(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】水中作業具及び水中作業システム
(51)【国際特許分類】
A01M 21/02 20060101AFI20230830BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20230830BHJP
A01D 44/00 20060101ALI20230830BHJP
E02B 15/00 20060101ALI20230830BHJP
B63B 35/32 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A01M21/02
B63B35/00 Z
A01D44/00
E02B15/00 Z
B63B35/32 Z
(21)【出願番号】P 2019187848
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2018209776
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢
(72)【発明者】
【氏名】嶺田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉永 育生
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恵司
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-324074(JP,A)
【文献】特開昭62-125994(JP,A)
【文献】特開2016-102785(JP,A)
【文献】特開2009-055922(JP,A)
【文献】特開平10-117663(JP,A)
【文献】実開昭51-136991(JP,U)
【文献】実開昭48-082686(JP,U)
【文献】特表2002-505979(JP,A)
【文献】特開平09-254870(JP,A)
【文献】実公昭46-034200(JP,Y1)
【文献】特公昭46-013342(JP,B1)
【文献】特開昭61-271194(JP,A)
【文献】特開昭55-074740(JP,A)
【文献】特開2018-136249(JP,A)
【文献】特開2006-097464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B63B 35/00
A01D 44/00
E02B 15/00
B63B 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で所定の作業を行う作業部と、
前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、
前記作業部及び前記進路誘導部を連結する連結部と、
水流を受けることで推進力を得る水中帆と、
浮子と、を備え、
前記進路誘導部は、長手の非可撓性部材から構成され、
前記連結部は、可撓性部材から構成されていることを特徴とする水中作業具。
【請求項2】
水中で所定の作業を行う作業部と、
前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、
前記作業部及び前記進路誘導部を連結する連結部と、
浮子と、を備え、
前記連結部は、可撓性部材から構成されていることを特徴とする水中作業具。
【請求項3】
水中で所定の作業を行う作業部と、
前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、
前記作業部及び前記進路誘導部を連結する連結部と、
水流を受けることで推進力を得る水中帆と、
浮子と、を備え、
前記進路誘導部及び前記連結部は、可撓性部材から構成されていることを特徴とする水中作業具。
【請求項4】
前記作業部は、前記連結部によって前記進路誘導部の少なくとも2箇所に連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の水中作業具。
【請求項5】
前記水中帆に、浮子と、前記浮子と対向する位置に配置された錘子と、を設けたことを特徴とする請求項1又は3に記載の水中作業具。
【請求項6】
前記水中帆は、水抜き孔を有することを特徴とする請求項1、3又は5に記載の水中作業具。
【請求項7】
前記浮子に、当該浮子の進行方向を定める舵と、前記舵を揺動させる揺動機構と、所定の基準部と前記浮子との位置関係に関する位置情報を取得するセンサと、前記センサで取得した前記位置情報に基づいて、前記揺動機構を制御する制御部と、を有する操舵装置を設けたことを特徴とする請求項
1~6のいずれか一項に記載の水中作業具。
【請求項8】
前記浮子又はその近傍に、所定の回収部によって回収するための引掛部を設けたことを特徴とする請求項
1~7のいずれか一項に記載の水中作業具。
【請求項9】
作業環境及び作業状態のいずれかに関する情報を取得する情報取得部を、備えていることを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載の水中作業具。
【請求項10】
前記作業部が、水草を刈取る刈取部であり、前記水中作業具が、農業用水路の水草の除去に用いられる水草除去具であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の水中作業具。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の水中作業具と、前記水中作業具を回収する回収部と、を備え、
前記回収部は、水流に対して交差する方向に架け渡された長手部材を有していることを特徴とする水中作業システム。
【請求項12】
前記長手部材は、水流の上流側から下流側の回収位置に向かって水流に対して斜めに配置されていることを特徴とする請求項
11に記載の水中作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中作業具及び水中作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用水路に水草が過剰に繁茂すると、水管理に影響したり、千切れた水草がゴミに混入することで、ゴミの処分量の増加を招いたりすることがある。そのため、従来は人力によって、長柄カマ等を用いて水草を刈取っていたが、水中での作業には多大な労力を必要とするとともに、農村の過疎化や高齢化により、作業者の確保が困難となってきている(非特許文献1参照)。
【0003】
このような作業者の労力を軽減すべく、エンジン駆動部によって刈刃を回転駆動して水草を刈取る刈払機であって、刈刃を設けた先端部近傍に浮子を備えたものが開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の刈払機は、浮子によって先端部の重量を軽減し、水中での水草の刈取り時の作業性の向上を図ろうとしているが、この場合も人力によって刈取る必要があるため、人手不足を解消するものではない。また、刈刃を含む水中への投入部分の防水対策やメンテナンスが必要である。
【0004】
一方、河川や湖沼等、比較的広面積の水域では、繁茂した水草を船によって刈取って回収している。また、河川や湖沼等の水草を効率的に除去するための技術も開示されている(例えば、特許文献2~4参照)。
【0005】
特許文献2には、熊手状の引掛具で水中の水草を引っ掛け、この引掛具に連結されたワイヤを重量車両のウインチで巻き取ることによって、水草を除去する水草除去方法が開示されている。特許文献3には、水草等を刈取船によって刈取り、刈取船と別体に配設した処理船により水草等を切断し放流処理する水草等の処理方法及び装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、海底に投入した複数の環状チェーンを、船体に設けた電動又は油圧式の駆動装置によって海底で循環させることによって、海底の雑海草を除去する雑海草駆除船が開示されている。環状チェーンの海底への投入や引き上げは、船体に設けたクレーンによって行っている。
【0007】
