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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20230830BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20230830BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20230830BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/46
F24F11/74
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019219323
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021089099
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 敦
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187521(JP,A)
【文献】特開2015-040693(JP,A)
【文献】特開2010-156494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/80
F24F 11/46
F24F 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビエント領域を空調するアンビエント空調装置と、タスク領域を空調するタスク空調装置とが備えられた空調システムであって、
前記アンビエント空調装置、及び、前記タスク空調装置の運転を制御する運転制御部が備えられ、
前記運転制御部は、前記タスク空調装置の利用率の目標を第1所定利用率以上の第1所定範囲とし、その利用率が第1所定利用率未満である場合に、前記アンビエント空調装置の空調を弱める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する第1運転モードと、
前記タスク空調装置の利用率の目標を第2所定利用率以下の第2所定範囲とし、その利用率が第2所定利用率より高い場合に、前記アンビエント空調装置の空調を強める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する第2運転モードと、
前記タスク空調装置の利用率の目標を設定下限値から設定上限値までの第3所定範囲とし、その利用率が設定下限値よりも低い場合に、前記アンビエント空調装置の空調を弱める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更し、その利用率が設定上限値よりも高い場合に、前記アンビエント空調装置の空調を強める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する第3運転モードとを実行可能であり、
前記運転制御部が、前記第1運転モードと前記第2運転モードと前記第3運転モードとのどの運転モードを実行するかを選択自在なモード選択部が備えられている空調システム。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記第1運転モード及び前記第3運転モードにおいて、前記アンビエント空調装置の空調を弱める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、前記タスク空調装置の空調を強める側に前記タスク空調装置の運転状態を変更している請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記第2運転モード及び前記第3運転モードにおいて、前記アンビエント空調装置の空調を強める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、前記タスク空調装置の空調を強める側に前記タスク空調装置の運転状態を変更している請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記アンビエント空調装置は、外部から熱媒体の供給を受けてアンビエント領域の空調を行うように構成され、
前記運転制御部は、前記第1運転モード、前記第2運転モード、及び、前記第3運転モードにおいて、前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、前記アンビエント空調装置に供給する熱媒体の温度を変更している請求項1~3の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記第3所定範囲の設定上限値を前記第1所定利用率に設定し、且つ、前記第3所定範囲の設定下限値を前記第2所定利用率に設定している請求項1~4の何れか1項に記載の空調システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンビエント領域を空調するアンビエント空調装置と、タスク領域を空調するタスク空調装置とが備えられた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記空調システムでは、室内の全体領域等のアンビエント領域をアンビエント空調装置にて空調しながら、各作業者の作業領域等のタスク領域を、各作業者の空調要求に合わせてタスク空調装置にて空調している。これにより、アンビエント領域では、一定の空調環境を得ることができながら、タスク領域では、各作業者が求める空調環境を得ることができる空調システムとなっている。
【0003】
タスク空調装置は、各作業者等の空調要求に合わせて空調運転するので、タスク空調装置の利用率が過大側又は過小側に大きく偏ってしまうと、タスクアンビエント空調の目的である快適性や省エネ性が確保できない、または、快適性と省エネ性のバランスが崩れてしまう等の問題が生じる可能性がある。
