(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】異常音監視システム及び異常音監視方法
(51)【国際特許分類】
G01H 3/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
G01H3/00 A
(21)【出願番号】P 2019061738
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】羽山 西蔵
(72)【発明者】
【氏名】河目 瞬
(72)【発明者】
【氏名】森口 拓雄
(72)【発明者】
【氏名】桑原 英治
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-235996(JP,A)
【文献】特開2017-037385(JP,A)
【文献】特許第5721470(JP,B2)
【文献】特開2013-131153(JP,A)
【文献】特開2008-197879(JP,A)
【文献】特開2012-156876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0086467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00- 17/00
G08B 23/00- 31/00
G08B 13/00- 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の音を集音する集音部と、
前記集音部により集音された音情報から異常音を抽出する異常音識別部と、
前記集音部により集音された音情報の音源位置を推定し、前記異常音が人間によるものである場合に前記異常音を発している人間の人数と移動方向とを推定する音源定位部と、
前記異常音識別部により抽出された前記異常音の情報と、前記音源定位部により推定された前記音源位置、前記人数、前記移動方向の情報とに基づき、前記異常音の危険度合を示す危険値を算出する異常状態判断部と、
を備え、
前記異常状態判断部は、
前記異常音識別部により抽出された前記異常音の情報に基づき基礎危険値を求め、
前記音源定位部により推定された前記異常音の前記音源位置、前記人数、
または前記移動方
向に基づき補正値を求め、
前記基礎危険値と前記補正値とを乗算して前記異常音の前記危険値を算出する、
異常音監視システム。
【請求項2】
前記異常状態判断部は、
異常音の種類を含む異常音の情報と基礎危険値とを関連付けて記憶する基礎危険値算出テーブルと、
異常音の音源位置、人数、移動方向を含む異常音の各種条件と補正値とを関連付けて記憶する補正値算出テーブルと、
前記異常音識別部により抽出された前記異常音の情報に基づき前記基礎危険値算出テーブルから抽出された前記基礎危険値と、前記音源定位部により推定された前記音源位置、前記人数、または前記移動方向に基づき前記補正値算出テーブルから抽出された前記補正値とを乗算して各異常音の前記危険値を算出する危険値算出部と、
を有する、
請求項1に記載の異常音監視システム。
【請求項3】
前記異常状態判断部は、前記算出した複数の前記危険値を積算して、複数の前記異常音を含む一連の異常事象に関する前記危険値の時間推移を算出する、
請求項1または2に記載の異常音監視システム。
【請求項4】
前記異常状態判断部により算出された前記危険値に関する情報を含む異常音報知画面を生成する画面生成部を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の異常音監視システム。
【請求項5】
建物内を撮像する撮像部に、前記異常音の発生位置を撮像させる撮像制御部を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の異常音監視システム。
【請求項6】
建物内の音を集音する集音ステップと、
前記集音ステップにて集音された音情報から異常音を抽出する異常音識別ステップと、
前記集音ステップにて集音された音情報の音源位置を推定し、前記異常音が人間によるものである場合に前記異常音を発している人間の人数と移動方向とを推定する音源定位ステップと、
前記異常音識別ステップにて抽出された前記異常音の情報と、前記音源定位ステップにて推定された前記音源位置、前記人数、前記移動方向の情報とに基づき、前記異常音の危険度合を示す危険値を算出する異常状態判断ステップと、
を含み、
前記異常状態判断ステップは、
前記異常音識別ステップにて抽出された前記異常音の情報に基づき基礎危険値を求め、
前記音源定位ステップにて推定された前記異常音の前記音源位置、前記人数、
または前記移動方
向に基づき補正値を求め、
前記基礎危険値と前記補正値とを乗算して前記異常音の前記危険値を算出する、
