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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 29/02 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
D05B29/02 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019185618
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021058488
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修一
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-149440(JP,A)
【文献】特開2009-240771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押え棒に固定された押えと、
ミシン本体に回転操作可能に設けられ、回転方向一方側へ操作されることで初期位置から第1操作位置を経由し第2操作位置に回転される操作レバーと、
前記操作レバーに一体回転可能に連結された操作軸と、
前記操作軸と前記押え棒とを連結し、前記操作軸が回転方向一方側へ回転することで前記押えを押え位置から上昇させるリンク機構と、
前記操作軸を回転方向他方側へ付勢するリターンスプリングと、
前記操作軸に支持され、複数の第1歯部が形成された第1回転体と、
前記第1回転体に対して前記操作軸の軸方向一方側において前記操作軸に回転可能に支持され、前記第1歯部に係合して前記第1回転体の回転方向他方側への相対回転を制限すると共に前記第1回転体の回転方向一方側の回転を許可する複数の第2歯部が形成された第2回転体と、
前記第2回転体を回転不能に保持する保持機構と、
を備え
前記第2歯部の先端部には、前記第1歯部の先端部と係合可能に構成された係合部が形成されており、
前記保持機構は、
前記第1回転体を前記軸方向一方側へ付勢する保持スプリングと、
前記第2回転体に形成された係合歯と、
前記第2回転体に対して前記軸方向一方側に設けられ、前記係合歯に係合して前記第2回転体を回転不能に保持する保持部材と、
を含んで構成され、
前記第1操作位置では、前記第1歯部の先端部が前記係合部に係合して前記第1回転体の前記第2回転体に対する回転方向他方側への回転が制限されると共に、前記保持スプリングの付勢力によって前記係合歯と前記保持部材との係合が維持され、
前記第2操作位置では、前記第1歯部と前記第2歯部とが再び係合し、
前記第2操作位置において前記操作レバーの操作が解除されることで、前記リターンスプリングの付勢力によって前記係合歯と前記保持部材との係合が前記保持スプリングの付勢力に抗して解除されて前記保持機構による前記第2回転体の回転不能に保持された状態が解除されるミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のミシンの膝上げ装置では、膝上げ機構がミシン本体に設けられており、膝上げレバー(操作レバー)が、膝上げ機構の膝上げ軸(操作軸)に一体回転可能に連結されている。また、膝上げ機構は、膝上げ軸に連結されたリンク機構を有しており、リンク機構は、伝達機構を介して押え棒に連結されている。
【0003】
そして、作業者が、膝部によって膝上げレバーを回転方向一方側へ回転(押圧)させると、膝上げ機構が作動して、押え棒に装着された押えが、押え位置から上昇して針板から離間する。これにより、押えを上げた状態で、作業者が両手での作業を行えるため、作業者に対する利便性を向上することができる。一方、作業者が膝部による膝上げレバーへの押圧を解除すると、ねじりコイルばねの付勢力によって、膝上げ機構が作動して、膝上げレバーが回転方向他方側へ回転する。これにより、押えが上昇した位置から下降して押え位置に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-336685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記膝上げ装置では、上述のように、作業者の膝部による膝上げレバーへの押圧を解除すると、押えが上昇した位置から下降する。このため、押えを上昇させた位置に維持した状態で作業するためには、膝部による膝上げレバーへの押圧を継続する必要がある。これにより、上記膝上げ装置では、作業者に対する利便性を一層向上するという点において、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、利便性を一層向上することができるミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、押え棒に固定された押えと、ミシン本体に回転操作可能に設けられ、回転方向一方側へ操作されることで初期位置から第1操作位置を経由し第2操作位置に回転される操作レバーと、前記操作レバーに一体回転可能に連結された操作軸と、前記操作軸と前記押え棒とを連結し、前記操作軸が回転方向一方側へ回転することで前記押えを押え位置から上昇させるリンク機構と、前記操作軸を回転方向他方側へ付勢するリターンスプリングと、前記操作軸に支持され、複数の第1歯部が形成された第1回転体と、前記第1回転体に対して前記操作軸の軸方向一方側において前記操作軸に回転可能に支持され、前記第1歯部に係合して前記第1回転体の回転方向他方側への相対回転を制限すると共に前記第1回転体の回転方向一方側の回転を許可する複数の第2歯部が形成された第2回転体と、前記第2回転体を回転不能に保持する保持機構と、を備え、前記第2歯部の先端部には、前記第1歯部の先端部と係合可能に構成された係合部が形成されており、前記保持機構は、前記第1回転体を前記軸方向一方側へ付勢する保持スプリングと、前記第2回転体に形成された係合歯と、前記第2回転体に対して前記軸方向一方側に設けられ、前記係合歯に係合して前記第2回転体を回転不能に保持する保持部材と、を含んで構成され、前記第1操作位置では、前記第1歯部の先端部が前記係合部に係合して前記第1回転体の前記第2回転体に対する回転方向他方側への回転が制限されると共に、前記保持スプリングの付勢力によって前記係合歯と前記保持部材との係合が維持され、前記第2操作位置では、前記第1歯部と前記第2歯部とが再び係合し、前記第2操作位置において前記操作レバーの操作が解除されることで、前記リターンスプリングの付勢力によって前記係合歯と前記保持部材との係合が前記保持スプリングの付勢力に抗して解除されて前記保持機構による前記第2回転体の回転不能に保持された状態が解除されるミシンである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成のミシンによれば、利便性を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係るミシンを示す左斜め前方から見た斜視図である。
