IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-中間体の製造方法 図1
  • 特許-中間体の製造方法 図2
  • 特許-中間体の製造方法 図3
  • 特許-中間体の製造方法 図4
  • 特許-中間体の製造方法 図5
  • 特許-中間体の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/10 20060101AFI20230830BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C07D413/10
C07D413/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019059673
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158443
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000207252
【氏名又は名称】ダイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】飛弾 政宏
(72)【発明者】
【氏名】大渡 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】伏間 貴士
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/121436(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103724336(CN,A)
【文献】特表2007-517816(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩の製造方法であって、アセトニトリルまたはアセトン中、2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオンと10~20当量のメチルアミンとを反応させ、塩酸の添加により2層分離した溶液から粒子径がD 50 =15~45μmおよびD 90 =30~90μmである4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
次の工程1および工程2を含むリバーロキサバンの製造方法;
工程1:アセトニトリルまたはアセトン中、2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオンと10~20当量のメチルアミンとを反応させ、塩酸の添加により2層分離した溶液から粒子径がD 50 =15~45μmおよびD 90 =30~90μmである4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩を得る工程;
工程2:4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩と、5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸を縮合させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバーロキサバンの製造中間体の新規な製造方法、並びにそれを用いたリバーロキサバンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リバーロキサバン(Rivaroxaban:JAN)は、化学名が5-クロロ-N-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(オキソモルホリン-4-イル)フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)チオフェン-2-カルボキサミドとして、下記化学式(IV)で示される化合物であり、選択的直接作用型第Xa因子阻害剤として、商品名:イグザレルト(登録商標)で臨床的に使用されている医薬品である。
【0003】
従来のリバーロキサバン(IV)の製造方法としては、下記化学式:
【0004】
【化1】
【0005】
に示すように、アルコール溶媒中で2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)とメチルアミン水溶液とを反応させ、フタルイミド基を除去し、塩酸塩化して、リバーロキサバン(IV)の中間体である4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)を得たのち、次いで5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸(III)と縮合する反応により製造されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、この従来法で得られる式(II)の中間体化合物は、その結晶の粒子径が、D50=8μm、D90=14μmと微細な結晶であることから、ろ過性が非常に悪いものである。したがって、ろ過または遠心分離に長時間を要し、操作性の面で工業的には不利である。
また、ろ過性の悪さゆえに、固液分離した結晶について、溶媒による振り掛け洗浄効果が低下して、その結果、上記の反応で副生するメチルアミン塩酸塩が残存することにより、次工程の反応に悪影響を与えている。
【0007】
すなわち、次工程は式(II)の中間体化合物と、式(III)の5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸を縮合させ、目的とするリバーロキサバン(IV)を得る反応であるが、この反応において、メチルアミン塩酸塩が残存している場合には、メチルアミン塩酸塩と式(III)の化合物が優先的に反応するために、式(II)の中間体化合物と式(III)の化合物が十分に反応することができず、リバーロキサバン(IV)の収率が大幅に低下する。
また、反応に付されなかった式(II)の中間体化合物、並びにメチルアミン塩酸塩と式(III)の化合物との反応縮合物が残存しており、リバーロキサバン(IV)の品質が低下する。
【0008】
特に式(II)の中間体化合物は、リバーロキサバン(IV)の精製工程においても除去することが困難であり、リバーロキサバン(IV)の品質に重大な影響を与える。