しかしながら、上記各特許文献2~4に記載の従来技術では、船舶や重量車両、巻き取り装置等の大型機材を用いるため、大掛かりで操作に専門技術が必要であるとともに、導入コストやメンテナンスコストが嵩むものとなる。また、農業用水路等の比較的狭く水深の浅い水域では、穂刈船等を適用することは困難である。したがって、簡易な構成で取扱いが容易であり、水草の除去等の水中作業を、より少ない労務作業量で行うことができる技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開平4-9522号公報
【文献】特開2016-111996号公報
【文献】特開平11-127660号公報
【文献】特開平9-294444号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】山岡賢、吉永育生、嶺田拓也、木村信一、松本勉、島田敏、“ICT・ロボット化による用水路内の水草刈り作業軽減の展望”、農業農村工学会誌 水土の知、86(4)、p293-p296、2018.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、簡易な構成で取扱いが容易であり、水草の除去等の水中作業を、より少ない労務作業量で行うことができる水中作業具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の水中作業具は、水中で所定の作業を行う作業部と、前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、前記作業部及び前記進路誘導部を連結する連結部と、水流を受けることで推進力を得る水中帆と、を備え、前記進路誘導部は、長手の非可撓性部材から構成され、前記連結部は、可撓性部材から構成されていることを特徴とする。
また、本発明の水中作業具は、水中で所定の作業を行う作業部と、前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、前記作業部及び前記進路誘導部を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、可撓性部材から構成されていることを特徴としている。
または、本発明の水中作業具は、水中で所定の作業を行う作業部と、前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、前記作業部及び前記進路誘導部を連結する連結部と、水流を受けることで推進力を得る水中帆と、を備え、前記進路誘導部及び前記連結部は、可撓性部材から構成されていることを特徴とする。
または、本発明の水中作業具は、水中で所定の作業を行う作業部と、前記作業部を進路方向に導く進路誘導部と、水流を受けることで推進力を得る模型船と、前記模型船の移動を制御する移動規制部と、を備え、前記模型船は、当該模型船の進行方向を定める舵と、前記舵を揺動させる揺動機構と、前記揺動機構を制御する制御部と、を有する操舵装置を備えていることを特徴とする。
また、本発明の水中作業システムは、このような水中作業具と、前記水中作業具を回収する回収部と、を備え、前記回収部は、水流に対して交差する方向に架け渡された長手部材を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された水中作業具を水中に投入すると、水流によって水域内を流下しながら、作業部によって水中での作業を実行することができる。したがって、簡易な構成で取扱いが容易であり、水草の除去等の水中作業を、より少ない労務作業量で行うことができる水中作業具及び水中作業システムを提供することができる。また、可撓性を有する連結部を備えることで、進路誘導部の揺れや小刻みな動きが吸収され、作業部への影響を防止できる。また、進路誘導部を長手の非可撓性部材から構成することで、作業部をより円滑に下流方向へ導くことができる。また、進路誘導部を可撓性部材とすることで、水中作業具をよりコンパクトに収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る水中作業具としての水草除去具の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る水草除去具を用いた作業手順の一例を説明するための説明図である。
【
図3】第2実施形態に係る水草除去具の外観構成を模式的に示す平面図である。
【
図4】第1実施形態及び第2実施形態に係る水草除去具が堰を乗り越えるときの作用を説明するための説明図である。
【
図5】第3実施形態に係る水草除去具の外観構成を模式的に示す平面図及び水中帆の傘部の断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る水草除去具の外観構成を模式的に示す平面図である。
【
図7】第5実施形態に係る水草除去具の外観構成を模式的に示す平面図である。
【
図8】第5実施形態に係る水草除去具が堰を乗り越えるときの作用を説明するための説明図である。
【
図9】第6実施形態に係る水草除去具の外観構成を模式的に示す側面図である。
【
図10】第6実施形態及びその変形例1、2に係る水草除去具を模式的に示す平面図である。
【
図11】第7実施形態に係る水草除去具の外観構成を模式的に示す側面図である。
【
図12】第8実施形態に係る水草除去システムの構成及び水草除去具の回収手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の水中作業具の一例としての第1実施形態に係る水草除去具を、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る水草除去具100は、農業用水路1に投入されて底部(水底)2等に繁殖した水草Gを除去するために用いられる(
図2参照)。
【0015】
図1の斜視図に示すように、第1実施形態に係る水草除去具100は、作業部としての刈取部10と、進路誘導部20と、連結部30と、浮子(フロート)40と、水中帆(帆部)50と、を主に備えて構成される。以下、浮子40及び水中帆50と区別するべく、刈取部10、進路誘導部20及び連結部30からなる部位を、本体部Oと呼ぶ。また、進路誘導部20の延在方向を水草除去具100の長手方向(
図1のL)、これに交差する方向を幅方向(
図1のW)とする。
【0016】
刈取部10は、水中で水草Gの刈取り作業を行うものである。刈取部10は、進行方向に対して交差するように幅方向に長尺に配置された基部11を有し、この基部11の長さ方向の両側部に、水草を刈取る刈取本体12としての鋸刃12aとチェーン12bとが設けられている。
【0017】
基部11は、本実施形態では木製の板部材を用いているが、これに限定されることはなく、樹脂や金属材を用いてもよい。
【0018】
鋸刃12aは、基部11の下流側の一側に固定され、水草を切断して除去する。鋸刃12aは、刃先の方向が基部11の一側に対して平行となるように固定してもよいが、本実施形態では、
図1等に示すように、基部11の一側に対して傾斜させて固定し、刃先の方向が下流に向かってV字形(或いはW字形)となるように固定している。このような配置によって、進行方向に対して斜め方向から水草Gを刈取ることができ、鋸刃12aの切断性能を高めることができる。
【0019】
チェーン12bは、鋸刃12aの反対側であって基部11の上流側に取り付けられている。チェーン12bの両端部は、基部11の幅方向の両端に各々固定されている。このようなチェーン12bでは、水草を絡め取って除去する。本実施形態では、金属製のチェーン12bを用いることで、チェーン12bが錘子の役目を担い、底部2近傍まで沈下することが可能な適度な重量を刈取部10に持たせている。なお、基部11に金属材を用いたり、別途錘子を取り付けたりして、刈取部10に重量を持たせてもよい。
【0020】
なお、刈取本体12が、鋸刃12aやチェーン12bに限定されるものではなく、水草Gを切断したり、絡め取ったり、引掛けたりして、水草Gを除去することができれば、いずれのものでもよい。例えば、ナイフ、鎌、鉈等の刃物、ロープ等の可撓性部材、鉄パイプ等の棒状体であってもよいし、複数の爪からなる熊手状の部材であってもよい。
