IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

特許7339825フレキソ印刷原版、及びブロック共重合体組成物
<>
  • 特許-フレキソ印刷原版、及びブロック共重合体組成物 図1
  • 特許-フレキソ印刷原版、及びブロック共重合体組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】フレキソ印刷原版、及びブロック共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20230830BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20230830BHJP
   B41N 1/12 20060101ALI20230830BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20230830BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20230830BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20230830BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G03F7/033
G03F7/00 502
B41N1/12
B41C1/00
C08F279/02
C08F297/04
C08F2/44 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019170576
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021047322
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安西 信裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 芙弥
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直樹
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-104359(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111669(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/072613(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/051863(WO,A1)
【文献】特表2002-519465(JP,A)
【文献】特表2002-534714(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168647(WO,A1)
【文献】米国特許第05731129(US,A)
【文献】国際公開第2005/123834(WO,A1)
【文献】特開2000-086861(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/033
G03F 7/00
C08F 279/02
C08F 297/04
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
当該支持体上に積層された感光性樹脂組成物層と、を、有する、
フレキソ印刷原版であって、
前記感光性樹脂組成物層は、
熱可塑性エラストマー(a)、光重合性不飽和単量体(b)、及び、光重合開始剤(c
)を含有し、
前記熱可塑性エラストマー(a)が、
少なくとも1つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少な
くとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、下記一
般式(IV)~(VII)のいずれかで表されるブロック共重合体(a-1)と、
少なくとも2つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少な
くとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、前記ブ
ロック共重合体(a-1)とは異なるブロック共重合体(a-2)と、を、含み、
前記熱可塑性エラストマー(a)全体の重量平均分子量が100,000以上300,0
00以下であり、
前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量
が、それぞれ25.0質量%以上であり、
前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中の共役ジエン単量体単位に基づくビ
ニル結合量が、それぞれ20.0質量%以上である、
フレキソ印刷原版。
A-B)nX (IV)
(B-A)nX (V)
[(A-B)nA]X (VI)
[(B-A)nB]X (VII)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリン
グ剤の残基を示し、nは1~5の整数を示す。)
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマー(a)中の前記ブロック共重合体(a-1)の含有量が、
10.0質量%以上65.0質量%以下である、請求項1に記載のフレキソ印刷原版。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマー(a)中の前記ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子
量が、4,5000以上150,000以下である、
請求項1又は2に記載のフレキソ印刷原版。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(a-2)が、下記一般式(i)~(iv)で示されるブロック
共重合体から選ばれる少なくとも2種のブロック共重合体を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフレキソ印刷原版。
[(A-B)nmX (i)
[(B-A)nmX (ii)
[(A-B)nA]mX (iii)
[(B-A)nB]mX (iv)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリン
グ剤の残基又は重合開始剤の残基を示し、nは1~5の整数を示し、mは2~8の整数を
示す。)
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマー(a)が、
測定温度200℃、荷重5kgにおけるメルトフローレートが、1(g/10min)
以上20(g/10min)以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフレキソ印刷原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷原版、及びブロック共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物としては、例えば、熱可塑性エラストマー、光重合性不飽和単量体、可塑剤、及び光重合開始剤を含有するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
フレキソ印刷版用のフレキソ印刷原版としては、ポリエステルフィルム等を支持体とし、その上に感光性樹脂組成物を含む層(感光性樹脂組成物層)を積層し、必要に応じて、ネガフィルムとの接触をなめらかにする目的で、感光性樹脂組成物層の上に、スリップ層若しくは保護層、又は赤外レーザーで切除可能な赤外線感受性物質を含む紫外線遮蔽層を積層した構成を有するものが知られている。
【0003】
このようなフレキソ印刷原版からフレキソ印刷版を製版する方法としては、例えば、支持体を通して全面に紫外線露光を施し(バック露光)、薄い均一な硬化層を設ける。次いでネガフィルムを通して、又は前記紫外線遮蔽層の上から直接、感光性樹脂組成物層の面に画像露光(レリーフ露光)を行い、未露光部分を、現像用溶剤で洗い流すか、或いは熱溶融後に吸収層で吸収除去し(現像工程)、その後、後処理露光することによって製造する方法が一般的である。
【0004】
上記の方法により製造されるフレキソ印刷版は、フィルムや紙、段ボール等の印刷に用いられる。