そのために、従来のリバーロキサバン(IV)の製造方法においては、これらの問題を回避するために、式(III)の化合物の当量を大過剰としなければならない。
したがって、従来の製法は、リバーロキサバン(IV)の品質及び生産性並びに環境負荷の面において工業化に大きな問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第53111742号掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来のリバーロキサバンの製造方法における問題点を解決したリバーロキサバンの製造方法を提供するものであり、特に、製造中間体である式(II)の中間体化合物を、操作性に優れた工業的な規模で製造し得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、アルコール以外の水混和性有機溶媒中、2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)にメチルアミンを反応させ、反応の終了後、例えば、塩酸を添加することにより反応液を2層分離した溶液から4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)を析出させることにより、得られる式(II)の中間体化合物の結晶の粒子が操作性に優れたものであり、従来の製法の問題点が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明は、その基本的態様は、4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)の製造方法であって、アルコール以外の水混和性有機溶媒中、2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)とメチルアミンとを反応させ、2層分離した反応液から4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)を得ることを特徴とする製造方法である。
【0013】
より具体的には、アルコール以外の水混和性有機溶媒が、アセトニトリルまたはアセトンである、上記の製造方法である。
【0014】
特に、本発明の製造方法により得られる式(II)の中間体化合物である4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩の粒子径が、D50=15~45μmである上記の製造方法であり、なかでも、式(II)の中間体化合物の粒子径が、D90=30~90μmである製造方法である。
【0015】
また、本発明は別の態様として、得られた式(II)の中間体化合物と式(III)の5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸を縮合させてなるリバーロキサバン(IV)の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、アルコール以外の水混和性有機溶媒中、2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)にメチルアミンを反応させ、反応の終了後、たとえば、塩酸の添加により反応液を2層分離した溶液から4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)を析出させることにより、ろ過性の良好な結晶が得られる。
【0017】
その結晶の粒子径は、D10=7~20μm、D50=15~45μm、D90=30~60μmであり、従来の製法により得られる結晶(D10=4μm、D50=8μm、D90=14μm)と比較して粗く、重質である。
したがって、本発明により、式(II)の中間体化合物のろ過及び遠心分離が極めて容易となり、固液分離に要する時間が大幅に短縮される。
【0018】
また、固液分離時に式(II)の中間体化合物の結晶を溶媒で振り掛け洗浄する際に、メチルアミン塩酸塩の除去性が格段に向上し、式(II)の中間体化合物に残存するメチルアミン塩酸塩を低減できる。
これにより、次工程において、式(II)の中間体化合物と式(III)の化合物を十分に反応させることができ、式(III)の化合物を過剰に使用することなく、リバーロキサバン(IV)の収率を大幅に向上させることが可能となる。
【0019】
このように、式(II)の中間体化合物と式(III)の化合物が十分に反応することにより、メチルアミン塩酸塩と式(III)の化合物との反応縮合物の生成が抑制され、リバーロキサバン(IV)に残存する式(II)の中間体化合物を低減することも可能となる。
したがって、リバーロキサバン(IV)の品質が向上し、過度の精製が不要となるなど、操作性の面でも優れたものである。
以上より、リバーロキサバン(IV)並びにその中間体である式(II)の中間体化合物の製造の工業化において、本発明の貢献は多大である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で得られた式(II)の中間体化合物の1H-NMRスペクトルである。
図2】実施例2で得られた式(II)の中間体化合物の1H-NMRスペクトルである
図3】比較例1(従来法)で得られた式(II)の中間体化合物の1H-NMRスペクトルである。
図4】実施例1で得られた式(II)の中間体化合物の電子顕微鏡写真である。
図5】実施例2で得られた式(II)の中間体化合物の電子顕微鏡写真である。
図6】比較例1で得られた式(II)の中間体化合物の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記したとおり、本発明は、アルコール以外の水混和性有機溶媒中、式(I)で示される2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオンと、メチルアミンとを反応させ、2層分離した反応液から式(II)で示される4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩を得る製造方法である。
【0022】
反応溶媒として用いるアルコール以外の水混和性有機溶媒としては、アセトニトリルまたはアセトンが好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
また、メチルアミンとしては、例えば、40%メチルアミン水溶液を用いることができ、その使用量は、式(I)の2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオンに対して10~20当量が好ましい。
