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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20230830BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230830BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/9789
A61K8/891
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/898
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/60
A61Q5/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023041243
(22)【出願日】2023-03-15
【審査請求日】2023-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500315884
【氏名又は名称】株式会社ナンバースリー
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】中西 京介
(72)【発明者】
【氏名】有澤 彩也香
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0006603(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セスキマレイン酸イソホロンジアミンと、
水溶性高分子増粘剤と、
水溶性保湿剤と、
水と、
を含有し、
前記水溶性高分子増粘剤の濃度は、全毛髪修復用組成物に対して0.100重量%-30.000重量%の範囲内であり、
前記水溶性保湿剤の濃度は、全毛髪修復用組成物に対して1.000重量%-70.000重量%の範囲内であり、
毛髪内のダメージ毛に接触させた際に、当該ダメージ毛の表面に前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンを均一に付着させる、
毛髪修復用組成物。
【請求項2】
前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンと前記水溶性高分子増粘剤との重量比は、1:0.100-10.000である、
請求項1に記載の毛髪修復用組成物。
【請求項3】
前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンと前記水溶性保湿剤との重量比は、1:1.000-100.000である、
請求項2に記載の毛髪修復用組成物。
【請求項4】
毛髪修復用組成物を毛髪に塗布して、所定時間放置する第一の処理工程と、
前記放置後の毛髪を水洗する第二の処理工程と、
前記水洗後の毛髪を乾燥させる第三の処理工程と、
を備え、
前記毛髪修復用組成物は、
セスキマレイン酸イソホロンジアミンと、
水溶性高分子増粘剤と、
水溶性保湿剤と、
水と、
を含有し、
前記水溶性高分子増粘剤の濃度は、全毛髪修復用組成物に対して0.100重量%-30.000重量%の範囲内であり、
前記水溶性保湿剤の濃度は、全毛髪修復用組成物に対して1.000重量%-70.000重量%の範囲内であり、
前記毛髪内のダメージ毛に接触させた際に、当該ダメージ毛の表面に前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンを均一に付着させる、
毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、毛髪に化学処理(パーマネント処理、ブリーチ処理、染毛処理等)を行うことが流行っているが、この化学処理は、主に、毛髪への酸化処理と還元処理との組み合わせであるため、毛髪への負担が大きく、毛髪の損傷が急激に増加している。
【0003】
ここで、損傷後の毛髪(ダメージ毛)とは、化学処理により毛髪内のケラチン同士の側鎖結合(ジスルフィド結合、塩結合、水素結合等)が切断されて、枝毛、切れ毛、折れ毛、ポーラス毛、炭化毛等の毛髪が生じていることを意味する。
【0004】
このようなダメージ毛は、一度損傷すると、復元は不可能と考えられている。そういった現状の中、毛髪の損傷を防止する技術が登場してきている。
【0005】
例えば、特開2021-109876号公報(特許文献1)には、イソホロンジマレアート(Isophorone dimaleate)又はシスタミンジマレアート(Cystamine dimaleate)を有効成分として含む染色専用トリートメント組成物が開示されている。ここで、イソホロンジマレアート又はシスタミンジマレアートに存在する二重結合(-C=C-)が重合を促進し、従来の酸化重合体より分子量が大きい重合体を形成することで、より鮮明で濃い色が得られると共に、染色中に発生するジスルフィド結合(disulfide bond;-S-S-結合)の切断を回復させることが出来る。そのため、従来の染色より若白髪染めに優れ、色落ちや染色による毛髪損傷を防止することが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-109876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、毛髪は、化学処理により損傷(ダメージ)を受けると、毛髪の長手方向の構造の均一さが崩れて、毛髪の質感が不均一となる。化学処理は、一般的に健康毛に作用し易い一方、ダメージ毛には作用し難いことから、ダメージ毛の増加は、毛髪の質感の低下につながる。そのため、ダメージ毛の損傷を出来るだけ修復するか、ダメージ毛の損傷を抑えるかの対処をする必要があった。
