(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】浮き支持形態メッシュ表面を備えたインソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20230830BHJP
A43B 17/14 20060101ALI20230830BHJP
A43B 7/06 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
A43B17/14
A43B7/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066322
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2018544929の分割
【原出願日】2017-02-24
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2016-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521120115
【氏名又は名称】プラエ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンホルツ,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ハン-チャ
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0277696(US,A1)
【文献】米国特許第06484419(US,B1)
【文献】実開昭60-056305(JP,U)
【文献】実開昭59-013106(JP,U)
【文献】実開昭58-039105(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0163280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/06
A43B 17/00 - 17/18
A43B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴用のアッパーと、
前記アッパーに取り付けられているメッシュ製
ラスティングボード(Lasting Board)と、
前記アッパーと前記メッシュ製
ラスティングボードとが取り付けられているソールと、
前記ソール内で、前記メッシュ製
ラスティングボードの下側に配置されているフォーム製基部と、
を備えた靴であって、
前記フォーム製基部は、前記メッシュ製
ラスティングボードが前記フォーム製基部の上方にサスペンド(浮き支持)されて前記メッシュ製
ラスティングボードと前記フォーム製基部との間に腔部が形成されるように、形状化されていることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記アッパーおよび前記メッシュ製ラスティングボードは、メッシュ素材でラスト処理されたアッパーを形作る、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記メッシュ製ラスティングボードは、複数の種類の織糸を備えると共に幾何織模様を有しており、織糸の特性およびメッシュの幾何織模様が当該メッシュ製ラスティングボードの中で空間的に変化している、請求項1又は2に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年2月25日に出願された米国仮特許出願第62/299587「サスペンド形態(浮き支持形態)メッシュ表面を備えたインソール」に関連しており、米国特許法第119条(e)による優先権を主張するものである。そして、その全体が参照により本願に組み込まれる。
[技術分野]
本発明は、サスペンド形態(浮き支持形態)メッシュ表面を備えたインソールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
履物の伝統的なインソール(靴内底)はフォーム材(発泡材)のごとき圧縮性材料により製造されている。フォーム材は着用者の足に一定の快適性を提供するが、一般的には着用者の足全体には快適性を与えず、特定の加圧点のみを支持するであろう。その結果、ユーザにとって一貫して快適な靴を見つけるのが困難であることが多い。なぜなら一部の伝統的なインソールは一部のユーザのみに適合するように造られているからである。
【0003】
フォーム製インソールの別な欠点は、足の周囲で空気が循環しないため、足からの汗がフォーム材上に寄せ集められることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の主たる目的は、全ての着用者に個別フィット(カスタマイズされたフィット感)を提供するインソールを提供することにある。
【0006】
本発明の別な目的は、インソール上での汗の集積を減少させるインソールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
靴内に形成される腔部(空間部)の上に伸張され且つサスペンド(浮き支持)されるメッシュ材料から構成されたインソールが提供される。そのメッシュは、フォーム(発泡材)製基部と、そのフォーム製基部の下側に位置する剛質フレームを包囲する。フォーム製基部は、着用者の足に“トランポリン”効果を提供するよう、腔部(空間部)がフォーム製基部の上面とフォーム製基部の上に位置するメッシュとの間に形成されるように形状化されている。
【0008】
