(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】蓋付き容器
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20230830BHJP
B65D 43/16 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A45D33/00 630Z
B65D43/16 200
(21)【出願番号】P 2019215001
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-017056(JP,U)
【文献】米国特許第03981470(US,A)
【文献】登録実用新案第3003801(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
F16C 11/00-11/12
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と蓋体とを備えるとともに、該容器と該蓋体とに連結して該容器に対する該蓋体の揺動軸回りの揺動を許容するヒンジ部を有する蓋付き容器であって、
前記容器は、容器本体と、該容器本体の内面に対向して該容器本体に保持される連結部とを有し、
前記容器本体には、上方から下方に向かうにつれて前方へ湾曲する、弾性を有する弾性部で構成された本体湾曲部が設けられていて、
前記連結部には、前記本体湾曲部に対向する部位において、前記本体湾曲部に沿うように湾曲して切り欠かれた溝部が設けられていて、
前記本体湾曲部と前記溝部との間に前記揺動軸から離反する向きに延在する通路
が設けられ、
前記蓋体は、紐状又は帯状であって弾性を有し、一端部が
前記蓋体に連結し、前記揺動軸を越えて延在して他端部が前記通路に挿通されるワイヤ部を有する蓋付き容器。
【請求項2】
前記容器は、収容物を収める収容空間を有し、
前記連結部は、前記容器本体との間で前記収容空間を区画する請求項1に記載の蓋付き
容器。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、弾性を有し屈曲可能であって、前記ワイヤ部は、該ヒンジ部に一体的
に設けられる請求項1
または2に記載の蓋付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器と蓋体とをヒンジ部を介して連結した蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば化粧料などを収容するものとして、容器と蓋体とをヒンジ部を介して連結した蓋付き容器が知られている。このような蓋付き容器として特許文献1には、例えば粉体の化粧料を固形化したプレストパウダーの如き固形内容物を携帯する際に好適であるコンパクト容器が示されている。
【0003】
一般にコンパクト容器には、化粧の状態を確認する際に使用される鏡が、蓋体の裏面に設けられている。このような鏡を使用する場合には、使用者にとって視認しやすい任意の角度で蓋体を保持できると使い勝手がよくなる。また鏡を使わない場合でも、種々の事情によって(例えば狭い場所で使用する場合など)、蓋体を全開せずとも使用できれば便利である。ここで特許文献1のコンパクト容器では、容器と蓋体とを揺動可能に連結する部位にスプリングピンを配置し、蓋体を揺動させる際に生じるスプリングピンの摩擦力を利用して、この機能を実現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このようなスプリングピンを使用する場合は、構造が複雑になって小型化の妨げになるうえ、コストアップを招くことにもなる。
【0006】
このような点に鑑み、本発明では、蓋体を任意の角度で保持することができ、また、従来に比して構造が簡単で小型化を図ることが可能であって、コストも抑えることができる蓋付き容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器と蓋体とを備えるとともに、該容器と該蓋体とに連結して該容器に対する該蓋体の揺動軸回りの揺動を許容するヒンジ部を有する蓋付き容器であって、
前記容器は、容器本体と、該容器本体の内面に対向して該容器本体に保持される連結部とを有し、
前記容器本体には、上方から下方に向かうにつれて前方へ湾曲する、弾性を有する弾性部で構成された本体湾曲部が設けられていて、
前記連結部には、前記本体湾曲部に対向する部位において、前記本体湾曲部に沿うように湾曲して切り欠かれた溝部が設けられていて、
前記本体湾曲部と前記溝部との間に前記揺動軸から離反する向きに延在する通路が設けられ、
前記蓋体は、紐状又は帯状であって弾性を有し、一端部が前記蓋体に連結し、前記揺動軸を越えて延在して他端部が前記通路に挿通されるワイヤ部を有する蓋付き容器である。
【0009】
前記容器は、収容物を収める収容空間を有し、
前記連結部は、前記容器本体との間で前記収容空間を区画することが好ましい。
【0010】
