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特許7339788蛍光体プレートの製造方法およびそれを用いた発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】蛍光体プレートの製造方法およびそれを用いた発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20230830BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20230830BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20230830BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20230830BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230830BHJP
   C01B 21/082 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C09K11/08 B
C04B35/117
C09K11/64
C09K11/61
C04B35/645
H01L33/50
C01B21/082 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019120860
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006605
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-05-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山浦 太陽
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雄起
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】江本 秀幸
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0165220(US,A1)
【文献】特開2018-172628(JP,A)
【文献】特開2012-190555(JP,A)
【文献】特開2014-201726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/
C04B 35/
C01B 21/
C01F 7/
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が0.1m/g以上10.0m/g以下であるアルミナと蛍光体とを混合し、粉末状の混合物を得る工程と、
前記粉末状の混合物を加熱する焼成工程と、を含み、
前記蛍光体が、α型サイアロン蛍光体、β型サイアロン蛍光体、SCASN蛍光体およびKSF蛍光体からなる群から選択される一種以上を含み、
前記焼成工程は、ホットプレス焼結、放電プラズマ焼結、および熱間等方加圧焼結からなる群から選ばれる加圧焼結方法を用いて、前記粉末状の混合物を加熱するものである、
蛍光体プレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程における加熱温度が1500℃以上である、蛍光体プレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程は、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行う、蛍光体プレートの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程における前記蛍光体の含有量は、前記アルミナと前記蛍光体との合計体積に対して、5Vol%以上60Vol%以下である、
蛍光体プレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光体プレートの製造方法で得られた蛍光体プレートと、発光素子とを用いて、発光装置を得る工程を含む、
発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体プレートの製造方法およびそれを用いた発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで蛍光体プレートについて様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、一例として、YAG:Ce結晶グレインと、アルミナ結晶グレインとが混在した蛍光体プレートについて記載されている(特許文献1の段落0055等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-9470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の製造方法で得られた蛍光体プレートにおいて、蛍光強度の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記特許文献1では、アルミナを主成分とする母材と蛍光体とを含む複合体からなる蛍光体プレートの製造方法について、十分に検討がなされていなかった。
