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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】水溶性超分子複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20230830BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/90 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/60 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230830BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 27/08 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230830BHJP
   C07D 209/28 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 211/22 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 213/74 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 215/56 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 233/58 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 239/47 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 239/48 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 285/10 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 285/135 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 295/108 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 307/76 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 405/06 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 451/10 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 473/18 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 475/08 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 498/22 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 499/72 20060101ALN20230830BHJP
   C07D 501/57 20060101ALN20230830BHJP
   C07H 15/232 20060101ALN20230830BHJP
   C07H 15/236 20060101ALN20230830BHJP
   C07H 17/08 20060101ALN20230830BHJP
   C07H 19/073 20060101ALN20230830BHJP
   C07J 5/00 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C08L71/02
A61K8/368
A61K8/39
A61K8/41
A61K8/86
A61K8/90
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/137
A61K31/138
A61K31/165
A61K31/341
A61K31/395
A61K31/405
A61K31/407
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A61K31/4178
A61K31/43
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A61K31/4402
A61K31/445
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A61K31/505
A61K31/519
A61K31/522
A61K31/5377
A61K31/546
A61K31/573
A61K31/60
A61K31/65
A61K31/7036
A61K31/7048
A61K31/7072
A61K33/04
A61K38/12
A61K47/10
A61P17/02
A61P25/02
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/08
A61P27/14
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P37/06
A61P43/00 111
C08K5/00
C07D209/28
C07D211/22
C07D213/74
C07D215/56
C07D233/58
C07D239/47
C07D239/48
C07D285/10
C07D285/135
C07D295/108
C07D307/76
C07D405/06
C07D451/10
C07D473/18
C07D475/08
C07D487/04 133
C07D498/22
C07D499/72
C07D501/57 101
C07H15/232
C07H15/236
C07H17/08 K
C07H17/08 L
C07H19/073
C07J5/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017545862
(86)(22)【出願日】2015-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 US2015061553
(87)【国際公開番号】W WO2016081714
(87)【国際公開日】2016-05-26
【審査請求日】2018-11-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】14/548,851
(32)【優先日】2014-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517399837
【氏名又は名称】ブローダ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRODA TECHNOLOGIES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【復代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【復代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【復代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・シアン・ルー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ルー
(72)【発明者】
【氏名】レティアン・リウ
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】小出 直也
【審判官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L, C008G65-67, A61K9,47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーと、
(b)20℃の水中での溶解度が0.5g/100ml未満である、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントと、
を含有する無水超分子複合体であって、
前記水溶性ブロックコポリマーは、一般式HO-(EO) (PO) (EO) -Hを有し、(EO) はポリエチレンオキシドブロックであり、(PO) はポリプロピレンオキシドブロックであり、aは50~150の範囲であり、bは35~70の範囲である、を満たトリブロックコポリマーであり
上記無水超分子複合体が、水に可溶性であり、10~60℃の範囲の軟化点を有し、上記無水超分子複合体は水和と脱水を繰り返すことで、水和後に溶液またはクリアかつ透明な逆的な熱可逆性ヒドロゲルを形成することが可能であり、脱水後にワックス状固体またはペーストを形成することが可能である、無水超分子複合体。
【請求項2】
水溶性ブロックコポリマー(a)の一般式においてaが101であってbが56であるか、またはaが141であってbが44である、請求項1に記載の無水超分子複合体。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントが、オキシアルキル化脂肪族アルコール、オキシアルキル化脂肪族アルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアルコール、オキシアルキル化アルキルアルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアリールアルコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のエステル、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸のエステル、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、オキシアルキル化ソルビタンエステル、オキシアルキル化トリグリセリド、オキシアルキル化グリセリルエステル、オキシアルキル化ソルビトールのエステル、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される;所望により、上記オキシアルキル化脂肪族アルコールはラウレス-2、ラウレス-3、ラウレス-4、ラウレス-5、およびラウレス-6、オレス-2、オレス-5、およびオレス-10からなる群から選択され、または上記オキシアルキル化脂肪族アルコールはC12-13パレス-2、C12-13パレス-3、C12-13パレス-4、C12-13パレス-5、およびC12-13パレス-6からなる群から選択され、または上記オキシアルキル化脂肪族アルコールのエステルはアジピン酸ジ-PPG-2ミレス-9、アジピン酸ジ-PPG-2ミレス-10、およびアジピン酸ジ-PPG-2ミレス-11からなる群から選択される、請求項1に記載の無水超分子複合体。
【請求項4】
水溶性ブロックコポリマーと少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントとの重量比が0.5:1~15:1である、請求項1に記載の無水超分子複合体。
【請求項5】
請求項1に記載の無水超分子複合体とさらに有効量の少なくとも1つの医薬品、診断用化合物または化粧料活性成分を含む、請求項1に記載の無水超分子複合体を含む組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの医薬品、診断用化合物または化粧料活性成分が、抗生物質、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、抗炎症剤、縮瞳剤、抗コリン作用剤、散瞳薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫化合物、抗ウイルス化合物、炭酸脱水酵素阻害剤、診断剤、眼剤、キレート剤、免疫抑制剤、抗代謝物質、麻酔、抗真菌剤、タンパク質、ペプチド、ざ瘡治療剤、潤滑剤、ビタミン、アミノ酸、歯のホワイトニング、脱毛剤、防虫剤、酸化防止剤、抗炎症剤、およびそれらの混合物からなる群から選択され、任意に、前記少なくとも1つの医薬品、診断用化合物または化粧料活性成分は組成物全体の約0.01~約70重量%の濃度範囲で存在し、あるいは香味料、膜形成ポリマー、防腐剤、着色剤、塩およびフレグランスからなる群から選択される1つ以上の医薬上または化粧料上許容される賦形剤を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の前記無水超分子複合体を調製するための方法であって、
(a)前記水溶性ブロックコポリマーを55~120℃の温度に加熱する工程と、
(b)加熱されたコポリマーと少なくとも1つの結合性ゲル化アジュバントとを55~120℃の温度で混合して混合物を形成する工程と、
(c)前記混合物を冷却して、無水物形態を得る工程と、を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の前記無水超分子複合体を調製するための方法であって、
(a)20℃未満の温度で、前記水溶性ブロックコポリマーを水中に溶解する工程と、
b)好適な温度で、溶解されたコポリマーと少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントとを混合して、透明なヒドロゲルまたは溶液を形成する工程と、
(c)前記透明なヒドロゲルまたは溶液を、少なくとも95%の水が前記透明なヒドロゲルまたは溶液から除去されるまで乾燥して、無水物形態を得る工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記無水超分子複合体が水溶性ブロックコポリマー(a)および結合性ゲル化アジュバント(b)からなり、水溶性ブロックコポリマー(a)の一般式においてaが101であってbが56であり、結合性ゲル化アジュバント(b)はラウレス-4である、請求項1に記載の無水超分子複合体。
【請求項10】
