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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】脈管シミュレーションモデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20230830BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G09B23/30
G09B9/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019123926
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021009252
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
【審査官】奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/075732(WO,A1)
【文献】特表2018-536203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0101814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00,23/28-23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管シミュレーションモデルであって、
上流側から下流側に向かって、第1の枝と第2の枝とに分岐して流体の流路を構成する脈管ルーメンと、
前記流路の上流側において前記脈管ルーメンに連通する流体導入口と、
前記流路の下流側において前記第1の枝と前記第2の枝とにそれぞれ設けられる第1及び第2の流体排出口と、を有する脈管モデルを備え、
前記第1の枝と前記第2の枝とは、前記第1の枝を流れる流体にかかる背圧と前記第2の枝を流れる流体に係る背圧が相違しており、
前記第1の流体排出口と前記第2の流体排出口とには、それぞれ、前記第1の枝に流れる流体の流量を変更可能な第1のバルブ及び前記第2の枝に流れる流体の流量を変更可能な第2のバルブが設けられており、
前記脈管モデルにおいて、
前記脈管ルーメンは、上流側から下流側に向かって、さらに、第3の枝に分岐して流体の流路を構成しており、
さらに、前記流路の下流側において前記第3の枝に設けられる第3の流体排出口を有すると共に、前記第3の流体排出口には、前記第3の枝を流れる流体の流量を変更可能な第3のバルブが設けられており、
さらに、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、及び前記第3のバルブを、前記第1の枝と前記第2の枝と前記第3の枝とを流れる流体にかかる背圧が高い順に配置した状態で保持するバルブ保持部を備える、脈管シミュレーションモデル。
【請求項2】
請求項1に記載の脈管シミュレーションモデルであって、
前記脈管モデルにおいて、
前記脈管ルーメンは、上流側から下流側に向かって、さらに、第4の枝に分岐して流体の流路を構成しており、
前記第4の枝は、前記第1及び第2の流体排出口よりも上流側において、前記第1の枝と前記第2の枝の一方に合流している、脈管シミュレーションモデル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の脈管シミュレーションモデルであって、さらに、
前記第1の枝と前記第2の枝とを、任意の臓器における脈管の配置位置とした状態で、前記脈管モデルを保持する分岐保持部を備える、脈管シミュレーションモデル。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の脈管シミュレーションモデルであって、
前記第1の枝と前記第2の枝には、前記背圧に関する情報がそれぞれ表示されている、脈管シミュレーションモデル。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の脈管シミュレーションモデルであって、
前記第1のバルブと前記第2のバルブには、対応する前記第1の枝と前記第2の枝の前記背圧に関する情報が表示されている、脈管シミュレーションモデル。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の脈管シミュレーションモデルであって、
前記第1のバルブと前記第2のバルブとを開放し、
前記流体導入口から流体を導入しつつ、前記流体が充填された枝の順に、対応する前記バルブを閉塞することで、前記脈管ルーメンの全体に流体が充填される、脈管シミュレーションモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈管シミュレーションモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
循環器系や消化器系等の生体管腔内への低侵襲な治療または検査の手法として、例えば、経皮的冠動脈形成術(PTCA:Percutaneous Transluminal Catheter Angioplasty)や、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)等が知られている。これらの手法では、心血管や胆管等の脈管内に、ガイドワイヤやカテーテル等の医療用デバイスを挿入する。例えば、特許文献1~3には、模擬血管を備え、医師等の術者が、医療用デバイスを用いてPTCAの手技を模擬することが可能な装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-343891号公報
【文献】特許第5024700号公報
