(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】サージ保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 11/00 20060101AFI20230830BHJP
H01C 7/12 20060101ALI20230830BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20230830BHJP
H02H 3/10 20060101ALI20230830BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20230830BHJP
H02H 5/04 20060101ALI20230830BHJP
H02H 7/20 20060101ALI20230830BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02H11/00 160
H01C7/12
H02H3/08 P
H02H3/10 A
H02H3/16 B
H02H5/04 110
H02H7/20 Z
H02H9/04 A
(21)【出願番号】P 2021212294
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000227515
【氏名又は名称】日動工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真下 博詮
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0304943(US,A1)
【文献】特開2021-126024(JP,A)
【文献】登録実用新案第3119459(JP,U)
【文献】特開2017-199587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 11/00
H01C 7/12
H02H 3/08
H02H 3/10
H02H 3/16
H02H 5/04
H02H 7/20
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接地側電線(L)と接地側電線(N)と
アース線(G)とを備える電力入力ラインと、
前記非接地側電線と前記接地側電線とを接続するL-N接続ラインに配置され、サージを吸収する第1バリスタと、
前記第1バリスタと直列の関係で、前記L-N接続ラインに配置され、前記第1バリスタの故障により、前記L-N接続ラインに通電電流が流れることに応答して、前記非接地側電線および前記接地側電線の少なくともいずれか一方の通電を遮断する第1故障検出手段と
、
前記非接地側電線と前記アース線とを接続するL-G接続ラインに配置され、サージを吸収する第2バリスタと、
前記第2バリスタと直列の関係で、前記L-G接続ラインに配置される第1ガスアレスタと、
前記L-G接続ライン上の前記第2バリスタと前記第1ガスアレスタとの間から分岐し、前記接地側電線に接続される第1分岐ラインに配置され、前記第2バリスタの故障により、前記L-G接続ラインおよび前記第1分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、前記非接地側電線の通電を遮断する第2故障検出手段とを備え
、
前記第1故障検出手段は、
前記L-N接続ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第1抵抗器と、
前記非接地側電線および前記接地側電線のうちの少なくともいずれか一方の途中位置に設けられ、前記第1抵抗器と近接した位置に配置され、前記第1抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第1温度ヒューズとを含む、サージ保護回路。
【請求項2】
前記第2故障検出手段は、
前記第1分岐ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第2抵抗器と、
前記非接地側電線の途中位置に設けられ、前記第2抵抗器と近接した位置に配置され、前記第2抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第2温度ヒューズとを含む、請求項
1に記載のサージ保護回路。
【請求項3】
非接地側電線(L)と接地側電線(N)とアース線(G)とを備える電力入力ラインと、
前記非接地側電線と前記接地側電線とを接続するL-N接続ラインに配置され、サージを吸収する第1バリスタと、