近年、段ボール印刷においては、紙の低級紙化が進んでおり、紙の印刷部表面が粗面化していることから、印刷時のインキ転写性が悪化している。
かかる問題に対応するための方法として、レーザー描画技術により微細なマイクロセルを印刷版の表面に形成し、印刷版の表面積を上げることにより、アニロックスからのインキ受理量を上げ、インキ転写性を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-155418号公報
【文献】特開平02-108632号公報
【文献】特開平11-249305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した未露光部の現像工程において、現像時間が長くなると、現像用溶剤が、印刷原版の感光性樹脂組成物の露光部に浸透し、膨潤し、現像工程後の乾燥によって感光性樹脂組成物層が収縮し、印刷原版に反りが発生してしまうという問題を生じるため、前記現像工程時間は短い方が好ましい。
現像工程時間を短くするための方法としては、感光性樹脂組成物の現像用溶剤に対する溶解性を上げることが有効であり、このための手段として、感光性樹脂組成物中の熱可塑性エラストマーの含有量を下げる方法が知られている。
【0007】
しかしながら、感光性樹脂組成物中の熱可塑性エラストマーの含有量を下げると、感光性樹脂組成物の耐久性が低下し、印刷時に印刷版のカケが起こりやすくなるといった不具合が発生する、という問題点がある。
【0008】
そこで本発明においては、段ボール印刷時の段目が少なく、印刷版の製造時の現像工程時間が短く、印刷版のカケ耐性に優れ、印刷時のインキ絡みの少ないフレキソ印刷版を得ることのできる、フレキソ印刷原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、支持体と、当該支持体上に積層された特定の構成材料を含有する感光性樹脂組成物層とを有するフレキソ印刷原版により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0010】
〔1〕
支持体と、
当該支持体上に積層された感光性樹脂組成物層と、を、有する、
フレキソ印刷原版であって、
前記感光性樹脂組成物層は、
熱可塑性エラストマー(a)、光重合性不飽和単量体(b)、及び、光重合開始剤(c
)を含有し、
前記熱可塑性エラストマー(a)が、
少なくとも1つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少な
くとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、下記一
般式(IV)~(VII)のいずれかで表されるブロック共重合体(a-1)と、
少なくとも2つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少な
くとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、前記ブ
ロック共重合体(a-1)とは異なるブロック共重合体(a-2)と、を、含み、
前記熱可塑性エラストマー(a)全体の重量平均分子量が100,000以上300,0
00以下であり、
前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量
が、それぞれ25.0質量%以上であり、
前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中の共役ジエン単量体単位に基づくビ
ニル結合量が、それぞれ20.0質量%以上である、
フレキソ印刷原版。
A-B)nX (IV)
(B-A)nX (V)
[(A-B)nA]X (VI)
[(B-A)nB]X (VII)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリン
グ剤の残基を示し、nは1~5の整数を示す。)
〔2〕
前記熱可塑性エラストマー(a)中の前記ブロック共重合体(a-1)の含有量が、
10.0質量%以上65.0質量%以下である、前記〔1〕に記載のフレキソ印刷原版。
〔3〕
前記熱可塑性エラストマー(a)中の前記ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子
量が、4,5000以上150,000以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のフレキ
ソ印刷原版。
〔4〕
前記ブロック共重合体(a-2)が、下記一般式(i)~(iv)で示されるブロック
共重合体から選ばれる少なくとも2種のブロック共重合体を含む、前記〔1〕乃至〔3〕
のいずれか一に記載のフレキソ印刷原版。
[(A-B)nmX (i)
[(B-A)nmX (ii)
[(A-B)nA]mX (iii)
[(B-A)nB]mX (iv)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリン
グ剤の残基又は重合開始剤の残基を示し、nは1~5の整数を示し、mは2~8の整数を
示す。)
〔5〕
前記熱可塑性エラストマー(a)が、
測定温度200℃、荷重5kgにおけるメルトフローレートが、1(g/10min)
以上20(g/10min)以下である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のフレキソ印刷原版。




【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷時の段目が少なく、現像時間が短く、印刷版のカケ耐性に優れ、印刷時のインキ絡みの少ないフレキソ印刷版が得られるフレキソ印刷原版を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】印刷版の耐カケ性の評価に用いる印刷版の概略正面図を示す。
図2】印刷版の耐カケ性の評価方法を示す、模式的概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0014】
〔フレキソ印刷原版〕
本実施形態のフレキソ印刷原版は、支持体と、当該支持体上に積層された感光性樹脂組成物層とを有する。
前記感光性樹脂組成物層は、熱可塑性エラストマー(a)(以下、(a)、(a)成分と記載する場合もある)、光重合性不飽和単量体(b)(以下、(b)、(b)成分と記載する場合もある)、及び、光重合開始剤(c)(以下、(c)、(c)成分と記載する場合もある)を含有する。
前記熱可塑性エラストマー(a)は、少なくとも1つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、下記一般式(I)~(VII)のいずれかで表されるブロック共重合体(a-1)と、少なくとも2つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、前記ブロック共重合体(a-1)とは異なるブロック共重合体(a-2)とを含む。
前記熱可塑性エラストマー(a)全体の重量平均分子量が100,000以上300,000以下であり、前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量がそれぞれ25.0質量%以上であり、前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中の共役ジエン単量体単位に基づくビニル結合量がそれぞれ20.0質量%以上である。
(A-B)n (I)
(A-B)nA (II)
(B-A)nB (III)
(A-B)nX (IV)
(B-A)nX (V)
[(A-B)nA]X (VI)
[(B-A)nB]X (VII)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示し、nは1~5の整数を示す。)
【0015】
段ボール印刷時の段目、すなわち印刷ムラが少なく、現像時間が短く、フレキソ印刷版のカケ耐性に優れ、保管時の熱履歴による版厚変化を低減し、印刷時のインキ絡みの少ないフレキソ印刷版(以下、単に「印刷版」ともいう。)を得ることができる要因は、次のように考えられている。ただし、要因は以下に限定されない。
感光性樹脂組成物層に含有される熱可塑性エラストマー(a)は、現像液と相互作用し、溶媒和効果によって現像液中に溶解し分散する。すなわち、熱可塑性エラストマー(a)の溶解速度は現像液との溶媒和の起こりやすさに依存するが、溶媒和が起こるためには、現像液の分子が熱可塑性エラストマー(a)の分子間に近づき、熱可塑性エラストマー(a)同士の分子間相互作用を断ち切る必要があるため、熱可塑性エラストマー(a)の分子構造に依存する。
