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特許7339884非溶媒和物結晶及びその製造方法、並びに応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】非溶媒和物結晶及びその製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/233 20060101AFI20230830BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C07D215/233 CSP
A61K31/47
A61P3/00
A61P5/00
A61P9/00
A61P11/06
A61P25/00
A61P25/28
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P43/00 111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019517848
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2017103620
(87)【国際公開番号】W WO2018059429
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】201610856945.2
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519108051
【氏名又は名称】深▲セン▼微芯生物科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CHIPSCREEN BIOSCIENCES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】21F-24F, Building B, Zhigu Industrial Park, Shuguang Community, Xili Street, Nanshan District, Shenzhen Guangdong 518057, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルー,シエンピン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チーピン
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】齋藤 恵
【審判官】阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298358(US,A1)
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年 7月25日,p.57-84
【文献】浅原 照三,溶剤ハンドブック,株式会社 講談社,1985年,p.47-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D, A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶であって、
前記非溶媒和物結晶は、非溶媒和物結晶Cであり、
記非溶媒和物結晶Cは、粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.44°、22.00°、25.28°に特徴的なピークを有する、非溶媒和物結晶。
【請求項2】
前記非溶媒和物結晶は、前記非溶媒和物結晶Cであり、
前記非溶媒和物結晶Cは、粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.44°、17.88°、22.00°、25.28°、27.66°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の非溶媒和物結晶。
【請求項3】
前記非溶媒和物結晶Cは、粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.20°、17.44°、17.88°、19.20°、20.54°、21.06°、22.00°、25.28°、27.66°に特徴的なピークを有する、請求項に記載の非溶媒和物結晶。
【請求項4】
前記非溶媒和物結晶Cの赤外吸収スペクトルは、3452、3369、3217、3016、2962、1793、1728、1626、1595、1574、1531、1502、1448、1429、1388、1311、1252、1224、1159、1020cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、及び/又は、その示差走査熱量曲線において196.3℃及び221.0℃に吸熱ピークを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非溶媒和物結晶。
【請求項5】
N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをジメチルスルホキシドに加え、室温で撹拌して溶解させた溶液を撹拌しながら水に滴下し、固体をろ過し収集するステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のN-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶Cの製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のN-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶を含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のN-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶を含む、プロテインキナーゼ活性異常、又はヒストン脱アセチル化酵素活性異常に関連する疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のN-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶の、プロテインキナーゼ活性異常、又はヒストン脱アセチル化酵素活性異常に関連する疾患を治療するための使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2016年09月27日に中国特許庁へ提出された、出願番号が201610856945.2、発明の名称が「N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-オキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶及びその製造方法、並びに応用」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医薬品化学の分野に関し、具体的には、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶及びその製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0003】