【0004】
そこで、従来、タスク空調装置の利用率が高い側と低い側との間の中間側の所定範囲内になるように、アンビエント空調装置の空調運転における目標温度を変更しているシステムがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
特許文献1、2に記載のシステムでは、アンビエント空調装置及びタスク空調装置を冷房運転している場合に、タスク空調装置の利用率が低下したり、所定範囲の下限値未満となると、アンビエント空調装置の冷房運転における目標温度を上昇させている。これにより、アンビエント領域の冷房温度が上昇側に変更されるので、作業者等がタスク空調装置の冷房運転を開始させやすい空調環境となり、タスク空調装置の利用率が上昇することが期待される。
【0006】
逆に、タスク空調装置の利用率が上昇したり、所定範囲の上限値よりも高くなると、アンビエント空調装置の冷房運転における目標温度を低下させている。これにより、アンビエント領域の冷房温度が低下側に変更されるので、作業者等がタスク空調装置の冷房運転を停止させやすい空調環境となり、タスク空調装置の利用率が低下することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-164641号公報
【文献】特許第4529446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載のシステムでは、タスク空調装置の利用率の目標が中間側の所定範囲だけであるので、タスク空調装置の利用率をより高い状態に維持したいとの要求や、タスク空調装置の利用率よりも空調環境の快適性を優先したいとの要求に応えることができない。
【0009】
例えば、システムによっては、システム全体の運転効率について、アンビエント空調装置を空調運転させる場合よりもタスク空調装置を空調運転させる場合の方が高くなるシステムもある。このようなシステムでは、タスク空調装置の利用率をできるだけ高くすることで、システム全体の運転効率の向上を図り、省エネルギー化を図ることができることから、タスク空調装置の利用率をより高い状態に維持することが望まれる。
【0010】
また、例えば、夏期等では、多くの作業者等が冷房効果を求めることになる。この場合には、タスク空調装置の利用率よりもアンビエント空調装置の冷房運転を効果的に行うことで、タスク領域の全体でより快適な冷房効果を得ることができることから、タスク空調装置の利用率よりも快適性を優先することが望まれる。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、タスク空調装置の利用率を中間側の所定範囲内にするための空調運転を行うだけでなく、タスク空調装置の利用率をより高い状態に維持したいとの要求や、タスク空調装置の利用率よりも空調環境の快適性を優先したいとの要求にも応えることができ、使い勝手の向上を図ることができる空調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は、アンビエント領域を空調するアンビエント空調装置と、タスク領域を空調するタスク空調装置とが備えられた空調システムであって、
前記アンビエント空調装置、及び、前記タスク空調装置の運転を制御する運転制御部が備えられ、
前記運転制御部は、前記タスク空調装置の利用率の目標を第1所定利用率以上の第1所定範囲とし、その利用率が第1所定利用率未満である場合に、前記アンビエント空調装置の空調を弱める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する第1運転モードと、
前記タスク空調装置の利用率の目標を第2所定利用率以下の第2所定範囲とし、その利用率が第2所定利用率より高い場合に、前記アンビエント空調装置の空調を強める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する第2運転モードと、
前記タスク空調装置の利用率の目標を設定下限値から設定上限値までの第3所定範囲とし、その利用率が設定下限値よりも低い場合に、前記アンビエント空調装置の空調を弱める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更し、その利用率が設定上限値よりも高い場合に、前記アンビエント空調装置の空調を強める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する第3運転モードとを実行可能であり、
前記運転制御部が、前記第1運転モードと前記第2運転モードと前記第3運転モードとのどの運転モードを実行するかを選択自在なモード選択部が備えられている点にある。
【0013】
本構成によれば、第1運転モードでは、タスク空調装置の利用率が第1所定利用率未満である場合に、アンビエント空調装置の空調を弱める側にアンビエント空調装置の運転状態を変更するので、アンビエント領域の空調効果が弱まり、タスク空調装置の空調運転を開始させやすい空調環境となる。これにより、タスク空調装置の利用率の上昇を期待することができ、タスク空調装置の利用率を第1所定利用率以上の第1所定範囲とすることができる。
【0014】
第2運転モードでは、タスク空調装置の利用率が第2所定利用率より高い場合に、アンビエント空調装置の空調を強める側にアンビエント空調装置の運転状態を変更するので、アンビエント領域の空調効果が強まり、タスク空調装置の空調運転を停止させやすい空調環境となる。これにより、タスク空調装置の利用率の低下を期待することができ、タスク空調装置の利用率を第2所定利用率以下の第2所定範囲とすることができる。
【0015】
第3運転モードでは、タスク空調装置の利用率が設定下限値よりも低い場合に、アンビエント空調装置の空調を弱める側にアンビエント空調装置の運転状態を変更するので、第1運転モードと同様に、タスク空調装置の利用率の上昇を期待することができる。逆に、タスク空調装置の利用率が設定上限値よりも高い場合に、アンビエント空調装置の空調を強める側にアンビエント空調装置の運転状態を変更するので、第2運転モードと同様に、タスク空調装置の利用率の低下を期待することができる。これにより、タスク空調装置の利用率を設定下限値から設定上限値までの第3所定範囲とすることができる。
