(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、その製造方法、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20230830BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230830BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20230830BHJP
B29K 25/00 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
B29C44/00 G
B29C44/44
B29K25:00
(21)【出願番号】P 2019176412
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 早織
(72)【発明者】
【氏名】平井 賢治
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014782(JP,A)
【文献】特開平02-073887(JP,A)
【文献】特表2015-534843(JP,A)
【文献】特開2012-065906(JP,A)
【文献】特開2008-239910(JP,A)
【文献】特開平05-246899(JP,A)
【文献】特開2013-022911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/16
B29C 44/00
B29C 44/44
B29K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、および、ジスルフィド化合物を0.2ppb~85ppb含有する、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
スチレン系単量体を重合させる工程と、重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程とを含み、
該発泡剤のジスルフィド化合物の含有量を0.5ppb~180ppbの範囲に調整する、
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子、その製造方法、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に幅広く使用されている。中でも、発泡性粒子を原料として製造される型内発泡成形体が、所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。しかし、発泡成形体は、臭気の問題を生じる場合がある。この問題は、発泡成形体の原料である発泡性粒子および予備発泡粒子においても同様に起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-330943号公報
【文献】特開平8-208877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、臭気が抑制された発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することにある。本発明はまた、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、ならびに、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を用いた予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、および、ジスルフィド化合物を0.2ppb~85ppb含有する。
本発明の別の実施形態によれば、予備発泡スチレン系樹脂粒子が提供される。予備発泡スチレン系樹脂粒子は、上記の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなり、ジスルフィド化合物を0.1ppb~95ppb含有する。
本発明のさらに別の実施形態によれば、スチレン系樹脂発泡成形体が提供される。スチレン系樹脂発泡成形体は、上記の予備発泡スチレン系樹脂粒子を発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子を含有し、互いに融着した複数の該発泡スチレン系樹脂粒子により構成されており、ジスルフィド化合物を0.1ppb~45ppb含有する。
本発明のさらに別の実施形態によれば、上記の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。この製造方法は、スチレン系単量体を重合させる工程と、重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、発泡剤に含まれるジスルフィド化合物量を小さくすることにより、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体の臭気を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0008】
A.発泡性スチレン系樹脂粒子
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子(以下、単に発泡性粒子と称する場合がある)は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、全体として粒子の形状を有する。発泡性粒子の粒径は、例えば0.3mm~3.0mmであり、好ましくは0.3mm~1.7mmである。粒径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、粒径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性粒子の形状としては、任意の適切な形状を採用することができる。形状の具体例としては、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状が挙げられる。
【0009】
本発明の実施形態においては、発泡性粒子は、ジスルフィド化合物を0.2ppb~85ppb、好ましくは0.2ppb~65ppb、より好ましくは0.2ppb~25ppb、さらに好ましくは0.2ppb~15ppb含有する。本発明者らは、発泡成形体およびその原料となる発泡性粒子の臭気について鋭意検討した結果、当該臭気の主たる原因は、スチレン系樹脂の残量単量体ではなく、発泡剤に含まれる不純物であることを発見した。さらに、本発明者らは、試行錯誤の結果、臭気の原因となる不純物は硫黄化合物であり、特にジスルフィド化合物であることを発見した。その結果、従来は解決困難であった臭気の問題を、従来想定されていたものとは全く異なる解決手段により解決することができた。具体的には以下のとおりである:従来臭気の原因は主として残存単量体であると考えられていたので、残存単量体を減らすためにスチレン系樹脂の重合時に重合開始剤を多量に用いる等の対策がとられていたところ、このような対策でも臭気の問題は実質的には改善されず、かつ、残存単量体もそれほど減少しなかった。また、発泡助剤として芳香系化合物(例えば、テルペン系炭化水素)を用いる対策もとられたが、これは臭気自体を低減するのではなく、発泡助剤の芳香により臭気をごまかすものであったので、本質的な解決手段ではなかった。本発明の実施形態によれば、上記のとおり臭気の原因を特定したことにより、本質的な解決手段を実現することができ、臭気の問題を解決することができた。これは、上記のとおり試行錯誤により得られた予期せぬ優れた効果である。なお、ジスルフィド化合物としては、ジスルフィド結合を有する任意の化合物が挙げられる。具体例としては、ジメチルジスルフィド、メチルエチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、エチルプロピルジスルフィドなどが挙げられる。