図2図1に示されるミシンの要部を模式的に示す斜視図である。
図3図2に示される膝上げ機構及び切替機構を分解した分解斜視図である。
図4図3に示される第1リングと第2リングとの第1係合状態を示す上側から見た平面図である。
図5図4に示される第1リングが回転方向一方側へ回転して第1リング及び第2リングが第2係合状態に遷移した状態を示す上側から見た平面図である。
図6図1に示される操作部材のオン位置において膝上げレバーが操作されたときの膝上げ機構の動作を説明するための説明図である。
図7】膝上げ機構の作動時におけるリターンスプリング及び保持スプリングのバネ荷重を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係るミシン10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印RHは、それぞれミシン10の上側、前側、及び右側(幅方向一方側)を示している。以下、上下、前後、左右の方向を用いて説明する場合は、ミシン10の上下、前後、左右を示すものとする。
【0013】
(ミシン10の全体について)
図1に示されるように、ミシン10は、ミシン本体12を有しており、ミシン本体12は、前側から見た正面視で、左側へ開放された略U字形状に形成されている。具体的には、ミシン本体12は、ミシン本体12の右端部を構成し且つ上下方向に延在された脚柱部12Aと、脚柱部12Aの上端部から左側へ延出されたアーム部12Bと、脚柱部12Aの下端部から左側へ延出されたベッド部12Cと、を含んで構成されている。また、ミシン本体12の内部には、ミシン本体12の骨格を構成する骨格フレーム(図示省略)が設けられており、骨格フレームが、カバー14によって覆われている。
【0014】
図2にも示されるように、アーム部12Bの左端部の内部には、上下方向に延在された押え棒16が押え棒抱き18によって骨格フレームに対し上下スライド可能に設けられており、押え棒16の下端部がアーム部12Bから下側へ突出している。押え棒16には、後述する第3リンク46が連結されており、図示しない押えバネの付勢力が、押え棒16に付与されている。また、押え棒16の下端部には、押え20が、着脱可能に取付けられている。さらに、ベッド部12Cの左上端部には、押え20の下側に、針板22が設けられている。ここで、押え20(押え棒16)は、後述する膝上げ機構30によって、押え位置(図2において実線にて示される位置)と、押え位置から上昇した位置(図2において2点鎖線にて示される位置)と、の間を移動可能に構成されている。
【0015】
また、ミシン10は、ミシン本体12の外部に設けられた「操作レバー」としての膝上げレバー24と、押え20を押え位置から上昇させるための膝上げ機構30と、を有している。この膝上げ機構30は、膝上げレバー24の操作位置に応じて、押え20を上昇した位置に保持する保持機能を有している。また、ミシン10は、膝上げ機構30の保持機能を有効又は無効に切替える切替機構70を備えている。以下、膝上げレバー24、膝上げ機構30、及び切替機構70について説明する。
【0016】
(膝上げレバー24について)
図1図3に示されるように、膝上げレバー24は、略長尺棒状に形成され、略L字形状に屈曲されている。具体的には、膝上げレバー24の長手方向一方側部分が、前後方向に延在されており、膝上げレバー24の長手方向中間部が、下側へ屈曲されている。そして、膝上げレバー24が、脚柱部12Aにおける下端部の前側に配置され、膝上げレバー24の一端部が、後述する膝上げ軸32の前端部に一体回転可能に連結されている。これにより、膝上げレバー24が、ミシン本体12の外部において前後方向を軸方向として回転操作可能に構成されている。具体的には、膝上げレバー24が、初期位置(図2において実線にて示される位置)から回転方向一方側(図2の矢印A方向側)へ回転することで、第1操作位置(図2において1点鎖線にて示される位置)を経由して、第2操作位置(図2において2点鎖線にて示される位置)に回転される構成になっている。
【0017】
また、膝上げレバー24の他端部には、パッド24Aが設けられている。そして、パッド24Aが、作業者の膝部によって右側へ押圧されることで、膝上げレバー24が、回転するようになっている。
【0018】
(膝上げ機構30について)
図2及び図3に示されるように、膝上げ機構30は、ミシン本体12の内部に設けられている。膝上げ機構30は、「操作軸」としての膝上げ軸32と、ストッパ34と、リターンスプリング36と、リンク機構40と、「第1回転体」としての第1リング50と、「第2回転体」としての第2リング52と、保持機構60と、を含んで構成されている。なお、以下の説明では、膝上げ機構30の保持機能が有効である状態として説明する。
【0019】
<膝上げ軸32について>
膝上げ軸32は、前後方向を軸方向とした略丸棒状に形成されて、脚柱部12Aの下端部内において、骨格フレームによって回転可能に支持されている。そして、膝上げ軸32の前端部が、カバー14から前側へ露出されており、膝上げレバー24の一端部が、膝上げ軸32の前端部に一体回転可能に連結されている。これにより、膝上げレバー24が回転操作されることで、膝上げ軸32が自身の軸回りに回転方向一方側(図2の矢印A方向側)及び回転方向他方側(図2の矢印B方向側)へ回転する構成になっている。