別な実施態様では、このメッシュ材料は靴のアッパーに取り付けられる。靴のソール(靴底)の内部は、アッパーがソールに取り付けられると靴の着用者が“トランポリン”効果を経験できるように、靴のメッシュ層とフォーム層との間に腔部(空間部)を形成するように形状化されている。
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴並びに目的は、添付の図面に照らして読まれるべき以下の詳細な説明から更に明確になるであろう。尚、各図を通して、対応する参照番号は対応する部位を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のインソールの上方斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すインソールの中間の(内側の)側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すインソールの平面図(上面図)である。
【
図7】
図7は、
図1に示すインソールの構成部材を示す分解図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すインソールの全ての構成部材を示す底面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すインソールの構成部材の中間の(内側の)側面図である。
【
図12】
図12は、インソールの幅方向に切断された
図1に示すインソールの構成部材の断面図である。
【
図13】
図13は、インソールが使用されていない状態にある、インソールの縦方向に切断された
図1に示すインソールの構成部材の断面図である。
【
図14】
図14は、インソールが使用されている状態にある、インソールの縦方向に切断された
図1に示すインソールの構成部材の断面図である。
【
図15】
図15は、剛質フレームとサスペンションメッシュの包囲体が一体成型されている本発明のインソールの上方斜視図である。
【
図18】
図18は、インソールが使用されていない状態にある、インソールの縦方向に切断された
図15に示すインソールの構成部材の断面図である。
【
図19】
図19は
、メッシュ素材でラスト処理(靴型処理)されたアッパー(mesh-lasted upper)の底部を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、
図19に示す
メッシュ素材でラスト処理(靴型処理)されたアッパー(mesh-lasted upper)を示す平面図である。
【
図21】
図21は、
図19に示す
メッシュ素材でラスト処理(靴型処理)されたアッパー(mesh-lasted upper)の切り欠き側面図である。
【
図22】
図22は、
図19に示す
メッシュ素材でラスト処理(靴型処理)されたアッパー(mesh-lasted upper)の別な切り欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図14にかけて示される本発明のインソール10は、フォーム製基部12を含んでおり、それは好適にはポリウレタンまたはエチレン酢酸ビニル(EVA)製である。剛質フレーム14はフォーム製基部12の下側に位置し、フォーム製基部12と剛質フレーム14はサスペンションメッシュ包囲体16内に挿入される。剛質フレーム14は、サスペンションメッシュ包囲体16内に置かれるとサスペンションメッシュ上にテンション(引っ張り状態)を発生させるのに必要な構造を提供する。一好適実施例では、剛質フレーム14はナイロン製またはカーボンファイバー製である。サスペンションメッシュ包囲体16は、前もって縫合された状態の包囲体または“グローブ体”として示されており、フォーム製基部12と剛質フレーム14は前もって組み立てられ、続いて圧力によって、サスペンションメッシュで造られているメッシュ製“グローブ体”16にフィットされる。サスペンションメッシュ包囲体16は、前もって組み立てられたフォーム製基部12と剛質フレーム14が通過して圧力によりフィットされるスリット状開口部20を含んでいる。
【0012】
固定カバー18がサスペンションメッシュ包囲体16の下側に配置される。この固定カバー18は2つの機能を提供する。構造的に安定している固定カバー18は、サスペンションメッシュ包囲体16が前もって組み合わされたフォーム製基部12と剛質フレーム14の上に圧力フィットされた後に、“グローブ体”の構成部材が、ずれて移動することがないことを保証する。固定カバー18はまた“グローブ体”構造物の縫目と、サスペンションメッシュ包囲体16のスリット開口部20とを覆い隠す。
【0013】
図12~
図14を参照すると、インソール10の断面図は、剛質フレーム14及びフォーム製基部12の上方に支持されているサスペンションメッシュ層(包囲体)16を示す。剛質フレーム14の剛質構造によって、メッシュはフォーム製基部12の上面の上方にサスペンド(浮き支持)され、サスペンションメッシュ包囲体16の上面とフォーム製基部12との間に空気通路22を創出する。その結果、このメッシュは、サスペンションメッシュ層16とフォーム製基部12の上面との間で周囲空気を通過させることができるトランポリン的なフィット状態を提供する。
【0014】
上述した本発明のインソール10の構造は着用者に2つの重要な利点を提供する。まず、サスペンションメッシュ包囲体16のメッシュは、着用者の足の立体形状に沿って伸縮するので個別フィットし、特に必要とされる場合には、圧力点に押されて凹み、着用者に支持力を与える。それは、
図14に示すように、サスペンションメッシュ包囲体16が個別の足に特有な構造的特徴部の立体的周囲形状と形状一致するトランポリンの上に立っている効果に類似した効果を有する。もう1つは、
