(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】装着管理装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2020045230
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昌弘
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-129738(JP,A)
【文献】特開2010-165826(JP,A)
【文献】特開2007-165360(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品装着機による部品の装着処理を管理対象とする装着管理装置であって、
前記部品装着機は、
前記部品を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる複数のホルダと、
複数の前記ホルダを所定の間隔で昇降可能に且つ前記ホルダごとの回転軸であるQ軸回りに回転可能に支持する装着ヘッドと、
前記装着処理において前記装着ヘッドの動作を制御し、前記保持部材に対する所定の採取角度で前記部品を採取する採取動作、および前記保持部材に保持された前記部品を基板に所定の装着角度で装着する装着動作を実行する制御装置と、を備え、
前記装着管理装置は、
前記部品が前記保持部材に保持された状態においてQ軸を中心に前記部品の最外縁を通る仮想円の内側を干渉領域とし、連続する2回の前記採取動作にそれぞれ対応する2つの前記部品が隣り合う前記保持部材にそれぞれ保持されたときに互いの前記干渉領域が重複するか否かを判定する第一判定部と、
前記第一判定部により互いの前記干渉領域が重複すると判定された場合に、2つの前記部品の前記採取角度を所定範囲に収めることにより2つの前記部品の干渉が回避され、且つ前記所定範囲内での前記ホルダの回転によって少なくとも一方の前記部品を目標の前記装着角度で装着可能か否かを判定する第二判定部と、
前記第二判定部により2つの前記部品の干渉が回避され且つ前記部品を目標の前記装着角度で装着可能であると判定された場合に、連続する2回の前記採取動作に隣り合う前記保持部材を割り当てる設定部と、
を備える装着管理装置。
【請求項2】
前記装着ヘッドは、
ヘッド本体と、
前記ヘッド本体に対して上下方向に延伸するR軸回りに回転可能に設けられ、複数の前記ホルダを同一円周上に等間隔で支持するロータリヘッドと、
を有する請求項1に記載の装着管理装置。
【請求項3】
前記装着ヘッドは、
前記ロータリヘッドをR軸回りに回転させるR軸回転装置と、
複数の前記ホルダを連動してQ軸回りに回転させるQ軸回転装置と、
をさらに有する、請求項2に記載の装着管理装置。
【請求項4】
前記装着管理装置は、前記設定部が連続する2回の前記採取動作に隣り合う前記保持部材を割り当てた場合に、前記装着処理の実行中における前記ロータリヘッドのR軸回りの回転に伴う前記ホルダのQ軸回りの回転を打ち消すように前記Q軸回転装置により前記ホルダを回転させる制御を前記制御装置に対して指令する指令部をさらに備える、請求項3に記載の装着管理装置。
【請求項5】
前記第二判定部は、2つの前記部品が同一種類のチップ部品であるときに、2つの前記部品の干渉が回避されると判定する、請求項1-4の何れか一項に記載の装着管理装置。
【請求項6】
前記第二判定部は、2つの前記部品のそれぞれの目標の前記装着角度が同一角度であるときに、2つ前記部品が前記目標の前記装着角度で装着可能であると判定する、請求項1-5の何れか一項に記載の装着管理装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記第一判定部により互いの前記干渉領域が重複すると判定され、且つ前記第二判定部により2つの前記部品の干渉が回避されない、または前記部品を目標の前記装着角度で装着不可と判定された場合に、連続する2回の前記採取動作に連続する3つの前記保持部材のうち中間に位置する前記保持部材を除く2つの前記保持部材を割り当てる、請求項1-6の何れか一項に記載の装着管理装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記装着処理において、複数回の前記採取動作および複数回の前記装着動作を含むPPサイクルを実行し、
前記設定部は、3以上の前記採取動作において連続する一対の前記採取動作ごとに前記保持部材を割り当て、前記採取動作に割り当てられた前記保持部材の数と、2つの前記保持部材の中間に位置して何れの前記採取動作に割り当てられなかった休止の前記保持部材の数との和が前記装着ヘッドに取り付けられた前記保持部材の数以下となるように、1回の前記PPサイクルに含まれる前記採取動作および前記装着動作を設定する、請求項7に記載の装着管理装置。
【請求項9】
前記設定部は、連続する2回の前記採取動作に隣り合う前記保持部材を割り当てた場合に、隣り合う前記保持部材の一方を用いた前記装着動作において前記ホルダの回転範囲が前記所定範囲に収まるように回転規制を設定する、請求項1-8の何れか一項に記載の装着管理装置。
【請求項10】
前記設定部は、前記回転規制を設定した前記装着動作が終了した後に、隣り合う前記保持部材の他方を用いた前記装着動作において前記回転規制を解除する、請求項9に記載の装着管理装置。
【請求項11】
前記装着管理装置は、基板製品の設計データを含む製品情報および複数の前記部品ごとの形状データを含む部品情報に基づいて、複数の前記部品の装着位置および装着順序を指定する制御プログラムを生成するプログラム生成部をさらに備え、
前記制御プログラムには、複数の前記部品をそれぞれ採取する前記採取動作ごとに前記設定部により割り当てられた前記保持部材を示す割り当て情報が含まれる、請求項1-10の何れか一項に記載の装着管理装置。
【請求項12】
前記装着管理装置は、前記部品装着機に組み込まれ、複数の前記部品の装着位置および装着順序を指定する制御プログラム、および複数の前記部品ごとの形状データを含む部品情報に基づいて、前記設定部が複数の前記部品をそれぞれ採取する前記採取動作ごとに前記保持部材を割り当てる、請求項1-10の何れか一項に記載の装着管理装置。
【請求項13】
部品装着機による部品の装着処理を管理対象とする装着管理装置であって、
前記部品装着機は、
前記部品を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる複数のホルダと、
複数の前記ホルダを所定の間隔で昇降可能に且つ前記ホルダごとの回転軸であるQ軸回りに回転可能に支持する装着ヘッドと、
前記装着処理において複数の前記部品の装着位置および装着順序を指定する制御プログラムに基づいて前記装着ヘッドの動作を制御し、前記保持部材に対する所定の採取角度で前記部品を採取する採取動作、および前記保持部材に保持された前記部品を基板に所定の装着角度で装着する装着動作を実行する制御装置と、を備え、