前記第1バリスタと直列の関係で、前記L-N接続ラインに配置され、前記第1バリスタの故障により、前記L-N接続ラインに通電電流が流れることに応答して、前記非接地側電線および前記接地側電線の少なくともいずれか一方の通電を遮断する第1故障検出手段と、
前記接地側電線と前記アース線とを接続するN-G接続ラインに配置され、サージを吸収する第3バリスタと、
前記第3バリスタと直列の関係で、前記N-G接続ラインに配置される第2ガスアレスタと、
前記N-G接続ライン上の前記第3バリスタと前記第2ガスアレスタとの間から分岐し、前記非接地側電線に接続される第2分岐ラインに配置され、前記第3バリスタの故障により、前記N-G接続ラインおよび前記第2分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、前記接地側電線の通電を遮断する第3故障検出手段とを備え、
前記第1故障検出手段は、
前記L-N接続ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第1抵抗器と、
前記非接地側電線および前記接地側電線のうちの少なくともいずれか一方の途中位置に設けられ、前記第1抵抗器と近接した位置に配置され、前記第1抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第1温度ヒューズとを含む、サージ保護回路。
【請求項4】
前記第3故障検出手段は、
前記第2分岐ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第3抵抗器と、
前記接地側電線の途中位置に設けられ、前記第3抵抗器と近接した位置に配置され、前記第3抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第3温度ヒューズとを含む、請求項
3に記載のサージ保護回路。
【請求項5】
3本の入力ライン(L1,L2,L3)と、アース線(G)とを備える三相交流回路に組み込まれるサージ保護回路であって、
任意の2本の入力ラインのうちの一方の入力ラインと、アース線とを接続するアース接続ラインに配置され、サージを吸収するバリスタと、
前記バリスタと直列の関係で、前記アース接続ラインに配置されるガスアレスタと、
前記アース接続ライン上の前記バリスタと前記ガスアレスタとの間から分岐し、任意の2本の入力ラインのうちの他方の入力ラインに接続される分岐ラインに配置され、前記バリスタの故障により、前記アース接続ラインおよび前記分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、前記一方または他方の入力ラインの通電を遮断する故障検出手段とを備え、
前記故障検出手段は、
前記分岐ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する抵抗器と、
前記入力ラインのうちの一方の途中位置に設けられ、前記抵抗器と近接した位置に配置され、前記抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する温度ヒューズとを含む、サージ保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に、電流又は電圧の異常上昇から電気機器を保護するためのサージ保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサージ保護回路100として、
図3(a)に示すように設置される避雷器に組み込まれる電気回路が知られている。サージ保護回路100は、電力入力ライン200に対し並列接続される。すなわちサージ保護回路100は、
図3(b)に示すように、非接地側電線Lと接地側電線Nとを接続するL-N接続ラインに配置されたバリスタ300およびガスアレスタ400、または等価の回路を備えている。このため、サージの印加により、バリスタ300が破壊または故障して、サージ保護回路100の機能が損なわれた後も主電源-電気機器間の通電が可能であり、電気機器をサージから保護することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-97215号公報
【文献】特開2020-38861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解決するため、特許文献1(特開平11-97215号公報)には、バリスタと、バリスタに隣接して配置されたサーミスタとを備える保護装置が開示されている。この特許文献1に記載の装置では、バリスタが異常高温状態となったことをサーミスタが検知することで電流遮断を行うようにしている。また、特許文献2(特開2020-38861号公報)には、バリスタと、バリスタに隣接して配置された温度ヒューズとを備える避雷器が開示されている。特許文献2は、バリスタ破壊時のバリスタの発熱で温度ヒューズを溶断することで電流遮断を行うことを開示している。
