(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】止水シートの支持構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/66 20060101AFI20230830BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
E04B1/66 A
E04B1/68 100A
(21)【出願番号】P 2019223880
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】衣川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達夫
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-342687(JP,A)
【文献】特開2015-086629(JP,A)
【文献】特開2006-214198(JP,A)
【文献】特開平08-056816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0005553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04H 15/00-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と当該上面部の両端から下方に垂下する一対の側面部とを有する止水シートを、所定の隙間を隔てて対向する躯体間に、前記躯体間の相対変位を許容する余長を有する状態で架設して、前記躯体間に備えられたエキスパンションジョイント設置部への止水処理を行う止水シートの支持構造であって、
前記止水シートにおける架設方向の両端部を前記躯体にそれぞれ取り付けるとともに、前記止水シートにおける架設方向の中間部の上面部側に設定した被吊り下げ部位を、前記躯体側から前記被吊り下げ部位にわたる吊り部材にて吊り下げ支持し、
前記止水シートにおける架設方向の中間部を、少なくとも前記被吊り下げ部位から前記側面部の下部側にわたる補強帯にて補強する止水シートの支持構造。
【請求項2】
前記被吊り下げ部位は、一方の前記躯体から前記隙間に向けて張り出す張り出し部材に前記吊り部材を介して支持され、
前記張り出し部材には、前記吊り部材の上端部を前記架設方向に移動可能に案内支持する案内支持部が備えられている請求項1に記載の止水シートの支持構造。
【請求項3】
前記補強帯は、前記上面部の両端にわたるとともに前記上面部の両端から前記側面部の下端にわたる長さを有している請求項1又は2に記載の止水シートの支持構造。
【請求項4】
前記吊り部材は、対向する前記躯体のそれぞれから前記被吊り下げ部位にわたるとともに、前記躯体のそれぞれから前記被吊り下げ部位にわたる長さが同じ長さに設定されている請求項1~3のいずれか一項に記載の止水シートの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面部と当該上面部の両端から下方に垂下する一対の側面部とを有する止水シートを、所定の隙間を隔てて対向する躯体間に、前記躯体間の相対変位を許容する余長を有する状態で架設して、前記躯体間に備えられたエキスパンションジョイント設置部への止水処理を行う止水シートの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような止水シートの支持構造に関する背景技術として、例えば、所定の隙間を隔てて対向する躯体の双方が免震建物の躯体である場合には、地震発生時などにおける躯体間の相対変位量が非常に大きくなる。そのため、このような躯体間において前述した止水処理を行う止水シートにおいては、躯体間の大きい相対変位量に対応するための余長が長く確保されており、その分、止水シートの重量が嵩むようになっている。そして、このように止水シートの重量が嵩む場合には、例えば、止水シートにおける架設方向の両端部を対応する躯体に取り付けて支持させる通常の支持構造では、嵩んだ止水シートの重量が止水シートの架設方向端部と躯体との取り合い部に集中することになり、これにより、各取り合い部において止水シートの架設方向端部が躯体から引き剥がされるなどの不都合を招く虞がある。
【0003】