【0020】
<ストッパ34について>
ストッパ34は、左右方向から見て、上側へ開放された略U字形板状に形成されている。具体的には、ストッパ34は、上下方向を板厚方向とした底壁34Aと、底壁34Aの前端部及び後端部から上側へ延出された前後一対の側壁34Bと、を含んで構成されている。側壁34Bには、円形状の挿通孔34Cが貫通形成されており、膝上げ軸32の前端側の部分が挿通孔34Cに挿通されている。また、ストッパ34の底壁34Aが、ストッパ固定ネジSCによって膝上げ軸32に固定されている。これにより、ストッパ34が膝上げ軸32と一体回転可能に構成されている。そして、膝上げレバー24の初期位置では、ストッパ34が骨格フレームに当接して、初期位置における膝上げレバー24の回転方向他方側への回転が制限されている。
【0021】
<リターンスプリング36について>
リターンスプリング36は、トーションバネとして構成されている。そして、リターンスプリング36が、膝上げ軸32に挿通されて、ストッパ34の前側に隣接して配置されている。リターンスプリング36の一端部は、ストッパ34に係止され、リターンスプリング36の他端部は、骨格フレームに係止されており、リターンスプリング36が膝上げ軸32を回転方向他方側へ付勢している。
【0022】
<リンク機構40について>
図2に示されるように、リンク機構40は、第1リンク42と、第2リンク44と、第3リンク46と、を含んで構成されている。第1リンク42は、左右方向に延在されており、第1リンク42の右端部が、膝上げ軸32の後端部に一体回転可能に連結されている。第2リンク44は、上下方向に延在されており、第2リンク44の下端部が、第1リンク42の左端部に前後方向を軸方向として回転可能に連結されている。
【0023】
第3リンク46は、左右方向に延在されており、第3リンク46の長手方向中間部が、前後方向を軸方向として、骨格フレームに回転可能に連結されている。また、第3リンク46の右端部は、第2リンク44の上端部に前後方向を軸方向として回転可能に連結されており、第3リンク46の左端部が、押え棒16に固定されている。これにより、膝上げレバー24(膝上げ軸32)が、初期位置から回転方向一方側へ回転することで、リンク機構40が作動して、押え棒16(押え20)が押え位置から上昇する構成になっている。
【0024】
<第1リング50について>
図3図5に示されるように、第1リング50は、前後方向を軸方向とした略円筒状に形成されている。そして、膝上げ軸32が、第1リング50内を挿通して、第1リング50が、ストッパ34の後側(膝上げ軸32の軸方向一方側)に配置されている。また、第1リング50の外周部には、連結孔50Aが貫通形成されており、連結孔50Aは、前後方向に延在された長孔状に形成されている。そして、連結軸54が、連結孔50A内に挿入されると共に、連結軸54の一端部が、膝上げ軸32に固定されている。これにより、連結軸54によって、第1リング50が、膝上げ軸32に一体回転可能に且つ前後方向に相対移動可能に連結されている。
【0025】
第1リング50の後端面には、複数(本実施の形態では、10箇所)の第1歯部50Bが形成されており、第1歯部50Bは、第1リング50の周方向に並んで配置されている。第1歯部50Bは、所謂ラチェット歯と同様の形状に形成されている。具体的には、第1歯部50Bは、第1リング50の径方向から見て、前後方向に延在された係合面50B1と、係合面50B1の後端から第1リング50の回転方向一方側へ向かうに従い前側へ傾斜した傾斜面50B2と、を含んで構成されている。また、第1歯部50Bの先端部(後端部)は、面取りされて、第1歯部50Bの先端面は、前後方向に直交する面に沿って形成されている。
【0026】
また、第1リング50の外周部には、前後方向に延在された第1キー溝50Cが形成されており、第1キー溝50Cは、前後方向から見て、第1リング50の径方向外側へ開放された略C字形状に形成されている。この第1キー溝50Cは、第1リング50を前後方向に貫通している。
【0027】
<第2リング52について>
第2リング52は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されており、第2リング52の外径が第1リング50の外径と一致している。そして、膝上げ軸32が第2リング52内に挿入され、第2リング52が、第1リング50の後側に隣接した位置において、膝上げ軸32に回転可能に支持されている。また、後述する保持機構60によって、第2リング52が回転不能に保持されており、保持機構60が作動することで、第2リング52の回転が許可される構成になっている。
【0028】
第2リング52の前端面(第1リング50と対向する面)には、第1リング50の第1歯部50Bに対応する複数(本実施の形態では、10箇所)の第2歯部52Aが形成されており、第2歯部52Aが第1歯部50Bに係合されている(図4に示される状態であり、以下、この状態を第1係合状態という)。第2歯部52Aは、第1歯部50Bに対応して、所謂ラチェット歯と同様の形状に形成されている。具体的には、第2歯部52Aは、第2リング52の径方向から見て、前後方向に延在された係合面52A1と、係合面52A1の前端部から第2リング52の回転方向他方側へ向かうに従い後側へ傾斜した傾斜面52A2と、を含んで構成されている。
【0029】
そして、第1係合状態では、第1リング50及び第2リングの回転方向において、第1歯部50Bの係合面50B1と第2歯部52Aの係合面52A1とが係合して、第1リング50の第2リング52に対する回転方向他方側への回転が制限されている。また、第1係合状態では、第1歯部50Bの傾斜面50B2が、第2歯部52Aの傾斜面52A2上を摺動することで、第1リング50の第2リング52に対する回転方向一方側への回転が許可されている。さらに、第1リング50が第2リング52に対して回転方向一方側へ回転するときには、第1リング50が第2リング52に対して前側へ変位するようになっている。
【0030】
