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  • 特許-回転電機のセンサ構造 図1
  • 特許-回転電機のセンサ構造 図2
  • 特許-回転電機のセンサ構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】回転電機のセンサ構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20230830BHJP
【FI】
H02K11/215
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019134395
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021019450
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】光山 明宏
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-156963(JP,A)
【文献】特開2004-222387(JP,A)
【文献】特開2016-031342(JP,A)
【文献】特開2014-183674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00- 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアの端部のエンドプレートに固定された回転検出用の磁石と、前記磁石と対向して設置されて前記磁石の磁束を検知するホール素子とを有する、回転電機のセンサ構造であって、
前記磁石と前記ホール素子との間を遮蔽する遮蔽プレートを備え
前記遮蔽プレートは、前記エンドプレートの一部で構成され、
前記磁石は、前記遮蔽プレートに固定され、
前記エンドプレートの前記ホール素子と対向する部位の前記ホール素子の逆側には凹所が形成され、
前記磁石は前記凹所内に配置され固定され、
前記エンドプレートの前記ホール素子と対向する部位には、前記ホール素子側に突出して前記遮蔽プレートを構成する突出壁部を備え、
前記突出壁部の前記ホール素子とは逆側に前記凹所が形成されている
ことを特徴とする回転電機のセンサ構造
【請求項2】
前記凹所内は段部を介して前記磁石の収容空間を備えた段付き形状に形成され、
前記磁石は前記収容空間内に収容され前記段部に充填される接着剤によって固定される
ことを特徴とする請求項に記載された回転電機のセンサ構造。
【請求項3】
前記凹所内の前記磁石の前記ロータコア側には、第2遮蔽プレートが固定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された回転電機のセンサ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の回転電機の回転状態を検出するセンサの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ等の回転電機には、例えば出力トルクを正確に制御するために、ロータの回転角度や回転速度を検出する回転センサが装備される。一般的に回転センサはロータの永久磁石あるいはロータと共に回転する永久磁石を回転検出用の磁石とし、この磁石が発生する磁束をホール素子で検出するように構成されている(例えば特許文献1)。
【0003】
例えば特許文献1には、ロータと共に回転する磁束測定環にN極とS極とが交互に着磁された永久磁石(回転検出用の磁石)を備えると共に、この永久磁石の近傍に配置され永久磁石の磁束を検出するホール素子とを備えた回転センサが開示されている。磁束測定環は、ロータの軸に取り付けられロータと共に回転する。ホール素子は、磁束測定環の永久磁石の近くに永久磁石と対向して設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-79452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のものでは、磁束測定環をロータとは離して独立に配置しているが、回転センサの構成を簡素化するために、ロータのロータコアの両端部に配置されるエンドプレートを利用して回転センサを構成することが考えられる。つまり、エンドプレートに、回転検出用の磁石を固定し、ホール素子をこの磁石に近接して磁石と対向するように配置して、回転センサを構成する。
【0006】
しかし、例えば回転電機が車両駆動用のモータのように、高熱になりやすい場合には、エンドプレートと回転検出用の磁石との熱膨張差による熱応力で、回転検出用の磁石の破損を招くおそれがある。磁石が破損すると、破損した磁石がホール素子に衝突してホール素子も破損してしまう場合がある。
