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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20230830BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20230830BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/26 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019166066
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044725
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 軒介
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 知彦
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047143(JP,A)
【文献】国際公開第2019/145162(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/052711(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/052364(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024444(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 23/60
B60R 1/00
B60R 11/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車を牽引可能な牽引車に設けられたカメラで車両左右後方を撮影する左右後方撮影手段と、
撮影された後方撮影映像の各フレーム内に画面表示領域を設定する画面表示領域設定手段と、
前記後方撮影映像の各フレームに設定される前記画面表示領域の画像を、車両左右後方映像としてモニタに画面表示する画面表示手段と、
を備える車両用表示装置において、
前記左右後方撮影手段に撮影された後方撮影映像の連続するフレーム間、あるいは所定コマ数おきに連続するフレーム間で、描画情報が近似する描画近似領域をそれぞれ特定し、その描画近似領域の動きベクトルを特定する動きベクトル特定手段を備え、
前記画面表示領域設定手段は、特定された前記動きベクトルの水平方向成分を用いて、水平方向における被牽引車が移動した方向に、その移動量と同じ量だけ前記画面表示領域を移動させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
被牽引車を牽引可能な牽引車に設けられたカメラで車両左右後方を撮影する左右後方撮影手段と、
撮影された後方撮影映像の各フレーム内に画面表示領域を設定する画面表示領域設定手段と、
前記後方撮影映像の各フレームに設定される前記画面表示領域の画像を、車両左右後方映像としてモニタに画面表示する画面表示手段と、
を備える車両用表示装置において、
前記左右後方撮影手段に撮影された後方撮影映像の連続するフレーム間、あるいは所定コマ数おきに連続するフレーム間で、描画情報が近似する描画近似領域をそれぞれ特定し、その描画近似領域の動きベクトルを特定する動きベクトル特定手段と、
前記動きベクトル特定手段により特定された描画近似領域のうち動きベクトルが略一致する描画近似領域をベクトル一致領域として特定するベクトル一致領域特定手段と、
を備え、
前記画面表示領域設定手段は、前記ベクトル一致領域特定手段により特定されたベクトル一致領域の動きベクトルの水平方向成分を用いて、水平方向における被牽引車が移動した方向に、その移動量と同じ量だけ前記画面表示領域を移動させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
前記動きベクトル特定手段は、前記後方撮影映像の各フレームにおいて、直近で前記画面表示領域が設定されていた領域とその所定の周辺領域のみを対象にして前記描画近似領域を特定してその動きベクトルを特定する一方、残余領域での前記描画近似領域の特定を省略してその動きベクトルを特定しない請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車と被牽引車とを有した車両においてその車両の左右後方を表示するための車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、牽引車と被牽引車とを有した車両においてその車両の左右後方を表示するために、牽引車の左右にカメラを配置し、それぞれが撮影する映像を牽引車のサイドミラーや、牽引車の車室内左右に配置されたモニタに表示する技術がある。こうした技術では、車両がカーブを曲がるとき、撮影範囲内に被牽引車が大きく映り込み、車両の左右後方が表示されないという課題がある。これに対し、エッジ認識やパターン認識によって被牽引車の後端位置を特定することにより画面表示位置を変更し、確実に車両の左右後方を映し出す技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-310679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした技術では、被牽引車の形状が異なるものに変更されると対応できなくなるという問題がある。例えば、直方体状の被牽引車が直方体とは異なる形のものに代わると、予め登録されているエッジ形状や形状パターンから外れてしまい、被牽引車の後端位置を特定できなくなってしまう。