【0005】
特許文献1および特許文献2は、いずれもサージ印加時に生じるバリスタ破壊の熱を利用して回路を遮断するものである。しかしながら、バリスタはサーミスタや温度ヒューズよりも大きく、バリスタ破壊はバリスタ表面のいずれかの位置で、瞬時に生じる。そのため、たとえばサーミスタや温度ヒューズが接していない側でバリスタ破壊が生じた場合など、正確に異常高温を検知できない場合があった。換言すれば、バリスタが破壊されているにも関わらず、通電が遮断されない場合があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、サージ印加に起因するバリスタの故障時に、確実に通電を遮断することのできる、サージ保護回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態に係るサージ保護回路は、非接地側電線(L)と接地側電線(N)とを備える電力入力ラインと、非接地側電線と接地側電線とを接続するL-N接続ラインに配置され、サージを吸収する第1バリスタと、第1バリスタと直列の関係で、L-N接続ラインに配置され、第1バリスタの故障により、L-N接続ラインに通電電流が流れることに応答して、非接地側電線および接地側電線の少なくともいずれか一方の通電を遮断する第1故障検出手段とを備える。
【0008】
好ましくは、第1故障検出手段は、L-N接続ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第1抵抗器と、非接地側電線および接地側電線のうちの少なくともいずれか一方の途中位置に設けられ、第1抵抗器と近接した位置に配置され、第1抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第1温度ヒューズとを含む。
【0009】
好ましくは、電力入力ラインは、アース線(G)を含む。この場合、本実施の形態のサージ保護回路は、非接地側電線とアース線とを接続するL-G接続ラインに配置され、サージを吸収する第2バリスタと、第2バリスタと直列の関係で、L-G接続ラインに配置される第1ガスアレスタと、L-G接続ライン上の第2バリスタと第1ガスアレスタとの間から分岐し、接地側電線に接続される第1分岐ラインに配置され、第2バリスタの故障により、L-G接続ラインおよび第1分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、非接地側電線の通電を遮断する第2故障検出手段とを備える。
【0010】
好ましくは、第2故障検出手段は、第1分岐ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第2抵抗器と、非接地側電線の途中位置に設けられ、第2抵抗器と近接した位置に配置され、第2抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第2温度ヒューズとを含む。
【0011】
電力入力ラインがアース線(G)を含む場合、他の実施の形態のサージ保護回路は、接地側電線とアース線とを接続するN-G接続ラインに配置され、サージを吸収する第3バリスタと、第3バリスタと直列の関係で、N-G接続ラインに配置される第2ガスアレスタと、N-G接続ライン上の第3バリスタと第2ガスアレスタとの間から分岐し、非接地側電線に接続される第2分岐ラインに配置され、第3バリスタの故障により、N-G接続ラインおよび第2分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、接地側電線の通電を遮断する第3故障検出手段とを備える。
【0012】
好ましくは、第3故障検出手段は、第2分岐ラインに配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第3抵抗器と、接地側電線の途中位置に設けられ、第3抵抗器と近接した位置に配置され、第3抵抗器の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第3温度ヒューズとを含む。
【0013】
本実施の形態の他の形態に係るサージ保護回路は、非接地側電線(L)と、接地側電線(N)と、アース線(G)とを備える電力入力ラインと、接地側電線または非接地側電線のいずれか一方と、アース線とを接続するアース接続ラインに配置され、サージを吸収するバリスタと、バリスタと直列の関係で、アース接続ラインに配置されるガスアレスタと、アース接続ライン上のバリスタとガスアレスタとの間から分岐し、接地側電線または非接地側電線のいずれか他方に接続される分岐ラインに配置され、バリスタの故障により、アース接続ラインおよび分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、接地側電線または非接地側電線のいずれか一方の通電を遮断する故障検出手段とを備える。
