、要素分割部113が、k粒子均質化k+1粒子RVEモデルの要素分割を行い、境界条件設定部114が、入力部13を用いたユーザからの入力に基づき、k粒子均質化k+1粒子RVEモデルを分割した各有限要素モデルに対して境界条件を設定する。さらに、解析部115が、有限要素モデルに対して設定された境界条件に基づいて連立一次方程式を構築し、ソルバーを用いて連立一次方程式の解を求め、求めた解に基づき、k粒子均質化k+1粒子RVEモデルの特性値を算出する。例えば、nが5、現在のkが2である場合、2粒子均質化3粒子RVEモデルの特性値を算出する。
【0117】
次に、RVEモデル生成部112が、現在のkの値がn-1であるか否かを判定する(ステップS41)。ここで、現在のkの値がn-1ではないと判定された場合(ステップS41でNO)、RVEモデル生成部112が、現在のkの値を1だけインクリメントし(ステップS42)、処理をステップS39に戻して、ステップS39以降の処理を繰り返す。例えば、nが5、現在のkが2である場合、現在のk(=2)はn-1(=4)ではないので、kが3にインクリメントされ、ステップS39以降の処理が繰り返される。
【0118】
その後、現在のkの値がn-1であると判定された場合(ステップS41でYES)、直前のステップS40ではk粒子均質化n粒子RVEモデルの特性値を算出したことになるので、該特性値解析処理は終了される。例えば、nが5、現在のkが4である場合、現在のk(=4)はn-1(=4)と等しいので、直前のステップS40では4粒子均質化5粒子RVEモデルの特性値を算出したことになるので、該第2の特性値解析処理は終了される。
【0119】
上述した第2の特性値解析処理によれば、体積が異なるn種類の粒子、及びマトリクスを含む粒子充填複合材料を、1種類の粒子と均質化物質からなるk粒子均質化k+1粒子RVEモデルとして解析するので、確実に特性値を得ることができる。
【0120】
第2の特性値解析処理によれば、下記のような解析が可能となる。
【0121】
例えば、体積が異なる5種類の粒子(粒子K~K:K>K>K>K>K)及びマトリクスからなる粒子充填複合材料の特性値を解析するに際し、kをデクリメントしてk=2である場合に、粒子K,K、及びマトリクスからなる2粒子均質化RVEモデルの特性値Xを解析できた場合、次に、粒子Kと、特性値Xを有するマトリクスとを含む2粒子均質化3粒子RVEモデルの特性値Xを解析し、次に、粒子Kと、特性値Xを有するマトリクスとを含む3粒子均質化4粒子RVEモデルの特性値Xを解析し、最後に、粒子Kと、特性値Xを有するマトリクスとを含む4粒子均質化5粒子RVEモデルの特性値Xを解析することになる。このようにして解析した特性値Xは、体積が異なる5種類の粒子K~K及びマトリクスからなる粒子充填複合材料の特性値として見做すことができる。
【0122】
<変形例>
次に、第2の特性値解析処理の変形例について説明する。第2の特性値解析処理では、kの初期値をn-1として、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できない場合、kの値を1ずつデクリメントした。
【0123】
第1の変形例としては、kの初期値をn-1よりも小さな値にしてもよい。また、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出できない場合、kの値を1よりも大きな所定値ずつデクリメントしてもよい。これにより、nの値が比較的大きい場合において、k粒子均質化RVEモデルの特性値をより早く算出することができる。
【0124】
また、kの初期値を1として、k粒子均質化RVEモデルの特性値を算出し、算出したk粒子均質化RVEモデルの特性値を用いて、k粒子均質化k+1粒子RVEモデルの特性値を算出し、この後、k粒子均質化n粒子RVEモデルとなるまで、kの値をインクリメントして、k粒子均質化k+1粒子RVEモデルの特性値を算出するようにしてもよい。
【0125】
第2の変形例としては、kの初期値を1に設定してもよい。この場合、演算量は最も多くなるが、特性値が算出できなくなる事態の発生を最も回避することができる。
【0126】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0127】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、例えば、解析装置10による特性値解析処理の解析結果に基づいて粒子充填複合材料を製造する製造方法に適用することが可能である。
【0128】
また、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0129】
10・・・解析装置、11・・・処理部、12・・・記憶部、13・・・入力部、14・・・通信部、15・・・表示部、111・・・材料・相設定部、112・・・RVEモデル生成部、113・・・要素分割部、114・・・境界条件設定部、115・・・解析部、121・・・材料DB、CP・・・大粒子、FP・・・小粒子、MP・・・中粒子、PM・・・マトリクス
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