【0016】
モード選択部は、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードとのどの運転モードを実行するかを選択することができるので、どのような要求があるかや使用状況等に適した運転モードを選択することができる。
【0017】
例えば、タスク空調装置の利用率を中間側の所定範囲内にしたいとの要求があれば、モード選択部が第3運転モードを選択することができ、タスク空調装置の利用率をより高い状態に維持したいとの要求があれば、モード選択部が第1運転モードを選択することができ、タスク空調装置の利用率よりも空調環境の快適性を優先したいとの要求があれば、モード選択部が第2運転モードを選択することができる。
【0018】
このように、各要求に適した運転モードを選択して、アンビエント空調装置及びタスク空調装置の運転状態を適切に制御しながら、各要求に応えることができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、前記運転制御部は、前記第1運転モード及び前記第3運転モードにおいて、前記アンビエント空調装置の空調を弱める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、前記タスク空調装置の空調を強める側に前記タスク空調装置の運転状態を変更している点にある。
【0020】
本構成によれば、第1運転モード及び第3運転モードでは、アンビエント空調装置の空調を弱める側にアンビエント空調装置の運転状態を変更することに加えて、タスク空調装置の空調を強める側にタスク空調装置の運転状態を変更するので、タスクアンビエント空調の目的である快適性と省エネ性のバランスを良好な状態に保つことができる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、前記運転制御部は、前記第2運転モード及び前記第3運転モードにおいて、前記アンビエント空調装置の空調を強める側に前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、前記タスク空調装置の空調を強める側に前記タスク空調装置の運転状態を変更している点にある。
【0022】
本構成によれば、第2運転モード及び第3運転モードでは、アンビエント空調装置の空調を強める側にアンビエント空調装置の運転状態を変更することに加えて、タスク空調装置の空調を強める側にタスク空調装置の運転状態を変更するので、アンビエント空調装置だけでなく、タスク空調装置による空調効果をより強く受けることができ、快適性の向上を効率よく且つ確実に図ることができる。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、前記アンビエント空調装置は、外部から熱媒体の供給を受けてアンビエント領域の空調を行うように構成され、
前記運転制御部は、前記第1運転モード、前記第2運転モード、及び、前記第3運転モードにおいて、前記アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、前記アンビエント空調装置に供給する熱媒体の温度を変更している点にある。
【0024】
本構成によれば、第1運転モード、第2運転モード、及び、第3運転モードでは、アンビエント空調装置の運転状態を変更する際に、アンビエント空調装置に供給する熱媒体の温度を変更するので、アンビエント空調装置の運転状態の変更をスムーズに且つ効果的に行うことができる。
【0025】
本発明の第5特徴構成は、前記第3所定範囲の設定上限値を前記第1所定利用率に設定し、且つ、前記第3所定範囲の設定下限値を前記第2所定利用率に設定している点にある。
【0026】
本構成によれば、タスク空調装置の利用率について、低い側から順に、0%から第2所定利用率(第3所定範囲の設定下限値)までを第2所定範囲とし、第2所定利用率(第3所定範囲の設定下限値)から第1所定利用率(第3所定範囲の設定上限値)までを第3所定範囲とし、第1所定利用率(第3所定範囲の設定上限値)から100%までを第1所定範囲とすることができる。これにより、タスク空調装置の利用率の目標をどのような利用率とするかを設定するだけで、モード選択部は、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードとの何れか1つの運転モードを選択することができ、運転モードの選択を行うための構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】空調システムの概略構成を示す図
図2】空調システムの各運転モードにおける動作を示すフローチャート
図3】第1所定範囲、第2所定範囲、及び、第3所定範囲の関係を示す図
図4】第2実施形態における空調システムの概略構成を示す図
図5】第2実施形態における空調システムの各運転モードにおける動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る空調システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この空調システム1は、図1に示すように、アンビエント領域Aを空調するアンビエント空調装置2と、タスク領域Bを空調するタスク空調装置3と、アンビエント空調装置2及びタスク空調装置3の運転を制御する運転制御部4とが備えられている。例えば、室内空間5の全体をアンビエント領域Aとし、作業者が作業を行う作業領域をタスク領域Bとして、タスク領域Bがアンビエント領域Aに含まれている。また、図1に示すものでは、窓際にペリメータ領域Cが存在しており、このペリメータ領域Cもアンビエント領域Aに含まれている。
【0029】