本発明者らは、感光性樹脂組成物に含有される熱可塑性エラストマー(a)が、前記一般式(I)~(VII)のいずれかで表されるブロック共重合体(a-1)を含有することにより、前述の溶媒和効果が高まり、現像時間を短くすることができることを見出した。
また、本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、熱可塑性エラストマー(a)全体の重量平均分子量が100,000以上300,000以下であって、前記熱可塑性エラストマー(a)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が25.0質量%以上であり、前記熱可塑性エラストマー(a)中の共役ジエン単量体単位のビニル結合量が20.0質量%以上とすることで、段ボール印刷時の段目抑制が図られ、現像時間が短く、印刷版のカケ耐性に優れ、印刷時のインキ絡みの抑制効果に優れた、フレキソ印刷版を製造できる、フレキソ印刷原版が得られることを見出した。
現像時間短縮、すなわち現像液への溶解性向上とフレキソ印刷版のカケ耐性とは相反する特性であり、熱可塑性エラストマー(a)の構造の制御のみでこれらの特性を全て満たすことは、驚くべきことである。
【0016】
(支持体)
本実施形態のフレキソ印刷原版に用いる支持体は、感光性樹脂組成物層を支持することができるものであれば、特に限定されない。
支持体としては、例えば、ポリエステルフィルムが挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0017】
(感光性樹脂組成物層)
本実施形態のフレキソ印刷原版は、前記支持体上に、感光性樹脂組成物層が積層された構成を有している。
感光性樹脂組成物層は、例えば、感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物をシート成形し、ロールラミネートにより支持体に密着させ、ラミネート後加熱プレスすることにより得られる。また、当該方法によれば、より一層厚み精度に優れた感光性樹脂組成物層が得られる。
本実施形態のフレキソ印刷原版は、支持体、感光性樹脂組成物層の原料である感光性樹脂組成物等を用いて、種々の方法で作製することができる。
例えば、感光性樹脂組成物層の原料を適当な溶媒、例えばクロロホルム、テトラクロルエチレン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に溶解させて混合し、型枠の中に流延して溶剤を蒸発させ、そのまま板状にすることができ、これを支持体と積層することによりフレキソ印刷原版が得られる。
また、溶剤を用いず、ニーダー、ロールミル或いはスクリュウ押出機で混練後、カレンダーロールやプレス等により所望の厚さに成形し、これを支持体と積層することによりフレキソ印刷原版が得られる。
本実施形態のフレキソ印刷原版は、これらの作製方法により得られるものに限定されるものではない。
【0018】
感光性樹脂組成物は、通常粘着性を有するため、製版時その上に重ねられるネガフィルムとの接触性を向上させるために、或いはネガフィルムの再使用を可能にするために、感光性樹脂組成物層の表面に、溶剤可溶性の薄いたわみ性を有する保護層(例えば特公平5-13305号公報参照)をさらに設けてもよい。
また、このたわみ性を有する保護層の代わりに、赤外線感受性物質を含む紫外線遮蔽層を設け、赤外線レーザーでの直接描画により、この紫外線遮蔽層そのものをネガフィルムとして用いてもよい。
いずれの場合も、露光が終了してから、感光性樹脂組成物層の未露光部を洗い出しする際に、この薄いたわみ性を有する保護層又は紫外線遮蔽層も同時に除去される。
溶剤可溶な薄いたわみ性を有する保護層として、例えば、洗い出し液に可溶性のポリアミド、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロースエステル等の層を感光性樹脂組成物層の表面に設ける場合には、当該保護層の材料を適当な溶剤に溶かしてその溶液を直接感光性樹脂組成物層にコーティングしてもよい。或いはポリエステル、ポリプロピレン等のフィルムにコーティング(保護フィルム)し、その後、この保護フィルムを感光性樹脂組成物層にラミネート又はプレス圧着して保護層を転写させてもよい。
保護層は、支持体と同様に、感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物をシート成形し、ロールラミネートにより保護フィルムに密着させ、ラミネート後加熱プレスすることにより得られる。
【0019】
感光性樹脂組成物層は、熱可塑性エラストマー(a)、光重合性不飽和単量体(b)、及び光重合性開始剤(c)を含有する。
【0020】
<熱可塑性エラストマー(a)>
本実施形態のフレキソ印刷原版を構成する感光性樹脂組成物の構成材料として用いられる熱可塑性エラストマー(a)とは、高温で可塑化されて成形でき、常温ではゴム弾性体としての性質を示す高分子である。
熱可塑性エラストマー(a)は、少なくとも1つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、下記一般式(I)~(VII)のいずれかで表されるブロック共重合体(a-1)と、少なくとも2つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、前記ブロック共重合体(a-1)とは異なるブロック共重合体(a-2)からなるブロック共重合体組成物を含有する。
すなわち、熱可塑性エラストマー(a)は、前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)からなるブロック共重合体組成物を含み、必要に応じて、その他の、エチレンやプロピレンを主体とするブロックをさらに含有してもよい。
なお、本明細書において「主体」とは、含有量が70質量%以上であることを指す。
【0021】
(A-B)n (I)
(A-B)nA (II)
(B-A)nB (III)
(A-B)nX (IV)
(B-A)nX (V)
[(A-B)nA]X (VI)
[(B-A)nB]X (VII)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示し、nは1~5の整数を示す。)
【0022】
また、フレキソ印刷版の画像再現性や成形性の観点から、前記ブロック共重合体(a-2)は、下記一般式(i)~(iv)で示されるブロック共重合体から選ばれる少なくとも2種のブロック共重合体を含むことが好ましい。
[(A-B)nmX (i)
[(B-A)nmX (ii)
[(A-B)nA]mX (iii)
[(B-A)nB]mX (iv)
(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示し、nは1~5の整数を示し、mは2~8の整数を示す。)
【0023】
重合体ブロック(A)を構成するビニル芳香族単量体単位としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α-メチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられ、特に入手性の観点から、スチレンが好ましい。
これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
熱可塑性エラストマー(a)中の、重合体ブロック(A)の含有量は、未硬化のフレキソ印刷原版の耐コールドフロー性、及びフレキソ印刷版の耐カケ性の観点から、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは27質量%以上であり、さらに好ましくは、28質量%以上である。
【0025】
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)としては、以下に限定されないが、例えば、ブタジエンやイソプレン及び/又はその水素添加物等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、共役ジエンの水素添加は、芳香族性を有する熱可塑性ブロック共重合体とした後に行ってもよい。
この中でも表面の低粘着性化、印刷版の耐磨耗性或いは耐カケの観点から、ブタジエン及び/又はその水素添加物が好ましい。
【0026】
熱可塑性エラストマー(a)中の、重合体ブロック(B)の含有量は、柔軟性の観点から、好ましくは、60~75質量%であり、より好ましくは65~73質量%であり、さらに好ましくは68~72質量%である。
【0027】