N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドは、プロテインキナーゼとヒストン脱アセチル化酵素の両方への二重標的阻害剤であり、その化学構造は、構造式(I)で表される。
【化1】
【0004】
中国特許出願CN200910223861.5には、式(I)で表される化合物の薬理活性を記載し、その化合物は、プロテインキナーゼ阻害活性、及びヒストン脱アセチル化酵素阻害活性を持ち、プロテインキナーゼ活性異常、及びヒストン脱アセチル化酵素活性異常に関連する疾患、例えば、炎症、自己免疫疾患、癌、神経系疾患、神経変性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、アレルギー、喘息、及びホルモン関連疾患を治療するために適用することができ、特に血液がん、及び固形腫瘍に対して優れた治療効果を示す。
【0005】
本出願人は、中国特許出願CN200910223861.5に係る実施例31に記載の方法により式(I)で表される化合物を調製し、得られた固体の粉末X線回折パターンは図1に示した。実際に、その方法により調製された式(I)で表される化合物の固体はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を不可避的に含有し、これはそのプロトン核磁気共鳴スペクトル(HNMR)によって確認されている。得られた固体は、DMFを1.4%含有するN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒和物結晶である。
【0006】
有機溶媒は、医薬品使用者にとって潜在的に有毒であるために、有機溶媒を含有する結晶を調製することは一般に望ましくない。医薬品規制調和国際会議(ICH、International Conference of Harmonizition)は、複数種の通常の有機溶媒の医薬品中の残留量の限度値を規制し、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、メタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、メチルイソブチルケトンの限度値は、それぞれ0.088%、0.006%、0.3%、0.072%、0.089%、0.5%、0.5%、0.5%、0.5%及び0.5%である。
【0007】
中国特許出願CN200910223861.5に係る実施例31の方法により調製された式(I)で表される化合物は、そのDMFの残留量がICHによって規制された限度値をはるかに超える。式(I)で表される化合物は、当該技術分野においてその非溶媒和物結晶の製造方法が知られていない。従って、医薬品製造への安全な使用のために、式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶を製造するのは強く要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の欠点を克服し、式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、3種の式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶を提供する。
【0010】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Aは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角2θ約4.42°、6.88°、8.78°、9.26°、12.74°、13.82°、15.78°、18.58°、20.86°、22.56°、25.72°、27.08°及び28.72°に特徴的なピークを有し、その赤外吸収スペクトルにおいて約3452、3404、3357、3230、3064、1622、1576、1525、1506、1452、1423、1388、1363、1311、1253、1224、1161、1088及び1024cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、その示差走査熱量曲線において約177.5℃、213.1℃及び220.8℃に吸熱ピークを有し、そのプロトン核磁気共鳴スペクトルにより、その結晶は有機溶媒を含まず、残留溶媒の限度値に対するICHの規制を十分に満たすことが明らかになる。
【0011】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Bは、粉末X線回折パターンにおいて回折角2θ約4.88°、9.68°、12.74°、14.52°、17.72°、19.82°、21.86°、24.30°、25.26°に特徴的なピークを有し、その赤外吸収スペクトルにおいて約3423、3352、3238、3030、1624、1597、1531、1502、1452、1423、1388、1365、1308、1255、1226、1159、1086、1022cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、その示差走査熱量曲線において約178.6℃に吸熱ピークを有し、そのプロトン核磁気共鳴スペクトルにより、その結晶は有機溶媒を含まず、残留溶媒の限度値に対するICHの規制を十分に満たすことが明らかになる。