前記制御プログラムには、複数の前記部品をそれぞれ採取する前記採取動作ごとに割り当てられた前記保持部材を示す割り当て情報が含まれ、
前記装着管理装置は、
前記部品が前記保持部材に保持された状態においてQ軸を中心に前記部品の最外縁を通る仮想円の内側を干渉領域とし、連続する2回の前記採取動作にそれぞれ対応する2つの前記部品が前記割り当て情報により割り当てられた2つの前記保持部材にそれぞれ保持されたときに互いの前記干渉領域が重複するか否かを判定する第一判定部と、
前記第一判定部により互いの前記干渉領域が重複すると判定された場合に、2つの前記部品の前記採取角度を所定範囲に収めることにより2つの前記部品の干渉が回避され、且つ前記所定範囲内での前記ホルダの回転によって少なくとも一方の前記部品を目標の前記装着角度で装着可能か否かを判定する第二判定部と、
前記第二判定部により2つの前記部品の干渉が回避され且つ前記部品を目標の前記装着角度で装着可能であると判定された場合に、連続する2回の前記採取動作の実行を許可する動作判定部と、
を備える装着管理装置。
【請求項14】
前記装着管理装置は、前記第二判定部により2つの前記部品の干渉が回避されずまたは前記部品を目標の前記装着角度で装着不可であると判定されて前記動作判定部が連続する2回の前記採取動作の実行を許可しなかった場合に、作業者に対して前記制御プログラムの前記割り当て情報に異常があることを通知する通知部をさらに備える、請求項13に記載の装着管理装置。
【請求項15】
前記装着管理装置は、前記部品装着機に組み込まれ、
前記動作判定部は、前記制御プログラムを用いて実行を予定された前記装着処理において複数の前記部品をそれぞれ採取する前記採取動作ごとに実行の許否を判定する、請求項13または14に記載の装着管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装着管理装置は、部品装着機による部品の装着処理を管理対象とする。部品装着機は、装着処理において、吸着ノズルなどの保持部材によって部品を採取し、基板上の所定の装着位置に部品を装着するPPサイクルを繰り返し実行する。特許文献1には、吸着ノズルに保持された部品が他の部材と干渉し得る場合に、部品の保持角度を調整する構成が開示されている。また、特許文献1には、1回のPPサイクルにおいて複数の吸着ノズルのうち1つのみを用いた採取動作を実行し、他の吸着ノズルによる採取動作を休止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1回のPPサイクルにおいて装着可能な部品数を増加させるには、装着ヘッドに支持される保持部材を増加させることが考えられる。しかしながら、装着ヘッドの寸法に関する制約下において保持部材を増加させると、隣り合う保持部材の間隔が狭くなり、採取した部品のサイズによっては部品同士の干渉が懸念される。このとき、複数の保持部材のうち一部の保持部材を用いた採取動作を休止すると、装着処理におけるPPサイクルの実行回数が増加して、結果として全体の所要時間が長くなるおそれがある。
【0005】
本明細書は、互いに干渉し得る部品について、所定の条件下において隣り合う保持部材を用いた採取動作を許容することによって装着処理の効率化を図ることができる装着管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、部品装着機による部品の装着処理を管理対象とする装着管理装置であって、前記部品装着機は、前記部品を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる複数のホルダと、複数の前記ホルダを所定の間隔で昇降可能に且つ前記ホルダごとの回転軸であるQ軸回りに回転可能に支持する装着ヘッドと、前記装着処理において前記装着ヘッドの動作を制御し、前記保持部材に対する所定の採取角度で前記部品を採取する採取動作、および前記保持部材に保持された前記部品を基板に所定の装着角度で装着する装着動作を実行する制御装置と、を備え、前記装着管理装置は、前記部品が前記保持部材に保持された状態においてQ軸を中心に前記部品の最外縁を通る仮想円の内側を干渉領域とし、連続する2回の前記採取動作にそれぞれ対応する2つの前記部品が隣り合う前記保持部材にそれぞれ保持されたときに互いの前記干渉領域が重複するか否かを判定する第一判定部と、前記第一判定部により互いの前記干渉領域が重複すると判定された場合に、2つの前記部品の前記採取角度を所定範囲に収めることにより2つの前記部品の干渉が回避され、且つ前記所定範囲内での前記ホルダの回転によって少なくとも一方の前記部品を目標の前記装着角度で装着可能か否かを判定する第二判定部と、前記第二判定部により2つの前記部品の干渉が回避され且つ前記部品を目標の前記装着角度で装着可能であると判定された場合に、連続する2回の前記採取動作に隣り合う前記保持部材を割り当てる設定部と、を備える装着管理装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、互いの干渉領域が重複する場合であっても、採取角度の調整による干渉回避が可能であり、且つ目標の装着角度で装着可能であれば、装着管理装置は、隣り合う保持部材を用いた採取動作を許容する。これにより、部品同士の干渉を防止できるとともに、装着処理において保持部材が過剰に休止することを抑制できる。結果として、装着処理の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第一実施形態における装着管理装置を示すブロック図である。
【
図5】採取された複数の部品を下方から視た模式図である。
【
図6】制御プログラムおよび各種情報を示す図である。
【
図7】制御プログラムの生成処理を示すフローチャートである。
【
図8】部品装着機による装着処理を示すフローチャートである。
【
図9】第一実施形態の変形態様における装着管理装置を示すブロック図である。
【
図10】第二実施形態における装着管理装置を示すブロック図である。
【
図11】制御プログラムのチェック処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第一実施形態の装着管理装置70の概要
装着管理装置70は、部品装着機10による部品の装着処理を管理対象とする。本実施形態において、装着管理装置70は、部品装着機10の外部装置であって、部品装着機10を含む生産ラインを統括して管理する生産管理装置60に組み込まれる。装着管理装置70の詳細については後述する。
【0010】
2.部品装着機10の構成
部品装着機10は、基板に部品を装着する装着処理を実行し、基板製品の生産に用いられる。部品装着機10は、例えば他の部品装着機10を含む複数種類の対基板作業機とともに、基板製品を生産する生産ラインを構成する。上記の生産ラインを構成する対基板作業機には、印刷機や検査装置、リフロー炉などが含まれ得る。