異常音監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常音監視システム及び異常音監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異常音の音源位置・種類を推定し、パンチルトズームカメラにて撮影し、照明で照らすことで、音の発生原因の特定を容易にする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、建物内の状況を詳細に検出する場合、様々なセンサー、カメラを多数箇所に設置する必要があった。
【0005】
本開示は、建物内の異常状態を精度良く簡易に検出できる異常音監視システム及び異常音監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る異常音監視システムは、建物内の音を集音する集音部と、前記集音部により集音された音情報から異常音を抽出する異常音識別部と、前記集音部により集音された音情報の音源位置を推定し、前記異常音が人間によるものである場合に前記異常音を発している人間の人数と移動方向とを推定する音源定位部と、前記異常音識別部により抽出された前記異常音の情報と、前記音源定位部により推定された前記音源位置、前記人数、前記移動方向の情報とに基づき、前記異常音の危険度合を示す危険値を算出する異常状態判断部と、を備え、前記異常状態判断部は、前記異常音識別部により抽出された前記異常音の情報に基づき基礎危険値を求め、前記音源定位部により推定された前記異常音の前記音源位置、前記人数、または前記移動方向に基づき補正値を求め、前記基礎危険値と前記補正値とを乗算して前記異常音の前記危険値を算出する。
【0007】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係る異常音監視方法は、建物内の音を集音する集音ステップと、前記集音ステップにて集音された音情報から異常音を抽出する異常音識別ステップと、前記集音ステップにて集音された音情報の音源位置を推定し、前記異常音が人間によるものである場合に前記異常音を発している人間の人数と移動方向とを推定する音源定位ステップと、前記異常音識別ステップにて抽出された前記異常音の情報と、前記音源定位ステップにて推定された前記音源位置、前記人数、前記移動方向の情報とに基づき、前記異常音の危険度合を示す危険値を算出する異常状態判断ステップと、を含み、前記異常状態判断ステップは、前記異常音識別ステップにて抽出された前記異常音の情報に基づき基礎危険値を求め、前記音源定位ステップにて推定された前記異常音の前記音源位置、前記人数、または前記移動方向に基づき補正値を求め、前記基礎危険値と前記補正値とを乗算して前記異常音の前記危険値を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、建物内の異常状態を精度良く簡易に検出できる異常音監視システム及び異常音監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る異常音監視システムの概要を説明する図である。
【
図2】実施形態に係る異常音監視システムの機能ブロック図である。
【
図3】基礎危険値算出テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図4】補正値算出テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図6】異常音監視システムが実施する異常音監視処理のフローチャートである。
【
図7】異常音発生ケースの一例を示す模式図である。
【
図8】
図7の異常音発生ケースに沿って異常音監視システムが算出する危険値の一覧を示す図である。
【
図9】
図8の時系列順に応じた危険値の推移を示すグラフである。
【
図10】
図8の時系列順に応じた危険値推計の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る異常音監視システム1の概要を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態に係る異常音監視システム1は、室内の様子がマイクロフォン21やカメラ22によって監視されている建物100に適用される。
【0012】
図1に示すように、異常音監視システム1は、マイクロフォン21の音情報に基づいて、建物100内の異常状態の発生を検出する。
図1の例では、建物100内に泥棒が侵入して金庫を破壊して中の貴重品を盗むケースを異常状態の一例として例示している。この場合、異常音監視システム1は、窓の近傍でガラスを割る音、窓から人が侵入する音、室内を歩く足音、金庫を破壊する騒音、などの複数の異常音が時系列で発生していることを検出し、このような異常音の組合せによって危険度を算出する。