【0008】
これまでは、シリコーン系のオイル(例えば、アモジメチコン)や高分子ポリマー、毛髪用の樹脂等のコーティング剤でダメージ毛をコーティングすることで、ダメージ毛の構造を均一化し、均一な質感を出す試みがされてきた。しかしながら、このようなコーティング剤のコーティング方法では、時間の経過とともにコーティング剤がダメージ毛から失われるため、ダメージ毛の質感の向上に十分に対応することは出来ない。
【0009】
一方、特許文献1に記載の技術では、イソホロンジマレアート又はシスタミンジマレアートにより、ダメージ毛のジスルフィド結合を再結合させて、ダメージ毛の質感の向上を図るものである。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ダメージ毛に対するイソホロンジマレアート又はシスタミンジマレアートの浸透について踏み込んだ検証がされておらず、ダメージ毛の質感の向上には限界があるという課題がある。このような背景から、ダメージ毛に対するイソホロンジマレアート又はシスタミンジマレアートの浸透を促進し、ダメージ毛の質感の向上を顕著に図る方法が求められていた。
【0010】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ダメージ毛の表面に均一な皮膜を形成させて、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能な毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る毛髪修復用組成物は、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、水と、を含有する。本発明に係る毛髪修復用組成物は、毛髪内のダメージ毛に接触させた際に、当該ダメージ毛の表面に前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンを均一に付着させる。
【0012】
又、本発明に係る毛髪修復方法は、本発明に係る毛髪修復用組成物を用いる毛髪修復方法であって、第一の処理工程と、第二の処理工程と、第三の処理工程と、を備える。第一の処理工程は、毛髪修復用組成物を毛髪に塗布して、所定時間放置する。第二の処理工程は、前記放置後の毛髪を水洗する。第三の処理工程は、前記水洗後の毛髪を乾燥させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダメージ毛の表面に均一な皮膜を形成させて、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】セスキマレイン酸イソホロンジアミンの化学式である。
図2】実施例1-5と比較例1-3の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図3】実施例6-13の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図4】実施例14-21の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図5】実施例22-27の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図6】実施例28-35の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図7】実施例36-42の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図8】実施例43-45の毛髪修復用組成物の各成分と評価結果の表である。
図9】走査電子顕微鏡(SEM)による実施例1と比較例1の処理後の毛束の観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0016】
本発明者は、長年、ダメージ毛の損傷修復について鋭意研究しており、従来技術に示すように、イソホロンジマレアートの可能性を探っていた。イソホロンジマレアートに関係する物質として、セスキマレイン酸イソホロンジアミンという物質がある。セスキマレイン酸イソホロンジアミンは、マレイン酸とイソホロンジアミンの塩の混合物であるが、セスキマレイン酸イソホロンジアミンの構造は、図1に示すように、疎水性を示すイソホロンジアミンが、二つのマレイン酸に挟まれた構造である。
【0017】
ここで、マレイン酸は、二重結合の存在から、毛髪内のシスチン結合(毛髪を構成する2つのシステインのジスルフィド結合)を補修する効果が報告されている。このような毛髪の補修や修復は、毛髪内のケラチン同士の側鎖結合(ジスルフィド結合等)にも効果があると推測される。一方、二つのマレイン酸に挟まれているイソホロンジアミンは、自身の疎水性から、毛髪への浸透を容易にする。
【0018】
そこで、本発明者は、毛髪の補修に効果のあるマレイン酸と、毛髪への浸透に効果のあるイソホロンジアミンとを構造上兼ね備えるセスキマレイン酸イソホロンジアミンを有効成分として採用し、且つ、水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤とを組み合わせることで、驚くべきことに、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを共に向上させることを発見し、後述する実施例に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0019】
