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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電気機械のステータ及び電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20230830BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02K1/20 Z
H02K9/19 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020551270
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 FI2019050162
(87)【国際公開番号】W WO2019180308
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】20185259
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】504357510
【氏名又は名称】ラッペーンランナン-ラハデン テクニッリネン ユリオピスト ルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ ペトロフ
(72)【発明者】
【氏名】ユハ ピュルホネン
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042588(JP,A)
【文献】特開2012-023837(JP,A)
【文献】特開2010-059969(JP,A)
【文献】特開2011-099442(JP,A)
【文献】特表2015-516138(JP,A)
【文献】特開平09-140097(JP,A)
【文献】特開2011-217580(JP,A)
【文献】特開2013-066341(JP,A)
【文献】特開2017-085765(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00915554(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第02806537(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械のステータ(100)であって、前記ステータ(100)は、
ステータ鉄心構造(101)と、
前記ステータ鉄心構造に機械的に支持された複数のステータコイル(102a~102f)を備えるステータ巻線とを備え、
前記複数のステータコイルの各々は、導電体と、前記導電体の長手方向に冷却流体を導くための冷却管(103)とを備え、
前記ステータは、前記ステータ鉄心構造との熱伝導性の機械的接点を有する複数の冷却要素(104a~104c)を更に備え、前記複数の冷却要素は、前記冷却流体を導くためのチャネル(105a)を備え、前記複数のステータコイルの前記冷却管が、前記複数の冷却要素を介して互いに接続されており
前記ステータ鉄心構造(101)は、前記ステータ鉄心構造を通して軸線方向に延びかつ前記複数の冷却要素(104a~104c)を収容する複数の空洞を備える、電気機械のステータ(100)において、
前記ステータは、前記複数の冷却要素を前記ステータコイルの前記複数の冷却管に接続する、複数の電気的に非導電性の接続管(108、107)を備える、ことを特徴とする電気機械のステータ(100)。
【請求項2】
前記ステータは、ラジアル磁束の電気機械のステータである、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記複数の空洞は、前記ステータ鉄心構造のヨーク部にある複数の軸線方向溝であり、前記複数の冷却要素(104a~104c)は、前記ステータ鉄心構造の空隙面とは反対を向く表面上にある複数の冷却フィン(106)を備える、請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記複数の冷却要素のうちの1つ以上の冷却要素の前記チャネル(105a)は、前記冷却流体を前記ステータ鉄心構造の第1の端部から前記ステータ鉄心構造の第2の端部に軸線方向に導き、前記冷却流体を前記ステータ鉄心構造の前記第2の端部から前記ステータ鉄心構造の前記第1の端部に戻すように成形されている、請求項に記載のステータ。
【請求項5】
前記ステータ鉄心構造(101)は、複数のステータ歯(109a、109b、110a、110b)と、前記複数のステータコイルのコイル側面を収容する複数のステータスロットとを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項6】