【0013】
また、異常音監視システム1は、異常検出時には、異常音の音源位置を推定してカメラ22により音源位置を撮影して、異常音の音源位置の画像データを取得する。異常音監視システム1は、異常状態を検知した場合にその情報を警備員が携帯する情報処理端末23に送信してこの情報を画面に表示させて異常発生を報知する。また、このとき、カメラ画像も併せて情報処理端末23に出力する。
【0014】
図2は、実施形態に係る異常音監視システム1の機能ブロック図である。
図1に示すように、異常音監視システム1は、集音部2と、異常音識別部3と、音源定位部4と、異常状態判断部5と、カメラ制御部6(撮像制御部)と、画面生成部7とを備える。
【0015】
集音部2は、建物100内の音を集音する。集音部2は、具体的には、建物100内に設置されているマイクロフォン21により検出された複数の音情報を収集する。マイクロフォン21は、例えば建物100内に設置される複数のモノラルのマイクロフォンでもよいし、マルチアレイマイクロフォンでもよい。
【0016】
異常音識別部3は、集音部2により集音された音情報から異常音を抽出する。異常音識別部3は、例えば、複数種類の異常音のサンプルの情報を有しており、集音部2より収集した音声データの周波数特徴量からサンプルとの類似度を算出して、どの異常音かの識別を行うことができる。なお、異常音識別部3における日常音・異常音の識別手法には、特許第5767825号に開示されている技術を応用することができる。異常音識別部3は、異常音を識別した場合、この異常音の種類、異常音を発生している道具、発生時刻、などの情報を異常状態判断部5に出力する。
【0017】
音源定位部4は、集音部2により集音された音情報の音源位置を推定する。音源定位部4は、例えば集音部2により集音された建物100内の複数の音情報のそれぞれの音量や発生時間などの情報に基づいて音情報の音源位置を推定することができる。
【0018】
また、音源定位部4は、集音部2により集音された複数の音情報に基づき、異常音を発している人間の人数を推定できる。例えば、音情報が足音と判定できる場合に、歩行者数を算出することによって人数を推定できる。さらに、音源定位部4は、集音部2により集音された複数の音情報の時間差や振幅差を利用して、音源である歩行者の移動方向を検出できる。なお、音源定位部4における人数や移動方向の推定手法には、特許第5721470号に開示されている技術を応用することができる。
【0019】
音源定位部4は、異常音識別部3が検出した異常音の音源位置、人数、移動方向などの情報を異常状態判断部5に出力する。
【0020】
異常状態判断部5は、異常音識別部3及び音源定位部4による異常音識別結果と、時間推移から、建物内でどのようなことが起こっているかを判断する。例えば、複数の異常音を含む異常音時系列情報に基づいて、複数の異常音を含む一連の異常事象、例えば泥棒などの不審者が建物内に進入しているか否かを判断できる。この場合、異常状態判断部5は、侵入の状況を判断し、侵入者の有無、人数、道具、危険度を出力する。人数は足音の量や複数同時に検知した異常音を判断に用いる。道具(所持品)は、破壊音の種類から推定する。危険度に関しては、人数、道具、逃走状況から総合的に判断を行う。
【0021】
例えば、異常音の時系列情報と、この時系列情報に基づく異常状態判断部5の異常状態の判断結果としては下記のパターンが挙げられる。
【0022】
<例1>
・異常音時系列情報:ガラス破壊音(打ち破り)⇒窓開閉音⇒着地音(複数)⇒歩行音(複数)⇒金庫破壊音(こじ開け)⇒歩行音(複数)⇒ドア開閉音
・異常状態判断結果:複数人による侵入窃盗、バールにて金庫を狙い逃走、危険度中
【0023】
<例2>
・異常音時系列情報:ガラス破壊音(こじ破り)⇒窓開閉音⇒着地音(単数)⇒歩行音(単数)⇒ 物音(開閉音)⇒歩行音(単数)⇒物音(開閉音)
・異常状態判断結果:単数による侵入、ドライバーを所持、物色中、危険度大
【0024】
<例3>
・異常音時系列情報:ドア解錠音⇒歩行音(単数)⇒物音⇒歩行音(単数)⇒声(単数)
・異常状態判断結果:単数による侵入もしくは警備中の誤入館、鍵を所持、危険度中
【0025】
<例4>
警備員による屋内確認時の状況を判断し、警備員がもし賊と遭遇し危険な状況に陥った場合、その内容を出力する。
・異常音時系列情報:ドア解錠音⇒歩行音(単数)⇒声(悲鳴)⇒声(けんか)⇒打撃音
・異常状態判断結果:入館時における、賊との遭遇、危険度大
【0026】