【0021】
進路誘導部20は、連結部30によって連結された刈取部10を水中で進行方向(水流に沿った方向)に導く。進路誘導部20は、長手(この場合、長尺であることを意味する。)の非可撓性部材から構成される。非可撓性部材としては、特に限定されるものではなく、例えば、中実又は中空の棒状部材、帯状部材、板状部材等が好適に挙げられる。非可撓性部材の素材としては、例えば、木材、竹材、硬質樹脂、硬質ゴム、アルミニウム等の金属材等が好適に挙げられる。
【0022】
本実施形態では、木材からなる棒状部材を用いることで、刈取部10を進行方向に円滑に誘導しつつ、機械的強度に優れ、適度な重量で扱い易く、廉価な進路誘導部20とすることができる。
【0023】
刈取部10と進路誘導部20とは、可撓性部材からなる連結部30によって連結されている。この構成により、水流等による進路誘導部20の揺れや小刻みな動きが吸収され、刈取部10への影響を防止することができる。
【0024】
連結部30を構成する可撓性部材としては、例えば、ロープ、紐、紐状の布等の紐状部材、金属製のワイヤ、金属製又は樹脂製のチェーン等が好適に挙げられるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、樹脂製のロープを用いることで、機械的強度、耐水性、撥水性(乾燥性)に優れる連結部30とすることができる。
【0025】
また、本実施形態では、連結部30は、それぞれ一対のロープからなる第1の連結体31a,31bと第2の連結体32a,32bとから構成される。刈取部10は、この2つの連結体31a,31b,32a,32bによって進路誘導部20の少なくとも2箇所に連結されている。
【0026】
図1に示すように、第1の連結体31a,31bは、比較的短手のロープからなり、刈取部10の基部11と進路誘導部20の先端とを連結する。このような短手の第1の連結体31a,31bにより、進路誘導部20の先端との距離が短くなり、進路誘導部20の水中での上下動に追随して刈取部10が上下動し、進路誘導部20により刈取部10を水中の所望の高さや位置、方向へ自在に導くことができる。
【0027】
第2の連結体32a,32bは、第1の連結体31a,31bよりも長手のロープからなり、基部11の幅方向の両端近傍と、進路誘導部20の先端から所定長さ離間した位置とを連結している。刈取部10が第1の連結体31a,31bによって吊り下げられているとき、第2の連結体32a,32bはやや弛んだ状態となっている(
図2参照)。これにより、刈取部10の前後方向の多少の動きが妨げられない。これに対して、水流等によって刈取部10が左右への傾き力や回転力が作用したとき、第2の連結体32a,32bが伸張することで、刈取部10の不測の傾きや回転を防止することができる。
【0028】
また、第1,第2の連結体31a,31b,32a,32bともに、一対のロープを、進路誘導部20との連結部分よりも、基部11との連結部分の側の間隔を広くして、平面視ハ字形に配置することで、水中での刈取部10の姿勢の安定性が向上し、左右方向への不測の傾き等の抑制効果を更に高めることができる。
【0029】
本体部Oの長手方向の長さは、水中での作業目的や作業性等に応じて適宜の長さとすることができる。例えば、本実施形態のように、水草Gを除去する場合は、作業部としての刈取部10が底部2近傍に届く長さとする。また、水中生物の回収等を目的とする場合は、作業部が目的の水深に位置する長さとする。本体部Oの長さと本体部Oの重さや浮力(特に作業部の重さや浮力)を適宜調整することで、所望の水深での作業が可能となる。また、本体部Oの幅方向の長さ、つまり刈取部10(作業部)の幅も、作業目的や作業性等に応じて適宜の長さとすることができる。
【0030】
本実施形態のような水草除去具100では、本体部Oの長さを1~2mとし、刈取部10の幅を60cm~1m程度とすることが好ましい。これにより、農業用水路1の水草Gの除去を容易に行うことができ、かつ作業者が扱い易いサイズや重量となり、作業性が向上する。
【0031】
浮子40は、目印とするためと、本体部Oの端部に適度な浮力を持たせるために用いられる。浮子40は、刈取部10を連結した一端とは反対側の進路誘導部20の他端に、第2の連結部35によって連結されている。この第2の連結部35もロープ等の可撓性部材から構成される。この第2の連結部35によって進路誘導部20を含む本体部Oの揺れや小刻みな動きが吸収され、浮子40への影響を防止することができる。
【0032】
浮子40は、従来公知の適宜のものを用いることができるが、本体部Oや水草の重量を支持可能な浮力を有するものを用いる。また、作業者が容易に発見できるように、浮子40を赤等の目立つ色や蛍光塗料で彩色したり、夜間反射板を設けたりして、目印としての機能性を高めてもよい。
【0033】
水中帆50は、水流を受けることで推進力を得て、水草除去具100を下流方向へと導く推進部として機能する。本実施形態では、水中帆50は、浮子40を介して進路誘導部20と連結されている。水中帆50は、傘部51と、複数のライン52と、傘部側浮子53と、フック(引掛部)54と、錘子55と、を主に備えて構成される。
【0034】
傘部51は、水流を受ける部位であり、水中で半球状に広がる。複数のライン52は、傘部51を支持するとともに傘部51と浮子40とを連結する。傘部51は不透水性の樹脂シート等から構成され、ライン52は樹脂製の紐等から構成される。この構成により、機械的強度、耐水性、乾燥性等に優れ、軽量で扱い易い水中帆50が得られる。また、容易に折り畳むことができ、コンパクトで持ち運びも容易な水中帆50が得られる。
【0035】
傘部側浮子53は、水中帆50に浮力を持たせるためのものであり、傘部51とライン52との連結部位の、隣接する複数箇所に設けられている(
図1では2箇所)。傘部側浮子53を複数箇所に設けることで、傘部51の水中でのバランス性が向上し、より効率的に水流を受けて適切な推進力に変換することができる。なお、傘部側浮子53は、複数箇所に設けることが好ましいが、1箇所のみに設けてもよい。傘部51のサイズとしては、特に限定されるものではなく、水流の速度(流速)や除去する水草Gの量等に応じて、水草Gを除去しつつ、下流側に移動可能な推進力が得られるサイズとすることが望ましい。本実施形態のような水草除去具100では、傘部51を、水中で半球状となったときの直径が30~60cm程度となるように構成することが好ましく、また、水中帆50全体の長さを1m程度とすることが好ましい。
【0036】
例えば、流速が遅い水域の場合は傘部51の大きさを比較的大きくし(例えば、直径60cm)、流速が速い場合は傘部51の大きさを比較的小さくする(例えば、直径30cm)ことで、水草Gの刈取りに適した推進力を得ることができる。また、様々な大きさの傘部51を有する水中帆50を用意し、作業環境や作業目的、流速等に応じて所望の水中帆50を本体部Oに付け替えてもよい。
【0037】
また、複数個の傘部側浮子53には、下流方向に開口する鉤状のフック(引掛部)54が各々設けられている。このフック54の材料としては、特に限定されるものではないが、傘部側浮子53の浮力を妨げないよう、樹脂や木材、アルミニウム等の軽量な材料を用いることが望ましい。
図2に示すように、各フック54を引掛けて水草除去具100を回収するための回収部(長手部材)としての回収用ロープ4が、農業用水路1に対して交差方向(幅方向)に掛け渡されている(この回収用ロープ4と水草除去具100により、水草除去システムを構成することができる)。この回収用ロープ4にフック54が引掛かることで、水草除去具100の流下が停止する。よって、作業者が容易に水草除去具100を回収できる。回収用ロープ4は、フック54のサイズや形状等を考慮して、水面3から1~数cm離間した位置に架け渡されている。これにより、水中を流れるゴミ等の引掛りを抑制しつつ、フック54が回収用ロープ4に引掛かり易くなる。
【0038】
また、フック54を複数個設けたことで、回収用ロープ4により引掛り易くなり、また引掛り後は水流によって容易に外れることがない。また、水中帆50にフック54を設けたことで、回収用ロープ4に引掛った後に、水流によって傘部51が水面3に浮上し(