【文献】国際公開第2016/075732号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載の装置では、使用時に、血液を模した流体(例えば水)で模擬血管内を満たす。この際、模擬血管内における医療用デバイスの視認性を向上させ、かつ、医療用デバイスの動きを実際の生体に似せるために、模擬血管内は全て流体で満たされていることが好ましい。しかし、特許文献1に記載の装置では、模擬結果に流体を注入した際に、背圧の低い枝にばかり流体が流れ込み、背圧の低い枝まで流体を行き渡らせることが困難だという課題があった。また、特許文献2及び特許文献3に記載の装置では、模擬血管内の流体を循環させるポンプを備えるため、背圧の低い枝まで流体を行き渡らせることができる一方、装置が大型化するという課題があった。さらに、特許文献2及び特許文献3に記載の装置では、複雑に湾曲した模擬血管や、細い模擬血管において、流体内に気泡が残存するという課題があった。
【0005】
なお、このような課題は、模擬血管を備えてPTCAの手技を模擬する装置に限らず、模擬胆管を備えてERCPの手技を模擬する装置や、模擬脈管を備えて医療用デバイスを用いた種々の手技を模擬する装置に共通する。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、脈管内を流体で満たすことが容易にでき、かつ、小型化が可能な脈管シミュレーションモデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、脈管シミュレーションモデルが提供される。この脈管シミュレーションモデルは、上流側から下流側に向かって、第1の枝と第2の枝とに分岐して流体の流路を構成する脈管ルーメンと、前記流路の上流側において前記脈管ルーメンに連通する流体導入口と、前記流路の下流側において前記第1の枝と前記第2の枝とにそれぞれ設けられる第1及び第2の流体排出口と、を有する脈管モデルを備え、前記第1の枝と前記第2の枝とは、前記第1の枝を流れる流体にかかる背圧と前記第2の枝を流れる流体に係る背圧が相違しており、前記第1の流体排出口と前記第2の流体排出口とには、それぞれ、前記第1の枝に流れる流体の流量を変更可能な第1のバルブ及び前記第2の枝に流れる流体の流量を変更可能な第2のバルブが設けられている。
【0009】
この構成によれば、脈管シミュレーションモデルにおいて、枝を流れる流体にかかる背圧が相違する第1の枝の排出口(第1の流体排出口)と、第2の枝の排出口(第2の流体排出口)とには、それぞれ、流体の流量を変更可能な第1のバルブと第2のバルブとが設けられている。ここで例えば、第1の枝の背圧が第2の枝の背圧よりも低い場合を想定する。この場合、流体導入口から脈管ルーメンに導入された流体は、主として第1の枝に流れ込むため、まず第1の枝が流体で満たされる。この後、第1の枝の排出口(第1の流体排出口)に設けられた第1のバルブを閉じる(又は流量を少なくする)。すると、第1の枝の背圧が上昇するため、流体導入口から脈管ルーメンに導入された流体は、主として第2の枝に流れ込み、第2の枝も流体で満たすことができる。このように、本構成によれば、脈管内を流体で満たすことが容易にでき、かつ、ポンプを必要とせず小型化が可能な脈管シミュレーションモデルを提供できる。
【0010】
(2)上記形態の脈管シミュレーションモデルでは、前記脈管モデルにおいて、前記脈管ルーメンは、上流側から下流側に向かって、さらに、第3の枝に分岐して流体の流路を構成しており、さらに、前記流路の下流側において前記第3の枝に設けられる第3の流体排出口を有すると共に、前記第3の流体排出口には、前記第3の枝を流れる流体の流量を変更可能な第3のバルブが設けられており、さらに、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、及び前記第3のバルブを、前記第1の枝と前記第2の枝と前記第3の枝とを流れる流体にかかる背圧が高い順に配置した状態で保持するバルブ保持部を備えていてもよい。
この構成によれば、バルブ保持部は、第1のバルブ、第2のバルブ、及び第3のバルブを、対応する第1、第2、及び第3の枝にかかる背圧が高い順に配置した状態で保持する。このため、バルブ保持部の一端(背圧が低い側)から他端(背圧が高い側)に向かって、順にバルブを閉じる(又は流量を少なくする)操作を行えば、脈管内を流体で満たすことができる。すなわち、本構成によれば、次に操作すべきバルブを直感的に把握しやすくできる。
【0011】
(3)上記形態の脈管シミュレーションモデルでは、前記脈管モデルにおいて、前記脈管ルーメンは、上流側から下流側に向かって、さらに、第4の枝に分岐して流体の流路を構成しており、前記第4の枝は、前記第1及び第2の流体排出口よりも上流側において、前記第1の枝と前記第2の枝の一方に合流していてもよい。
この構成によれば、脈管ルーメンは、上流側から下流側に向かって第4の枝に分岐し、かつ、第4の枝は、第1及び第2の流体排出口よりも上流側において第1の枝と第2の枝の一方に合流している。このように、流体導入口よりも下流側において分岐し、流体排出口よりも上流側において合流する第4の枝を設けることにより、脈管ルーメンの枝の分岐を、実際の任意の臓器内又は表面における脈管の分岐に似せることができる。
【0012】
(4)上記形態の脈管シミュレーションモデルでは、さらに、前記第1の枝と前記第2の枝とを、任意の臓器における脈管の配置位置とした状態で、前記脈管モデルを保持する分岐保持部を備えていてもよい。
この構成によれば、分岐保持部は、第1の枝と第2の枝とを、任意の臓器における脈管の配置位置とした状態で、脈管モデルを保持する。このため、脈管ルーメンの枝の配置を、実際の任意の臓器内又は表面における脈管の配置に似せることができる。
【0013】
(5)上記形態の脈管シミュレーションモデルにおいて、前記第1の枝と前記第2の枝には、前記背圧に関する情報がそれぞれ表示されていてもよい。