前記ヒンジ部は、弾性を有し屈曲可能であって、前記ワイヤ部は、該ヒンジ部に一体的に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓋付き容器によれば、通路に挿通されたワイヤ部が通路の内周面に当接すると、ワイヤ部と内周面との間に生じる摩擦によってワイヤ部に抵抗力が作用するため、蓋体を任意の角度で保持することができる。また、従来のようにスプリングピンを使用する必要がないため、構造が簡素化されて小型化を図ることが可能となり、またコストも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従う蓋付き容器の一実施形態を開蓋状態で示した図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面視での断面図である。
【
図2】
図1に示した蓋付き容器を閉蓋状態で示した図であって、(a)は正面図であり、(b)は背面図であり、(c)は
図1(a)に示したA-Aに沿う断面図であり、(d)は底面図である。
【
図3】(a)は、
図1(a)に示したK1部の拡大図であり、(b)は、
図1(b)に示したK2部の拡大図であり、(c)は、
図2(c)に示したK3部の拡大図である。
【
図4】(a)は、
図1(a)に示したB-Bに沿う断面図であり、(b)はC-Cに沿う断面図であり、(c)はD-Dに沿う断面図であり、(d)はE-Eに沿う断面図であり、(e)はF-Fに沿う断面図であり、(f)はG-Gに沿う断面図である。
【
図5】(a)は、ワイヤ部を通路に挿通させる状況について示した図であり、(b)は閉蓋状態でのワイヤ部周辺を示した断面図であり、(c)は蓋体がある角度で保持された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に従う蓋付き容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」とは、基本的には容器本体(符合2)の底壁部(符合2a)が水平面に載置される状態での向き(
図1(b)に示す向き)である。また「前」は、
図1に示した容器本体2の係止部(符合2d)を設けた側であり、「後」とは、その逆側である。また「左」、「右」とは、前方から後方に向かって見る際の左右方向である。
【0014】
図1~
図5は、本発明に従う蓋付き容器の一実施形態を示している。本実施形態の蓋付き容器100は、粉体の化粧料を固形化したプレストパウダーの如き固形内容物を携帯する際に使用されるコンパクト容器である。蓋付き容器100は、容器1(容器本体2と連結部3で構成される)と、蓋体4(蓋体本体5と鏡6で構成される)と、ヒンジ部7とワイヤ部8とを備えている。
【0015】
容器本体2は、容器1の外殻をなすものであって、
図1、
図2に示すように、平面視で矩形状をなす板状の底壁部2aと、底壁部2aの外縁部から起立する本体周壁部2bとを備え、概略有底筒状に形作られている。ここで底壁部2aには、
図1(a)に示すように、複数の貫通孔2cが設けられている。また容器本体2の前方中央部には、蓋体4を閉蓋状態で係止するための係止部2dが設けられている。そして、
図3(b)に示すように本体周壁部2bの後方中央部には、上方から下方に向かうにつれて前方へ緩やかに湾曲する本体湾曲部2eが設けられている。また本体湾曲部2eに対して幅方向外側には、
図4(a)に示すように、本体周壁部2bを凹ませた係合凹部2fが設けられている。なお、本実施形態の容器本体2は、全体的に比較的硬質な合成樹脂(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂など)で形成される硬質部kで構成される一方、
図4(a)~(f)に示すようにその後方部分は、上記の硬質部kと、弾性を有する素材(例えば、比較的軟質の合成樹脂(例えばポリプロピレン(PP)樹脂)、ゴム、エラストマーなど)で形成される弾性部dとで構成されている。上述した
図3(b)に示す本体湾曲部2eは、弾性部dで構成されている。
【0016】
連結部3は、
図1に示すように、容器本体2の左右方向中央部において、底壁部2aの上面に対向するように設けられる。
図4(a)に示すように連結部3の後方には、係合凹部2fに係合する係合凸部3aが設けられている。なお、係合凹部2fと係合凸部3aは、容器本体2と連結部3の前方にも設けられていて、これらを係合させることによって容器本体2に連結部3を固定することができる。また、容器本体2に連結部3を固定した状態においては、
図1(a)に示すように、連結部3を挟んで2つの凹所(収容空間S1、S2)が区画される。なお図示は省略するが、容器本体2に収める収容物として、収容空間S1には固形内容物を収容した中皿を収めると好適である。また収容空間S2は、貫通孔2cによって通気性が向上するため、パフ等の塗布具を収容すると湿気を下げる効果が得られるため好適である。
【0017】
また連結部3には、
図3に示すように溝部3bが設けられている。本実施形態の溝部3bは、
図3(b)に示すように本体湾曲部2eに対向する部位において、本体湾曲部2eに沿うように湾曲しながら連結部3を切り欠いた後、そのまま連結部3の下面を前方に向かって切り欠くように設けられている。また本実施形態の溝部3bは、
図3(c)に示すように横断面形状が矩形状になるように形成されている。このような溝部3bによって、容器本体2の内面と溝部3bとの間には、通路Tが形成される。また通路Tは、
図3(b)に示すように、本体湾曲部2eによって経路の途中で屈曲している。