【0007】
本発明はこのような課題に着目して創案されたもので、回転電機のエンドプレートに回転検出用の磁石を固定したセンサにおいて、磁石が破損してエンドプレートから剥離しても、破損した磁石からホール素子を保護することができるようにした回転電機のセンサ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転電機のセンサ構造は、ロータコアの端部のエンドプレートに固定された回転検出用の磁石と、前記磁石と対向して設置されて前記磁石の磁束を検知するホール素子とを有する、回転電機のセンサ構造であって、前記磁石と前記ホール素子との間を遮蔽する遮蔽プレートを備えていることを特徴としている。
【0009】
前記遮蔽プレートは、前記エンドプレートの一部で構成され、前記磁石は、前記遮蔽プレートに固定されていることが好ましい。
前記エンドプレートの前記ホール素子と対向する部位の前記ホール素子の逆側には凹所が形成され、前記磁石は前記凹所内に配置され固定されることが好ましい。
前記エンドプレートの前記ホール素子と対向する部位には、前記ホール素子側に突出して前記遮蔽プレートを構成する突出壁部を備え、前記突出壁部の前記ホール素子とは逆側に前記凹所が形成されることが好ましい。
前記凹所内は段部を介して前記磁石の収容空間を備えた段付き形状に形成され、前記磁石は前記収容空間内に収容され前記段部に充填される接着剤等によって固定されることが好ましい。
前記凹所内の前記磁石の前記ロータコア側には、第2遮蔽プレートが固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁石が破損してエンドプレートから剥離しても、遮蔽プレートが磁石とホール素子との間を遮蔽するので、破損した磁石からホール素子を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる回転電機のセンサ構造を示すモータの要部断面図であり、(a)はその縦断面図(半部のみ示す)、(b)はその横断面図(図1(a)のA-A矢視断面図)である。
図2】第1実施形態の比較例にかかる回転電機のセンサ構造を示すモータの要部縦断面図(半部のみ示す)である。
図3】第2実施形態にかかる回転電機のセンサ構造を示すモータの要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することや適宜組み合わせることが可能である。
【0013】
〔第1実施形態〕
本実施形態にかかる回転電機は、電動モータ(以下、単にモータという)であり、図1(a)に示すように、モータケース(図示略)内に、中心線CLを中心に回転するロータ1と、ロータ1に対向する図示しないステータとが備えられている。ロータ1は、ロータコア2と、ロータコア2の外周面近傍に埋設された複数の回転駆動用の永久磁石3と、ロータコア2の軸方向両端部に配置されてロータコア2を保護する非磁性体製(例えば、SUS製)のエンドプレート10,20とが備えられている。
【0014】
エンドプレート10,20うちの少なくとも一方(ここでは、エンドプレート10)は非磁性体製(例えば、SUS製)であり、非磁性体製のエンドプレート10の外周寄りには、図1(b)に示すように、N極とS極とが交互に環状に配置された永久磁石(回転検出用の磁石)40が固定されている。回転検出用の磁石40は、環状の1つの磁性体にN極とS極とを交互に着磁させたものでもよいが、本実施形態では、回転検出用の磁石40は、何れも円弧上に形成されたN極磁石41とS極磁石42とを交互に環状に並べて配置して構成している。N極とS極とは同数であり、ここでは4個ずつ設けているが、この個数は限定されない。
【0015】
エンドプレート10の外周寄りにおいて、エンドプレート10の軸方向外側(ロータコア2と逆側)には、実装基板30に装備されたホール素子31が環状に配置された磁石40と対向するように配設されている。ホール素子31は、ロータ1と共に回転する磁石40が発生する磁束を検知してロータ1の回転方向角度や回転速度等の回転情報を検出する。
【0016】
本実施形態では、エンドプレート10の外周寄りのホール素子31と対向する部位に、ホール素子31側に突出した突出壁部11が形成されている。また、突出壁部11の軸方向内側(ロータコア2側、ホール素子31とは逆側)には、環状の凹所12が形成されている。この環状の凹所12内に、環状の回転検出用の磁石40が配置され固定される。この固定は、凹所12の内壁面と磁石40の対向面との隙間に接着剤50を充填して行う。
【0017】
この結果、磁石40とホール素子31との間には、突出壁部11が介在することになり、突出壁部11は、磁石40とホール素子31との間を遮蔽する遮蔽プレートとして機能する。また、エンドプレート10の凹所12内の内周側及び外周側は、エンドプレート10の内壁面13がロータコア2に当接又は極めて接近している。