本発明者は、まず焼結性を高めるため小粒子のアルミナを使用する一般的な方法を検討したが、蛍光体プレートの黒色化が進み、それに伴って蛍光強度が低下してしまう事が判明した。
【0006】
このような事情を踏まえ検討を進めた結果、適度に粒子径が大きなアルミナを使用することで、蛍光体プレートの黒色化が抑制され、蛍光強度の低下を抑制できることが分かった。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、アルミナのBET比表面積が、粒子径の適度な大きさを代替できる指標となること、そして、アルミナのBET比表面積を適切な範囲内とすることによって、蛍光体プレートの蛍光強度を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、
BET比表面積が0.1m/g以上10.0m/g以下であるアルミナと蛍光体とを含む混合物を加熱する焼成工程を含む、
蛍光体プレートの製造方法が提供される。
【0008】
また本発明によれば、
上記の蛍光体プレートの製造方法で得られた蛍光体プレートと、発光素子とを用いて、発光装置を得る工程を含む、
発光装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蛍光強度に優れた蛍光体プレートの製造方法、及びそれを用いた発光装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の蛍光体プレートの構成の一例を示す模式図である。
図2】(a)はフリップチップ型の発光装置の構成を模式的に示す断面図であり、(b)はワイヤボンディング型の発光素子の構成を模式的に示す断面図である。
図3】複合体の発光スペクトルを測定するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0012】
本実施形態の蛍光体プレートの製造方法の概要を説明する。
【0013】
蛍光体プレートの製造方法は、BET比表面積が0.1m/g以上10.0m/g以下であるアルミナと蛍光体とを含む混合物を加熱する焼成工程を含む。
【0014】
本発明者の知見によれば、適度に粒子径が大きなアルミナを使用することで、蛍光体プレートの黒色化が抑制されるため、蛍光強度の低下を抑制できること、アルミナのBET比表面積が、粒子径の適度な大きさを代替できる指標となり、その指標を上記の範囲内とすることによって、蛍光体プレートの蛍光強度を向上できることが見出された。
詳細なメカニズムは定かではないが、比較的大きな粒子径のアルミナ粉末を使用することで、小粒子と比べて焼結性が穏やかになり、黒色化が抑制される、と考えられる。
【0015】
本実施形態の蛍光体プレートの製造工程の一例について説明する。
【0016】
本実施形態の蛍光体プレートの製造方法は、アルミナ粉末と、発光中心として少なくともEu元素を含有するα型サイアロン蛍光体粉末とを混合し、混合物を得る工程(1)、アルミナ粉末とα型サイアロン蛍光体粉末との混合物を加熱して緻密な複合体を焼成する工程(2)を有することができる。
【0017】
工程(1)において、原料として用いるアルミナ粉末とα型サイアロン蛍光体粉末は、できるだけ高純度であるものが好ましく、構成元素以外の元素の不純物は0.1%以下であることが好ましい。原料粉末の混合は、乾式、湿式の種々の方法を適用できるが、原料として用いるαサイアロン蛍光体粒子が極力粉砕されず、また混合時に装置からの不純物が極力混入しない方法が好ましい。
【0018】
また、原料として用いるアルミナ粉末のBET比表面積の上限は、10.0m/g以下、好ましくは9.0m/g以下、より好ましくは8.0m/g以下、さらに好ましくは6.0m/gである。これにより、蛍光体プレートの黒色化を抑制できる。一方、アルミナ粉末のBET比表面積の下限は、0.1m/g以上、好ましくは0.5m/g以上、より好ましくは1.0m/g以上、さらに好ましくは2.0m/gである。これにより、アルミナ粉末の焼結性を高め、緻密な複合体を形成できる。
【0019】
工程(2)において、アルミナ粉末とαサイアロン蛍光体粉末との混合物を1300℃以上1700℃以下で焼成を行う。焼結工程における加熱温度は1500℃以上がより好ましい。複合体を緻密化するためには、焼成温度が高い方が好ましいが、焼成温度が高すぎると、蛍光体とアルミナが反応し蛍光体プレートの蛍光強度が低下するため、前記範囲が好ましい。
【0020】
焼成方法は常圧焼結でも加圧焼結でも構わないが、αサイアロン蛍光体の特性低下を抑制し、且つ緻密な複合体を得るために、常圧焼結よりも緻密化させやすい加圧焼結が好ましい。
【0021】
焼成工程は、加圧焼結方法を用いて混合物を加熱してもよい。