請求項に記載の無水超分子複合体と有効量の前記少なくとも1つの医薬品、診断用化合物または化粧料活性成分とを含む組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの医薬品、診断用化合物または化粧料活性成分が、抗生物質、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、抗炎症剤、縮瞳剤、抗コリン作用剤、散瞳薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫化合物、抗ウイルス化合物、炭酸脱水酵素阻害剤、診断剤、眼剤、キレート剤、免疫抑制剤、抗代謝物質、麻酔、抗真菌剤、タンパク質、ペプチド、ざ瘡治療剤、潤滑剤、ビタミン、アミノ酸、歯のホワイトニング、脱毛剤、防虫剤、酸化防止剤、抗炎症剤、およびそれらの混合物からなる群から選択され;任意に、前記少なくとも1つの医薬品、診断用化合物または化粧料活性成分は組成物全体の約0.01~約70重量%の濃度範囲で存在し、あるいは任意に、香味料、膜形成ポリマー、防腐剤、着色剤、塩およびフレグランスからなる群から選択される1つ以上の医薬上または化粧料上許容される賦形剤を含み、あるいは任意に、医薬組成物は錠剤、粉末およびペーストからなる群から選択される形態をとることができる、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年11月20日に出願された番号が第14/548,851号であり、標題が「水溶性超分子複合体」である米国非仮特許出願の利益を主張するものであり、当該米国非仮特許出願の内容はここで参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、医薬製剤または化粧料活性成分の輸送に用いられる水溶性超分子複合体に関し、具体的に、水和により透明なヒドロゲル又は溶液を形成することができる固体としての水溶性超分子複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび動物に適用する活性成分は適用分野が幅広く、たとえば、医薬および化粧料活性成分の輸送と適用を含む。水中に溶解し、非水溶性又は微水溶性活性成分を安定化させることができる組成物を提供することが望ましい。
【0003】
超分子化学は化学の範囲を拡大させ、知能・機能材料の設計と開発が実現されるようになる。従来の合成分子は共有結合してなる分子または高分子であるが、超分子複合体は、二つ以上のブロックの結合において非共有結合を含み、これらのブロックは分子間結合によって一緒に保持されている。ここで、上記分子間結合は例えば、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、イオン-π相互作用、π-π結合、CH/π相互作用、または疎水性効果などが含まれ、上記超分子複合体は、包容力、選択性及びその他の機能性を示している。
【0004】
温度の上昇および低下とともに溶液粘性がそれぞれ増加および減少する、逆的な熱可逆性ヒドロゲル化系が知られている。このような系は、温度が上昇するにつれて低粘性溶液が高粘性のゲル形態に変換される、溶液からゲルへの(ゾル-ゲル)転移過程を示し、次に、温度が連続して上昇する場合、ゲル化した系には、ゲル化した系が液体溶液に戻る、ゲルから溶液への(ゲル-ゾル)転移過程が示される。このような逆的な熱可逆性のゲル化系は、所望の液体状態での組成物の取り扱い、および/または、ゲル形態での組成物性能の適用のすべての場合に有用である。
【0005】
このような特性を有する既知の材料は、BASF(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)によるプルロニック(登録商標)として市販されており、ポロクサマー(Poloxamers)の一般名で知られている、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの水溶性ブロックコポリマーを用いた、逆的な熱可逆性ヒドロゲルである。一般的に、約20重量%のプルロニック(登録商標)F127の水溶液は、約25℃又は25℃未満であるとき、または、70℃を超える温度に加熱したときに液体であるが、30~60℃の温度範囲においてゲル形態に変換し、且つ最高粘性を示す(「温度&濃度の関数としてのプルロニック(登録商標)F127界面活性剤粘性(「Pluronic(登録商標)F127 surfactant viscosity as a function of temperature & concentration」)」というタイトルの2006 BASF Technical Bulletin;および2010年4月「Lutrol(登録商標)LおよびLutrol(登録商標)F-グレード(「Lutrol(登録商標)L and Lutrol(登録商標)F-Grades」)」を参照)。通常の場合、約25℃程度の室温範囲でゾル-ゲル転移温度を生じさせるには、少なくとも18~20重量%のプルロニック(登録商標)F127ポリマーの濃度が必要となる。ゾル-ゲル転移温度をさらに所望の25℃未満の温度に低下させるには、より高い濃度のポロクサマーポリマーを用いなければならないが、それにより、溶液の粘性が増加し、結果的に、使用中に望ましくない生理学的相互作用が生じる。より高い濃度のポリマーを使用せずに、調整可能なゾル-ゲル転移温度、具体的には、約25℃未満の温度でポロクサマーポリマーを用いる自由度は限定されている。
【0006】
米国特許第4,188,373号、第4,478,822号および第4,474,751号は、水溶性医薬組成物中でのポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの非イオン性ブロックコポリマーであるポロクサマーの使用を開示している。これらの系では、ポリマーの濃度は、所望のゾル-ゲル転移温度を与えるように調整される。しかしながら、商業的または生理的に使用可能な温度でこのような転移を示す組成物を生成するためには、少なくとも18~20重量%のポロクサマーポリマーの濃度が必要とされる。さらに、所望のゾル-ゲル転移温度で18~20重量%を超えるブロックコポリマーを含有する溶液は、典型的には、「液体」状態でさえも非常に粘性である。さらに、高いポリマー濃度は、使用中に対象組織との望ましくない生理学的相互作用を引起すおそれがある。
【0007】
Piechotaら.の米国特許第5,256,396号は、プルロニックF127を用いた水分散可能な活性成分の経口組成物を開示する。これらの組成物は、82°F(27.8℃)以下で流動可能な液体であるが、82°F(27.8℃)に加熱するとゲル化する。
【0008】
Joshiらの米国特許第5,252,318号は、プルロニックF127など、pH敏感性ゲル化ポリマーおよび熱敏感性ゲル化ポリマーのブレンドからなる可逆性ゲル化組成物を開示している。ゾル-ゲル転移温度調整という目的は、比較的低いプルロニックF127ポリマー濃度において温度およびpHを同時に変化させることにより達成されている。
【0009】
Ronらの米国特許第6,316,011号は、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの末端変性ブロックコポリマーを含有する逆的な熱可逆性のゲル化組成物であって、22℃~40℃の範囲の温度で可逆的にゲル化する組成物を開示している。
【0010】
上記引用した先行技術文献は、典型的に、室温以下で液体状態であり、その後、適用後に体温まで温められるとゲル形態に変換し、かつ、高濃度のポリマーを使用しなくてはならない逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物に関する。しかしながら、多くの医薬品および化粧料の製品及び用途においては、使用条件下でゲル形態になるヒドロゲル組成物がより好ましく、すなわち、室温下でゲル形態になるのはより好ましい。さらに、室温でのこのような系の液体状態は、このような水溶液中での微水溶性または非水溶性の活性成分の溶解性および/または安定性に対して多くの課題をもたらすことになる。たとえば、皮膚用製剤および化粧料製剤の調製において、ふけ、ざ瘡、皮膚のしわ、皮膚の色素沈着、いぼ、斑点、または皮膚関連のトラブルを治療するためのサリチル酸およびその誘導体の使用が周知である。サリチル酸およびその誘導体は、通常、結晶形態であり、皮膚用調剤および化粧料調剤において伝統的に用いられる水または油に十分に可溶でない。皮膚用品および化粧品を製造する際にサリチル酸およびその誘導体を用いるときに起きる典型的な問題は、サリチル酸およびその誘導体が、さまざまな組成物から結晶として析出する傾向にあるため、上記の皮膚トラブルを治療または予防するためのサリチル酸およびその誘導体のバイオアベイラビリティが大きく減少することである。さらに、放置すると溶液中から結晶及び沈殿物を析出する、サリチル酸およびその誘導体を含む製剤は、消費者の観点から質感および外観について不快である。
【0011】
Luらの米国特許第8,865,143号は、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの水溶性ブロックコポリマーと、少なくとも一種の結合性ゲル化アジュバントとを含有する逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物を開示している。当該文献に記載の上記ヒドロゲル組成物は水分の含有量が大量であるため、運送及び取り扱いが困難で高価になる傾向があり、さらに、いかにこのような欠点を克服するかについてもまだ不明である。
【0012】
したがって、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーを含有し、微水溶性または非水溶性の活性成分を溶解するために用いられる送達組成物については、改善する必要がある。特に、使用条件下で、具体的には例えば室温未満の温度条件下で、延長されたゲル形態を示し、しかも比較的低いポリマー濃度で微水溶性または非水溶性の活性成分について許容可能または改善された溶解性および/または安定性を有し、医薬品および化粧品の製品及び応用に有用である、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの水溶性ブロックコポリマーを含有する、逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物について改善する必要がある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の実施形態の一つによれば、水和により逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物又は溶液を形成することができる水溶性超分子複合体を含む組成物を提供する。当該組成物は、生体付着性または粘膜付着性を有する。一つの特定の実施形態においては、上記複合体を固体、ワックス系材、ゲル又は溶液として提供し、上記溶液は皮膚または粘膜組織に接触した後にゲル化することができる。
【0014】
本発明の別の実施形態において、本発明は、
(a)下記(i)~(v)からなる群から選ばれる、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーと、
(i)一般式HO-(EO)a(PO)b(EO)a-H(式中、50≦a≦150、35≦b≦70を満たす)を有するトリブロックコポリマー、
(ii)一般式HO-[(PO)b(EO)am(PO)c[(EO)a(PO)bm-H(式中、50≦a≦150、35≦b≦70、35≦c≦70、且つ、m>0を満たす)を有する線状マルチブロックコポリマー、
(iii)式{[An(EO)a(PO)b(EO)aAn]E}m(式中、Aがエステル、ヒドロキシル酸エステル、カーボネート、エーテル、シロキサンおよびアミドからなる群から選ばれるモノマーであり、Eが連鎖延長剤または架橋剤であり、また、50≦a≦150、35≦b≦70、0≦n≦50、且つ、m≧2を満たす)の鎖延長ブロックコポリマー、超分岐ブロックコポリマー、または星型ブロックコポリマー、
(iv)一般式R-G-(EO)a(PO)b(EO)a-G-R(式中、GがC-C、C-O、C(O)NH、S-C、C(O)-O又はSi-Oからなる群から選ばれ、RがC8-C36範囲のアルキル鎖長を有するアルキル基又はアラルキル基であり、また、50≦a≦150、35≦b≦70を満たす)の末端変性ブロックコポリマー、
(v)少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有し、かつ、一般式[A(EO)a(PO)b(EO)am(式中、Aがビニル、エステル、アミド、イミド、エーテル及びシロキサン結合からなる群から選ばれ、50≦a≦150、50≦b≦150、m≧2を満たす)を有するグラフトされた側鎖を含むグラフトブロックコポリマー、
上記各式において、(EO)はポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)はポリプロピレンオキシドブロックであり、
(b)20℃の水中での溶解度が0.5g/100ml未満である、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントと、
を含む水溶性超分子複合体、を含有する組成物であって、
上記複合体は水和と脱水を繰り返すことで溶液又は透明な逆的な熱可逆性ヒドロゲルを形成する可能であり、また、上記組成物が固体形態となり、上記溶液又は透明な逆的な熱可逆性ヒドロゲルは4~45℃で形成されてもよく、また、上記透明な逆的な熱可逆性ヒドロゲルが約4~40℃において調整可能なゾル-ゲル転移温度を有してもよい、組成物を提供する。
【0015】
本発明のその他の実施形態において、本発明は、基本的に、
(a)下記(1)~(5)からなる群から選ばれる、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーと、
(1)一般式HO-(EO)a(PO)b(EO)a-H(式中、50≦a≦150、35≦b≦70を満たす)を有するトリブロックコポリマー、
(2)一般式HO-[(PO)b(EO)am(PO)c[(EO)a(PO)bm-H(式中、50≦a≦150、35≦b≦70、35≦c≦70、且つ、m>0を満たす)を有する線状マルチブロックコポリマー、
(3)式{[An(EO)a(PO)b(EO)aAn]E}m(式中、Aがエステル、ヒドロキシル酸エステル、カーボネート、エーテル、シロキサンおよびアミドからなる群から選ばれるモノマーであり、Eが連鎖延長剤または架橋剤であり、また、50≦a≦150、35≦b≦70、0≦n≦50、且つ、m≧2を満たす)の鎖延長ブロックコポリマー、超分岐ブロックコポリマー、または星型ブロックコポリマー、
(4)一般式R-G-(EO)a(PO)b(EO)a-G-R(式中、GがC-C、C-O、C(O)NH、S-C、C(O)-O又はSi-Oからなる群から選ばれ、RがC8-C36範囲のアルキル鎖長を有するアルキル基又はアラルキル基であり、また、50≦a≦150、35≦b≦70を満たす)の末端変性ブロックコポリマー、
(5)少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有し、かつ、一般式[A(EO)a(PO)b(EO)am(式中、Aがビニル、エステル、アミド、イミド、エーテル及びシロキサン結合からなる群から選ばれ、50≦a≦150、50≦b≦150、m≧2を満たす)を有するグラフトされた側鎖を含むグラフトブロックコポリマー、
上記各式において、(EO)はポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)はポリプロピレンオキシドブロックであり、
(b)20℃の水中での溶解度が0.5g/100ml未満である、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントと、
から構成される組成物であって、
上記水溶性ブロックコポリマーと上記少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントとから水溶性超分子複合体を形成し、当該水溶性超分子複合体は水和と脱水を繰り返すことで少なくとも1つの水溶液及び透明な逆的な熱可逆性ヒドロゲルを形成する可能であり、また、上記組成物が固体形態となる、組成物を提供する。なお、「基本的に…から構成される」とは、本発明によれば、前記組成物中の結合性ゲル化アジュバントと活性成分を溶解するために追加の添加剤を使用する必要とされていない。