【0012】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Cは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角2θ約4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.20°、17.44°、17.88°、19.20°、20.54°、21.06°、22.00°、25.28°、27.66°に特徴的なピークを有し、その赤外吸収スペクトルにおいて約3452、3369、3217、3016、2962、1793、1728、1626、1595、1574、1531、1502、1448、1429、1388、1311、1252、1224、1159、1020cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、その示差走査熱量曲線において約196.3℃及び221.0℃に吸熱ピークを有し、そのプロトン核磁気共鳴スペクトルにより、その結晶は有機溶媒を含まず、残留溶媒の限度値に対するICHの規制を十分に満たすことが明らかになる。
【0013】
従って、本発明の一側面において、本発明は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶を提供する。
【0014】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶A、B及びCを含む。
【0015】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶Aは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)6.88°、9.26°、12.74°、13.82°、18.58°、20.86°及び25.72°に特徴的なピークを有し、好ましくは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.42°、6.88°、8.78°、9.26°、12.74°、13.82°、18.58°、20.86°及び25.72°に特徴的なピークを有し、より好ましくは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.42°、6.88°、8.78°、9.26°、12.74°、13.82°、15.78°、18.58°、20.86°、22.56°、25.72°、27.08°及び28.72°に特徴的なピークを有し、最も好ましくは、その粉末X線回折パターンが図2に示すようになる、ことを特徴とする。
【0016】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶Aは、赤外吸収スペクトルにおいて、3452、3404、3357、3230、3064、1622、1576、1525、1506、1452、1423、1388、1363、1311、1253、1224、1161、1088及び1024cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、好ましくは、図3に示すようになり、その示差走査熱量曲線において、177.5℃、213.1℃及び220.8℃に吸熱ピークを有し、好ましくは、図4に示すようになる。
【0017】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶Bは、その粉末X線回折パターンにおいて、回折角(2θ)4.88°、9.68°、12.74°、14.52°、17.72°、24.30°、25.26°に特徴的なピークを有し、好ましくは、その粉末X線回折パターンにおいて、回折角(2θ)4.88°、9.68°、12.74°、14.52°、17.72°、19.82°、21.86°、24.30°、25.26°に特徴的なピークを有し、より好ましくは、その粉末X線回折パターンが図5に示すようになる、ことを特徴とする。
【0018】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶Bは、赤外吸収スペクトルにおいて、3423、3352、3238、3030、1624、1597、1531、1502、1452、1423、1388、1365、1308、1255、1226、1159、1086、1022cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、好ましくは、図6に示すようになり、その示差走査熱量曲線において、178.6℃に吸熱ピークを有し、好ましくは、図7に示されるようになる。
【0019】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶Cは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.44°、22.00°、25.28°に特徴的なピークを有し、好ましくは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.44°、17.88°、22.00°、25.28°、27.66°に特徴的なピークを有し、より好ましくは、その粉末X線回折パターンにおいて回折角(2θ)4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.20°、17.44°、17.88°、19.20°、20.54°、21.06°、22.00°、25.28°、27.66°に特徴的なピークを有し、最も好ましくは、その粉末X線回折パターンが図8に示されるようになる、ことを特徴とする。
【0020】
一つの実施形態において、前記非溶媒和物結晶Cは、赤外吸収スペクトルにおいて、3452、3369、3217、3016、2962、1793、1728、1626、1595、1574、1531、1502、1448、1429、1388、1311、1252、1224、1159、1020cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、好ましくは、図9に示されるようになり、示差走査熱量曲線において196.3℃及び221.0℃に吸熱ピークを有し、好ましくは、図10に示されるようになる。
【0021】
本発明は、さらに、式(I)で表される化合物の3つの非溶媒和物結晶の製造方法を提供する。
【0022】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Aの製造方法は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをメタノールに加え、65℃で加熱して溶解させ、0℃まで冷却して析出させることを含む。好ましい実施形態において、非溶媒和物結晶Aの製造方法は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをメタノールに加え、65℃で加熱して溶解させ、0℃まで冷却して析出させ、固体をろ過して収集し、80℃で12時間真空乾燥して目的生成物を得ることを含む。