【0005】
本発明の課題は、被牽引車がどのような形状に代わっても、確実に車両の左右後方を映し出すことが可能となる車両用表示装置を提供することになる。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の車両用表示装置の第一は、
被牽引車を牽引可能な牽引車に設けられたカメラで車両左右後方を撮影する左右後方撮影手段と、
撮影された後方撮影映像の各フレーム内に画面表示領域を設定する画面表示領域設定手段と、
前記後方撮影映像の各フレームに設定される前記画面表示領域の画像を、車両左右後方映像としてモニタに画面表示する画面表示手段と、
を備える車両用表示装置において、
前記左右後方撮影手段に撮影された後方撮影映像の連続するフレーム間、あるいは所定コマ数おきに連続するフレーム間で、描画情報が近似する描画近似領域をそれぞれ特定し、その描画近似領域の動きベクトルを特定する動きベクトル特定手段を備え、
前記画面表示領域設定手段は、特定された前記動きベクトルの水平方向成分を用いて、水平方向における被牽引車が移動した方向に、その移動量と同じ量だけ前記画面表示領域を移動させることを特徴とする。
上記課題を解決するために本発明の車両用表示装置の第二は、
被牽引車を牽引可能な牽引車に設けられたカメラで車両左右後方を撮影する左右後方撮影手段と、
撮影された後方撮影映像の各フレーム内に画面表示領域を設定する画面表示領域設定手段と、
前記後方撮影映像の各フレームに設定される前記画面表示領域の画像を、車両左右後方映像としてモニタに画面表示する画面表示手段と、
を備える車両用表示装置において、
前記左右後方撮影手段に撮影された後方撮影映像の連続するフレーム間、あるいは所定コマ数おきに連続するフレーム間で、描画情報が近似する描画近似領域をそれぞれ特定し、その描画近似領域の動きベクトルを特定する動きベクトル特定手段と、
前記動きベクトル特定手段により特定された描画近似領域のうち動きベクトルが略一致する描画近似領域をベクトル一致領域として特定するベクトル一致領域特定手段と、
を備え、
前記画面表示領域設定手段は、前記ベクトル一致領域特定手段により特定されたベクトル一致領域の動きベクトルの水平方向成分を用いて、水平方向における被牽引車が移動した方向に、その移動量と同じ量だけ前記画面表示領域を移動させることを特徴とする。
【0007】
上記本発明によれば、被牽引車の動きに合わせて各フレームに設定される画面表示領域の位置が動くので、モニタには、車両の左右後方映像が確実に映し出される。
【0008】
前記画面表示領域設定手段は、前記動きベクトル特定手段によって特定された前記動きベクトルに対しその水平方向成分を算出し、算出された水平方向成分に基づいて、前記後方撮影映像の各フレームに設定される前記画面表示領域を移動させることができる。この構成によれば、動きベクトル特定手段によって特定された動きベクトルに対して、高さ方向の成分を無視し、水平方向の成分だけに着目することにより、画面表示領域の設定処理が容易になる。
【0009】
前記動きベクトル特定手段は、前記後方撮影映像の各フレームにおいて、直近で前記画面表示領域が設定されていた領域とその所定の周辺領域のみを対象にして前記描画近似領域を特定してその動きベクトルを特定する一方、残余領域での前記描画近似領域の特定を省略してその動きベクトルを特定しないようにできる。この構成によれば、被牽引車の表示領域を、後方撮影映像の各フレームの全体を対象にして特定するのではなく、各フレームの一部を対象にして特定すればよいので、処理負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の車両用表示装置の一例を簡易的に示したブロック図。
図2図1の車両用表示装置を搭載した車両の直線走行時と左曲がり走行時におけるカメラの撮影範囲を簡略的に示した平面図。
図3図1の車両用表示装置を搭載した車両の直線走行時から左曲がり走行時にかけてのカメラの撮影範囲と、そのときモニタに画面表示される範囲を簡略的に示した正面図。
図4】モニタ表示制御の流れを示したフローチャート。
図5】画面表示領域の設定処理の流れを示したフローチャート。
図6図1の制御部に含まれる各種処理部を示した図。
図7】画面表示領域の移動設定の原理を説明するための説明図。
図8】ブロック設定の処理の変形例を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第一実施例について図面を用いて説明する。
【0012】