この構成によれば、第1の枝と第2の枝とには、背圧に関する情報が表示されているため、利用者は、どの枝に流体が流れ込みやすく、どの枝に流体が流れ込みづらいかを一見して認識できる。
【0014】
(6)上記形態の脈管シミュレーションモデルにおいて、前記第1のバルブと前記第2のバルブには、対応する前記第1の枝と前記第2の枝の前記背圧に関する情報が表示されていてもよい。
この構成によれば、第1のバルブと第2のバルブとには、背圧に関する情報が表示されているため、利用者は、どの枝に流体が流れ込みやすく、どの枝に流体が流れ込みづらいかを一見して認識できる。
【0015】
(7)上記形態の脈管シミュレーションモデルにおいて、前記第1のバルブと前記第2のバルブとを開放し、前記流体導入口から流体を導入しつつ、前記流体が充填された枝の順に、対応する前記バルブを閉塞することで、前記脈管ルーメンの全体に流体が充填されてもよい。
この構成によれば、利用者は、流体導入口から流体を導入しつつ、流体が充填された枝の順に、対応するバルブを閉塞することで、脈管内を流体で満たすことが容易にできる。また、ポンプを必要とせず、脈管シミュレーションモデルを小型化できる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、さらに臓器モデル(例えば、心臓を模した心臓モデル、肝臓を模した肝臓モデル等)を備えるシミュレーション装置、さらに内視鏡モデルを備える内視鏡治療シミュレーションモデル、脈管シミュレーションモデル、シミュレーション装置、及び内視鏡治療シミュレーションモデルの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図2図1のA-A線における断面構成を例示した説明図である。
図3】脈管シミュレーションモデルの使用方法を例示した説明図である。
図4】脈管シミュレーションモデルの使用方法を例示した説明図である。
図5】脈管シミュレーションモデルの使用方法を例示した説明図である。
図6】脈管シミュレーションモデルの使用方法を例示した説明図である。
図7】脈管シミュレーションモデルの使用方法を例示した説明図である。
図8】比較例における脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図9】第2実施形態の脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図10】第3実施形態の脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図11】第4実施形態の脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図12】第5実施形態の脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図13】第6実施形態の脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
図14】第7実施形態の脈管シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、脈管シミュレーションモデル1の構成を例示した説明図である。図2は、図1のA-A線における断面構成を例示した説明図である。脈管シミュレーションモデル1は、心血管や胆管等の脈管に対して、医療用デバイスを用いた治療または検査の手技を模擬するために使用される装置である。医療用デバイスを用いた手技としては、例えば、経皮的冠動脈形成術(PTCA:Percutaneous Transluminal Catheter Angioplasty)や、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)等が挙げられる。また、医療用デバイスとは、カテーテルやガイドワイヤ等の、低侵襲な治療または検査のためのデバイスを意味する。
【0019】
図1に示すように、脈管シミュレーションモデル1は、脈管モデル100と、バルブ10と、バルブ保持部20と、分岐保持部30とを備えている。脈管モデル100は、脈管を再現したモデルである。図2に示すように、脈管モデル100の内側には、脈管を流れる血液や胆汁等を模擬した流体(液体)の流路を構成する脈管ルーメン100Lが形成されている。図1及び以降の図では、紙面下側を流路の上流側とし、紙面上側を流路の下流側として説明する。換言すれば、図1及び以降の図において、流体は下側から上側に向かって流れる。以降、流路の上流側を単に「上流側」とも呼び、流路の下流側を単に「下流側」とも呼ぶ。
【0020】
脈管モデル100は、複数の流路形成部材P10~P16により構成されている。流路形成部材P10は、上流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体導入口110を有している。流路形成部材P10は、分岐点B1において流路形成部材P11に接続され、分岐点B5において流路形成部材P15に接続されている。流路形成部材P10は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口117を有している。流体導入口110から流体排出口117までの流路を、枝107とも呼ぶ。流体排出口117には、枝107に流れる流体の流量を変更可能なバルブ17が設けられている。なお、本実施形態において、枝107は「第1の枝」に相当し、流体排出口117は「第1の流体排出口」に相当し、バルブ17は「第1のバルブ」に相当する。
【0021】