【0014】
他の実施の形態に係るサージ保護回路は、3本の入力ラインを備える三相交流回路に組み込まれる。サージ保護回路は、任意の2本の入力ライン間を接続する接続ラインに配置され、サージを吸収するバリスタと、バリスタと直列の関係で、接続ラインに配置され、バリスタの故障により、接続ラインに通電電流が流れることに応答して、一方または他方の入力ラインの通電を遮断する故障検出手段とを備える。
【0015】
3本の入力ライン(L1,L2,L3)と、アース線(G)とを備える三相交流回路に組み込まれるサージ保護回路は、任意の2本の入力ラインのうちの一方の入力ラインと、アース線とを接続するアース接続ラインに配置され、サージを吸収するバリスタと、バリスタと直列の関係で、アース接続ラインに配置されるガスアレスタと、アース接続ライン上のバリスタとガスアレスタとの間から分岐し、任意の2本の入力ラインのうちの他方の入力ラインに接続される分岐ラインに配置され、バリスタの故障により、アース接続ラインおよび分岐ラインに通電電流が流れることに応答して、一方または他方の入力ラインの通電を遮断する故障検出手段とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サージ印加に起因するバリスタの故障時に確実に通電を遮断し、電気機器を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係るサージ保護回路を示す図であり、(a)は模式図、(b)は回路図である。
【
図2】他の実施の形態に係るサージ保護回路を示す回路図である。
【
図3】従来のサージ保護回路を模式的に示す図であり、(a)は模式図、(b)は回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(構成について)
本実施の形態のサージ保護回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、「第1」「第2」「第3」と付された構成は、基本的には同じか同程度の性能のものを用いることとし、「第2」と付された構成以降のものについてその説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るサージ保護回路1を示す図である。
図1(a)は、本実施の形態に係るサージ保護回路1が主電源と電気機器との間に組み込まれたことを示す模式図である。
図1(b)は、
図1(a)の点線内の電気回路を抜き出して示す回路図である。
【0020】
サージ保護回路1は、電力入力ライン2を備える。電力入力ライン2は、非接地側電線Lと、接地側電線Nと、アース線Gとを含む。電力入力ライン2は、主電源と電気機器とを通電可能につなぐラインである。なお、本実施の形態はアース線Gを備える例を説明するが、これを備えることは必須でない。
【0021】
本実施の形態に係るサージ保護回路1は、非接地側電線Lと接地側電線Nとを接続する、L-N接続ライン3を備える。サージ保護回路1は、L-N接続ライン3に配置され、サージを吸収する第1バリスタ32と、第1バリスタ32と直列の関係で、L-N接続ライン3に配置され、第1バリスタ32の故障により、L-N接続ライン3に通電電流が流れることに応答して、非接地側電線Lおよび接地側電線Nの少なくともいずれか一方の通電を遮断する第1故障検出手段31とを備える。
【0022】
L-N接続ライン3上において、第1バリスタ32は非接地側電線L側に設けられ、第1故障検出手段31は接地側電線N側に設けられる。平常通電時は第1バリスタ32のインピーダンスが高いため、電流は非接地側電線L上を電気機器に向かって流れ、L-N接続ライン3側には流れない。ここにサージが印加され、第1バリスタ32が故障すると、第1バリスタ32のインピーダンスが低下するため、L-N接続ライン3に通電電流が流れ込む。なお、バリスタの故障とは、バリスタの機能が低下または消失した状態である。本実施の形態では、L-N接続ライン3上において、第1バリスタ32を非接地側電線L側に配置し、第1故障検出手段31を接地側電線N側に配置したが、これらの配置は逆でもよい。すなわち、第1バリスタ32を接地側電線N側に配置し、第1故障検出手段31を非接地側電線L側に配置してもよい。
【0023】