前記複数のステータコイルの各々は、前記複数のステータ歯の1つのみを包囲している、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記複数のステータ歯は、前記ステータコイルの形状を変えることなく前記複数のステータ歯のそれぞれのステータを包囲するように前記ステータコイルを押し込んで各ステータコイルを設置できるように成形されている、請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記複数のステータ歯は、各々が前記複数のステータコイルのうちの1つのステータコイルによって包囲されている第1のステータ歯(109a、109b)と、各々が前記複数のステータコイルのうちの隣接するステータコイル同士の間にある第2のステータ歯(110a、110b)とを備え、
前記ステータ鉄心構造(101)は、前記ステータ鉄心構造を通して軸線方向に延びておりかつ前記複数の冷却要素を収容する複数の空洞を備え、前記複数の冷却要素は、少なくとも部分的に前記第2のステータ歯の内側に位置し、前記第2のステータ歯の各々は、対応する冷却要素の両側において2つの分岐(111、112)を有する、請求項6に記載のステータ。
【請求項9】
前記複数の冷却要素(104a~104c)は、前記ステータの軸線方向に垂直な幾何学的平面に沿って、前記ステータ鉄心構造の空隙面に向かって先細りの断面を有する、請求項8に記載のステータ。
【請求項10】
前記複数の冷却要素の少なくとも1つの冷却要素は、前記ステータの外部から前記冷却流体を受け入れるための第1のパイプ・インターフェイス(114)を備え、前記複数の冷却要素の少なくとも1つの他の部分は、前記ステータから前記冷却流体を送出するための第2のパイプ・インターフェイス(115)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項11】
各ステータコイルは、前記ステータコイルの冷却管(103)によって構成される細長い導体要素(119)と、前記冷却管を包囲するように配置される一束の導線(116)とを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項12】
前記ステータコイルの前記複数の冷却管はステンレス製である、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項13】
前記複数の冷却要素は、アルミニウム又は銅のいずれかからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ(100)と、前記ステータに対して回転可能に支持されたロータ(120)とを備える電気機械。
【請求項15】
前記電気機械は、ラジアル磁束のインナーロータ型の機械であり、前記ステータの前記複数の冷却要素は、前記ステータ鉄心構造のヨーク部分にある複数の軸線方向溝に配置されており、前記複数の冷却要素は、前記ステータ鉄心構造の空隙面から離れて対向する面において複数の冷却フィンを備え、前記ロータは、ステータボアを通して気体を押し込むための送風機(121)を備え、前記電気機械は、前記複数の冷却フィンを備える前記複数の冷却要素の前記面に沿って、気体を前記送風機に循環させるように気体を案内するための機械構造(122)を備える、請求項1に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、回転電気機械の冷却に関する。より詳細には、本発明は、電気機械のステータに関する。さらに、本発明は、電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータや発電機などの回転電気機械では、電気機械のロータの電磁的にアクティブ部分とステータとの間に磁束が展開される。ラジアル磁束電気機械において、最大トルクは、空隙半径と、空隙面の面積と、空隙内の磁束密度と、ステータの空隙面における直線電流密度の積に比例する。従って、電気機械の機械的寸法を増大させることなく、鉄の飽和点を超えた場合には磁束密度をそれ以上実用上増大させることができないので、直線電流密度を増大させることによって最大トルクを増大させることができる。しかしながら、直線電流密度を増加させると、電気機械の巻線における抵抗損失が増加する。一方、トルクを不変に保ちながら回転数を上げることにより、電気機械の機械的動力を増大させることができる。したがって、高い電力対寸法の比を有する電気機械は、典型的には高速機械である。しかしながら、回転速度を増加させると、ステータ鉄心構造における磁場の交流周波数が増加し、それによって、鉄損、すなわちヒステリシス及び特に渦電流損が高速機械では著しくなる可能性がある。従って、冷却は回転電気機械の動作において重要な役割を果たす。
【0003】
電気機械のステータ巻線を冷却する有効な方法は、冷却液が巻線の導電体に接触する、又は、少なくともその近傍に接触する、液体冷却である。従来、ステータ巻線の液体冷却は、ステータコイルの導電体を中空にして冷却液を導電体内部に流すことができる大型ターボ発電機と併せて使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1(ウクライナ特許出願公開第73661号公報)には、電気機械の液体冷却式ステータが開示されている。ステータは、水素冷却を備えた磁心構造と、冷却液のための中空バーを備えた三相巻線とを備える。水素冷却は、一般に、大型ターボ発電機以外の電気機械には不適当であるか、少なくとも費用的に有効ではない。従って、ステータ鉄心構造と同様にステータ巻線に対しても液冷を配置するのに適した技術的解決策が必要とされている。