【0016】
本発明のその他の実施形態において、本発明は、水溶性超分子複合体を含有する組成物を形成するための湿式法は、水溶性ブロックコポリマーを20℃未満において水に溶解し、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントを用いて、適宜な温度下、前記溶解されたコポリマーと混合して透明なゲル又は溶液を形成し、前記透明なゲル又は溶液を、その中から少なく45%の水が除去されるように乾燥して固体として供されることが含まれる。
【0017】
本発明のその他の実施形態において、本発明は、水溶性超分子複合体を含有する組成物を形成するための熱溶融処理法は、水溶性ブロックコポリマーを55~120℃に加熱し、前記加熱されたコポリマーと少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントとを55~120℃の温度で混合して混合物を形成し、更に前記混合物を冷却することが含まれる。
【0018】
以下の説明において、「少なくとも1種類」、「1種類以上」、及び「及び/又は」という文言は開鎖式の表現であり、使用時において共同的な場合と抽出的な場合が含まれる。同様に、「一つ(a又はan)」、「一種又は複数種」、及び「少なくとも一種」という用語は交換可能に使用することができる。また、「含む」、「含有する」、及び「有する」という用語も交換可能に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一つの実施形態において、本発明は、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーと、20℃の水中での溶解度が0.5g/100ml未満、好ましくは0.3g/100ml未満、より好ましくは0.1g/100ml未満である少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントと、を含む水溶性超分子複合体を提供する。また、上記複合体は水と結合すると逆的な熱可逆性ヒドロゲルを形成することができる。当該逆的な熱可逆性ヒドロゲルは約4~45℃、好ましくは約8~40℃の範囲で調整可能なゾル-ゲル転移温度を有するようになり、化粧料活性成分又は有効量の少なくとも1つの医薬製剤の送達ツールとして有用である。
【0020】
如何なる特定の理論によっても拘束されることは望ましくないが、前記結合性ゲル化アジュバントと、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーとの間の水素結合相互作用などの分子間相互作用の結果として、水溶性超分子複合体が形成され、当該水溶性超分子複合体は、組成物のゲル化効率の向上が観察されることに寄与し、さらに、本発明にしたがって作成された非水溶性又は微水溶性医薬品の溶解性及び/又は安定性の向上にも寄与するとの知見が、本明細書中では得られている。
【0021】
本明細書および添付の請求項で用いられる「水溶性超分子複合体」との用語は、2つ以上の化合物が様々な弱い分子間相互作用を介して相互作用してなる分子の自己組織によって、個々の分子と比べて増強された、又は、異なる機能(例えば水溶性)を有するようになった分子間複合体が形成されたものを意味する。ここで、上記分子間相互作用は例えば、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、カチオン-π相互作用、π-π結合、CH/π相互作用、または疎水性相互作用などが含まれる。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、無水の水溶性超分子複合体、又は水分含有量の少ない複合体は、調製物の濃度によって、水和して透明なヒドロゲルまたは溶液、すなわち、単一相のヒドロゲルまたは液体を形成することができる、との知見が得られている。その後、温度、又は、得られた調製物の固形分を増加または減少させることによって、透明で一般に非水溶性である活性成分を溶解することができる、逆的な熱可逆性のゲルまたは溶液を形成することができる。本発明において、以下の知見が得られている。すなわち、本発明に係る水溶性超分子複合体を含有する逆的な熱可逆性のゲルまたは溶液は、溶解性及びその他の有利な特性を損なうことなく、繰り返し脱水及び再水和を行うことができる。各組成物において、水溶性ブロックコポリマーと少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントとの比率は0.5:1~15:1であってもよく、より好ましくは1:1~10:1であり、最も好ましくは2:1~5:1である。
【0023】
本発明に係る組成物は、低い水分含有量で水溶性超分子複合体を含有してもよく、水分含有量は、複合体の総重量に対して、好ましくは55重量%未満、より好ましくは25重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。水含有量が低い組成物又は水の含有しない組成物は、ワックス状固体またはペーストの形態で提供することができる。上記ワックス状固体は、10~60℃の軟化点を示す。
【0024】
本発明の一つの実施形態における組成物は、実質的に、水溶性ブロックコポリマーと結合性ゲル化アジュバント、並びに、必要に応じて活性成分から構成されてよい。水溶性超分子複合体を形成する水溶性ブロックコポリマーと結合性ゲル化アジュバントと共に、追加の溶媒や添加剤を活性成分の水溶性を高めるために使用する必要はない。
【0025】
本明細書および添付の請求項で用いられる、本発明のヒドロゲル組成物における「ゲル」という用語は、その組成物が、軟らかくて弱い特性から硬くて強い特性まで有し得る固体のゼリー状材料であることを意味する。ゲルは希釈系であり、定常状態においては流動性を示さない。
【0026】
本明細書および添付の請求項で用いられる、本発明のヒドロゲル組成物における「逆的な熱可逆性」という用語は、温度の低下でなく温度の上昇に伴って起きるゲル化プロセスを意味する。溶液粘性は、典型的には温度の上昇とともに減少するため、これは反常識的なものである。
【0027】
ゾルからゲルへ、またはゲルからゾルへの転移温度は、バイアル反転法により目視で求められたゲル融解温度として観察された。サンプルバイアルを反転させた状態で水浴中に浸漬し、温度を徐々に低下または上昇させる。ゲル溶解温度はゲルが流動し始めた点としてみなす。
【0028】
本明細書で用いられる「使用条件」という用語は、複合体またはヒドロゲル組成物が出荷中および保存中ならびに医療中またはパーソナルケア中を含む、その使用中に晒される可能性の高いすべての条件を意味する。
【0029】
本明細書および/または添付の請求項で用いられる、電解質(たとえば塩)、塩基、希釈剤、防腐剤、バッファーおよび他の賦形剤について述べるときに用いられる、「医薬上許容される」、「生理上許容される」、および「化粧料上許容される」、ならびにこれらの文法上のバリエーションは、交換可能に用いられ、材料が刺激、痒み、刺痛、または、悪心、めまいなどの全身作用などの望ましくない生理的作用を生じることなく、ヒトの皮膚、食道、耳、膣、直腸、または眼球に局所投与することが可能であることを意味する。
【0030】
本明細書および/または添付の請求項で用いられる、「リーブオン」型の製品は、塗布後、肌上に残っている製品を意味する。このような「リーブオン」型の製品の例としては、アンチエイジングクリーム、ボディローション/クリーム、デオドラント、およびハンドローション/クリームが含まれる。本明細書および/または添付の請求項で用いられる、「リンスオフ」型の製品は、しばらく塗布や使用後、洗い落とす製品を意味する。このような「リーブオン」型の製品の例としては、シャンプー、ヘアコンディショナー、および洗顔料などが挙げられる。
【0031】
本明細書中で述べる全てのパーセントは、別段の指定がない限り、重量パーセントである。
少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマー
【0032】
「ポリエチレンオキシド」、「PEO」、「EO」、「ポリエチレングリコール」および「PEG」という用語は、本発明を説明するために交換可能に用いられ、以下の化学構造によって表わされるエチレンオキシドの合成ポリマーを指す。
【化1】
(式中、aはモノマー繰り返し単位の平均数を表わし、整数である。)
【0033】
「ポリプロピレンオキシド」、「PPO」、「PO」、「ポリプロピレングリコール」、および「PPG」という用語は、本発明を説明するために交換可能に用いられ、以下の化学構造によって表わされるプロピレンオキシドの合成ポリマーを指す。
【化2】
(式中、bはモノマー繰り返し単位の平均数を表わし、整数である。)
【0034】
ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーは、異なる分子量を有し、かつ、線状マルチブロックコポリマー、側鎖グラフトブロックコポリマー、および超分岐ブロックコポリマーから星型ブロックコポリマーまで、さまざまな種類のポリエチレンオキシドブロック(一般式1)とポリプロピレンオキシドブロック(一般式2)の合成コポリマーを指し、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーは、さまざまな種類の末端変性および鎖延長ブロックコポリマーも含む。
【0035】
本発明の様々な実施形態に組み込むことができる水溶性ブロックコポリマーは、少なくとも2つの一般式-[CH2CH2O]a-で示されるポリエチレンオキシドのブロック、および、少なくとも1つの一般式-[CH2CH(CH3)O]b-で示されるポリプロピレンオキシドのブロックを含有するブロックコポリマーであり、式中、aおよびbは、各々約10~150の整数であり、ポリマー中のモノマー繰り返し単位の平均数を表わす。
【0036】
本発明に用いられる少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する上記水溶性ブロックコポリマーは、ニュージャージー州、マウントオリーブのBASF株式会社によるポロクサマーとしても知られ、プルロニック(登録商標)の商品名で販売されているトリブロックコポリマーである。一般式HO-(EO)a(PO)b(EO)a-Hを有する好ましいポロクサマーポリマーは、それぞれ、aの平均値が約101であり、bの平均値が約56であるプルロニック(登録商標)F127(ポロクサマー407としても知られる)、および、aの平均値が約141であり、bの平均値が約44であるプルロニック(登録商標)F108(ポロクサマー338としても知られる)である。
【0037】
本発明の他の例示的な少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーは、一般式HO-[(PO)b(EO)am(PO)c[(EO)a(PO)bm-H(式中、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bまたは(PO)cはポリプロピレンオキシドブロックであり、a、bおよびcは各々約10~150の範囲の整数であり、mは0より大きい整数である)を有する線状マルチブロックコポリマーである。
【0038】
他の水溶性マルチブロックコポリマーとしては、一般式{[An(EO)a(PO)b(EO)aAn]E}mの鎖延長、超分岐、または星型ブロックコポリマー(式中、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bはポリプロピレンオキシドブロックであり、Aはモノマー繰り返し単位であり、Eは鎖延長剤または架橋剤であり、nは0~50、好ましくは1~20(非生分解性材料の場合、0~20)、より好ましくは2~16(非生分解性材料の場合、0~16)の範囲の整数であり、mはポリマー分子中の繰り返し単位の数であり、2以上(実用限度内では、約100,000以上まで)、好ましくは約2~約500の範囲、より好ましくは約3~100の範囲の整数である)も含まれる。したがって、nが0の場合、本発明は、{[(EO)a(PO)b(EO)a]E}mの構造のポリマーを想定する。
【0039】
本発明に用いられる水溶性ブロックコポリマーは、一般式R-G-(EO)a(PO)b(EO)a-G-R(式中、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bはポリプロピレンオキシドブロックであり、GはC-C、C-O、C(O)NH、S-C、C(O)-O、およびSi-Oからなる群から選択され、RはC6-C36の範囲のアルキル鎖長を有するアルキルまたはアラルキルであり、aは50~150の範囲の整数であり、bは35~70の範囲の整数である)を有する末端変性ブロックコポリマーも含まれてもよい。
【0040】
例示的な末端変性水溶性ブロックコポリマーは、末端アルキル基またはアラルキル基とのアルコール縮合反応による生成物である、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する、アルキルまたはアラルキル末端変性ブロックコポリマーである。上記アルキル基は、ブチル、ヘキシルなどの疎水性基を有してもよい。アルキルポロクサマーは、一般式R―[(EO)a(PO)b(EO)am-R’(式中、(EO)aはポリエチレンオキシドブロック、(PO)bはポリプロピレンオキシドブロック、RおよびR’は、C6-C36の範囲内のアルキル鎖長を有するアルキルおよびアラルキルなどの非極性ペンダント基であり、mは1~10の範囲の整数である)を有してもよい。
【0041】
本発明に用いられる他の例示的な水溶性ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックのグラフトされた側鎖を含有し、かつ、一般式[A(EO)a(PO)b(EO)am(式中、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bはポリプロピレンオキシドブロックであり、aおよびbはそれぞれ約10~150の範囲の整数である)を有する、グラフトされたブロックコポリマーである。ここで、Aは、ビニル、エステル、アミド、イミド、エーテル、シロキサン結合などからなる群から選ばれ、mは、ポリマー分子中の繰り返し単位の数であり、2以上の整数である。
【0042】
本発明に用いられる他の水溶性マルチブロックコポリマーは、一般式{[An(EO)a(PO)b(EO)aAn]E}m(式中、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bはポリプロピレンオキシドブロックであり、Aはモノマー繰り返し単位であり、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bは先に定義したようなポリプロピレンオキシドブロックであり、Eは鎖延長剤または架橋剤であり、nは0~50、好ましくは1~20(非生分解性材料の場合、0~20)、より好ましくは2~16(非生分解性材料の場合、0~16)の範囲の整数であり、mはポリマー分子中の繰り返し単位の数であり、2以上、好ましくは約2~500の範囲、より好ましくは約3~100の範囲の整数である)のポリエステル鎖延長ブロックコポリマーである。