そこで、上記のような不都合の招来を回避するための止水シートの支持構造としては、例えば、左右の躯体の壁面に連絡通路を形成するために形成された開口部間の外周部を覆うカバー壁を備えるものがある。この止水シートの支持構造においては、カバー壁を、一方の躯体の壁面に前後方向にスライド移動可能に取り付けられたスライド枠と、このスライド枠の上下部位のバー部材に一端部が枢支され、かつ、他端部が他方の躯体の壁面に枢支された上下3個ずつのヒンジ状のリンクを用いた上下部カバー材支持機構と、スライド枠の両側部位のバー部材に一端部が枢支され、かつ、他端部が他方の躯体の壁面に枢支された左右3個ずつのヒンジ部材状のリンクを用いた側部カバー材支持機構と、側部カバー材支持機構及び上下部カバー材支持機構の伸縮を許容する状態で各カバー材支持機構の内側部位に沿って固定されるとともに、一側部がスライド枠に取り付けられ、かつ、他側部が他方の躯体の壁面に取付けられた筒状のカバー材(止水シートに相当)とを備えるように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、地震などによって左右の躯体間が相対変位した場合には、各カバー材支持機構が伸縮するとともにカバー材が伸縮することで、大きく揺れ動く左右の躯体間の相対変位を許容することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、左右の躯体間の相対変位を許容するために、複数のヒンジ状のリンクなどを有する上下左右の各カバー材支持機構やスライド枠などを備える必要があることから、カバー材の支持構造が複雑化する不都合を招くことになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、所定の隙間を隔てて対向する躯体間に架設される止水シートを、その支持構造の複雑化を抑制しながら良好に支持できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、
上面部と当該上面部の両端から下方に垂下する一対の側面部とを有する止水シートを、所定の隙間を隔てて対向する躯体間に、前記躯体間の相対変位を許容する余長を有する状態で架設して、前記躯体間に備えられたエキスパンションジョイント設置部への止水処理を行う止水シートの支持構造であって、
前記止水シートにおける架設方向の両端部を前記躯体にそれぞれ取り付けるとともに、前記止水シートにおける架設方向の中間部の上面部側に設定した被吊り下げ部位を、前記躯体側から前記被吊り下げ部位にわたる吊り部材にて吊り下げ支持し、
前記止水シートにおける架設方向の中間部を、少なくとも前記被吊り下げ部位から前記側面部の下部側にわたる補強帯にて補強する点にある。
【0009】
本構成によれば、止水シートにおける架設方向の両端部を躯体にそれぞれ取り付けるのに加えて、止水シートの被吊り下げ部位を躯体側に吊り部材を介して吊り下げ支持するだけの簡単な構成で、余長を有することで重量が嵩む止水シートの重量を、止水シートの架設方向の端部と躯体との各取り合い部と、止水シートの被吊り下げ部位を支持する躯体側のシート中間支持部とに分散することができ、各取り合い部にかかる荷重を低下させることができる。
【0010】
これにより、止水シートの重量が各取り合い部に集中することに起因して、取り合い部において、止水シートにおける架設方向の端部が躯体から引き剥がされるなどの不都合の発生を防止することができる。
【0011】
又、吊り部材にて吊り下げ支持された被吊り下げ部位を含む止水シートにおける架設方向の中間部が補強帯にて補強されることから、止水シートにおける架設方向の中間部が止水シートの重量で引き裂かれる不都合の発生を防止することができる。
【0012】
その結果、止水シートが、相対変位量の大きい免震建物間に備えられたエキスパンションジョイント設置部への止水処理を行うために、免震建物間の大きい相対変位を許容する長い余長を有して重量が嵩むものであったとしても、止水シートの支持構造が複雑化するのを抑制しながら、止水シートの重量に起因して、止水シートにおける架設方向の端部が躯体から引き剥がされることや、止水シートにおける架設方向の中間部が引き裂かれるなどの不都合の発生が防止された状態で、止水シートを良好に支持することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、
前記被吊り下げ部位は、一方の前記躯体から前記隙間に向けて張り出す張り出し部材に前記吊り部材を介して支持され、
前記張り出し部材には、前記吊り部材の上端部を前記架設方向に移動可能に案内支持する案内支持部が備えられている点にある。
【0014】
本構成によれば、対向する躯体間の相対変位に応じて止水シートにおける架設方向の長さが変化すると、これに伴う止水シートにおける架設方向の両端部と中間部との間での止水シートの余長の変化に応じて、吊り部材の上端部が張り出し部材に対して止水シートの架設方向に移動する。
