(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】アンカー及びアンカー施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
E04B1/41 503Z
(21)【出願番号】P 2019123303
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022389
【氏名又は名称】サンコーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 昌久
(72)【発明者】
【氏名】本田 諭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】小瀬 喜巳
(72)【発明者】
【氏名】川田 真也
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】神谷 陽介
(72)【発明者】
【氏名】長原 智樹
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082478(JP,A)
【文献】国際公開第2018/177675(WO,A1)
【文献】実開昭61-163854(JP,U)
【文献】実開平02-130905(JP,U)
【文献】特開2019-078128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の穿孔に挿入された状態で拡開される先端部と、後端側から注入された樹脂材料を前記先端部側から吐出するための流路となる中空部を有するアンカー本体と、
前記アンカー本体の先端部に取り付けられており、そのアンカー本体とともに前記穿孔に挿入される穿孔封止部材と、
前記穿孔に挿入された前記アンカー本体の先端部を拡開させるための拡開部材と、
を備えたアンカーであって、
前記穿孔封止部材は、前記穿孔に挿入される際にその穿孔の孔壁に摺接する大きさを有するように構成されて
おり、前記穿孔封止部材が前記穿孔の奥に詰め込まれた状態で、
その穿孔の奥の空隙に繋がる孔端を塞ぐように構成されていることを特徴とするアンカー。
【請求項2】
所定の穿孔に挿入された状態で拡開される先端部と、後端側から注入された樹脂材料を前記先端部側から吐出するための流路となる中空部を有するアンカー本体と、
前記アンカー本体の先端部に取り付けられており、そのアンカー本体とともに前記穿孔に挿入される穿孔封止部材と、
前記穿孔に挿入された前記アンカー本体の先端部を拡開させるための拡開部材と、
を備えたアンカーであって、
前記穿孔封止部材は、前記穿孔に挿入される際にその穿孔の孔壁に摺接する大きさを有するように構成されていることを特徴とするアンカー。
【請求項3】
前記穿孔封止部材は、弾性変形可能な材料により形成されており、前記穿孔の径よりも大きな径を有する円柱形状をなしていることを特徴とする請求項1
又は2に記載のアンカー。
【請求項4】
前記穿孔封止部材には、前記アンカー本体の延在方向に貫入している芯材が設けられて
おり、
前記芯材は、前記アンカー本体の先端部に取り付けられている前記穿孔封止部材の姿勢を維持するように構成されていることを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載のアンカー。
【請求項5】
所定の穿孔の孔壁に摺接する穿孔封止部材をその穿孔の奥に詰め込
み、その穿孔の奥の空隙に繋がる孔端を塞ぐ第1工程と、
後端側から注入された樹脂材料を先端部側から吐出するための流路となる中空部を有するアンカー本体を前記穿孔に挿入する第2工程と、
前記穿孔に挿入された前記アンカー本体の先端部を拡開し、拡開した先端部を前記穿孔の孔壁に押し付ける第3工程と、
前記中空部を通じて前記穿孔内に樹脂材料を充填する第4工程と、
を有することを特徴とするアンカー施工方法。
【請求項6】
前記アンカー本体を前記穿孔に挿入する際に、前記穿孔封止部材を前記アンカー本体の先端部に当接させて前記穿孔の奥に詰め込むことで、前記第1工程と前記第2工程が同時に実施されることを特徴とする請求項
5に記載のアンカー施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー及びアンカー施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートやモルタル、石材、ブロック、レンガ等で形成された構造体(例えばトンネル)を保守管理するにあたり、その構造体の壁面や天井面に被固定物(例えば当て板)を固定することがあり、その固定作業にアンカーを用いることがある。