加圧焼結方法としては、ホットプレス焼結や放電プラズマ焼結(SPS)、熱間等方加圧焼結(HIP)などが挙げられる。ホットプレス焼結やSPS焼結の場合、圧力は10MPa以上、好ましくは30MPa以上が好ましく、100MPa以下が好ましい。
【0022】
焼成工程は、焼成雰囲気はαサイアロンの酸化を防ぐ目的のため、窒素やアルゴンなどの非酸化性の不活性ガス雰囲気下、もしくは真空雰囲気下で行われてもよい。
【0023】
本実施形態の蛍光体プレートの製造方法で得られた蛍光体プレートは、母材と、母材中に分散した蛍光体とを含む複合体からなる板状部材で構成される。
【0024】
蛍光体プレート中、母材の主成分がアルミナであり、蛍光体がα型サイアロン蛍光体を含んでもよい。
このような蛍光体プレートは、照射された青色光を橙色光に変換して発光する波長変換体として機能し得る。
【0025】
以下、本実施形態の蛍光体プレートについて詳述する。
【0026】
上記蛍光体プレートを構成する複合体中には、蛍光体(α型サイアロン蛍光体)と母材(アルミナ)とが混在されている。混在とは、母材(マトリックス相)となるアルミナ中に蛍光体(α型サイアロン蛍光体)が分散された状態を意味する。すなわち、複合体は、母材が構成する(多)結晶体の結晶粒間および/または結晶粒内にα型サイアロン蛍光体粒子が分散された構造を有してもよい。このα型サイアロン蛍光体粒子は、母材(アルミナ焼結体)中に均一に分散されていてもよい。
【0027】
蛍光体は、α型サイアロン蛍光体、β型サイアロン蛍光体、SCASN蛍光体およびKSF蛍光体からなる群から選択される一種以上を含んでもよい。この中でも、蛍光体は、α型サイアロン蛍光体を含むように構成されてもよい。
【0028】
蛍光体は、下記一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロン蛍光体を含んでもよい。
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)(N)16-n ・・一般式(1)
【0029】
上記一般式(1)中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く)からなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。nは、例えば、2.0以下でもよく、1.0以下でもよく、0.8以下でもよい。
【0030】
α型サイアロンの固溶組成は、α型窒化ケイ素の単位胞(Si1216)のm個のSi-N結合をAl-N結合に、n個のSi-N結合をAl-O結合に置換し、電気的中性を保つために、m/p個のカチオン(M、Eu)が結晶格子内に侵入固溶し、上記一般式のように表される。特にMとして、Caを使用すると、幅広い組成範囲でα型サイアロンが安定化し、その一部を発光中心となるEuで置換することにより、紫外から青色の幅広い波長域の光で励起され、黄から橙色の可視発光を示す蛍光体が得られる。
【0031】
一般に、α型サイアロンは、当該α型サイアロンとは異なる第二結晶相や不可避的に存在する非晶質相のため、組成分析等により固溶組成を厳密に規定することができない。α型サイアロンの結晶相としては、α型サイアロン単相が好ましく、他の結晶相としてβ型サイアロン、窒化アルミニウム又はそのポリタイポイド、CaSi、CaAlSiN等を含んでいてもよい。
【0032】
ここで、YAG蛍光体とアルミナとの組み合わせのように屈折率差が小さすぎると、光散乱がしにくくなり、青色光の透過を防ぐためには蛍光体含有率を高める必要がある。
これに対して、α型サイアロン蛍光体とアルミナとの屈折率差は適度に大きく、青色光の散乱を促し、低い蛍光体含有率で効率良く青色光の透過を抑制でき、輝度が高い橙色を発光できる、と考えられる。
各成分の屈折率の代表値として、α型サイアロン蛍光体:約2.0、YAG蛍光体:約1.8、Al:約1.7、SiO:約1.4が知られている。
【0033】
α型サイアロン蛍光体の製造方法としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及び侵入固溶元素の化合物からなる混合粉末を高温の窒素雰囲気中で加熱して反応させる方法がある。
加熱工程で構成成分の一部が液相を形成し、この液相に物質が移動することにより、α型サイアロン固溶体が生成する。合成後のα型サイアロン蛍光体は複数の等軸状の一次粒子が焼結して塊状の二次粒子を形成する。
本実施形態における一次粒子とは、粒子内の結晶方位が同一であり、単独で存在することができる最小粒子をいう。
【0034】
α型サイアロン蛍光体の平均粒子径の下限は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。一方、α型サイアロン蛍光体の平均粒子径の上限は、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。α型サイアロン蛍光体の平均粒子径は上記二次粒子における寸法である。
α型サイアロン蛍光体の平均粒子径を5μm以上とすることにより、複合体の透明性をより高めることができる。一方、α型サイアロン蛍光体の平均粒子径を40μm以下とすることにより、ダイサー等で蛍光体プレートを切断加工する際に、チッピングが生じることを抑制することができる。
