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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/24 20060101AFI20230830BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20230830BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20230830BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20230830BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230830BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B60L7/24 G
B60T8/17 C
B60T8/1755 Z
B60L7/14
B60L9/18 J
B60L15/20 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019202654
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021078217
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】執行 正勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上田 健介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 好隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正雄
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 壮太
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-126148(JP,A)
【文献】特開2015-080325(JP,A)
【文献】特開2017-028771(JP,A)
【文献】特開2012-090444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/24
B60T 8/17
B60T 8/1755
B60L 7/14
B60L 9/18
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動制御装置であって、
車両に設けられた駆動輪に接続される電動モータから前記駆動輪に駆動力又は制動力を与えるための駆動制動トルクを発生させるモータ制御部(121)と、
前記車両の加速度を検出する加速度検出部(101)と、
前記電動モータの回転数を検出する回転数検出部(102)と、
前記加速度検出部が検出した加速度と、前記回転数検出部が検出した回転数と、を用いて前記車両が停止する前に前記駆動輪が逆回転する逆回転タイミングを予測する逆回転予測部(103)と、
前記駆動輪に設けられた摩擦制動装置を制御する摩擦制動部(104)と、を備え、
前記逆回転予測部が予測した逆回転タイミングまでの間に、
前記モータ制御部は、前記駆動輪に制動力を与えるための駆動制動トルクを減少させ、
前記摩擦制動部は、前記摩擦制動装置によって前記駆動輪に与えられる摩擦制動力を増加させ、遅くとも前記逆回転タイミングにおいては駆動制動トルクによる制動力を上回らせる、制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制動制御装置であって、
前記モータ制御部は、前記摩擦制動力に実際に路面に伝達された車両制動力を加えた総制動力を超えないように前記電動モータによる制動力を減少させる。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制動制御装置であって、
前記摩擦制動部は、前記駆動輪が複数設けられている場合に、複数の前記駆動輪ごとに摩擦制動力を増加させる。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の制動制御装置であって、
前記摩擦制動部は、摩擦制動力を増加させるのに先立って、摩擦制動力を増加させるための準備を実行する。
【請求項5】
請求項4に記載の制動制御装置であって、
前記摩擦制動部は、前記摩擦制動装置に含まれる増圧源の油圧を上昇させて摩擦制動力を増加させるための準備を実行する。
【請求項6】
請求項4に記載の制動制御装置であって、
前記摩擦制動部は、前記摩擦制動装置に含まれるブレーキパッドと押圧対象部材との距離を減少させて摩擦制動力を増加させるための準備を実行する。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の制動制御装置であって、