また、第2歯部52Aの先端部(前端部)は、面取りされて、第2歯部52Aの先端面が、前後方向に直交する面に沿って形成されている。さらに、第2歯部52Aの先端面には、第2リング52の回転方向一方側の部分において、「係合部」としての保持係合部52Bが形成されている。保持係合部52Bは、第2歯部52Aの先端面よりも後側へ一段下がった段差状に形成されると共に、第2リング52の回転方向一方側へ開放されている。そして、膝上げレバー24が第1操作位置に操作されたときには、第1歯部50Bの先端部が保持係合部52Bに係合する設定になっている(図5に示される状態であり、以下、この状態を第2係合状態という)。これにより、膝上げレバー24の第1操作位置では、第2リング52によって第1リング50(膝上げ軸32)の回転方向他方側への回転が制限されて、膝上げレバー24が第1操作位置に保持される構成になっている。すなわち、リンク機構40によって押え位置から上昇した押え20が、上昇した位置に保持される構成になっている。
【0031】
なお、上述のように、保持係合部52Bは、第2リング52の回転方向一方側へ開放されているため、第2係合状態では、第1リング50の第2リング52に対する回転方向一方側への回転を許可する構成になっている。そして、膝上げレバー24が第1操作位置から第2操作位置へ操作されたときには、第1歯部50Bの先端部と第2歯部52Aの保持係合部52Bとの係合状態が解除されると共に、第1歯部50Bと第2歯部52Aとが再び係合する構成になっている。すなわち、第1リング50及び第2リング52が、第2係合状態から第1係合状態に遷移する構成になっている。
【0032】
第2リング52の外周部には、前後方向に延在された複数(本実施の形態では、10箇所)の第2キー溝52Cが形成されており、第2キー溝52Cは、前後方向から見て、第2リング52の径方向外側へ開放された略C字形状に形成されている。また、第2キー溝52Cは、第2リング52を前後方向に貫通しており、第2リング52の周方向に等間隔毎に配置されている。そして、第1係合状態では、第2リング52の周方向において、複数の第2キー溝52Cの何れか1箇所の第2キー溝52Cが、第1リング50の第1キー溝50Cと一致した位置に配置されている。
【0033】
第2リング52の後端面には、後述する保持機構60を構成する、複数の「係合歯」としてのリング側係合歯52Dが形成されている。リング側係合歯52Dは、第2リング52の径方向から見て、後側へ突出した略V字形状に形成されて、第2リング52の周方向に沿って並んで配置されている。また、リング側係合歯52Dの歯高さが、第1歯部50B及び第2歯部52Aの歯高さよりも大幅に低く設定されている。
【0034】
<保持機構60について>
図3図5に示されるように、保持機構60は、前述した第2リング52のリング側係合歯52Dと、保持部材62と、保持スプリング64と、を含んで構成されている。
【0035】
保持部材62は、前後方向を軸方向とした略円筒状に形成されている。そして、膝上げ軸32が、保持部材62内を挿通して、保持部材62が、第2リング52の後側に隣接して配置されている。保持部材62の左右方向両端部には、上側へ突出した左右一対の固定片62Aが一体に形成されている。固定片62Aの上端部の部分は、後側へ屈曲されて、骨格フレームに固定されている。
【0036】
保持部材62の前端面には、複数の保持係合歯62Bが形成されている。保持係合歯62Bは、保持部材62の径方向から見て、前側へ突出した略V字形状に形成されて、保持部材62の周方向に沿って並んで配置されている。また、保持係合歯62Bはリング側係合歯52Dに対応して形成されており、リング側係合歯52Dと保持係合歯62Bとが係合して、保持部材62によって第2リング52が回転不能に保持されている。
【0037】
保持スプリング64は、圧縮コイルバネとして構成されている。そして、保持スプリング64が、膝上げ軸32に装着され、自然状態から圧縮変形した状態で、ストッパ34と第1リング50との間に配置されている。これにより、保持スプリング64が、第1リング50を後側(第2リング52側)へ付勢している。
【0038】
ここで、膝上げレバー24の初期位置から第1操作位置までの回転操作では、保持スプリング64の付勢力が第2リング52に作用した状態で第1リング50の傾斜面50B2が第2リング52の傾斜面52A2上を摺動することで、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとの係合状態が維持されて、保持機構60の非作動状態が維持される設定になっている。すなわち、保持機構60の非作動状態では、第2リング52が回転不能に保持されている。
【0039】
一方、膝上げレバー24が第2操作位置へ操作されて、膝上げレバー24に対する操作が解除されたときには、リターンスプリング36の付勢力によって、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとの係合状態が解除されて、保持機構60が作動する設定になっている。すなわち、このときには、リターンスプリング36の付勢力によって、第2リング52の回転不能に保持された状態が解除されて、膝上げ軸32、第1リング50、及び第2リング52が、保持部材62に対して回転方向他方側へ回転して、膝上げレバー24が初期位置へ復帰する構成になっている。
【0040】
(切替機構70について)
図2及び図3に示されるように、切替機構70は、操作部材72と、スライド部材74と、連結リング76(広義には、「連結部材」として把握される要素である)と、を含んで構成されている。
【0041】
操作部材72は、前後方向を長手方向とする略直方体状に形成され、ベッド部12Cの右上部において前後方向にスライド操作可能に設けられている(図1参照)。具体的には、操作部材72は、オン位置と、オン位置から後側へスライドしたオフ位置と、の間をスライド可能に構成されている。
【0042】
スライド部材74は、操作部材72の下側に配置されている。このスライド部材74は、左右方向から見て、下側へ開放された略逆U形板状に形成されている。具体的には、スライド部材74は、上下方向を板厚方向とした頂壁74Aと、頂壁74Aの前端部及び後端部から下側へ延出された前後一対の連結壁74Bと、を含んで構成されている。頂壁74Aの左端部における前後方向中間部には、上側へ延出された取付片74Cが一体に形成されている。そして、取付片74Cが、操作部材72に固着されている。これにより、操作部材72が前後方向にスライドすることで、スライド部材74が前後方向にスライドする構成になっている。