流路形成部材P11は、上流側の端部において流路形成部材P10に接続されている。流路形成部材P11は、分岐点B2において流路形成部材P12に接続され、分岐点B4において流路形成部材P14に接続されている。流路形成部材P11は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口115を有している。流体導入口110から流体排出口115までの流路を、枝105とも呼ぶ。流体排出口115には、枝105に流れる流体の流量を変更可能なバルブ15が設けられている。また、流路形成部材P12は、上流側の端部において流路形成部材P11に接続されている。流路形成部材P12は、分岐点B3において流路形成部材P13に接続されている。流路形成部材P12は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口114を有している。流体導入口110から流体排出口114までの流路を、枝104とも呼ぶ。流体排出口114には、枝104に流れる流体の流量を変更可能なバルブ14が設けられている。
【0022】
流路形成部材P13は、上流側の端部において流路形成部材P12に接続されている。流路形成部材P13は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口111を有している。流体導入口110から流体排出口111までの流路を、枝101とも呼ぶ。流体排出口111には、枝101に流れる流体の流量を変更可能なバルブ11が設けられている。また、流路形成部材P14は、上流側の端部において流路形成部材P11に接続されている。流路形成部材P14は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口112を有している。流体導入口110から流体排出口112までの流路を、枝102とも呼ぶ。流体排出口112には、枝102に流れる流体の流量を変更可能なバルブ12が設けられている。
【0023】
流路形成部材P15は、上流側の端部において流路形成部材P10に接続されている。流路形成部材P14は、分岐点B6において流路形成部材P16に接続されている。流路形成部材P15は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口116を有している。流体導入口110から流体排出口116までの流路を、枝106とも呼ぶ。流体排出口116には、枝106に流れる流体の流量を変更可能なバルブ16が設けられている。なお、本実施形態において、枝106は「第2の枝」に相当し、流体排出口116は「第2の流体排出口」に相当し、バルブ16は「第2のバルブ」に相当する。
【0024】
流路形成部材P16は、上流側の端部において流路形成部材P15に接続されている。流路形成部材P16は、下流側の端部において、脈管ルーメン100Lに連通する開口である流体排出口113を有している。流体導入口110から流体排出口113までの流路を、枝103とも呼ぶ。流体排出口113には、枝103に流れる流体の流量を変更可能なバルブ13が設けられている。なお、本実施形態において、枝103は「第3の枝」に相当し、流体排出口113は「第3の流体排出口」に相当し、バルブ13は「第3のバルブ」に相当する。
【0025】
図2に示すように、流路形成部材P10~P16は、それぞれ、透明又は半透明であり、かつ、柔軟性を有する樹脂材料(例えば、PVA樹脂、シリコン)により形成されたチューブ(管状体)である。流路形成部材P10~P16は、上述した各分岐点B1~B6において、それぞれの内腔を連通させた状態で接続されることにより、脈管ルーメン100Lを構成している。接続手段としては、熱溶着のほか、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を用いてもよい。図2では、流路形成部材P10~P16の横断面形状として略円形形状を例示したが、流路形成部材P10~P16の横断面形状は任意に決定できる。また、流路形成部材P10~P16の外径及び内径についても、任意に決定できる。例えば、流路形成部材P10~P16は、それぞれ同一の外径及び/又は内径を有していてもよく、それぞれ異なる外径及び/又は内径を有していてもよい。
【0026】
バルブ11~17は、バルブ11~17が設けられた枝101~107に流れる流体の流量を調整する。バルブ11~17を総称して、バルブ10とも呼ぶ。バルブ10には、例えば、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、及びバタフライバルブ等の任意の種類のバルブを採用できる。バルブ10は、中間開度を用いることで流体の流量を変更可能なバルブであってもよく、中間開度を用いずに流体を通過又は遮蔽するバルブであってもよい。バルブ11~17に設けられるバルブは、同じ種類のバルブであってもよく、異なる種類のバルブであってもよい。
【0027】
分岐保持部30(図1:破線枠)は、枝101~107を、任意の臓器における脈管の配置位置とした状態で、脈管モデル100を保持する部材である。図示の例では、分岐保持部30は、枝101~107を、肝臓における胆管(肝内胆管)の配置位置とした状態で、流体導入口110、流体排出口111~117、及びバルブ10を除く脈管モデル100の一部分を内部に収容した箱状の筐体である。分岐保持部30は、例えば、X線透過性を有すると共に透明性の高い樹脂材料(例えばアクリル樹脂)により形成できる。図示の例では、分岐保持部30は箱状であるが、分岐保持部30の外側形状は任意に変更できる。また、分岐保持部30は、脈管モデル100の一部分を任意の臓器を模した臓器モデル(ここでは、肝臓モデル)の表面に配置して保持する態様であってもよい。
【0028】
分岐保持部30の下流側において、枝101~107は、左から、枝101、枝104、枝105、枝102、枝107、枝106、枝103の順に並べられている。ここで、図1に示すように、バルブ11~17が開放(又は流量が大きな)状態である場合に、枝101、枝102、及び枝103を流れる流体にかかる背圧は、他の枝と比較して相対的に高い(図1:高)。一方、バルブ11~17が開放状態である場合に、枝107を流れる流体にかかる背圧は、他の枝と比較して相対的に低い(図1:低)。このように、本実施形態の脈管モデル100では、第1の枝107を流れる流体にかかる背圧(図1:低)と、第2の枝106を流れる流体にかかる背圧(図1:中)と、第3の枝103を流れる流体にかかる背圧(図1:高)とは、それぞれ相違している。