【0043】
モノマー繰り返し単位は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸または関連するエステル、ラクトン、二量体エステル、カーボネート、酸無水物、ジオキサノン、アミドまたは関連するモノマーに由来し得、好ましくは、脂肪族α-ヒドロキシカルボン酸または関連するエステルに由来し得る。このような単位は、たとえば、乳酸、乳酸エステル、グリコール酸、グリコール酸エステル、または関連脂肪族ヒドロキシルカルボン酸、エステル(ラクトン)、ダイマー酸または関連する化合物、たとえば、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトン、δ-グルタロラクトン、δ-バレロラクトン、β-ブチロラクトン、ピバロラクトン、α,α-ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、p-ジオキサノン、1,4-ジオキセパン-2-オン、3-メチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン、3,3-ジメチル-1-4-ジオキサン-2,5-ジオン、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸、α-ヒドロキシイソ吉草酸、α-ヒドロキシカプロン酸、α-ヒドロキシ-α-エチル酪酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、α-ヒドロキシ-α-メチル吉草酸、α-ヒドロキシヘプタン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、α-ヒドロキシリグノセリン酸、サリチル酸の環状エステル、およびこれらの混合物などを含むものに由来する。本発明において、α-ヒドロキシル酸、およびそれに対応する環状二量体エステル、特に、ラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンを使用することが好ましい。なお、本発明の記載に従う一定のモノマーを用いる際、生成されるモノマー単位は、特にエステル系ではないが、上述のモノマーに由来するか、または求核基および求電子基を含有し且つ重合され得る、カーボネート基(ポリカーボネート)、(ポリアミドを生成する)アミノ酸および関連基を含み得る。ポリエステルという用語は、上記モノマーのすべてに由来するポリマーを含み、実際にエステル単位を生成するものが好ましいと理解されるべきである。
【0044】
「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)」または「ポリ(α-ヒドロキシカルボン酸)」という用語は、本発明のさまざまな実施の形態にかかるポリマー組成物で用いられる{[An(BCB)An]E}mマルチブロックコポリマーにおける一定のポリエステルAブロックを記載するためのものであり、式中、Aは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸または関連エステルまたはダイマーエステルに由来する高分子ポリエステル単位であり、好ましくは、本明細書中に記載されるような数多くの他のものの中で、たとえば、乳酸、ラクチド、グリコール酸、グリコリドなどの環状二量体エステルを含む、脂肪族α-ヒドロキシカルボン酸もしくは関連エステル、または、たとえば、ε-カプロラクトン、δ-グルタロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトンおよびこれらの混合物などの関連脂肪族ヒドロキシカルボン酸もしくはエステル(ラクトン)に由来する。本発明において、α-ヒドロキシル酸およびこれらに対応する環状二量体エステル、特に、ラクチドおよびグリコリドを使用することが好ましい。
【0045】
他の好適な末端変性成分はイオン化可能なポリマーを含み得るが、これらに限定されない。本発明で使用されるイオン化可能なポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フェニルアクリル酸、ペンテン酸などのモノマーのカルボキシビニルポリマーなどの、直鎖、分枝鎖および/または架橋ポリマーを含む。ポリアクリル酸およびその塩は、カルボキシビニルポリマーであることが好ましい。1以上のポリカルボキシビニルポリマーを本発明のポリオキシアルキレン組成物に用いてもよい。単なる一例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーなども意図される。
【0046】
複合体を水中に形成するか、脱水ヒドロゲルを水和するか、または、ホットメルト加工法によって製造された複合体を水和することによって得られる、上記逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物は、約5重量%~20重量%、好ましくは8重量%~18重量%、より好ましくは10重量%~15重量%の範囲で、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーを含んでも良い。
結合性ゲル化アジュバント
【0047】
「結合性ゲル化アジュバント」という用語は、他のゲル化剤のゲル化作用を変更させることができるが、組成物に添加したとしても水溶液の粘度に対してほんの少ない直接的作用しか有さない補助剤を指す。当然ながら、結合性ゲル化アジュバント自体は非常に限られた水溶解性を有しており、典型的には、20℃で0.5g/100ml未満、好ましくは0.3g/100ml未満の水溶解性を有し、単独で水中に存在するときに水を粘度付与またはゲル化することは不可能である。
【0048】
現在市販されているポロクサマーポリマーでは、比較的低い濃度で、所望の室温より低いゾル-ゲル転移温度を得る能力は制限されている。また、活性成分が制御放出および持続放出できるように有効量の活性成分を担持および安定化することができる、固形分が低いゲル組成物ことも望ましい。
【0049】
たとえば、約25℃のゾル-ゲル転移温度を有するためには、水中に約20重量%のプルロニック(登録商標)F127が必要とされる。ゾル-ゲル転移温度を25℃よりずっと低温度まで拡大するためには、より高い濃度のブロックコポリマーを用いなくてはならない。約8℃のゾル-ゲル転移温度を有するためには、35重量%も高くなる濃度のプルロニック(登録商標)F127が必要となることもある。対照的に、同一のゾル-ゲル転移温度を有するためには、約8重量%のラウレス-4と組合わせて約18.5重量%のプルロニック(登録商標)F127しか必要でない。ポリマー濃度が大幅に下げられるため、溶液粘性はずっと低くなり、得られるヒドロゲルはべとつきがより少なく、残渣がより少なく、より良いせん断敏感特性および化粧的効果が得られる。
【0050】
本発明によれば、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する水溶性ブロックコポリマーは、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントを少量だけ添加することによって、そのゲル化効果が大幅に改善される、との知見が得られる。また、所望の温度で逆的な熱可逆性のゲルを形成するために用いられるポリマーの相対的な量は大幅に減少されたが、得られるヒドロゲル組成物の、有効量の微水溶性または非水溶性の医薬製剤および化粧料の活性成分を可溶化および/または安定化させる能力が改善されることが明らかになる。
【0051】
また、本発明の様々な実施形態にかかる、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有するブロックコポリマーを含む逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物は、有効量の少なくとも1種類の非水溶性の結合性ゲル化アジュバントを組込むことにより、使用条件下で比較的広い温度にわたりそのゾル-ゲル転移温度を調節することができる。比較的低いポリマー濃度で広い温度範囲の使用条件にわたってヒドロゲル組成物のゾル-ゲル転移温度を調整する能力は、ヒドロゲル組成物に関する先行技術の限定を克服し、また、製造者にとっては組成物の所望の性能または取り扱い特性に応じて液体状態またはゲル形態のいずれかの選択においてより自由度を有するため、有利である。特に、本発明は、有効量の活性成分を制御放出および持続放出できるような、上記特性を有する医薬品、化粧料およびパーソナルケア組成物を提供する。
【0052】
上記のように、ヒドロゲル組成物の有利な特性は、脱水後に水溶性超分子複合体を含む組成物を再水和させること、またはホットメルト加工法によって形成された複合体を水和させることによって、維持することができると見出された。本発明にかかる水溶性超分子複合体は、水重量の除去のため、より安価に製造・輸送することができ、上記と同じ理由で有利である。そして、最終使用者が上記水溶性超分子複合体を水と混合することで所望の濃度を有するゲルまたは溶液を得ることができる。
【0053】
本発明の様々な実施形態によれば、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有するブロックコポリマーと、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントとを含む超分子複合体の形成について開示しているが、当該超分子複合体は、有効量の微水溶性または非水溶性の医薬製剤および化粧料の活性成分を可溶化および/または安定化させる能力を有する。
【0054】
結合性ゲル化アジュバントの例としては、限定されないが、オキシアルキル化脂肪族アルコール、オキシアルキル化脂肪族アルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアルコール、オキシアルキル化アルキルアルコールのエステル;オキシアルキル化アルキルアリールアルコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のエステル、芳香族ヒドロキシ石炭酸、芳香族ヒドロキシ石炭酸のエステル、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、オキシアルキル化ソルビタンエステル、オキシアルキル化トリグリセリド、オキシアルキル化グリセリルエステル、オキシアルキル化ソルビトールのエステル、ポリオールエステル、ソルビタンエステルなどが含まれる。
【0055】
本発明に用いられる好適な結合性ゲル化アジュバントは、限定されないが、ラウレス-2、ラウレス-3、ラウレス-4、ラウレス-5、ラウレス-6など;オレス-2、オレス-5、オレス-10など;C12-13パレス-2、C12-13パレス-3、C12-13パレス-4、C12-13パレス-5、C12-13パレス-6など;アジピン酸ジ-PPG-2ミレス-9、アジピン酸ジ-PPG-2ミレス-10、アジピン酸ジ-PPG-2ミレス-11など;サリチル酸およびその誘導体;メチル、エチル、プロピル、ブチルパラベン;などを含む。
【0056】
本発明の重要な局面は、比較的低いポリマー濃度で水溶性ブロックコポリマーと結合性ゲル化アジュバントとの相対比を調整することにより、水溶性超分子複合体を含むヒドロゲル組成物のゾル-ゲル転移温度を約4~45℃、好ましくは約8~40℃の温度範囲に調節できることである。前記したように、このようなヒドロゲル組成物のゾル-ゲル転移温度を調整する能力は、性能または取扱いのいずれかの観点から、流体またはゲル形態において望ましいすべての場合に先行技術の限定を克服し、重要かつ非常に有用である。
【0057】
水和によって逆熱可逆性ヒドロゲルまたは溶液組成物を形成する場合、本発明の様々な実施形態にかかる水溶性超分子複合体は、約0.1重量%~12重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~8重量%の範囲で、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントを含む。上記結合性ゲル化アジュバントは0.5g/100ml未満、好ましくは0.3g/100ml未満、より好ましくは0.1g/100ml未満の水溶解性を有し、水溶性ブロックコポリマーと水溶性分子間複合体を形成することができる。
【0058】
本発明の一つの実施形態において、ヒドロゲル組成物はゲルまたは液体として形成される。最も好ましくは、ヒドロゲル組成物は、皮膚または粘膜組織と接触する際にゲル化可能なゲルまたは液体として存在する。
【0059】
いくつかの用途において、このような逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物の実用的な利点は、製剤を環境温度下において流動液体として投与できることである。体内組織と接触すると、逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物はゲル化し、その流動性が変わるが、より重要なのは、適用部位から容易に除去できない。
【0060】
いくつかの他の用途において、このような逆的な熱可逆性ヒドロゲル組成物の実用的な利点は、製剤を環境温度下においてゲルとして投与できることである。本発明の様々な実施形態によって作成された、水溶性超分子複合体を含むヒドロゲル組成物の低い固形分は、せん断に敏感な特性を有し、皮膚または粘膜組織に容易に適用でき、活性成分が制御放出および持続放出できるように適用部位に長期間とどまる。
【0061】
本発明の実施形態にしたがって製造された水溶性超分子複合体は、いくつかの所望の用途において製剤の投与を容易にするだけでなく、微水溶性または非水溶性活性成分を可溶化するおよび/または安定化させることにも寄与する。その無水形態、及び、改善された微水溶性または非水溶性の活性成分を可溶化および/または安定化させる能力によって、より多くの、通常水に溶解しない有用な医薬製剤および化粧料の活性成分が、本発明の超分子複合体中で可溶化及び/又は安定化するようになることが見出される。たとえば、皮膚用製剤および化粧料製剤の調製において、ふけ、ざ瘡、皮膚のしわ、皮膚の色素沈着、いぼ、斑点、または皮膚関連のトラブルを治療するためのサリチル酸およびその誘導体の使用が周知である。サリチル酸およびその誘導体は、通常、結晶形態であり、皮膚用調剤および化粧料調剤において伝統的に用いられる水または油に十分に可溶でない。皮膚用品および化粧品をつくる際にサリチル酸およびその誘導体を用いるときに起きる典型的な問題は、サリチル酸およびその誘導体が、さまざまな組成物から結晶として析出する傾向にあるため、上記の皮膚トラブルを治療または予防するためのサリチル酸およびその誘導体のバイオアベイラビリティが大きく減少することである。本発明に従って製造された水溶性超分子複合体を含むヒドロゲル組成物は、微水溶性サリチル酸およびその誘導体の可溶化に寄与するだけでなく、サリチル酸およびその誘導体が組成物から結晶として析出することも防止するため、上記の皮膚トラブルを治療または予防するためのサリチル酸およびその誘導体のバイオアベイラビリティが大きく向上する可能である。
【0062】