【0011】
部品装着機10は、
図1に示すように、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ14、基板カメラ15、および制御装置16を備える。基板搬送装置11は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。部品供給装置12は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のスロット121にフィーダ122をそれぞれ装備される。フィーダ122には、例えば多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給するテープフィーダが適用され得る。
【0012】
部品移載装置13は、部品供給装置12により供給された部品を基板91上の所定の装着位置に移載する。部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131、移動台132、および装着ヘッド20を備える。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。装着ヘッド20は、図示しないクランプ部材により移動台132に着脱可能に固定され、機内を水平方向に移動可能に設けられる。
【0013】
装着ヘッド20は、ヘッド駆動装置131により機内を水平方向に移動可能に設けられる。装着ヘッド20は、部品供給装置12により供給された部品を、吸着ノズル25などの保持部材を用いて採取する。そして、装着ヘッド20は、保持部材を回転させるとともに下降させ、保持部材による部品の保持状態に応じて部品を基板91上の所定の装着位置に所定の装着角度で装着する。装着ヘッド20の詳細構成については後述する。
【0014】
部品カメラ14、および基板カメラ15は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ14、および基板カメラ15は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ14は、吸着ノズル25に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ15は、装着ヘッド20と一体的に水平方向に移動可能に移動台132に設けられる。基板カメラ15は、基板91を上方から撮像可能に構成される。
【0015】
制御装置16は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置16は、装着処理の制御に用いられる制御プログラムM1や部品情報F2などの各種データを記憶する。制御プログラムM1は、装着処理において基板91に装着される部品の装着位置、装着角度、および装着順序を示す(
図6を参照)。部品情報F2には、部品ごとの形状データが含まれる。部品情報F2には、形状データの他に、例えば部品ごとの最大の許容移動速度(加速度)、採取位置(例えば、吸着ノズル25に接触する位置)などが含まれ得る。
【0016】
制御装置16は、装着処理において装着ヘッド20の動作を制御し、複数回の採取動作および複数回の装着動作を含むPPサイクル(ピックアンドプレースサイクル)を実行する。上記の「採取動作」とは、部品供給装置12により供給された部品を、保持部材に対する所定の採取角度で採取する動作である。また、上記の「装着動作」とは、保持部材に保持された部品を基板91に所定の装着角度で装着する動作である。
【0017】
また、制御装置16は、複数の保持部材のそれぞれに保持された部品の保持状態の認識処理を実行する。具体的には、制御装置16は、部品カメラ14の撮像により取得された画像データを画像処理し、装着ヘッド20の基準位置に対する各部品の位置および角度を認識する。なお、制御装置16は、部品カメラ14の他に、例えば装着ヘッド20に一体的に設けられるヘッドカメラユニットなどが部品を側方、下方、または上方から撮像して取得された画像データを画像処理するようにしてもよい。
【0018】
3.装着ヘッド20の構成
装着ヘッド20は、
図2および
図3に示すように、移動台132に着脱可能に設けられるヘッド本体21を有する。装着ヘッド20は、ヘッド本体21に対して上下方向に延伸するR軸回りに回転可能に設けられるロータリヘッド22を有する。本実施形態において、R軸は、鉛直軸に平行な軸である。ロータリヘッド22は、
図2に示すように、複数のホルダ23を同一円周上に等間隔で支持する。このように、装着ヘッド20は、複数のホルダ23を所定の間隔Nv(
図5を参照)で支持する。
【0019】
ロータリヘッド22は、複数のホルダ23を昇降可能に且つ複数のホルダ23ごとの回転軸(Q軸)周りに回転可能に支持する。複数のホルダ23の外周側には、圧縮スプリング24がそれぞれ配置される。圧縮スプリング24は、ロータリヘッド22に対してホルダ23を上方に付勢する。これにより、複数のホルダ23のそれぞれは、初期状態においては所定高さの上昇端に位置する。
【0020】
複数のホルダ23は、部品92を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる。本実施形態において、保持部材は、供給される負圧エアにより部品92を吸着することにより保持する吸着ノズル25である。なお、保持部材としては、部品を把持することにより保持するチャックなどが採用され得る。
【0021】
装着ヘッド20は、ロータリヘッド22をR軸回りに回転させるR軸回転装置30を有する。R軸回転装置30は、Rモータ31の駆動によりインデックス軸32を回転させる。インデックス軸32は、ヘッド本体21に対してロータリヘッド22と一体的にR軸回りに回転可能に設けられる。R軸回転装置30は、ロータリヘッド22をR軸回りの所定角度に角度決めすることによって、一のホルダ23を後述する昇降装置50により昇降させる昇降位置に割り出す。
【0022】
装着ヘッド20は、複数のホルダ23をQ軸回りに回転させるQ軸回転装置40を有する。本実施形態において、Q軸回転装置40は、複数のホルダ23を連動してQ軸回りに回転させる機構を有し、複数のホルダ23の回転に共用される。Q軸回転装置40は、Qモータ41の駆動により、減速機構を介して駆動ギヤ42を回転させる。駆動ギヤ42は、インデックス軸32の外周側に設けられる。駆動ギヤ42は、歯筋方向が鉛直方向となるように形成される。
【0023】
駆動ギヤ42には、複数のホルダ23の上端にそれぞれ固定された従動ギヤ43が鉛直方向に摺動可能に噛み合う。Q軸回転装置40の駆動によって駆動ギヤ42が回転すると、全ての従動ギヤ43がQ軸回りにそれぞれ回転する。上記の構成によると、Q軸回転装置40の駆動によって一のホルダ23がQ軸回りの所定角度に角度決めされると、他の複数のホルダ23は、連動して所定角度に角度決めされる。