図2の破線で示す水中帆50を参照)、水流による推進力が弱まる。そのため、水草除去具100が不測に回収用ロープ4から外れるのを抑制でき、回収用ロープ4への負荷も軽減できる。
【0039】
また、回収部は、網や棒等であってもよいが、水面3上に架け渡した回収用ロープ4とすることで、流木その他の水草除去具100以外の物体や魚等の水中生物の回収等を防止して、水草除去具100の回収を効率的に行うことができる。
【0040】
錘子55は、傘部側浮子53と対向する位置、つまり水中で下になる位置に設けられている。この錘子55により、軽量な傘部51が不測に水面3に浮き上がったり、水流による不測の回転やブレを生じたりするのを抑制し、水流を受け易いように傘部51を水中に配置することができる。この錘子55と、2つの傘部側浮子53とにより、水中において傘部51を水流に向けて拡げることができ、効率的に水流が受けられるとともに、水中での安定性を高めることができる。
【0041】
また、水草除去具100には、作業環境又は作業状態に関する情報を取得する情報取得部としての情報取得センサSを備えていてもよい。作業環境に関する情報としては、例えば、水中の温度、pH、濁度等の水中環境の情報、気温、湿度、気圧、照度、音等の外部環境の情報等が挙げられる。また、水中又は周囲を撮影した画像等も作業環境に関する情報の一つとなる。作業状態に関する情報としては、例えば、水草除去具100の移動距離、移動経路、移動速度、移動加速度、位置情報、方位情報、作業時間等が挙げられる。
【0042】
情報取得センサSは、水草除去具100のいずれの箇所に設けてもよいが、例えば、浮子40に設けることで、取り付けや情報取得が容易となる。また、使用目的に応じて浮子40の水中側に設けてもよいし、水面3上に設けてもよいし、双方に設けてもよい。また、本体部Oに設けて、より水深の深い場所の情報を取得してもよい。
【0043】
情報取得センサSの具体例としては、例えば温度センサ、pHセンサ、濁度センサ、気圧センサ、GPSセンサ、照度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、距離センサ、撮像装置(カメラ)、集音器(マイク)及びタイマ等が挙げられる。また、撮像装置等で撮影する際には、照明(特に水中側)等をさらに搭載してもよい。また、情報取得センサSとして、無線機や電波発信機等を設けて、作業者が持つ受信機で信号を受信して位置情報を認識してもよい。以上のような情報取得センサSから1つを選択してもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0044】
この中でも、情報取得センサSとしてGPSセンサを用いれば、水草除去具100の移動経路を記録(モニタリング)できる。さらに、この記録を解析することで、水草除去具100の流下が停滞する箇所の特定、底部2等に堆積又は沈殿している物体が存在することの推測等ができる。また、情報取得センサSとして浮子40の上部と下部(水中側)にカメラを設置し、農業用水路1内外の静止画像や動画像を撮影することで、水草除去具100を使用した範囲内での農業用水路1内外の状況を確認することができる。
【0045】
上述のような構成の第1実施形態の水草除去具100を用いて、農業用水路1の水草Gを除去する際の手順及び水草除去具100の動作の一例を、
図2の説明図を参照しながら説明する。
【0046】
まず、水草除去具100を、農業用水路1に投入する。これにより、刈取部10が水中に沈んで底部2近傍に配置される。長手の進路誘導部20は、底部2側の刈取部10と、水面3に浮かぶ浮子40との間で、傾斜して配置される。また、水中帆50の傘部51が水中で拡がり、水流を受けることで推進力が発生し、水草除去具100が下流に向かって移動する。水草除去具100は、下流へ移動しながら、底部2に繁茂する水草Gを、刈取部10の鋸刃12aによって切断し、チェーン12bによって絡め取る。このように、水草除去具100を水中に投入するだけで、水流を利用して水中に繁茂する水草Gを、良好に除去することができる。また、作業者が水中で作業する必要もなく、取扱いが容易で、作業性も向上する。
【0047】
農業用水路1の所定距離の水草Gの刈取りが完了すると、下流の回収位置で、農業用水路1に架け渡した回収用ロープ4にフック54が引掛り、水草除去具100の移動が停止する。作業者が回収用ロープ4又は水草除去具100自体を手繰り寄せることで、水草除去具100を容易に回収することができる。
【0048】
また、上記では水草除去具100を1つのみ投入しているが、これに限定されるものではなく、複数を投入することで、水路幅の広い農業用水路1であっても、効率的かつ良好に水草Gの除去が行える。また、取扱いが容易であるから、何度でも水中に投入して作業を繰り返すことができる。また、浮子40に設けた情報取得センサSにより、水草Gの刈取りと同時に、農業用水路1の所定の区間内の作業環境や作業状況のモニタリングを行うことができ、今後の水草G対策、農業用水路1の保全や改良、農作物の育成、各種研究等に役立てることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る水草除去具100Aを、
図3を参照しながら説明する。この第2実施形態に係る水草除去具100Aは、非可撓性を有する長手の進路誘導部20に代えて、可撓性を有する長手のロープからなる進路誘導部20Aを備え、第1の連結体31a,31b及び第2の連結体32a,32bからなる連結部30に代えて、ロープを平面視V字形に配置した連結体33からなる連結部30Aを備えたこと以外は、
図1に示す第1実施形態の水草除去具100と同様の基本構成を有している。そのため、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略し、以下では、第1実施形態と異なる構成について主に説明する。以降で説明する実施形態でも同様である。
【0050】
図3に示す第2実施形態の水草除去具100Aは、刈取部10、進路誘導部20A及び連結部30Aを有する本体部Oと、浮子40と、水中帆50と、を主に備えて構成される。平面視V字形に接続された連結部30Aにより、刈取部10の両端と進路誘導部20Aの一端とが連結されている。進路誘導部20Aの他端に、浮子40が連結されている。このような構成の水草除去具100Aでも、水中に投入することで、水中帆50の推進力により、農業用水路1内を流下して、水草Gを刈取ることができる。また、可撓性を有する進路誘導部20A及び連結部30Aを巻き取ったり、水中帆50を折り畳んだりすることで、水草除去具100Aをよりコンパクトにすることができ、収納性、携帯性等を高めることができる。
【0051】
ところで、農業用水路1には、取水や分水を容易とするため、流れ方向の所定の位置に堰5が設けられている(
図4参照)。このような堰5を乗り越えるときの作用(仕組み)を、
図4の説明図を用いて説明する。この
図4では、非可撓性を有する進路誘導部20を備えた第1実施形態の水草除去具100と、可撓性を有する進路誘導部20Aを備えた第2実施形態の水草除去具100Aとが堰5を乗り越えるときの作用を説明している。
【0052】
まず、第2実施形態の水草除去具100Aの作用について、
図4(c)を参照しながら説明する。この
図4(c)に示すように、水草除去具100Aが堰5に差し掛かると、水面3近傍を浮遊する水中帆50と浮子40とは、堰5を乗り越えて下流側に移動する。堰5の高さが低い場合は、水中帆50と浮子40とに追随して、進路誘導部20Aに誘導されて連結部30A及び刈取部10も堰5を乗り越える。しかし、堰5の高さが比較的高い場合は、可撓性を有する進路誘導部20Aが堰5に沿って変形し、刈取部10が堰5を乗り越えるのが困難となる場合がある。したがって、第2実施形態の水草除去具100Aは、簡素化やコンパクト化を重視する場合や、高い堰5が少ない水域での使用、或いは堰5と堰5との間での使用等に適している。
【0053】
これに対して、第1実施形態の水草除去具100では、