図12と
図13に示すように、足が持ち上げられたとき、サスペンド形態(浮き支持形態)のサスペンションメッシュ包囲体16はリバウンドして足の下側に周囲空気を送り込み、足を絶縁して汗からの湿気の蓄積を防止するのを助けることである。このことは、足が常に足置き部の大部分と接触状態となる伝統的な圧縮性の足置き部に単に気孔を設ける他の解決策と比べて大きな利点である。
【0015】
図15から
図18に示される別実施形態では、サスペンションメッシュ16aは剛質フレーム14aと一体成型され、“グローブ体”構造の必要性を排除している。そのような別実施形態においては、サスペンションメッシュ包囲体16と剛質フレーム14が一体成型されており、本来的に安定しており、滑らかな外見が美観的に提供されているため、固定カバー18はオプションでよい。そのような場合には、フォーム製基部12のみがサスペンションメッシュ包囲体16a内に挿入されるだけでよい。
【0016】
様々なタイプのメッシュが本発明には利用可能であるが、一好適実施例においてはスタティックメッシュ(static mesh)が利用される。スタティックメッシュは特に適している。なぜなら(足の底部における)衝撃の焦点がメッシュ上に増加したテンションを発生させるからである。加えて、インソールの構造物におけるメッシュの垂直弾力性に割り当てられるスペースは、靴の内部容積、並びに、爪先から、大抵の場合には最大値が15mmであるヒールリフトまでの容積によって制限されている。フレームのデザイン(側壁角度および立体形状)並びにフレームの硬度および材料組成に応じて、剛質フレーム14自体も固有の弾力性を有する。よって、メッシュ層の弾力性の制御(それが必要な場合)は、フレームのデザインと材料を変更することで達成できる。
【0017】
一好適実施例においては、メッシュは、材料特性が材料の構造的安定性を犠牲にすることがない程度に引っ張られる。一好適実施例においては、メッシュ材料は長めの長繊維のポリエステル製である。そのような長めの長繊維は連続繊維としても知られており、200~500の総アスペクト比(繊維長の繊維径に対する比として定義される)を有する。引っ張り力に耐えることができるという点で長繊維が必須である。
【0018】
一実施形態では、メッシュは、ファブリックコードCS366としてチャン・シン・カンパニー(Chang Sing Co. Ltd)により販売されている強力通気性メッシュ製である。そのようなメッシュは、ドイツ製であり、リーバーズ(Liebers)が販売するトリコット機でニット(編み加工)される。メッシュに使用される繊維は150デニール/48フィラメント(50%のトリローバル光沢織糸と50%の鈍光沢織糸)である。バージンポリエステルヤーンと呼ばれるこの織糸はナンヤ・プラスチック・コーポレーション(Nanya Plastics Corporation)から得られる。もちろん、類似した特性を有する限り、多くの他のメッシュ材料が使用できる。
【0019】
別の実施形態においては、メッシュは、3Dニット加工または形状加工と称されることが多い単シームレス織布内で複数の相互接続層のCNCニット機(Stoll v-床横糸ニット機等)でニット加工される。伸縮性から構造的特性に至る品質幅の複数の織糸を利用する追加的能力を備えたCNCニット機は、着用者のための大きな調節性能と個別仕様を提供するために、大きな差異を有した材料の特性および幾何織模様の織布を製造させる(例えば、回内作用をオフセットするために着用者が足の中間側部に大きな支持力を要求するなら、サスペンションメッシュは踵の中間側部でスタティック糸を使用して密な織模様をニット加工することができる)。
【0020】
図19から
図22では、本発明の別実施形態が示されており、そこではメッシュ24が伝統的な
ラスティングボード(Lasting Board、靴型ボード)の代わりに使用され、アッパー26がソールと合体し、腔部(空間部)がメッシュ24に弾力性を与える。これでメッシュがフォーム製基部12と剛質フレーム14にフィットしている上述と同じ利点が提供される。
図19から
図22に示されるこの別構造の1つの利点は、この場合には、メッシュ24が固定されていることである。
【0021】
図21の実施例においては、メッシュ24は、メッシュとフォーム製クッション32の間でソール30内の開いた腔部28上にサスペンド(浮き支持)されている。フォーム製クッション32はソール内に配置され、衝撃によってメッシュの底部が外に出るようなことになれば保護を提供する。
図22に示す別実施例では、腔部はソール中央のフォーム34内に設けられる。
【0022】
CNCニット機(上述)は、単3Dニットシームレス織布部分として組み合わされるアッパー26とメッシュのラスティングボード(Lasting Board、靴型ボード)24の製造にも使用できる。
【0023】
前述の発明はその好適実施形態/実施例に関して説明されてきたが、様々な変更および改良が当分野の技術者には想起されるであろう。そのような変更および改良の全ては、以下の請求項群(特許請求の範囲)の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0024】
10 インソール
12 フォーム製基部
14,14a 剛質フレーム
16,16a サスペンションメッシュ包囲体
18 固定カバー
20 スリット状開口部
22 空気通路
24 メッシュ(ラスティングボード(Lasting Board、靴型ボード))
26 アッパー
28 開いた腔部
30 ソール
32 フォーム製クッション
34 ソール中央のフォーム