本実施の形態では、L-N接続ライン3に通電電流が流れ込むと、第1故障検出手段31がこれを検出し、非接地側電線Lの通電を遮断する。第1故障検出手段31は、電力入力ライン2の通電を遮断するものであればよい。本実施の形態における第1故障検出手段31は、L-N接続ライン3に配置され、通電電流が流れることに応答して発熱する第1抵抗器33と、非接地側電線Lおよび接地側電線Nのうちの少なくともいずれか一方の途中位置に設けられ、第1抵抗器33と近接した位置に配置され、第1抵抗器33の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第1温度ヒューズ34とを含む。
【0024】
第1抵抗器33は、L-N接続ライン3が通電することにより発熱する。すなわち第1抵抗器33は、平常通電時は発熱しないが、サージの印加に起因して第1バリスタ32が故障し、L-N接続ライン3に通電電流が流れたときに発熱する。なるべく早く非接地側電線Lの通電を遮断する観点から、第1抵抗器33は、数秒~数十秒程度で100℃以上に昇温するものを用いるのが好ましい。
【0025】
本実施の形態の第1温度ヒューズ34は、非接地側電線Lの途中位置に設けられている。第1温度ヒューズ34と第1抵抗器33とは、互いに近接した位置に配置される。ここで言う「近接」とは、典型的には第1温度ヒューズ34および第1抵抗器33の少なくとも一部分が当接している状態であり、第1抵抗器33の温度の影響を十分受けることができる位置に第1温度ヒューズ34が配置されていればよい。これにより、第1温度ヒューズ34は、第1抵抗器33から発せられる熱により溶断することができる。実用性の観点から、第1温度ヒューズ34は100℃以上で溶断するものを用いるのが好ましい。
【0026】
なお、第1抵抗器33と第1温度ヒューズ34とは、確実に溶断を行う観点から、互いにテープ等で束ねられ、密着された構成であってもよい。
【0027】
本実施の形態に係るサージ保護回路1は、L-G接続ライン4を備える。この場合、サージ保護回路1は、非接地側電線Lとアース線Gとを接続するL-G接続ライン4に配置され、サージを吸収する第2バリスタ42と、第2バリスタ42と直列の関係で、L-G接続ラインに配置される第1ガスアレスタ45とを備える。また、サージ保護回路1は、L-G接続ライン4上の第2バリスタ42と第1ガスアレスタ45との間から分岐し、接地側電線Nに接続される第1分岐ライン40に配置される第2故障検出手段41を備える。
【0028】
L-G接続ライン4上において、第2バリスタ42は非接地側電線L側に設けられ、第1ガスアレスタ45はアース線G側に設けられる。平常通電時は第2バリスタ42および第1ガスアレスタ45のインピーダンスが高いため、電流は非接地側電線Lに流れ、L-G接続ライン4側には流れない。ここにサージが印加されると、第2バリスタ42は、インピーダンスが変化することでサージを吸収し、第1ガスアレスタ45は、放電することでサージを吸収する。サージの印加により第2バリスタ42が故障すると、第2バリスタ42のインピーダンスが低くなり、第1ガスアレスタ45のインピーダンスが高いため、L-G接続ライン4および第1分岐ライン40に通電電流が流れ込む。第1分岐ライン40上には第2抵抗器43が配置されており、第2故障検出手段41は、第1分岐ライン40に通電電流が流れることで機能する。
【0029】
第2故障検出手段41は、L-G接続ライン4にサージが印加されて第2バリスタ42が故障すると、非接地側電線Lの通電を遮断する。本実施の形態の第2故障検出手段41は、第1分岐ライン40に配置され、通電電流に応答して発熱する第2抵抗器43と、非接地側電線Lの途中位置に設けられ、第2抵抗器43と近接した位置に配置され、第2抵抗器43の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第2温度ヒューズ44とを含む。
【0030】
第2抵抗器43は、第1分岐ライン40に通電電流が流れ込むことにより発熱する。第1ガスアレスタ45はインピーダンスが高いため、アース線G側へはほとんど電流は流れない。すなわち、第2バリスタ42の破壊後にL-G接続ライン4へ流れ込む通電電流は、アース線Gへ流れずに、第1分岐ライン40に流れるからこそ、確実に第2抵抗器43が発熱し、温度ヒューズ44を溶断することができる。
【0031】
本実施の形態に係るサージ保護回路1は、N-G接続ライン5を備える。この場合、サージ保護回路1は、接地側電線Nとアース線Gとを接続するN-G接続ライン5に配置され、サージを吸収する第3バリスタ52と、第3バリスタ52と直列の関係で、N-G接続ライン5に配置される第2ガスアレスタ55とを備える。また、サージ保護回路1は、N-G接続ライン5上の第3バリスタ52と第2ガスアレスタ55との間から分岐し、非接地側電線Lに接続される第2分岐ライン50に配置される第3故障検出手段51を備える。