図4(a)に示すように、水中帆50と浮子40とが堰5を乗り越えた後に、進路誘導部20が堰5に突き当たる。この場合でも、進路誘導部20が長手で非可撓性であることから、折れ曲がることはなく、
図4(b)に示すように、堰5によって連結部30側の端部が持ち上がる。これにより、この端部に連結された刈取部10も持ち上がるため、進路誘導部20とともに刈取部10が、円滑に堰5を乗り越えることができ、堰5の下流側の水草Gの刈取り作業を続行できる。したがって、第1実施形態の水草除去具100は、堰5や障害物のある水域においても、好適に使用できる。
【0054】
(第3、第4実施形態)
次に、第3、第4実施形態に係る水草除去具100B,100Cについて、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図5は第3実施形態の水草除去具100Bの平面図及び水中帆50の傘部51の断面図であり、
図6は第4実施形態の水草除去具100Cの平面図である。これらの水草除去具100B,100Cも、以下で説明する相違点以外は、
図1に示す第1実施形態の水草除去具100と同様の基本構成を有している。
【0055】
図5に示す第3実施形態の水草除去具100Bは、刈取部10、非可撓性を有する長手の棒状部材からなる進路誘導部20及び可撓性を有する連結部30Aを有する本体部Oと、浮子40と、水中帆50と、を主に備えて構成される。刈取部10は、ロープを平面視V字形に配置した連結体33からなる連結部30Aによって、進路誘導部20の一箇所に連結されている。また、第3実施形態では、
図5中の水中帆50の断面図に示すように、傘部51の中央に水抜き孔56を設け、水中からの引き上げ時に、傘部51に溜まった水を排出できるようになっている。この水抜き孔56は本実施形態では、直径1cm程度の大きさで1つ設けている。しかし、水抜き孔56がこの構成に限定されるものではなく、傘部51の推進力を低下させることがなく、傘部51内に溜まった水を排出できればよく、適宜の大きさ、個数、形状で水抜き孔56を設けることができる。
【0056】
この構成の水草除去具100Bでも、水流によって下流に移動しながら、水草Gを効率的に刈取ることができる。また、長手で非可撓性の進路誘導部20の剛性、浮子40(さらには傘部側浮子53)の浮力、及び水中帆50の推進力によって、刈取部10が進行方向に導かれ、堰5等の障害物も容易に乗り越えることができる。また、水草除去具100Bを水中から引き上げる際に、傘部51に水が溜まっていた場合でも、水抜き孔56から内部の水を排出できるので、作業者が容易に回収することができ、労務作業量をより少なくできる。
【0057】
図6に示す第4実施形態の水草除去具100Cは、刈取部10、非可撓性を有する長手の棒状部材からなる進路誘導部20及び可撓性を有する連結部30を有する本体部Oと、水中帆50と、を主に備えて構成され、本体部Oと水中帆50との間に浮子40を設けていない。刈取部10は、第1実施形態と同様に、二対のロープをハ字形に配置した連結体31a,31b,32a,32bからなる連結部30によって、進路誘導部20の2箇所に連結されている。この構成の水草除去具100Cでも、水流によって下流に移動しながら、水草Gを効率的に刈取ることができる。また、より簡易で廉価な水草除去具100Bを提供できる。また、堰5等の障害物があっても、長手で非可撓性の進路誘導部20の剛性、水中帆50の推進力、さらには傘部側浮子53の浮力によって、円滑に乗り越えることができる。更に、連結部30による2箇所の連結によって刈取部10のブレや回転を抑制することができる。
【0058】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る水草除去具100Dについて、
図7、
図8を参照しながら説明する。
図7は第5実施形態の水草除去具100Dの平面図であり、
図8は水草除去具100Dが堰5を乗り越えるときの作用を説明するための説明図である。
【0059】
第5実施形態に係る水草除去具100Dは、棒状部材からなる進路誘導部20に代えて、非可撓性を有する長手で幅広の帯状部材(板状部材)からなる進路誘導部20Bを備えたこと以外は、
図1に示す第1実施形態の水草除去具100と同様の基本構成を有している。
【0060】
すなわち、
図7に示す第5実施形態に係る水草除去具100Dは、刈取部10、非可撓性を有し長手で幅広の帯状部材からなる進路誘導部20A及び可撓性の連結部30Bを有する本体部Oと、浮子40と、水中帆50と、を主に備えて構成される。連結部30Bは、ロープをハ字形に配置した一対の連結体34a,34bから構成され、刈取部10の両端近傍と進路誘導部20Aの両端近傍とを連結する。進路誘導部20Aは、長手で幅広の平板等から構成してもよいが、本実施形態では、枠材21と複数の開口部22を有する格子状部材で構成している。この構成により、水からの抵抗を低減し、本体部Oの軽量化を図ることができ、水中帆50の推進力を十分に発揮することができる。
【0061】
開口部22の大きさは、特に限定されないが、堰5等の障害物に引っ掛かることのない大きさとすることが望ましい。例えば、開口部22を小さくすることで、障害物の凹凸が小さい水域で使用した場合でも、障害物への引掛りを良好に抑制することができる。一方、障害物の凹凸が比較的大きい水域での使用の場合は、開口部22を大きくしても障害物への引掛りを抑制することができ、より軽量化や簡素化が可能となる。
【0062】
次に、第5実施形態の水草除去具100Dが堰5Aを乗り越えるときの作用について、
図8を参照しながら説明する。
図8(c)は、
図8(a)のA-A線断面図であり、この
図8(c)に示されるように、複数の凹部5aと凸部5bを有する構造の堰5Aを例示している。進路誘導部20Aの幅は、この凹部5aの幅よりも広くしている。第5実施形態の水草除去具100Dでは、
図8(a)、
図8(c)に示すように、進路誘導部20Aが堰5Aに突き当たっても、非可撓性を有する進路誘導部20Aは、折れ曲がることはなく、
図8(b)に示すように、堰5Aによって連結部30A側の端部が、刈取部10とともに持ち上がる。さらに、進路誘導部20Aを凹部5aよりも幅広としているため、
図8(c)に示すように、進路誘導部20Aが凹部5a間を通過することなく、凸部5bの上方を乗り越える。これに追随して、刈取部10も、凸部5bと凸部5bとの間に引っ掛かることなく、凸部5bの上方を乗り越えて下流方向に移動する。
【0063】
以上より、第5実施形態の水草除去具100Dでも、水流によって下流に円滑に移動しながら、水草Gを効率的に刈取ることができる。また、長手で非可撓性を有し、長手で幅広の進路誘導部20Aの剛性、浮子40(さらには傘部側浮子53)の浮力、及び水中帆50の推進力によって、刈取部10が進行方向に導かれ、堰5A等の障害物も容易に乗り越えることができる。
【0064】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る水草除去具100Eについて、
図9、
図10(a)を参照しながら説明する。
図9は第6実施形態の水草除去具100Eの外観構成を模式的に示す側面図であり、
図10(a)は平面図である。
【0065】
第6実施形態に係る水草除去具100Eは、水中で所定の作業を行う作業部としての刈取部10Eと、刈取部10Eを進路方向に導く進路誘導部20Eと、水流を受けることで推進力を得る模型船60と、模型船60の移動を制御する移動規制部としての錘体61と、を主に備えている。模型船60と錘体61とは、ロープ(可撓性部材)62によって連結されている。
【0066】
刈取部10Eは、基部11Eと、回転によって水草Gを刈り取る1枚又は複数枚の円盤状の回転刃(刈取本体)12cと、回転刃12cを回転させる駆動部13Eとを備えている。駆動部13Eは、ガソリン等で駆動するエンジン等からなる。また、刈取本体が回転刃12cに限定されることはなく、駆動部によって前後方向へ揺動するバリカン型の鋸刃や、複数の開口を有する筒が回転して水草Gを絡め取るものであってもよい。また、刈り取る水草Gの種類、分量、環境等に応じて、これらを適宜付け替えて使用可能としてもよい。
【0067】