【0015】
これにより、例えば、吊り部材による止水シートの支持位置を、止水シートにおける架設方向の長さを等分する位置に設定すれば、地震などによる躯体間の隙間の変化に応じて、張り出し部材の案内支持部に支持された吊り部材とともに、吊り部材にて吊り下げ支持された止水シートにおける架設方向の中間部を、躯体間の隙間を等分する位置に移動させることができ、前述した各取り合い部とシート中間支持部とにかかる荷重の変動を抑制することができる。
【0016】
その結果、地震などの発生時に、前述した各取り合い部とシート中間支持部とにかかる荷重が大きく変動することに起因して、止水シートにおける架設方向の端部が躯体から引き剥がされることや、止水シートにおける架設方向の中間部が引き裂かれるなどの不都合の発生を防止することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、
前記補強帯は、前記上面部の両端にわたるとともに前記上面部の両端から前記側面部の下端にわたる長さを有している点にある。
【0018】
本構成によれば、止水シートにおける架設方向中間部の全体を補強帯にて補強することができ、これにより、止水シートにおける架設方向の中間部での保形性を高めることができる。
【0019】
これにより、止水シートにおける架設方向の中間部において被吊り下げ部位から外れた部位の下方への垂れ下がりを抑制することができる。又、吊り部材にて吊り下げ支持された止水シートにおける架設方向の中間部が止水シートの重量で引き裂かれる不都合の発生をより確実に防止することができる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、
前記吊り部材は、対向する前記躯体のそれぞれから前記被吊り下げ部位にわたるとともに、前記躯体のそれぞれから前記被吊り下げ部位にわたる長さが同じ長さに設定されている点にある。
【0021】
本構成によれば、対向する躯体間の相対変位に応じて止水シートにおける架設方向の長さが変化すると、これに伴う止水シートにおける架設方向の両端部と中間部との間での止水シートの余長の変化に応じて、吊り部材において、一方の躯体から被吊り下げ部位にわたる一方側の架設姿勢と、他方の躯体から被吊り下げ部位にわたる他方側の架設姿勢とが対称的に変化する。
【0022】
これにより、前述した案内支持部を設けることなく、地震などによる躯体間の隙間の変化に応じて、吊り部材にて支持される止水シートにおける架設方向の中間部を、躯体間を等分する位置に移動させることができ、前述した各取り合い部とシート中間支持部とにかかる荷重の変動を抑制することができる。
【0023】
その結果、地震などの発生時に、前述した各取り合い部とシート中間支持部とにかかる荷重が大きく変動することに起因して、止水シートにおける架設方向の端部が躯体から引き剥がされることや、止水シートにおける架設方向の中間部が引き裂かれるなどの不都合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】対向する免震建物の躯体間に備えられたエキスパンションジョイント設置部を示す概略側面図
【
図2】止水シートの架設方向と直交する横方向から見た止水シートの支持構造を示す縦断面図
【
図4】止水シートの架設方向と直交する横方向から見た止水シート中間部の支持構造を示す縦断面図
【
図5】止水シートの架設方向と直交する横方向から見た止水シート端部の支持構造を示す縦断面図
【
図6】止水シートの中間部を対向する躯体にわたるワイヤロープで支持する別実施形態を示す縦断面図
【
図7】止水シートの中央部と中央部と端部の中間部とを支持する別実施形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る止水シートの支持構造を、所定の隙間を隔てて対向する免震建物の躯体間に備えられたエキスパンションジョイント設置部に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態にて例示された止水シートの支持構造は、
図1~3に示すように、所定の隙間1を隔てて対向する免震建物10,20の側壁(躯体の一例)11,21間に備えられたエキスパンションジョイント設置部2への雨水などの浸入を防止する止水処理を行う止水シート30を支持するためのものである。図示は省略するが、止水シート30は、耐水性や耐候性などに優れたエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが採用されたゴム製のシートに、アルカリアースシリケートウール(AES)などが採用された耐火帯及び耐火帯補強材が重ねて接合されることで、止水性に加えて耐火性を有している。