本実施形態では、異常状態判断部5は、上記の機能を実現するために、異常音識別部3により抽出された異常音の情報と、音源定位部4により推定された音源位置の情報とに基づき、複数の異常音を含む一連の異常事象の危険度合を示す危険値を算出する。より詳細には、異常状態判断部5は、まず異常音情報と音源位置情報とに基づき、個々の異常音の危険度合を示す危険値を算出する。そして、算出した複数の危険値を積算して、複数の異常音を含む一連の異常事象に関する危険値の時間推移を算出する。
【0027】
異常状態判断部5は、上記の機能を実現するための要素として、基礎危険値算出テーブル8と、補正値算出テーブル9と、危険値算出部10とを有する。
【0028】
基礎危険値算出テーブル8は、異常音の種類と基礎危険値とを関連付けて記憶する。
図3は、基礎危険値算出テーブル8の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、基礎危険値算出テーブル8は、例えば、異常音の種類と、異常音の詳細と、異常音に使用された道具と、基礎危険値の各項目の情報を関連付けて記憶している。本実施形態では、異常状態判断部5が最終的に算出する危険値と区別するため、異常音単体のそれぞれに設定されている危険値を「基礎危険値」と呼ぶ。
【0029】
基礎危険値算出テーブル8では、複数種類の異常音のそれぞれに個別の基礎危険値が割り当てられる。例えば、ガラス破壊音や金属破壊音、ドリル音、悲鳴など、仮に監視員が直面した場合に危険度合が高いと思われる異常音には相対的に大きい値の基礎危険値が設定される。一方、ドア操作音や窓操作音など、仮に監視員が直面しても危険度合がさほど高くないと思われる異常音には相対的に小さい値の基礎危険値が設定される。また、無音の場合には、建物100内の状況が変化していないと思われるので、基礎危険値は0に設定される。
【0030】
また、基礎危険値算出テーブル8では、同一種の異常音でもその詳細や所持していることが想定される道具に応じて異なる基礎危険値が設定されている。例えば異常音の種類がガラス破壊音の場合には、バールやレンガ等を用いた打ち破りの音では基礎危険値が相対的に大きい値に設定され、ドライバー等を用いたこじ破りの音では相対的に小さい値に設定される。異常音の種類が声の場合には、悲鳴やけんか声では基礎危険値が相対的に大きい値に設定され、普通の会話声の場合には相対的に小さい値に設定される。
【0031】
基礎危険値算出テーブル8は、例えば、危険値算出部10によって、異常音の種類とその詳細、道具の情報に基づき、これらの情報に対応付けられている基礎危険値を抽出するのに利用される。異常音の種類とその詳細、道具の情報は、異常音識別部3によって推定された情報を用いることができる。
【0032】
補正値算出テーブル9は、異常音の各種条件と補正値とを関連付けて記憶する。
図4は、補正値算出テーブル9の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、補正値算出テーブル9は、例えば、異常音の各種条件と、条件の詳細と、重み(補正値)の各項目の情報を関連付けて記憶している。
【0033】
補正値算出テーブル9では、複数種類の条件のそれぞれに個別の補正値が割り当てられる。また、同一条件でもその条件詳細に応じて異なる補正値が設定されている。例えば、条件が人数の場合には、一人の場合には補正値は1が設定され、人数が増えるごとに補正値が増加するよう設定されている。また、条件が発生時刻の場合には、時間帯に応じて異なる補正値が設定され、例えば深夜の時間帯の補正値が相対的に高く設定される。
【0034】
危険値算出部10は、基礎危険値算出テーブル8から抽出された基礎危険値と、補正値算出テーブル9から抽出された補正値とを乗算して各異常音の危険値を算出する。また、算出した複数の危険値を積算して、複数の異常音を含む一連の異常事象に関する危険値の時間推移を算出する。
【0035】
カメラ制御部6は、カメラ22(撮像部)の動作を制御する要素であり、異常音の発生位置をカメラ22に撮像させる。カメラ22としては、例えば遠隔操作が可能なパンチルトズームカメラを用いることができる。
【0036】
画面生成部7は、異常状態判断部5により算出された危険値に関する情報を含む異常音報知画面11を生成する。画面生成部7は、生成した異常音報知画面11を監視員が携帯する情報処理端末23などの外部機器に出力して、監視員に異常事象の発生状況を報知できる。
【0037】
図5は、異常音報知画面11の一例を示す図である。
図5に示すように、異常音報知画面11には、例えば建物100の監視空間の3次元マップ上に複数の異常音の発生位置や移動推移を重畳表示するマップ表示部12と、各異常音ごとに各種情報を列挙したリスト表示部13とが含まれる。異常音報知画面11は、マップ表示部12またはリスト表示部13のいずれか一方のみを含む構成でもよい。また、異常音報知画面11は、基本画面としてマップ表示部12のみを表示して、マップ表示部12内の異常音のオブジェクトをクリックすると、リスト表示部13の情報がポップアップ表示される構成でもよい。