【0043】
連結リング76は、前後方向を軸方向とした円筒状に形成されている。また、連結リング76の上端部が、スライド部材74における一対の連結壁74Bの下端部によって前後に挟み込まれている。これにより、操作部材72及び連結リング76が、前後方向に一体的にスライドする構成になっている。
【0044】
連結リング76の内径は、第1リング50及び第2リング52の外径よりも若干大きく設定されている。そして、操作部材72のオン位置では、第1リング50が連結リング76の内部に配置されている。一方、操作部材72のオフ位置では、連結リング76が後側へ移動して、第1リング50及び第2リング52が、連結リング76の内部に配置されている。また、連結リング76の外周部には、前側へ開放されたスリット76Aが形成されており、スリット76Aは、前後方向に延在されている。そして、連結軸54がスリット76A内に挿入されている。
【0045】
連結リング76の内周面には、前後方向に延在されたキー76Bが形成されており、キー76Bは、前後方向から見て、連結リング76の径方向内側へ凸となる略円弧状に形成されている。そして、操作部材72のオン位置では、キー76Bが、第1リング50の第1キー溝50C内に挿入されて、連結リング76と第1リング50とが一体回転可能に連結されている。一方、操作部材72のオフ位置では、キー76Bが、第1リング50の第1キー溝50C及び第2リング52の第2キー溝52Cの内部に挿入されて、連結リング76によって第1リング50及び第2リング52が相対回転不能に連結される構成になっている。
【0046】
ここで、操作部材72のオン位置では、第1リング50及び第2リング52が連結リング76によって連結されていないため、第1リング50の第2リング52に対する回転方向一方側への回転が許可されている。このため、膝上げ機構30の保持機能が有効となる設定になっている。一方、操作部材72のオフ位置では、連結リング76によって第1リング50及び第2リング52が一体回転可能に連結されるため、第1リング50と第2リング52との第1係合状態が維持される設定になっている。つまり、操作部材72のオフ位置では、膝上げ機構30の保持機能が無効になる設定になっている。
【0047】
また、膝上げ機構30における保持機能の無効状態では、膝上げレバー24から膝上げ軸32に入力される回転方向一方側への操作力(回転力)によって保持機構60が作動する設定になっている。すなわち、第1係合状態の第1リング50及び第2リング52が、保持部材62に対して回転方向一方側へ相対回転する構成になっている。また、膝上げ機構30における保持機能の無効状態では、膝上げレバー24の何れの操作位置において、膝上げレバー24に対する操作が解除されると、リターンスプリング36の付勢力によって、保持機構60が作動する設定になっている。すなわち、膝上げ軸32、第1リング50、及び第2リング52が、保持部材62に対して回転方向他方側へ回転して、膝上げレバー24が初期位置へ復帰する構成になっている。
【0048】
(作用効果)
次に、図6及び図7を用いて、膝上げレバー24が操作されたときの膝上げ機構30の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。なお、図6では、回転方向における第1リング50及び第2リング52の係合位置関係を理解し易くするために、第1リング50における第1歯部50Bの境界部分の1箇所に丸印を付している。また、図6では、回転方向における第2リング52及び保持部材62の係合位置関係を理解し易くするために、第2リング52における1箇所のリング側係合歯52Dに丸印を付している。さらに、図6では、便宜上、切替機構70を図示省略している。さらに、図7には、膝上げレバー24が操作されたときのリターンスプリング36及び保持スプリング64の付勢力(バネ荷重)を説明するためのグラフが図示されており、このグラフの横軸は、膝上げレバー24の操作位置を示しており、縦軸は、リターンスプリング36及び保持スプリング64の付勢力(バネ荷重)を示している。
【0049】
<操作部材72がオン位置に配置されたときの膝上げ機構30の動作について>
操作部材72のオン位置では、第1リング50が連結リング76内に挿入され、第2リング52が第2リング52内に挿入されていない。これにより、連結リング76が、第1リング50及び第2リング52を相対回転不能に連結していない。そして、図6の(1)には、膝上げレバー24の初期位置での膝上げ機構30の要部の状態が示されている。この状態では、第1リング50と第2リング52とが第1係合状態に係合しており、第1リング50の第2リング52に対する回転方向一方側(図6の(1)の矢印A方向側)への回転が許可されている。また、第2リング52のリング側係合歯52Dが、保持部材62の保持係合歯62Bに係合されている。さらに、保持スプリング64の後側への付勢力が第1リング50及び第2リング52に作用しており、第1リング50と第2リング52との第1係合状態、及びリング側係合歯52Dと保持係合歯62Bとの係合状態が維持されている。また、リターンスプリング36の付勢力(図7の1点鎖線aを参照)が、保持スプリング64の付勢力(図7の実線bを参照)よりも高くなっている。
【0050】
次に、膝上げレバー24が、初期位置と第1操作位置との間の領域(以下、この領域を往復可動領域という)に操作されたときの膝上げ機構30の動作について説明する。図6の(2)には、膝上げレバー24が往復可動領域に操作されたときの膝上げ機構30の状態が示されている。
【0051】
膝上げレバー24の往復可動領域への操作では、作業者が、膝部によって膝上げレバー24のパッド24Aを押圧することで、膝上げレバー24及び膝上げ軸32が、リターンスプリング36の付勢力に抗して初期位置から回転方向一方側(図6(1)の矢印A方向側)へ回転する。したがって、リンク機構40(図6では、不図示)によって押え20が押え位置から上昇する。なお、膝上げ軸32が回転方向一方側へ回転することで、リターンスプリング36の付勢力が徐々に増加する(図7の1点鎖線aを参照)。