【0027】
エキスパンションジョイント設置部2には、
図1~2に示す屋根用免震エキスパンションジョイント(張り出し部材の一例)40と、
図1に示す一対の外壁用免震エキスパンションジョイント50とに加えて、図外の天井用免震エキスパンションジョイント、床用免震エキスパンションジョイント、及び、一対の内壁用免震エキスパンションジョイントなどが設置されている。
【0028】
図2~4に示すように、屋根用免震エキスパンションジョイント40は、免震建物10,20の対向方向と直交する横方向に一定間隔を置いて並列に配置されたH形鋼材製の第1部材41、隣接する第1部材41間にガセットプレート42を介して架設されたC形鋼材製の第2部材43、及び、各第1部材41にL形鋼材製の支持部材44を介して支持されたアルミ板製の庇部材45、などを有している。
図2に示すように、各第1部材41は、それらの一端部が免震建物10において側壁11を支持するH形鋼材製の梁(躯体の一例)12にガセットプレート13を介して連結されている。これにより、屋根用免震エキスパンションジョイント40は、一方の免震建物10の梁12から隙間1に向けて張り出している。
【0029】
図2に示すように、屋根用免震エキスパンションジョイント40は、その張り出し側の端部が他方の免震建物20における側壁21の上方を越えるように張り出している。そして、その張り出し側端部において、側壁21の上端と対向する部位には、複数の第1部材41にわたって架設されるアルミ板製の底板46が備えられている。そして、この底板46には、側壁21の上端との隙間からの雨水などの浸入を防止する止水ゴム47が取り付けられている。
【0030】
図2~4に示すように、止水シート30は、屋根用免震エキスパンションジョイント40に対向する上面部30Aと、当該上面部30Aの両端から下方に垂下する一対の側面部30Bとを有している。止水シート30は、前述した免震建物10,20の側壁11,21間に、それらの相対変位を許容する余長を有する状態で架設されている。
【0031】
図2~4、
図5に示すように、止水シート30における架設方向の両端部30Cは、対応する免震建物10,20の側壁11,21に、平鋼材製のシート押えプレート3や取り付け具4などを使用して取り付けられている。
図5に示すように、取り付け具4には、コンクリートプラグ4Aやビス4Bなどが含まれている。各免震建物10,20の側壁11,21とシート押えプレート3との隙間には、コーキング剤5を充填して防水性を高めるコーキング処理が施されている。
【0032】
図2~4に示すように、止水シート30における架設方向中間部30Dの上面部30A側には、複数の被吊り下げ部位30Daが、止水シート30の架設方向と直交する横方向に一定間隔を置いて並ぶように配置設定されている。各被吊り下げ部位30Daは、免震建物10の側壁11側となる屋根用免震エキスパンションジョイント40から各被吊り下げ部位30Daにわたる複数のワイヤロープ(吊り部材の一例)6を介して屋根用免震エキスパンションジョイント40に吊り下げ支持されている。各被吊り下げ部位30Daには、ワイヤロープ6の下端部が取り付けられる吊り金具31が加硫接着などによって強固に取り付けられている。
【0033】
各被吊り下げ部位30Daを含む止水シート30における架設方向の中間部30Dは、上面部30Aの両端にわたるとともに上面部30Aの両端から各側面部30Bの下端にわたる長さを有する補強帯32にて補強されている。補強帯32には、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などによるゴム製のものや、繊維が織り込まれたゴム製のものなどを採用することができる。止水シート30における架設方向の中間部30Dは、止水シート30を架設方向で二等分(約二等分を含む)する位置、つまり、止水シート30における架設方向の中央に設定されている。
【0034】
図2~4に示すように、屋根用免震エキスパンションジョイント40には、ワイヤロープ6の上端部を止水シート30の架設方向に移動可能に案内支持する複数のハンガレール(案内支持部の一例)48が備えられている。各ハンガレール48は、止水シート30の各被吊り下げ部位30Daと同様に、止水シート30の架設方向と直交する横方向に、各被吊り下げ部位30Daの配置間隔と同じ一定間隔を置いて並ぶように配置設定されている。各ハンガレール48は、各被吊り下げ部位30Daの真上に位置するように第2部材43に取り付けられている。各ワイヤロープ6の上端部は、ハンガレール48で案内される4つのローラ7を有する支持具8に取り付けられている。これにより、各ハンガレール48は、ワイヤロープ6や支持具8などを介して止水シート30における架設方向の中間部30Dを支持するシート中間支持部として機能する。