熱可塑性エラストマー(a)全体の重量平均分子量は、成形加工性と得られる感光性樹脂組成物の固体維持性とのバランスに優れる、という観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)用いたポリスチレン換算標準ポリスチレン換算で、100,000~300,000であり、現像速度の観点から100,000~250,000がより好ましく、100,000~200,000がさらに好ましい。
【0028】
熱可塑性エラストマー(a)中の、ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量は、成形の容易さの観点から45,000以上100,000以下が好ましく、より好ましくは47,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは50,000以上80,000以下である。
【0029】
前記ブロック共重合体(a-1)及びブロック共重合体(a-2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、耐久性の観点から、それぞれ25.0質量%以上であり、好ましくは27質量%以上であり、より好ましくは28質量%以上である。
前記ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、合成時の配合比により上記数値範囲に制御することができる。
【0030】
前記ブロック共重合体(a-1)及びブロック共重合体(a-2)中の共役ジエン単量体単位に基づくビニル結合量、耐カケ性の観点から、20.0質量%以上であり、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは27質量%以上である。
【0031】
熱可塑性エラストマー(a)中のブロック共重合体(a-1)の含有量は、フレキソ印刷版の白抜き深度の観点から、10.0質量%以上が好ましく、未硬化樹脂のコールドフロー耐性、耐カケ性の観点から65.0質量%以下が好ましい。
下限値は、より好ましくは現像速度の観点から20.0質量%以上であり、さらに好ましくは30.0質量%以上であり、さらにより好ましくは40.0質量%を超え、よりさらに好ましくは50.0質量%を超えるものとする。
また、ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)からなるブロック共重合体組成物中の、ブロック共重合体(a-1)の含有量は、現像速度の観点から20.0質量%以上であるものとし、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。
前記ブロック共重合体組成物中の、ブロック共重合体(a-1)の含有量は、コールドフロー耐性の観点から65.0質量%以下であるものとし、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。
【0032】
前記熱可塑性エラストマー(a)、及びブロック共重合体組成物は、成形加工性の観点から、測定温度200℃、荷重5kgの条件で測定したメルトフローレートが1(g/10min)以上であることが好ましく、2(g/10min)以上であることがより好ましい。また、コールドフロー低減の観点から20(g/10min)以下であることが好ましく、15(g/10min)以下であることがより好ましい。
メルトフローレートは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
感光性樹脂組成物中の熱可塑性エラストマー(a)の含有量は、耐久性の観点から、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
また、成形性の観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
<熱可塑性エラストマー(a)以外のエラストマー>
感光性樹脂組成物層には、上述した構成の熱可塑性エラストマー(a)以外の、エラストマー(その他のエラストマー)を含有してもよい。
その他のエラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。
その他のエラストマーの含有量は、樹脂の相溶性の観点から、感光性樹脂組成物中、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0~5質量%がさらに好ましい。
【0035】
<光重合性不飽和単量体(b)>
本実施形態のフレキソ印刷原版を構成する感光性樹脂組成物層は、光重合性不飽和単量体(b)を含有する。
光重合性不飽和単量体(b)とは、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物を言う。
【0036】
光重合性不飽和単量体(b)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N-ビニルピロリドン;N-ビニルカルバゾール;N-置換マレイミド化合物等が挙げられる。
特に、種類の豊富さの観点から、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体が好ましい。
前記誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を有する脂環族化合物;ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、あるいはナフタレン骨格、アントラセン骨格、ビフェニル骨格、フェナントレン骨格、フルオレン骨格等を有する芳香族化合物;アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基等を有する化合物;アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物等が挙げられる。
また、窒素、硫黄等の元素を含有した複素芳香族化合物であってもよい。
前記(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサンジオール、ノナンジオール等のアルカンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールのジアクリレート及びジメタクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート;イソボロニル(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
光重合性不飽和単量体(b)は、感光性樹脂組成物層中、光架橋性の観点から1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましい。
また、印刷版の硬度の観点から20質量%以下がこのましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。
特に、ジアクリレートモノマーを含有するものを、1~20質量%含有することが好ましい。
【0038】
<光重合開始剤(c)>
本実施形態のフレキソ印刷原版を構成する感光性樹脂組成物層は、光重合開始剤(c)を含有する。
光重合開始剤(c)とは、光のエネルギーを吸収し、ラジカルを発生する化合物を意味する。
光重合開始剤(c)には、公知の各種のものを用いることができるが、各種の有機カルボニル化合物、特に芳香族カルボニル化合物が好適である。
光重合開始剤(c)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7-ビスアクリジニルヘプタン;9-フェニルアクリジン等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、感光性樹脂組成物層は、少なくとも2種類以上の光重合開始剤(c)を含有することが好ましく、具体的には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンと、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4’-モルフォリノブチロフェノンとの組み合わせが挙げられる。
【0039】
光重合開始剤(c)の含有量は、感光性樹脂組成物層中、所定の下限値以上であることにより、細かい点や文字の形成性の低下を抑制し、所定の上限値以下であることにより、紫外線等の活性光の透過率低下を抑制するため、好ましくは1.0質量%~5.0質量%であり、より好ましくは1.2質量%~4.0質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%~3.5質量%である。