【0052】
また、回転方向一方側への操作力が、膝上げ軸32を介して第1リング50に作用する。このため、第1リング50における第1歯部50Bの傾斜面50B2が、第2リング52における第2歯部52Aの傾斜面52A2上を摺動して、第1リング50が第2リング52に対して回転方向一方側へ相対回転する。また、このときには、第1リング50が保持スプリング64の付勢力に抗して前側へ変位する。これにより、保持スプリング64がさらに圧縮変形して、保持スプリング64の付勢力が徐々に増加する(図7の実線bを参照)。
【0053】
なお、膝上げレバー24の往復可動領域への操作では、保持スプリング64の付勢力が第2リング52に作用した状態で第1リング50の傾斜面50B2が第2リング52の傾斜面52A2上を摺動することで、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとの係合状態が維持される。すなわち、保持機構60の非作動状態が維持されて、第2リング52の回転不能に保持された状態が維持される。
【0054】
一方、膝上げレバー24の往復可動領域において、膝上げレバー24に対する回転操作(膝部による膝上げレバー24への押圧)を解除すると、リターンスプリング36の付勢力によって、第1リング50が第2リング52に対して回転方向他方側(図6の(2)の矢印B方向側)へ回転する。具体的には、第1リング50における第1歯部50Bの傾斜面50B2が、第2リング52における第2歯部52Aの傾斜面52A2上を摺動しながら、第1リング50が、第2リング52に対して回転方向他方側へ相対回転して、図6の(1)の状態に復帰する。これにより、膝上げ軸32が、第1リング50と共に回転して、膝上げレバー24が初期位置に復帰すると共に、押え20が上昇した位置から押え位置に復帰する。
【0055】
なお、図6の(2)の状態から(1)の状態へ遷移するときには、第1リング50の傾斜面50B2が、第2リング52の傾斜面52A2上を摺動することで、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとの係合状態が維持されている。
【0056】
次に、膝上げレバー24が第1操作位置に操作されたときの膝上げ機構30の動作について説明する。膝上げレバー24の第1操作位置への回転操作では、上述と同様に、膝上げ軸32及び第1リング50が、第2リング52に対して回転方向一方側へ相対回転する。また、このときには、上述と同様に、第1リング50が保持スプリング64の付勢力に抗して前側へ変位して、保持スプリング64の付勢力が増加する(図7の実線bを参照)。そして、膝上げレバー24が第1操作位置に操作されるときには、図6の(2)の状態を経由して、図6の(3)の状態になる。具体的には、第1リング50の第1歯部50Bの先端部が、第2リング52における第2歯部52Aの保持係合部52Bに係合する。これにより、第1リング50及び第2リング52が第2係合状態になり、第1リング50の第2リング52に対する回転方向他方側への相対回転が制限される。
【0057】
また、膝上げレバー24の第1操作位置では、保持スプリング64の付勢力が、リターンスプリング36の付勢力よりも高くなる(図7の1点鎖線a及び実線bを参照)。このため、第1操作位置において膝上げレバー24の操作を解除しても、保持スプリング64の付勢力によって、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとの係合状態が維持される。すなわち、保持部材62による第2リング52を回転不能に保持する状態が維持される。したがって、第1操作位置において膝上げレバー24の操作を解除しても、膝上げレバー24が第1操作位置に保持されると共に、押え20が、上昇した位置に保持される。
【0058】
次に、上昇した押え20の保持状態を解除するときの膝上げ機構30の動作について説明する。上昇した押え20の保持状態を解除するときには、作業者によって、第1操作位置に保持された膝上げレバー24を回転方向一方側へ回転させる。これにより、第1リング50が第2リング52に対して回転方向一方側(図6の(3)の矢印A方向側)へ相対回転する。そして、膝上げレバー24が第2操作位置に到達すると、第1リング50の第1歯部50Bが第2リング52の保持係合部52Bから離脱する。このため、図6の(4)に示されるように、保持スプリング64の付勢力によって、第1リング50が後側へ変位して、第1歯部50Bが、第2リング52の第2歯部52Aに再び係合する。すなわち、(4)の状態では、第1リング50と第2リング52とが、第1係合状態に復帰する。これにより、第1リング50の第2リング52に対する回転方向他方側への相対回転が制限される。なお、(4)の状態では、第1リング50が、(1)の状態に対して第1歯部50B(第2歯部52A)の1歯分だけ回転方向一方側へ回転した位置に配置される。
【0059】
また、膝上げレバー24の第2操作位置では、保持スプリング64の付勢力が、膝上げレバー24の初期位置のときの付勢力に戻り、リターンスプリング36の付勢力よりも低くなる(図7の1点鎖線a及び実線bを参照)。このため、第2操作位置において膝上げレバー24に対する回転操作を解除すると、リターンスプリング36の付勢力によって、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとの係合状態が、保持スプリング64の付勢力に抗して解除される。すなわち、保持機構60が作動して、第1係合状態の第1リング50及び第2リング52が、保持部材62に対して回転方向他方側(図6の(4)の矢印B方向側)へ回転する。したがって、膝上げ軸32が回転方向他方側へ回転して、膝上げレバー24が初期位置に復帰すると共に、押え20が上昇した位置から下降して押え位置に復帰する。そして、図6の(5)に示されるように、膝上げレバー24が初期位置に復帰すると、保持スプリング64の付勢力によって、第2リング52のリング側係合歯52Dと保持部材62の保持係合歯62Bとが再び係合する。
【0060】