【0023】
反応溶媒の使用量は、反応の終了後に添加する、例えば塩酸によって反応液が均一系から2層に分離する程度の量であり、2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)に対して、5~10倍量(v/w)が好ましく、7~8倍量(v/w)がより好ましい。
【0024】
反応温度は特に限定されるものではないが、30~50℃が好ましく、35~45℃がより好ましい。
また、反応時間も特に限定されるものではないが、1~10時間、好ましくは1~5時間程度で十分である。
【0025】
反応終了後、反応液を2層分離するために添加される、例えば塩酸はどのような濃度であっても使用することが可能であるが、反応系内の溶媒量の削減の観点から20%(w/w)以上の濃度が好ましく、濃塩酸がより好ましい。
塩酸の添加により調節するpHは0.9~6.2が好ましく、5.0~6.0がより好ましい。
【0026】
反応液の2層分離により、得られた式(II)の中間体化合物の固液分離の際に、振り掛け洗浄に使用する溶媒としては、メタノールが好ましい。
かくして、反応終了後の反応液の2層分離により、式(II)の中間体化合物が固液分離され、その結果、得られた式(II)の中間体化合物の結晶の粒子径は、D10=7~20μm、D50=15~45μm、D90=30~60μmであり、固液分離化が極めて容易であると共に、メタノールの振り掛け洗浄により、副生成物の含有量がきわめて少ない、純度の良い式(II)の中間体化合物を製造することができる。
【0027】
本発明にあっては、かくして製造された式(II)の中間体化合物と、式(III)の5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸を縮合させてリバーロキサバン(IV)が製造されるが、かかる製造は、具体的には、例えば、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒中、縮合剤としての1,1’―カルボジイミダゾールの存在下、両者を加熱撹拌することで、目的とするリバーロキサバン(IV)を効率よく製造することができる。
リバーロキサバンの反応液からの取得は、反応液を冷却し、反応生成物を固液分離し、精製水で洗浄することにより、得ることができる。
【0028】
得られたリバーロキサバン(IV)は、式(II)の中間体化合物の純度が極めて高いものであることから、副生物として生じるメチルアミン塩酸塩と式(III)の5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸との反応縮合物、或いは、未反応の式(II)の中間体化合物の含有量は極めて少ないものであり、適宜再結晶等の精製手段を施すことにより、医薬品原体としての純度が確保されたリバーロキサバン(IV)を調製することができる。
【実施例
【0029】
以下に、実施例、比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
なお、以下の実施例、比較例において測定した1H-NMRスペクトル、粒度分布、電子顕微鏡写真、並びにHPLCの測定機種及び測定条件は、以下のとおりである。
【0031】
<1H-NMR>
機種:AVHD400(BRUKER)
周波数:400MHz
核種:1H
測定溶媒:D
積算回数:16
温度:23℃
【0032】
<粒度分布計>
機種:MT3000II(Microtrac)
分散媒:水
サンプル濃度:50mg/20mL
【0033】
<電子顕微鏡>
機種:VE-9800(KEYENCE)
拡大倍率:200倍
【0034】
<HPLC>
機種:Shimadzu LC-2010HT
カラム:YMC Pack-Ph 250mm×4.6mm×5μm
移動相:KHPO 1.36gを水1Lに溶かし、1N KOH水溶液を加えてpH 6.0に調整した液:アセトニトリル=75:25
分析時間:60分
測定波長:250nm
流速:1.0ml/min
カラム温度:25℃
注入量:10μL
【0035】
実施例1:式(I)の化合物と、メチルアミン水溶液との反応による式(II)の中間体化合物の製法(アセトニトリル溶媒中)
2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)1,410gを、アセトニトリル10.6Lに懸濁し、メチルアミン(40%水溶液)2.89Lを添加した。次いで、反応液を40℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。反応混合物を33℃に冷却後、約2.64Lの濃塩酸を、pHが5.7になるまで添加した。このとき、溶液が2層に分離し、生成物が結晶化し始めた。5℃に冷却後、沈殿した反応生成物を固液分離し、メタノールで洗浄し、次いで乾燥させ、目的とする式(II)の中間体化合物を得た(収量:933g,収率:84.4%)。
得られた式(II)の中間体化合物の1H-NMRスペクトルを図1に示し、電子顕微鏡写真を図4に示した。また、粒子径は、D10=13μm、D50=31μm、D90=61μmであった。
なお、1H-NMRスペクトル(図1)において、2.5ppm付近に見られるシグナルが、メチルアミン塩酸塩の水素原子に基づくシグナルである(以下、図2及び3において同じ)。
【0036】
実施例2:式(I)の化合物と、メチルアミン水溶液との反応による式(II)の中間体化合物の製法(アセトン溶媒中)
2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)10.0gを、アセトン75.0mLに懸濁し、メチルアミン(40%水溶液)20.5mLを添加した。次いで、反応液を40℃に加熱し、この温度で5時間撹拌した。その後、約18.0mLの濃塩酸を、pHが1.9になるまで添加した。このとき、溶液が2層に分離し、生成物が結晶化し始めた。5℃に冷却後、沈殿した反応生成物を固液分離し、メタノールで洗浄し、次いで乾燥させ、目的とする式(II)の中間体化合物を得た(収量:4.99g,収率:64.2%)。
得られた式(II)の中間体化合物の1H-NMRスペクトルを図2に示し、電子顕微鏡写真を図5に示した。また、粒子径は、D10=11μm、D50=34μm、D90=73μmであった。
【0037】
比較例1:式(I)の化合物と、メチルアミン水溶液との反応による式(II)の中間体化合物の製法(エタノール溶媒中:特許文献1)