【0035】
以上の通り、本実施形態にて例示された止水シート30の支持構造においては、止水シート30における架設方向の両端部30Cが対応する免震建物10,20の側壁11,21に取り付けられるとともに、止水シート30における架設方向中間部30Dの上面部30A側に設定された各被吊り下げ部位30Daが、一方の免震建物10の側壁11側となる屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48から対応する被吊り下げ部位30Daにわたるワイヤロープ6などによって吊り下げ支持されている。
【0036】
つまり、止水シート30における架設方向の両端部30Cを、対応する免震建物10,20の側壁11,21に取り付けるのに加えて、止水シート30の各被吊り下げ部位30Daを、屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48にワイヤロープ6などを介して吊り下げ支持するだけの簡単な構成で、余長を有することで重量が嵩む止水シート30の重量を、止水シート30の架設方向の端部30Cと各免震建物10,20の側壁11,21との取り合い部9(
図2~3、
図5参照)と、屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48とに分散することができ、各取り合い部9にかかる荷重を低下させることができる。
【0037】
これにより、止水シート30の重量が各取り合い部9に集中することに起因して、取り合い部9において、止水シート30における架設方向の端部30Cが免震建物10,20の側壁11,21から引き剥がされるなどの不都合の発生を防止することができる。
【0038】
又、各ワイヤロープ6にて吊り下げ支持される各被吊り下げ部位30Daを含む止水シート30における架設方向中間部30Dの全体が補強帯32にて補強されることから、止水シート30における架設方向の中間部30Dでの保形性を高めることができる。
【0039】
これにより、止水シート30における架設方向の中間部30Dにおいて各被吊り下げ部位30Daから外れた部位、具体的には、前記中間部30Dの上面部30A側において各被吊り下げ部位30Daの間に位置する部位、及び、前記中間部30Dにおける各側面部30B側の部位、の下方への垂れ下がりを抑制することができる。又、各ワイヤロープ6にて吊り下げ支持される止水シート30における架設方向の中間部30Dが止水シート30の重量で引き裂かれる不都合の発生を防止することができる。
【0040】
その結果、止水シート30が、相対変位量の大きい免震建物10,20間に備えられたエキスパンションジョイント設置部2への止水処理を行うために、免震建物10,20間の大きい相対変位を許容する長い余長を有して重量が嵩むものであったとしても、止水シート30の支持構造が複雑化するのを抑制しながら、止水シート30の重量に起因して、止水シート30における架設方向の端部30Cが免震建物10,20の側壁11,21から引き剥がされることや、止水シート30における架設方向の中間部30Dが引き裂かれるなどの不都合の発生が防止された状態で、止水シート30を良好に支持することができる。
【0041】
又、この止水シート30の支持構造においては、止水シート30の各被吊り下げ部位30Daを吊り下げ支持する各ワイヤロープ6の上端部が、屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48にて止水シート30の架設方向に移動可能に案内支持されている。
【0042】
これにより、対向する免震建物10,20の側壁11,21間の相対変位に応じて止水シート30における架設方向の長さが変化すると、これに伴う止水シート30における架設方向の両端部30Cと中間部30Dとの間での止水シート30の余長の変化に応じて、各ワイヤロープ6の上端部が屋根用免震エキスパンションジョイント40に対して止水シート30の架設方向に移動する。
【0043】