【0040】
<共役ジエンゴム>
本実施形態のフレキソ印刷原版を構成する感光性樹脂組成物層は、共役ジエンゴムをさらに含有することができる。
共役ジエンゴムは、ジエンから得られる。ジエンとしては、入手性の観点で、イソプレン及び/又はブタジエンが好ましく、耐カケ性の観点から、ブタジエンがより好ましい。
共役ジエンゴムとしては、例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等が挙げられる。また、市販品としては、B-2000(日本曹達社製商品名)が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
共役ジエンゴム中のビニル含有量は、微小な画像の形成性や耐カケ性の観点からより高い方がよく、好ましくは50mol%以上であり、より好ましくは70mol%以上であり、さらに好ましくは75mol%以上である。
共役ジエンゴム中のビニル含有量は、プロトンNMR(核磁気共鳴スペクトル)より求めることができる。
【0042】
共役ジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は、取り扱い性及び感光性樹脂組成物の相溶性の観点からより低い方がよく、耐カケ性の観点から高い方がよく、好ましくは1000~50000であり、より好ましくは2000~30000であり、さらに好ましくは3000~20000である。
共役ジエンゴムの重量平均分子量は、(C)成分の重量平均分子量の測定と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0043】
共役ジエンゴムの含有量は、感光性樹脂組成物層の総量(100質量%)に対して、画像再現性、耐カケ性、及び柔軟性の観点から、好ましくは3.0質量%以上であり、フレキソ印刷原版の固体維持性の観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは5.0~30質量%であり、さらに好ましくは7.0~20質量%である。
【0044】
<その他の成分>
本実施形態のフレキソ印刷原版を構成する感光性樹脂組成物層は、所望に応じ種々の補助添加成分、例えば、可塑剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、酸化防止剤等をさらに含有することができる。
【0045】
(感光性樹脂組成物層の製造方法)
感光性樹脂組成物層は、種々の方法で製造することができる。
例えば、上述した熱可塑性エラストマー(a)、光重合性不飽和単量体(b)、光重合開始剤(c)及び必要に応じて共役ジエンゴム、その他の成分を、感光性樹脂組成物の原料として、所定の溶媒、例えば、クロロホルム、テトラクロロエチレン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶媒に溶解させて混合し、型枠の中に流延して溶剤を蒸発させ、そのまま板とすることにより製造することができる。
また、溶剤を用いずに、ニーダー又はロールミルで混練し、押し出し機、射出成形機、プレス等により所望の厚さの板に成形することにより製造することもできる。
【0046】
〔フレキソ印刷原版の製造方法〕
本実施形態のフレキソ印刷原版は、例えば、以下の方法により製造することができる。
感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物成分を、支持体に塗布する、もしくは、押し出し機、射出成形、プレス成形を用いて、支持体に感光性樹脂組成物層を設け、このようにして得られた感光性樹脂組成物層をフィルム上に形成させた非赤外線遮蔽層もしくは紫外線吸収層と接する形で貼り合わせることにより、フレキソ印刷原版を製造することができる。
【0047】
〔フレキソ印刷版〕
フレキソ印刷版は、上述した本実施形態のフレキソ印刷原版(フレキソ印刷版用感光性構成体)から製版される。
フレキソ印刷原版からフレキソ印刷版を製版する一般的な方法としては、まず支持体を通して全面に紫外線露光を施し(バック露光)、薄い均一な硬化層を設け、次いでネガフィルムを通して、若しくは紫外線遮蔽層の上から直接、感光性樹脂組成物層の面に画像露光(レリーフ露光)を行い、未露光部分を現像用溶剤で洗い流すか、或いは熱溶融後に吸収層で吸収除去後に、後処理露光することによって製造される。
ここで、「硬化層」とは、感光性樹脂組成物層のうち、例えば紫外線の照射を受けて、硬化した層を意味する。
具体的には、以下の方法により製造することができる。
【0048】
先ず、フレキソ印刷原版の支持体を通して露光を行って、感光性樹脂組成物層を光硬化させ、薄い均一な硬化層を設ける(バック露光)。
フレキソ印刷原版において、感光性樹脂組成物層上に非赤外線遮蔽層が積層されている場合であって、当該非赤外線遮蔽層にフィルムが貼り合わされている場合には、まずフィルムを剥離する。
その後、非赤外線遮蔽層に赤外線をパターン照射して、感光性樹脂組成物層上にマスクを形成する。
好適な赤外線レーザーとしては、例えば、ND/YAGレーザー(例えば、1064nm)又はダイオードレーザー(例えば、830nm)が挙げられる。
この赤外線レーザーアブレーション技術においては、適当なレーザーシステムが市販されており、例えば、ダイオードレーザーシステムCDI Spark(ESKO GRAPHICS社)を使用できる。
このレーザーシステムは、フレキソ印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザーの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザー装置に直接送信される。
非赤外線遮蔽層にパターン描画した後、感光性樹脂組成物層に紫外線を全面照射する。
この照射ユニットは、支持体側からの紫外線照射で用いたものと同様のユニットを使用できる。
感光性樹脂組成物層を光硬化させるため用いられる光源としては、以下に限定されるものではないが、例えば、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、太陽光等が挙げられる。
この全面露光後に、未露光部分を洗い出す現像処理を行う。
現像溶剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤;ヘプチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;さらに、これらにプロパノール、ブタノール、ペンタノールのアルコール類を混合したものが挙げられる。
未露光部の洗い出しは、ノズルからの噴射によって行ってもよく、またはブラシによるブラッシングによって行ってもよい。
現像処理後、リンス洗浄及び乾燥の工程を経て、後露光を行い、これに所定の処理を施し、印刷版が得られる。
【0049】
〔段ボール〕
本実施形態のフレキソ印刷原版から製造されるフレキソ印刷版は、段ボールに対する印刷用の印刷版として好適である。
段ボールは、波状に成形した紙の片面又は両面に紙を貼り合わせたものであれば、特に限定されない。段ボールの種類は構造の違いから1枚のライナーに波形に成形した中芯原紙を貼り合わせた片面段ボール、片面段ボールの段頂にライナーを貼り合わせた両面段ボール、両面段ボールの片側に片面段ボールの段頂を貼り合わせた複両面段ボール、複両面段ボールの片側に片面段ボールの段頂を貼り合わせた複々両面段ボールがあり、段の数や段の高さでAフルート、Bフルート、Cフルート、Eフルート、Fフルート、Gフルート等に分類される。
外装用の段ボールとしては、強度の観点から中芯(フルート)の質量が規定されており、80~160gの中芯が用いられるが、強度の観点からは160gであることが好ましい。
段ボールの直接印刷においては、段ボールの段シートのライナーと中芯原紙の貼合部とでは印刷時にかかる圧力に対して、当該貼合部以外の部分にかかる圧力が相対的に低くなることに起因して、印刷物(段ボール)の濃度ムラが発生する現象(段目、洗濯板効果等と呼ばれる現象)が生じる。
本実施形態のフレキソ印刷原版から得られるフレキソ印刷版によれば、かかる段ボール印刷時の段目を効果的に低減化することができる。
【実施例
【0050】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
〔感光性樹脂組成物の調製〕
表1~表3に示す熱可塑性エラストマー(a)であるA~Uを用い、表4~表6に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各感光性樹脂組成物を得た。
感光性樹脂組成物の材料の詳細は、以下のとおりである。
【0052】
(熱可塑性エラストマー(a))