【0035】
ここで、α型サイアロン蛍光体の平均粒子径とは、レーザー回析散乱式粒度分布測定法(ベックマンコールター社製、LS13-320)により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算(積算通過分率)50%の粒子径D50をいう。
【0036】
α型サイアロン蛍光体の含有量の下限は、複合体全体に対して、体積換算で、例えば、5Vol%以上、好ましくは10Vol%以上、より好ましくは20Vol%以上である。これにより、薄層の蛍光体プレートにおける蛍光強度を高めることができる。また、蛍光体プレートの光変換効率を向上できる。一方、α型サイアロン蛍光体の含有量の上限は、複合体全体に対して、体積換算で、例えば、60Vol%以下、好ましくは55Vol%以下、より好ましくは50Vol%以下である。これにより、蛍光体プレートの熱伝導性の低下を抑制できる。蛍光体の含有量や上記焼成工程における蛍光体の含有量は、α型サイアロン蛍光体の含有量の上記上限、上記下限と同様の範囲内であってもよい。
【0037】
複合体に含まれる母材は、アルミナの焼結体で構成されてもよい。焼結体中のアルミナは、可視光の吸収が少ないため、蛍光体プレートの蛍光強度を高めることができる。また、アルミナは熱伝導性が高いため、アルミナを含む蛍光体プレートにおける耐熱性を向上させることができる。さらには、アルミナは機械的強度にも優れるため、蛍光体プレートの耐久性を高めることができる。
【0038】
焼結体中のアルミナは、光の取り出し効率の観点から、不純物が少ないことが望ましい。例えば、焼結体中のアルミナにおいて、Al化合物の純度は、例えば、98%wt以上、好ましくは99%wt以上とすることができる。
【0039】
焼結体中のアルミナは、αアルミナおよびγアルミナからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これにより、蛍光体プレートの光変換効率を向上できる。
【0040】
α型サイアロン蛍光体およびアルミナの含有量の下限は、例えば、複合体全体に対して、体積換算で、95Vol%以上、好ましくは98Vol%以上、より好ましくは99Vol%以上である。つまり、これにより、耐熱性や耐久性を高められる上に、安定的な発光効率を実現できる。一方、α型サイアロン蛍光体およびアルミナの含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、複合体全体に対して、体積換算で、100Vol%以下としてもよい。
蛍光体およびアルミナの含有量や、上記焼成工程における蛍光体およびアルミナの含有量は、α型サイアロン蛍光体およびアルミナの含有量の上記上限、上記下限と同様の範囲内であってもよい。
【0041】
蛍光体プレートの熱伝導率の下限は、例えば、10W/m・K以上、好ましくは15W/m・K、より好ましくは20W/m・K以上である。これにより、高熱伝導率を実現できるため、耐熱性に優れた蛍光体プレートを実現できる。一方、上記蛍光体プレートの熱伝導率の上限は、特に限定されないが、例えば、40W/m・K以下としてもよい。
【0042】
近年、光源の高輝度化により蛍光体が高温化する傾向が知られている。このような場合でも、熱伝導率に優れた蛍光体プレートを用いることにより、高輝度の橙色を安定的に発光させることが可能である。
【0043】
蛍光体プレートの少なくとも主面、または主面および裏面の両面における表面が表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、ダイアモンド砥石等を用いた研削、ラッピング、ポリッシング等の研磨などが挙げられる。
【0044】
また、本実施形態によれば、α型サイアロン蛍光体とアルミナとを含む蛍光体プレートは、波長455nmの青色光が照射された場合、蛍光体プレートから発せられる波長変換光のピーク波長は585nm以上605nm以下となるように構成されることが好ましい。このような蛍光体プレートと青色光を発光する発光素子とを組み合わせることで、輝度が高い橙色を発光する発光装置を得ることができる。
【0045】
本実施形態の発光装置の製造方法について説明する。
【0046】
発光装置の製造方法は、上記蛍光体プレートの製造方法で得られた蛍光体プレートと、発光素子とを用いて、発光装置を得る工程を含む。
【0047】
本実施形態の発光装置は、III族窒化物半導体発光素子(発光素子20)と、III族窒化物半導体発光素子の一面上に設けられた上記の蛍光体プレート10と、を備えるものである。III族窒化物半導体発光素子は、例えば、AlGaN、GaN、InAlGaN系材料などのIII族窒化物半導体で構成される、n層、発光層、およびp層を備えるものである。III族窒化物半導体発光素子として、青色光を発光する青色LEDを用いることができる。
蛍光体プレート10は、発光素子20の一面上に直接配置されてもよいが、光透過性部材またはスペーサーを介して配置され得る。
【0048】