【0023】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Bの製造方法は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをアセトニトリルに加え、80℃で加熱して溶解させ、0℃まで冷却して析出させることを含む。好ましい実施形態において、非溶媒和物結晶Bの製造方法は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをアセトニトリルに加え、80℃で加熱して溶解させ、0℃まで冷却して析出させ、ろ過・収集し、80℃で12時間真空乾燥して目的生成物を得る、ことを含む。
【0024】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Cの製造方法は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをジメチルスルホキシドに加え、室温で撹拌して溶解させた溶液を撹拌しながら水に滴下し、固体をろ過・収集することを含む。好ましい実施形態において、非溶媒和物結晶Cの製造方法は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドをジメチルスルホキシドに加え、室温で撹拌して溶解させた溶液を撹拌しながら水に滴下し、固体をろ過し収集し、水洗し、80℃で24時間真空乾燥して目的生成物を得ることを含む。
【0025】
本発明の他側面において、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶を含む医薬組成物を提供する。一つの実施形態において、本発明は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶、及び任意に選択されていてもよい医薬品用賦形剤及び/又は担体を含む、プロテインキナーゼ活性異常、又はヒストン脱アセチル化酵素活性異常に関連する疾患を治療するための医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明に係る医薬組成物は、任意の適当な医薬品用賦形剤及び/又は担体を含んでもよい。本発明に係る医薬組成物は、通常の技術設備、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版,1995年)に記載の方法により得られることができ、それは、援用により本明細書に組み込まれる。前記組成物は、例えば、錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、懸濁剤、シロップ剤、液剤、注射剤、膏剤などの一般的医薬調製物の形態として見られる。その製剤は、通常、式(I)で表される化合物0.5%~70%wt、及び医薬品添加物30%~99.5%wtを含み、好ましくは、1%~65%wt、3%~60%wt、5%~55%wt、10%~50%wt、20%~40%wt、25%~38%wt、30%~35%wt又は32%~34%wtの式(I)で表される化合物を含む。
【0027】
典型的な組成物は、本発明の化合物、及び賦形剤又は担体を含む。例えば、活性化合物は、通常、担体と混合され、或いは担体で希釈され、或いはアンプル、カプセル、サシェ(sachet)、紙又は他の容器形態であることができる担体内に密封される。活性化合物が担体と混合される場合、或いは担体を希釈剤とする場合には、前記担体は、活性化合物の担体、賦形剤又は媒体として働く固体、半固体や液体材料であることができる。前記活性化合物は、粒子状の固体担体に吸着することができる(例えば、サシェに収容される)。適当な担体のいくつかの実例は、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシル化ヒマシ油、落花生油、オリーブ油、ゼラチン、乳糖、白土、蔗糖、デキストリン、炭酸マグネシウム、砂糖、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン マグネシウム酸、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸またはセルロースの低級アルキルエーテル、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドン。同様に、前記担体又は希釈剤は、当技術分野で公知の任意の徐放材料、例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン単独、或いはワックスとの混合物を含んでもよい。
【0028】
本発明の他側面において、本発明は、N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶の、プロテインキナーゼ活性異常、又はヒストン脱アセチル化酵素活性異常に関連する疾患を治療するための医薬品の調製における応用を提供する。好ましくは、前記プロテインキナーゼ活性異常又はヒストン脱アセチル化酵素活性異常に関連する疾患は、炎症、自己免疫疾患、癌、神経系疾患、神経変性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、アレルギー、喘息及びホルモン関連疾患から選ばれ、特に、血液がん及び固形腫瘍から選ばれる。
【0029】
式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶A、B及びCを、高温(60℃)、高湿度(90%±5%)及び強光照射(4500Lx±500Lx)条件下で10日放置し、3種の結晶がいずれも変化していなく本来の結晶形を保持し、各結晶の含有量も有意に変化しなく、この3種の結晶がいずれも医薬品制造及び長期保存に適用することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】中国特許出願CN200910223861.5に係る実施例31により調製された固体の粉末X線回折パターンである。
図2】本発明に係る実施例1により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Aの粉末X線回折パターンである。
図3】本発明に係る実施例1により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Aの赤外吸収スペクトルである。
図4】本発明に係る実施例1により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Aの示差走査熱量曲線図である。