アンビエント空調装置2は、ファン21と、外部の熱源から熱媒体の供給を受けて空調処理(例えば、冷却処理又は加熱処理)を行う空調処理部22(コイル)とが備えられている。空調処理部22には、外部の熱源から熱媒体を循環供給する循環供給路23と、その循環供給路23による熱媒体の循環供給を断続自在で且つ熱媒体の流量を調整自在な循環制御弁24とが備えられている。
【0030】
運転制御部4は、外部の熱源の作動状態や循環制御弁24の開閉状態を制御することで、空調処理部22に熱媒体を供給する供給状態とその熱媒体の供給を停止する供給停止状態とに切替自在であり、且つ、供給状態において熱媒体の温度及び流量を調整自在となっている。アンビエント空調装置2は、冷房運転や暖房運転等の空調運転を実行可能であり、運転制御部4が、空調運転において、アンビエント領域Aの温度が目標温度となるように、アンビエント空調装置2における外部の熱源の作動状態、循環制御弁24の開閉状態、及び、ファン21の回転速度等を制御している。目標温度については、リモコンや操作部等により使用者の人為操作に応じて設定することができる。
【0031】
アンビエント空調装置2は、例えば、空気取入路6を通して床下空間7からの空気を取り入れ、その取り入れた空気を空調処理部22にて空調処理(例えば、冷却処理又は加熱処理)している。ちなみに、図示は省略するが、アンビエント空調装置2は、外気を取り入れることも可能であり、空気取入路6にて取り入れた空気に外気を混合させて、その混合気を空調処理部22にて空調処理することもできる。
【0032】
アンビエント空調装置2にて空調処理された空気は、給気路8を通して天井裏空間9に供給されている。給気路8には、第1可変風量装置V1が備えられており、第1可変風量装置V1にて天井裏空間9に供給される空気の流量が調整されている。天井裏空間9にて供給された空気は、天井部10に備えられた複数の孔部11を通して室内空間5のアンビエント領域Aに供給されている。このように、アンビエント領域Aには、天井部10における複数の孔部11から空気が染み出す状態で供給されており、天井部10からの空気の染み出しによる微風にてアンビエント領域Aを空調している。
【0033】
給気路8には、空調処理後の空気をペリメータ領域Cに供給する分岐給気路12が分岐接続され、分岐給気路12の端部が、ペリメータ領域Cの上部に配設された吹き出し部13に接続されている。これにより、アンビエント空調装置2にて空調処理された空気が、分岐給気路12を通して吹き出し部13からペリメータ領域Cに吹き出され、ペリメータ領域Cの空調を行っている。分岐給気路12には、第2可変風量装置V2が備えられており、第2可変風量装置V2にてペリメータ領域Cに供給される空気の流量が調整されている。
【0034】
タスク空調装置3は、例えば、天井裏空間9の空気(アンビエント空調装置2にて空調処理された空気)をタスク領域Bに送風させる送風ファンにて構成することができ、タスク空調装置3によるタスク領域Bへの送風により、タスク領域Bの空調を行っている。タスク空調装置3は、タスク領域Bに対して直接的に空気を送風させることで、タスク領域Bにおける空調を行っている。タスク空調装置3は、リモコンや操作部等による作業者等の使用者の人為操作に基づいて、運転状態と運転停止状態とに切替自在に構成されている。
【0035】
図1では、図示は省略するが、室内空間5には、複数のタスク領域Bが備えられており、複数のタスク領域Bの夫々に対してタスク空調装置3が備えられている。これにより、複数のタスク領域Bの夫々において、各タスク空調装置3にて空調することができるようになっている。複数のタスク空調装置3の夫々は、個別に運転状態と運転停止状態とに切替自在に構成されており、各タスク領域Bにおける使用者によって運転状態と運転停止状態とが切り替えられている。
【0036】
運転制御部4は、タスク空調装置3の運転状態とは無関係にアンビエント空調装置2を単独で制御する単独制御と、アンビエント空調装置2とタスク空調装置3とを協調させて制御する協調制御とを実行可能に構成されている。運転制御部4は、この単独制御及び協調制御に加えて、第1及び第2可変風量装置V1、V2の作動状態も制御可能である。アンビエント領域Aの空調を行うに当たり、アンビエント領域Aの温度を検出する温度検出部14が備えられており、この温度検出部14の検出情報等に基づいて、所望の空調状態が得られるように、運転制御部4が、単独制御又は協調制御を行うとともに、第1可変風量装置V1の作動状態を制御している。また、ペリメータ領域Cの空調を行うに当たり、所望の空調状態が得られるように、運転制御部4が、第2可変風量装置V2の作動状態を制御している。
【0037】
単独制御では、運転制御部4が、温度検出部14の検出温度が目標温度になるように、アンビエント空調装置2の運転状態を制御している。例えば、冷房運転中に、温度検出部14の検出温度が目標温度よりも高い場合には、運転制御部4が、空調処理部22にて空調処理された空気の温度が低くなるように、熱源の作動状態、循環制御弁24の開度やファン21の回転速度等を制御している。
【0038】
協調制御では、運転制御部4が、省エネ優先モードと快適性優先モードと最適化モードとの3つのモードを実行可能であり、3つの運転モードのいずれか1つを選択するモード選択部15が備えられている。
【0039】
3つの運転モードの夫々は、複数のタスク空調装置3の利用率が所望の目標状態となるように、アンビエント空調装置2の運転状態を制御するものである。タスク空調装置3の運転状態と運転停止状態との切り替えは、作業者等の使用者に委ねられているので、運転制御部4が複数のタスク空調装置3の利用率を直接制御することができない。そこで、運転制御部4が、アンビエント空調装置2の運転状態を制御して、使用者に対して、タスク空調装置3の運転停止状態から運転状態への切り替え又は運転状態から運転停止状態への切り替えを行うことを促す(誘導する)ことで、複数のタスク空調装置3の利用率を間接的に制御している。
【0040】