【0029】
バルブ保持部20は、バルブ11~17及び流体排出口111~117を、対応する枝101~107を流れる流体にかかる背圧が高い順に配置した状態で保持する部材である。本実施形態のバルブ保持部20は、平板状であり、一方の面にバルブ11~17をそれぞれ載置した状態で、バルブ11~17を保持(固定)している。図示の例では、バルブ保持部20は、左から、バルブ11、バルブ12、バルブ13、バルブ14、バルブ15、バルブ16、バルブ17の順に並べた状態で、バルブ11~17を保持している。
【0030】
バルブ11~17に対応する枝101~107の背圧は上述の通りである。このため、図示のバルブ保持部20は、左端から右端に向かって、枝101~107を流れる流体にかかる背圧(バルブ11~17開放時の背圧)が高いものから徐々に低くなるように、バルブ11~17及び流体排出口111~117を配置し、保持している。換言すれば、バルブ保持部20は、左端から右端に向かって、バルブ11~17開放時の枝101~107の背圧の降順に、バルブ11~17及び流体排出口111~117を配置し、保持している。バルブ保持部20は、樹脂材料、木材、金属材料等の任意の材料により形成できる。また、バルブ保持部20の外側形状は平板状に限らず、棒状、箱状等、任意に変更してよい。
【0031】
なお、脈管シミュレーションモデル1は、さらに、流体排出口111~117に接続された流路形成部材120(図1:破線)を備えていてもよい。流路形成部材120は、流体排出口111~117にそれぞれ接続され、流体排出口111~117から排出された流体を回収し、廃棄する。なお、流路形成部材120は、流体導入口110に接続されており、流体排出口111~117から排出された流体を流体導入口110へと循環させてもよい。流路形成部材120は、柔軟性を有する樹脂材料(例えば、PVA樹脂、シリコン)により形成されたチューブ(管状体)である。
【0032】
図3図7は、脈管シミュレーションモデル1の使用方法を例示した説明図である。まず、図3に示すように、利用者は、全てのバルブ11~17を開放し、枝101~107における流体の通過が可能な状態としておく。次に、利用者は、流体導入口110から流体を供給する。供給された流体の大部分は、背圧が相対的に低い枝101に向かって流れる(図3:大矢印)。供給された流体の残りの一部分は、分岐点B1から枝105に流れ、分岐点B5から枝106に向かって流れる(図3:小矢印)。
【0033】
図4に示すように、利用者は、枝107が流体で満たされたことを確認後、枝107に対応するバルブ17を閉じることで、枝107における流体の流通を遮蔽する。これにより、枝107を流れる流体にかかる背圧が相対的に高くなる。枝107の背圧が高くなることにより、流体導入口110から供給された流体の大部分は、背圧が相対的に低い枝106に向かって流れる(図4:大矢印)。供給された流体の残りの一部分は、分岐点B6から枝103に向かって流れる(図4:小矢印)。図5に示すように、利用者は、枝106が流体で満たされたことを確認後、枝106に対応するバルブ16を閉じることで、枝106における流体の流通を遮蔽する。これにより、枝106を流れる流体にかかる背圧が相対的に高くなるため、流体導入口110から供給された流体の大部分は、背圧が相対的に低い枝105に向かって流れる(図5:大矢印)。供給された流体の残りの一部分は、分岐点B2から枝104に向かって流れ、分岐点B4から枝102に向かって流れる(図5:小矢印)。
【0034】
図6に示すように、上述した操作を他のバルブ11~15に対しても行うことで、利用者は、脈管モデル100の脈管ルーメン100Lを、簡単に流体で満たすことができる。ここで、流路形成部材P10~P16が複雑に湾曲した配置とされた場合、流路形成部材P10~P16の内径が小さい場合、流路形成部材P10~P16が接続された分岐点B1~B6の近傍、流体導入口110からの距離が遠い場合等は、その湾曲箇所、小径箇所、分岐箇所等において気泡が残存しやすくなる。
【0035】
例えば、図7において破線丸枠で示すように、ある枝(図7:枝103)内部に気泡が残存した場合について説明する。このような場合、利用者は、気泡が残存した枝103に対応するバルブ13を開放することで、枝103における流体の流通を可能とする。バルブ13の開放によって、枝103を流れる流体にかかる背圧が相対的に低くなる。この状態で利用者は、流体導入口110から流体を供給する。供給された流体は、背圧が相対的に低い枝103に向かって流れる(図7:大矢印)。このため、新たに供給された流体によって、残存した気泡を流体排出口113から排出することができる。気泡除去後、利用者は、バルブ13を閉じればよい。
【0036】
このように、第1実施形態の脈管シミュレーションモデル1によれば、枝を流れる流体にかかる背圧が相違する第1の枝107の排出口(第1の流体排出口117)と、第2の枝106の排出口(第2の流体排出口116)とには、それぞれ、流体の流量を変更可能な第1のバルブ17と第2のバルブ16とが設けられている。例えば、図1図7で例示したように、第1の枝107の背圧が第2の枝106の背圧よりも低い場合を想定する。この場合、流体導入口110から脈管ルーメン100Lに導入された流体は、主として第1の枝107に流れ込むため、まず第1の枝107が流体で満たされる(図3)。この後、第1の枝107の排出口(第1の流体排出口117)に設けられた第1のバルブ17を閉じる(又は流量を少なくする)。すると、第1の枝107の背圧が上昇するため、流体導入口110から脈管ルーメン100Lに導入された流体は、主として第2の枝106に流れ込み、第2の枝106も流体で満たすことができる(図4)。このように、第1実施形態の脈管シミュレーションモデル1によれば、脈管内を流体で満たすことが容易にでき、かつ、ポンプを必要とせず小型化が可能な脈管シミュレーションモデル1を提供できる(図7)。