【0038】
また、画面生成部7は、カメラ制御部6によりカメラ22が撮像した異常音発生位置のカメラ画像も異常音報知画面11に含めることもできる。
【0039】
このように画面生成部7は、得られた異常状態や異常音源の推移を建物100の図面上に適合することで、異常状態の可視化を行うことができる。なお、画面生成部7は、画面生成に必要な情報(例えばHTMLファイルなど)を情報処理端末23に送信し、情報処理端末23が受信した情報を用いて表示画面上に異常音報知画面11を表示する構成でもよい。
【0040】
異常音監視システム1は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、データ送受信デバイスである通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータ装置や回路基板として構成することができる。上記の異常音監視システム1の各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュール等を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0041】
次に、
図6を参照して本実施形態に係る異常音監視方法を説明する。
図6は、異常音監視システム1が実施する異常音監視処理のフローチャートである。
【0042】
ステップS01では、集音部2により、建物100内の音を集音する(集音ステップ)。
【0043】
ステップS02では、異常音識別部3により、ステップS01にて集音した音情報から異常音の抽出を行い(異常音識別ステップ)、異常音を検知したか否かを判定する。異常音を検知した場合(ステップS02のYes)にはステップS03に進み、異常音を検知しない場合(ステップS02のNo)にはステップS01に戻る。異常音識別部3は、ステップS02にて検知した異常音の情報を音源定位部4と異常状態判断部5に出力する。
【0044】
ステップS03では、音源定位部4により、ステップS02にて検知した異常音の音源位置を推定する(音源定位ステップ)。
【0045】
ステップS04では、音源定位部4により、ステップS02にて検知した異常音が足音の場合に、異常音に係る人数を推定する。
【0046】
ステップS05では、音源定位部4により、ステップS02にて検知した異常音が足音の場合に、異常音に係る侵入方向を推定する。音源定位部4は、ステップS03~S05で推定した各情報を異常状態判断部5に出力する。
【0047】
ステップS06では、異常状態判断部5の危険値算出部10により、異常音の種類に基づき、基礎危険値算出テーブル8を参照して基礎危険値を抽出する。
【0048】
ステップS07では、異常状態判断部5の危険値算出部10により、異常音の発生条件に基づき、補正値算出テーブル9を参照して補正値を抽出する。
【0049】
ステップS08では、異常状態判断部5の危険値算出部10により、ステップS06にて抽出した基礎危険値と、ステップS07にて抽出した補正値とを乗算して、当該異常音の危険値を算出する(異常状態判断ステップ)。
【0050】
ステップS09では、画面生成部7により、ステップS08にて算出した危険値に関する情報を含む異常音報知画面11(
図5参照)が生成される。画面生成部7は、生成した異常音報知画面11を監視員が携帯する情報処理端末23などの外部機器に送信する。
【0051】
ステップS10では、異常音監視システム1が引き続き動作中か否かが確認される。動作中の場合(ステップS10のYes)にはステップS01に戻って引き続き異常音監視処理が継続される。システムの動作が終了する場合(ステップS10のNo)には本制御フローを終了する。
【0052】
図7~
図10を参照して、異常音監視システム1による危険値の算出例を説明する。
図7は、異常音発生ケースの一例を示す模式図である。
図7に示すように、この例での現場イメージは、店舗と事務所とがドアで繋がっている建物であって、事務所内に金庫がある。また、この例でのストーリーは、3人の賊が店舗の窓ガラスを割って(図中の1)店舗内に侵入し(図中の2)、さらにドアを開けて(図中の3)事務所に侵入し(図中の4)、事務所の金庫を破壊して(図中の5)、金庫の中身を持ち出して逃走する(図中の6,7)流れである。
【0053】
図8は、
図7の異常音発生ケースに沿って異常音監視システム1が算出する危険値の一覧を示す図である。