【0005】
また、特許文献2(米国特許第3157806号明細書)は、ステータ及びロータを有する同期電気機械を記載している。ステータは、ステータ鉄心構造と、ステータ鉄心構造によって機械的に支持される複数のステータコイルとを備える複数のステータ巻線とを備える。複数のステータコイルの各々は、複数の導電体と、該複数の導電体の長手方向に冷却流体を導くための冷却チャネルとを備える。ステータは、ステータ鉄心構造との熱伝導性の機械的接点を有し、冷却流体を導くための複数のチャネルを備える複数の冷却要素をさらに備える。
【0006】
また、特許文献3(米国特許出願公開第2013/0285487号明細書)は、集中巻を有する電気機械のステータを記載している。巻線は、冷却流体を複数のコイルの導電体の長手方向に導くための複数の管状冷却チャネルを備えるコイルを備える。
【0007】
また、特許文献4(米国特許出願公開第2006/0145548号明細書)は、絶縁モールドを用いて成形されるコイル及び冷却パイプを備えるステータコイルモジュールを記載している。液体冷却分配ユニットは、電気機械の軸線方向端部にあり、冷却液をステータコイルモジュールに供給する。
【0008】
また、特許文献5(米国特許出願公開第2009/0261668号明細書)には、液冷式電気機械の外面で使用するステータの冷却要素が記載されている。
【0009】
また、特許文献6(英国特許第851409号明細書)は、水冷式ステータ積層体及び巻線を有し、その巻線にマニホールドを介して液体が供給される電気機械を記載している。
【0010】
また、特許文献7(英国特許第893847号明細書)は、電気機械の軸線方向端部でマニホールドを介して液体が供給される水冷式ステータ巻線を有する電気機械を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】ウクライナ特許出願公開第73661号公報
【文献】米国特許第3157806号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0285487号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0145548号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0261668号明細書
【文献】英国特許第851409号明細書
【文献】英国特許第893847号明細書
【発明の概要】
【0012】
以下において、様々な発明の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された要約を提示する。この要約は、本発明の広範な概要ではない。本発明の重要な要素又は重大な要素を特定することも、本発明の範囲を明示することも意図しない。以下の要約は、単に、本発明の実施形態を例示するより詳細な説明のための予備手段として簡略化された形で本発明のいくつかの概念を提示するに過ぎない。
【0013】
本明細書では、接頭語として使用した場合の「幾何学的(geometric)」という語は、必ずしもいかなる物理的物体の一部ではない幾何学的概念を意味する。幾何学的概念は、例えば、幾何学的点、直線状又は曲線状の幾何学的線、幾何学的平面、平坦でない幾何学的表面、幾何学的空間、又は、ゼロ次元、一次元、二次元又は三次元である任意の他の幾何学的本質であり得る。
【0014】
本発明によれば、新規な電気機械用のステータが提供される。本発明によるステータは、ステータ鉄心構造と、前記ステータ鉄心構造によって機械的に支持された複数のステータコイルとを備えるステータ巻線とを備える。
【0015】
ステータコイルの各々は、導電体と、冷却流体を該導電体の長手方向に伝導させるための冷却管とを備える。ステータは、ステータ鉄心構造との熱伝導性の機械的接点を有する複数の冷却要素をさらに備える。複数の冷却要素は、冷却流体を導くためのチャネルを備え、ステータコイルの複数の冷却管は、複数の冷却要素を介して互いに接続されている。
【0016】
上記の複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造からの鉄損によって生じる熱を冷却流体に伝達することができる。さらに、複数の冷却要素は、複数のステータコイルの複数の冷却管の間に冷却流体を導くためのマニホールドとして作用する。
【0017】
本発明によれば、新規な電気機械も提供する。本発明による電気機械は、本発明に係るステータと、ステータに対して回転自在に支持されるロータとを備える。
【0018】