以上により、操作部材72のオン位置では、膝上げレバー24を初期位置から回転方向一方へ回転操作すると、押え20が押え位置から上昇する。また、膝上げレバー24の往復可動領域では、膝上げレバー24に対する操作を解除することで、膝上げレバー24が初期位置に復帰すると共に、押え20が、上昇した位置から押え位置に復帰する。さらに、膝上げレバー24の第1操作位置では、膝上げレバー24に対する操作を解除することで、膝上げレバー24が第1操作位置に保持されると共に、押え20が、上昇した位置に保持される。また、膝上げレバー24を第1操作位置から第2操作位置に回転させ、膝上げレバー24に対する操作を解除することで、押え20が、上昇した位置から押え位置に復帰すると共に、膝上げレバー24が初期位置に復帰する。
【0061】
<操作部材72がオフ位置に配置されたときの膝上げ機構30の動作について>
操作部材72のオフ位置では、操作部材72によって連結リング76が後側へスライドして、第1係合状態の第1リング50及び第2リング52が連結リング76内に挿入される。また、この状態では、連結リング76のキー76Bが、第1リング50の第1キー溝50C及び第2リング52の第2キー溝52Cの内部に配置されて、第1リング50及び第2リング52が、連結リング76によって相対回転不能に連結される。このため、連結リング76によって、第1リング50及び第2リング52の第1係合状態が維持された状態になる。換言すると、膝上げ軸32、第1リング50、及び第2リング52が、相対回転不能に連結される。
【0062】
ここで、保持スプリング64の付勢力によって、第2リング52のリング側係合歯52Dが、保持部材62の保持係合歯62Bに係合されて、第2リング52が保持部材62によって回転不能に保持されている。すなわち、膝上げレバー24(膝上げ軸32)が、保持機構60によって回転不能に保持されている。このため、保持スプリング64の付勢力よりも高い操作力を膝上げレバー24に入力することで、リング側係合歯52Dと保持係合歯62Bとの係合状態が、保持スプリング64の付勢力に抗して解除される。これにより、膝上げ軸32、第1リング50、及び第2リング52が、保持部材62に対して回転方向一方側へ相対回転する。その結果、リンク機構40によって、押え20が押え位置から上昇する。
【0063】
また、上述のように、第1リング50及び第2リング52の第1係合状態が維持されている。このため、膝上げレバー24が第1操作位置に操作されても、膝上げレバー24が第1操作位置に保持されない。これにより、操作部材72のオフ位置では、膝上げ機構30の保持機能が無効となる。さらに、第1リング50及び第2リング52が保持部材62に対して相対回転するときには、保持スプリング64の付勢力(図7の実線cを参照)がリング側係合歯52D及び保持係合歯62Bの形状に対応して変化する。ここで、リング側係合歯52D及び保持係合歯62Bの歯高さが比較的低く設定されている。このため、保持スプリング64の付勢力の上限値が、リターンスプリング36の付勢力(図7の1点鎖線aを参照)よりも小さくなっている。これにより、往復可動領域、第1操作位置、及び第2操作位置の何れの操作領域において、膝上げレバー24に対する操作を解除すると、リターンスプリング36の付勢力によって、リング側係合歯52D及び保持係合歯62Bが係合せず、保持機構60が作動する。このため、膝上げ軸32、第1リング50、及び第2リング52が、保持部材62に対して回転方向他方側へ回転して、膝上げレバー24が初期位置に復帰すると共に、押え20が上昇した位置から押え位置に復帰する。
【0064】
以上により、操作部材72のオフ位置では、膝上げレバー24を初期位置から回転方向一方へ回転操作すると、押え20が押え位置から上昇する。また、往復回動領域、第1操作位置、及び第2操作位置の何れの操作位置において、膝上げレバー24に対する操作を解除することで、膝上げレバー24が初期位置に復帰すると共に、押え20が、上昇した位置から押え位置に復帰する。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態のミシン10では、膝上げレバー24に膝上げ軸32が一体回転可能に連結されており、膝上げ軸32に第1リング50が一体回転可能に支持されている。また、膝上げ軸32には、第2リング52が回転可能に支持されており、保持機構60によって、第2リング52が回転不能に保持されている。そして、膝上げレバー24の初期位置では、第1リング50及び第2リング52が、第1係合状態に係合されており、第1係合状態では、第2リング52によって、第1リング50の回転方向他方側への回転が制限されると共に、第1リング50の回転方向一方側への回転が許可されている。このため、膝上げレバー24を初期位置から回転方向一方側へ回転させたときには、膝上げ軸32及び第1リング50が、第2リング52に対して相対回転して、膝上げ軸32に連結されたリンク機構40によって押え20が上昇する。
【0066】
また、膝上げレバー24の第1操作位置では、第1リング50が第2リング52に係合して、第2係合状態になり、第2係合状態では、第2リング52によって第1リング50の回転方向他方側への回転が制限される。このため、第1操作位置において膝上げレバー24に対する操作を解除しても、膝上げ軸32及び膝上げレバー24の回転方向他方側への回転が制限される。これにより、押え20を上昇した位置に保持することができる。その結果、押え20を上昇した位置に保持した状態で、作業者が作業を行うことができる。したがって、作業者に対する利便性を一層向上することができる。
【0067】
また、膝上げレバー24を第1操作位置から第2操作位置へ回転させると、第1リング50及び第2リング52が、再び第1係合状態に係合して、第1リング50の第2リング52に対する回転方向他方側への相対回転が制限される。そして、膝上げレバー24の第2操作位置において膝上げレバー24に対する操作が解除されると、リターンスプリング36の付勢力によって、保持機構60が作動して、第2リング52の回転不能に保持された状態が解除される。このため、第1リング50(すなわち、膝上げ軸32及び膝上げレバー24)が第2リング52と共に回転方向他方側へ回転して、膝上げレバー24が初期位置に復帰する。これにより、上昇した押え20を押え位置に復帰させることができる。