そして、各ワイヤロープ6による止水シート30の支持位置が、止水シート30における架設方向の長さを二等分(約二等分を含む)する架設方向の中央に設定されていることから、地震などによる免震建物10,20の側壁11,21間の隙間1の変化に応じて、屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48に支持された各ワイヤロープ6とともに、各ワイヤロープ6にて吊り下げ支持された止水シート30における架設方向の中間部30Dを、側壁11,21間の隙間1を二等分(約二等分)する位置に移動させることができ、前述した各取り合い部9と各ハンガレール48とにかかる荷重の変動を抑制することができる。
【0044】
その結果、地震などの発生時に、前述した各取り合い部9と各ハンガレール48とにかかる荷重が大きく変動することに起因して、止水シート30における架設方向の端部30Cが免震建物10,20の側壁11,21から引き剥がされることや、止水シート30における架設方向の中間部30Dが引き裂かれるなどの不都合の発生を防止することができる。
【0045】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0046】
(1)本発明に係る止水シート30の支持構造は、所定の隙間1を隔てて対向する免震建物と非免震建物の躯体間に備えられたエキスパンションジョイント設置部2に適用してもよい。
【0047】
(2)上記の実施形態にて例示した止水シート30の支持構造においては、吊り部材6として、ワイヤロープに代えてチェーン又は棒鋼材製のロッドなどが採用されていてもよい。
【0048】
(3)上記の実施形態にて例示した止水シート30の支持構造においては、張り出し部材40として、屋根用免震エキスパンションジョイント40とは別に、止水シート30の各被吊り下げ部位30Daを吊り下げ支持するために一方の躯体11から隙間1に向けて張り出された専用の支持部材が備えられていてもよい。
【0049】
(4)上記の実施形態にて例示した止水シート30の支持構造においては、屋根用免震エキスパンションジョイント40に代えて、床用免震エキスパンションジョイントなどの他の免震エキスパンションジョイントを利用して、止水シート30の各被吊り下げ部位30Daを吊り下げ支持する構成が採用されていてもよい。
【0050】
(5)止水シート30の支持構造としては、上記の実施形態にて例示した構成に代えて、
図6に示すように、各吊り部材6が、対向する免震建物10,20の側壁11,21のそれぞれから、止水シート30における架設方向中間部30Dの上面部30A側に設定した対応する被吊り下げ部位30Daにわたるとともに、各側壁11,21から被吊り下げ部位30Daにわたる長さが同じ長さに設定される構成であってもよい。
【0051】
尚、
図6には、各吊り部材6として、一方の免震建物10の側壁11に取り付けられた支持金具61から、止水シート30の各被吊り下げ部位30Daに取り付けられた吊り金具31を通って、他方の免震建物20の側壁21に取り付けられた支持金具61にわたる単一のワイヤロープ6を採用した構成が例示されている。
又、図示は省略するが、各吊り部材6としては、単一のワイヤロープ6に代えて、各免震建物10,20の側壁11,21に取り付けられた支持金具61から前述した吊り金具31に架設された一対のロッド、又は、一対のチェーンやワイヤロープなどの一対の索状体などを採用してもよい。
【0052】
図6にて例示した構成によれば、対向する免震建物10,20の側壁11,21間の相対変位に応じて止水シート30における架設方向の長さが変化すると、これに伴う止水シート30における架設方向の両端部30Cと中間部30Dとの間での止水シート30の余長の変化に応じて、各ワイヤロープ6における、一方の側壁11から被吊り下げ部位30Daにわたる一方側のワイヤロープ部分6Aと、他方の側壁21から被吊り下げ部位30Daにわたる他方側のワイヤロープ部分6Bとが、それらの架設姿勢を対称的に変化させて、それらの夾角が異なるV字形を維持する。
【0053】
又、各吊り部材6として一対のロッド又は一対の索状体などを採用した構成によれば、対向する免震建物10,20の側壁11,21間の相対変位に応じて止水シート30における架設方向の長さが変化すると、これに伴う止水シート30における架設方向の両端部30Cと中間部30Dとの間での止水シート30の余長の変化に応じて、一対のロッド又は一対の索状体などが、それらの架設姿勢を対称的に変化させて、それらの夾角が異なるV字形を維持する。
【0054】