本発明に従って製造された水溶性超分子複合体を含むヒドロゲル組成物は、多くの利点を示す。比較的低いポリマー濃度で比較的広い温度範囲の生理学上適切な使用条件で改善されたゲル化効率により、本発明のヒドロゲル組成物は、クリアかつ透明のゲルを形成し、最低限の固形分で適切な厚さ、軟化度、および化粧的効果を所有する。ヒドロゲル組成物は、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含み、当該ヒドロゲル組成物は、ゲル状態の転移前後においてクリアかつ透明のままである。さらに、適用後に脱水の際、ほとんど残渣が形成されないことは、いくつかの用途では重要となり得る。さらに、ヒドロゲル組成物は、他の不溶性の添加剤を可溶化および/または安定化させる能力が改善される。通常水に溶解しない幅広い種類の有用な薬剤および化粧料の活性成分は、実は、本発明のヒドロゲル組成物中に可溶化および/または安定化および/または分散化および/または懸濁化できることが見出された。本発明の水溶性超分子複合体を含むヒドロゲル組成物の可溶化および/または安定化能力が向上されたため、多くの状況下で、アルコールを含有しないヒドロゲル組成物は、製剤化される。ある場合には、所望のゾル-ゲル転移温度が維持されれば、他の補助可溶化剤/相溶化剤を添加することも有用である。
【0063】
本発明の別の実施形態によれば、水溶性超分子複合体を含む固体組成物を調製するための湿式法であって、
(a)20℃未満の温度で、少なくとも2つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含有する上記水溶性ブロックコポリマーを水中に溶解する工程と、
(b)次に、好適な温度で、少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントを混合して、透明なヒドロゲルまたは溶液を形成する工程と、
(c)上記透明なヒドロゲルまたは溶液を、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%の水が透明なヒドロゲルまたは溶液から除去されるまで、乾燥させる工程と、
を含む、湿式法を提供する。
【0064】
透明なヒドロゲルを脱水させるために使用される方法としては、水溶性超分子複合体の特性に悪影響を及ぼさない任意の方法であってもよい。このような乾燥技術の例としては、加熱乾燥、真空乾燥、スプレー乾燥や、凍結乾燥法、またはこれらの方法の組み合わせが挙げられる。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態によれば、水溶性超分子複合体を含む固体組成物を調製するためのホットメルト加工法であって、
(a)上記水溶性ブロックコポリマーを55~120℃の温度に加熱する工程と、
(b)加熱されたコポリマーを少なくとも1種類の結合性ゲル化アジュバントと55~120℃の温度で混合して混合物を形成する工程と、
(c)混合物を冷却する工程と、
を含む、ホットメルト加工法を提供する。
【0066】
湿式法またはホットメルト法のいずれかによって得られた無水固体材料の一部または全部は、不溶性物質の沈殿を生じることなく水に溶解することができ、濃度によってはクリアかつ透明な溶液またはゲルを形成することができる。
医薬製剤
【0067】
当業者であれば理解するように、本発明にかかる水溶性超分子複合体は、さまざまな医薬品および診断用化合物を投与するための薬剤送達ビヒクルとして利用され得る。水溶性超分子複合体を含む固体組成物は、有効量の医薬品または診断用化合物と組み合わせて、固体剤形、ゲル剤形または溶液剤などの様々な剤形を提供することができる。
【0068】
本発明の水溶性超分子複合体薬物送達組成物内に組込むための好適な医薬品および診断用化合物は、水溶性、微水溶性または非水溶性の医薬化合物であってもよい。本発明にかかる水溶性超分子複合体により投与され得る例示的な医薬品、治療剤または診断剤は、限定されないが、下記を含む。
(1) セフォキシチン、n-ホルムアミドイル-チエナマイシンおよび他のチエナマイシン誘導体、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、カルベニシリン、コリスチン、ペニシリンG、ポリミクシンB、バンコマイシン、セファゾリン、セファロリジン、チブロリファマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド;ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シソマイシンおよびトブラマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質;ノルフロキサシンおよびflucalanine/ペンチジドンの抗菌剤組合せなどのナリジクス酸および類似体;ニトロフラゾンなど。
(2) ピリラミン、クロルフェニラミン、テトラヒドラゾリン、アンタゾンリン(antazonline)などの抗ヒスタミン剤と充血除去剤。
(3) コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メドリゾン、フルオロメトロン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク、その塩およびその対応するスルフィドなど。
(4) エコチオフェート、ピロカルピン、サリチル酸フィソスチグミン、ジイソプロピルフルオロリン酸、エピネフリン、ジピボリルエピネフライン(dipivolyl epinephraine)、ネオスチグミン、エコチオフェーヨウ化物、デメカリウム臭化物、カルバコール、メタコリン、ベタネコールなど。
(5) アトロピン、ホマトロピン、スコポラミン、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェニレフリン、シクロペントラート、オキシフェノニウム、オイカトロピンなどの散瞳剤;および目の症状または疾患の治療に用いられる他の薬。
(6) たとえば、特に、マレイン酸塩およびR-チモロール、ならびに、ピロカルピンおよびチモロールまたはR-チモロールの組合せとしての、ベタキソロール、ピロカルピン、チモロールなどの抗緑内障薬。さらに、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、塩酸塩およびジピベフリン誘導体などのエピネフリンおよびエピネフリン複合体またはプロドラッグ、ならびにグリセリン、マンニトールおよび尿素などの高浸透圧剤も含まれる。
(7) イベルメクチンなどの抗寄生虫化合物および/または抗原生動物化合物;ピリメタミン、トリスルファピリミジン、クリンダマイシンおよびコルチコステロイド調剤。
(8) アシクロビル、5-ヨード-2’-デオキシウリジン(IDU)、アデノシンアラビノシド(Ara-A)、トリフルオロチミジン、ならびにインターフェロンおよびポリI:Cなどのインターフェロン誘発剤などの抗ウイルス効果化合物。
(9) アセタゾラミド、ジクロフェナミド、2-(p-ヒドロキシフェニル)チオ-5-チオフェンスルホンアミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミドおよび6-ピバロイルオキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤。
(10) アムホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシン、ナタマイシン、およびミコナゾールなどの抗真菌剤。
(11) エチドカインコカイン、へノキシネート(henoxinate)、ジブカイン塩酸塩、ジクロニン塩酸塩、ナエパイン、フェナカイン塩酸塩、ピペロカイン、プロパラカイン塩酸塩、テトラカイン塩酸塩、ヘキシルカイン、ブピカイン、リドカイン、メピバカインおよびプリロカインなどの麻酔剤。
(12) 以下のような眼診断剤:(a)網膜を検査するために用いるものおよびクロリド-ナトリウムフルオレセイン;(b)フルオレセインおよびローズベンガルなどの結膜、角膜および涙器を検査するのに用いるもの;および(c)メタコリン、コカイン、アドレナリン、アトロピン、ヒドロキシアンフェタミンおよびピロカルピンなどの異常な瞳孔反射を検査するために用いるもの。
(13) アルファキモトリプシンおよびヒアルロニダーゼなどの手術で補助剤として用いられる眼剤。
(14) エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)およびデフェロキサミンなどのキレート剤。
(15) メトトレキセート、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、およびアザチオプリンなどの免疫抑制剤および抗代謝物質。
(16) 心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン-遺伝子関連因子、黄体化ホルモン、放出ホルモン、ニューロテリシン(neuroterisin)、血管活性腸ペプチド、バソプレシン、シクロスポリン、ボツリヌス毒素、インターフェロン、P物質エンケファリン、表皮成長因子、目由来の成長因子、フィブロネクチン、インシュリン様成長因子および中胚葉成長因子。
(17) サリチル酸およびその誘導体、硫黄、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、アゼライン酸、尿素、レゾルシノールおよびN-アセチルシステイン、ならびに、レチノイン酸およびその誘導体などのレチノイドなどの、ざ瘡治療剤。
(18) ヒアルロン酸ナトリウムまたはポリビニルアルコールなどの潤滑剤。
(19) ネオマイシン硫酸塩-リン酸デキサメタゾンナトリウム、マレイン酸チモロール-アセクリジンなどの併用抗緑内障療法におけるような抗生物質-抗炎症剤などの上記の組合せ。
【0069】
当業者であれば理解するように、上記の医薬化合物の列挙は例示に過ぎない。本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む薬剤送達組成物は、医薬化合物の目、口、鼻、直腸または皮下投与などの幅広い種類の生理学的適用における利用に特に適しており、幅広い種類の薬剤がそれらの中に組込まれ得る。したがって、上記の薬剤の列挙は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、例示に過ぎない。
【0070】
本発明にかかる水溶性超分子複合体は、レボブノロール、ピロカルピン、ジピベフリンおよびその他など、低いバイオアベイラビリティを示す医薬に最も好適である。
【0071】
好ましくは、本発明にかかる水溶性超分子複合体は、約0.01重量%~70重量%、好ましくは0.05重量%~50重量%、より好ましくは0.1重量%~30重量%の医薬品および診断用化合物を含み得る。医薬品および診断用化合物を含有する水溶性超分子複合体を調製するために、有効量の医薬品および診断用化合物の選択は湿式法、およびその後の脱水法またはホットメルト法によって達成できる。好ましくは、局所適用、点滴注入、経口投与または注射用の固体剤形またはヒドロゲル薬剤送達ビヒクルとして利用される場合、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、医薬品または診断薬のおよそ0.01重量%~70重量%、好ましくは0.05重量%~50重量%、より好ましくは0.1重量%~30重量%を含むように変更される。本発明にかかる薬剤送達ビヒクルを調製するためには、組成物製剤化温度およびpHで、適切な有効量の選択される医薬化合物が組成物に単純に組込まれる。選択される化合物は、溶液に溶解または均一に分散できるものであることが好ましい。水溶性医薬化合物は、組成物中に容易に溶解することもあるが、不溶性の化合物は、組成物全体に均一に分散するように、好ましくは微粉砕される。これと同様に、当該技術分野で既知のものなどの不溶性または侵食可能な微粒子薬剤送達系を組成物内に組込むことも、本発明の範囲内であることが意図される。このように、制御放出性薬剤送達系は、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物内に組込まれ、滴下または注入により投与されると適切な位置に保持され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、伝統的な中国の生薬または中国の生薬抽出物を含有してもよい。伝統的な中国の生薬は、ヒドロゲル組成物中に微粉砕、均一に分散、および/または懸濁され得る。ヒドロゲル組成物は、薬剤送達ビヒクルとして有効な分散液および/または懸濁媒体として作用し得るだけでなく、さまざまな伝統的な中国の生薬剤から生薬活性物質を抽出することも可能である。
【0073】
本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む医薬ヒドロゲル組成物中に含まれ得る医薬上許容される賦形剤は、限定されないが、当該技術分野で既知である、生理学上許容可能な界面活性剤、溶媒、湿潤剤、皮膚軟化剤、浸透促進剤、着色剤、フレグランスなどを含む。ヒドロゲル組成物は、好ましくは約1~約12の範囲のpH値を有する。他の好ましい実施形態は、約3.5~約10の範囲のpH値を有し得る。
【0074】
特定な医薬的用途および製剤は、以下のものを含めても良い。
【0075】
食道、口腔および頬側への適用:本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、食道裏層内に薬を送達するための好適なビヒクルを提供する。眼への適用:ヒドロゲル製剤は、目と接触するとゲル化するか、またはせん断に敏感なゲルとして、点眼剤として適用できる。ゲル化はポリマーの低い濃度により達成できるため、点眼の際にかすみが最小限に抑えられる。鼻への適用:ヒドロゲル製剤組成物は、低温で液体として噴霧でき、その後のゲル化は、製剤の投与後のみ、かつ適用の部位のみで起きる。膣/直腸への適用:組成物は、製剤の滞留時間を増加させ、現在の製剤の典型的な望ましくない作用である漏れ戻りを防止することができる。
【0076】
獣医学的適用:本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、ヒトの病状の治療だけでなく、動物の世話のための治療を提供するのにも有用であり得る。獣医学的品については、ヒドロゲル組成物は、抗菌剤、抗真菌剤、止痒剤、および抗脂漏剤などの局所的皮膚用品、消臭、ならびに防腐/傷治癒調剤の調製について示される。耳用品は、抗真菌剤など、活性成分の有無を問わない耳洗浄剤を含み得る。眼用品は、目の保湿剤または抗菌性調剤を含み得る。
【0077】
錠剤またはゲルカプセル剤:本発明にかかる薬剤活性成分を含む水溶性超分子複合体は、他の成分とともに錠剤内に粉末状で導入され得る。水溶性超分子複合体を含む固体組成物は、活性成分および他の成分を伴って、形成またはカプセル化することもできる。
【0078】
注射液:持続的期間または長期間にわたり活性成分を徐々に放出する本発明にかかる水溶性超分子複合体を含むデポー製剤を調製し、低粘度で皮下または筋肉内部位に投与し得る。また、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含むヒドロゲル組成物と活性成分は、製剤中におけるミクロスフェアまたは粒子を懸濁させるように、ゲル形態に調製し得る。製剤は、次に、ヒドロゲル組成物のずり流動化を利用できる。したがって、注入の間、製剤は粘性を低下させるせん断応力に晒されて、通常は粘性の製剤が注射により患者に導入されることを可能にする。応力の中断により、製剤のゲル形態の高粘性が再確立されるため、活性剤がそこから徐々に放出され得る。