【0037】
また、第1実施形態の脈管シミュレーションモデル1によれば、バルブ保持部20は、第1のバルブ17、第2のバルブ16、及び第3のバルブ13を、対応する第1の枝107、第2の枝106、及び第3の枝103にかかる背圧が高い順に配置した状態で保持する(図1)。このため、バルブ保持部20の一端(背圧が低い側:図1図7の例では右端)から他端(背圧が高い側:図1図7の例では左端)に向かって、順にバルブを閉じる(又は流量を少なくする)操作を行えば、脈管ルーメン100L内を流体で満たすことができる。すなわち、第1実施形態の脈管シミュレーションモデル1によれば、次に操作すべきバルブを直感的に把握しやすくできる。
【0038】
さらに、第1実施形態の脈管シミュレーションモデル1によれば、分岐保持部30は、第1の枝107と第2の枝106とを、任意の臓器における脈管の配置位置とした状態で、脈管モデル100を保持する。このため、脈管ルーメン100Lの枝の配置を、実際の任意の臓器内又は表面における脈管の配置に似せることができる。
【0039】
<比較例>
図8は、比較例における脈管シミュレーションモデル1xの構成を例示した説明図である。比較例の脈管シミュレーションモデル1xは、バルブ11~17と、バルブ保持部20とを備えていない。脈管シミュレーションモデル1xにおいて、枝101~107は、下流側において流路形成部材119にそれぞれ接続されている。流路形成部材119は、枝101~107に排出された流体を回収し、ポンプ200によって流体導入口110へと循環させる。比較例の脈管シミュレーションモデル1xの使用方法について説明する。まず、利用者は、流体導入口110から流体を供給する。供給された流体の大部分は、背圧が相対的に低い枝107に向かって流れる(図8:大矢印)。供給された流体の残りの一部分は、分岐点B1~B6から、他の枝101~106へと流れる(図8:小矢印)。しかしながら、比較例の構成では、背圧が相対的に高い枝101、102、及び103については流体が流れ込み難く、結果として、枝101、102、及び103内に気泡が残存しやすくなる。また、比較例の構成では、ポンプ200によって、脈管シミュレーションモデル1xが大型化してしまう。
【0040】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態の脈管シミュレーションモデル1aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の脈管シミュレーションモデル1aは、第1実施形態で説明した構成において、脈管モデル100に代えて脈管モデル100aを備え、バルブ保持部20に代えてバルブ保持部20aを備えている。脈管モデル100aの枝101a~107aには、それぞれ、背圧に関する情報121~127が表示されている。図示の例では、背圧に関する情報121~127は、バルブ11~17が開放状態である場合に、枝101a~107aを流れる流体にかかる背圧の大きさに比例した数字である。なお、背圧に関する情報121~127としては、背圧の大きさに比例した数字に限られず、背圧の実測値、推定値、及び標準値などを意味する任意の文字、図形、記号、色彩、又はこれらの組み合わせを用いることができる。バルブ保持部20aは、バルブ11~17及び流体排出口111~117を、分岐保持部30の下流側における枝101a~107aの配置を維持した状態で保持している。
【0041】
このように、枝101a~107aには、背圧に関する情報121~127が表示されていてもよい。また、背圧に関する情報121~127は、図9のように各枝の下流側に表示されていてもよく、各枝の上流側に表示されていてもよい。背圧に関する情報121~127は、枝101a~107aの1箇所に表示されていてもよく、複数箇所に表示されていてもよい。さらに、バルブ保持部20aは、枝101a~107aを流れる流体にかかる背圧の高い順に、バルブ11~17及び流体排出口111~117を保持していなくてもよい。このような第2実施形態の脈管シミュレーションモデル1aによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2実施形態の脈管シミュレーションモデル1aによれば、第1の枝107aと第2の枝106aとには、背圧に関する情報127,126が表示されているため、利用者は、どの枝に流体が流れ込みやすく、どの枝に流体が流れ込みづらいかを一見して認識できる。
【0042】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の脈管シミュレーションモデル1bの構成を例示した説明図である。第3実施形態の脈管シミュレーションモデル1bは、第1実施形態で説明した構成において、バルブ10に代えてバルブ10b(バルブ11b~17b)を備え、バルブ保持部20に代えてバルブ保持部20bを備えている。バルブ11b~17bには、それぞれ、背圧に関する情報131~137が表示されている。背圧に関する情報131~137は、第2実施形態(図9)と同様に、バルブ11b~17bが開放状態である場合に、枝101~107を流れる流体にかかる背圧の大きさに比例した数字である。なお、背圧に関する情報131~137は、第2実施形態(図9)と同様に、任意の文字、図形、記号、色彩、又はこれらの組み合わせを用いることができる。バルブ保持部20bは、バルブ11b~17b及び流体排出口111~117を、分岐保持部30の下流側における枝101~107の配置を維持した状態で保持している。
【0043】