このように、上記のいずれの構成においても、前述した実施形態にて例示した各ハンガレール48のような案内支持部を設けることなく、地震などによる免震建物10,20の側壁11,21間の隙間1の変化に応じて、各吊り部材6にて吊り下げ支持された止水シート30における架設方向の中間部30Dを、側壁11,21間の隙間1を二等分(約二等分)する位置に移動させることができる。これにより、止水シート30の架設方向の端部30Cと免震建物10,20の側壁11,21との各取り合い部9と、シート中間支持部となる各吊り部材6の端部と免震建物10,20の側壁11,21との各取り合い部60とにかかる荷重の変動を抑制することができる。
【0055】
その結果、止水シート30の支持構造に要する構成の簡素化を図りながら、地震などの発生時に、前述した各取り合い部9,60にかかる荷重が大きく変動することに起因して、止水シート30における架設方向の端部30Cが免震建物10,20の側壁11,21から引き剥がされることや、止水シート30における架設方向の中間部30Dが引き裂かれるなどの不都合の発生を防止することができる。
【0056】
尚、
図6に例示した止水シート30の支持構造においては、吊り部材6として、ワイヤロープに代えてチェーンなどの他の索状体を採用してもよい。
【0057】
(6)止水シート30の支持構造としては、
図7に示すように、前述した実施形態にて例示した構成に加えて、止水シート30における架設方向の両端部30Cと中間部(中央部)30Dとの間に位置する各中間部30Eの上面部30A側に設定した各被吊り下げ部位30Eaを、対応する免震建物10,20の側壁(躯体の一例)11,21と、各ハンガレール(案内支持部の一例)48によるワイヤロープ(吊り部材の一例)6の支持位置とのそれぞれから被吊り下げ部位30Eaにわたる一対のワイヤロープ(吊り部材の一例)62にて吊り下げ支持する構成であってもよい。
【0058】
詳述すると、この別実施形態にて例示した止水シート30の支持構造においては、
図7に示すように、前述した実施形態にて例示した構成と同様に、止水シート30における架設方向の両端部30Cが各免震建物10,20の側壁11,21に取り付けられている。又、止水シート30における架設方向中間部(中央部)30Dの上面部30A側に設定した各被吊り下げ部位30Daが、屋根用免震エキスパンションジョイント(張り出し部材の一例)40から対応する被吊り下げ部位30Daにわたる各ワイヤロープ6にて吊り下げ支持されている。そして、各ワイヤロープ6の上端部が、屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48にて、止水シート30の架設方向に移動可能に案内支持されている。
【0059】
そして、上記の構成に加えて、止水シート30における架設方向の両端部30Cと中間部(中央部)30Dとの間に位置する各中間部30Eの上面部30A側には、複数の被吊り下げ部位30Eaが、前述した被吊り下げ部位30Daと同様に、止水シート30の架設方向と直交する横方向に一定間隔を置いて並ぶように配置設定されている。各被吊り下げ部位30Eaには、ワイヤロープ62が通される吊り金具31が加硫接着などによって強固に取り付けられている。各ワイヤロープ62は、対応する免震建物10,20の側壁11,21に取り付けられた支持金具61から、止水シート30の各被吊り下げ部位30Eaに取り付けられた吊り金具31を通って、各ハンガレール48によるワイヤロープ6の支持位置となる支持具8に掛け渡されている。
【0060】
更に、各被吊り下げ部位30Da,30Eaを含む止水シート30における架設方向の各中間部30D,30Eが、上面部30Aの両端にわたるとともに上面部30Aの両端から各側面部30Bの下端にわたる長さを有する補強帯32にて補強されている。
【0061】
上記の構成により、余長を有することで重量が嵩む止水シート30の重量を、止水シート30の架設方向の端部30Cと各免震建物10,20の側壁11,21との取り合い部9と、屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48と、各ワイヤロープ62の端部と免震建物10,20の側壁11,21との各取り合い部60とに分散することができ、シート端部用の各取り合い部9にかかる荷重をより効果的に低下させることができる。
【0062】
これにより、止水シート30の重量がシート端部用の各取り合い部9に集中することに起因して、取り合い部9において、止水シート30における架設方向の端部30Cが免震建物10,20の側壁11,21から引き剥がされるなどの不都合の発生をより確実に防止することができる。又、止水シート30における架設方向の端部30Cと中間部(中央部)30Dとの間に位置する各中間部30Eが各ワイヤロープ62にて吊り下げ支持されることにより、前述した中間部30Eの垂れ下がりを抑制することができる。
【0063】