駆動制動トルクによる制動力を摩擦制動力が上回るタイミングを、前記摩擦制動装置の応答性によって定める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制動装置において、電動モータによる制動の他に摩擦ブレーキによる制動を行うようにし、ブレーキペダルが踏まれると、車輪回転速度が予め規定した速度以上では電動モータによる制動を行い、車輪回転速度が予め規定した速度未満になると、電動モータによる制動に代わって摩擦ブレーキによる制動を行うものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-134715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車輪回転速度が予め規定した速度未満になると、電動モータによる制動に代わって摩擦ブレーキによる制動を行っているので、道路の状況を反映させた制御にはなっていない。例えば、低μ路では摩擦ブレーキへの切り替えが遅れ、停止前に駆動輪の逆転が発生する可能性がある。この駆動輪の逆転を回避するために早めに摩擦ブレーキへの切り替えを行うようにすると、電動モータによる回生電力量を十分に確保できない場合も想定される。
【0005】
本開示は、道路状況に応じて回生電力量を十分に確保しつつ駆動輪の逆転を抑制することができる制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、制動制御装置であって、車両に設けられた駆動輪に接続される電動モータから駆動輪に駆動力又は制動力を与えるための駆動制動トルクを発生させるモータ制御部(121)と、車両の加速度を検出する加速度検出部(101)と、電動モータの回転数を検出する回転数検出部(102)と、加速度検出部が検出した加速度と、回転数検出部が検出した回転数と、を用いて車両が停止する前に駆動輪が逆回転する逆回転タイミングを予測する逆回転予測部(103)と、駆動輪に設けられた摩擦制動装置を制御する摩擦制動部(104)と、を備え、逆回転予測部が予測した逆回転タイミングまでの間に、モータ制御部は、駆動輪に制動力を与えるための駆動制動トルクを減少させ、摩擦制動部は、摩擦制動装置によって駆動輪に与えられる摩擦制動力を増加させ、遅くとも逆回転タイミングにおいては駆動制動トルクによる制動力を上回らせる。
【0007】
本開示では、車両の加速度と電動モータの回転数とに基づいて、逆回転予測部が逆回転タイミングを予測するので、路面状態による影響を反映しつつ逆回転タイミングに至るまでの間であって逆回転タイミングに極力近い時点まで電動モータによる制動力を発生させることができ、回生電力量の十分な確保に資することができる。逆回転タイミングまでの間に、電動モータによる制動力を減少させつつ摩擦制動力を増加させ、摩擦制動力が電動モータによる制動力を上回らせるので、路面状態によらず駆動輪を逆回転させずに制動することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、道路状況に応じて回生電力量を十分に確保しつつ駆動輪の逆転を抑制することができる制動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態における車両の概略構成を示す図である。
図2図2は、図1における信号の授受を説明するための図である。
図3図3は、図1における制御フローを説明するためのフローチャートである。
図4図4は、タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1に示されるように、車両2には、右前輪215R及び左前輪215Lと、右後輪216R及び左後輪216Lと、が設けられている。右前輪215R及び左前輪215Lは、車両2を駆動するための駆動輪として機能している。右後輪216R及び左後輪216Lは、右前輪215R及び左前輪215Lの駆動に伴って回転する従動輪として機能している。
【0012】
車両2には、インバータ211と、モータジェネレータ212と、電池213と、デファレンシャルギア214と、が設けられている。インバータ211は、モータジェネレータ212と電池213との間に設けられている。電池213に蓄えられた電力を用いてモータジェネレータ212を駆動する場合、インバータ211は電池213から出力される直流電流を三相交流電流に変換し、モータジェネレータ212に供給する。モータジェネレータ212を発電機として利用し、回生制動する場合には、インバータ211はモータジェネレータ212から出力される三相交流電流を直流電流に変換し、電池213に供給する。
【0013】