【0018】
本実施形態にかかる回転電機のセンサ構造は、上述のように構成されており、突出壁部11が、磁石40とホール素子31との間を遮蔽する遮蔽プレートとして機能するので、万一、磁石40が破損してエンドプレート10から剥離した場合でも、破損した磁石40からホール素子31を保護することができる。
【0019】
つまり、例えば回転電機が高速且つ高負荷回転してエンドプレート10が高温になると、熱応力でエンドプレート10と回転検出用の磁石40との相対変位量が大きくなって、回転検出用の磁石の破損を招くおそれがある。しかし、磁石40とホール素子31との間は突出壁部(遮蔽プレート)11で遮蔽されているので、磁石40が破損した場合にも、破損した磁石40がホール素子31に衝突するおそれがなくホール素子31の破損を回避することができる。
【0020】
また、磁石40はエンドプレート10の凹所12内に隙間に接着剤50を充填されて固定されており、また、エンドプレート10の凹所12内の内周側及び外周側は、エンドプレート10の内壁面13がロータコア2に当接又は極めて接近しているので、磁石40が破損した場合でも、ごく小さい破片でない限りは、破片は凹所12内に閉じ込められて、凹所12外に飛び散って部品類に損傷を与えるおそれも抑制される。
【0021】
一方、図2の比較例に示すように、磁石40がエンドプレート10´の外側にホール素子31に対向して固定されている場合には、磁石40が破損すると、破損した磁石40がホール素子31に衝突してホール素子31も破損してしまう場合がある。また、破損した磁石40がモータケース内を移動して種々の部品類の損傷も招くおそれがある。
【0022】
さらに、本実施形態では、回転検出用の磁石40がN極磁石41とS極磁石42とを交互に環状に並べて配置して構成されるので、環状の1つの大きな磁石よりも破損し難く磁石40のコストも抑制できる。
【0023】
〔第2実施形態〕
本実施形態にかかる回転電機は、図3の突出壁部11を中心とした部分断面図に示すように、第1実施形態と同様に、エンドプレート10の外周寄りのホール素子31と対向する部位に、ホール素子31側に突出した突出壁部11が形成されている。また、突出壁部11の軸方向内側には、環状の凹所12Bが形成されている。
【0024】
この環状の凹所12B内は段部14を介してその奥所に磁石40の収容空間を備えた段付き形状に形成されている。磁石40は、段部14の奥の収容空間内に基部を配置され固定される。この固定も、凹所12Bの内壁面と磁石40の対向面との隙間に接着剤50を充填して行う。
【0025】
さらに、凹所12B内の磁石40よりもロータコア2側には、環状のサブプレート(第2遮蔽プレート)60が磁石40を覆うように固定されている。この固定も、凹所12Bの内壁面との隙間に接着剤50を充填して行う。
なお、本実施形態ではサブプレート60に磁性体を使用しているが、サブプレート60の材料はこれに限定されない。
【0026】
本実施形態にかかる回転電機のセンサ構造は、上述のように構成されており、第1実施形態と同様に、突出壁部11が、磁石40とホール素子31との間を遮蔽する遮蔽プレートとして機能するので、万一、磁石40が破損してエンドプレート10から剥離した場合でも、破損した磁石40からホール素子31を保護することができる。
【0027】
また、本実施形態では、段部14によって凹所12Bの開口側(ロータコア2側)の磁石40周り及びサブプレート60に接着剤50を充填し易い空間が確保されるので、接着作業を容易に行えると共に、十分な接着剤50を用いて磁石40及びサブプレート60を強固に固定することができる。
【0028】
そして、サブプレート60が磁石40を覆うように固定されているので、磁石40が破損した場合でも、破片は凹所12内により確実に閉じ込められて、凹所12外に飛び散って部品類に損傷を与えるおそれもより一層抑制される。
【0029】
〔その他〕
上記の各実施形態では、遮蔽プレートがエンドプレート10の一部で構成されているが、遮蔽プレートは磁石とホール素子31との間を遮蔽することができればよく、エンドプレート10とは別部材であってもよい。
また、エンドプレート10の肉厚が十分にあれば、突出壁部11を設けずに、磁石40を収容する凹所12Bのみを設けてもよい。
さらに、電動モータ以外の回転電機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ロータ
2 ロータコア
3 回転駆動用の永久磁石
10,20 エンドプレート
11 突出壁部
12,12B 凹所
30 実装基板
31 ホール素子
40 永久磁石(回転検出用の磁石)
41 N極磁石
42 S極磁石
50 接着剤
60 サブプレート(第2遮蔽プレート)
CL モータの中心線
図1
図2
図3