このように、バルブ11b~17bには、背圧に関する情報131~137が表示されていてもよい。また、背圧に関する情報131~137は、バルブ11b~17bの1箇所に表示されていてもよく、複数箇所に表示されていてもよい。バルブ保持部20bは、枝101~107を流れる流体にかかる背圧の高い順に、バルブ11b~17b及び流体排出口111~117を保持していなくてもよい。このような第3実施形態の脈管シミュレーションモデル1bによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第3実施形態の脈管シミュレーションモデル1bによれば、第1のバルブ17と第2のバルブ16とには、背圧に関する情報137,136が表示されているため、利用者は、どの枝に流体が流れ込みやすく、どの枝に流体が流れ込みづらいかを一見して認識できる。
【0044】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態の脈管シミュレーションモデル1cの構成を例示した説明図である。第4実施形態の脈管シミュレーションモデル1cは、第2実施形態で説明した構成において、分岐保持部30を備えていない。このように、脈管シミュレーションモデル1cには、脈管モデル100aを保持する分岐保持部30が設けられなくてもよい。このような第4実施形態の脈管シミュレーションモデル1cによっても、第1及び第2実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第4実施形態の脈管シミュレーションモデル1cによれば、分岐保持部30を備えないため、脈管シミュレーションモデル1cをより小型化できるほか、脈管モデル100aの流路形成部材P11~P16を束ねた状態で保管、運搬することもできる。
【0045】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態の脈管シミュレーションモデル1dの構成を例示した説明図である。第5実施形態の脈管シミュレーションモデル1dは、第2実施形態で説明した構成において、バルブ保持部20aを備えていない。このように、脈管シミュレーションモデル1dには、バルブ保持部20aが設けられなくてもよい。このような第5実施形態の脈管シミュレーションモデル1dによっても、利用者は、枝101a~107aに付された背圧に関する情報121~127を参照することによって、どのバルブを閉じればよいか判断できる。このため、第5実施形態の脈管シミュレーションモデル1dによっても、第1及び第2実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第5実施形態の脈管シミュレーションモデル1dによれば、バルブ保持部20aを備えないため、脈管シミュレーションモデル1dをより小型化できる。
【0046】
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態の脈管シミュレーションモデル1eの構成を例示した説明図である。第6実施形態の脈管シミュレーションモデル1eは、第1実施形態で説明した構成において、脈管モデル100に代えて脈管モデル100eを備えている。脈管モデル100eは、さらに、流路形成部材P21,P22,P23を備えている。流路形成部材P21は、上流側の端部(分岐点B10)において、流路形成部材P11に接続されている。流路形成部材P21の下流側の端部は閉塞している。流路形成部材P22は、上流側の端部(分岐点B11)において、流路形成部材P10に接続されている。流路形成部材P22の下流側の端部は閉塞している。流路形成部材P23は、上流側の端部(分岐点B12)において、流路形成部材P16に接続されている。流路形成部材P23の下流側の端部は閉塞している。
【0047】
このように、脈管モデル100eにおける流路形成部材P10~P23の数、形状、配置、及び接続関係は任意に決定することができ、例えば、下流側において流体排出口111~117に繋がらない(閉塞した)終端を有する流路形成部材P21,P22,P23を設けてもよい。また、流体導入口110の数、形状、配置、及び接続関係についても任意に決定することができ、例えば、複数の流体導入口110が設けられてもよい。このような第6実施形態の脈管シミュレーションモデル1eによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
<第7実施形態>
図14は、第7実施形態の脈管シミュレーションモデル1fの構成を例示した説明図である。第7実施形態の脈管シミュレーションモデル1fは、第1実施形態で説明した構成において、脈管モデル100に代えて脈管モデル100fを備え、バルブ10に代えてバルブ10fを備えている。脈管モデル100fは、流路形成部材P11に代えて流路形成部材P11fを、流路形成部材P14に代えて流路形成部材P14fを、それぞれ備えている。
【0049】
流路形成部材P11fは、下流側の端部において流体排出口115を有さず、下流側の端部(分岐点B22)において流路形成部材P12に接続されている。第7実施形態では、流体導入口110から流体排出口114までの流路のうち、流路形成部材P12を通過する流路を枝104fとも呼び、流路形成部材P12に合流する流路を枝105fとも呼ぶ。第7実施形態では、流れる流体にかかる背圧が略等しい枝104fと枝105fとが、下流側の端部(分岐点B22)において連結されている。流路形成部材P14fは、下流側の端部において流体排出口112を有さず、下流側の端部(分岐点B21)において流路形成部材P13に接続されている。第7実施形態では、流体導入口110から流体排出口111までの流路のうち、流路形成部材P13を通過する流路を枝101fとも呼び、流路形成部材P13に合流する流路を枝102fとも呼ぶ。第7実施形態では、流れる流体にかかる背圧が略等しい枝101fと枝102fとが、下流側の端部(分岐点B21)において連結されている。本実施形態では、枝101fが「第1の枝」に相当し、流体排出口111が「第1の流体排出口」に相当し、枝104fが「第2の枝」に相当し、流体排出口114が「第2の流体排出口」に相当し、枝102fや枝105fが「第4の枝」に相当する。バルブ10fは、流体排出口115及び流体排出口112に対応するバルブ15及びバルブ12を備えていない。