本発明の例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械は、ラジアル磁束のインナーロータ型の機械であり、複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造のヨーク部分の複数の軸線方向溝に配置され、複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造の空隙面とは反対を向いている表面において複数の冷却フィンを備える。ロータは、例えば、空隙を介して及び/又はロータの複数の軸線方向冷却チャネルを介して空気又は他の気体を押し込むための送風機の複数の翼を備えることができ、電気機械は、上記の複数の冷却フィンを備える複数の冷却要素の表面に沿って空気又は他の気体を送風機に戻して循環するように、空気又は他の気体を案内するための機械構造を備えることができる。この例示的な場合において、複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造だけでなく、ロータを冷却する空気又は他の気体を冷却するように配置される。
【0019】
本発明の例示的かつ非限定的な実施形態は、添付の従属請求項に記載されている。
【0020】
本発明の様々な例示的かつ非限定的な実施形態は、構造及び動作方法の両方に関して、付加的な目的及びその利点とともに、添付図面を参照して読まれると、特定の例示的かつ非限定的な実施形態の以下の説明から最もよく理解されるであろう。
【0021】
本明細書では、「備える(to comprise)」及び「含む、有する(to include)」という動詞は、引用されていない特徴の存在を排除又は必要としない開放限界として使用される。従属請求項に記載されている特徴は、特に明示的に記載されない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。さらに、本明細書全体を通して、「a」又は「an」、すなわち、単数形の使用は、複数を排除しないことを理解すべきである。
【0022】
本発明の例示的かつ非限定的な実施例、並びにそれらの利点を、例示的な意味で、添付図面を参照して、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a図1aは、本発明の非限定的な実施形態を例示する電気機械の等角図である。
図1b図1bは、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を例示する電気機械の等角図である。
図1c図1cは、図1a及び1bに示す電気機械の端面図である。
図1d図1dは、図1a及び1bに示す電気機械の端面図である。
図1e図1eは、図1a~1dに示す電気機械の冷却要素を示す。
図1f図1fは、図1a~1dに示す電気機械の冷却要素を示す。
図1g図1gは、図1a~1dに示す電気機械に作用する磁束を例示する電気機械の断面図を示す。
図1h図1hは、図1a~1dに示す電気機械のステータコイルを構成する細長い導体要素の断面図である
図2図2は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態に係る電気機械の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に示す具体例は、添付の特許請求の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈すべきではない。以下の説明に記載されている例のリスト及びグループは、特に明示的に記載されていない限り網羅的ではない。
【0025】
図1a及び図1bは、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械の等角図を示す。図1c及び図1dは、電気機械の端面図を示す。図1a~1dに関連する視方向は、座標系199で示されている。電気機械は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるステータ100と、ステータ100に対して回転可能に支持されるロータ120とを備える。
【0026】
ロータ120の回転軸線は、座標系199のz軸と平行である。ロータ120を回転自在に支持するための軸受配置は図1a~1dには示されていない。ステータ100は、強磁性材料からなる、又は、少なくとも備える、強磁性鉄心構造101を備える。強磁性鉄心構造101は、例えば、互いに電気的に絶縁され、電気機械の軸線方向、すなわち、座標系199のz方向に積み重ねられた強磁性シートの積層体を備えうる。
【0027】
ステータ100は、ステータ鉄心構造101によって機械的に支持される複数のステータコイル102a、102b、102c、102d、102e、102fを備えるステータ巻線を備える。複数のステータコイル102a~102fの各々は、複数の導電体と、冷却流体を導電体の長手方向に導くための冷却管とを備える。図1a及び図1bでは、ステータコイル102aの冷却管には参照番号103が付けられている。各ステータコイルは、例えば、冷却管によって構成される、適切な巻数の細長い導体要素と、例えば、冷却管の断面が細長い導体要素の断面のほぼ中央に位置するように、冷却管を包囲するように配置される導線の束とを備えうる。図1hは、上述した種類の細長い導体要素119の概略断面を示す。導線の束は、参照番号116を付けられている。導線の束は、例えば、100~200本の銅ストランドを備えうる。例示的な場合には、束はリッツ線からなる。この例示的な場合では、導線の束の各導線は、それ自体、ねじられた、又は織られた細いフィラメントの束である。電気機械の供給周波数が低い場合には、ステータコイルを構成する細長い導体要素は、導線の束の代わりに、1つ以上の導体棒を備えうる。また、各ステータコイルは、冷却管が導電体の巻の中にあるように、1つ以上の巻の冷却管のと、異なる数の巻の導電体とを備えることも可能である。ステータコイルの冷却管は、例えばステンレス鋼などの鋼で作ることができる。