モータジェネレータ212は、電動機と発電機とを兼用する電動発電機である。モータジェネレータ212は、デファレンシャルギア214を介して駆動輪である右前輪215R及び左前輪215Lと繋がっている。インバータ211から三相交流電流が供給されると、モータジェネレータ212は供給される三相交流電流に応じて回動し、デファレンシャルギア214を介して右前輪215R及び左前輪215Lを駆動する。回生制動される場合、右前輪215R及び左前輪215Lの回転がデファレンシャルギア214を介してモータジェネレータ212に伝達される。電池213に蓄電可能である場合には、モータジェネレータ212の軸回転により発電され、発生する三相交流電流がインバータ211によって直流電流に変換され電池213に供給される。
【0014】
車両2には、ESC-ECU(Electronic Stability Control-Electronic Control Unit)10と、EV-ECU(Electric Vehicle-Electronic Control Unit)12と、MG-ECU(Motor Generator-Electronic Control Unit)14と、が設けられている。
【0015】
ESC-ECU10は、車両2の挙動を安定させるための装置である。ESC-ECU10には、Gセンサ221と、ヨーレートセンサ222と、右前車輪速センサ223Rと、左前車輪速センサ223Lと、右後車輪速センサ224Rと、左後車輪速センサ224Lと、から検出信号が出力される。
【0016】
Gセンサ221は、車両2の加速及び減速時の加速度を計測するためのセンサである。Gセンサ221は、車両2の前後方向における加速及び減速時の加速度を示す信号をESC-ECU10に出力する。ヨーレートセンサ222は、車両2の垂直軸周りの角速度を計測するためのセンサである。ヨーレートセンサ222は、車両2の垂直軸周りの角速度を示す信号をESC-ECU10に出力する。
【0017】
右前車輪速センサ223Rは、右前輪215Rの車輪速度を計測するためのセンサである。右前車輪速センサ223Rは、右前輪215Rの車輪速度を示す信号をESC-ECU10に出力する。
【0018】
左前車輪速センサ223Lは、左前輪215Lの車輪速度を計測するためのセンサである。左前車輪速センサ223Lは、左前輪215Lの車輪速度を示す信号をESC-ECU10に出力する。
【0019】
右後車輪速センサ224Rは、右後輪216Rの車輪速度を計測するためのセンサである。右後車輪速センサ224Rは、右後輪216Rの車輪速度を示す信号をESC-ECU10に出力する。
【0020】
左後車輪速センサ224Lは、左後輪216Lの車輪速度を計測するためのセンサである。左後車輪速センサ224Lは、左後輪216Lの車輪速度を示す信号をESC-ECU10に出力する。
【0021】
ESC-ECU10は、Gセンサ221、ヨーレートセンサ222、右前車輪速センサ223R、左前車輪速センサ223L、右後車輪速センサ224R、及び左後車輪速センサ224Lから出力される信号に基づいて、車両2の挙動を安定させるための演算を実行する。ESC-ECU10は、演算結果に基づいて、EV-ECU12に車両2の車体速度を調整するための信号を出力する。ESC-ECU10は、演算結果に基づいて摩擦制動装置としての、右前摩擦ブレーキ231R、左前摩擦ブレーキ231L、右後摩擦ブレーキ232R、及び左後摩擦ブレーキ232Lに、摩擦制動を行うための信号を出力する。
【0022】
EV-ECU12は、ESC-ECU10から出力される車体速度の情報、MG-ECU14から出力されるモータジェネレータ212の回転数、及び、アクセル開度等のドライバー操作や図示しない各種センサから出力される信号が示す情報に基づいて、モータジェネレータ212が発生すべき回転数に対応するトルクをMG-ECU14に出力する。
【0023】
MG-ECU14は、モータジェネレータ212が所定のトルクを発生するように、インバータ211に制御信号を出力する。MG-ECU14は、モータジェネレータ212の回転数を計測する。MG-ECU14は、モータジェネレータ212の回転数を示す情報をEV-ECU12に出力する。
【0024】
続いて、図2を参照しながら、ESC-ECU10、EV-ECU12、及びMG-ECU14の機能的な要素について説明する。図2に示されるように、ESC-ECU10は機能的な構成要素として、加速度検出部101と、回転数検出部102と、逆回転予測部103と、摩擦制動部104と、を備えている。
【0025】
加速度検出部101は、車両2の加速度を検出する部分である。車両2の加速度は、Gセンサ221の出力信号によって取得することができる。
【0026】
回転数検出部102は、電動モータであるモータジェネレータ212の回転数を検出する部分である。モータジェネレータ212の回転数は、MG-ECU14が計測しEV-ECU12に出力する。回転数検出部102は、EV-ECU12からモータジェネレータ212の回転数に関する情報を受け取る。
【0027】