進路誘導部20Eは、長手の棒状部材(非可撓性部材)から構成される。進路誘導部20Eの水中に配置される一端に、刈取部10Eが固定され、空中に突出する他端に駆動部13Eが固定されている。このような刈取部10E、進路誘導部20E及び駆動部13Eを備えるものとして、市販のエンジン式刈払機等を用いることができる。この場合、刈払機の刃が刈取部10Eに相当し、刃とエンジンとを連結する柄が進路誘導部20Eに相当する。
【0068】
また、進路誘導部20Eは、回転軸63によって上下に揺動可能に模型船60に軸支されている。また、進路誘導部20Eを上下に揺動させる揺動部(モータ等)も備えている。この構成により、
図9に破線で示すように、進路誘導部20Eとともに刈取部10Eが上下に揺動し、底部2から水面まで所定範囲の水草Gを刈り取ることができる。
【0069】
模型船60は、推進部として機能するとともに、水草除去具100Eに適度な浮力を持たせる浮子としても機能する。模型船60は、操舵装置70を備えている。この操舵装置70は、模型船60の進行方向を定める舵71と、舵71を揺動させる揺動機構72と、揺動機構72を制御する制御部73と、位置情報を検出する検出センサ74と、を有している。
【0070】
位置情報とは、所定の基準部と模型船60との位置関係に関する情報である。本実施形態では、農業用水路1の左右の水路壁(以下、「左岸壁LW」、「右岸壁RW」という。)を基準部とする。検出センサ74が、左岸壁LW及び右岸壁RWの各々と模型船60との距離情報を検出することで、互いの位置関係が把握できる。水路壁としては、例えば、コンクリート製の水路壁、コンクリートブロック積みの水路壁、石積みの水路壁等が挙げられる。また、コンクリートや石積みのない土水路の場合は、土の法面を水路壁とすることができる。
【0071】
距離情報を取得する検出センサ74としては、具体的には、例えば、赤外線フォトリフレクタ等の光学式センサ、超音波距離センサ等が挙げられるが、これらに限定されることはなく、公知の測距センサを用いることができる。本実施形態では、模型船60の両側に、左岸壁LW用及び右岸壁RW用の赤外線フォトリフレクタ74a,74bを各々設けている。
【0072】
なお、検出センサ74が、距離情報を検出するものに限定されることもない。例えば、タッチセンサ等を用いて、左岸壁LW及び右岸壁RWの各々と模型船60とが接触状態か非接触状態かを検出することで、互いの位置関係が把握できる。
【0073】
制御部73は、例えば、マイクロプロセッサと、RAMやROM等のメモリと、を有するマイクロコンピュータ(いわゆるワンボードマイコン)等から構成することができる。制御部73は、赤外線フォトリフレクタ74a,74bから距離情報を取得し、これに基づいて、所定の方向に舵71を切るように、揺動機構72を制御する。
【0074】
具体的には、左側の赤外線フォトリフレクタ74a(又はタッチセンサ)からの検出信号に基づき、模型船60と左岸壁LWとの接触を検出したとき(又は左岸壁LWとの距離が閾値に達したとき、以下、同様)、制御部73が揺動機構72を制御して、右に旋回するように舵71を切る。また、右側の赤外線フォトリフレクタ74bからの検出信号に基づき、右岸壁RWとの接触を検出したとき、制御部73が揺動機構72を制御して、右に旋回するように舵71を切る。この制御により、模型船60が、左岸壁LW及び右岸壁RWとの間を、左右に蛇行しつつ下流に向かって流れていく。
図10(a)に、模型船60の左右の移動範囲を両矢印で示す。
【0075】
(第6実施形態の変形例)
図10(b)、
図10(c)に、第6実施形態の変形例1、2を各々示す。
図10(b)の変形例1では、検出センサ74として模型船60の一側(ここでは、右側)に、赤外線フォトリフレクタ74bと、これよりも長い距離を検出できる超音波距離センサ74cとを並べて設けている。この変形例1では、右方向に移動するように舵71を切り、赤外線フォトリフレクタ74bの検出信号に基づいて、模型船60と右岸壁RWとの接触を検出したとき、反対方向に舵71を切る。これにより、模型船60が左方向へ移動する。その後、超音波距離センサ74cからの検出信号により、右岸壁RWからの離間距離が所定距離L(最大離間距離)に達したとき、反対方向に舵71を切る。これにより、模型船60が右方向へ移動する。この制御を繰り返すことで、一方の水路壁(右岸壁RW)から一定の距離Lの間(両矢印で示す範囲)で、模型船60を蛇行させる(ジグザグに移動させる)ことができる。
【0076】
図10(c)の変形例2では、検出センサ74として模型船60の一側(ここでは、右側)に、超音波距離センサ74cを設けている。この変形例では、超音波距離センサ74cからの検出信号に基づいて、右岸壁RWとの距離が所定距離L1(最小離間距離)に達したときに、舵71を右岸壁RWから遠ざかる方向に切り、所定距離L2(最大離間距離)に達したときに、右岸壁RWに近づくように舵71を切る。これによって、一方の水路壁(右岸壁RW)から距離L1~L2の間(両矢印で示す範囲)で、模型船60を蛇行させることができる。なお、第6実施形態及び変形例1、2の閾値、距離L,L1,L2は、水路幅や、水草Gを刈り取る範囲に応じて適宜の値を設定することができる。
【0077】
以上、第6実施形態及び変形例1、2の水草除去具100Eでは、錘体61によって、模型船60の移動速度が過度に速くなったり、前後反転したりすることがなく、適切な速度と姿勢を保つことができる。また、検出センサ74での検出信号に基づいて、制御部73の制御の下、揺動機構72で舵71を左右に揺動させることで、錘体61を軸として模型船60が農業用水路1内を左右に蛇行する。この蛇行によって、刈取部10Eも左右に蛇行し、左岸壁LWと右岸壁RWの間の所定の範囲の水草Gを刈り取ることができる。したがって、水草除去具100Eは、水流によって下流に円滑に移動しながら、水草Gを効率的に刈取ることができる。
【0078】
また、第6実施形態、変形例及び後述の第7実施形態において、制御部73がタイマによって舵71の切り替え時間をカウントするようにしてもよい。すると、例えば、何等かの原因(例えば、故障やバッテリー切れ、草木等で検出が困難)検出センサ74による左岸壁LWや右岸壁RWの検出エラーとなったときに、制御部73は、直前に舵71を切ってから一定以上の時間が経過したときに、逆方向に舵71切るように揺動機構72を制御する。これにより、検出センサの不具合を手当てすることができ、円滑な作業を継続することが可能となる。
【0079】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態の水草除去具100Fについて、
図11を参照しながら説明する。
図11は第7実施形態の水草除去具100Fの外観構成を模式的に示す側面図である。
【0080】
第7実施形態に係る水草除去具100Fは、水中で所定の作業を行う作業部としての刈取部10Fと、刈取部10Fを進路方向に導く進路誘導部20Fと、刈取部10F及び進路誘導部20Fを連結する連結部30Fと、水流を受けることで推進力を得る模型船60と、を主に備えている。
【0081】
刈取部10Fは、第2実施形態の刈取部10と同様の構成を備え、基部11と、鋸刃12aと、チェーン12bとを有している。この刈取部10Fは、水草Gを刈り取る機能だけでなく、刈取部10Fを沈下させる錘子として、模型船60の移動(移動速度や移動方向)を制御する移動規制部としても機能する。刈取部10Fと模型船60とを連結する進路誘導部20E及び連結部30Fは、第2実施形態と同様に、可撓性を有する部材で形成されているが、第1、第3~5実施形態のような構成とすることもできる。
【0082】
模型船60は、第6実施形態と同様に、推進部及び浮子として機能する。模型船60は、第6実施形態と同様に、舵71と、揺動機構72と、制御部73と、検出センサ74と、を有する操舵装置70を備えている。
【0083】