図1に示す車両用表示装置1は、制御部2と、その制御部2に接続するカメラ3L、3R及びモニタ4L、4Rと、を有する。車両用表示装置1は、図2及び図3に示すような、牽引車101と、その牽引車101が牽引する被牽引車102と、を有した車両100に搭載される。制御部2は、CPUや、ROM、RAM等の所定の記憶部を有した周知のマイクロコンピュータである。
【0013】
カメラ3L、3Rは、図2及び図3に示すように、牽引車101の左右にそれぞれ配置され、左右それぞれの側から車両後方映像を撮影する。ここでのカメラ3L、3Rには、例えばその撮影範囲として広角の撮影範囲Sを有し、かつ60fps(frame per second)の最大フレームレートを有した周知のCMOSカメラを採用できる。なお、図2の撮影範囲Sは車両100の左側のみを図示しており、右側にも存在するものの図示は省略されている。また、図2は簡略的に描画されており、本発明のカメラ3L、3Rは上述の撮影範囲S及び最大フレームレートのものに限られるものではない。
【0014】
モニタ4L、4Rは、図2及び図3に示すように、牽引車101において運転者の前方側の左右にそれぞれ配置され、対応する側のカメラ3L、3Rが撮影する後方撮影映像のうち、制御部2が画面表示領域Tとして切り出した領域内の映像を画面表示する。モニタ4L、4Rは、例えば牽引車101の車室内左右にそれぞれ配置される。なお、モニタ4L、4Rは、車室内のものではなく、牽引車101の車外左右に位置するサイドミラー103L、103Rに配置されるものでもよい。ここでのモニタ4L、4Rには、周知の液晶ディスプレイ等を採用できる。
【0015】
ところで、図2に示すように、牽引車101と被牽引車102とを有した車両100では、牽引車101にカメラ3L、3Rを搭載して車両後方を撮影すると、右左折時において、図2(b)に示すように、被牽引車102が大きく映り込んで車両後方の視野を確保することが難しい。このため本実施例では、図3に示すように、車両後方を水平方向に広い撮影範囲Sを有するカメラ3L、3Rを用い、その撮影範囲S内のうち画面表示範囲ST内をモニタ4L、4Rに画面表示する場合に、撮影範囲S内で画面表示範囲STを移動させることにより、被牽引車102が大きく映り込まないようにする。具体的にいえば、図7に示すように、カメラ3L、3Rの撮影映像内において上記画面表示範囲STに相当する画面表示領域Tを設定する場合に、その画面表示領域T内で被牽引車102が写る領域D(後述するベクトル一致領域)が大きく占有しないよう移動させる形で設定する。これにより、車両100の右左折時であっても、車両後方映像を被牽引車102に大きく遮られることのなくモニタ4L、4Rに映し続けることができる。
【0016】
以下では、車両左右の後方映像を確実に画面表示するために画面表示領域の移動を実行する画面表示制御について、図4のフローチャートと図6のブロック図を用いて詳細に説明する。
【0017】
なお、ここでは、カメラ3Lの画像をモニタ4Lに画面表示する制御について説明するが、カメラ3Rの画像をモニタ4Rに画面表示する制御についても、同様にしてなされる。
【0018】
制御部2は、車両の電源のONに伴い図4の画面表示制御を開始して、カメラ3L、3R及びモニタ4L、4Rを起動し、撮影及び画面表示を開始させる。これにより制御部2は、図6のカメラ画像入力部21においてカメラ3Lの撮影映像をなす最新のフレームの入力を受けると(S1:左右後方撮影手段)、図6の画面表示領域設定部27において、その最新のフレームに対し画面表示領域Tを設定し(S2:画面表示領域設定手段)、図6の画像表示部28において、設定された画面表示領域T内の画像を切り出して対応するモニタ4Lに出力し、その切り出し画像を画面表示させる(S3:画面表示手段)。これらの処理(S1~S3)は、フレームの入力を受けるたびに繰り返し実行され、これにより、モニタ4Lには、車両後方映像として、各フレームにおいて設定された画面表示領域T内の画像が連続して画面表示される。なお、図4の画面表示制御は、例えば電源のOFF(S4:Yes)に伴い、カメラ3L、3R及びモニタ4L、4Rを起動停止させる形で終了することができる。
【0019】
一方、制御部2は、カメラ3Lの撮影映像をなす最新のフレームの入力を受けると、そのフレームをフレームバッファ22に記憶し、記憶したフレームを、それよりも後に入力されてくるフレームに対し画面表示領域Tを設定するために使用する。以下、その画面表示領域Tの設定処理について、図5のフローチャートと図6のブロック図を用いて具体的に説明する。
【0020】
S3の画面表示領域Tの設定処理(画面表示領域設定手段)が実行されると、制御部2は、まずは現在処理対象とされている最新のフレームF1(図7下図参照)が、S37での画面表示領域Tの設定が既に実行された直近のフレームF0から所定コマ数後のフレームであるか否かを判定する(S31)。フレームF1がフレームF0の所定コマ数後のフレームでなければ(S31:No)、制御部2は、直前のフレーム(図示無し)と同じ位置に画面表示領域Tを設定する(S38)。
【0021】