図8には、異常音の種類、各異常音の基礎危険値、各異常音の各種条件(発生時間、発生場所、人数、進入方向)に応じた重み補正値、重みづけ計算後の各異常音の危険値、危険値累計が、時系列順で各異常音ごとに示されている。
【0054】
図9は、
図8の時系列順に応じた危険値の推移を示すグラフである。
図9の横軸は
図8の時系列順に応じた時間推移を示す。
図9の縦軸は危険値を示す。
図8の「危険値」欄と、
図9に示すように、ストーリー序盤の賊が室内に侵入して金庫まで移動している時間帯は一定の危険値で推移し、金庫に接近するにつれて危険値が上昇し、金庫を破壊したときに危険値が最大となっている。その後、賊が逃走しはじめると危険値は負の値となって推移する。
【0055】
図10は、
図8の時系列順に応じた危険値推計の推移を示すグラフである。
図10の横軸は
図8の時系列順に応じた時間推移を示す。
図10の縦軸は危険値累計を示す。
図8の「危険値累計」欄と、
図10に示すように、危険値累計は、ストーリー序盤の賊が室内に侵入して金庫まで移動している時間帯は上昇し、金庫を破壊したときに最大となって、賊が逃走しはじめると減少し、賊が建物から逃走して無音になると一定となる。
【0056】
次に、異常音監視システム1の効果を説明する。本実施形態の異常音監視システム1は、建物内の音を集音する集音部2と、集音部2により集音された音情報から異常音を抽出する異常音識別部3と、集音部2により集音された音情報の音源位置を推定する音源定位部4と、異常音識別部3により抽出された異常音の情報と、音源定位部4により推定された音源位置の情報とに基づき、異常音の危険度合を示す危険値を算出する異常状態判断部5と、を備える。
【0057】
この構成により、集音部2により集音された音情報のみを利用して、異常音の検出と異常音に係る危険度の推定とを行うことができるので、建物100内の異常状態を精度良く簡易に検出できる。
【0058】
また、本実施形態の異常音監視システム1では、異常状態判断部5は、異常音の種類と基礎危険値とを関連付けて記憶する基礎危険値算出テーブル8と、異常音の各種条件と補正値とを関連付けて記憶する補正値算出テーブル9と、基礎危険値算出テーブル8から抽出された基礎危険値と、補正値算出テーブル9から抽出された補正値とを乗算して各異常音の危険値を算出する危険値算出部10と、を有する。
【0059】
この構成により、異常音の種類や音源位置などの情報に基づいて、基礎危険値算出テーブル8と補正値算出テーブル9を参照することにより、多様な要因を考慮して異常音の基礎危険値を高精度に算出することができ、また、適宜基礎危険値に重みづけをしてより適切な値に補正することができるので、危険度をより一層精度良く推定することができる。また、基礎危険値算出テーブル8と補正値算出テーブル9を参照して、基礎危険値と補正値とを抽出し、両者を乗算するという簡易な計算で危険値を算出できるので、より簡易に異常状態を検出できる。
【0060】
また、本実施形態の異常音監視システム1では、異常状態判断部5は、
図10を参照して説明したように、算出した複数の危険値を積算して、複数の異常音を含む一連の異常事象に関する危険値の時間推移を算出する。この構成により、異常音の時系列情報の各時点の危険度だけではなく、一連の異常音を踏まえて現時点での危険度がどの程度あるかを推定することが可能となる。このような現時点の危険度の情報は、複数の異常音を含む一連の異常事象の危険度合を総合的に判断する指標にでき、建物100の監視員の判断に有用である。
【0061】
また、本実施形態の異常音監視システム1は、異常状態判断部5により算出された危険値に関する情報を含む異常音報知画面11を生成する画面生成部7を備える。この構成により、建物100内での異常事象の発生に係る情報を可視化して建物100の監視員にわかりやすく提供することができる。建物100内の異常状態をより詳細に提供することで、監視員により迅速な対応を行わせることができる。
【0062】
また、本実施形態の異常音監視システム1は、建物内を撮像するカメラ22に、異常音の発生位置を撮像させるカメラ制御部6を備える。この構成により、異常状態発生時に異常音発生位置のカメラ画像を取得でき、取得したカメラ画像を異常音報知画面11に併せて監視員に提供すれば、異常事象の発生に係る情報をさらにわかりやすく提供することができ、これにより監視員に異常状態に対してより的確な判断をさせることができる。
【0063】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 異常音監視システム
2 集音部
3 異常音識別部
4 音源定位部
5 異常状態判断部
6 カメラ制御部(撮像制御部)
7 画面生成部
8 基礎危険値算出テーブル
9 補正値算出テーブル
10 危険値算出部
21 マイクロフォン
22 カメラ(撮像部)
23 情報処理端末
100 建物