複数のタスク空調装置3の利用率については、運転制御部4が、複数のタスク空調装置3の夫々について、運転状態であるか運転停止状態であるかの運転情報をタスク空調装置3との間での通信等により取得しており、その運転情報に基づいて、複数のタスク空調装置3の利用率を求めて管理(監視)している。利用率の求め方については、例えば、「運転状態のタスク空調装置3の合計数/全体のタスク空調装置3の合計数」にて求めることができる。また、作業者が在席しているか否かを検出可能な在席センサが設けられている場合には、「運転状態のタスク空調装置3の合計数/在席センサにて在席を検出している合計数」にて利用率を求めることもできる。更に、タスク空調装置3の運転状態として、空調効果の高い強運転状態と、空調効果の低い弱運転状態と、空調効果が中間の中運転状態との3段階に切替自在である場合には、運転状態であるか運転停止状態であるかだけでなく、運転状態であってもどの段階の運転状態であるかを考慮して、利用率を求めることができる。例えば、弱運転状態、中運転状態、強運転状態の順に数値が高くなる運転状態用の係数を設定しておき、その係数を掛けて運転状態のタスク空調装置3の合計数を求めることができる。
【0041】
(省エネ優先モード)
省エネ優先モード(第1運転モードに相当する)は、タスク空調装置3の利用率の目標を第1所定利用率Da以上の第1所定範囲D1(図3参照)とし、その利用率が第1所定利用率Da未満である場合に、アンビエント空調装置2の空調を弱める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更する運転モードである。
【0042】
省エネ優先モードでは、タスク空調装置3の利用率が第1所定利用率Da未満である場合に、アンビエント空調装置2の空調を弱める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更するので、アンビエント領域Aの空調効果が弱まり、タスク空調装置3の空調運転を開始させやすい空調環境となる。これにより、タスク空調装置3の利用率の上昇を期待することができ、タスク空調装置3の利用率を第1所定利用率Da以上の第1所定範囲D1とすることができる。
【0043】
省エネ優先モードでは、タスク空調装置3の利用率が第1所定利用率Da以上の第1所定範囲D1となるので、タスク空調装置3の利用率をできるだけ高くすることができる。よって、システム全体の運転効率が、アンビエント空調装置2を空調運転させる場合よりもタスク空調装置3を空調運転させる場合の方が高いシステムでは、省エネ優先モードを実行することで、タスク空調装置3の利用率をできるだけ高くして、システム全体の運転効率の向上を図り、省エネルギー化を図ることができる。
【0044】
(快適性優先モード)
快適性優先モード(第2運転モードに相当する)は、タスク空調装置3の利用率の目標を第2所定利用率Db以下の第2所定範囲D2(図3参照)とし、その利用率が第2所定利用率Dbより高い場合に、アンビエント空調装置2の空調を強める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更する運転モードである。
【0045】
快適性優先モードでは、タスク空調装置3の利用率が第2所定利用率Dbより高い場合に、アンビエント空調装置2の空調を強める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更するので、アンビエント領域Aの空調効果が強まり、タスク空調装置3の空調運転を停止させやすい空調環境となる。これにより、タスク空調装置3の利用率の低下を期待することができ、タスク空調装置3の利用率を第2所定利用率Db以下の第2所定範囲D2とすることができる。
【0046】
快適性優先モードでは、アンビエント空調装置2の空調を強めるので、アンビエント空調装置2の空調効果を優先して得ることができ、タスク空調装置3の利用率よりも空調効果の快適性を優先することができる。
【0047】
(最適化モード)
最適化モード(第3運転モードに相当する)は、タスク空調装置3の利用率の目標を設定下限値Dcから設定上限値Ddまでの第3所定範囲D3(図3参照)とし、その利用率が設定下限値Dcよりも低い場合に、アンビエント空調装置2の空調を弱める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更し、その利用率が設定上限値Ddよりも高い場合に、アンビエント空調装置2の空調を強める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更する運転モードである。
【0048】
最適化モードでは、タスク空調装置3の利用率が設定下限値Dcよりも低い場合に、アンビエント空調装置2の空調を弱める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更するので、省エネ優先モードと同様に、タスク空調装置3の利用率の上昇を期待することができる。逆に、タスク空調装置3の利用率が設定上限値Ddよりも高い場合に、アンビエント空調装置2の空調を強める側にアンビエント空調装置2の運転状態を変更するので、快適性優先モードと同様に、タスク空調装置3の利用率の低下を期待することができる。これにより、タスク空調装置3の利用率を設定下限値Dcから設定上限値Ddまでの第3所定範囲D3とすることができる。
【0049】
以下、図2に基づいて、空調システム1の動作について説明する。ちなみに、図2では、空調運転として冷房運転を行う場合について説明する。
【0050】
まず、運転制御部4は、アンビエント領域Aにおける空調運転の目標温度等を設定する温度設定処理を行い、アンビエント空調装置2を単独にて制御する単独制御であるか、アンビエント空調装置2とタスク空調装置3とを協調して制御する協調制御であるかを判別している(ステップ#1、#2)。
【0051】
温度設定処理では、アンビエント領域Aにおける空調運転の目標温度等を設定しているが、例えば、アンビエント領域Aにおける空調運転の目標温度に加えて、アンビエント領域Aにおける空調運転の目標湿度を設定することもできる。このように、目標温度及び目標湿度を設定することで、アンビエント領域Aの温度だけでなく、湿度についても所望の空調状態に空調することができる。