【0024】
また、上記のような構成によると、Q軸回転装置40を駆動させない状態でR軸回転装置30を駆動させると、ヘッド本体21に対して静止した駆動ギヤ42に対してロータリヘッド22が相対回転する。このようなロータリヘッド22のR軸回りの回転に伴って、駆動ギヤ42に噛み合う従動ギヤ43が回転する。結果として、複数のホルダ23は、R軸回転装置30の駆動によってもQ軸回りに回転することになる。
【0025】
装着ヘッド20は、複数のホルダ23の一部を昇降させる昇降装置50を備える。本実施形態において、昇降装置50は、ロータリヘッド22の回転によってR軸回りの所定の昇降位置に割り出された一のホルダ23を昇降させる。昇降装置50は、Zモータ51の駆動により図略の直動機構を動作させてプッシャー52をZ方向に移動させる。プッシャー52は、複数のホルダ23のうちロータリヘッド22のR軸回りの回転により昇降位置に割り出されたホルダ23の上端部に接触する。
【0026】
昇降装置50は、ホルダ23を下降させることによって、圧縮スプリング24の弾性力に抗してホルダ23を下降させる。これにより、ホルダ23に取り付けられた吸着ノズル25は、ホルダ23と一体的に下降する。ホルダ23は、プッシャー52が上方移動すると、圧縮スプリング24の弾性力により上昇端側へと上昇する。なお、装着ヘッド20は、2箇所以上の昇降位置を設け、それぞれに位置決めされたホルダ23を昇降可能とするように独立して駆動可能な複数の昇降装置を有する構成を採用し得る。
【0027】
上記のような構成からなる装着ヘッド20に支持されるホルダ23の数は、装着ヘッド20の種類によって相違し得る。また、装着ヘッド20は、本実施形態のように複数のホルダ23を円環状に等間隔で支持する態様の他に、種々の態様を採用し得る。例えば、装着ヘッド20は、装着ヘッド20は、直線状に、またはマトリックス状に配列された複数のホルダ23を支持する態様を採用してもよい。
【0028】
4.生産管理装置60
生産管理装置60は、部品装着機10を含む生産ラインの動作状況を監視し、部品装着機10などの対基板作業機などを制御するホストコンピュータである。生産管理装置60の記憶装置61には、各種情報が記憶されている。記憶装置61は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。
【0029】
記憶装置61には、上記の制御プログラムM1や部品情報F2の他に、製品情報F1や部品情報F2が記憶される。「製品情報F1」は、生産ラインにおける装着処理などの対基板作業によって生産される基板製品の設計データを含む。製品情報F1は、基板91に実装される部品92の種類、位置、および角度、要求される機能や精度などが含まれ得る。生産管理装置60は、例えば部品装着機10による部品の装着処理の実行に際して、制御プログラムM1などの各種データを送出する。
【0030】
5.装着管理装置70
装着管理装置70は、部品装着機10による部品の装着処理を管理対象とし、基板製品の品質を維持しつつ装着処理の効率化を図る。上記のように、部品装着機10による装着処理には、複数回に亘って繰り返し実行されるPPサイクルが含まれる。PPサイクルは、部品供給装置12と、基板搬送装置11に保持された基板91との間を装着ヘッド20が移動する動作が含まれる。
【0031】
そのため、装着処理の効率化の観点からは、装着処理におけるPPサイクルの回数を低減させるために、より多くの部品92を採取および装着可能な装着ヘッドの適用が望ましい。例えば、
図2に示すように、部品装着機10に24本のホルダ23を支持する装着ヘッド20が適用されることがある。これにより、1回のPPサイクルにおいて最大で24個の部品92を採取し、基板91に装着することが可能となる。
【0032】
一方で、部品装着機10には、限られた生産環境において施設面積あたりの生産性向上の要請がある。上記のような観点からは、装着ヘッド20を含む部品装着機10の小型化が望まれる。このような装着ヘッド20の寸法に関する制約下において、装着ヘッド20に取り付け可能な吸着ノズル25を増加させると、隣り合う吸着ノズル25の間隔が狭くなる。
【0033】
隣り合う吸着ノズル25の間隔が狭い装着ヘッド20を用いた装着処理において、採取した部品92のサイズが大きいと、Q軸回りの回転によって部品92同士の干渉が発生し得る。これに対して、サイズが大きい部品92を装着対象とする場合には、対応する装着ヘッド20に交換したり、複数の吸着ノズル25のうち例えば1つ置きの吸着ノズル25により部品92の採取および装着を行ったりすることが想定される。
【0034】
しかしながら、複数の吸着ノズル25のうち一部のみを用いることは、装着ヘッド20に取り付ける吸着ノズル25の数を低減させることと実質的に同義である。結果として、装着処理におけるPPサイクルの実行回数が増加すると、全体の所要時間が長くなるおそれがある。そこで、本実施形態の装着管理装置70は、互いに干渉し得る部品92について、所定の条件下において隣り合う保持部材(吸着ノズル25)を用いた採取動作を許容することによって装着処理の効率化を図ることができる構成を採用する。
【0035】
例えば、それぞれの吸着ノズル25により部品92を保持した状態においてQ軸回りに1回転すれば互いの部品92が干渉し得る場合であっても、それぞれ部品92の長手方向がR軸の径方向となるように採取されれば、部品92同士の干渉が回避され得る。また、上記のように干渉を回避するように部品92を採取すると、装着動作における部品92の回転角度に制限が加えられる。そこで、装着管理装置70は、上記の制限内において目標の装着角度で部品92を装着可能であることを、上記の「所定の条件」の一つとする。
【0036】
5-1.第一判定部71
装着管理装置70は、
図4に示すように、第一判定部71を備える。ここで、
図5に示すように、部品92が保持部材(吸着ノズル25)に保持された状態においてQ軸を中心に部品92の最外縁を通る仮想円Vcの内側を干渉領域Aiとする。第一判定部71は、連続する2回の採取動作にそれぞれ対応する2つの部品92が隣り合う保持部材(吸着ノズル25)にそれぞれ保持されたときに互いの干渉領域Aiが重複するか否かを判定する。
【0037】
具体的には、第一判定部71は、先ず装着処理に用いられる装着ヘッド20の種類ごとの設備情報に基づいて、隣り合うQ軸間の距離(即ち、隣り合う吸着ノズル25の間隔Nv)を取得する。次に、第一判定部71は、部品情報F2に基づいて、部品92の目標の採取位置にQ軸が一致すると仮定して、複数の部品92ごとの干渉領域Aiを取得する。そして、第一判定部71は、2つの部品92が隣り合う吸着ノズル25にそれぞれ保持されたときに互いの干渉領域Aiが重複するか否かを判定する。
【0038】