2-({(5S)-2-オキソ-3-[4-(3-オキソ-4-モルホリニル)-フェニル]-1,3-オキサゾリジン-5-イル}メチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)ジオン(I)240gを、エタノール1.8Lに懸濁し、メチルアミン(40%水溶液)0.5Lを添加した。次いで、反応液を60ないし63℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。反応終了後、55ないし60℃に冷却後、約373gの希塩酸(20%(w/w))を、pHが5.7になるまで添加した。このとき、生成物が結晶化し始めた。20℃に冷却後、沈殿した反応生成物を固液分離し、メタノールで洗浄し、次いで乾燥させ、目的とする式(II)の中間体化合物を得た(収量:154g,収率:82.7%)。
得られた式(II)の中間体化合物の1H-NMRスペクトルを図3に示し、電子顕微鏡写真を図6に示した。また、粒子径は、D10=4μm、D50=8μm、D90=14μmであった。
【0038】
上記の各実施例1、2及び比較例1で得られた式(II)の中間体化合物中に残存するメチルアミン塩酸塩の量を、図1~3に示した1H-NMRスペクトルから算出し、下記表1に示した。
【0039】
表1:式(II)の中間体化合物中に残存するメチルアミン塩酸塩量(1H-NMRの積分比より計算)
【0040】
【表1】
【0041】
*:式(II)の中間体化合物のベンゼン環上の1つの水素を1として計算した。
【0042】
また、上記の各実施例1、2及び比較例1で得られた式(II)の中間体化合物の粒子径を下記表2に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
上記の表1及び表2に示した結果からも判明するように、本発明の反応溶媒にアルコール以外の水混和性有機溶媒としてアセトニトリル或いはアセトンを使用した場合には、式(II)の中間体化合物中に残存するメチルアミン塩酸塩の含有量が極めて小さなものであり、且つ図4~6からも判明するように、従来法で得られた化合物に比較して、結晶の粒子径が取り扱いし易い、重質なものであることが理解される。
【0045】
以下に、実施例1及び2並びに比較例1で得られた中間体化合物を用いたリバーロキサバン(IV)の製造を示す。
【0046】
実施例3:実施例1で得られた式(II)の中間体化合物からリバーロキサバン(IV)の製法
5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸(III)500gを、ジメチルホルムアミド7.4Lに溶解させ、1,1’-カルボニルジイミダゾール590gを添加した。25℃で30分間撹拌した後、実施例1で得られた4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)920gを添加し、34℃で4時間撹拌した。その後、同温度帯で精製水7.4Lと濃塩酸0.4Lを添加した。5℃に冷却後、沈殿した反応生成物を固液分離し、精製水で洗浄し、次いで乾燥させ、目的とするリバーロキサバン(IV)を得た(収量:1,203g,収率:96.3%)。
【0047】
得られた式(IV)のリバーロキサバン中の夾雑物の含有量:
式(II)の中間体化合物:0.03%
メチルアミン塩酸塩と式(III)の化合物との反応縮合物:0.01%
【0048】
実施例4:実施例2で得られた式(II)の中間体化合物からリバーロキサバン(IV)の製法
5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸(III)1.64gを、ジメチルホルムアミド24mLに溶解させ、1,1’-カルボニルジイミダゾール1.93gを添加した。25℃で30分間撹拌した後、実施例2で得られた4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)3.0gを添加し、34℃で4時間撹拌した。その後、同温度帯で精製水24mLと濃塩酸1.2mLを添加した。5℃に冷却後、沈殿した反応生成物を固液分離し、精製水で洗浄し、次いで乾燥させ、目的とするリバーロキサバン(IV)を得た(収量:3.78g,収率:94.7%)。
【0049】
得られた式(IV)のリバーロキサバン中の夾雑物の含有量:
式(II)の中間体化合物:0.04%
メチルアミン塩酸塩と式(III)の化合物との反応縮合物:0.01%
【0050】
比較例2:比較例1で得られた式(II)の中間体化合物からリバーロキサバン(IV)の製法
5-クロロ-2-チオフェンカルボン酸(III)47gを、ジメチルホルムアミド863mLに溶解させ、1,1’-カルボニルジイミダゾール56gを添加した。25℃で30分間撹拌した後、比較例1で得られた4-{4-[(5S)-5-(アミノメチル)-2-オキソ-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-フェニル}モルホリン-3-オン塩酸塩(II)86gを添加し、34℃で4時間撹拌した。その後、同温度帯で精製水863mLと濃塩酸46mLを添加した。5℃に冷却後、沈殿した反応生成物を固液分離し、精製水で洗浄し、次いで乾燥させ、目的とするリバーロキサバン(IV)を得た(収量:95.0g,収率:82.8%)。
【0051】
得られた式(IV)のリバーロキサバン中の夾雑物の含有量:
式(II)の中間体化合物:1.16%
メチルアミン塩酸塩と式(III)の化合物との反応縮合物:0.12%
【0052】
上記の各実施例3,4及び比較例2で得られたリバーロキサバン(IV)中の夾雑物の含有量をまとめると、下記表3のようになる。
【0053】
表3:リバーロキサバン(IV)中の夾雑物の含有量(%)
【0054】
【表3】

【0055】
上記した表3からも判明するように、本発明の製造方法により得られた中間体化合物(II)を使用することにより、品質に優れたリバーロキサバン(IV)が得られることが判明する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上記載のように、本発明の製造方法によりリバーロキサバンの製造において、取り扱いが容易な中間体化合物(II)を調製することができ、かかる中間体化合物を用いて品質の良好なリバーロキサバンを製造することができる点で、その産業上の利用性は多大なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6