【0079】
医薬組成物の調製は、製薬産業において入手可能な医薬製剤化ガイドブックおよび産業ジャーナルのいずれかを参照して達成され得る。これらの参考文献は、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物を製剤内に添加または代用することにより変更され得る標準的な製剤を供給する。好適なガイドブックとして、Pharmaceutics and Toiletries Magazine,Vol.111 March, 1996);Formulary:Ideas for Personal Care; Croda,Inc,Parsippany,N.J.(1993);およびPharmaceuticon:Pharmaceutic Formulary,BASFが含まれ、これらの全ては引用により本発明に援用される。
【0080】
医薬組成物は、如何なる形態でもあり得る。好適な形態は、意図する適用の様式および場所に一部依存する。眼用および耳用製剤は、好ましくは液滴または液体形態で投与され、鼻用製剤は、好ましくは、液滴またはスプレー形態で投与されるか、または粉末として(嗅ぎタバコとして)投与され、膣および直腸用製剤は、好ましくは、ゲルや、濃い液体または座薬の形態として投与され、経口製剤は、好ましくは、錠剤、カプセル、または液体の形態として投与され、獣医学的製剤は、ゲル、液体、クリーム、ローションまたはスプレーとして投与され、食道および頬側/口腔への適用は、好ましくは、溶液や、固体製剤または粉末として投与され、膜形成用途または皮膚への適用は、液体、クリーム、ローション、軟質ゲル、硬質ゲルスティック、ロールオン製剤またはパッドに適用された製剤として投与され得る。
【0081】
本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物を用いて投与され得る例示的な薬または治療送達系は、一切限定されないが、食道、耳、直腸、頬側、経口、膣、および泌尿器への適用などの粘膜療法;傷のケア、スキンケアおよびティートディッピングなどの局所療法;および筋肉内、骨内(たとえば関節)、脊髄および皮下療法、組織補充、癒着防止ならびに非経口薬剤送達などの静脈内/皮下療法を含む。さらに、更なる用途は、経皮的送達および注射後の薬のデポーの形成を含む。上記医薬製剤は、皮膚または粘膜を介して最も好適に吸収可能である。
【0082】
上記した湿式法およびホットメルト加工法は、ゲル化アジュバントを添加する前、添加する同時、および/または添加した後に、医薬品または診断用化合物を組み込むことによって、固体、液体またはゲルの形態の医薬組成物を調製するためにも用いられる。
化粧料活性成分
【0083】
当業者であれば理解するように、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む固体形態、ヒドロゲル形態または溶液形態の組成物は、さらに、化粧料活性成分の全組成の約0.01~70重量%、好ましくは約0.1~50重量%を含有し得る。化粧料は、顔用ヒドロゲル、手および足のケアヒドロゲル;ざ瘡治療ヒドロゲル、シェービングヒドロゲル、洗浄ヒドロゲル;粉末、制汗剤;脱毛剤ヒドロゲル、歯のホワイトニングヒドロゲル、化粧下地、ヒドロゲルファンデーション、アイシャドー、アイライナー、ブラッシュなどのカラーメイクアップ製品;日焼け止めヒドロゲル;防虫剤などであり得る。
【0084】
本発明の固体形態、ヒドロゲル形態または溶液形態の組成物内に組込まれるのに好適な化粧料活性成分は、精油、保湿保持剤、皮膚美容剤、日焼け止め、制汗剤、ビタミン、アミノ酸、抗ざ瘡剤、防腐剤または抗菌剤、亜鉛塩、歯のホワイトニング剤、脱毛剤、フレグランス油、防虫剤、酸化防止剤、キレート剤、冷媒、抗炎症剤、塩、着色剤、及び微粒子フィラーなどであり得る。ヒドロゲル組成物内に組込まれ得る例示的な化粧料活性成分は、限定されないが、以下を含む。
(1) 限定されないが、アーモンドオイル、イランイランオイル、ネロリオイル、サンダルウッドオイル、フランキンセンスオイル、ペパーミントオイル、ラベンダーオイル、純ジャスミン、ゼラニウムオイルバーボン、スペアミントオイル、クローブオイル、レモングラスオイル、セダーウッドオイル、バルサムオイル、ティーツリーオイルおよびタンジェリンオイルを含む精油。また、限定されないが、1-シトロネロール、α-アミルシンナムアルデヒド、ライラル、ゲラニオール、ファルネソール、ヒドロキシシトロネラール、イソオイゲノール、オイゲノール、ユーカリオイルおよびオイカリプトール、レモンオイル、リナロールおよびシトラールなどの精油に存在する活性成分を使用してもよい。それらのフレグランスまたは香味料としての効果以外に、このような化合物は抗菌剤としても組成物において有用であり得る。精油または単離された成分の濃度は、約0.3~1重量%の間、または約0.1~0.5重量%の間、または0.5~2重量%の間であり得る。
(2) 保湿保持剤は、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グルコース、キシリトール、マルチトール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボキシラート、ポリオキシエチレングリコシド、およびポリオキシプロピレンメチルグリコシドなどを含む。
(3) 胎盤抽出物、アルブチン、グルタチオンおよびユキノシタ抽出物、コウジ酸、胎盤抽出物、硫黄、エラグ酸、リノール酸、トラネキサム酸などの美白剤;ローヤルゼリー、光増感剤、コレステロール誘導体、子牛血抽出物、α-ヒドロキシル酸およびβ-ヒドロキシル酸などの細胞活性剤;荒れ肌および乾燥肌改善剤;ノニル酸、バニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェリル、ヘキサニコチン酸イノシトール、シクランデラート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチンおよびγ-オリザノールなどの血液循環改善剤;酸化亜鉛およびタンニン酸などの皮膚収れん剤;硫黄およびチアントールなどの抗脂漏剤;ならびにα-ヒドロキシアセトンなどの皮膚着色剤などを含む、皮膚美容剤。
(4) 日焼け止めは、p-アミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルp-アミノベンゾアート、グリセリルp-アミノベンゾアート、およびオクチルp-ジメチルアミノベンゾアートなどのベンゾアート型のUV吸収剤;アントラニル酸メチルなどのアントラニル酸型UV吸収剤;サリチル酸メチル、サリチル酸オクチル、およびトリエタノールアミン塩またはサリチル酸などのサリチル酸型のUV吸収剤;p-メトキシけい皮酸オクチル、p-メトキシヒドロキシけい皮酸のジエタノールアミン塩、およびジメトキシヒドロキシけい皮酸(dimethocycinnamic acid)/イソオクタン酸グリセリド(isooctanoic acid gryceride);2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシペンゾフェノン-5-スルホン酸(2-hydroxy-4-methoxypenzophenon-5-sulfonic acid)、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシペンゾフェノン、および2-ヒドロキシ-4-N-オクトオキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン型UV吸収剤;ウロカニン酸エチルなどのウロカニン酸型のUV吸収剤;4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、4-イソプロピルジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン型のUV吸収剤;3-(4-メチルベンジリデン)カンファー、オクチルトリアゾン、e-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-フェニル-ベンゾイミダゾール-5-スルフェート、4-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジン(4-(3,4-dimethoxypnehylmethylene)-2,5-dioxo-1-imidazolidine)、および2-エチルヘキシルプロピオネートを含む。UV吸収剤は、ポリマー粉末内にカプセル化され得る。たとえば、酸化チタン微粉末、鉄を含有する酸化チタンの微粉末、酸化亜鉛微粉末、酸化セリウム微粉末およびこれらの混合物などの紫外線を吸収または散乱させる上述の粉末を使用し得る。
(5) 制汗剤は、アルミニウムクロロ水和物、塩化アルミニウム、アルミニウムセスキクロロ水和物、ジルコニルヒドロキシクロリド、アルミニウムジルコニウムヒドロキシクロリドおよびアルミニウムジルコニウムグリシンなどを含む。
(6) ビタミンAオイル、レチノール、酢酸レチニルおよびパルミチン酸レチニルなどのビタミンA;リボフラビン、酪酸リボフラビンおよびフラビンアデニンヌクレオチドなどのビタミンB2、塩酸ピリドキシン、ジオクタン酸ピリドキシンおよびトリパルミチン酸ピリドキシンなどのビタミンB6、ビタミンB12およびその誘導体、ならびにビタミンB15およびその誘導体;L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ジパルミタート、ナトリウム(L-アスコルビン酸)-2-スルフェートおよび二カリウムL-アスコルビン酸ジホスファートなどのビタミンC;エルゴカルシフェロールおよびコレカルシフェロールなどのビタミンD;α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェリル、ニコチン酸dl-α-トコフェリルおよびコハク酸dl-α-トコフェリル;ビタミンH;ビタミンP;ニコチン酸、ニコチン酸ベンジルおよびニコチン酸アミドなどのニコチン酸;パントテン酸カルシウム、D-パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテルおよびアセチルパントテニルエチルエーテルなどのパントテン酸;ビオチン、などのビタミン。
(7) アミノ酸は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン(phenylaranine)、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニンおよびトリプトファンを含む。例または核酸は、デオキシリボ核酸を含み、ホルモンの例は、エストラジオールおよびエテニルエストラジオールなどを含む。
(8) サリチル酸およびその誘導体、硫黄、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、アゼライン酸、尿素、ティーツリーオイル、レゾルシノールおよびN-アセチルシステイン、ならびに、レチノイン酸またはその誘導体などのレチノイドなどの抗ざ瘡剤。
(9) 防腐剤または抗菌剤は、パラオキシ安息香酸アルキル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、およびフェノキシエタノールを含み、用いられ得る。抗菌剤については、安息香酸、過酸化ベンジル(benzyl peroxide)、サリチル酸およびその誘導体、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、パラクロロメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン(chlorohexydine chloride)、トリクロロカルボアニリド、トリクロサン、光増感剤、フェノキシエタノールなど。
(10) 抗ウイルス剤および抗菌剤として、さらに、皮膚の刺激を緩和または予防するための亜鉛塩。亜鉛塩の例は、その開示内容がここに引用により援用される米国特許第5,208,031号に記載されるもののような、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛および酸化亜鉛を含む。亜鉛塩は、0.5~25%の間の濃度にある。
(11) 歯のホワイトニング剤は、限定されないが、過酸化水素、過酸化カルボイミド、過酸化カルシウム、過炭酸塩、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸塩、過硫酸塩、およびこれらの混合物を含む。シュウ酸、マロン酸、酒石酸およびこれらの塩。好適なジカルボン酸塩は、限定されないが、たとえば、シュウ酸、マロン酸および酒石酸などのナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウムおよび銅塩を含む。
(12) 脱毛剤は、限定されないが、1以上のチオール酸(たとえば、チオグリコール酸、チオ乳酸、およびβ-メルカプトプロピオン酸など)などのチオール系脱毛剤、または、これらの酸のアルカリ塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む。さらに、他の活性チオール剤も使用できる。これらは、β-メルカプトエタノール、チオグリセロール、1,3-ジチオ-2-プロパノール、1,4-ジチオ-2-ブタノール、1,4-ジメルカプト-2,3-ブタンジオール、1,3-diexthio(ジエキスチオ)-2-メトキシプロパン、1,3-ジメルカプト-2-アミノプロパン、1,4-ジメルカプト-2,3-ジアミノブタン、アミノエタンチオール、および関連する有効なチオール活性物質などを含む。
(13) フレグランス油は、合成、天然、およびこれらの混合物からのフレグランス油を含む。香料ヒドロゲル組成物は、アルコールの有無を問わないフレグランスの香りの徐放のために、ヒドロゲルを擦るか、またはスプレーのいずれかとして適用され得る。
(14) 防虫剤は、ブチルアセチルアミノプロピン酸エチル、N,N-ジエチルトルアミド(DEET)、N,N-ジエチルベンズアミド、フィチン酸ジメチル、エチルベキサンジオール(ethyl bexanediol)、インダロン、ビシクロヘプテンジカルボキシド、テトラヒドロフルアルデヒドなどを含む。
(15) 酸化防止剤は、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンおよびフィチン酸を含む。
(16) キレート剤の例は、アラニン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムおよびリン酸を含む。
(17) 冷媒の例は、L-メントールおよびカンファーを含む。
(18) 抗炎症剤の例は、アラントイン、グリチルリチンおよびその塩、グリシレチン酸およびグリシレチン酸ステアリル、トラネキサム酸、アズレンなどを含む。