構造体の壁面にアンカーを設置する技術として、構造体の壁面に穿孔を形成し、その穿孔に中空部を有するアンカーを挿入して一次定着させた後、アンカーの中空部を通じて穿孔内に樹脂材料を注入して、穿孔とアンカーの隙間に穿孔の奥側から樹脂材料を充填し、その樹脂材料を硬化させて二次定着させるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、構造体がブロックやレンガで形成されている場合、ブロックやレンガの継ぎ目の目地材が劣化するなどして欠損することがあり、目地材が欠損したことによる空隙が構造体の内部に生じていることがある。
そして、上記特許文献1の技術のようにアンカーを設置する際に、穿孔の奥と空隙とが繋がってしまった場合、穿孔に注入した樹脂材料がその空隙に流れ込んでしまうことが問題になる。
穿孔の奥の空隙に樹脂材料が流れ込んでしまうと、穿孔の奥で樹脂材料の流れを好適に反転させられず、穿孔とアンカーの隙間に樹脂材料を適切に充填できないことがあり、所定の引張耐力(引抜耐力)を有するアンカーの設置が困難になることがある。
【0005】
本発明の目的は、所定の耐力を有するように好適に設置できるアンカー及びアンカー施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、
所定の穿孔に挿入された状態で拡開される先端部と、後端側から注入された樹脂材料を前記先端部側から吐出するための流路となる中空部を有するアンカー本体と、
前記アンカー本体の先端部に取り付けられており、そのアンカー本体とともに前記穿孔に挿入される穿孔封止部材と、
前記穿孔に挿入された前記アンカー本体の先端部を拡開させるための拡開部材と、
を備えたアンカーであって、
前記穿孔封止部材は、前記穿孔に挿入される際にその穿孔の孔壁に摺接する大きさを有するように構成されており、前記穿孔封止部材が前記穿孔の奥に詰め込まれた状態で、
その穿孔の奥の空隙に繋がる孔端を塞ぐように構成されているようにした。
また、上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、
所定の穿孔に挿入された状態で拡開される先端部と、後端側から注入された樹脂材料を前記先端部側から吐出するための流路となる中空部を有するアンカー本体と、
前記アンカー本体の先端部に取り付けられており、そのアンカー本体とともに前記穿孔に挿入される穿孔封止部材と、
前記穿孔に挿入された前記アンカー本体の先端部を拡開させるための拡開部材と、
を備えたアンカーであって、
前記穿孔封止部材は、前記穿孔に挿入される際にその穿孔の孔壁に摺接する大きさを有するように構成されているようにした。
【0007】
かかる構成のアンカーであれば、穿孔の孔壁に摺接するサイズの穿孔封止部材を穿孔の奥に詰め込むことができ、穿孔の奥に空隙がある場合にその空隙に繋がる空間を塞ぐことができるので、アンカー本体の先端部側から吐出して、穿孔の奥から充填していく樹脂材料を穿孔とアンカー本体の隙間に良好に充填することができる。
穿孔とアンカー本体の隙間に樹脂材料を良好に充填することができれば、穿孔に対してアンカー本体を強固に定着させることができるので、所定の耐力を有するようにアンカーを好適に設置することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記穿孔封止部材は、弾性変形可能な材料により形成されており、前記穿孔の径よりも大きな径を有する円柱形状をなしているようにする。
【0009】
穿孔の径よりも大きな径を有する円柱形状の穿孔封止部材が弾性変形可能であれば、その穿孔封止部材を穿孔に挿入する際に穿孔の孔壁に密着させ易く、好適に摺接させることができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記穿孔封止部材には、前記アンカー本体の延在方向に貫入している芯材が設けられており、
前記芯材は、前記アンカー本体の先端部に取り付けられている前記穿孔封止部材の姿勢を維持するように構成されているようにする。
【0011】
穿孔封止部材がアンカー本体の先端部に押されて穿孔の奥に詰め込まれる際、穿孔封止部材は穿孔の孔壁に摺接するため、穿孔封止部材が傾くなど姿勢を乱し易いが、芯材が設けられている穿孔封止部材であれば、アンカー本体の先端部に取り付けられた姿勢を維持することができ、所定の姿勢を維持した穿孔封止部材を穿孔の奥に詰め込むことができる。
【0012】
また、本出願に係る他の発明は、アンカー施工方法であって、
所定の穿孔の孔壁に摺接する穿孔封止部材をその穿孔の奥に詰め込み、その穿孔の奥の空隙に繋がる孔端を塞ぐ第1工程と、