即ち、本発明に係る毛髪修復用組成物は、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、水と、を含有する。本発明に係る毛髪修復用組成物は、毛髪内のダメージ毛に接触させた際に、当該ダメージ毛の表面に前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンを均一に付着させる。これにより、ダメージ毛の表面に均一な皮膜を形成させて、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能となる。
【0020】
つまり、本発明では、先ず、セスキマレイン酸イソホロンジアミンを採用することで、本発明の毛髪修復用組成物を毛髪に接触させると、セスキマレイン酸イソホロンジアミンを構成するイソホロンジアミンが、ダメージ毛を含む毛髪の表面に付着して、均一な皮膜を形成させる。一方で、セスキマレイン酸イソホロンジアミンを構成するマレイン酸が、毛髪内で切断された結合(シスチン結合等)に作用して、この結合を補修・修復する。これにより、ダメージ毛が健康毛へと戻り、毛髪の質感を向上させることが可能となる。
【0021】
ここで、本発明では、ダメージ毛に対するセスキマレイン酸イソホロンジアミンの浸透性を更に向上させるために、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤とを組み合わせて含有している。
【0022】
水溶性高分子増粘剤は、毛髪修復用組成物の全体に対して増粘性を付与出来るとともに、ダメージ毛を含む毛髪への親和性が良好である。このような性質を有する水溶性高分子増粘剤を含有させることで、水溶性高分子増粘剤が、ダメージ毛の表面を覆い、水溶性高分子増粘剤を介して、ダメージ毛に対するセスキマレイン酸イソホロンジアミンの浸透や浸潤、停滞を促す。これにより、ダメージ毛にセスキマレイン酸イソホロンジアミンを接触させた後において、水洗や乾燥の工程を経たとしても、水溶性高分子増粘剤がダメージ毛の表面に残存し続けて、セスキマレイン酸イソホロンジアミンによる作用効果を持続させる。
【0023】
又、水溶性保湿剤は、水溶性高分子増粘剤との親和性が良好であるとともに、水分の保持性を有する。このような性質を有する水溶性保湿剤を含有させることで、水溶性高分子増粘剤の周囲に水溶性保湿剤が停滞して、その周囲に水分を保持する。
【0024】
ここで、マレイン酸の酸解離定数は、2つ存在し、pKa=1.92とpKa=6.34とであり、強い酸性を示す。酸性を有するマレイン酸が毛髪に作用すると、毛髪の結合の補修の他に、毛髪の収れん(引き締め)を引き起こし、毛髪内の水分を外部に押し出すことになる。毛髪から水分が失われると、毛髪が急激に縮み、ビビリ状態となり、ギジギジとなり、櫛も通り難い状態になる。
【0025】
そこで、本発明では、水溶性保湿剤を加えることで、水溶性保湿剤が、マレイン酸の酸性による水分の放出を食い止め、毛髪の収れんを防止し、マレイン酸が本来持つ毛髪の修復を効果的に作用させることが出来るのである。
【0026】
本発明は、このような総合的な作用により、イソホロンジアミンの均一な皮膜の形成によって、ダメージ毛であっても、均一に補修・修復を作用させることが可能となり、ダメージ毛への均一性を向上させることが出来る。その結果、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能となるのである。
【0027】
ここで、セスキマレイン酸イソホロンジアミンの濃度に特に限定は無いが、例えば、全毛髪修復用組成物に対して0.010重量%-50.000重量%の範囲内であると好ましく、全毛髪修復用組成物に対して0.100重量%-30.000重量%の範囲内であると更に好ましく、全毛髪修復用組成物に対して0.500重量%-10.000重量%の範囲内であると更に好ましい。セスキマレイン酸イソホロンジアミンの濃度が、全毛髪修復用組成物に対して0.010重量%未満の場合、セスキマレイン酸イソホロンジアミンが機能を発揮しない可能性があり、セスキマレイン酸イソホロンジアミンの濃度が、全毛髪修復用組成物に対して50.000重量%を超える場合、セスキマレイン酸イソホロンジアミンにおけるマレイン酸の酸性が強すぎて、本発明の効果が発揮されない可能性がある。
【0028】
又、水溶性高分子増粘剤の種類に特に限定は無く、例えば、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を挙げることが可能であり、イオン性高分子増粘剤でも、ノニオン性高分子増粘剤でも構わない。水溶性高分子増粘剤は、例えば、親水性多糖類、シリコーン、ビニル系高分子、又はこれらの組み合わせを挙げることが出来る。水溶性高分子増粘剤は、耐塩性を有すると好ましい。又、水溶性高分子増粘剤は、1種類でも2種類以上の組み合わせであっても構わない。
【0029】
又、親水性多糖類は、例えば、天然高分子と半合成高分子とに分類される。天然高分子は、例えば、キサンタンガム、アラビアゴム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、シロキクラゲ多糖類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、タマリンドウガム、サクシノグルカン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム、クインスシードエキス(マルメロ種子エキス)等を挙げることが出来る。
【0030】
又、半合成高分子は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることが出来る。
【0031】