SBS-A(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-B(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-C(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-D(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-E(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-F(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-G(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-H(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-I(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-J(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-K(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-L(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-M(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-N(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-O(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-P(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-Q(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-R(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-S(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-T(スチレンブタジエン共重合体)
SBS-U(スチレンブタジエン共重合体)
【0053】
(光重合性不飽和単量体(b))
1,9-ノナンジオールアクリレート
(光重合性開始剤(c))
2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタンエタン-1-オン
(酸化防止剤)
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール
(共役ジエン化合物)
B-2000(日本曹達社製商品名)
(洗浄溶液)
3-メトキシブチルアセテート
【0054】
〔熱可塑性エラストマーの分析〕
((1)熱可塑性エラストマーのビニル芳香族単量体単位の含有量)
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より、スチレン含有量を算出した。
【0055】
((2)熱可塑性エラストマー全体、ブロック共重合体(a-1)、(a-2)の重量平均分子量)
熱可塑性エラストマー全体の重量平均分子量(Mw)は、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して、クロマトグラムのピーク分子量に基づいて求めた。
測定ソフトは、HLC-8320EcoSEC収集を用い、解析ソフトは、HLC-8320解析を用いた。測定条件を下記に示す。
GPC ;HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
検出器 ;RI
検出感度 ;3mV/分
サンプリングピッチ;600msec
カラム ;TSKgel superHZM-N(6mmI.D×15cm)4本(東ソー株式会社製)
溶媒 ;THF
流量 ;0.6mm/分
濃度 ;0.5mg/mL
カラム温度 ;40℃
注入量 ;20μL
【0056】
後述のようにして製造した熱可塑性エラストマー(a)は、ブロック共重合体(a-1)を合成したのち、ブロック共重合体(a-1)をカップリングすることによりブロック共重合体(a-2)を得た。
そのため、上述のようにして得られたクロマトグラフのピーク分子量のうち、最も小さい分子量成分の重量平均分子量をブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量M1とした。
また、ブロック共重合体(a-1)よりも大きい分子量を持つ成分をブロック共重合体(a-2)とし、そのピークの重量平均分子量をブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量M2とした。
ブロック共重合体(a-1)とブロック共重合体(a-2)のピーク面積の総和に対するブロック共重合体(a-2)のピーク面積をカップリング率Cと定義した。また、下記式で、熱可塑性エラストマー(a)全体の重量平均分子量Mを求めた。
M=M1×(1-C)+M2×C 式(1)
なお、前記の測定方法ではカップリング残基数が2を超えるカップリング剤を使用した場合にもブロック共重合体(a-2)に相当するピークは一つしか検出されなかった。
【0057】
((3)熱可塑性エラストマー(a)のメルトフローレート)
メルトインデクサーL247(TECHNOL SEVEN)を用いて、測定温度200℃、荷重5.0kgの条件で、メルトフローレート(g/10min)を測定した。
【0058】
((4)共役ジエン単量体単位に基づくビニル結合量)
赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR-230)を用いて、ハンプトン法により算出した。
【0059】
〔熱可塑性エラストマー(a)の合成〕
(SBS-Aの合成)
撹拌機及びジャケット付きの内容量10Lのステンレス製オートクレーブを、洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン3984g、及び予め生成したスチレン225gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を48℃に加温した。
次に、n-ブチルリチウム1.26gを含むシクロヘキサン溶液、及びn-ブチルリチウム1molに対してN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」ともいう)が0.25molとなるように調製したTMEDAのシクロヘキサン溶液を添加し、スチレンの重合を開始した。
スチレンの重合中、反応器内の温度を55℃になるように10分間調整した。
次に、1,3-ブタジエン675gを含むシクロヘキサン溶液(ブタジエンモノマー濃度39質量%)を添加して重合を継続した。
ブタジエン重合中の反応器内温度は、最高温度85℃に達するように30分間かけて調整し、85℃に到達して3分後にカップリング剤として安息香酸エチルを、n-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.40となるように添加し、25分間カップリング反応させた。この間の平均反応温度は78℃であった。
カップリング剤添加より25分後に、メタノール0.13gを加えて反応を失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、上記ブロック共重合体100質量部に対して0.75質量部、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノールを0.15質量部添加し、充分混合した。
その後溶媒を加熱除去し、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物であるSBS-Aを得た。
【0060】
(熱可塑性エラストマー(SBS-B)の合成)
スチレン仕込み量を270g、n-ブチルリチウム1.37g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して、0.2mol、1,3-ブタジエン630g、安息香酸エチルをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.45となるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物であるSBS-Bを得た。