【0028】
ステータ100は、ステータ鉄心構造101への熱伝導性の機械的接点を有する複数の冷却要素を備える。図1a、1c及び1dにおいて、3つの冷却要素に、参照番号104a、104b、104cが付けられている。これら冷却要素は、冷却流体を導くための複数のチャネルを備え、複数のステータコイル102a~102fの複数の冷却管は、複数の冷却要素を介して互いに接続されている。したがって、冷却流体が、複数のステータコイル102a~102fの複数の冷却要素及び複数の冷却管の両方を介して流れるように配置されている。したがって、複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造101からの鉄損によって生じる熱を冷却流体に伝達することができる。さらに、複数の冷却要素は、複数のステータコイル102a~102fの複数の冷却管の間に冷却流体を導くためのマニホールドとして作用する。また、各ステータコイルが、複数の導電体の間に2つ以上の冷却管を備えることも可能である。この例示的な場合において、各ステータコイルは、複数の冷却要素に接続される4つ以上の管端を備える。冷却要素は、例えば、アルミニウム、銅、又は、高い熱伝導率を有する他の適切な材料で作ることができる。図1a~1dに示す例示的なステータは、複数の冷却要素を複数のステータコイル102a~102fの複数の冷却管に接続するように配置された複数の接続管を備える。図1a、1b及び1dにおいて、2つ接続管が参照番号107及び108で示されている。接続管は、有利には、電気的に非導電性であり、接続管は、例えば、ポリマーで作ることができる。
【0029】
図1a~1dに示す例示的なステータ100は、ステータ鉄心構造101は、ステータ鉄心構造101を通して軸線方向に延びておりかつ複数の冷却要素を収容する複数の空洞を備える。しかしながら、複数の冷却要素がステータ鉄心構造101のヨーク部の表面に取り付けられた平坦形状の要素であることも可能である。図1a~1dに示す例示的な場合において、複数の冷却要素のための複数の空洞は、ヨーク部分にある複数の軸線方向溝である。この例示的な場合において、複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造101に対向していない面、すなわち、ステータ鉄心構造101の空隙面とは反対を向いている面において、複数の冷却フィンを設けることができる。図1bにおいて、冷却要素104aの冷却フィンには、参照番号106が付されている。ロータ120には、複数の空隙を介して、及び/又は、ロータ120の複数の軸線方向冷却チャネルを介して、すなわち、空気又は他の気体をステータボアを通して押し込むための、送風機の複数の翼を設けることができる。更に、電気機械は、上記の複数の冷却フィンを備える複数の冷却要素の複数の表面に沿って空気又は他の気体を送風機に戻して空気又は他の気体を循環するように、空気又は他の気体を案内する機械的構造を備えることができる。この例示的な場合において、複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造101だけでなく、ロータ120を冷却する空気又は他の気体も冷却するように配置される。上述した種類の電気機械の概略図が図2に示されており、図2では、送風機には参照番号121が付けられており、空気又は他の気体を案内するための機械的構造には参照番号122が付けられている。
【0030】
図1a~図1dに示す例示的なステータ100では、冷却要素104bは、ステータの外部から冷却流体を受け入れるための第1のパイプ・インターフェイス114を備え、冷却要素104cは、ステータから冷却流体を送出するための第2のパイプ・インターフェイス115を備える。パイプ・インターフェイス114及び115は、冷却流体を循環させるための外部システムに接続することができる。しかし、2つ以上のステータコイルの複数の冷却管を、冷却流体を循環させるために外部システムに接続することも可能である。冷却システムの圧力降下を許容レベルに保つために、適切な量の並列冷却経路を配置することができる。図1a~1dに示されている例示的なステータ100では、並列した2つの冷却経路が存在し、これらの冷却経路は、図1cにおいて鎖線で示されている。
【0031】