【0018】
蓋体本体5は、
図1、
図2に示すように、平面視で矩形状をなす天壁部5aと、天壁部5aの周囲を取り囲む蓋体周壁部5bとによって概略有蓋筒状に形作られている。天壁部5aの内面には、爪状に形成され、蓋体本体5を閉蓋した際に係止部2dに係止される被係止部5cが設けられている。なお、容器本体2と同様に蓋体本体5も、全体的には硬質部kで構成される一方、
図4(a)~(f)に示すようにその後方中央部は、硬質部kと弾性部dで構成されている。また蓋体本体5の内面には、矩形状をなす鏡6が設けられている。
【0019】
ヒンジ部7は、弾性を有する素材で形成されていて、屈曲性を有している。本実施形態のヒンジ部7は、容器本体2と蓋体本体5の弾性部dと同一の素材で形成されていて、容器本体2の後方において容器本体2と蓋体本体5を一体的に連結している。このようなヒンジ部7によって、容器1に対して蓋体4を、揺動軸Y(
図1、
図3参照)回りに揺動させることができる。
【0020】
ワイヤ部8は、紐状又は帯状(長尺状)をなすものであって、その横断面形状は、
図3(c)に示すように矩形状になっている。またワイヤ部8は、弾性を有する素材で形成されている。本実施形態のワイヤ部8は、蓋体本体5の弾性部dと同一の素材で形成されていて、ワイヤ部8の一端部は、蓋体本体5の弾性部dに一体的に連結している。すなわちワイヤ部8は、蓋体本体5の弾性部dを介してヒンジ部7と一体的に連結している。
【0021】
本実施形態の蓋付き容器100は、硬質部kを形成する素材と弾性部dを形成する素材を使用し、二色成形の技術を適用して、容器本体2、蓋体本体5、ヒンジ部7、及びワイヤ部8を一体的に形成している。なお、部品点数の削減や組み立て性を考慮すると、本実施形態のようにこれらの部材を一体的に形成することが好ましいが、個々の部材として形成した後にこれらを結合してもよい。
【0022】
ワイヤ部8は、二色成形によって形成した際、
図5(a)のように蓋体本体5に連結する一端部から他端部に向かって起立するように形作られている。ここで、蓋体4を閉蓋するにあたっては、
図3(a)、(b)に示すように、揺動軸Yを上方から跨ぐようにして乗り越えつつ、ワイヤ部8の他端部を通路Tに挿入する。蓋体4を閉じていくと、ワイヤ部8の他端部は、後方から前方に向かって通路T内を移動するため、
図5(b)に示すように蓋体4を完全に閉蓋した状態においても、ワイヤ部8が通路Tの外側で弛むことはない。
【0023】
また、蓋体4を開いていくと、
図5(c)に示すようにワイヤ部8は通路Tから引出されていく。なお、通路Tに挿通されたワイヤ部8が通路Tの内周面に当接すると、ワイヤ部8と内周面との間に生じる摩擦によって、ワイヤ部8に抵抗力が作用するため、蓋体4を任意の角度で保持することができる。本実施形態の通路Tは、本体湾曲部2eによって経路の途中で屈曲していて、この屈曲した部位においてもワイヤ部8と通路Tとの間には抵抗力が生じるため、蓋体4をより確実に任意の角度で保持することができる。更に本実施形態においては、本体湾曲部2eが弾性部dで形成されているため、ワイヤ部8と本体湾曲部2eとの間で作用する摩擦力も大きくなる。従って、蓋体4を任意の角度で保持する機能が更に確実なものとなる。
【0024】
このように本実施形態の蓋付き容器100によれば、ワイヤ部8を通路Tに挿入するだけで蓋体4を任意の角度で保持する機能を得ることができるため、スプリングピンをしようしていた従来のものに比して構造が簡素化される。このため、小型化を図ることが可能になるうえ、組み立ても簡単に行えるようになる。またワイヤ部8を設けるだけで済むため、スプリングピンを使用する場合に比して、コストも抑えることができる。しかも、ワイヤ部8はヒンジ部7と一体的に設けられているため、部品点数が増えることがなく、コストをより抑えることができる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0026】
例えば上記の実施形態における通路Tは容器1に設けられ、ワイヤ部8の一端部は、蓋体4に連結していたが、通路Tを蓋体4に設け、ワイヤ部8の一端部を容器1に連結した構成を採用してもよい。また連結部3は、溝部3bによって通路Tを構成するだけでなく、収容空間S1、S2を区画するものでもあったが、別の部材で収容空間S1、S2を区画するようにしてもよい。また通路Tとワイヤ部8の横断面形状は、ともに矩形状であったが、形状はこれに限られず、例えば円形状になるものでもよい。そして溝部3bは、連結部3の下面に替えて、又は併用して、容器本体2の内面に設けてもよい。またヒンジ部7は、本実施形態のように屈曲するものに限られず、例えば容器1及び蓋体4の何れか一方に軸部を設け、容器1及び蓋体4の何れか他方に軸穴を設けて揺動可能としたものでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1:容器
2:容器本体
2a:底壁部
2b:本体周壁部
2c:貫通孔
2d:係止部
2e:本体湾曲部
2f:係合凹部
3:連結部
3a:係合凸部
3b:溝部
4:蓋体
5:蓋体本体
5a:天壁部
5b:蓋体周壁部
5c:被係止部
6:鏡
7:ヒンジ部
8:ワイヤ部
100:蓋付き容器
S1:収容空間
S2:収容空間
T:通路
Y:揺動軸
d:弾性部
k:硬質部