発光素子20の上に配置される蛍光体プレート10は、図1に示す円板形状の蛍光体プレート100(蛍光体ウェハ)を用いてもよいが、蛍光体プレート100を個片化したものを用いることができる。
図1は、蛍光体プレートの構成の一例を示す模式図である。図1に示す蛍光体プレート100の厚みとしては、例えば、100μm以上1mm以下としてもよい。蛍光体プレート100の厚みは、上記の製造工程で得られた後、研削などにより、適当に調整され得る。
なお、円板形状の蛍光体プレート100は、四角形状の場合と比べて、角部における欠けや割れの発生が抑制されるため、耐久性や搬送性に優れる。
【0049】
上記の半導体装置の一例を、図2(a)、(b)に示す。図2(a)はフリップチップ型の発光装置110の構成を模式的に示す断面図であり、図2(b)はワイヤボンディング型の発光装置120の構成を模式的に示す断面図である。
【0050】
図2(a)の発光装置110は、基板30と、半田40(ダイボンド材)を介して基板30と電気的に接続された発光素子20と、発光素子20の発光面上に設けられた蛍光体プレート10と、を備える。フリップチップ型の発光装置110は、フェイスアップ型およびフェイスダウン型のいずれの構造でもよい。
また、図2(b)の発光装置120は、基板30と、ボンディングワイヤ60および電極50を介して基板30と電気的に接続された発光素子20と、発光素子20の発光面上に設けられた蛍光体プレート10と、を備える。
図2中、発光素子20と蛍光体プレート10とは、公知の方法で貼り付けられており、例えば、シリコーン系接着剤や熱融着等の方法で貼り合わされてもよい。
また、発光装置110、発光装置120は、全体を透明封止材で封止されていてもよい。
【0051】
なお、基板30に実装された発光素子20に対し、個片化された蛍光体プレート10を貼り付けてもよい。大面積の蛍光体プレート100に複数の発光素子20を貼り付けてから、ダイシングにより、蛍光体プレート10付き発光素子20ごとに個片化してもよい。また、複数の発光素子20が表面に形成された半導体ウェハに、大面積の蛍光体プレート100を貼り付け、その後、半導体ウェハと蛍光体プレート100を一括して個片化してもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. BET比表面積が0.1m /g以上10.0m /g以下であるアルミナと蛍光体とを含む混合物を加熱する焼成工程を含む、
蛍光体プレートの製造方法。
2. 1.に記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程における加熱温度が1500℃以上である、蛍光体プレートの製造方法。
3. 1.又は2.に記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記蛍光体が、α型サイアロン蛍光体、β型サイアロン蛍光体、SCASN蛍光体およびKSF蛍光体からなる群から選択される一種以上を含む、蛍光体プレートの製造方法。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程は、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行う、蛍光体プレートの製造方法。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程は、ホットプレス焼結、放電プラズマ焼結、および熱間等方加圧焼結からなる群から選ばれる加圧焼結方法を用いて、前記混合物を加熱するものである、蛍光体プレートの製造方法。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載の蛍光体プレートの製造方法であって、
前記焼成工程における前記蛍光体の含有量は、前記アルミナと前記蛍光体との合計体積に対して、5Vol%以上60Vol%以下である、
蛍光体プレートの製造方法。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載の蛍光体プレートの製造方法で得られた蛍光体プレートと、発光素子とを用いて、発光装置を得る工程を含む、
発光装置の製造方法。
【実施例
【0053】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0054】
<蛍光体プレートの作成>
(実施例1)
実施例1の蛍光体プレートの原料として、AKP-3000(住友化学株式会社社製、BET比表面積:4.5m/g)、Ca-αサイアロン蛍光体(アロンブライトYL-600B、デンカ株式会社製、平均粒径D50:15μm)を用いた。
【0055】
アルミナ粉末を7.857g、Ca-αサイアロン蛍光体粉末を2.833g秤量し、メノウ乳鉢により乾式混合した。混合後の原料を目開き75μmのナイロン製メッシュ篩を通して凝集を解き、原料混合粉末を得た。尚、原料の真密度(アルミナ:3.97g/cm、Ca-αサイアロン蛍光体:3.34g/cm)から算出した配合比は、アルミナ:Ca-αサイアロン蛍光体=70:30体積%である。
【0056】