上記の「採取位置」としては、例えば、部品92の中心位置や重心位置、上面のうち平坦領域を形成された位置に設定される。なお、採取位置には、干渉領域Aiが最大となるように、例えば部品92の中心から最も離間した端縁付近に設定されてもよい。なお、第一判定部71は、上記のように互いの干渉領域Aiが重複するか否かの結果を実質的に得られればよく、例えば2つの部品92の中心から最外部までの各距離の和が、隣り合うQ軸間の距離以下である場合に、互いの干渉領域Aiが重複すると判定してもよい。
【0039】
5-2.第二判定部72
装着管理装置70は、
図4に示すように、第二判定部72を備える。第二判定部72は、第一判定部71により互いの干渉領域Aiが重複すると判定された場合に、2つの部品92の採取角度Ckを所定範囲Taに収めることにより2つの部品92の干渉が回避されるかを判定する。さらに、第二判定部72は、所定範囲Ta内でのホルダ23の回転によって少なくとも一方の部品92を目標の装着角度で装着可能か否かを判定する。
【0040】
ここで、上記の採取角度Ckの「所定範囲Ta」は、当該範囲内で部品92を採取すれば隣り合う部品92が干渉することのない角度範囲であって、2つの部品92の形状および採取位置により変動する。部品92の所定範囲Taの境界部は、
図5に示すように、互いの干渉領域Aiの交点に部品92の最外部が位置するときの部品92の角度に相当する。所定範囲Taは、上記の他に、許容誤差などを勘案して適宜設定される。
【0041】
なお、第二判定部72は、上記のように設定される所定範囲Taが存在するか否かの結果を実質的に得られればよい。例えば、第二判定部72は、2つの部品92が同一種類のチップ部品であるときに、2つの部品92の干渉が回避されると判定してもよい。チップ部品は、上方から視た形状が矩形状に形成される。そのため、例えば、隣り合うQ軸を結ぶ仮想線の延伸方向にチップ部品の幅方向が一致するようにチップ部品を採取すれば、2つのチップ部品に干渉が発生しないことは事前に把握することができる。
【0042】
ここで、上記の所定範囲Ta内の採取角度で2つの部品92が採取されると、これらの部品92を保持する吸着ノズル25は、少なくとも一方の部品92が基板91に装着されるまでは干渉を回避するために、Q軸回りの回転を所定範囲Ta内で収まるように制御される必要が生じる。そのため、第二判定部72は、回転を許容される所定範囲Ta内でのホルダ23の回転によって少なくとも一方の部品92を、制御プログラムにより指定される目標の装着角度で装着可能か否かを判定する。
【0043】
なお、第二判定部72は、上記のように少なくとも一方の部品92が目標の装着角度で装着可能であるか否かの結果を実質的に得られればよい。例えば、第二判定部72は、2つの部品92のそれぞれの目標の装着角度が同一角度であるときに、2つ部品92が目標の装着角度で装着可能であると判定してもよい。第二判定部72は、例えば2つの部品92のそれぞれの目標の装着角度が同一であれば、装着動作において必要となるホルダ23の回転量が採取誤差を補正する程度であるとして、2つの部品92を装着可能であると簡易に判定してもよい。
【0044】
5-3.設定部73
装着管理装置70は、
図4に示すように、設定部73を備える。設定部73は、制御プログラムM1において指定される部品92の採取動作および装着動作に用いるホルダ23および保持部材(吸着ノズル25)を割り当てる。本実施形態において、設定部73は、第二判定部72により2つの部品92の干渉が回避され且つ部品92を目標の装着角度で装着可能であると判定された場合に、連続する2回の採取動作に隣り合う保持部材(吸着ノズル25)を割り当てる。これにより、例えば制御プログラムM1おいて連続して採取される2つの部品92は、PPサイクルにおいて隣り合う吸着ノズル25を用いて採取される。
【0045】
一方で、設定部73は、第一判定部71により上記条件を満たさないと判定された場合に、連続する2回の採取動作に連続する3つの保持部材(吸着ノズル25)のうち中間に位置する保持部材(吸着ノズル25)を除く2つの保持部材(吸着ノズル25)を割り当てる。これにより、例えば制御プログラムM1において連続して採取される2つの部品92は、PPサイクルにおいて1つ置きの吸着ノズル25を用いて採取される。そして、このPPサイクルにおいて、中間に位置する吸着ノズル25は、採取動作および装着動作に用いられず休止とされる。上記のように、設定部73は、制御プログラムM1における連続する一対の採取動作について使用される吸着ノズル25を順に割り当てる。
【0046】
さらに、設定部73は、多数の採取動作および装着動作について、複数のPPサイクルに区分するよう設定してもよい。詳細には、設定部73は、
図6に示すように、先ず3以上の採取動作において連続する一対の採取動作ごとに保持部材を割り当てる。そして、設定部73は、採取動作に割り当てられた保持部材の数と、2つの保持部材の中間に位置して何れの採取動作に割り当てられなかった休止の保持部材の数との和が装着ヘッド20に取り付けられた保持部材の数以下となるように、1回のPPサイクルに含まれる採取動作および装着動作を設定する。
【0047】
具体的には、設定部73は、採取動作に割り当てられた吸着ノズル25の数(Bp)と、休止の吸着ノズル25の数(Br)との和が、吸着ノズル25の数(24)以下となるように(Bp+Br≦24)、採取動作および装着動作を複数のPPサイクルに区分する。よって、休止の吸着ノズル25が0であれば、1回のPPサイクルにおいて採取および装着される部品92の数は、最大の24となる。一方で、1つ置きに部品92が採取されるように吸着ノズル25が割り当てられた場合には、1回のPPサイクルにおいて採取および装着される部品92の数は、半分の12となる。
【0048】
また、設定部73は、所定の条件下において、連続する2回の採取動作に隣り合う保持部材を割り当てた場合に、隣り合う保持部材の一方を用いた装着動作においてホルダ23の回転範囲が所定範囲Taに収まるように回転規制を設定する。これにより、部品装着機10の制御装置16は、装着動作において設定部73により設定された回転規制に従って、所定範囲Ta内でホルダ23および吸着ノズル25をQ軸回りに回転させて、部品92が目標の装着角度となるように装着する。
【0049】
なお、制御装置16は、部品92を目標の装着角度で装着するには、所定範囲Taを超えてホルダ23を回転させる必要があると判断した場合には、当該装着動作をスキップして後回しとしたり、作業者にその旨を通知したりするなどの対処を行う。また、設定部73は、回転規制を設定した(隣り合う保持部材の一方を用いた)装着動作が終了した後に、隣り合う保持部材の他方を用いた装着動作において回転規制を解除する。
【0050】
上記の回転規制は、隣り合う2つの吸着ノズル25に保持された部品92同士が干渉し得るために設定される。そのため、一方の部品92が装着されて、一方の吸着ノズル25が部品92を保持していない状態となれば、他方の吸着ノズル25を用いた装着動作に対するQ軸回りの回転規制が不要となる。そこで、設定部73は、上記要件を満たす場合に、回転規制を解除する。