逆回転予測部103は、加速度検出部101が検出した加速度と、回転数検出部102が検出した回転数と、を用いて車両2が停止する前に電動モータであるモータジェネレータ212が逆回転する逆回転タイミングを予測する部分である。
【0028】
摩擦制動部104は、駆動輪である右前輪215R及び左前輪215Lに設けられた摩擦制動装置としての右前摩擦ブレーキ231R及び左前摩擦ブレーキ231Lを制御する部分である。
【0029】
EV-ECU12は、機能的な構成要素としてモータ制御部121を備えている。モータ制御部121は、車両2に設けられた駆動輪である右前輪215R及び左前輪215Lに接続される電動モータであるモータジェネレータ212から駆動輪である右前輪215R及び左前輪215Lに駆動力又は制動力を与えるための駆動制動トルクを発生させる部分である。
【0030】
モータ制御部121は、アクセル開度等のドライバー操作を検出するセンサや他の各種センサから出力される情報、ESC-ECU10から出力される情報、MG-ECU14から出力される情報を集約し、モータジェネレータ212への指示トルクを決定し、MG-ECU14へ出力する。
【0031】
続いて、図3を参照しながら、具体的な制御内容について説明する。ステップS101では、モータ制御部121が、モータジェネレータ212によって制動トルクが発生し回生制動中であるか否かを判定する。回生制動中であればステップS102の処理に進み、回生制動中でなければステップS101の処理を繰り返す。
【0032】
ステップS102では、逆回転予測部103が、モータジェネレータ212の回転数を予測する。逆回転予測部103は、回転数検出部102の検出結果に基づいてモータジェネレータ212の回転数を予測する。
【0033】
図4に、モータジェネレータ212の回転数の推移の一例、車両2の速度推移の一例、制動力推移の一例を示す。図4(A)は、モータジェネレータ212の時刻t1までの回転数及び時刻t1以降の回転数の予測値を示している。図4(B)は、車両2の時刻t2までの速度及び時刻t1以降の速度の予測値を示している。図4(C)は、モータジェネレータ212が発生する制動トルクによる回生制動力FMGと、右前摩擦ブレーキ231R及び左前摩擦ブレーキ231Lが発生する摩擦制動力FBKと、を示している。
【0034】
図4に示す例によれば、逆回転予測部103は、時刻t1までに検出したモータジェネレータ212の回転数推移を外挿し、時刻t1以降のモータジェネレータ212の回転数推移を予測している。
【0035】
ステップS102に続くステップS103では、逆回転予測部103が、車両2の速度を予測する。逆回転予測部103は、加速度検出部101の検出結果に基づいて車両2の速度を予測する。図4における例示によれば、逆回転予測部103は、時刻t1における車両2の速度と加速度とに基づく速度推移を外挿し、時刻t1以降の車両2の速度推移を予測している。
【0036】
ステップS103に続くステップS104では、逆回転予測部103が、車両2が停止する前に電動モータであるモータジェネレータ212の逆回転が発生するか否かを判断する。モータジェネレータ212の逆回転が発生すると判断すれば、ステップS105の処理に進む。モータジェネレータ212の逆回転が発生すると判断しなければ、ステップS101の処理に戻る。
【0037】
ステップS105では、逆回転予測部103が、逆回転タイミングを予測する。図4に示す例によれば、モータジェネレータ212の回転数は、時刻t3において0になる。一方、車両2の速度は、時刻t3においてはまだ0ではなく、時刻t3を過ぎた時刻t4において0となる。従って、時刻t3以降において、モータジェネレータ212の回転数が0になった状態で車両2が走行している状態になるので、モータジェネレータ212が逆回転状態となり、駆動輪である右前輪215R及び左前輪215Lも逆回転状態となる。この例によれば、時刻t1において、ステップS104及びステップS105の処理を実行し、時刻t3において逆回転タイミングが到来すると予測する。
【0038】
ステップS105に続くステップS106では、摩擦制動部104が、摩擦ブレーキの立ち上げタイミングを算出する。図4に示す例では、逆回転タイミングである時刻t3から逆算し、時刻t3において摩擦ブレーキの摩擦制動力FBKが最大となるように、摩擦ブレーキの立ち上げタイミングを時刻t2としている。モータ制御部121は、時刻t2から回生制動力FMGを減少させ始める。
【0039】
ステップS106に続くステップS107では、摩擦制動部104が、ステップS106で算出されたタイミングで摩擦ブレーキを作動させる。図4に示す例では、時刻t2がそのタイミングとなり、時刻t3で摩擦制動力FBKが最大となり、時刻t4で車両2が停止する。モータ制御部121は、時刻t2から回生制動力FMGを減少させ始める。ステップS107の処理が終了するとリターンする。
【0040】