図5】本発明に係る実施例2により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Bの粉末X線回折パターンである。
図6】本発明に係る実施例2により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Bの赤外吸収スペクトルである。
図7】本発明に係る実施例2により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Bの示差走査熱量曲線図である。
図8】本発明に係る実施例3により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Cの粉末X線回折パターンである。
図9】本発明に係る実施例3により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Cの赤外吸収スペクトルである。
図10】本発明に係る実施例3により調製された式(I)で表される化合物の非溶媒和物結晶Cの示差走査熱量曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例を参照しながら本発明の内容をさらに説明するが、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明に記載のパーセントは、特定されない限り、全て重量パーセントである。本明細書に記載の数値範囲、例えば、計量単位、反応条件、化合物の物理的性質又はパーセントは、いずれも明確な書面による参照を提供することを意図する。当業者は、本発明を実施する際に、この範囲外にある、または単一の値とは異なる温度、濃度、数量、炭素数などを使用しても、依然として所望の結果を得ることができる。
【0032】
試験方法:
【0033】
粉末X線回折の測定条件は、機器:D/MAX-1200(株式会社リガク)、X線源:Cu-Kα線(40kV、40mA)である。
【0034】
赤外吸収スペクトルの測定条件は、機器:RFX-65A(米国Analect社)、KBr錠剤法である。
【0035】
示差走査熱量分析法の測定条件:機器:Pyris-1-DSC(米国PerkinElmer社)、昇温速度:10℃/min、窒素ガスの流速:40mL/minである。
【0036】
プロトン核磁気共鳴の測定条件:機器:AV-400(ドイツBRUKER社)、溶媒:DMSO-dである。
【0037】
安定性試験条件は、中国薬局方2010年版二部付録XIX Cに準じて高温(60℃)、高湿度(90%)及び強光照射(4500Lx)試験を行う。
【0038】
HPLCの測定条件は、機器:Dionex UltiMate3000、カラム:Shim-packVP-ODS 5μm250L×4.6、検出器:VWD-3100、検出波長:256nm、移動相:メタノール-水-氷酢酸(30:70:0.4)、流速:1.0mL/min、カラム温度:30℃である。
【実施例
【0039】
実施例1:N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶Aの調製
【0040】
N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミド5.0gを2000mLの三つ口フラスコに置き、メタノール750mLを加え、65℃の油浴で溶解させるまで加熱撹拌した。得られた溶液を0℃の氷水浴に置いて4時間冷却して晶析させ、固体をろ過・収集し、80℃で12時間真空乾燥し、非溶媒和物結晶Aを得た。その粉末X線回折パターンは、図2に示されるように、回折角2θ約4.42°、6.88°、8.78°、9.26°、12.74°、13.82°、15.78°、18.58°、20.86°、22.56°、25.72°、27.08°及び28.72°に特徴的なピークを有し、その外吸収スペクトルは、図3に示されるように、約3452、3404、3357、3230、3064、1622、1576、1525、1506、1452、1423、1388、1363、1311、1253、1224、1161、1088及び1024cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、その示差走査熱量曲線は、図4に示されるように、約177.5℃、213.1℃及び220.8℃に吸熱ピークを有し、そのプロトン核磁気共鳴スペクトルは、その結晶が有機溶媒を含まないことを示した。
実施例2:N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶Bの調製
【0041】
N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミド5.0gを2000mLの三つ口フラスコに置き、アセトニトリル1000mLを加え、80℃の油浴で溶解させるまで加熱撹拌した。得られた溶液を0℃の氷水浴中に置いて4時間冷却して晶析させ、固体をろ過・収集し、80℃で12時間真空乾燥し、非溶媒和物結晶Bを得た。その結晶の粉末X線回折パターンは、図5に示されるようになる。その粉末X線回折パターンにおいて回折角2θ約4.88°、9.68°、12.74°、14.52°、17.72°、19.82°、21.86°、24.30°、25.26°に特徴的なピークを有し、その赤外吸収スペクトルは、図6に示されるように、約3423、3352、3238、3030、1624、1597、1531、1502、1452、1423、1388、1365、1308、1255、1226、1159、1086、1022cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、その示差走査熱量曲線は、図7に示されるように、約178.6℃に吸熱ピークを有し、そのプロトン核磁気共鳴スペクトルは、その結晶が有機溶媒を含まないことを示した。
実施例3:N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミドの非溶媒和物結晶Cの調製
【0042】