【0052】
単独制御と協調制御との切り替えは、例えば、使用者等の人為操作に応じて切り替えることができる。また、季節、時間、運転タイミング等の各種の条件に応じて、運転制御部4が単独制御と協調制御とを自動的に切り替えることもできる。
【0053】
単独制御である場合には、運転制御部4が、温度検出部14の検出温度が目標温度になるように、アンビエント空調装置2の運転状態を制御する単独制御を行っている(ステップ#2のNoの場合、ステップ#3)。
【0054】
協調制御である場合には、運転制御部4が、省エネ優先モードと快適性優先モードと最適化モードとのうち、モード選択部15にてどの運転モードを選択しているかを確認して、モード選択部15にて選択された運転モードを実行する(ステップ#2のYesの場合、ステップ#4~#6)。
【0055】
省エネ優先モードが選択されている場合には(ステップ#4)、運転制御部4が、アンビエント領域Aにおける目標温度の上限値を設定し、複数のタスク空調装置3の利用率の目標となる第1所定範囲D1(第1所定利用率Daを含む)を設定している(ステップ#7、ステップ#8)。
【0056】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率を取得しており、その利用率が第1所定利用率Da未満であると、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ上昇させて、アンビエント空調装置2の空調を弱める側に変更し、タスク空調装置3による送風量を所定量だけ増大させて、タスク空調装置3の空調を強める側に変更している(ステップ#9のNoの場合、ステップ#10、ステップ#11)。このように、アンビエント空調装置2の空調を弱める側に変更するのに対して、タスク空調装置3の空調を強める側に変更するので、タスクアンビエント空調の目的である快適性と省エネ性のバランスを良好な状態に保つことができる。ちなみに、ステップ#10における目標温度の上昇は、ステップ#7にて設定した上限値を超えない範囲で行われる。
【0057】
運転制御部4は、アンビエント空調装置2における循環制御弁24の開度が閾値未満であれば、外部の熱源から空調処理部22に循環供給する熱媒体の温度を所定量だけ上昇させて、熱媒体の温度変更を行っている(ステップ#12のNoの場合、ステップ#13)。このように、アンビエント空調装置2の空調を弱める側に変更するに当たり、空調処理部22に循環供給する熱媒体の温度も空調を弱める側(上昇側)に変更させるので、アンビエント空調装置2の空調の変更をスムーズに行うことができる。
【0058】
そして、運転制御部4は、温度検出部14の検出温度が目標温度になっていなければ、ステップ#12及びステップ#13を繰り返し行い、温度検出部14の検出温度が目標温度となると、複数のタスク空調装置3の利用率が第1所定利用率Da以下であるか否かを確認する(ステップ#14のNoの場合、ステップ#15)。
【0059】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率が第1所定利用率Da以下であると、ステップ#10に戻し(ステップ#15のYesの場合)、複数のタスク空調装置3の利用率が第1所定利用率Daよりも高くなると、省エネ優先モードにおける動作を終了して、リターンとしている(ステップ#15のNoの場合)。
【0060】
快適性優先モードが選択されている場合には(ステップ#5)、運転制御部4が、アンビエント領域Aにおける目標温度の下限値を設定し、複数のタスク空調装置3の利用率の目標となる第2所定範囲D2(第2所定利用率Dbを含む)を設定している(ステップ#16、ステップ#17)。
【0061】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率を取得しており、その利用率が第2所定利用率Dbよりも高いと、タスク空調装置3による送風量を所定量だけ増大させて、タスク空調装置3の空調を強める側に変更し、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ下降させて、アンビエント空調装置2の空調を強める側に変更している(ステップ#18のNoの場合、ステップ#19、ステップ#20)。このように、アンビエント空調装置2の空調を強める側に変更するに当たり、タスク空調装置3の空調も強める側に変更するので、両方の空調装置による空調効果をより効果的に得ることができるので、快適性の向上を図ることができる。ちなみに、ステップ#20における目標温度の下降は、ステップ#16にて設定した下限値を下回らない範囲で行われる。
【0062】
運転制御部4は、アンビエント空調装置2における循環制御弁24の開度が閾値よりも大きければ、外部の熱源から空調処理部22に循環供給する熱媒体の温度を所定量だけ下降させて、熱媒体の温度変更を行っている(ステップ#21のNoの場合、ステップ#22)。このように、アンビエント空調装置2の空調を強める側に変更するに当たり、空調処理部22に循環供給する熱媒体の温度も空調を強める側(下降側)に変更させるので、アンビエント空調装置2の空調の変更をスムーズに行うことができる。
【0063】
そして、運転制御部4は、温度検出部14の検出温度が目標温度になっていなければ、ステップ#21及びステップ#22を繰り返し行い、温度検出部14の検出温度が目標温度となると、複数のタスク空調装置3の利用率が第2所定利用率Db以上であるか否かを確認する(ステップ#23のNoの場合、ステップ#24)。
【0064】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率が第2所定利用率Db以上であると、ステップ#19に戻し(ステップ#24のYesの場合)、複数のタスク空調装置3の利用率が第2所定利用率Db未満であると、快適性優先モードにおける動作を終了して、リターンとしている(ステップ#24のNoの場合)。
【0065】