【0032】
N-G接続ライン5上において、第3バリスタ52は、接地側電線N側に設けられ、第2ガスアレスタ55は、アース線G側に設けられる。平常通電時は第3バリスタ52および第2ガスアレスタ55のインピーダンスが高いため、電流は接地側電線Nに流れ、N-G接続ライン5側には流れない。ここにサージが印加されると、第3バリスタ52は、インピーダンスが変化することでサージを吸収し、第2ガスアレスタ55は、放電することでサージを吸収する。サージの印加により第3バリスタ52が故障すると、第3バリスタ52のインピーダンスが低くなり、第2ガスアレスタ55のインピーダンスが高いため、N-G接続ライン5および第2分岐ライン50に通電電流が流れ込む。第2分岐ライン50上には第3抵抗器53が配置されており、第3故障検出手段51は、第2分岐ライン50に通電電流が流れることで機能する。
【0033】
第3故障検出手段51は、N-G接続ライン5にサージが印加されて第3バリスタ52が故障すると、接地側電線Nの通電を遮断する。本実施の形態の第3故障検出手段51は、第2分岐ライン50に配置され、通電電流に応答して発熱する第3抵抗器53と、接地側電線Nの途中位置に設けられ、第3抵抗器53と近接した位置に配置され、第3抵抗器53の発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する第3温度ヒューズ54とを含む。
【0034】
第3抵抗器53は、第2分岐ライン50に通電電流が流れ込むことにより発熱する。第2ガスアレスタ55はインピーダンスが高いため、アース線G側へはほとんど電流は流れない。すなわち、第3バリスタ52の破壊後にN-G接続ライン5へ流れ込む通電電流は、アース線Gへ流れずに、第2分岐ライン50に流れるからこそ、確実に第3抵抗器53が発熱し、第3温度ヒューズ54を溶断することができる。
【0035】
(効果について)
L-G接続ライン4上には第1ガスアレスタ45が設けられ、N-G接続ライン5上には第2ガスアレスタ55が設けられる。ここで、第1および第2ガスアレスタ45,55は、平常通電時の電圧では高インピーダンスのため通電しないという特性を有している。すなわち、第1,第2ガスアレスタ45,55は、L-G接続ライン4,N-G接続ライン5に流入した通電電流が、第1,第2分岐ライン40,50に流れるよう機能する。これによりL-N間が通電される。したがって、バリスタの故障後におけるL-N間の通電は、第1,第2分岐ライン40,50を経由して行われる。第1,第2分岐ライン40,50上に設けられた第2、第3抵抗器43,53は、分岐ライン40,50を流れる通電電流により発熱する。これにより、第2、第3温度ヒューズ44,54を確実に溶断することができる。
【0036】
本実施の形態に係るサージ保護回路1によれば、電気機器への通電が確実に遮断されるため、容易に故障を認知することができる。また、バリスタが故障した後に電気機器の使用を継続することがないため、次回引き起こされるサージによるダメージを未然に防ぐことができる。
【0037】
従来技術のサージ保護回路は、バリスタ破壊時の形状や熱の感知が不安定な状態でバリスタの発熱を検知するものである。本実施の形態に係るサージ保護回路は、このような従来技術の構成とは異なるものであり、破壊または故障したバリスタを通過する通電電流によって抵抗器を発熱させ、この抵抗器の発熱により確実に温度ヒューズを溶断し、電力入力ラインを遮断することができる。
【0038】
なお、本実施の形態のサージ保護回路1は、少なくとも1つの故障検出手段を備えていればよい。しかしながら、2つ以上、特に第2、第3故障検出手段41,51を備える場合、さらなる効果を得ることができる。電力入力ライン2にサージが印加される際、第1分岐ライン40および第2分岐ライン50にもサージ電流が流れる。これにより、本実施の形態のサージ保護回路1は、L-N間を接続する3つの並列回路が形成されることとなり、L-N接続ライン3、L-G接続ライン4、N-G接続ライン5の各々に設けられた各バリスタおよび/またはガスアレスタは、分散されたサージを吸収することができる。すなわち、本実施の形態のサージ保護回路1は、サージ許容量を向上することができる。
【0039】
