(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】担体分離回収装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20230830BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20230830BHJP
C02F 3/08 20230101ALI20230830BHJP
B01D 29/00 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C02F11/00 A ZAB
B01D29/10 510B
B01D29/10 520A
B01D29/10 530Z
C02F3/08 B
B01D23/02 Z
(21)【出願番号】P 2021208143
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2023-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521559681
【氏名又は名称】株式会社昭和衛生センター
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】田原 義久
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533642(JP,A)
【文献】特開2004-223361(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102020101027(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00-34
C02F 11/00-20
B01D 23/02-08
B01D 29/00-96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に含まれる担体を吸引して分離回収する担体分離回収装置であって、
前記担体を収納する中空状の本体部を備え、
前記本体部には、吸引機に接続される吸引機接続部と、前記担体を前記本体部の内部に案内する案内手段を接続する案内手段接続部とを有し、
前記本体部の内部には、前記吸引機接続部と、前記案内手段接続部との間に、前記担体を分離して回収するろ材が配設され
、
更に、
前記本体部を載置する載置台と、
前記載置台の下に移動可能に配置され、前記本体部において分離した前記担体を取り出して収納する収納容器とを備え、
前記本体部の側面には、前記担体を取り出すための開閉可能な取り出し口が設けられた
ことを特徴とする担体分離回収装置。
【請求項2】
前記ろ材は、複数のスリットを設けたスリット板により少なくとも一部を構成することを特徴とする請求項1記載の担体分離回収装置。
【請求項3】
前記本体部は箱状であり、上面に前記案内手段接続部が設けられ、1つの側面に前記吸引機接続部が設けられ、
前記ろ材は、前記本体部の内部において、前記吸引機接続部が設けられた吸引機接続側面、この吸引機接続側面に対向する対向側面、及び、底面に対応して、これらから所定の間隔を開けて配置された
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の担体分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥に含まれる担体を分離回収することができる担体分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化槽は、微生物の働きなどを利用して汚水を浄化し、きれいな水にして放流するための施設である。浄化槽では、近年、微生物を付着させる担体を用いた担体流動方式が主流となってきている(例えば、特許文献1参照)。このような浄化槽では、汚水処理により発生した汚泥を回収する際に、汚泥に含まれる担体を分離して回収する必要がある。従来は、例えば、ホースの先端に担体を分離するためのフィルター等を取付け、吸上車により汚泥を吸い上げて回収していた。また、浄化槽内に残った担体は、作業員が外から網ですくい上げたり、浄化槽の中に入ってすくい出していた。そのため、手間と時間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、担体を簡単に分離回収することができる担体分離回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の担体分離回収装置は、汚泥に含まれる担体を吸引して分離回収するものであって、担体を収納する中空状の本体部を備え、本体部には、吸引機に接続される吸引機接続部と、担体を本体部の内部に案内する案内手段を接続する案内手段接続部とを有し、本体部の内部には、吸引機接続部と、案内手段接続部との間に、担体を分離して回収するろ材が配設されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本体部の内部において吸引機接続部と案内手段接続部との間に、担体を分離して回収するろ材を配設するようにしたので、担体を浄化槽から本体部の内部に吸い上げて、ろ材により容易に分離することができる。よって、担体を簡単に分離回収することができる。