最適化モードが選択されている場合には(ステップ#6)、運転制御部4が、アンビエント領域Aにおける目標温度の上限値及び下限値を設定し、複数のタスク空調装置3の利用率の目標となる第3所定範囲D3(設定下限値Dc及び設定上限値Ddを含む)を設定している(ステップ#25、ステップ#26)。
【0066】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率を取得しており、その利用率が第3所定範囲D3外であり且つその利用率が設定下限値Dc未満であると(ステップ#27のNoの場合、ステップ#28のNoの場合)、省エネ優先モードを行う(ステップ#29)。この省エネ優先モードでは、アンビエント領域Aにおける目標温度の上限値として、ステップ#25にて設定した上限値を用いている。この省エネ優先モードでは、省エネ優先モードにおける動作を終了すると、リターンとするのではなく、ステップ#30に移行している。
【0067】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率が第3所定範囲D3外であり且つその利用率が設定上限値Ddよりも高いと(ステップ#30のNoの場合)、快適性優先モードを行う(ステップ#31)。この快適性優先モードでは、アンビエント領域Aにおける目標温度の下限値として、ステップ#25にて設定した下限値を用いている。この快適性優先モードでは、快適性優先モードにおける動作を終了すると、リターンとするのではなく、ステップ#32に移行している。
【0068】
運転制御部4は、複数のタスク空調装置3の利用率が第3所定範囲D3内であるか否かを確認し、その利用率が第3所定範囲D3外であれば、ステップ#28に戻し(ステップ#32のNoの場合)、その利用率が第3所定範囲D3内であれば、最適化モードにおける動作を終了して、リターンとしている(ステップ#32のYesの場合)。
【0069】
上述の如く、図2は冷房運転を行う場合を示したものである。図示は省略するが、暖房運転を行う場合には、目標温度や熱媒体温度を変更させる際に、冷房運転とは反対側となるだけであり、その他の動作は同様である。例えば、アンビエント空調装置2の空調を弱める側又は強める側に変更するために目標温度を変更する際に、目標温度上昇(ステップ#10参照)が目標温度下降の反対側となり、目標温度下降(ステップ#20参照)が目標温度上昇の反対側となる。また、熱媒体温度を変更する際に、熱媒体温度上昇(ステップ#13参照)が熱媒体温度下降の反対側となり、熱媒体温度下降(ステップ#22参照)が熱媒体温度上昇の反対側となる。
【0070】
第1所定範囲D1、第2所定範囲D2、及び、第3所定範囲D3について、どのように設定するかは適宜変更が可能であるが、例えば、図3(a)に示すように、第1所定範囲D1の第1所定利用率Daを第3所定範囲D3の設定上限値Ddよりも低く設定することで、第1所定範囲D1と第3所定範囲D3とを重複させる状態で設定することができる。そして、第2所定範囲D2の第2所定利用率Dbを第3所定範囲D3の設定下限値Dcよりも高く設定することで、第2所定範囲D2と第3所定範囲D3とを重複させる状態で設定することができる。このように、第1所定範囲D1と第2所定範囲D2と第3所定範囲D3との間に重複部分を存在させるように設定することで、省エネ優先モード、快適性優先モード、最適化モードの夫々において、複数のタスク空調装置3の利用率における目標となる範囲を、使用状況や負荷状況等に合わせて設定することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0071】
また、図3(b)に示すように、第3所定範囲D3の設定上限値Ddを第1所定範囲D1の第1所定利用率Daに設定し、且つ、第3所定範囲D3の設定下限値Dcを第2所定範囲D2の第2所定利用率Dbに設定することもできる。このように設定することで、複数のタスク空調装置3の利用率について、低い側から順に、0%から第2所定利用率Db(第3所定範囲D3の設定下限値Dc)までを第2所定範囲D2とし、第2所定利用率Db(第3所定範囲D3の設定下限値Dc)から第1所定利用率Da(第3所定範囲D3の設定上限値Dd)までを第3所定範囲D3とし、第1所定利用率Da(第3所定範囲D3の設定上限値Dd)から100%までを第1所定範囲D1とすることができる。これにより、複数のタスク空調装置3の利用率の目標をどのような利用率とするかを設定するだけで、モード選択部15は、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードとの何れか1つの運転モードを選択することができ、運転モードの選択を行うための構成の簡素化を図ることができる。
【0072】
モード選択部15は、使用者等の人為操作等により1つの運転モードを選択する人為操作式とすることができる。また、モード選択部15が、使用状況、負荷状況、季節、時間等、運転タイミング等、各種の条件に応じて、3つの運転モードのいずれか1つの運転モードを自動的に選択する自動選択式とすることもできる。
【0073】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、第1実施形態におけるタスク空調装置3の別実施形態である。以下、図4に基づいて、この第2実施形態におけるタスク空調装置3の構成を中心に説明し、その他の構成については同符号を記す等により説明は省略する。
【0074】
第1実施形態では、図1に示すように、タスク空調装置3が、天井裏空間9の空気をタスク領域Bに送風させる送風ファンにて構成され、タスク領域Bへの送風によりタスク領域Bの空調を行っている。それに対して、第2実施形態では、図4に示すように、タスク空調装置3が、床下空間7の空気を空調処理(冷却処理又は加熱処理)し、空調処理後の空気をタスク領域Bに供給することで、タスク領域Bの空調を行うようにしている。そのために、タスク空調装置3には、タスク用ファン31と、タスク用空調処理部32とが備えられている。タスク用空調処理部32は、例えば、外部の熱源から熱媒体の供給を受けて空調処理を行うものだけでなく、外部から熱媒体の供給を受けずに空調処理を行うものでもよい。また、タスク空調装置3にて空調処理された空気をタスク領域Bに供給するタスク用給気路33が備えられている。ちなみに、室内空間5(タスク領域B等)の空気が連通部等により床下空間7に供給されており、その床下空間7の空気が還気としてタスク空調装置3に供給されている。