【0068】
また、第1リング50には、複数の第1歯部50Bが形成されており、第2リング52には、第1歯部50Bに係合された複数の第2歯部52Aが形成されている。これにより、第1歯部50B及び第2歯部52Aの形状を、所謂ラチェット歯と同様の形状にすることで、第1リング50と第2リング52との第1係合状態において、第1リング50(すなわち、膝上げ軸32及び膝上げレバー24)の回転方向一方側への回転を許可することができると共に、回転方向他方側への回転を制限することができる。また、膝上げレバー24の往復可動領域では、膝上げレバー24が第1操作位置に到達していないため、膝上げレバー24に対する操作を解除することで、膝上げレバー24を初期位置に復帰させることができる。
【0069】
また、第2リング52における第2歯部52Aの先端部には、保持係合部52Bが形成されている。そして、膝上げレバー24の第1操作位置では、第1リング50における第1歯部50Bの先端部が保持係合部52Bに係合して、第1リング50及び第2リング52が第2係合状態になり、第1リング50(すなわち、膝上げ軸32)の第2リング52に対する回転方向他方側への相対回転が制限される。このため、簡易な構成で、膝上げレバー24を第1操作位置に保持することができると共に、押え20を上昇した位置に保持することができる。
【0070】
さらに、膝上げレバー24の第2操作位置では、第1リング50の第1歯部50Bと第2リング52の保持係合部52Bとの係合状態が解除されて、第1リング50及び第2リング52が、再び第1係合状態に係合する。このため、第2操作位置の膝上げレバー24に対する操作を解除することで、第1係合状態に復帰した第1リング50及び第2リング52を保持部材62に対して回転させて、膝上げ機構30を初期状態に戻すことができる。
【0071】
また、保持機構60の保持部材62が、第2リング52のリング側係合歯52Dに係合して、保持部材62によって第2リング52が回転不能に保持されている。そして、膝上げレバー24の第1操作位置では、保持機構60の保持スプリング64のバネ荷重によってリング側係合歯52Dと保持部材62との係合状態が維持される。また、膝上げレバー24の第2操作位置において膝上げレバー24の操作が解除されると、リターンスプリング36の付勢力によって、リング側係合歯52Dと保持部材62との係合が保持スプリング64の付勢力に抗して解除される。これにより、膝上げレバー24の操作位置に応じた保持スプリング64及びリターンスプリング36の付勢力(バネ荷重)を適宜に設定することで、膝上げレバー24の第1操作位置において第2リング52を回転不能に保持することができると共に、膝上げレバー24の第2操作位置において第2リング52の回転を許可することができる。
【0072】
また、第1リング50の径方向外側には、連結リング76が設けられており、連結リング76は、オン位置又はオフ位置に切替可能に構成された操作部材72に連結されている。そして、操作部材72のオン位置では、連結リング76が第2リング52の径方向外側に配置されておらず、第1リング50の第2リング52に対する回転方向一方側への回転が許可されている。このため、膝上げ機構30の保持機能を有効にして、膝上げレバー24の第1操作位置において押え20を上昇した位置に保持することができる。一方、操作部材72のオフ位置では、連結リング76が、第1リング50及び第2リング52の径方向外側に配置されて、連結リング76によって、第1リング50及び第2リング52が相対回転不能に連結される。このため、膝上げ機構30の保持機能を無効して、押え20を上昇した位置に保持しない状態にすることができる。これにより、作業者が、作業状態に応じて操作部材72をオン位置又はオフ位置に切替えることで、膝上げレバー24によって上昇させた押え20を保持する状態又は保持しない状態に切替えることができる。したがって、作業者に対する利便性をより一層向上することができる。
【0073】
また、第1リング50の外周部には、第1キー溝50Cが形成されており、第2リング52の外周部には、第2キー溝52Cが形成されている。さらに、連結リング76の内周部には、キー76Bが形成されている。そして、操作部材72のオフ位置では、キー76Bが、第1キー溝50C及び第2キー溝52Cの内部に挿入されて、連結リング76によって、第1リング50及び第2リング52が相対回転不能に連結される。これにより、簡易な構成で、膝上げ機構30の保持機能を無効にすることができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、ミシン10が切替機構70を有しているが、ミシン10において、切替機構70を省略してもよい。すなわち、膝上げ機構30の保持機能を、常に有効にした状態にしてもよい。
【0075】
また、本実施の形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10 ミシン
12 ミシン本体
12A 脚柱部
12B アーム部
12C ベッド部
14 カバー
16 押え棒
18 押え棒抱き
20 押え
22 針板
24 膝上げレバー(操作レバー)
24A パッド
30 膝上げ機構
32 膝上げ軸(操作軸)
34 ストッパ
34A 底壁
34B 側壁
34C 挿通孔
36 リターンスプリング
40 リンク機構
42 第1リンク
44 第2リンク
46 第3リンク
50 第1リング(第1回転体)
50A 連結孔
50B 第1歯部
50B1 係合面
50B2 傾斜面
50C 第1キー溝
52 第2リング(第2回転体)
52A 第2歯部
52A1 係合面
52A2 傾斜面
52B 保持係合部(係合部)
52C 第2キー溝
52D リング側係合歯
54 連結軸
60 保持機構
62 保持部材
62A 固定片
62B 保持係合歯
64 保持スプリング
70 切替機構
72 操作部材
74 スライド部材
74A 頂壁
74B 連結壁
74C 取付片
76 連結リング
76A スリット
76B キー
SC ストッパ固定ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7