フレームF1がフレームF0の所定コマ数後のフレームであった場合(S31:Yes)、制御部2は、フレームF1とフレームF0との間で、描画情報が近似する描画近似領域をそれぞれ特定し、その描画近似領域の動きベクトルCを特定する(S32、S33:動きベクトル特定手段)。
【0022】
具体的にいえば、制御部2は、動きベクトル検出部23において、図7(b)に示すように、現在処理対象とされているフレームF1を複数のブロックA(ここではブロックAの一部であるブロックA1~A7を図示)に区分するとともに、区分された各ブロックAの位置情報及び特徴情報とを対応付けたブロック情報を、所定の記憶部(ブロック情報記憶部)に記憶する(S32:ブロック情報記憶手段)。ここでは、フレームF1全体を格子状に区分する形で複数のブロックAを設定し、フレームF1内における各ブロックAの位置情報、特徴情報(色情報、輝度情報等)をブロック情報として所定の記憶部(ブロック情報記憶部)に記憶する。
【0023】
続いて制御部2は、動きベクトル検出部23において、S37での画面表示領域Tの設定を実行した直近のフレームF0(図7(a)参照)に設定された各ブロックB(ここではその一部であるブロックB1~B7を図示)のブロック情報を所定の記憶部(ブロック情報記憶部)から読み出す。そして、それらフレームF1、F0間(所定フレーム間)において、特徴情報が一致するブロックA、Bを同一のブロック(描画近似領域)として特定し、特定された同一のブロックA、B(描画近似領域)の動きベクトルCを、現在処理対象とされているフレームF1の動きベクトルCとして算出する(S33:動きベクトル算出手段)。
【0024】
なお、動きベクトルCとは、前後のフレームF0、F1において特徴情報が一致するブロックB、Aのうち、前のフレームF0の時の位置から、後のフレームF1の時の位置に向かう位置ベクトルのことである。図7では、ブロックA1-B1、A2-B2、A3-B3、A4-B4、A5-B5、A6-B6、A7-B7のペアがそれぞれ同一ブロックとして特定されており、それらに対し動きベクトルC1~C7が図示されている。ただし、C4は、A4とB4の位置に変化が無いため図示していない。
【0025】
次に制御部2は、特定された動きベクトルが略一致するベクトル一致領域を特定する(ベクトル一致領域特定手段)。なお、ここでいう略一致とは、向きと大きさの違いが5%以下のものとするが、この数値は被牽引車102の形状やカメラ3L、3Rの最大フレームレート等に応じて変更できるようにしてもよい。ここでの制御部2は、動き相関検出部24において、算出された動きベクトルCが所定の誤差範囲内で一致するブロックA(ベクトル一致領域)を特定するとともに、一致したブロックAのうち一致した数が最も多かったブロックAが占める領域を、被牽引車102が写し出されたベクトル一致領域D(被牽引車領域)として特定する(S34、S35:最多一致ブロック特定手段)。図3に示すように、カメラ3Lが撮影する被牽引車102の映像は、前後のフレームF0、F1の間(所定フレーム間)で、基本的には全体が略水平方向に一定量だけ移動する。これに対し背景の映像は、水平方向だけでなく垂直方向にも移動量を有していたり、水平方向にのみ移動量を有していた場合でも被牽引車102とは異なる移動量を有する。このため、前後のフレームF0、F1の間で一定量だけ移動したブロック群を特定することにより、そのブロック群をベクトル一致領域Dとして特定することができる。ここでは図7(b)に示すように、現在処理対象とされているフレームF1においてロックA1、A2、A3がベクトル一致領域Dとして特定され、図7(a)に示すように、S37での画面表示領域Tの設定を実行した直近のフレームF0では、ブロックB1、B2、B3がベクトル一致領域Dとして特定されている。
【0026】
さらに制御部2は、特定されたベクトル一致領域Dの動きベクトルに基づいて、現在処理対象のフレームF1に画面表示領域Tを設定する(S35~S37)。具体的にいえば、制御部2は、特定されたベクトル一致領域Dの動きベクトルに対しその水平方向成分Pを算出し、算出された水平方向成分Pに基づいて、フレームF1に画面表示領域Tを設定する。ここでの制御部2は、まずは動き水平成分分離部25において、前後のフレームF0、F1の間(所定フレーム間)におけるベクトル一致領域Dの水平方向の動きベクトルPを取得する(S35:水平ベクトル取得手段)。具体的にいえば、動き水平成分分離部25において、最多一致数と特定された各ブロックAの動きベクトルCの水平方向成分Cxの平均値を、ベクトル一致領域Dの水平方向の動きベクトルPとして算出する。ここでは、図7に示すように、最多一致数と特定された各ブロックAの動きベクトルCは、C1、C2、C3である。それらの動きベクトルC1、C2、C3はそれぞれほぼ水平なベクトルであり、互いにほぼ一致しているといえるが、わずかなずれを有する可能性があるため、C1、C2、C3の水平方向成分Cx1、Cx2、Cx3の平均値を算出し、これをDの水平方向の動きベクトルPとして算出する。続いて制御部2は、水平移動画素算出部26において、算出された水平方向の動きベクトルPを、フレームF1内で画面表示領域Tを水平方向に移動させる際の画素移動量に換算する(S36)。そして、その算出結果に基づいて制御部2は、画面表示領域設定部27において、フレームF0に設定された画面表示領域Tを、算出された移動画素数の分だけ水平方向に移動した位置で、フレームF1に新たな画面表示領域Tを設定する(S37)。なお、画面表示領域Tの形状・大きさの変更は生じない。