【0075】
アンビエント空調装置2について、第1実施形態では、図1に示すように、床下空間7の空気を取り込んで空調処理部22にて空調処理を行い、空調処理後の空気を給気路8を通して天井裏空間9に供給して、複数の孔部11からの空気の染み出しによりアンビエント領域Aの空調を行っている。それに対して、第2実施形態では、図4に示すように、空気取入路6を通して天井裏空間9の空気を取り込んで空調処理部22にて空調処理を行い、空調処理後の空気を給気路8を通してアンビエント領域Aに供給することで、アンビエント領域Aの空調を行っている。そのために、空気取入路6の吸い込み側の端部が天井裏空間9に接続されており、給気路8の吹き出し側の端部が天井部10の吹き出し部16に接続されている。ちなみに、室内空間5(アンビエント領域A等)の空気が連通部等により天井裏空間9に供給されており、その天井裏空間9の空気が還気として空気取入路6にてアンビエント空調装置2に取り込まれている。
【0076】
以下、図5に基づいて、第2実施形態における空調システム1の動作について説明する。ちなみに、図5では、図2と同様に、空調運転として冷房運転を行う場合を示している。
【0077】
この第2実施形態は、第1実施形態に対して、タスク空調装置3の構成が異なるので、図5において、タスク空調装置3に関する動作が異なっており、その動作については説明する。また、その他の動作については、図2の動作と同様であるので、同じステップ番号を付けて、その説明は省略する。
【0078】
図2の第1実施形態では、省エネ優先モード(ステップ#4)において、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ上昇させて、アンビエント空調装置2の空調を弱める側に変更する際に(ステップ#10)、運転制御部4が、タスク空調装置3による送風量を所定量だけ増大させて、タスク空調装置3の空調を強める側に変更している(ステップ#11)。
【0079】
それに対して、図5の第2実施形態では、省エネ優先モード(ステップ#4)において、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ上昇させて、アンビエント空調装置2の空調を弱める側に変更する際に(ステップ#10)、運転制御部4が、タスク空調装置3からの給気温度を所定量だけ下降させて、タスク空調装置3の空調を強める側に変更している(ステップ#33)。このとき、運転制御部4は、タスク用ファン31やタスク用空調処理部32の作動状態を制御することで、タスク空調装置3からの給気温度を所定量だけ下降させている。
【0080】
図2の第1実施形態では、快適性優先モード(ステップ#5)において、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ下降させて、アンビエント空調装置2の空調を強める側に変更する際に(ステップ#20)、運転制御部4が、タスク空調装置3による送風量を所定量だけ増大させて、タスク空調装置3の空調を強める側に変更している(ステップ#19)。
【0081】
それに対して、図5の第2実施形態では、快適性優先モード(ステップ#5)において、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ下降させて、アンビエント空調装置2の空調を強める側に変更する際に(ステップ#20)、運転制御部4が、タスク空調装置3からの給気温度を所定量だけ下降させて、タスク空調装置3の空調を強める側に変更している(ステップ#34)。このとき、運転制御部4は、タスク用ファン31やタスク用空調処理部32の作動状態を制御することで、タスク空調装置3からの給気温度を所定量だけ下降させている。
【0082】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0083】
(1)アンビエント空調装置2、及び、タスク空調装置3について、第1実施形態と第2実施形態とを例示したが、アンビエント空調装置は、アンビエント領域を空調できるものであればよく、タスク空調装置は、タスク領域を空調できるものであればよく、その構成については適宜変更が可能である。
【0084】
(2)上記実施形態では、最適化モードにおいて、複数のタスク空調装置3の利用率が設定下限値Dc未満である場合に、省エネ優先モードを行っているが、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ上昇させて、アンビエント空調装置2の空調を弱める側に変更するだけでもよい。
また、上記実施形態では、最適化モードにおいて、複数のタスク空調装置3の利用率が設定上限値Ddよりも高い場合に、快適性優先モードを行っているが、アンビエント領域Aにおける目標温度を所定量だけ下降させて、アンビエント空調装置2の空調を強める側に変更するだけでもよい。
【0085】
(3)上記実施形態では、アンビエント空調装置2の空調を弱める側又は弱める側に変更するに当たり、アンビエント領域Aにおける目標温度を変更させているが、例えば、アンビエント領域Aに供給する空調処理後の空気の供給量を変更させることで、アンビエント空調装置2の空調を弱める側又は強める側に変更することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1 空調システム
2 アンビエント空調装置
3 タスク空調装置
4 運転制御部
15 モード選択部
A アンビエント領域
B タスク領域
D1 第1所定範囲
D2 第2所定範囲
D3 第3所定範囲
Da 第1所定利用率
Db 第2所定利用率
Dc 設定下限値
Dd 設定上限値

図1
図2
図3
図4
図5