【0007】
また、ろ材の少なくとも一部をスリット板により構成するようにすれば、目詰まりし難く、かつ、洗浄も容易とすることができ、更に、強度を補強することができる。
【0008】
更に、ろ材は、吸引機接続部が設けられた吸引機接続側面、この吸引機接続側面に対向する対向側面、及び、底面に対応して、これらから所定の間隔を開けて配置するようにすれば、ろ過の面積を広くし、目詰まりを抑制することができる。
【0009】
加えて、本体部を載置する載置台と、載置台の下に移動可能に配置された収納容器とを備え、かつ、本体部の側面に開閉可能な取り出し口を設けるようにすれば、本体部において分離した担体を容易に収納容器に移して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る担体分離回収装置の外観構成を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示した担体分離回収装置の断面構成を表す断面図である。
【
図3】
図1に示した担体分離回収装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る担体分離回収装置10の外観構成を表すものである。
図2は、担体分離回収装置10の断面構成を表すものである。
図3は、担体分離回収装置10の動作を説明するものである。
【0013】
担体分離回収装置10は、例えば、微生物の働きなどを利用して汚水を浄化する浄化槽から汚泥を回収する際に用いることができ、特に、微生物を担体に付着させて用いる担体流動方式などの浄化槽に対して有効に用いることができる。この担体分離回収装置10は、汚泥に含まれる担体を吸引して分離回収するものであり、担体を収納する中空状の本体部11を備えている。本体部11は、例えば、箱状であり、ステンレス等の金属板材により構成することが好ましく、金属板材の厚みは2mm~6mm程度とすることが好ましい。吸引に耐える強度を持たせるためである。
【0014】
本体部11には、図示しない吸引機に接続される吸引機接続部12と、担体を本体部11の内部に案内する案内手段13Aを接続する案内手段接続部13とを有している。案内手段接続部13は、例えば、本体部の上面に設けられ、吸引機接続部12は、例えば、1つの側面に設けられている。吸引機は、例えば、真空状態又は減圧状態にして吸引するものであり、ホース等の管部材12Aの一端部を吸引機に取り付け、他端部を吸引機接続部12に取り付けることにより、管部材12Aを介して本体部11に接続される。案内手段13Aは、例えば、ホース等の管部材により構成され、基端部が案内手段接続部13に取り付けられ、先端部が浄化槽の内部に挿入されて、浄化槽の内部から担体を吸引するようになっている。
【0015】
本体部11の上面は、例えば、開閉可能な蓋11Aにより構成されていることが好ましい。本体部11の内部に担体を吸引した後、必要に応じて、蓋11Aを開け、水を上から流して担体を洗うことができるようにするためである。蓋11Aには、例えば、内部の状況を確認するためののぞき窓11Bが設けられていることが好ましい。
【0016】
本体部11の側面には、内部に吸引した担体を取り出すための取り出し口11Cが開閉部材11Dにより開閉可能とされて設けられていることが好ましい。取り出し口11Cは、吸引機接続部12が設けられた吸引機接続側面11Eに隣接する側面に設けられることが好ましい。すなわち、取り出し口11Cは、吸引機接続側面11E及び吸引機接続側面11Eに対向する対向側面11F以外の側面に設けることが好ましい。また、本体部11の側面にも、内部の状況を確認するためののぞき窓11Gが設けられていることが好ましい。
【0017】
本体部11の内部には、吸引機接続部12と、案内手段接続部13との間に、前記担体を分離して回収するろ材14が配設されている。ろ材14は、例えば、ステンレス等の金属板材により構成することが好ましく、厚みは2mm~6mm程度とすることが好ましい。吸引に耐える強度を持たせるためである。ろ材14は、例えば、複数のスリット14Aを設けたスリット板、又は、複数の貫通孔を設けた多孔板により少なくとも一部を構成することが好ましく、スリット板により少なくとも一部を構成するようにすればより好ましい。目詰まりし難く、洗浄も容易だからである。特に、スリット板はより高い効果を得ることができ、かつ、強度を補強する効果も得られるからである。なお、
図2及び
図3ではスリット14Aを模式的に示している。
【0018】
スリット14Aの幅は、例えば、1mm以上10mm以下の範囲内とすることが好ましく、2mm以上8mm以下の範囲内とすればより好ましく、3mm以上7mm以下の範囲内とすればより好ましい。目詰まりを抑制しつつ、担体を分離するためである。各スリット14Aの間隔は、例えば、5mm以上30mm以下の範囲内とすることが好ましく、6mm以上25mm以下の範囲内とすればより好ましい。強度を維持しつつ、スリット14Aの数を多くするためである。
【0019】