【0050】
このように、脈管モデル100fにおける流路形成部材P10~P16の配置及び接続関係は任意に決定することができ、例えば、下流側において他の流路形成部材に接続された流路形成部材P11f,P14fを設けてもよい。このような第7実施形態の脈管シミュレーションモデル1fによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態の脈管シミュレーションモデル1fでは、脈管ルーメン100Lは、上流側から下流側に向かって第4の枝102fに分岐し、かつ、第4の枝102fは、第1の流体排出口111よりも上流側において、第1の枝101fに合流している。また、脈管ルーメン100Lは、上流側から下流側に向かって第4の枝105fに分岐し、かつ、第4の枝105fは、第2の流体排出口114よりも上流側において、第2の枝104fに合流している。このように、流体導入口110よりも下流側において分岐し、流体排出口111,114よりも上流側において合流する第4の枝102f,105fを設けることにより、脈管ルーメン100Lの枝の分岐を、実際の任意の臓器内又は表面における脈管の分岐に似せることができる。
【0051】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
[変形例1]
上記第1~7実施形態では、脈管シミュレーションモデル1,1a~1fの構成の一例を示した。しかし、脈管シミュレーションモデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、脈管ルーメン内の任意の位置、例えば流体排出口の近傍等に、流体中の気体(気泡)を検出する流量センサ等を設けてもよい。この場合、センサの検出値に応じて、バルブの流量又は通過/遮蔽を自動的に変更してもよい。
【0053】
例えば、脈管モデルの各枝に対して、中間開度を用いることで流体の流量を変更可能なバルブを設けた場合、バルブの開度を調整することによって、脈管モデルの各枝の背圧を均一に調整してもよい。また、バルブの開度を調整することに代えて、上流側における流路形成部材の内径と、下流側における流路形成部材の内径とを調整することで、脈管モデルの各枝の背圧を均一に調整してもよい。
【0054】
例えば、脈管シミュレーションモデルは、さらに臓器モデル(例えば、心臓を模した心臓モデル、肝臓を模した肝臓モデル等)を備え、脈管シミュレーションモデルを臓器モデルの内部又は表面に配置したシミュレーション装置として構成されてもよい。例えば、脈管シミュレーションモデルは、さらに内視鏡モデルを備え、内視鏡モデル内を通過した医療デバイスを、流体導入口から脈管ルーメン内に挿入可能なシミュレーション装置として構成されてもよい。
【0055】
[変形例2]
上記第1~7実施形態では、脈管モデル100,100a,100e,100fの構成の一例を示した。しかし、脈管モデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、脈管モデルは、7つの枝を備える構成としたが、上流側から下流側に向かって第1の枝と第2の枝とに分岐して流路を構成する限りにおいて、枝の数は任意に変更できる。例えば、脈管モデルは、複数の流路形成部材が接続されることにより構成されるとしたが、図1で例示したような任意の形状に一体成型された単一の流路形成部材により構成されてもよい。例えば、脈管モデルの内側には、脈管内に生じた病変を模擬した病変部が形成されていてもよい。病変部の形状は、閉塞病変、狭窄病変、石灰化病変等の任意の態様を採用できる。
【0056】
[変形例3]
上記第1~7実施形態では、バルブ保持部20,20a,20b及び分岐保持部30の構成の一例を示した。しかし、脈管モデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、バルブ保持部とバルブとが一体的に構成されていてもよい。例えば、分岐保持部の外側形状は、任意の臓器の外側形状を模した形状としてもよい。この場合、分岐保持部を、柔軟性を有する樹脂材料(例えば、PVA樹脂、シリコン)により形成することで、任意の臓器の触感をさらに模擬してもよい。
【0057】
[変形例4]
第1~7実施形態の脈管シミュレーションモデル1,1a~1fの構成、及び上記変形例1~3の脈管シミュレーションモデルの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2,3実施形態の構成(背圧に関する表示をした構成)において、第6,7実施形態のような脈管モデルの分岐形状を採用してもよい。第4,5実施形態の構成(分岐保持部やバルブ保持部を省略した構成)において、第1実施形態のように背圧に関する情報の表示がない構成を採用してもよく、第3実施形態のように背圧に関する情報がバルブに表示された構成を採用してもよい。第6,7実施形態の構成(脈管モデルの分岐が相違する構成)において、第4,5実施形態のように分岐保持部やバルブ保持部を省略してもよい。
【0058】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1a~1f,1x…脈管シミュレーションモデル
10,10b,10f…バルブ
11~17…バルブ
20,20a,20b…バルブ保持部
30…分岐保持部
100,100a,100e,100f…脈管モデル
100L…脈管ルーメン
101~107…枝
110…流体導入口
111~117…流体排出口
121~127,131~137…背圧に関する情報
200…ポンプ
B1~B22…分岐点
P10~P23,119,120…流路形成部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14