又、シリコーンは、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650-10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等を挙げることが出来る。ここで、アミノ変性シリコーンは、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)等を挙げることが出来る。
【0032】
又、ビニル系高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等を挙げることが出来る。ここで、ビニル系高分子の他に、ポリオキシエチレン系高分子、アクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等を含んでも良い。ポリオキシエチレン系高分子は、例えば、ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール40,000、ポリエチレングリコール60,000等を挙げることが出来る。又、アクリル系高分子は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等を挙げることが出来る。
【0033】
又、水溶性高分子増粘剤の濃度に特に限定は無いが、例えば、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%-30.000重量%の範囲内であると好ましく、全毛髪修復用組成物に対して0.005重量%-15.000重量%の範囲内であると更に好ましく、全毛髪修復用組成物に対して0.010重量%-3.000重量%の範囲内であると更に好ましい。水溶性高分子増粘剤の濃度が、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%未満の場合、水溶性高分子増粘剤が機能を発揮しない可能性があり、水溶性高分子増粘剤の濃度が、全毛髪修復用組成物に対して30.000重量%を超える場合、水溶性高分子増粘剤の増粘性が高過ぎて、ダメージ毛にべた付きが生じて、取扱性が悪化する可能性がある。
【0034】
又、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤との重量比に特に限定は無いが、例えば、1:0.001-10.000の範囲内であると好ましく、1:0.010-10.000の範囲内であると更に好ましく、1:0.100-10.000の範囲内であると更に好ましい。セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤との重量比が1:0.001未満の場合、水溶性高分子増粘剤がセスキマレイン酸イソホロンジアミンに適切に機能しない可能性があり、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤との重量比が1:10.000を超える場合、水溶性高分子増粘剤の増粘性が高過ぎて、ダメージ毛にべた付きが生じて、取扱性が悪化する可能性がある。
【0035】
又、水溶性保湿剤の種類に特に限定は無いが、例えば、ポリオール、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を挙げることが出来る。又、水溶性保湿剤は、1種類でも2種類以上の組み合わせであっても構わない。
【0036】
又、ポリオールは、例えば、2価アルコール、3価アルコール、4価のアルコール、5価アルコール、6価アルコール、8価アルコール、9価アルコール等を挙げることが出来る。2価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等を挙げることが出来る。3価アルコールは、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタトリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を挙げることが出来る。4価のアルコールは、ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール等を挙げることが出来る。5価アルコールは、アドニトール、アラビトール、キシリトール等を挙げることが出来る。6価アルコールは、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール等を挙げることが出来る。8価アルコールは、スクロース等を挙げることが出来る。9価アルコールは、マルチトール等を挙げることが出来る。
【0037】
又、水溶性保湿剤の濃度に特に限定は無いが、例えば、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%-70.000重量%の範囲内であると好ましく、全毛髪修復用組成物に対して0.005重量%-50.000重量%の範囲内であると更に好ましく、全毛髪修復用組成物に対して0.100重量%-30.000重量%の範囲内であると更に好ましい。水溶性保湿剤の濃度が、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%未満の場合、水溶性保湿剤が機能を発揮しない可能性があり、水溶性保湿剤の濃度が、全毛髪修復用組成物に対して3.000重量%を超える場合、水溶性保湿剤の保湿性が高過ぎて、セスキマレイン酸イソホロンジアミンが適切に機能しない可能性がある。
【0038】