【0010】
発泡性粒子におけるジスルフィド化合物の含有量は、発泡剤のジスルフィド化合物の含有量を調整することにより制御され得る。発泡剤のジスルフィド化合物の含有量は、例えば180ppb以下であり、好ましくは80ppb以下であり、より好ましくは50ppb以下であり、さらに好ましくは20ppb以下であり、特に好ましくは10ppb以下であり、とりわけ好ましくは5ppb以下である。発泡剤のジスルフィド化合物の含有量は低いほど好ましい。発泡剤のジスルフィド化合物の含有量の下限は、例えば0.5ppbであり得る。発泡剤のジスルフィド化合物の含有量を所定値以下に低減する方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。一例としては、発泡剤を吸着材(例えば、活性炭、モレキュラーシーブ等の多孔質材料)に通す方法が挙げられる。
【0011】
A-1.スチレン系樹脂
スチレン系樹脂は、単量体成分としてスチレン系単量体を含む高分子化合物である。スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンが挙げられる。スチレン系単量体は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体は、スチレンをスチレン系単量体の全量に対して好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上含有する。
【0012】
スチレン系樹脂は、単量体成分の主成分としてスチレン系単量体を含んでいればよく、スチレン系単量体と共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の代表例としては、ビニル単量体が挙げられる。本明細書において「主成分」とは、共重合体がスチレン系単量体を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有することをいう。
【0013】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体が挙げられる。ビニル単量体は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0014】
多官能単量体の具体例としては、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、スチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。スチレン系樹脂における多官能単量体の含有量は、好ましくは、0質量%~0.1質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.05質量%である。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが挙げられる。アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。スチレン系樹脂におけるアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは、0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0016】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルが挙げられる。
【0017】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルが挙げられる。
【0018】
1つの実施形態においては、スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との含有比(スチレン系樹脂/オレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。スチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。スチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0019】
オレフィン系樹脂としては、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。具体例としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.91g/cm3~0.93g/cm3である。高密度は、好ましくは0.95g/cm3~0.97g/cm3であり、より好ましくは0.95g/cm3~0.96g/cm3である。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0020】
A-2.発泡剤
発泡剤としては、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素が挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。発泡剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0021】
発泡性粒子中における発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体(以下、それぞれを単に予備発泡粒子および発泡成形体と称する場合がある)を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~8質量部である。
【0022】
A-3.その他
発泡性粒子は、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油が挙げられる。
【0023】
発泡性微粒子は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0024】
発泡性微粒子の表面には、粉末状金属石鹸類(例えば、ステアリン酸亜鉛)が塗布されていてもよい。このような構成であれば、発泡性粒子の予備発泡において、予備発泡粒子同士の融着を減少させることができる。
【0025】
B.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