後端側から注入された樹脂材料を先端部側から吐出するための流路となる中空部を有するアンカー本体を前記穿孔に挿入する第2工程と、
前記穿孔に挿入された前記アンカー本体の先端部を拡開し、拡開した先端部を前記穿孔の孔壁に押し付ける第3工程と、
前記中空部を通じて前記穿孔内に樹脂材料を充填する第4工程と、
を有するようにした。
【0013】
かかる構成のアンカー施工方法であれば、穿孔の孔壁に摺接するサイズの穿孔封止部材を穿孔の奥に詰め込むことができ、穿孔の奥に空隙がある場合にその空隙に繋がる空間を塞ぐことができるので、アンカー本体の先端部側から吐出して、穿孔の奥から充填していく樹脂材料を穿孔とアンカー本体の隙間に良好に充填することができる。
穿孔とアンカー本体の隙間に樹脂材料を良好に充填することができれば、穿孔に対してアンカー本体を強固に定着させることができるので、所定の耐力を有するようにアンカーを好適に設置することができる。
【0014】
また、望ましくは、
前記アンカー本体を前記穿孔に挿入する際に、前記穿孔封止部材を前記アンカー本体の先端部に当接させて前記穿孔の奥に詰め込むことで、前記第1工程と前記第2工程が同時に実施されるようにする。
【0015】
こうすることで、穿孔の奥に穿孔封止部材を詰め込む作業と、アンカー本体を穿孔に挿入する作業をあわせて行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。
つまり、穿孔封止部材がアンカー本体とともに穿孔に挿入されるように、穿孔封止部材をアンカー本体の先端部に取り付けておけば、穿孔の奥に穿孔封止部材を詰め込む作業と、アンカー本体を穿孔に挿入する作業をあわせて行うことができる。
また、穿孔封止部材をアンカー本体の先端部に取り付けることができなくても、アンカー本体の先端部で穿孔封止部材を穿孔の奥に押し込んで詰め込むようにすれば、穿孔の奥に穿孔封止部材を詰め込む作業と、アンカー本体を穿孔に挿入する作業をあわせて行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定の耐力を有するようにアンカーを好適に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のアンカーの構成を示す側面図である。
【
図2】本実施形態のアンカーを示す説明図であり、アンカー本体を示す側面図(a)と、アンカー本体の先端部を示す正面図(b)と、穿孔封止部材を示す側面図(c)である。
【
図3】アンカーを設置する施工手順に関する説明図(a)(b)(c)である。
【
図4】アンカーを設置する施工手順に関する説明図(d)(e)(f)である。
【
図5】アンカーを設置する施工手順に関する説明図(g)(h)である。
【
図6】アンカーを設置する施工手順の変形例に関する説明図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るアンカー及びアンカー施工方法の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
本実施形態のアンカー100は、例えば、
図1、
図2に示すように、アンカー本体10と、アンカー本体10の先端部11に取り付けられている穿孔封止部材20と、アンカー本体10の先端部11を拡開させるための拡開部材30等を備えている。
【0020】
アンカー本体10は、例えば、略円筒形状を呈するステンレス鋼製の部材であり、所定の穿孔に挿入された状態で拡開される先端部11と、後端側から注入された樹脂材料を先端部11側から吐出するための流路となる中空部12と、雄ネジが形成されている後端部13等を備えている。
【0021】
アンカー本体10の先端部11には、先端側から軸心に沿って形成されたスリット11aが設けられており、そのスリット11aによって先端部11が四つに分割されている。
【0022】
中空部12は、アンカー本体10の軸心に沿って形成された貫通孔であり、アンカー本体10の後端側から先端部11のスリット11aに達するように形成されている。
この中空部12は、拡開部材30の進入が可能な大径部分12aと、拡開部材30の進入を規制する小径部分12bを有している。
中空部12の大径部分12aは、アンカー本体10の後端側からスリット11aに達する範囲に設けられている。
中空部12の小径部分12bは、アンカー本体10の先端部11のスリット11aが形成されている箇所に設けられている。
つまり、アンカー本体10の後端側から中空部12に入れられた拡開部材30は、アンカー本体10のスリット11aに達した位置で、その進入が規制されるようになっている。
【0023】