ろ材14は、本体部11の内部において、吸引機接続部12が設けられた吸引機接続側面11E、吸引機接続側面11Eに対向する対向側面11F、及び、底面11Hに対応し、これらから所定の間隔を開けて配置されることが好ましい。具体的には、ろ材14は、例えば、吸引機接続側面11E及び対向側面11Fに対応して設けられた一対の側部ろ材14Bと、底面11Hに対応して設けられた底部ろ材14Cとを有していることが好ましい。ろ過の面積を広くし、目詰まりを抑制するためである。ろ材14と、吸引機接続側面11E、対向側面11F、及び、底面11Hとの間の間隔は、5mm以上とすることが好ましい。効果的に吸引することができからである。
【0020】
一対の側部ろ材14Bは、取り出し口11Cの対向側から取り出し口11Cの側に向かい、互いの距離が狭くなるように、すなわち、各側部ろ材14Bに対応する吸引機接続側面11E又は対向側面11Fとの間隔が広くなるように傾斜して配設されていることが好ましい。分離された担体を掻き出す際に、掻き出し口を狭めることにより、担体が散らばることを抑制するためである。底部ろ材14Cは、取り出し口11Cの対向側から取り出し口11Cの側に向かい、高さが低くなるように、すなわち、底部ろ材14Cと底面11Hとの間隔が狭くなるように傾斜して配設されていることが好ましい。分離された担体を容易に掻き出しやすくするためである。また、底部ろ材14Cのスリット14Aは、取り出し口11Cとその対向側との対向方向に延長して設けられていることが好ましい。分離された担体を容易に掻き出しやすくするためである。なお、側部ろ材14Bのスリット14Aは、縦方向に延長して設けられていてよく、横方向に延長して設けられていてもよい。
【0021】
担体分離回収装置10は、また、本体部11を載置する載置台15と、載置台15の下に移動可能に配置され、本体部11において分離した担体を取り出して収納する収納容器16とを備えていることが好ましい。本体部11において分離した担体を容易に収納容器16に移して回収することができるからである。収納部16は、例えば、底部にキャスター16Aを配設することにより移動可能とされていることが好ましい。また、収納容器16には、例えば、網状の袋17をかぶせて用いることが好ましい。
【0022】
この担体分離回収装置10は、例えば、浄化槽から汚泥を回収する際に、次のようにして用いることができる。まず、例えば、浄化槽の汚泥を吸上車により吸い上げて回収する。具体的には、吸上車にホース等の管部材を取り付け、この管部材の先端にフィルターを取り付けて浄化槽の中に挿入し、汚泥を吸い上げる。汚泥に含まれる担体は、フィルターにより分離され、浄化槽の中に残る。
【0023】
次いで、吸上車の吸引機に取り付けたホース等の管部材12Aを本体部11の吸引機接続部12に取り付けると共に、本体部11の案内手段接続部13にホース等の案内手段13Aを取り付ける。続いて、案内手段13Aの先端部を浄化槽の中に挿入し、吸引機により吸引して、浄化槽から担体を残っている汚泥と共に吸い上げる。これにより、担体及び汚泥は案内手段13Aを介して本体部11の内部に案内され、ろ材14により担体が分離されて、担体は本体部11の内部に残り、汚泥はろ材14を通過して管部材12Aを介し吸上車に吸引される。
【0024】
次に、必要に応じて、蓋11Aを開け、吸引機により吸引しながら本体部11の内部に上から水をかけ、担体を洗浄する。その後、例えば、開閉部材11Dを開けて取り出し口11Cを開口し、袋17をかけた収納容器16を載置台15の下から引き出し、掻き出し棒などにより本体部11の内部から担体を掻き出して、収納容器16の中に移動させる。収納容器16に移動させた担体は、袋17を収納容器16から取り出すことにより回収される。
【0025】
このように、本実施の形態によれば、本体部11の内部において吸引機接続部12と案内手段接続部13との間に、担体を分離して回収するろ材14を配設するようにしたので、担体を浄化槽から本体部11の内部に吸い上げて、ろ材14により容易に分離することができる。よって、担体を簡単に分離回収することができる。
【0026】
また、ろ材14の少なくとも一部をスリット板により構成するようにすれば、目詰まりし難く、かつ、洗浄も容易とすることができ、更に、強度を補強することができる。
【0027】
更に、ろ材14は、吸引機接続部12が設けられた吸引機接続側面11E、この吸引機接続側面11Eと対向する対向側面11F、及び、底面11Hに対応して、これらから所定の間隔を開けて配置するようにすれば、ろ過の面積を広くし、目詰まりを抑制することができる。
【0028】
加えて、本体部11を載置する載置台15と、載置台15の下に移動可能に配置された収納容器16とを備え、かつ、本体部11の側面に開閉可能な取り出し口11Cを設けるようにすれば、本体部11において分離した担体を容易に収納容器16に移して回収することができる。
【0029】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
汚泥に含まれる担体の分離回収に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
10…担体分離回収装置、11…本体部、11A…蓋、11B…のぞき窓、11C…取り出し口、11D…開閉部材、11E…吸引機接続側面、11F…対向側面、11G…のぞき窓、11H…底面、12…吸引機接続部、12A…管部材、13…案内手段接続部、13A…案内手段、14…ろ材、14A…スリット、14B…側部ろ材、14C…底部ろ材、15…載置台、16…収納容器、16A…キャスター、17…袋