冷却要素104aは図1eに示されており、冷却要素104bは図1fに示されている。図1eは、冷却要素104aの断面図も示す。これに対応して、図1fは、冷却要素104bの断面図を示している。これらの断面は、図1e及び1fに示される線A-Aに沿って見られ、これらの断面の平面は、座標系199のxz面と平行である。図1eに示す冷却要素104aは、図1a、1b、1dに示すように、複数の接続管107、108を介して複数のステータコイル102a、102fの複数の冷却管に接続するためのパイプ・インターフェイス117aを備えている。これに対応して、図1fに示す冷却要素104bは、図1a及び図1dに示すように、それぞれの接続管を介して、ステータコイル102e及び102fの複数の冷却管に接続するための複数のパイプ・インターフェイス117bを備えている。図1eに示す断面図に示すように、冷却要素104aは、冷却流体をステータ鉄心構造101の第1の端部からステータ鉄心構造の第2の端部に軸線方向に導くように成形されており、かつ、冷却流体を第2の端部から第1の端部に戻すように成形されているチャネル105aを備えている。本発明の異なる実施形態による複数のステータの複数の冷却要素は、多くの方法で蛇行され及び/又はねじれを設けうる複数のチャネルを備えうる。
【0032】
図1gは、図1a~1dに示す電気機械の断面を示す。この断面は電気機械の軸線方向に垂直である。さらに、図1gは、電気機械に作用する磁束を例示する。図1a~1d及び1gに示す例示的なステータ100において、ステータ鉄心構造101は、複数のステータ歯と、複数のステータコイル102a~102fのコイル側面を収容する複数のステータスロットとを備える。しかしながら、上述の冷却構成を、空隙巻線を有する電気機械で使用することも可能である。
【0033】
図1a~1d及び1gに示す例示的な場合において、ステータ巻線は、各ステータコイルの幅が、各ステータコイルがステータ歯の1つのみを包囲するような、集中した非重複の歯コイル巻線(concentrated non-overlapping tooth-coil)である。ステータ歯は、ステータコイルの形状を変更することなく、それぞれのステータ歯を包囲するようにステータコイルを押し込むことによって、各ステータコイルを設置することができるように有利に成形される。しかしながら、1磁極・1相当りのスロット数が1つ以上である非集中ステータ巻線(non-concentrated stator winding)を有する電気機械において、上述の冷却構成を使用することも可能である。
【0034】
図1a~図1d及び図1gに示す例示的な場合において、ステータ歯は、各々が複数のステータコイルの1つによって包囲されている第1のステータ歯と、各々が複数のステータコイルの隣接するステータコイル同士の間にある第2のステータ歯とを備えている。図1gでは、複数の第1のステータ歯の内の2つを参照番号109a及び109bで示し、複数の第2のステータ歯の内の2つを参照番号110a及び110bで示している。図1gに示すように、複数の冷却要素は、少なくとも部分的に第2のステータ歯の内側に位置し、複数の第2のステータ歯の各々は、対応する冷却要素の両側において2つの分岐を有する。図1gにおいて、ステータ歯110aの2つの分岐は、参照番号111、112が付けられている。複数の冷却要素は、ステータ鉄心構造101の空隙面に向かって先細りの断面を有する。図1gに示す機械的構成は、第2のステータ歯の2つ分岐部が磁束が冷却要素を通過できる経路を提供するので、冷却要素が、磁束を実質的に乱すことなく空隙面に向かって半径方向に延びることができる。
【0035】
図1a~1hを参照して上述した例示的な電気機械は、永久磁石機械である。ロータ120は、励起磁束を生成するための永久磁石を備える。図1gにおいて、複数の永久磁石の1つには、参照番号113が付けられている。この例示的な場合では、各永久磁石は複数片の永久磁石材料からなる。永久磁石の磁化方向を図1gに矢印で示す。本発明の一実施形態による電気機械は、例えば、誘導機械、同期リラクタンス機械、交換リラクタンス機械、スリップリング非同期機械、又は、電気的に励起された同期機械としうることに留意されたい。
【0036】
図1a~図1hを参照して上述した例示的な電気機械は、ラジアル磁束のインナーロータ型の電気機械である。本発明の一実施形態による電気機械は、例えばラジアル磁束のアウターロータ型の電気機械又はアキシャル磁束の電気機械としうることに留意されたい。
【0037】
上記の説明に記載された具体例は、添付の特許請求の範囲の適用性及び/又は解釈を制限するものとして解釈されるべきではない。上述の説明に記載されている例のリスト及びグループは、特に明示的に記載されていない限り網羅的ではない。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
電気機械のステータ(100)であって、前記ステータ(100)は、
ステータ鉄心構造(101)と、
前記ステータ鉄心構造に機械的に支持された複数のステータコイル(102a~102f)を備えるステータ巻線とを備え、
前記複数のステータコイルの各々は、導電体と、前記導電体の長手方向に冷却流体を導くための冷却管(103)とを備える、電気機械のステータ(100)において、
前記ステータは、前記ステータ鉄心構造との熱伝導性の機械的接点を有する複数の冷却要素(104a~104c)を更に備え、前記複数の冷却要素は、前記冷却流体を導くためのチャネル(105a)を備え、前記複数のステータコイルの前記冷却管が、前記複数の冷却要素を介して互いに接続されていることを特徴とする電気機械のステータ(100)である。
第2の態様は、
前記ステータは、ラジアル磁束の電気機械のステータである、第1の態様におけるステータである。
第3の態様は、