【0051】
なお、連続する3以上の装着動作(L1,L2,L3,・・)において、一対の装着動作(L1,L2)の一方(L1)が実行されたことをもって他方(L2)の回転規制が解除されたとしても、次の一対の装着動作(L2,L3)のそれぞれに回転規制が設定されていることがある。この場合には、先の一対の装着動作(L1,L2)の他方(L2)については、次の一対の装着動作(L2,L3)に対応する所定範囲Taに基づく回転規制に従って装着ヘッド20を制御される。
【0052】
5-4.指令部74
装着管理装置70は、
図4に示すように、指令部74を備える。指令部74は、設定部73により採取動作に所定の保持部材(吸着ノズル25)が割り当てられた後に、当該保持部材を用いた装着動作における制御上の指令を行う。詳細には、指令部74は、設定部73が連続する2回の採取動作に隣り合う保持部材を割り当てた場合に、装着処理の実行中におけるロータリヘッド22のR軸回りの回転に伴うホルダ23のQ軸回りの回転を打ち消すようにQ軸回転装置40によりホルダ23を回転させる制御を制御装置16に対して指令する。
【0053】
ここで、本実施形態の装着ヘッド20は、ロータリヘッド22をR軸回りに回転させると、複数のホルダ23がR軸回りに回転するとともにQ軸回りにも回転する構造を有する。しかしながら、互いに干渉し得る部品92を所定の採取角度で隣り合う吸着ノズル25により保持した状態において、ロータリヘッド22を回転させてホルダ23がQ軸回りに回転するとヘッド本体21に対する部品92の角度が変動し、2つの部品92が干渉することになる。
【0054】
そこで、指令部74は、上記のような2つの部品92を保持した状態において、ロータリヘッド22をR軸回りに回転させる場合には、R軸回りの回転に伴うホルダ23のQ軸回りの回転を打ち消すように、Q軸回転装置40によりホルダ23を反対方向に回転させる同期制御を指令する。これにより、複数のホルダ23は、互いの角度関係を維持した状態でR軸回りに回転する。結果として、ロータリヘッド22のR軸回りの回転中において、隣り合う吸着ノズル25にそれぞれ保持された部品92の干渉が防止される。
【0055】
5-5.プログラム生成部75
装着管理装置70は、
図4に示すように、プログラム生成部75を備える。プログラム生成部75は、製品情報F1および部品情報F2に基づいて、制御プログラムM1を生成する。詳細には、プログラム生成部75は、所定の基板製品の生産に必要な部品92について、その装着順序などを製品情報F1に基づいて算出する。このとき、プログラム生成部75は、例えば生産環境などを考慮して、生産効率向上の観点やサイクルタイム短縮の観点から装着順序などを決定する。
【0056】
なお、制御プログラムM1には、部品92の装着位置、装着角度、および装着順序の基本指令が含まれ、装着処理に関して種々の態様が適用され得る。詳細には、上記の基本指令に基づく採取動作および装着動作に用いるホルダ23の指定、および採取動作および装着動作を区分する複数回のPPサイクルの指定を、装着管理装置70において行う場合と、当該制御プログラムM1を入力した部品装着機10において行う場合とがある。
【0057】
ここでは、プログラム生成部75が予め基本指令に加えて、ホルダ23およびPPサイクルの指定を行う態様を例示する。プログラム生成部75は、設定部73による処理結果を反映させるように制御プログラムM1に情報を追加する。これにより、制御プログラムM1には、
図6に示すように、複数の部品92をそれぞれ採取する採取動作ごとに設定部73により割り当てられた保持部材(吸着ノズル25)を示す割り当て情報D1が含まれる。
【0058】
さらに、プログラム生成部75は、本実施形態において、指令部74により装着動作の実行中に同期制御が指令されている場合に、当該指令を示す同期指令情報D2を制御プログラムM1に追加する。同様に、プログラム生成部75は、設定部73により所定の装着動作について回転規制が設定され、また回転規制の解除が設定されている場合に、当該回転規制のまたは解除を示す回転規制情報D3を制御プログラムM1に追加する。
【0059】
これにより、部品装着機10の制御装置16は、装着処理の実行に際して、制御プログラムM1により指定された吸着ノズル25で部品92を採取するとともに、同期制御を適宜実効するとともに回転規制に従うように装着動作を制御する。なお、制御装置16は、上記のような制御プログラムM1を用いた装着処理において、採取エラーなどが発生した場合には、必要なリカバリー処理の追加や装着順序の入れ換えなどを実行し得る。
【0060】
6.プログラム生成処理
装着管理装置70による制御プログラムM1の生成処理について、
図7を参照して説明する。先ず、プログラム生成部75は、製品情報F1および部品情報F2を記憶装置61から入力する(S11)。次に、プログラム生成部75は、製品情報F1および部品情報F2に基づいて、基本指令として、部品92の装着位置、装着角度、および装着順序を設定する(S12)。この装着順序は、部品92の採取順序と一致する。
【0061】
続いて、第一判定部71は、基本指令において連続する2回の採取動作にそれぞれ対応する2つの部品92が隣り合う吸着ノズル25にそれぞれ保持されたときに互いの干渉領域Aiが重複するか否かを判定する(S13)。第一判定部71により互いの干渉領域Aiが重複すると判定された場合に(S13:Yes)、第二判定部72は、干渉回避の可否、および目標の装着角度での装着可否を判定する(S14)。
【0062】
設定部73は、第二判定部72により2つの部品92の干渉が回避され且つ部品92を目標の装着角度で装着可能であると判定された場合に(S14:Yes)、または第一判定部71により互いの干渉領域Aiが重複しないと判定された場合に(S13:No)、連続する2回の採取動作に隣り合う吸着ノズル25を割り当てる(S15)。これにより、
図6に示すように、基本指令に対して吸着ノズル25の割り当て情報D1が追加される。
【0063】
さらに、設定部73は、これらの一対の採取動作に対応する一対の装着動作について、同期指令およびホルダ23の回転範囲が所定範囲Taに収まるように回転規制を設定する(S16)。これにより、
図6に示すように、基本指令に対して同期指令情報D2および回転規制情報D3が追加される。また、設定部73は、第一判定部71により互いの干渉領域Aiが重複しないと判定された場合には(S13:No)、これらに対応する一対の装着動作についての同期指令および回転規制の設定を省略する。
【0064】
一方で、設定部73は、第二判定部72により2つの部品92の干渉が回避されない、または部品92を目標の装着角度で装着不可と判定された場合に(S14:No)、連続する2回の採取動作に連続する3つの吸着ノズル25のうち中間に位置する吸着ノズル25を除く2つの吸着ノズル25を割り当てる(S17)。これにより、