上記構成の第7実施形態の水草除去具100Fでも、刈取部10Fによって、模型船60の移動速度が過度に速くなったり、前後反転したりすることがなく、適切な速度と姿勢を保つことができる。また、検出センサ74での検出信号に基づいて、制御部73の制御の下、揺動機構72で舵71を左右に揺動させることで、模型船60が農業用水路1内を左右に蛇行する。この蛇行によって、刈取部10Eも左右に移動し、左岸壁LWと右岸壁RWの間の所定の範囲の水草Gを刈り取ることができる。したがって、水草除去具100Fは、水流によって下流に円滑に移動しながら、水草Gを効率的に刈取ることができる。
【0084】
(第8実施形態)
次に、第6実施形態に係る水草除去システム200について、
図12、
図13を参照しながら説明する。
図12、
図13に示すように、第8実施形態に係る水草除去システム200は、第1実施形態と同様の水草除去具100と、この水草除去具100を回収する回収部110と、を備えている。なお、水草除去具100が第1実施形態と同様のものに限定されるものではなく、第2~第7実施形態の水草除去具100A,100B,100C,100D,100E,100F等を用いることもできる。
【0085】
回収部110は、
図12、
図13に示すように、水草除去具100を回収する農業用水路1の一方の岸(以下、「回収側」という。)に設けた回収装置6と、この回収装置6よりも上流側であって他方の岸(以下、「固定側」という。)に設けた固定装置7と、回収装置6及び固定装置7の間にループ状に架け渡した回収用ロープ(長手部材)4Aと、を有している。
【0086】
回収装置6は、一方の岸に固定された支柱6aと、この支柱6aに一端が固定され、他端に回収用ロープ4Aを通すループ部6cを有する挿通紐6bと、挿通紐6bに吊り下げられた錘子6dと、を備えている。固定装置7は、他方の岸に固定された支柱7aと、この支柱7aに固定されたループ状の固定紐7bと、この固定紐7bのループに回転自在に取り付けられ、回収用ロープ4Aを案内する滑車7cと、固定紐7bに吊り下げられた錘子7dと、を有している。
【0087】
回収用ロープ4Aは、固定側で固定装置7の滑車7cに掛けられ、回収側で回収装置6の支柱6aに仮止めされている。回収用ロープ4Aは、上流の固定側から下流の回収側に向かって水流に対して斜めであって、水面3上に上下に二重に架け渡されている。
【0088】
また、回収側での仮止めを解除することで、滑車7cを介して回収用ロープ4Aを時計回り又は反時計回りに移動させることができる。各支柱6a,7aは、回収部110用に新たに両岸に設置してもよいが、本実施形態では、農業用水路1に沿って配置されたフェンスの支柱を回収部110用の支柱6a,7aとして兼用している。
【0089】
また、上下に二重に配置された回収用ロープ4Aの上側のロープは、水草除去具100のフック54を引掛け易くするため、水面3から数cm上方に配置している。回収用ロープ4Aの下側のロープには、複数の浮子4aが設けられていることから、水の増減に対応して回収用ロープ4Aの高さが変化し、水面3から上側のロープまでの相対的な高さを所定の高さに保つことができる。
【0090】
第8実施形態の水草除去システム200では、
図12に示すように、水流によって上流側から水草除去具100が水草Gを刈取りながら流下した後、フック54が回収用ロープ4Aに引掛って停止する。回収用ロープ4Aを下流の回収側に向かって斜めに架け渡しているため、水流を受けた水中帆50の推進力によって、水草除去具100が、回収用ロープ4Aに沿って斜め方向に移動して、回収側へ到達する。したがって、回収側に位置する作業者が、水中に入ったり、回収用ロープ4Aを手繰り寄せたりしなくても、回収側で容易に水草除去具100を回収することができる。
【0091】
また、水流が弱い場合等、水草除去具100が回収側にうまく移動できない場合であっても、滑車7cを介して回収用ロープ4Aを回転移動することで、回収用ロープ4Aに引掛った水草除去具100を、回収側へ移動させて回収することができる。このとき、浮子4aが水草除去具100に引掛ることで、より確実に水草除去具100を回収側へ移動させることができる。回収後は、反対方向へ回転移動することで、回収用ロープ4A及び浮子4aを元の位置に戻すことができる。
【0092】
以下、本発明の作用効果を説明する。上記第1、第3~第5実施形態の水草除去具100,100B,100C,100Dは、水中で所定の作業を行う作業部(例えば、刈取部10)と、作業部を進路方向に導く進路誘導部20と、作業部及び進路誘導部20,20Bを連結する連結部30,30Aと、水流を受けることで推進力を得る水中帆50と、を備えている。進路誘導部20は、長手の非可撓性部材から構成され、連結部30,30Aは、可撓性部材から構成されている。
【0093】
この構成により、作業者が水草除去具100,100B,100C,100Dを水中に投入するだけで、水流によって水草除去具100,100B,100C,100Dが流下しながら、水中での作業(例えば、水草Gの刈取り作業)を実行する。また、可撓性を有する連結部30,30Aによって、進路誘導部20,20Bの揺れや小刻みな動きが吸収され、刈取部10への影響を防止できる。長手の非可撓性の進路誘導部20,20Bにより、刈取部10を下流方向へ導くとともに、堰5,5A等の障害物も円滑に乗り越えることができる。また、回収も容易であり、必要に応じて繰り返し水中に投入して使用することができ、作業性にも優れる。また、水中帆50によって、適切な推進力を得て、水草除去具100,100B,100C,100Dを下流へ円滑に導くことができる。したがって、水草の除去等の水中作業を、より少ない労務作業量で行うことができる水中作業具としての水草除去具100,100B,100C,100Dを提供することができる。また、構成が簡易で材料コストも低減でき、廉価な製品を提供することができる。
【0094】
また、第1~第5、第7実施形態の水草除去具100,100A,100B、100C,100D,100Fは、作業部(刈取部10)と、進路誘導部20,20A,20Fと、連結部30,30A,30Fと、を備え、連結部30,30A,30Fは、可撓性部材から構成されている。この構成によっても、水中への投入により、水草除去具100~100Eが水流によって流下しながら水中での作業を実行する。また、可撓性を有する連結部30によって、進路誘導部20の揺れや小刻みな動きを吸収し、作業部への影響を防止することができる。したがって、より少ない労務作業量で水中作業を行うことができる。また、より簡易な構成で材料コストも低減できる製品を提供することができる。
【0095】
また、第2実施形態の水草除去具100Aは、作業部(刈取部10)と、進路誘導部20Aと、連結部30Aと、水中帆50と、を備え、進路誘導部20A及び連結部30Aは、可撓性部材から構成されている。この構成によっても、水中への投入により、水草除去具100Aが水流によって流下しながら水中での作業を実行する。また、水中帆50によって、適切な推進力を得て、水草除去具100Aを下流へ円滑に導くことができる。したがって、より少ない労務作業量で水中作業を行うことができる。また、可撓性を有する進路誘導部20A及び連結部30Aを巻き取ることができ、収納性や携帯性に優れる製品を提供することができる。
【0096】
また、第1、第4、第7実施形態の水草除去具100,100B,100Fでは、作業部(刈取部10,10F)は、連結部30(第1、第2の連結体31a,31b,32a,32b)によって進路誘導部20の少なくとも2箇所に連結されている。この構成により、進路誘導部20の水中での上下動に追随して刈取部10を水中の所望の高さや位置、方向へ自在に導きつつ、刈取部10の不測の傾きや回転を阻止することができる。また、作業部と進路誘導部20との連結強度等をより高めることができる。
【0097】
また、第2実施形態の水草除去具100Aは、作業部(刈取部10)と、進路誘導部20Aと、作業部及び進路誘導部20Aを連結する連結部30Aと、水中帆50と、を備え、進路誘導部20A及び連結部30Aは、可撓性部材から構成されている。この構成によれば、より簡易で折り畳み等が可能であり、よりコンパクトでより廉価な水草除去具100Aを提供することができる。
【0098】
また、上記各実施形態のように水中帆50に、浮子(傘部側浮子53)と、浮子と対向する位置に配置された錘子55と、を設けた構成とすることで、水流による水中帆50の傘部51の不測のブレ等を抑制して、水中でのバランス性が向上し、水流を効率的に受けて適切な推進力を生じさせることができる。