雄ネジが形成されている後端部13には、後述するように、ナットNが螺着される。
【0024】
また、アンカー本体10には、アンカー本体10の軸心を挟んで対を成す突起部14が2組設けられている。
アンカー本体10が所定の穿孔に挿入された際に、この4つの突起部14が穿孔の孔壁と接触することで、アンカー本体10を穿孔の中心側に配置することができる。
なお、アンカー本体10の周面には、後述する樹脂材料によって定着させ易いように、蛇腹状の凹凸が形成されている。
【0025】
穿孔封止部材20は、アンカー本体10とともに穿孔に挿入されるように、アンカー本体10の先端部11に取り付けられており、所定の穿孔に挿入される際にその穿孔の孔壁に摺接するように構成されている。
この穿孔封止部材20は、発泡ポリエチレンなど弾性変形可能な材料により形成されており、穿孔の径よりも大きな径を有する円柱形状に形成されている。
穿孔の径よりも大きなサイズの穿孔封止部材20が弾性変形可能であれば、穿孔封止部材20を穿孔に挿入する際にその穿孔の孔壁に密着し易く、好適に摺接するようになる。
例えば、所定の穿孔の径が12mmである場合、発泡ポリエチレン製の穿孔封止部材20は、直径が13mmで長さが20mmの円柱形状に形成した。
(ここでのアンカー本体10の太さ(径)は10.2mmであり、軸心を挟んで対を成す突起部14間の寸法が12mmであり、このような寸法のアンカー本体10に対応させて、12mmの径の穿孔が形成される。なお、ここでのアンカー本体10の長さは180mmであり、そのうち後端部13の長さは30mmである。)
【0026】
そして、この穿孔封止部材20は、アンカー本体10の先端部11に押されるように、穿孔の奥に詰め込まれるようになっている。穿孔の孔壁に摺接するサイズの穿孔封止部材20を穿孔の奥に詰め込むようにすれば、穿孔の奥に空隙があっても、その空隙に繋がる孔端を塞ぐことができ、その空隙と穿孔の空間を分断することができる。
【0027】
また、穿孔封止部材20には、アンカー本体10の延在方向に貫入している芯材21が設けられている。この芯材21には、例えば虫ピンと称される針部材を用いることができる。
芯材21の端部は、穿孔封止部材20を貫通して突出しており、その芯材21の端部をアンカー本体10の先端部11のスリット11aに挿し込むようにして、穿孔封止部材20をアンカー本体10の先端部11に取り付けている。
なお、穿孔封止部材20から芯材21の端部が突出していない場合、接着剤等によって穿孔封止部材20をアンカー本体10の先端部11に取り付けてもよい。
【0028】
そして、穿孔封止部材20がアンカー本体10の先端部11に押されて穿孔の奥に詰め込まれる際、穿孔封止部材20は穿孔の孔壁に摺接するため、穿孔封止部材20が傾くなど姿勢を乱し易いが、芯材21が設けられている穿孔封止部材20であれば、アンカー本体10の先端部11に取り付けられた姿勢を維持することができ、略円柱形状を維持したまま穿孔の奥に詰め込まれるようになる。
【0029】
拡開部材30は、例えば、略弾丸形状を呈するステンレス鋼製の部材である。
所定の器具(後述する打込棒3とハンマー4)を使用して、拡開部材30を中空部12の小径部分12bに打ち込むようにして、アンカー本体10の先端部11を拡開させることができる。
【0030】
次に、本実施形態のアンカー100を壁面に設置する施工手順について説明する。
まず、
図3(a)に示すように、壁面WにドリルDで所定の穿孔H(ここでは径が12mm、深さが160mmの穿孔H)を形成する。
このとき、所定の深さの穿孔Hを形成するためにドリルDにマーキングMを付しておくようにする。
【0031】
次いで、
図3(b)に示すように、ドリルDで形成した穿孔H内の切り粉をブロア1で吹き飛ばしたり、
図3(c)に示すように、ブラシ2を用いて切り粉を除去したりする。
このような穿孔H内の清掃処理は、複数回繰り返すようにしてもよい。
また、集塵機を使って穿孔H内の切り粉を吸い取るようにしてもよい。
【0032】
次いで、
図4(d)(e)に示すように、壁面Wに取り付ける当て板Pの取り付け孔を壁面Wの穿孔Hに位置合わせし、先端部11に取り付けられている穿孔封止部材20を穿孔Hの奥に押し込むように、アンカー本体10を穿孔Hに挿入する。
そして、穿孔Hの奥に穿孔封止部材20を詰め込んだ状態で、アンカー本体10の後端部13にワッシャーCを介してナットNを螺着して仮固定する。
なお、アンカー本体10を穿孔Hに挿入する際、穿孔封止部材20が穿孔Hの孔壁に摺接して穿孔Hの奥に詰め込まれるので、穿孔H内に残ってしまっていた切り粉を穿孔封止部材20によって穿孔Hの奥に掃き込むように除去することができる。
【0033】