図6に示すように、基本指令に対して吸着ノズル25の割り当て情報D1が追加される。
【0065】
続いて、設定部73は、
図6に示すように、採取動作に割り当てられた吸着ノズル25の数(Bp)と、休止の吸着ノズル25の数(Br)との和を割り当て数(Ba=Bp+Br)とし、割り当て数(Ba)が吸着ノズル25の数(Ln)以上であるか判定する(S21)。割り当て数(Ba)が吸着ノズル25の数(Ln)以上となった場合に(S21:Yes)、設定部73は、割り当て数(Ba)に相当する採取動作および装着動作が1回のPPサイクルに含まれるように設定するとともに、割り当て数をリセットする(S22)。
【0066】
一方で、割り当て数(Ba)が吸着ノズル25の数(Ln)未満である場合に(S21:No)、または1回のPPサイクルの設定(S22)を行った後に、装着管理装置70は、全ての採取動作および装着動作について、吸着ノズル25の割り当てが終了していない場合に(S23:No)、上記処理(S13-S22)を繰り返し実行する。装着管理装置70は、全ての採取動作および装着動作について、吸着ノズル25の割り当てが終了した場合に(S23:Yes)、基本指令および各種情報(D1-D3)を含む制御プログラムM1を記憶装置61に記憶して、プログラム生成処理を終了する。
【0067】
7.部品装着機10による装着処理
部品装着機10による装着処理について
図8を参照して説明する。先ず、基板搬送装置11は、
図8に示すように、基板91の搬入処理を実行する(S31)。これにより、機内に基板91が搬入されるとともに、機内の所定位置に位置決めされる。制御装置16は、制御プログラムM1に基づいて、今回のPPサイクルに含まれる採取動作を繰り返し実行する(S32)。このとき、制御装置16は、設定部73により割り当てられた吸着ノズル25を用いて、且つ部品92を所定範囲Taの採取角度で採取する。
【0068】
続いて、制御装置16は、複数の吸着ノズル25にそれぞれ保持された部品の保持状態の認識処理を実行する(S33)。制御装置16は、認識処理(S33)の結果に基づいて、装着動作を複数回に亘り繰り返し実行する(S34)。装着動作において、制御装置16は、制御プログラムM1により指定された所定の装着位置に、所定の装着角度で部品92が装着されるように、装着移動および装着回転を実行する。
【0069】
このとき、制御装置16は、装着動作について同期指令や回転規制が設定されている場合には、これらに従って装着動作を制御する。一方で、制御装置16は、例えばPPサイクルの実行中において保持されている残りの部品92に対応する装着動作について、同期指令がなく、または回転規制が解除されている場合には、通常の装着動作の制御に切り換える。
【0070】
制御装置16は、制御プログラムM1に基づいて、全てのPPサイクルが終了したか否かを判定する(S35)。全てのPPサイクルが終了していない場合には(S35:No)、制御装置16は、PPサイクル(S32-S34)を繰り返し実行する。全てのPPサイクルが終了した場合に(S35:Yes)、制御装置16は、基板91の搬出処理を実行する(S36)。基板91の搬出処理において、基板搬送装置11は、位置決めされていた基板91をアンクランプするとともに、部品装着機10の機外に基板91を搬出する。
【0071】
8.第一実施形態の構成による効果
このような構成によると、互いの干渉領域Aiが重複する場合であっても、採取角度の調整による干渉回避が可能であり、且つ目標の装着角度で装着可能であれば、装着管理装置70は、隣り合う保持部材(吸着ノズル25)を用いた採取動作を許容する。これにより、部品92同士の干渉を防止できるとともに、装着処理において保持部材(吸着ノズル25)が過剰に休止することが抑制される。結果として、装着処理の効率化を図ることができる。
【0072】
9.第一実施形態の変形態様
9-1.装着ヘッド20について
第一実施形態において、装着ヘッド20は、複数のホルダ23を連動して回転させるQ軸回転装置40を有する構成とした。これに対して、装着ヘッド20は、互いに独立して複数のホルダ23のそれぞれをQ軸回りに回転させる複数の回転装置を有する構成としてもよい。但し、装着ヘッド20の小型化やコスト低減の観点からは、第一実施形態にて例示した態様が好適である。
【0073】
9-2.装着管理装置について
第一実施形態において、装着管理装置70は、部品装着機10の外部装置である生産管理装置60に組み込まれる構成とした。これに対して、装着管理装置の機能の一部または全部を部品装着機10の制御装置16に組み込み、残りの機能を外部装置に組み込むようにしてもよい。例えば、装着管理装置170は、
図9に示すように、部品装着機110の制御装置116に組み込まれる構成としてもよい。本態様において、制御プログラムM1には、部品92の装着位置、装着角度、および装着順序の基本指令が含まれ、割り当て情報D1、同期指令情報D2、および回転規制情報D3が含まれない。
【0074】
装着管理装置170は、第一判定部71、第二判定部72、設定部73、および指令部74を備える。各部は、第一実施形態と実質的に同一であるため詳細な説明を省略する。装着管理装置170は、複数の部品92の装着位置および装着順序を指定する制御プログラムM1、および複数の部品92ごとの形状データを含む部品情報F2に基づいて、設定部73が複数の部品92をそれぞれ採取する採取動作ごとに保持部材(吸着ノズル25)を割り当てる。
【0075】
本態様によると、制御プログラムM1の基本指令に基づく採取動作および装着動作に用いるホルダ23の指定、および採取動作および装着動作を区分する複数回のPPサイクルの指定を、当該制御プログラムM1を入力した部品装着機110の制御装置116に組み込まれた装着管理装置170において行う。さらに、装着管理装置170の指令部74は、必要に応じて同期指令や回転規制の設定を行う。このような構成によると第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0076】
10.第二実施形態の装着管理装置270
装着管理装置270は、部品装着機10による部品の装着処理を管理対象とする。ここで、第一実施形態では、装着処理において連続する2回の採取動作について所定の条件に基づいて、それぞれの採取動作に隣り合う保持部材または1つ置きの保持部材を割り当てる態様を例示した。そして、上記のように採取動作ごとに保持部材が割り当てられると、制御プログラムM1に割り当て情報D1が追加される。
【0077】
ところで、上記の割り当て情報D1は、装着管理装置70により自動生成される他に、作業者により手動生成されることが想定される。例えば、作業者は、制御プログラムM1の生成時に、部品情報F2に基づいて部品のサイズを知得して、部品同士の干渉が発生し得ると判断することができる。この場合に、作業者は、割り当て情報D1を生成し、上記の部品が隣り合う保持部材により採取されないように設定することができる。