又、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤との重量比に特に限定は無いが、例えば、1:0.001-100.000の範囲内であると好ましく、1:0.010-100.000の範囲内であると更に好ましく、1:0.100-100.000の範囲内であると更に好ましい。セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤との重量比が1:0.001未満の場合、水溶性保湿剤がセスキマレイン酸イソホロンジアミンに適切に機能しない可能性があり、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤との重量比が1:100.000を超える場合、水溶性保湿剤の保湿性が高過ぎて、セスキマレイン酸イソホロンジアミンが適切に機能しない可能性がある。
【0039】
又、毛髪修復用組成物のpHに特に限定は無い。ここで、セスキマレイン酸イソホロンジアミンのマレイン酸の酸性により、pHが3.0-4.0の範囲内になるが、本発明の作用効果を損なわない範囲で、本発明に係る毛髪修復用組成物に塩基性添加物を添加しても良く、例えば、pHが3.0-11.0の範囲内であっても問題ない。
【0040】
又、毛髪修復用組成物は、目的に応じて、全毛髪修復用組成物に対して0.010重量%-5.000重量%の範囲内の界面活性剤であって、カチオン界面活性剤と、両性界面活性剤と、アニオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤とのいずれかを更に含有しても構わない。
【0041】
又、カチオン界面活性剤の種類に特に限定は無いが、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルケニルジメチルアンモニウム塩、アルキロイルアミドプロピルジメチルアミン等を挙げることが出来る。アルキルトリメチルアンモニウム塩は、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等を挙げることが出来る。ジアルキルジメチルアンモニウム塩は、例えば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド(ジステアリルジモニウムクロリド)等を挙げることが出来る。これらの界面活性剤のカチオン基の対イオンは、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、サッカリン等を挙げることが出来る。
【0042】
又、両性界面活性剤の種類に特に限定は無いが、例えば、アミノ酸型、ベタイン型、天然物等を挙げることが出来る。両性界面活性剤は、具体的には、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミンオキシド、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイソダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドMEA、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル-β-アラニン、ラウリルジメチルアミンN-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシド、レシチン等を挙げることが出来る。
【0043】
又、アニオン界面活性剤の種類に特に限定は無いが、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等を挙げることが出来る。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等を挙げることが出来る。
【0044】
又、ノニオン界面活性剤の種類に特に限定は無いが、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルサッカライド界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、アルキルアミンオキサイド等を挙げることが出来る。又、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、例えば、ポリオキシエチレンラノリンアルコール(ラネス)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(セテス)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアレス)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オレス)、パレスなどが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンラノリンアルコール(ラネス)、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド(コカミドMEAなど)等を挙げることが出来る。
【0045】
又、毛髪修復用組成物は、上述した成分以外にも、本発明の作用効果を損なわない範囲で、例えば、溶媒、染料、安定化剤、pH調整剤、動植物エキス、水溶性高分子、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ビタミン剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料等の他の成分を含むことが出来る。
【0046】