【0027】
このように、図5に示す画面表示領域Tの設定処理によれば、所定フレーム間において、被牽引車102が移動した量と同じ量だけ画面表示領域Tを移動して設定するから、カメラ3Lが撮影した車両後方映像の中から、被牽引車102に大きく遮られることのない領域の画像を、モニタ4Lに常に表示することができる。これにより、車両後方の視野を確実に確保することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記第一実施例において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0029】
以下、本発明の他の実施例及び変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能部や同様の機能部については、同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。また、上記実施例と下記実施例及び変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0030】
上記実施例においては、動きベクトルが略一致するベクトル一致領域を特定し、そこから被牽引車両102が写るベクトル一致領域Dを特定するという二段階の処理を実行しているが、前者のベクトル一致領域の特定のみを実行とし、後者の、被牽引車102が写るベクトル一致領域の特定を省略した一段階の処理としてもよい。一段階の場合、前者のベクトル一致領域の動きベクトルPに基づいて、後方撮影映像の各フレームに画面表示領域Tを設定することになる。
【0031】
上記実施例においては、カメラ3L、3Rに撮影された後方撮影映像の、所定コマ数おき(例えば1コマおき)に連続するフレーム間で描画近似領域A、Bをそれぞれ特定し、その動きベクトルC1、C2、C3を特定しているが、カメラ3L、3Rに撮影された後方撮影映像の連続するフレーム間で描画近似領域A、Bをそれぞれ特定し、その動きベクトルC1、C2、C3を特定してもよい。
【0032】
上記実施例において、各フレームF1、F0内でのブロックB、Aの設定は、格子状に設定されているが、他の方法でもよく、例えば色情報や輝度情報等の特徴情報が所定範囲内で一致するその範囲全体を1ブロックとするような形で設定してもよい。
【0033】
上記実施例において、図5のS32の処理は、図4のS3の処理で処理対象とされているフレーム全体を対象にしてブロック設定をしているが、図8に示すように、例えばフレームF内において、直近で設定された画面表示領域Tとその所定の周辺領域Uのみを対象に、ブロック設定(ブロック区分)を行い、残余領域でのブロック設定を省略してもよい。
【0034】
また、上記実施例の変形例として、制御部2が、牽引車101と被牽引車102とが車両前後方向において直線的に連結されているか否かを判定し(直線連結判定手段)、直線的に連結されている場合に、画面表示領域Tを、図4のS3による設定位置を無効にして、フレーム内の予め定められたデフォルト位置に強制設定するようにしてもよい(デフォルト位置設定手段)。
【0035】
具体的にいえば、図1に示すように、牽引車101と被牽引車102との相対角度を連結角度θ(図2参照)として検出する連結角度検出部5を、制御部2に接続した形で設け、制御部2は、牽引車101と被牽引車102の連結角度θを検出する(連結角度検出手段)。連結角度検出部5には、例えば周知のエンコーダ等を採用できる。そして、制御部2は、連結角度θの検出結果に基づいて、連結角度θが180度(図2(a)参照)であると判定した場合に、牽引車101と被牽引車102とが車両前後方向において直線的に連結されていると判断できるから、画面表示領域Tを予め定められたデフォルト位置に強制設定する。デフォルト位置としては、例えば図3の上図の画面表示範囲STと同じ位置に設定しておくことができる。また、制御部2は、連結角度θの検出結果に基づいて、連結角度θが180度より小さい場合(牽引車101に対し被牽引車102が左側に位置する場合:(図2(b)参照)には、右側のカメラ3Rが撮影する撮影映像に設定する画面表示領域Tを上記のデフォルト位置に強制設定し、連結角度θが180度より大きい場合(牽引車101に対し被牽引車102が右側に位置する場合:図示無し)には、左側のカメラ3Lが撮影する撮影映像に設定する画面表示領域Tを上記のデフォルト位置に強制設定する。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用表示装置
100 車両
101 牽引車
102 被牽引車
3L、3R カメラ
F0、F1 フレーム
A(A1~A7)、B(B1~B7) ブロック(描画近似領域)
C 各ブロックの動きベクトル
D ベクトル一致領域
P ベクトル一致領域Dの水平方向の動きベクトル
S 撮影範囲
T 画面表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8