(19) 無機塩、有機酸の塩、アミン塩およびアミノ酸の塩などの塩。無機塩の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ジルコニウム、および塩酸の亜鉛塩、硫酸、炭酸塩酸、および硝酸を含む。有機酸塩の例は、酢酸、デヒドロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、アスコルビン酸およびステアリン酸の塩を含む。アミン塩の例は、トリエタノールアミンの塩であり、アミノ酸塩の例は、グルタミン酸の塩である。他の例は、化粧料に組込むことの可能なヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルミニウム・ジルコニウム・グリシン複合体および酸塩基反応によりつくられる塩である。
(20) 着色剤は、さまざまな染料、有機および無機顔料を含む。染料の例は、D&CおよびFD&Cブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、レッド、イエロ-などと呼ばれている、アゾ、インジゴイド、トリフェニルメタン、アントラキノンおよびキサンチン染料を含む。有機顔料は、一般的に、レーキ、特に、D&CおよびFD&C色素のレーキと呼ばれる、法定色素添加剤の不溶性金属塩;およびカーボンブラックからなる。無機顔料は、酸化鉄、紺青、クロム、水酸化クロム色素、およびこれらの混合物を含む。好適な無機顔料は、酸化鉄を含む。
さらに、たとえば、ガラス、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、セラミックスまたはアルミナなどの天然または合成の有機または鉱物基材を含有する粒子など、効果を有する色素も挙げられ、上記基材は、たとえば、アルミニウム、金、銀、白金、銅もしくはブロンズなどの金属物質、または、たとえば、二酸化チタン、酸化鉄もしくは酸化クロム、およびこれらの混合物などの金属酸化物で被覆されていなくてもいてもよい。干渉顔料、特に、液晶または多層干渉顔料も用いられ得る。
水溶性染料は、たとえば、ビートルート・ジュースまたはメチレンブルーである。
他の着色剤は、水溶性材料または水不溶性材料によりカプセル化されてもよい。シリコーンによりカプセル化された、SUNSIL材料などの製品が、Sunjin Chemical Companyから入手可能である。ナイロンまたはポリメタクリル酸メチルで被覆された追加の染料もSunjin Chemical Companyから入手可能である。
(21) 微粒子フィラーは、着色または非着色であってよく(非着色は、無色であるか、白色を意味する)、好ましくは、微粒子フィラーは、0.02~100、好ましくは0.5~50ミクロンの粒径を有する。好適な微粒子フィラーは、オキシ塩化ビスマス、チタン酸マイカ、ヒュームドシリカ、球状シリカ、シリコーン粉末、ポリメチルメタクリレート、微粒子化テフロン(登録商標)、窒化ホウ素、アクリレートコポリマー、珪酸アルミニウム、アルミニウムスターチオクテニルスクシナート、ベントナイト、珪酸カルシウム、セルロース、チョーク、コーンスターチ、ケイソウ土、フラー土、グリセリルスターチ、ヘクトライト、水和シリカ、カオリン、珪酸アルミニウムマグネシウム、トリ珪酸マグネシウム、マルトデキストリン、モンモリロナイト、微結晶セルロース、コメデンプン、絹粉末、シリカ、タルク、マイカ、二酸化チタン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ロジン酸亜鉛、アルミナ、アタパルジャイト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、デキストラン、カオリン、ナイロン、シリル化シリカ、セリサイト、大豆粉、酸化錫、水酸化チタン、リン酸トリマグネシウム、クルミ殻粉末、またはこれらの混合物を含む。
(22) 上述の顔料および微粒子フィラーは、微粒子表面を被覆する、単独または組合されたレシチン、アミノ酸、鉱油、シリコーン油またはさまざまな他の試薬により表面処理されてもよい。表面処理のために用いられる被膜は、新油性または新水性のいずれであってもよい。
【0085】
当業者であれば理解するように、上記の化粧料活性成分の列挙は例示に過ぎない。本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む化粧料組成物は、幅広い種類の化粧料およびパーソナルケア製品ならびに美容およびパーソナルケアのための用途における利用に、独自に適しているためである。
【0086】
いくつかの実施形態では、水溶性超分子複合体を含む組成物は、好ましくは約0.01%~約40%、より好ましくは約0.1%~約30%、最も好ましくは約0.5%~約25%のレベルで存在する、医薬上および/または生理上許容される湿潤剤を含有してもよい。好ましい湿潤剤は、限定されないが、多価アルコール、ソルビトール、グリセリン、尿素、ベタイン、D-パンテノール、DL-パンテノール、パントテン酸カルシウム、ローヤルゼリー、パンテチン、パントテイン、パンテニルエチルエーテル、パンガム酸、ピリドキシン、パントイルラクトース ビタミンB複合体、ナトリウムピロリドンカルボン酸、ヘキサン-1,2,6, -トリオール、グアニジンまたはその誘導体、およびこれらの混合物から選択される化合物を含む。
【0087】
ここで用いられる好適な多価アルコールは、限定されないが、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、キシリトール、グルシトール、マンニトール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール(たとえば、1,3-ブチレングリコール)、ヘキサントリオール(たとえば、1,2,6-ヘキサントリオール)、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、グリセリン、エトキシレイテドグリセリン、プロパン-1,3 ジオール、プロポキシレイテドグリセリンおよびこれらの混合物を含む、ポリアルキレングリコール、好ましくは、アルキレンポリオールおよびそれらの誘導体を含む。上記多価アルコールのいずれかのアルコキシレイテド誘導体もここでの使用に好適である。本発明の好ましい多価アルコールは、グリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、エトキシレイテドグリセリンおよびプロポキシレイテドグリセリンならびにこれらの混合物から選択される。
【0088】
ここで有用な好適な湿潤剤は、ナトリウム2-ピロリドン-5-カルボキシラート(NaPCA)、グアニジン;グリコール酸およびグリコール酸塩(たとえば、アンモニウムおよび第四級アルキルアンモニウム);乳酸および乳酸塩(たとえば、アンモニウムおよび第四級アルキルアンモニウム);さまざまな形態のいずれかのアロエベラ(たとえば、アロエベラゲル);ヒアルロン酸およびその誘導体(たとえば、ヒアルロン酸ナトリウムなどの塩誘導体);ラクトアミドモノエタノールアミン;アセトアミドモノエタノールアミン;尿素;ベタイン、パンテノールおよびその誘導体;ならびにこれらの混合物も含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、好ましくは約0.01%~約20%、好ましくは約0.1%~約15%、好ましくは約0.5%~約10%のレベルで存在する、医薬上および/または生理上許容される皮膚軟化剤を含有してもよい。皮膚軟化剤の例は、ラノリン、ヒマシ油、鉱油、シリコーン誘導体および石油ジェリーである。その他の皮膚軟化剤は、高オレイン酸ひまわり油およびその誘導体、マカダミアナッツ油およびその誘導体、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、オリーブオイル、ゴマ油、ならびに、ホホバ油およびその誘導体などの他の天然種子およびナッツ油を含む。最後に、皮膚軟化剤として用いられる他の組成物は、トウモロコシ油、綿実油、バラ水軟膏剤、杏仁油、アボカド油、カカオ脂、扁桃油およびミリスチルアルコールを含む。さらに、植物または動物起源いずれかの由来の多数の脂肪酸が皮膚軟化剤として用いられてきた。化粧料製剤に用いられる脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸を含む。他の典型的な脂肪酸は、リノール酸、ベヘン酸およびパルミトレイン酸を含む。脂肪族アルコールも皮膚軟化剤として用いられる。皮膚軟化剤として用いられる脂肪族アルコールの例は、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ホホバアルコールおよびオレイルアルコールである。さらに、脂肪酸エステルは、皮膚軟化剤として用いられる。脂肪酸エステルの例は、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルおよびステアリン酸グリセリルを含む。別の脂肪酸エステル皮膚軟化剤は、ホホバ油である。さらに、炭化水素類またはシリコーン(メチルシリコーンなど)などの非生物分解性皮膚軟化剤が知られており、化粧料およびパーソナルケア調剤に皮膚軟化剤として用いられている。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、好ましくは約0.01%~約15%、好ましくは約0.1%~約10%のレベルで存在する、界面活性剤をさらに含有してもよい。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤の例は、たとえば、ソルビトールまたはグリセリルモノ-、ジ-、トリ-またはセスキ-オレイン酸エステルまたはステアリン酸エステル、グリセリルまたはポリエチレングリコールラウリン酸エステル;ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(ポリエチレングリコールモノステアリン酸エステルまたはモノラウリン酸エステル);ソルビトールのポリオキシエチレネイテド脂肪酸エステル(ステアリン酸またはオレイン酸エステル);ポリオキシエチレネイテドアルキル(ラウリル、セチル、ステアリルまたはオクチル)エーテルを含む。アニオン性界面活性剤の例は、カルボン酸塩(ナトリウム 2-(2-ヒドロキシアルキルオキシ)アセテート))、アミノ酸誘導体(N-アシルグルタメート、N-アシルグリシネートまたはアシルサルコシネート)、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェートおよびそのオキシエチレネイテド誘導体、スルフォネート、イセチオネートおよびN-アシルイセチオネート、タウレートおよびN-アシルN-メチルタウレート、スルフォスクシネート、アルキルスルフォアセテート、ホスフェートおよびアルキルホスフェート、ポリペプチド、アルキルポリグリコシドのアニオン性誘導体(アシル-D-ガラクトシドウロネート)、および脂肪酸石鹸、ならびにこれらの混合物を含む。両性および両性イオンの例は、ベタイン、N-アルキルアミドベタインおよびこれらの誘導体、グリシン誘導体、スルタイン、アルキルポリアミノカルボキシラートおよびアルキルアンフォアセテート、ならびにこれらの混合物を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、好ましくは約0.01%~約6%のレベルで存在する、レオロジー改質剤をさらに含有してもよい。レオロジー改質剤の例は、限定されないが、カルボマー、アクリルコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖類、天然ゴム、Southern Clay Products, Inc.(テキサス州、ゴンザレス)からのLaponite(登録商標)などの粘度などを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、皮膚の上部角質層バリアを通って低レベルまでの浸透を促す1以上の成分を含有してもよい。皮膚浸透改善剤の例は、限定されないが、プロピレングリコール、アゾン、エトキシジグリコール、ジメチルイソソルビド、尿素、エタノール、ジメチルスルホキシドなどを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、水溶性膜形成ポリマーを含み、水溶性膜形成ポリマーは、限定されないが、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマーなどのポリビニルピロリドン型のポリマー;メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物アルキルハーフエステルコポリマーなどのビニルアセテートエーテル型の酸性ポリマー;ビニルアセテート/クロトン酸コポリマーなどの酸性ポリビニルアセテート型のポリマー;(メタ)アクリル酸/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、(メタ)アクリル酸/アルキル(メタ)アクリレート/アルキルアクリル酸アミドコポリマーなどの酸性アクリルポリマー、および、N-メタクリロイルエチル-N,N-ジメチルアンモニウム、アルファ-N-メチルカルボキシベタイン/アルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸コポリマーのヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレート/オクチルアミドなどの両性アクリルポリマーなどの両性、アニオン性、カチオン性、および非イオン性ポリマーを含んでも良い。好適な水溶性ポリマーは、好ましくは、たとえば、小麦タンパク質および大豆タンパク質などの植物由来のタンパク質などのタンパク質;たとえば、ケラチン加水分解物およびスルフォン酸ケラチンなどのケラチンなどの動物由来のタンパク質;アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性キチンまたはキトサンポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース、ならびに四級化セルロース誘導体などのセルロース酸ポリマー;アラビアゴム、グアーゴム、キサンタン誘導体、カラヤゴム;アルギネートおよびカラギーナン;グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸およびその誘導体;セラック、サンダラックゴム、ダンマル樹脂、エレミゴムおよびコーパル樹脂;デオキシリボ核酸;ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸などのムコ多糖類、ならびにこれらの混合物など、随意に修飾される天然起源のポリマーからも選ばれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は防腐剤を含有してもよい。