又、毛髪修復用組成物の形態に特に限定は無いが、例えば、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤(整髪料、ヘアースタイリング剤)、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等を挙げることが出来る。シャンプーとは、毛髪を洗浄するための洗剤又は石鹸を含有する毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。コンディショナーとは、毛髪を柔軟にし、毛髪をなめらかにし、及び/又は毛髪の光沢を変えるために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。トリートメントとは、頭髪に水分、油分を補ったり、頭髪に栄養を与えたり、毛髪の損傷又はフケを防止するために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。スタイリング剤とは、髪型を整えたり固定したりするために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。パーマ液とは、縮毛するために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。ヘアカラーリング剤とは、毛髪を特定の色に染めるために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。
【0047】
又、毛髪修復用組成物をシャンプーにする場合は、シャンプーの成分に毛髪修復用組成物の成分を添加することで、シャンプーを構成することが出来る。毛髪修復用組成物をコンディショナーにする場合は、同様に、コンディショナーの成分に毛髪修復用組成物の成分を添加することで、コンディショナーを構成することが出来る。トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等も同様である。
【0048】
毛髪修復用組成物の製造方法に特に限定は無く、毛髪修復用組成物の成分を含む混合液を30度-100度で加熱したり、自然冷却したりする製造方法を挙げることが出来る。
【0049】
又、本発明に係る毛髪修復方法は、毛髪修復用組成物を用いる毛髪修復方法であって、第一の処理工程と、第二の処理工程と、第三の処理工程と、を備える。第一の処理工程は、毛髪修復用組成物を毛髪に塗布して、所定時間放置する。第二の処理工程は、前記放置後の毛髪を水洗する。第三の処理工程は、前記水洗後の毛髪を乾燥させる。
【0050】
ここで、毛髪修復用組成物が、他の処理剤(例えば、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤等)と異なる場合、毛髪修復用組成物の塗布のタイミングに特に限定は無く、例えば、他の処理剤の塗布前に塗布しても、他の処理剤の塗布とともに塗布しても、他の処理剤の塗布後に塗布しても構わない。
【0051】
又、毛髪修復用組成物の塗布方法に特に限定は無く、例えば、毛髪を損傷させる化学処理を行った日と同日中に塗布したり、化学処理を行った後、数日-2週間以内に塗布したりする方法を挙げることが出来る。又、毛髪修復用組成物の塗布量に特に限定は無く、例えば、損傷後の毛髪を飽和するために十分な量であると好ましい。毛髪修復用組成物の塗布回数に特に限定は無く、例えば、1回でも良いし、2回以上繰り返しても良い。
【0052】
又、毛髪修復用組成物の水洗方法に特に限定は無く、例えば、損傷後の毛髪に対して毛髪修復用組成物の最終塗布の直後、最終塗布後から60秒以内、最終塗布後から、5分、10分、20分等の所定の時間が経過した後に、塗布後の毛髪を水洗する方法を挙げることが出来る。
【0053】
毛髪修復用組成物の乾燥方法に特に限定は無く、例えば、水洗後の毛髪をドライヤーで乾燥させる方法を挙げることが出来る。水洗後の毛髪に対する乾燥温度は、例えば、15度-45度であり、乾燥時間は、1分-60分である。又、損傷後の毛髪に対する毛髪修復方法の回数に特に限定は無く、例えば、1回でも良いし、2回以上繰り返しても良い。
【実施例
【0054】
以下に、本発明における実施例、比較例等を具体的に説明するが、本発明の適用が本実施例などに限定されるものではない。
(毛髪修復用組成物の製造)
【0055】
図2図8の表に示すように、各成分を配合して、実施例1-45と比較例1-3の毛髪修復用組成物を製造した。表中の数値は、濃度(重量%)を示す。
【0056】
実施例1-5について、図2に示すように、水溶性高分子増粘剤をクインスシードエキス(マルメロ種子エキス)とし、水溶性保湿剤をグリセリンとし、残部を水の精製水とし、水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤の濃度を固定して、セスキマレイン酸イソホロンジアミンの濃度を全毛髪修復用組成物に対して0.010重量%-50.000重量%の範囲内で変更した場合の毛髪修復用組成物とした。一方、比較例1は、セスキマレイン酸イソホロンジアミンを含有しない場合の毛髪修復用組成物とし、比較例2は、水溶性高分子増粘剤を含有しない場合の毛髪修復用組成物とし、比較例3は、水溶性保湿剤を含有しない場合の毛髪修復用組成物とした。尚、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤との重量比は、「水溶性高分子増粘剤/セスキマレイン酸イソホロンジアミン」として示し、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤との重量比は、「水溶性保湿剤/セスキマレイン酸イソホロンジアミン」として示した。
【0057】
又、実施例6-9について、図3に示すように、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤の濃度を固定して、水溶性高分子増粘剤の濃度を全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%-3.000重量%の範囲内で変更した場合の毛髪修復用組成物とした。又、実施例10-13について、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤の濃度を固定して、水溶性保湿剤の濃度を全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%-3.000重量%の範囲内で変更した場合の毛髪修復用組成物とした。