以上の説明において、本実施の形態のサージ保護回路1は、L-N接続ライン3と、L-G接続ライン4と、N-G接続ライン5とを備えることとしたが、これらのラインのうちいずれかの接続ラインに故障検出手段を備えているだけで、本発明の効果は発揮することができる。したがって、本発明の別態様におけるサージ保護回路1は、非接地側電線(L)と、接地側電線(N)と、アース線(G)とを備える電力入力ライン2と、接地側電線または非接地側電線のいずれか一方と、アース線とを接続するアース接続ライン4,5に配置され、サージを吸収するバリスタ42,52と、バリスタ42,52と直列の関係で、アース接続ライン4,5に配置されるガスアレスタ45,55と、アース接続ライン4,5上のバリスタ42,52とガスアレスタ45,55との間から分岐し、接地側電線Lまたは非接地側電線Nのいずれか他方に接続される分岐ライン40,50に配置され、バリスタ42,52の故障により、アース接続ライン4,5および分岐ライン40,50に通電電流が流れることに応答して、接地側電線Nまたは非接地側電線Lのいずれか一方の通電を遮断する故障検出手段41,51とを備える。
【0040】
(他の実施形態について)
次に、
図2を参照して、他の実施の形態に係るサージ保護回路1Aについて説明する。本発明に係るサージ保護回路1は、単相交流の電気回路に採用されるものであったが、他の実施の形態に係るサージ保護回路1Aは、三相交流の電気回路に採用されるサージ保護回路1Aである。三相交流回路は、実質的には、単相交流回路を3つ併せたものであり、既述の単相交流回路用サージ保護回路1を三相交流回路にも適用可能である。
【0041】
図2に示すサージ保護回路1Aのバリスタおよび故障検出手段は、3本の入力ラインL1,L2,L3のうち、任意の2本の入力ライン間に設けられる。すなわち、L1-L2接続ライン3A,L2-L3接続ライン4AおよびL3-L1接続ライン5Aのそれぞれに、サージを吸収するバリスタ32A,42A,52Aおよび故障検出手段31A,41A,51Aが設けられる。各接続ライン3A,4A,5Aには、各バリスタ32A,42A,52Aの故障により通電電流が流れる。通電電流が流れることに応答して、故障検出手段31A,41A,51Aは、一方の入力ラインまたは他方の入力ラインの通電を遮断する。
【0042】
故障検出手段31A、41A,51Aは、接続ライン3A,4A,5A上に通電電流が流れることに応答して発熱する抵抗器33A,43A,53Aを備え、任意の2本の入力ラインの一方の入力ラインまたは他方の入力ラインの途中位置に設けられ、抵抗器33A,43A,53Aと近接した位置に配置され、抵抗器33A,43A,53Aの発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する温度ヒューズ34A、44A,54Aを備える。
【0043】
また、電力入力ライン2Aがアース線Gを含む場合、サージ保護回路1Aは、L1-G接続ライン6A、L2-G接続ライン7A、L3-G接続ライン8Aを有し、各アース接続ライン6A,7A,8A上に、バリスタ62A,72A,82Aおよびガスアレスタ65A,75A,85Aが備えられていてもよい。この場合であっても、各アース接続ライン6A,7A,8Aのバリスタ62A,72A,82Aとガスアレスタ65A,75A,85Aとの間から分岐し、電力入力ライン2Aの対応するラインへ接続する分岐ライン60A,70A,80Aに通電電流が流れることで、故障検出手段61A,71A,81Aが通電を遮断する。
【0044】
故障検出手段61A,71A,81Aは、分岐ライン60A,70A,80A上に通電電流が流れることに応答して発熱する抵抗器63A,73A,83Aを備え、一方または他方のうちいずれかの電力入力ラインの途中位置に設けられ、抵抗器63A,73A,83Aと近接した位置に配置され、抵抗器63A,73A,83Aの発熱温度が設定値を上回ることに応答して溶断する温度ヒューズ64A,74A,84Aを備える。
【0045】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 サージ保護回路、2 電力入力ライン、3 L-N接続ライン、4 L-G接続ライン、5 N-G接続ライン、31 第1故障検出手段、32 第1バリスタ、33 第1抵抗器、34 第1温度ヒューズ、40 第1分岐ライン、41 第2故障検出手段、42 第2バリスタ、43 第2抵抗器、44 第2温度ヒューズ、45 第1ガスアレスタ、50 第2分岐ライン、51 第3故障検出手段、52 第3バリスタ、53 第3抵抗器、54 第3温度ヒューズ、55 第2ガスアレスタ、1A サージ保護回路、2A 電力入力ライン、3A L1-L2接続ライン、4A L2-L3接続ライン、5A L3-L1接続ライン、6A L1-G接続ライン、7A L2-G接続ライン、8A L3-G接続ライン、60A,70A,80A 分岐ライン、31A、41A,51A、61A,71A,81A 故障検出手段、32A,42A,52A、62A,72A,82A バリスタ、33A,43A,53A,63A,73A,83A 抵抗器、34A、44A,54A,64A,74A,84A 温度ヒューズ、65A,75A,85A ガスアレスタ。