前記ステータ鉄心構造(101)は、前記ステータ鉄心構造を通して軸線方向に延びかつ前記複数の冷却要素(104a~104c)を収容する複数の空洞を備える、第2の態様におけるステータである。
第4の態様は、
前記複数の空洞は、前記ステータ鉄心構造のヨーク部にある複数の軸線方向溝であり、前記複数の冷却要素(104a~104c)は、前記ステータ鉄心構造の空隙面とは反対を向く表面上にある複数の冷却フィン(106)を備える、第3の態様におけるステータである。
第5の態様は、
前記複数の冷却要素のうちの1つ以上の冷却要素の前記チャネル(105a)は、前記冷却流体を前記ステータ鉄心構造の第1の端部から前記ステータ鉄心構造の第2の端部に軸線方向に導き、前記冷却流体を前記ステータ鉄心構造の前記第2の端部から前記ステータ鉄心構造の前記第1の端部に戻すように成形されている、第2の態様~第4の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第6の態様は、
前記ステータ鉄心構造(101)は、複数のステータ歯(109a、109b、110a、110b)と、前記複数のステータコイルのコイル側面を収容する複数のステータスロットとを備える、第1の態様~第5の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第7の態様は、
前記複数のステータコイルの各々は、前記複数のステータ歯の1つのみを包囲している、第6の態様におけるステータである。
第8の態様は、
前記複数のステータ歯は、前記ステータコイルの形状を変えることなく前記複数のステータ歯のそれぞれのステータを包囲するように前記ステータコイルを押し込んで各ステータコイルを設置できるように成形されている、第7の態様におけるステータである。
第9の態様は、
前記複数のステータ歯は、各々が前記複数のステータコイルのうちの1つのステータコイルによって包囲されている第1のステータ歯(109a、109b)と、各々が前記複数のステータコイルのうちの隣接するステータコイル同士の間にある第2のステータ歯(110a、110b)とを備え、
前記ステータ鉄心構造(101)は、前記ステータ鉄心構造を通して軸線方向に延びておりかつ前記複数の冷却要素を収容する複数の空洞を備え、前記複数の冷却要素は、少なくとも部分的に前記第2のステータ歯の内側に位置し、前記第2のステータ歯の各々は、対応する冷却要素の両側において2つの分岐(111、112)を有する、第7の態様又は第8の態様におけるステータである。
第10の態様は、
前記複数の冷却要素(104a~104c)は、前記ステータの軸線方向に垂直な幾何学的平面に沿って、前記ステータ鉄心構造の空隙面に向かって先細りの断面を有する、第9の態様におけるステータである。
第11の態様は、
前記複数の冷却要素の少なくとも1つの冷却要素は、前記ステータの外部から前記冷却流体を受け入れるための第1のパイプ・インターフェイス(114)を備え、前記複数の冷却要素の少なくとも1つの他の部分は、前記ステータから前記冷却流体を送出するための第2のパイプ・インターフェイス(115)を備える、第1の態様~第10の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第12の態様は、
各ステータコイルは、前記ステータコイルの冷却管(103)によって構成される細長い導体要素(119)と、前記冷却管を包囲するように配置される一束の導線(116)とを備える、第1の態様~第11の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第13の態様は、
前記ステータコイルの前記複数の冷却管はステンレス製である、第1の態様~第12の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第14の態様は、
前記複数の冷却要素は、アルミニウム又は銅のいずれかからなる、第1の態様~第13の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第15の態様は、
前記ステータは、前記複数の冷却要素を前記ステータコイルの前記複数の冷却管に接続する複数の接続管(108、107)を備える、第1の態様~第14の態様のいずれか1つにおけるステータである。
第16の態様は、
第1の態様~第15の態様のいずれか1つにおけるステータ(100)と、前記ステータに対して回転可能に支持されたロータ(120)とを備える電気機械である。
第17の態様は、
前記電気機械は、ラジアル磁束のインナーロータ型の機械であり、前記ステータの前記複数の冷却要素は、前記ステータ鉄心構造のヨーク部分にある複数の軸線方向溝に配置されており、前記複数の冷却要素は、前記ステータ鉄心構造の空隙面から離れて対向する面において複数の冷却フィンを備え、前記ロータは、ステータボアを通して気体を押し込むための送風機(121)を備え、前記電気機械は、前記複数の冷却フィンを備える前記複数の冷却要素の前記面に沿って、気体を前記送風機に循環させるように気体を案内するための機械構造(122)を備える、第16の態様における電気機械である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図2