本発明の実施形態による発泡性粒子の製造方法は、スチレン系単量体を重合させる工程と、重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、を含む。スチレン系単量体の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。懸濁重合法は、スチレン系単量体に重合開始剤を溶解して、懸濁剤を分散した水とともに、反応槽中で昇温し重合した後冷却して、発泡性粒子を得る方法である。重合の途中および/または重合終了後に発泡剤を添加する方法は1段法と呼ばれる。発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを、反応槽の懸濁剤を分散した水中で昇温して、ここで発泡剤を添加して粒子に含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。また、小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を、懸濁剤を分散した水の入っている反応槽に投入し、昇温した後、重合開始剤を溶解した単量体を連続的に反応槽に供給して重合し、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は重合の途中および/または重合終了後に添加される。1段法、2段法(後含浸法)、シード重合法のいずれの方法によっても、発泡性粒子を製造することができる。また、いずれの方法によっても、真球状の発泡性粒子が得られるという利点がある。
【0026】
スチレン系単量体の重合における重合開始剤としては、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は単独でまたは2種以上併用して使用できる。通常は分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50~80℃ の範囲にある重合開始剤と、分解温度が80~120℃ の範囲にある重合開始剤とが併用される。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接水性懸濁液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、無機系懸濁安定剤および/またはアニオン界面活性剤とを加え水性懸濁液として添加することが望ましい。
【0027】
別の実施形態においては、発泡性微粒子は、溶融押出法により製造され得る。溶融押出法は、スチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性粒子を得る方法である。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性粒子を製造することができる。ホットカット法によれば、ほぼ球状の発泡性粒子が得られるという利点がある。
【0028】
C.予備発泡スチレン系樹脂粒子
本発明の実施形態による予備発泡粒子は、上記A項に記載の発泡性粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは3倍~100倍であり、より好ましくは30倍~90倍であり、さらに好ましくは50倍~70倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。
発泡性粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm3)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm3/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0029】
本発明の実施形態においては、予備発泡粒子は、ジスルフィド化合物を0.1ppb~95ppb、好ましくは0.2ppb~65ppb、より好ましくは0.2ppb~25ppb、さらに好ましくは0.2ppb~15ppb含有する。上記A項に記載のようなジスルフィド化合物の含有量が小さい発泡性粒子を用いることにより、このような予備発泡粒子を得ることができる。その結果、予備発泡粒子における臭気の問題を解決することができる。このような効果は、予備発泡粒子をそのまま用いる実施形態において顕著である。
【0030】
1つの実施形態においては、予備発泡粒子は、発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡粒子をそのまま用いる場合、予備発泡粒子は、好ましくは、多数の予備発泡粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0031】
D.スチレン系樹脂発泡成形体
本発明の実施形態による発泡成形体は、上記C項に記載の予備発泡粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に発泡粒子と称する場合がある)を含む。発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0032】
発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること;を含む。発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0033】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0034】
必要に応じて、発泡成形体の成形前に予備発泡粒子を熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0035】
発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは3倍~100倍であり、より好ましくは30倍~90倍であり、さらに好ましくは50倍~70倍である。
【0036】
本発明の実施形態においては、発泡成形体は、ジスルフィド化合物を0.1ppb~45ppb、好ましくは0.1ppb~35ppb、より好ましくは0.1ppb~15ppb、さらに好ましくは0.1ppb~8ppb含有する。上記A項に記載のようなジスルフィド化合物の含有量が小さい発泡性粒子を用いることにより、このような発泡成形体を得ることができる。その結果、発泡成形体における臭気の問題を解決することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0038】
(1)発泡剤におけるジスルフィド化合物濃度
ガスボンベより発泡剤1Lを0.1mL/minでTenax吸着管へ吸着濃縮させた。吸着させたTenax管をエルシーサイエンス(株)製「TD-4J型」オートサンプラにセットし、200℃で3分間加熱して発生した揮発成分を-40℃に保持されたクライオフォーカス部にコールドトラップ濃縮した。その後熱脱着してGC/MS測定を行った。得られたクロマトグラムより検出されたジスルフィド化合物ピーク4種について、予め測定しておいたジスルフィド化合物の検量線に基づいて定量した。GC/MS測定の条件は以下のとおりであった。
<GC/MS測定条件>
測定装置=日本電子(株)製「JMS-Q1000GCMkII」質量分析計
アジレントテクノロジー(株)製「7890A」ガスクロマトグラフ装置
カラム=Phenomenex製「ZB-1」キャピラリーカラム(1.0μm×0.25mmφ×60m)