生理学上許容可能な防腐剤の例は、限定されないが、パラヒドロキシ安息香酸(パラベン)のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステル;没食子酸プロピル;ソルビン酸ならびにそのナトリウム塩およびカリウム塩;プロピオン酸ならびにそのカルシウム塩およびナトリウム塩;6-アセトキシ-2,4-ジメチル-m-ジオキサン;2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール;ジブロモサリチルアニリドおよびトリブロモサリチルアニリドなどのサリチルアニリド;ヘキサクロロフェン;安息香酸ナトリウム;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸、およびこれらのアルカリ金属塩などのキレート剤;ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、クロロ-およびブロモ-クレゾール、ならびにクロロ-およびブロモ-オキシレノールなどのフェノール化合物;塩化ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム化合物;2-フェニルエチルアルコールおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール;クロロブタノール;ヨードクロロヒドロキシキノリンなどのキノリン誘導体;などのバクテリオスタット、防腐剤、阻害剤などを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含む組成物は、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素アンモニウムなどのpH調整剤を含有し、必要に応じて、これらの製剤のpHを調製するために、酸または塩基が用いられ得る。得られる調剤が医薬上および化粧料上許容される限り、さまざまなpH調整剤およびpHを調整する手段が用いられ得る。ヒドロゲル組成物は、好ましくは約1~約12の範囲のpH値を有する。他の好ましい実施形態は、約3.5~約10の範囲のpH値を有し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、上記組成物は、限定されないが、その開示内容がここに引用により援用される米国特許公開公報第2004/0158941号に記載されるもののような、酸化染料、写真染料、酸性染料、中性染料、反応性染料、カチオン性染料、VAT染料、およびこれらの混合物を含む、ヘアカラーリング剤を含有してもよい。本明細書での好ましいヘアカラーリング剤は、酸化ヘアカラーリング剤である。本発明に従うヒドロゲル組成物中の酸化ヘアカラーリング剤の全体を合算したレベルは、約0.001重量%~約5重量%、好ましくは約0.01重量%~約4重量%、より好ましくは約0.1重量%~約3重量%、最も好ましくは約0.1重量%~約1重量%である。
【0097】
本発明にかかる水溶性超分茨城県下妻市江え子複合体を含む上記ヘアカラーリング組成物は、好ましくは、その開示内容がここに引用により援用される米国特許公開公報第2004/0158941号に記載されるような、無機または有機酸化剤であり得る少なくとも1つの酸化剤も含有してもよい。酸化剤は、好ましくは、組成物の約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.1重量%~約6重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%のレベルで存在する。
【0098】
さまざまな実施形態は、限定されないが、シリコーン油(ジメチコンまたはシクロメチコンなど)などのシリコーン成分、水溶性ジメチコンコポリオール(coplyols)、シリコーンエラストマー、および乳化剤シリコーンエラストマーなどを含む、追加の添加剤も含有し得る。適切なシリコーンエラストマーの例は、Shin-EtsuからのKSG、Dow-CorningからのTrefil E-505C、Trefil E-506C、DC 9506またはDC 9701の商品名で販売されるもの、および、その開示内容がここに引用により援用される米国特許第5,266,321号に記載されるものを含む。Shin-EtsuからのKSG-210、KSG-30、KSG-31、KSG-32、KSG-33、KSG-40、KSG-41、KSG-42、KSG-43、KSG-44およびKSG-710の商品名で販売されるものなどの乳化エラストマー、または、Shin Etsuにより販売されているKSP(たとえば、KSP-100、KSP-200、KSP-300)の名称で販売されている商品、および/または、その開示内容がここに引用により援用される米国特許第5,538,793号に記載されるもののような、被覆されたエラストマー。これらの商品の混合物も用いられ得る。エラストマー化合物は、存在する場合、0.01%~15%、好ましくは0.1%~10%の量で存在することが好ましい。
【0099】
本発明のさらに他の実施形態では、上記した水溶性超分子複合体を含む組成物は、固体材料、軟質または硬質ゲル、液体、スプレー、エアロゾル、ロールオン製剤、パッドに適用された製剤、膜形成製剤、およびマスクとして製剤化され、適用され得る。
【0100】
上記したような医薬組成物についての湿式法およびホットメルト加工法は、ゲル化アジュバントを添加する前、添加する同時、および/または添加した後に、化粧料活性成分および/または添加剤の1種または複数種を配合することによって化粧料活性成分を含む組成物を調製するために用いられる。
【0101】
さらに他の実施形態では、局所、粘膜および/または経口適用のための、本発明にかかる水溶性超分子複合体を含有する逆的な熱可逆性の医薬組成物および化粧料組成物を調製および送達するための方法およびキットを提供する。それは、ヒドロゲルまたは溶液、または、ヒドロゲルビヒクルを形成するために水和された固体組成物として医薬組成物および化粧品組成物を調製および提供するステップと、ヒドロゲル組成物または溶液を粘膜に適用するステップとを含む。ヒドロゲル組成物または溶液は、さまざまな薬剤および/または化粧料活性成分の徐放のために、治療および/または手入れ/美容の目的の部位に、無毒かつ薬理学的に有効な量の薬剤および/または化粧料活性成分を送達するのに十分な量で、局所および/または粘膜対象に適用される。
【0102】
上記組成物の適用できる例示的な化粧料およびパーソナルケアへの適用は、とくに限定されないが、ベビーシャンプー、ローションおよびクリームなどのベビー用品;バスオイル、タブレットおよび塩、バブルバス、バスフレグランスおよびバスカプセルなどの入浴剤;眉ペンシル、アイライナー、アイシャドー、アイローション、アイメイクアッリムーバーおよびマスカラなどのアイメイクアップ調剤;コロンおよび化粧水、パウダーおよび匂い袋などのフレグランス調剤;ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアストレートナー、パーマネントウエーブ、リンス シャンプー、トニック、整髪料および他の整容用品などの非カラーリング毛髪調剤;カラー化粧料;染毛剤、毛髪染料、ヘアシャンプー、ヘアカラースプレー、ヘアライトナーおよびヘアブリーチなどのヘアカラリング調剤;ファンデーション、粉末、脚およびボディーペイント、口紅、化粧下地、紅およびメイクアップフィクサーなどのメイクアップ調剤;歯磨きおよび口内洗浄液などの口腔衛生製品;浴用石鹸および洗浄剤、デオドラント剤、膣洗浄および女性衛生用品などの個人的衛生品;アフターシェーブローション、あごひげの軟化剤、シェービングソープ、およびプレシェーブローションなどのシェービング調剤;洗浄調剤、皮膚消毒剤、脱毛剤、顔および首の洗浄剤、体および手の洗浄剤、保湿剤、スキンフレッシュナーなどのスキンケア調剤;ならびに、日焼けクリーム、ゲルおよびローション、屋内用日焼け調剤などの日焼け調剤を含む。
【0103】
上記の化粧料組成物およびその他の組成物の調製は、化粧料産業で入手可能な、化粧料製剤の手引書および業界紙のいずれかを参照して達成され得る。これらの参照文献は、本発明にかかる水溶性超分子複合体の付加または置換により製剤に変更され得る標準的な製剤を供給する。好適な手引書として、Cosmetics and Toiletries Magazine,Vol.111(March,1996);Formulary:Ideas for Personal Care;Croda,Inc Parsippany,N.J.(1993);およびCosmeticon:Cosmetic Formulary,BASFが挙げられ、これらの全ては参照により本発明に組込まれる。化粧料組成物は、いかなる形態であってもよい。好適な形態は、固体剤形、液体、ゲル、ローション、クリーム、硬質ゲルスティック、ムース、ロールオン製剤、エアロゾルスプレー、パッドに適用された製剤、および膜形成製剤を含む。
【0104】
別段の指定がない限り、明細書および請求項で用いられる成分、反応条件などの量を表わす番号の全ては、全ての場合、「約」という用語により変更されると理解される。したがって、逆の指定がない限り、以下の明細書および添付の請求項に記載の数のパラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に依存して異なり得る近似値である。
【実施例
【0105】
以下、実施例を示して本発明の例示的な組成物の特性について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下のいずれの例においても、濃度が重量パーセント(重量%)で表し、脱イオン水を使用して製剤を作製する。特に明記しない限り、調製温度は室温(約22℃)である。
【0106】
表1に示す組成を有するクリアかつ透明なヒドロゲルは、以下の湿式処理法によって調製された。
【表1】
【0107】
まず、10℃未満の温度で撹拌しながらポロクサマー407を水に溶解した。均一な溶液を形成した後、溶液の温度を約60℃に上昇させた。この温度でサリチル酸を加えながら混合を行った。サリチル酸が完全に溶解した後、約60℃の温度で溶液を混合しながらその中にラウレス-4を滴下した。室温まで冷却した後、クリアかつ透明なゲルが得られた。
【0108】
次いで、ゲルを熱風乾燥プロセスに付して水を除去した。得られた無水物は、室温で白色のワックス状固体物であり、沈殿を生成することなく水に溶解することができ、水中の濃度によってはクリアかつ透明なゲルまたは溶液を形成することができる。
【0109】
表2に示す組成を有する白色のワックス状固体は、以下のホットメルト加工法によって調製された。
【表2】
【0110】
ホットメルト加工法は以下を含んでいる。
【0111】
まず、撹拌しながらポロクサマー407を約55~120℃に加熱した。その後、サリチル酸を約60分間撹拌しながら添加した。最後に、同じ温度で約60分間攪拌しながらラウレス-4を添加した。組成物を冷却して、白色のワックス状固体が得られた。
【0112】
ホットメルト加工法において水を添加していないため、得られたワックス状生成物は無水物、または、少なくとも水含有量の少ないものであった。ホットメルト法によって得られたワックス状物は、目に見える沈殿を生成するなく水に再溶解することができ、溶液の濃度によってクリアかつ透明なゲルまたは溶液を形成することができる、と見出した。
【0113】
表3に示す組成を有する2つの別個のクリアかつ透明なヒドロゲルを調製した。その内の一つは溶液法によって調製し、もう一つはホットメルト加工法によって調製した。
【表3】
【0114】
上記溶液法は以下を含んでいる。
【0115】
まず、10℃未満の温度で撹拌しながらポロクサマー407を水に溶解した。均一な溶液を形成した後、溶液を約60℃に加熱させた。次に、ポリマー溶液に、約60分間撹拌しながら、結合性ゲル化アジュバントとしてラウレス-4を添加した。得られたヒドロゲルは24℃のゾル-ゲル転移温度を有する。
【0116】
上記ホットメルト加工法は以下を含んでいる。
【0117】
まず、ポロクサマー407を約55~120℃の温度でビーカー中で攪拌しながら40~60分間加熱した。その後、この温度でラウレス-4を添加してさらに60分間攪拌した。室温まで冷却した後、白色のワックス状固体が得られた。
【0118】
約2.04gのワックス状物を60~65℃の温度で約10.3gの水に撹拌しながら溶解し、ポロクサマー407の濃度が溶液法に従って調製したヒドロゲルと同じである溶液を調製した。完全に溶解した後、混合物を室温に冷却して、溶液法に従って調製したヒドロゲルと同様な、24℃のゾル-ゲル転移温度を有するヒドロゲルが得られた。
【0119】
興味深いことに、ホットメルト加工法により調製されたワックス状物は、加熱すると水に容易に溶解し、クリアかつ透明な溶液またはゲルを形成することが観察された。したがって、超分子複合体はポロクサマー407と異なって、それ自身が20℃未満の温度の冷水に溶解し易いことが知られている。
【0120】
塩酸テルビナフィンを含み、且つ表4に示す組成を有する2つの別個のクリアかつ透明なヒドロゲルを調製した。その内の一つは溶液法によって調製し、もう一つはホットメルト加工法により得られた後、水に溶解して調製した。
【表4】
【0121】
溶液法
【0122】
まず、10℃未満の温度で撹拌しながらポロクサマー407、水、プロピレングリコール及びPEG-400を混合して、均一な溶液を形成した。その後、温度を55~60℃に上昇させ、サリチル酸を完全に溶解するまで撹拌しながら添加した。55~60℃の温度で塩酸テルビナフィンを加え、溶解するまで攪拌した。その後、同様に55~60℃の温度でメントールを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。最後に、55~60℃の温度でラウレス-4を添加し、クリア且つ透明な溶液が得られるまで撹拌した。溶液を室温まで冷却して、透明なゲルが得られた。
【0123】
ホットメルト加工法
【0124】
ポロクサマー407、プロピレングリコール及びPEG-400の混合物を約55~120℃の温度でビーカー中で攪拌しながら60分間混合した。その後、同じ温度を維持したままサリチル酸を添加し、50分間攪拌した。次に、55~120℃の温度で塩酸テルビナフィンを加え、50分間攪拌した後、55~120℃の温度でメントールを添加し、攪拌しながら10分間保持した。最後に、55~120℃の温度でラウレス-4を添加し、40分間攪拌した。室温まで冷却したところ、白色の柔らかいワックス状物が得られた。
【0125】
ホットメルト加工法によって得られた材料を攪拌しながら約55~60℃で加熱して、水に溶解させ、溶液法によって得られたヒドロゲルと似ているようなクリア且つ透明なヒドロゲルが得られた。溶液法およびホットメルト法によって得られたヒドロゲルは同じ特性を有することが観察された。したがって、超分子複合体はどちらの方法によっても形成することができる。
【0126】
上記実施例における結果および観察からは、以下のことが分かる。ホットメルト法によって、または複合体を含む溶液またはゲル組成物から水を除去した後のにおいては、活性成分を含有する超分子複合体が無水形態で得られる。当該無水形態は、水に再溶解することができ、溶液の濃度によってクリアかつ透明なゲルまたは溶液を形成することができる。したがって、超分子複合体の水和および脱水は、完全に可逆的なプロセスであり得る。
【0127】
上記結果は、さらに以下のことが示唆される。超分子複合体、または、分子間複合体の非共有結合による自己組織は、ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407)、結合性ゲル化アジュバント(例えば、ラウレス-4)、及び活性成分(例えば、サリチル酸)の間の超分子化学作用によって形成される。複合体は、柔らかいワックス状物またはペースト状物から硬質ワックス状物までの無水形態のものであってもよく、そして容易に水に再溶解してクリアかつ透明なゲルまたは溶液を形成することができる。