【0058】
又、実施例14-21について、図4に示すように、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤の濃度を固定して、水溶性高分子増粘剤の種類をジメチコン又はクインスシードエキスのいずれか又はこれらの組み合わせとし、水溶性保湿剤の種類をグリセリンと、プロピレングリコール(PG)と、ブチレングリコール(BG)のいずれか又はこれらの組み合わせとした場合の毛髪修復用組成物とした。
【0059】
又、実施例22-27について、図5に示すように、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤の濃度を固定して、水溶性高分子増粘剤の種類をステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アモジメチコン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール20,000、ポリアクリル酸ナトリウムのいずれかとした場合の毛髪修復用組成物とした。
【0060】
又、実施例28-35について、図6に示すように、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤の濃度を固定して、水溶性保湿剤の種類をジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、スクロース、マルチトール、ヒアルロン酸のいずれかとした場合の毛髪修復用組成物とした。
【0061】
又、実施例36-42について、図7に示すように、水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤の種類を固定して、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤との重量比を1:0.001-10.000の範囲内で変更した場合の毛髪修復用組成物とし、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤との重量比を1:0.001-100.000の範囲内で変更した場合の毛髪修復用組成物とした。
【0062】
又、実施例43-45について、図8に示すように、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤とを固定し、カチオン界面活性剤と、両性界面活性剤と、アニオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤とのいずれかを添加した場合の毛髪修復用組成物とした。尚、実施例1-45と比較例1-3の毛髪修復用組成物のpHが3.0-4.0の範囲内であった。
(毛髪処理)
【0063】
健康毛(黒毛束)を用意し、下記(A)-(G)の処理を行った。
(A)先ず、パーマ用処理剤の1液、2液を用意し、毛束に1液と毛髪修復用組成物(実施例又は比較例)を30度で15分間接触させた後、その毛束を30秒間、中間水洗して、その毛束に2液と毛髪修復用組成物を30度で15分間接触させた。その際、毛髪修復用組成物は、毛束の重さに対して同じ重量を用いた。
(B)次に、その毛束を振とう機で40度で30秒間振とうして洗浄した。振とう機内の洗浄液は、アルスコープDA-330S(28%水溶液)を1重量%に調整した水溶液を用いた。
(C)更に、その毛束を30秒間ドライヤーで乾燥させた。
(D)そして、その毛束にブリーチ用処理剤を30度で20分間接触させた。ブリーチ処理剤は、1液と2液との重量比が1:2の混合液を用いた。
(E)次に、その毛束を振とう機で40度で30秒間振とうして洗浄した。洗浄液は、(B)と同じ洗浄液を用いた。
(F)更に、その毛束を30秒間ドライヤーで乾燥させた。
(G)(A)-(F)を2回繰り返した。
(評価方法)
【0064】
次に、(G)の処理後の毛髪の性能評価を行った。性能評価の項目は、(1)質感、(2)ダメージ毛への均一性である。
(1)質感
【0065】
5人の評価者が、処理後の毛束を触って、うねり、ひろがり、パサつき等を確認した。評価は、5段階(5点:非常に良い、4点:良い、3点:普通、2点:悪い、1点:非常に悪い)で行い、各評価者の点数を平均して、以下の基準によってランク付けをした。「◎」及び「○」の評価が製品として合格である。
<基準>
◎:点数の合計が20点以上
○:点数の合計が15点以上20点未満
△:点数の合計が10点以上15点未満
×:点数の合計が10点未満。
(2)ダメージ毛への均一性
【0066】
5人の評価者が、処理後の毛束の根元から毛先に指を通し、引っかかりがないかを確認した。評価は、5段階(5点:非常に良い、4点:良い、3点:普通、2点:悪い、1点:非常に悪い)で行い、各評価者の点数を平均して、以下の基準によってランク付けをした。「◎」及び「○」の評価が製品として合格である。
<基準>
◎:点数の合計が20点以上
○:点数の合計が15点以上20点未満
△:点数の合計が10点以上15点未満
×:点数の合計が10点未満。
(評価結果)
【0067】
先ず、実施例1と比較例1の処理後の毛束を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、図9に示すように、実施例1の処理後の毛束では、炭素が毛髪の表面全体に付着して、均一な皮膜が形成されていることが理解される。一方、比較例1の処理後の毛束では、炭素が毛髪の表面に不均一に付着していることが理解される。