【0061】
(熱可塑性エラストマー(SBS-C)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.40g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.14となるようにし、メタノール0.35gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-C)を得た。
【0062】
(熱可塑性エラストマー(SBS-D)の合成)
スチレン仕込み量を270g、n-ブチルリチウム1.29g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン630g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.15となるようにし、メタノール0.32gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-D)を得た。
【0063】
(熱可塑性エラストマー(SBS-E)の合成)
スチレン仕込み量を270g、n-ブチルリチウム1.29g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン630g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.16となるようにし、メタノール0.32gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-E)を得た。
【0064】
(熱可塑性エラストマー(SBS-F)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.64g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.12となるようにし、メタノール0.40gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-F)を得た。
【0065】
(熱可塑性エラストマー(SBS-G)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.30g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.13となるようにし、メタノール0.32gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-G)を得た。
【0066】
(熱可塑性エラストマー(SBS-H)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.28g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.13となるようにし、メタノール0.31gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-H)を得た。
【0067】
(熱可塑性エラストマー(SBS-I)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.52g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.09となるようにし、メタノール0.37gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-I)を得た。
【0068】
(熱可塑性エラストマー(SBS-J)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.21g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.17となるようにし、メタノール0.36gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-J)を得た。
【0069】
(熱可塑性エラストマー(SBS-K)の合成)
スチレン仕込み量を252g、n-ブチルリチウム1.03g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン648g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.20となるようにし、メタノール0.36gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-K)を得た。
【0070】
(熱可塑性エラストマー(SBS-L)の合成)
スチレン仕込み量を243g、n-ブチルリチウム1.28g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン657g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.14となるようにし、メタノール0.32gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-L)を得た。
【0071】
(熱可塑性エラストマー(SBS-M)の合成)
スチレン仕込み量を288g、n-ブチルリチウム1.25g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.25mol、1,3-ブタジエン612g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.14となるようにし、メタノール0.31gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-M)を得た。
【0072】
(熱可塑性エラストマー(SBS-N)の合成)
スチレン仕込み量を198g、n-ブチルリチウム1.32g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン702g、カップリング剤としてテトラメトキシシランをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.27となるようにし、メタノール0.13gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-N)を得た。
【0073】
(熱可塑性エラストマー(SBS-O)の合成)
撹拌機及びジャケット付きの内容量10Lのステンレス製オートクレーブを、洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン3956g、及び予め生成したスチレン103gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を48℃に加温した。
次に、n-ブチルリチウム0.90gを含むシクロヘキサン溶液及びn-ブチルリチウム1molに対して、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」ともいう)が0.26molとなるように、TMEDAのシクロヘキサン溶液を添加し、スチレンの重合を開始した。
スチレンの重合中、反応器内の温度を55℃になるように10分間調整した。
次に、1,3-ブタジエン693gを含むシクロヘキサン溶液(ブタジエンモノマー濃度39質量%)を添加して重合を継続した。
ブタジエン重合中の反応器内温度は、最高温度85℃に達するように30分間かけて調整し、85℃に到達して3分後にスチレン103gを更に追加し、反応器内の温度を80℃になるよう10分間調整した。
その後メタノール0.44gを加えて反応を失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、上記ブロック共重合体100質量部に対して0.75質量部、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノールを0.15質量部添加し、充分混合した。
その後溶媒を加熱除去し、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-O)を得た。
【0074】
(熱可塑性エラストマー(SBS-P)の合成)
スチレン仕込み量を270g、n-ブチルリチウム1.12g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン630g、カップリング剤としてテトラクロロシランをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.20となるようにし、メタノール0.17gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-P)を得た。