N-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)-1-ナフトアミド1.0gを50mLの三つ口フラスコに置き、ジメチルスルホキシド 5mLを加え、室温で溶解させるまで撹拌した。得られた溶液を撹拌しながら50mLの水 に滴下し、4時間静置し、ろ過・水洗し、固体を収集し、80℃で24時間真空乾燥し、非溶媒和物結晶Cを得た。その結晶の粉末X線回折パターンは、図8に示されるように、その粉末X線回折パターンにおいて回折角2θ約4.84°、9.68°、12.92°、14.60°、16.46°、17.20°、17.44°、17.88°、19.20°、20.54°、21.06°、22.00°、25.28°、27.66°に特徴的なピークを有し、その赤外吸収スペクトルは、図9に示されるように、約3452、3369、3217、3016、2962、1793、1728、1626、1595、1574、1531、1502、1448、1429、1388、1311、1252、1224、1159、1020cm-1に特徴的な吸収ピークを有し、その示差走査熱量曲線は、図10に示されるように、約196.3℃及び221.0℃に吸熱ピークを有し、そのプロトン核磁気共鳴スペクトルは、その結晶が有機溶媒を含まないことを示した。
実施例4:結晶形の安定性試験
【0043】
実施例1の非溶媒和物結晶A、実施例2の非溶媒和物結晶B、及び実施例3の非溶媒和物結晶Cは、中国薬局方2010年版二部付録XIX Cに準じて高温(60℃)、高湿度(90%)及び強光照射(4500Lx)試験を行い、それぞれ0日目及び10日目にサンプルを採取し、その粉末X線回折パターン及び含有量(HPLC法)を測定し、試験結果は、3種の結晶がいずれも変化していなく本来の結晶形を保持し、各結晶の含有量も有意に変化しなく、この3種の結晶がいずれも医薬品制造及び長期保存に適用することが示された。
実施例5:実施例1の非溶媒和物結晶Aの錠剤の調製
処方(1000錠):
実施例1の非溶媒和物結晶A 5g
微結晶セルロース 90g
カルボキシメチルスターチナトリウム 5g
4% ポリビニルピロリドン(K30)エタノール溶液 50g
タルク粉末 0.5g
【0044】
調製プロセスは、実施例1の非溶媒和物結晶Aを粉砕して100メッシュの篩にかけ、微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びタルク粉末を80メッシュの篩にかけた。処方量の微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及び非溶媒和物結晶Aを秤量し、均一に混合した。4% ポリビニルピロリドン(K30)エタノール溶液を適量加え、造粒し、乾燥した。処方量のタルク粉末を加え、よく混合し、打錠して得られた。
実施例6:実施例1の非溶媒和物結晶Aのカプセルの調製
処方(1000錠):
実施例1の非溶媒和物結晶A 5g
微結晶セルロース 55g
ラクトース 35g
カルボキシメチルスターチナトリウム 5g
ステアリン酸マグネシウム 0.5g
【0045】
調製プロセスは、実施例1の非溶媒和物結晶Aを粉砕して100メッシュの篩にかけ、微結晶セルロース、ラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを80メッシュの篩にかけた。処方量の微結晶セルロース、ラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、非溶媒和物結晶A、及びステアリン酸マグネシウムを秤量し、均一に混合し、カプセルに充填して得られた。
実施例7:実施例2の非溶媒和物結晶Bの錠剤の調製
処方(1000錠):
実施例2の非溶媒和物結晶B 5g
微結晶セルロース 90g
カルボキシメチルスターチナトリウム 5g
4% ポリビニルピロリドン(K30)エタノール溶液 50g
タルク粉末 0.5g
【0046】
調製プロセスは、実施例2の非溶媒和物結晶Bを粉砕して100メッシュの篩にかけ、微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びタルク粉末を80メッシュの篩にかけた。処方量の微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及び非溶媒和物結晶Bを秤量し、均一に混合した。4% ポリビニルピロリドン(K30)エタノール溶液を適量加え、造粒し、乾燥した。処方量のタルク粉末を加え、よく混合し、打錠して得られた。
実施例8:実施例2の非溶媒和物結晶Bのカプセルの調製
処方(1000錠):
実施例2の非溶媒和物結晶B 5g
微結晶セルロース 55g
ラクトース 35g
カルボキシメチルスターチナトリウム 5g
ステアリン酸マグネシウム 0.5g
【0047】
調製プロセスは、実施例2の非溶媒和物結晶Bを粉砕して100メッシュの篩にかけ、微結晶セルロース、ラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを80メッシュの篩にかけた。処方量の微結晶セルロース、ラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、非溶媒和物結晶B、及びステアリン酸マグネシウムを秤量し、均一に混合した、カプセルに充填して得られた。
実施例9:実施例3の非溶媒和物結晶Cの錠剤の調製
処方(1000錠):
実施例3の非溶媒和物結晶C 5g
微結晶セルロース 90g
カルボキシメチルスターチナトリウム 5g
4% ポリビニルピロリドン(K30)エタノール溶液 50g
タルク粉末 0.5g
【0048】
調製プロセスは、実施例3の非溶媒和物結晶Cを粉砕して100メッシュの篩に通し、微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びタルク粉末を80メッシュの篩にかけた。処方量の微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及び非溶媒和物結晶Cを秤量し、均一に混合した。4% ポリビニルピロリドン(K30)エタノール溶液を適量加え、造粒し、乾燥した。処方量のタルク粉末を加え、よく混合し、打錠して得られた。
実施例10:実施例3の非溶媒和物結晶Cのカプセルの調製
処方(1000錠):
実施例3の非溶媒和物結晶C 5g
微結晶セルロース 55g
ラクトース 35g
カルボキシメチルスターチナトリウム 5g
ステアリン酸マグネシウム 0.5g
【0049】
調製プロセスは、実施例3の非溶媒和物結晶Cを粉砕して100メッシュの篩にかけ、微結晶セルロース、ラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを80メッシュの篩にかけた。処方量の微結晶セルロース、ラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、非溶媒和物結晶C、及びステアリン酸マグネシウムを秤量し、均一に混合した、カプセルに充填して得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10