【0068】
ここで、実施例1では、セスキマレイン酸イソホロンジアミンが含有されているため、実施例1では、炭素の数が多く、且つ、毛髪の表面における炭素の密度が高いことから、セスキマレイン酸イソホロンジアミンが優先的に毛髪の表面全体に付着して、セスキマレイン酸イソホロンジアミンの炭素が示されていると推測される。一方、比較例1では、炭素の数が少なく、且つ、毛髪の表面における炭素の密度が低いことから、親水性高分子増粘剤と親水性保湿剤が毛髪に不均一付着しているだけであることが推測される。このように、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと親水性高分子増粘剤と親水性保湿剤との組み合わせによって、ダメージ毛の表面に対する均一な皮膜の形成が達成されることが分かった。
【0069】
次に、性能評価を確認すると、図2に示すように、比較例1-3では、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果のいずれかが「△」又は「×」であり、製品として不合格であった。一方、実施例1-5では、セスキマレイン酸イソホロンジアミンの濃度を特定の濃度範囲とすると、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」又は「〇」であり、製品として合格であった。
【0070】
又、図3に示すように、実施例6-9では、水溶性高分子増粘剤の濃度を特定の濃度範囲としたり、実施例10-13では、水溶性保湿剤の濃度を特定の濃度範囲としたりしても、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」又は「〇」であり、製品として合格であった。
【0071】
又、図4に示すように、実施例14-21では、水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤の種類を変えたり組み合わせたりしても、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」であり、製品として合格であった。
【0072】
又、図5に示すように、実施例22-27では、水溶性高分子増粘剤の種類を変えても、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」であり、製品として合格であった。
【0073】
又、図6に示すように、実施例28-35では、水溶性保湿剤の種類を変えても、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」であり、製品として合格であった。
【0074】
又、図7に示すように、実施例36-42では、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性高分子増粘剤との重量比を変更したり、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと水溶性保湿剤との重量比を変更したりしても、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」であり、製品として合格であった。
【0075】
又、図8に示すように、実施例43-45では、カチオン界面活性剤と、両性界面活性剤と、アニオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤とのいずれかを添加した場合であっても、(1)「質感」、(2)「ダメージ毛への均一性」の評価結果がそれぞれ「◎」であり、製品として合格であった。
【0076】
尚、本発明における実施例、比較例等では、毛髪修復用組成物をパーマ用処理剤とブリーチ用処理剤と併用して評価を行ったが、これに限らず、毛髪修復用組成物の単体であっても、他の処理剤と併用しても良いし、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等に構成しても、同様の作用効果を奏すると推測する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法は、単体はもちろん、毛髪修復用組成物の成分を含有するシャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等に有用であり、ダメージ毛の表面に均一な皮膜を形成させて、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能な毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法として有効である。
【要約】      (修正有)
【課題】ダメージ毛の表面に均一な皮膜を形成させて、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能な毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る毛髪修復用組成物は、セスキマレイン酸イソホロンジアミンと、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、水と、を含有する。本発明に係る毛髪修復用組成物は、毛髪内のダメージ毛に接触させた際に、当該ダメージ毛の表面に前記セスキマレイン酸イソホロンジアミンを均一に付着させる。これにより、ダメージ毛の表面に均一な皮膜を形成させて、毛髪の質感とダメージ毛への均一性とを向上させることが可能となる。本発明に係る毛髪修復方法であっても同様である。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9