【0099】
また、上記第1~第3、第5実施形態のように浮子40を備えた構成とすることで、作業者が水中の水草除去具100等を発見する目印となるとともに、水草除去具100等に適度な浮力を持たせ、不必要に沈み込むのを抑制して円滑に流下させることができる。
【0100】
また、浮子(浮子40、傘部側浮子53)又はその近傍に、所定の回収部(回収用ロープ4,4A、鉤等)によって回収するための引掛部(フック54)を設けた構成とすれば、水草除去具100等をより容易に回収することができ、作業効率をより向上させることができる。また、回収用ロープ4,4Aを配置しておけば、これらに引掛部(フック54)が引掛って停止した水草除去具100等を回収部付近に留めることができる。そのため、作業者が水草除去具100等の行方を随時監視する必要がなく、水中への投入から時間を置いて回収側に出向いて回収すればよく、作業効率が向上する。
【0101】
また、第6実施形態、変形例1、2及び第7実施形態の水草除去具100E,100Fは、水中で所定の作業を行う作業部(刈取部10)と、作業部を進路方向に導く進路誘導部20E,20Fと、水流を受けることで推進力を得る模型船60と、を備えている。模型船60は、当該模型船60の進行方向を定める舵71と、舵71を揺動させる揺動機構72と、揺動機構72を制御する制御部73と、を有する操舵装置70を備えている。この構成により、模型船60を左右に移動させて、所定範囲の水草Gを刈り取ることができる。さらに、模型船60の移動を制御する移動規制部(錘体61等)を備えることで、模型船60を適切な速度と姿勢を保つことができる。
【0102】
また、操舵装置70は、所定の基準部(左岸壁LW、右岸壁RW)と模型船60との位置関係に関する位置情報(距離情報)を取得するセンサ(検出センサ74)を備え、制御部73は、センサで取得した位置情報(距離情報)に基づいて、揺動機構72を制御する。この構成により、模型船60左右の移動範囲を自在に制御することができ、所望範囲の領域の水草Gを刈り取ることができる。
【0103】
また、上記各実施形態のように、作業環境及び作業状態のいずれかに関する情報を取得する情報取得部(例えば、情報取得センサS)を、備えた構成とすることで、水草Gの刈取り等の水中作業を行いつつ、水温、水質、位置、速度、その他の作業環境や作業状態に関する情報を取得することができる。これらの情報を、水中作業の改善、研究等に役立てることができる。また、第3実施形態のように、水中帆50に、水抜き孔56を設けることで、この水抜き孔56から水中帆50(傘部51)内の水を排出することができ、水草除去具100Bの回収も、より少ない労務作業量で行うことができる。
【0104】
また、上記第1実施形態の水草除去具100を用いての水草除去システム及び第8実施形態の水草除去システム200は、水中作業具(例えば、第1~第7実施形態の水草除去具100,100A,100B,100C,100D,100E,100F)と、水中作業具を回収する回収部(例えば、回収用ロープ4、回収部110)と、を備えている。回収部は、水流に対して交差する方向に架け渡された長手部材(例えば、回収用ロープ4,4A)を有している。
【0105】
この構成により、上流から流下した水草除去具100等が長手部材に引掛かって停止するので、水草除去具100等を容易に回収することができる。よって、水草の除去等の水中作業を、より少ない労務作業量で行うことができる水中作業システムとしての水草除去システム200等を提供することができる。
【0106】
また、長手部材(回収用ロープ4,4A)は、水流の上流側から下流側の回収位置に向かって水流に対して斜めに配置することで、長手部材に引掛かった水草除去具100等が、水流によって長手部材に沿って回収位置まで移動する。そのため、作業者が水草除去具100等を容易に回収することができ、作業効率がより向上する。
【0107】
以上、本発明の水中作業具及び水中作業システムを各実施形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
【0108】
例えば、上記各実施形態では、水草除去具を農業用水路1に適用した例を説明したが、作業対象が農業用水路1に限定されることはなく、所定の水流があって水中帆による推進力が得られれば、農業用水路1以外の用水路、湖沼、河川等、様々な水域での適用が可能となる。また、上記各実施形態では、機械的な動力等を使用することなく、水流による流動力のみで水草除去具を作動しているため、より簡易でより廉価なものとなっている。これに対して、水中帆50や模型船60による推進力を補強し、水流の弱い水域での使用も可能とすべく、水草除去具に水中エンジン等の動力を設けてもよい。
【0109】
また、水流によって水草除去具を下流に移動させることができれば、必ずしも水中帆を設けなくともよく、作業部(刈取部)と、進路誘導部と、連結部とを少なくとも備えた構成の水草除去具とすればよい。この場合、さらに浮子を設けることで、推進力を向上させることができる。さらには、水中エンジン等の動力を設けることで、より合理的に推進力を確保することができる。
【0110】
また、上記各実施形態では、水中作業具の例として水草除去具に係る実施形態を説明したが、水中作業具が水草除去具に限定されるものではない。水中作業具の他の異なる実施形態として、例えば、水中のゴミ、砂、その他の堆積物を回収する水中回収具、水中生物や水中植物を採集する水中採集具等が挙げられる。
【0111】
水中回収具の場合は、作業部として、熊手、鋤簾、網、ザル、布袋等を用いることで、底部2の堆積物や水中に漂うゴミ等を回収することができる。また、水中採集具の場合は、作業部として、網、ザル、布袋等を用いることで、水中生物や水中植物を採集することができる。
【0112】
また、上記各実施形態では、引掛部としてのフック54を傘部側浮子53に設けているが、浮子40等に設けてもよいし、双方に設けてもよい。また、必ずしもフック54を設ける必要もなく、回収用ロープ4等の回収部で浮子40や水中帆50を引掛けて回収してもよい。
【0113】
また、上記各実施形態の水草除去具を、複数連結した構成としてもよいし、横長の大きな水中帆に、幅方向に複数の本体部Oや浮子40を連結した構成の水草除去具とすることもできる。
【0114】
また、第1~第3、第5実施形態の水草除去具100~100B,100Dにおいても、浮子40に第6、第7実施形態のような操舵装置70を設けてもよい。これにより、浮子40を左右に蛇行させることができ、所望範囲の領域の水草Gを刈り取ることができる。また、第6実施形態では、移動規制部として錘体61を用いているが、他の異なる実施形態として、模型船60等に取り付けたジャイロセンサや加速度センサと、制御部73とを移動規制部とし、これらのセンサでの検出情報に基づいて、制御部が移動速度や姿勢を制御することもできる。また、移動規制部がこれらに限定されることもなく、模型船60等が適切な速度や姿勢を保つように制御できれば、何れの構成の移動規制部であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 農業用水路 4a 浮子 4,4A 回収用ロープ(回収部、長手部材)
10,10E,10F 刈取部(作業部)
20,20A,20B,20E,20F 進路誘導部
30,30A,30B,30E 連結部 40 浮子 50 水中帆
53 傘部側浮子(浮子) 54 フック(引掛部) 55 錘子
56 水抜き孔 60 模型船 61 錘体(速度規制部)
70 操舵装置 71 舵 72 揺動機構 73 制御部
74 検出センサ(センサ) 74a 赤外線フォトリフレクタ(センサ)
74b 赤外線フォトリフレクタ(センサ) 74c 超音波距離センサ(センサ)
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F 水草除去具(水中作業具)
110 回収部 200 水草除去システム(水中作業システム)
G 水草 S 情報取得センサ(情報取得部) LW 左岸壁(基準部)
RW 右岸壁(基準部)