約11gの原料混合粉末をカーボン製下パンチをセットした内径30mmのカーボン製ダイスに充填し、カーボン製上パンチをセットし、原料粉末を挟み込んだ。尚、原料混合粉末とカーボン治具の間には固着防止のために、厚み0.127mmのカーボンシート(GraTech社製、GRAFOIL)をセットした。
【0057】
この原料混合粉末を充填したホットプレス治具をカーボンヒーターの多目的高温炉(富士電波工業株式会社製、ハイマルチ5000)にセットした。炉内を0.1Pa以下まで真空排気し、減圧状態を保ったまま、上下パンチを55MPaのプレス圧で加圧した。加圧状態を維持したまま、毎分5℃の速さで1600℃まで昇温した。1600℃に到達後、加熱を止め、室温まで徐冷し、除圧した。その後、外径30mmの焼成物を回収し、平面研削盤と円筒研削盤を用いて、外周部を研削し、直径25mm、表1に記載のプレート厚みを有する円板状の蛍光体プレートを得た。
【0058】
なお、アルミナ粉末のBET比表面積は、JIS Z 8830:2013に基づいて測定した。
実施例1の蛍光体プレートのかさ密度をJIS-R1634:1998に準拠した方法により測定したところ、3.729g/cmであった。原料の真密度と配合比から算出した混合物の理論密度が3.781g/cmであるので、実施例1の蛍光体プレートの相対密度は98.%であった。
実施例1の蛍光体プレートを研磨してSEM観察を実施した結果、アルミナマトリックス相の間にCa-αサイアロン蛍光体粒子が分散した状態が観察された。
【0059】
(実施例4)
アルミナ粉末を、AKP-20(住友化学株式会社社製、BET比表面積:4.3m/g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に記載のプレート厚みを有する円板状の蛍光体プレートを得た。
【0060】
(実施例5)
アルミナ粉末を、AA-03(住友化学株式会社社製、BET比表面積:5.2m/g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に記載のプレート厚みを有する円板状の蛍光体プレートを得た。
【0061】
(比較例1)
アルミナ粉末を、TM-DAR(大明化学工業株式会社製、BET比表面積:14.5m/g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に記載のプレート厚みを有する円板状の蛍光体プレートを得た。
【0062】
(比較例2)
アルミナ粉末を、AKP-53(住友化学株式会社社製、BET比表面積:11.7m/g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に記載のプレート厚みを有する円板状の蛍光体プレートを得た。
【0063】
【表1】
【0064】
得られた蛍光体プレートについて、以下の評価項目に基づいて評価を行った。
【0065】
[結晶構造解析]
実施例1~3の蛍光体プレートについて、X線回折装置(製品名:UltimaIV、リガク社製)を用いて回折パターンを測定した結果、アルミナ焼結体に結晶相が存在することを確認した。この結晶相には、主相としてαアルミナおよびCa-αサイアロン蛍光体が含まれており、僅かにγアルミナが混在していることが分かった。
【0066】
[光学特性の評価]
各実施例・各比較例で得られた蛍光体プレートについて、以下の手順に従って蛍光強度を測定した。
蛍光体プレートの光学特性は、チップオンボード型(COB型)のLEDパッケージ130を用いて測定した。図3は、蛍光体プレート100の発光スペクトルを測定するための装置(LEDパッケージ130)の概略図である。
まず、各実施例・各比較例の蛍光体プレート100、凹部70が形成されたアルミ基板(基板30)を用意した。凹部70の底面の径φを13.5mmとし、凹部70の開口部の径φを16mmとした。
次いで、基板30の凹部70の内部に、青色発光光源として青色LED(発光素子20)を実装した。
その後、基板30の凹部70の開口部を塞ぐように、青色LEDの上部に円形状の蛍光体プレート100を設置し、図3に示す装置(チップオンボード型(COB型)のLEDパッケージ130)を作製した。
【0067】
全光束測定システム(HalfMoon/φ1000mm積分球システム、大塚電子株式会社製)を用いて、作製したLEDパッケージ130の青色LEDを点灯した時の、蛍光体プレート100の表面における発光スペクトルを測定した。
【0068】
得られた発光スペクトルにおいて、波長が585nm以上605nmである橙色光(Orange)の蛍光強度の最大値(W/nm)を求めた。表1には、蛍光強度の最大値について、実施例1を100%として規格化ときの、他の実施例・比較例の相対値(%)を示す。
【0069】
実施例1~3の蛍光体プレートは、比較例1,2と比べて蛍光強度に優れることが示された。
【符号の説明】
【0070】
10 蛍光体プレート
20 発光素子
30 基板
40 半田
50 電極
60 ボンディングワイヤ
70 凹部
100 蛍光体プレート
100 発光装置
120 発光装置
130 LEDパッケージ
図1
図2
図3