<GCオーブン昇温条件>
初期温度=40℃(3min保持)
第1段階昇温速度=15℃/min(200℃まで)
第2段階昇温速度=25℃/min(250℃まで)
最終温度=250℃(6.33min)
キャリアーガス=He
He流量=1mL/min
注入口温度=250℃
インターフェイス温度=250℃
検出器電圧=-900V
スプリット比=1/50
イオン源温度=250℃
イオン化電流=300uA
イオン化エネルギー=70eV
検出方法=スキャン法(m/z=10-400)
<熱脱着条件>
装置=エルシーサイエンス(株)製「TD-4J型」熱脱着装置サーマルディソープション
P&T条件
PurgeTime=10s
InjectTime=20s
DesorbTime=300s
DelayStartTime=10s
DesorbHeater=250℃
CryoTempHeating=200℃
CryoTempCooling=-40℃
<検量線作成方法>
Tenax吸着管へジメチルジスルフィド及びジエチルジスルフィド標準液を各50ng、10ngとなるように添加した。標準液を添加したTenax吸着管を試料と同条件にて熱脱着GC/MS測定した。クロマトグラムより得られた各ジスルフィド化合物のピーク面積値を用いて、検量線を作成した。尚、検量線作成用標準試料は富士フィルム和光純薬(株)製ジメチルジスルフィド及びジエチルジスルフィドを使用した。
<定量条件>
定量イオンは各物質毎に下記質量数を用いた。
ジメチルジスルフィド(94)
ジエチルジスルフィド(66)
メチルエチルジスルフィド(80)
エチルイソプロピルジスルフィド(94)
各マスクロマトグラムより得られたピーク面積値を用いて、検量線からジスルフィド化合物量を求め、下式より発泡剤中体積濃度として算出した。尚、メチルエチルジスルフィドはジメチルジスルフィド換算、エチルイソプロピルジスルフィドはジエチルジスルフィド換算とした。
発泡剤中ジスルフィド化合物体積濃度(vol ppb)={ジスルフィド化合物量(ng)/分子量×0.082×(273+気温)}/ガス採取体積(L)
【0039】
(2)発泡性粒子におけるジスルフィド化合物含有量
実施例および比較例で得られた発泡性粒子を5g秤量し、ベッセルに試料を入れて密閉し、90℃で加熱した。加熱により発生したガス2Lを0.05mL/分でTenax吸着管にポンプにて吸引し通過させた。吸着させたTenax管を、エルシーサイエンス(株)製「TD-4J型」オートサンプラにセットした。200℃で3分間加熱して発生した揮発成分を-40℃に保持されたクライオフォーカス部にコールドトラップ濃縮した。その後熱脱着してGC/MS測定を行った。得られたクロマトグラムより検出されたジスルフィド化合物ピーク4種について、予め測定しておいたジスルフィド化合物の検量線に基づいて定量した。GC/MS測定の条件は上記(1)と同様であった。発泡性粒子中のジスルフィド化合物含有量は、下記の式から算出した。
ジスルフィド化合物含有量(ppb)=ジスルフィド化合物量(ng)/試料重量(g)
【0040】
(3)予備発泡粒子および発泡成形体におけるジスルフィド化合物含有量
実施例および比較例で得られた予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ5g秤量し、10Lテドラバック内に入れ、窒素4L充填後ヒートシールで密閉し、70℃で2時間加熱した。加熱により発生したガス2Lを0.05mL/分でTenax吸着管にポンプにて吸引し通過させた。吸着させたTenax管を、エルシーサイエンス(株)製「TD-4J型」オートサンプラにセットした。200℃で3分間加熱して発生した揮発成分を-40℃に保持されたクライオフォーカス部にコールドトラップ濃縮した。その後熱脱着してGC/MS測定を行った。得られたクロマトグラムより検出されたジスルフィド化合物ピーク4種について、予め測定しておいたジスルフィド化合物の検量線に基づいて定量した。GC/MS測定の条件は上記(1)と同様であった。予備発泡粒子および発泡成形体中のジスルフィド化合物含有量は、下記の式から算出した。
ジスルフィド化合物含有量(ppb)={ジスルフィド化合物量(ng)/試料重量(g)}×{採取体積(2L)/バッグ゛内体積(4L)}
【0041】
(4)臭気評価
実施例および比較例で得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品のそれぞれについて、官能評価を行った。具体的には、無作為に選んだ20人にそれぞれ4段階(臭気が低い順に1~4)で評価させ、その平均値を算出し、以下の基準で評価した。
◎・・・・平均値が1.75点未満
○・・・・平均値が1.75点以上2.5点未満
△・・・・平均値が2.5点以上3.25点未満
×・・・・平均値が3.25点以上
【0042】
[実施例1]
(スチレン系樹脂粒子の作製)
容量50Lのオートクレーブにスチレン単量体100質量部、水100質量部、リン酸三カルシウム0.2質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.005質量部、ベンゾイルパーオキサイド0.25質量部、およびt-ブチルパーオキシベンゾエート0.1質量部を仕込み、90℃で6時間懸濁重合させ、さらに125℃に昇温してから2時間後に冷却し、水を分離、乾燥後、篩分けして粒子径0.7mm~1.2mmのスチレン系樹脂粒子を得た。
【0043】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の作製)
容量5Lのオートクレーブに上記で得られたスチレン系樹脂粒子100質量部、水80質量部、リン酸三カルシウム0.35質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01質量部を仕込み、シクロヘキサン1.4質量部、アジピン酸ジイソブチル0.8質量部、水20質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.005質量部をホモミキサーにて室温で10分間混合したものと発泡剤としてのブタン(ジメチルジスルフィドを17ppb(体積基準)含む)6質量部とを圧入して100℃に2時間保持した。冷却後、水を分離し、乾燥してジメチルジスルフィドが3.1ppb含まれる発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。得られた発泡性粒子に、ブロッキング防止剤としてステアリン酸亜鉛0.1質量部、融着促進剤として12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.08質量部を被覆した。
【0044】
(予備発泡スチレン系樹脂粒子の作製)
上記被覆した発泡性粒子を嵩発泡倍率60倍に予備発泡し、予備発泡スチレン系樹脂粒子を得た。得られた予備発泡粒子を室温で24時間放置することにより熟成した。
【0045】
(スチレン系樹脂発泡成形体の作製)
上記熟成した予備発泡粒子を型内発泡成形し、400mm×300mm×30mmサイズの板状のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。型内発泡成形は、積水工機社製のACE-3SP成形機を用いて行った。加熱時間は、一方加熱時間8秒、逆一方加熱時間1秒、両面加熱時間10秒とし、成形圧(水蒸気吹き込みゲージ圧)は0.07MPaとした。