次いで、
図4(e)(f)に示すように、アンカー本体10の中空部12に拡開部材30を挿し入れ、アンカー本体10と略同じ長さを有する打込棒3で拡開部材30を中空部12の小径部分12bに突き当てた後、その打込棒3にハンマー4で打撃を加えて拡開部材30を中空部12の小径部分12bに打ち込む。なお、予めアンカー本体10の中空部12に拡開部材30が着設されており、その拡開部材30を中空部12の小径部分12bに打ち込むようにしてもよい。
そして、アンカー本体10の中空部12の小径部分12bに打ち込まれた拡開部材30がアンカー本体10の先端部11を押し開くように拡開させ、拡開した先端部11を穿孔Hの孔壁に食い込ませるように押し付けて一次定着する。
【0034】
次いで、
図5(g)に示すように、樹脂注入器5を用いてアンカー本体10の後端側から中空部12に樹脂材料Jを注入し、アンカー本体10の先端部11側のスリット開口から吐出した樹脂材料Jを穿孔Hの奥側から充填するように、穿孔Hとアンカー本体10の隙間に樹脂材料Jを充填する。
例えば、C字形状のワッシャーCの隙間から樹脂材料Jが漏れ出したことで、穿孔Hとアンカー本体10の隙間に樹脂材料Jが充填されたことを確認することができる。
そして、
図5(h)に示すように、穿孔Hとアンカー本体10の隙間に充填した樹脂材料Jを硬化させて二次定着し、ナットNを後端部13に締め付けることで、壁面Wに当て板Pを取り付けるためのアンカー100の設置作業を終える。
【0035】
以上のように、本実施形態のアンカー100であれば、穿孔Hの孔壁に摺接するサイズの穿孔封止部材20を穿孔Hの奥に詰め込むことができ、穿孔Hの奥に空隙がある場合でも、その空隙に繋がる空間を塞ぐことができるので、穿孔Hの奥から充填していく樹脂材料Jを穿孔Hとアンカー本体10の隙間に良好に充填することができる。
このように、穿孔Hとアンカー本体10の隙間に樹脂材料Jを良好に充填することができれば、穿孔Hに対してアンカー本体10を強固に定着させることができるので、所定の耐力を有するようにアンカー100を好適に設置することができる。
【0036】
つまり、本実施形態のアンカー100は、穿孔Hの奥に空隙がある場合でも好適に設置することができるので、目地材が劣化するなどして欠損していることがあるブロックやレンガで形成された構造体に設置するアンカーとして好適に使用することができる。
勿論、コンクリート等で形成された構造体に設置するアンカーとしても使用できる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図6(a)に示すように、所定の穿孔Hの孔壁に摺接する穿孔封止部材20を、穿孔Hの深さよりも長い棒状部材などを用いて穿孔Hの奥に詰め込んだ後、
図6(b)に示すように、その穿孔Hにアンカー本体10を挿入するようにしてもよい。そして、穿孔Hにアンカー本体10を挿入した後、その先端部11を拡開し、中空部12を通じて樹脂材料Jの充填を行う。
このような施工手順であっても、穿孔Hの奥に空隙がある場合に、その空隙に繋がる空間を穿孔封止部材20で塞ぐことができ、穿孔Hとアンカー本体10の隙間に樹脂材料Jを良好に充填することができる。
つまり、穿孔封止部材20がアンカー本体10の先端部11から外れてしまった場合や、穿孔封止部材20をアンカー本体10の先端部11に取り付けることができない場合でも、穿孔Hの奥の空隙に繋がる空間を穿孔封止部材20で塞いでアンカー100を設置することができる。
【0038】
また、アンカー本体10の先端部11から外れてしまった穿孔封止部材20や、アンカー本体10の先端部11に取り付けることができない穿孔封止部材20を、アンカー本体10の先端部11に当接させ、そのアンカー本体10で穿孔封止部材20を穿孔Hの奥に詰め込むようにしてもよい。
【0039】
なお、以上の実施の形態においては、穿孔Hの径が12mmのとき、弾性変形可能な材料からなる穿孔封止部材20の径が13mmである場合を例示したが、これはあくまで一例であり、穿孔Hの径は任意であるので、穿孔Hの径に応じたサイズの穿孔封止部材20を用いるようにすればよい。
勿論、アンカー本体10の太さに応じた穿孔Hを形成し、その穿孔Hの径に応じたサイズの穿孔封止部材20を用いればよい。
【0040】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
10 アンカー本体
11 先端部
11a スリット
12 中空部
12a 大径部分
12b 小径部分
13 後端部
14 突起部
20 穿孔封止部材
21 芯材
30 拡開部材
100 アンカー
H 穿孔
N ナット
C ワッシャー
P 当て板
W 壁面