更に、各ワイヤロープ6にて吊り下げ支持される各被吊り下げ部位30Daを含む止水シート30における架設方向の中間部(中央部)30Dに加えて、各ワイヤロープ62にて吊り下げ支持される各被吊り下げ部位30Eaを含む止水シート30における架設方向の端部30Cと中間部(中央部)30Dとの間に位置する中間部30Eの全体が補強帯32にて補強されることから、止水シート30における架設方向の各中間部30D,30Eでの保形性をより効果的に高めることができる。
【0064】
これにより、止水シート30における架設方向の各中間部30D,30Eにおいて各被吊り下げ部位30Da,30Eaから外れた部位、具体的には、前記中間部30D,30Eの上面部30A側において各被吊り下げ部位30Da,30Eaの間に位置する部位、及び、前記中間部30D,30Eにおける各側面部30B側の部位、の下方への垂れ下がりを抑制することができる。又、各ワイヤロープ6,63にて吊り下げ支持される止水シート30における架設方向の各中間部30D,30Eが止水シート30の重量で引き裂かれる不都合の発生をより確実に防止することができる。
【0065】
その結果、止水シート30が、相対変位量の大きい免震建物10,20間に備えられたエキスパンションジョイント設置部2への止水処理を行うために、免震建物10,20間の大きい相対変位を許容する長い余長を有して重量が嵩むものであったとしても、止水シート30の重量に起因して、止水シート30における架設方向の端部30Cが免震建物10,20の側壁11,21から引き剥がされることや、止水シート30における架設方向の各中間部30D,30Eが引き裂かれるなどの不都合の発生がより確実に防止された状態で、止水シート30を良好に支持することができる。
【0066】
尚、この別実施形態において、各被吊り下げ部位30Da,30Eaを含む止水シート30における架設方向の各中間部30D,30Eは、止水シート30を架設方向で四等分(約四等分を含む)する位置に設定されている。
又、各被吊り下げ部位30Eaを吊り下げ支持する吊り部材63として、前述したワイヤロープに代えて、免震建物10,20の側壁11,21、又は、ハンガレール48によるワイヤロープ6の支持位置から、被吊り下げ部位30Eaの吊り金具31にわたる、一対のロッド又は一対のワイヤロープなどを採用してもよい。
更に、各被吊り下げ部位30Eaを吊り下げ支持する吊り部材63は、免震建物10,20の側壁11,21又は各ハンガレール48によるワイヤロープ6の支持位置から被吊り下げ部位30Eaの吊り金具31にわたる長さが同じ長さに設定されていてもよい。
【0067】
(7)止水シート30の支持構造においては、止水シート30の架設方向と直交する横方向に一定間隔を置いて配置設定された各被吊り下げ部位30Da,30Eaの高さ位置が、止水シート30の中央側に対して両端側ほど低くなるように吊り下げ支持することで、止水シート30の余長部分での水の滞留を防止して、止水シート30の重量に加えて余長部分に滞留した水の重量が、止水シート30の架設方向の端部30Cと各免震建物10,20の側壁11,21との取り合い部9や屋根用免震エキスパンションジョイント40の各ハンガレール48などにかかるのを防止してもよい。
【0068】
(8)止水シート30は、例えば、所定の隙間1を隔てて対向する免震建物10,20の躯体の一例である梁間に、梁間の相対変位を許容する余長を有する状態で架設されたものであってもよい。
又、止水シート30は、耐火帯及び耐火帯補強材とは別体で備えられたゴム製のシートであってもよい。
【0069】
(9)補強帯32は、例えば、止水シート30における架設方向の中間部30D,30Eに設定された各被吊り下げ部位30Da,30Eaのうちの止水シート30の側面部30Bに最も近い被吊り下げ部位30Da,30Eaから側面部30Bの下部側にわたる長さを有して、止水シート30における架設方向中間部30D,30Eの側面部30B側を補強するものであってもよい。
【0070】
(10)案内支持部48には、ハンガレール48に代えてスライドレールなどを採用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 躯体間の隙間
2 エキスパンションジョイント設置部
6 吊り部材
11 躯体(側壁)
12 躯体(梁)
21 躯体(側壁)
30 止水シート
30A 上面部
30B 側面部
30C 架設方向の端部
30D 架設方向の中間部(中央部)
30E 架設方向の中間部
30Da 被吊り下げ部位(中央部)
30Ea 被吊り下げ部位
32 補強帯
40 張り出し部材
48 案内支持部