本実施形態では、制動制御装置をESC-ECU10及びEV-ECU12によって構成している。制動制御装置は、車両2に設けられた駆動輪に接続される電動モータであるモータジェネレータ212から駆動輪に駆動力又は制動力を与えるための駆動制動トルクを発生させるモータ制御部121と、車両2の加速度を検出する加速度検出部101と、モータジェネレータ212の回転数を検出する回転数検出部102と、加速度検出部101が検出した加速度と、回転数検出部102が検出した回転数と、を用いて車両2が停止する前に駆動輪が逆回転する逆回転タイミングを予測する逆回転予測部103と、駆動輪に設けられた摩擦制動装置を制御する摩擦制動部104と、を備えている。逆回転予測部103が予測した逆回転タイミングまでの間に、モータ制御部121は、駆動輪に制動力を与えるための駆動制動トルクを減少させ、摩擦制動部104は、摩擦制動装置によって駆動輪に与えられる摩擦制動力を増加させ、遅くとも逆回転タイミングにおいては駆動制動トルクによる制動力を上回らせる。
【0041】
本実施形態では、車両2の加速度とモータジェネレータ212の回転数とに基づいて、逆回転予測部103が逆回転タイミングを予測するので、路面状態による影響を反映しつつ逆回転タイミングに至るまでの間であって逆回転タイミングに極力近い時点までモータジェネレータ212による制動力を発生させることができ、回生電力量の十分な確保に資することができる。逆回転タイミングまでの間に、モータジェネレータ212による制動力を減少させつつ摩擦制動力を増加させ、摩擦制動力がモータジェネレータ212による制動力を上回らせるので、路面状態によらず駆動輪を逆回転させずに制動することができる。
【0042】
また本実施形態において、モータ制御部121は、摩擦制動力に実際に路面に伝達された車両制動力を加えた総制動力を超えないようにモータジェネレータ212による制動力を減少させることも可能である。
【0043】
総制動力を超えないようにモータジェネレータ212による制動力を減少させるので、摩擦制動力のみを超えないように減少させる場合に比較して制動力を高く維持することができ、モータジェネレータ212による回生電力量をより多く確保することができる。
【0044】
また本実施形態において、摩擦制動部104は、駆動輪が複数設けられている場合に、複数の駆動輪ごとに摩擦制動力を増加させることも可能である。
【0045】
駆動輪ごとに摩擦制動力を増加させるので、駆動輪ごとに路面状況が異なるような場合にも、その状況にあわせた制動が可能となる。
【0046】
また本実施形態において、摩擦制動部104は、摩擦制動力を増加させるのに先立って、摩擦制動力を増加させるための準備を実行することも可能である。
【0047】
摩擦制動力を増加させるための準備を、摩擦制動力の増加に先立って実行することで、摩擦制動力の増加応答性を高めることができ、摩擦制動力の増加タイミングを遅らせることができる。摩擦制動力の増加タイミングを遅らせることで、にモータジェネレータ212による制動力の減少を遅らせることができ、回生電力量をより多く確保することができる。
【0048】
また本実施形態において、摩擦制動部104は、摩擦制動装置に含まれる増圧源の油圧を上昇させて摩擦制動力を増加させるための準備を実行することができる。
【0049】
増圧源の油圧を上昇させることで、摩擦制動力を増加させるための準備をより確実に行うことができる。「増圧源」とはECUから出力される信号によりブレーキ液圧を増圧可能なように構成されたサブシステムである。増圧源としては、電気駆動が可能なように構成されたマスターシリンダを用いてもよい。増圧源としては、複数の電磁弁とアキュムレータとそのアキュムレータの圧力を常時ほぼ一定にするよう制御されるポンプとの組み合わせを用いてもよい。増圧源としては、ブレーキ液圧の増圧が必要な時に駆動されるギアポンプを用いてもよい。増圧源は、ブレーキ液圧を増圧可能なように構成されていれば、これら例示したものに限られることなく広く知られているものの内のどれを使用してもよい。
【0050】
また本実施形態において、摩擦制動部104は、摩擦制動装置に含まれるブレーキパッドと押圧対象部材との距離を減少させて摩擦制動力を増加させるための準備を実行することができる。
【0051】
ブレーキパッドと押圧対象部材との距離を減少させることで、摩擦制動力を増加させるための準備をより確実に行うことができる。
【0052】
また本実施形態において、駆動制動トルクによる制動力を摩擦制動力が上回るタイミングを、摩擦制動装置の応答性によって定めることができる。
【0053】
摩擦制動装置の応答性はモータジェネレータ212の応答性よりも緩慢なので、駆動制動トルクによる制動力を摩擦制動力が上回るタイミングを摩擦制動装置の応答性によって定めることがより好ましく、駆動輪の逆回転発生をより確実に回避することができる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0055】
101:加速度検出部
102:回転数検出部
103:逆回転予測部
104:摩擦制動部
121:モータ制御部
図1
図2
図3
図4