【0075】
(熱可塑性エラストマー(SBS-Q)の合成)
スチレン仕込み量を135g、n-ブチルリチウム1.51g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン765g、安息香酸エチルをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.40となるようにし、メタノール0.15gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-Q)を得た。
【0076】
(熱可塑性エラストマー(SBS-R)の合成)
スチレン仕込み量を243g、n-ブチルリチウム1.26g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン657g、安息香酸エチルをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.45となるようにし、メタノール0.10gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-R)を得た。
【0077】
(熱可塑性エラストマー(SBS-S)の合成)
スチレン仕込み量を270g、n-ブチルリチウム0.97g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン630g、安息香酸エチルをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.45となるようにし、メタノール0.12gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-S)を得た。
【0078】
(熱可塑性エラストマー(SBS-T)の合成)
スチレン仕込み量を144g、n-ブチルリチウム1.52g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン756g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.13となるようにし、メタノール0.37gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-T)を得た。
【0079】
(熱可塑性エラストマー(SBS-U)の合成)
スチレン仕込み量を144g、n-ブチルリチウム1.50g、TMEDAがn-ブチルリチウム1molに対して0.02mol、1,3-ブタジエン756g、カップリング剤として1.3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをn-ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.14となるようにし、メタノール0.37gとなるように添加した以外は、前記(SBS-A)と同様にして、熱可塑性エラストマーとしてのブロック共重合体組成物である(SBS-U)を得た。
【0080】
〔フレキソ印刷原版の製造〕
下記表1~表3に示す熱可塑性エラストマーであるブロック共重合体組成物A~Uを用い、下記に示す原料を、ニーダー(株式会社パウレック、FM-MW-3型)に投入し、180℃で60分間混合することにより感光性樹脂組成物を混練した。
得られた感光性樹脂組成物を、前記A~Uとは異なる市販の熱可塑性エラストマーを含有する接着剤がコートされた厚さ125μmのポリエステルフィルムの支持体と、厚さ4μmのポリアミド層を有する100μmのポリエステル製カバーシートとで挟み、4mmのスペーサーを用いてプレス機で130℃の条件で200kg/cm2の圧力を4分間かけてフレキソ印刷原版を成形した。
【0081】
〔フレキソ印刷版の製造〕
上述したフレキソ印刷原版において、カバーシートをはぎとり、感光性樹脂組成物層の上にネガフィルムを密着させ、「AFP-1216E」露光機(旭化成株式会社製、商品名)上で、下側紫外線ランプ(PHILIPS社製UVランプTL80W/10R、商品名)を用いて、まず支持体側から、フレキソ印刷版のレリーフ深度が1.6mmになるように600mJ/cm2で全面に露光を行った。
続いて、上側ランプ(PHILIPS社製UVランプTL80W/10R、商品名)にて、ネガフィルム側から8000mJ/cm2の紫外線を照射した。
なお、このときの露光強度はオーク製作所製のUV照度計MO-2型機(オーク製作所製、商品名、UV-35フィルター)にて測定した。
次いで、「AFP-1321P」現像機(旭化成株式会社製、商品名)で、液温30℃で所定の速度で現像を行い、60℃で2時間乾燥させた。
その後、後露光処理として、AFP-1216LF(旭化成株式会社製、商品名)を用いて、254nmを中心波長に持つ殺菌灯(東芝社製、GL-30、商品名)により、乾燥後の版表面全体に1000mJ/cm2の露光を行った。
ここでの殺菌灯による後露光量は、「UV-MO2」機のUV-25フィルターを用いて測定した照度から算出した。
【0082】
〔実施例、比較例において用いた評価方法〕
(段目)
得られた厚さ4.00mmのフレキソ印刷版を用いて、フレキソ印刷機にて印刷試験を行った。
フレキソ印刷版の作製に用いたネガフィルムのパターンは、30lpiの線数を有し、10%(サイズは10cm×75cm)の網点が印字されたもの、及び全面硬化(サイズは10cm×75cm)されたものである。
インキとして、ワッサースーパーZプラス3L(大阪印刷インキ製造(株)、商品名)、被印刷体として、A段シート(中芯160g)、250lpiのアニロックスロールを用いて、印刷速度60シート/分で、10シート印刷し、最後のシートの印刷物の網点を評価した。
印刷物の各網点9個を一集団として、LUZEXを用いて網点のインク転写面積率を算出し、A段シートの貼合部と垂直方向に20集団分測定を行い、面積率の最大値と最小値の差を印刷面積率差とし、下記評価基準により、30LPI 10% 段目を評価した。
<段目評価基準>
◎:印刷面積率差が6%未満
○:印刷面積率差が6%以上8%未満
×:印刷面積率差が8%以上
【0083】
(現像速度)
厚み4.00mmの露光を行っていないフレキソ印刷原版を5cm×5cmに切り出し、フレキソ印刷原版の送り出し速度を75mm/min、100mm/min、150mm/minの3条件に設定し、現像を行い、60℃で2時間乾燥後、厚みを測定し、版送り出し速度に対する現像前後の厚み変化量の検量線を作成した。
検量線から現像後の厚み変化が1.6mmとなる版送り出し速度を各々算出し、この逆数を現像速度と定義した。
<評価基準>
比較例3の現像速度を基準とし、下記の基準により評価した。
×:現像速度が100%未満
△:100%以上105%未満
〇:105%以上125%未満
◎:125%以上
【0084】
(白抜き深度)
フレキソ印刷版の白抜き深度を測定するために、幅1500μmの細線があるネガフィルムを用いてフレキソ印刷版を製版し、深さ高さ測定機(日商精密光学、μDEPTH & HEIGHT MEASURING SCOPE)を用いて幅1500μmの深さ方向の深度を測定し、下記の基準により評価し、○または◎であれば、印刷版のインキ絡みが十分に少ないと判断した。
<評価基準>
×:600μm未満
△:600以上650μm未満
〇:650μm以上750μm未満
◎:750μm以上
【0085】
(耐カケ性)
図1のフレキソ印刷版の概略正面図に示すように、フレキソ印刷版1に、縦1.5cm、横1cmの菱形レリーフパターン10を形成した。
次に、図2の耐カケ性試験の状態の、概略側面図に示すように、ブレード2の斜面に両面テープを貼りつけ、60cmの高さからブレード2をガイドに合わせて垂直にスライドさせながら落下させ、レリーフパターン10に接触させた時の、フレキソ印刷版の欠け面積の割合を目視で確認し、下記評価基準により、フレキソ印刷版の耐カケ性を評価した。
<評価基準>
◎:版カケ面積が5%未満
○:版カケ面積が5%以上10%未満
△:版カケ面積が10%以上15%未満
×:版カケ面積が15%以上
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のフレキソ印刷原版は、広く一般商業印刷分野において、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0093】
1 フレキソ印刷版
2 ブレード
10 レリーフパターン
図1
図2