【0046】
得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ上記(2)および(3)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを3ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例3]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを3ppb(体積基準)含むプロパンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを3ppb(体積基準)含むペンタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例5]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを1ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例6]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを35ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例7]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを43ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例8]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを3ppb(体積基準)含むブタンとペンタンとの混合ガス(ブタン/ペンタン=7/3)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例9]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを170ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを200ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
発泡剤としてジメチルジスルフィドを300ppb(体積基準)含むブタンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例10]
スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との複合樹脂を用いて発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品を作製した。具体的には以下のとおりである。
【0058】
(発泡性粒子の作製)
ポリエチレン系樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと称する)(日本ポリエチレン社製、商品名「LV-115」、融点:108℃、メルトフローレート:0.3g/10分)100質量部および合成含水二酸化珪素0.5質量部を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒し、楕円球状(卵状)のEVA樹脂粒子(ポリオレフィン系樹脂粒子)を得た。EVA樹脂粒子の平均重量は0.6mgであった。次に、ピロリン酸マグネシウム128g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム32gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。この分散用媒体に、上記で得られた合成二酸化珪素含有のEVA樹脂粒子16kgを分散させて懸濁液を得た。
一方、スチレン単量体6.4kgに重合開始剤としてのt-ブチルパーオキシベンゾエート12.2gを溶解させて第1のスチレン系単量体を作製した。
上記のEVA樹脂粒子を含む懸濁液の温度を60℃に調節し、上記第1のスチレン系単量体を30分かけて定量で添加したのち、1時間攪拌することでEVA樹脂粒子中に第1のスチレン系単量体を含浸させた。次に、反応系の温度をEVAの融点よりも23℃高い130℃に昇温して3時間保持し、第1のスチレン単量体をEVA樹脂粒子中で重合させた(第1の重合)。
次いで、反応系の温度を90℃に低下させ、さらに、スチレン単量体17.6kgに重合開始剤としてのt-ブチルパーオキシベンゾエート33.4gおよびジクミルパーオキサイド88gを溶解させた第2のスチレン系単量体を1時間あたり4.4kgの割合で連続的に滴下することにより、第2のスチレン系単量体をEVA樹脂粒子に含浸させながら重合させた(第2の重合)。滴下終了後、90℃で1時間保持した後に143℃に昇温し3時間保持して重合を完結させ、複合樹脂粒子を得た。
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子100質量部、水1.0質量部、およびジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、発泡剤としてブタン(ジメチルジスルフィドを3.1ppb(体積基準)含む)14質量部を常温で圧入した。さらに、回転混合機内を70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却して、ジメチルジスルフィドが2.8ppb含まれる発泡性粒子を得た。
【0059】
(予備発泡粒子の作製)
上記で得られた発泡性粒子を直ちに予備発泡機(積水工機製作所社製のSKK-70)に供給し、0.02MPaの圧力の水蒸気を用いて予備発泡させて、嵩発泡倍率30倍の予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子を室温で7日間放置することにより熟成した。
【0060】
(発泡成形体の作製)
上記熟成した予備発泡粒子を型内発泡成形し、400mm×300mm×30mmサイズの板状のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。型内発泡成形は、積水工機社製のACE-3SP成形機を用いて行った。加熱時間は、一方加熱時間8秒、逆一方加熱時間1秒、両面加熱時間10秒とし、成形圧(水蒸気吹き込みゲージ圧)は0.07MPaとした。
得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形品をそれぞれ実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、発泡剤に含まれるジスルフィド化合物量を小さくすることにより、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体の臭気を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、ならびに、それを用いた予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。