【0078】
さらに、割り当て情報D1は、部品装着機10が制御プログラムM1に基づく装着処理を実行する際に、部品装着機10に装備されている装着ヘッド20の種類などに基づいてPPサイクルの設定とともに保持部材の割り当てがなされることにより生成され得る。上記のように、作業者または部品装着機10により生成された割り当て情報D1では、干渉防止を優先して保持部材が割り当てられていると考えられる。
【0079】
しかしながら、上記のように生成された割り当て情報D1では、作業者の見落としなどに起因して、部品同士の干渉が確実に回避できているのか定かではない場合がある。そこで、本実施形態の装着管理装置270は、装着処理の実行前に割り当て情報D1を含む制御プログラムM1をチェックし、それぞれの採取動作の実行可否を判定する構成を採用する。なお、本実施形態において、
図10に示すように、装着管理装置270が部品装着機210に組み込まれる態様を例示して説明する。
【0080】
10-1.第一判定部271
装着管理装置270は、第一判定部271を備える。第一判定部271は、連続する2回の採取動作にそれぞれ対応する2つの部品92が割り当て情報D1により割り当てられた2つの保持部材(吸着ノズル25)にそれぞれ保持されたときに互いの干渉領域Aiが重複するか否かを判定する。つまり、第一判定部271は、割り当て情報D1を含む制御プログラムM1に基づいて連続する2回の採取動作を実行した場合に、これらにより採取された部品92同士が干渉し得るかを判定する。
【0081】
10-2.第二判定部272
装着管理装置270は、第二判定部272を備える。第二判定部272は、第一判定部271により互いの干渉領域Aiが重複すると判定された場合に、干渉回避可否、および目標の装着角度での装着可否を判定する。第二判定部272は、第一実施形態の第二判定部72と実質的に同一であるため詳細な説明を省略する。
【0082】
10-3.動作判定部276
装着管理装置270は、動作判定部276を備える。動作判定部276は、第二判定部272により2つの部品92の干渉が回避され且つ部品92を目標の装着角度で装着可能であると判定された場合に、連続する2回の採取動作の実行を許可する。なお、動作判定部276は、2回の連続する採取動作の実行を許可する場合に、後述する作業者への通知処理やエラー処理を省略することにより実行を許可してもよいし、採取動作ごとまたは制御プログラムM1ごとに実行許可を記録してもよい。
【0083】
10-4.通知部277
装着管理装置270は、本実施形態において通知部277を備える。通知部277は、第二判定部272により2つの部品92の干渉が回避されずまたは部品92を目標の装着角度で装着不可であると判定されて動作判定部276が連続する2回の採取動作の実行を許可しなかった場合に、作業者に対して通知処理を実行する。具体的には、通知部277は、通知処理において、作業者に対して制御プログラムM1の割り当て情報D1に異常があることを通知する。
【0084】
通知部277は、通知処理において、制御プログラムM1において異常と判定された2回の採取動作に対応する指令を特定して、当該特定の情報を併せて通知してもよい。また、通知部277は、部品92の干渉を回避し、目標の装着角度で装着動作を可能とするために、割り当てる保持部材の変更や、装着順序の変更などを併せて作業者に案内してもよい。これにより、作業者は、通知部277による通知内容に基づいて、制御プログラムM1を適切に編集することができる。
【0085】
11.制御プログラムM1のチェック処理
装着管理装置270による制御プログラムM1のチェック処理について、
図11を参照して説明する。先ず、装着管理装置270は、チェック対象の割り当て情報D1を含む制御プログラムM1および部品情報F2を入力する(S41)。次に、第一判定部71は、基本指令において連続する2回の採取動作にそれぞれ対応する2つの部品92が割り当て情報D1により割り当てられた2つの吸着ノズル25にそれぞれ保持されたときに互いの干渉領域Aiが重複するか否かを判定する(S42)。
【0086】
第一判定部71により互いの干渉領域Aiが重複すると判定された場合に(S42:Yes)、第二判定部72は、干渉回避の可否、および目標の装着角度での装着可否を判定する(S43)。第二判定部72により2つの部品92の干渉が回避され且つ部品92を目標の装着角度で装着可能であると判定された場合に(S43:Yes)、または第一判定部71により互いの干渉領域Aiが重複しないと判定された場合に(S42:No)、動作判定部276は、連続する2回の採取動作の実行を許可する(S44)。これにより、採取動作に対応する装着動作の実行も許可される。
【0087】
装着管理装置270は、全ての採取動作および装着動作について、実行の許否判定が終了していない場合に(S45:No)、上記処理(S42-S44)を繰り返し実行する。これにより、動作判定部276は、制御プログラムM1を用いて実行を予定された装着処理において複数の部品92をそれぞれ採取する採取動作ごとに実行の許否を判定することになる(S44)。
【0088】
装着管理装置270は、全ての採取動作および装着動作について、実行の許否判定が終了した(S45:Yes)、制御プログラムM1のチェック処理を終了する。また、第二判定部72により2つの部品92の干渉が回避されない、または部品92を目標の装着角度で装着不可と判定された場合に(S43:No)、通知部277は、通知処理を実行する(S46)。
【0089】
このような構成によると、装着管理装置270は、装着処理の実行前に割り当て情報D1を含む制御プログラムM1をチェックし、それぞれの採取動作の実行可否を判定する。これにより、割り当て情報D1によって保持部材(吸着ノズル25)が採取動作に適切に設定されていない場合に、制御プログラムM1を用いた装着処理の実行を規制することができる。
【0090】
12.第二実施形態の変形態様
12-1.装着管理装置について
第二実施形態において、装着管理装置270は、部品装着機210に組み込まれる構成とした。これに対して、装着管理装置270の機能の一部または全部を部品装着機210の外部装置に組み込み、残りの機能を部品装着機210に組み込むようにしてもよい。その場合、例えば、外部装置において作業者により制御プログラムM1が生成されたとき、または外部装置から部品装着機に制御プログラムM1を送信するときに上記のチェック処理を実行することができる。
【0091】
12-2.制御プログラムM1のチェック処理について
第二実施形態において、装着管理装置270は、割り当て情報D1を含む制御プログラムM1をチェック対象とした。これに対して、装着管理装置270は、例えば制御プログラムM1に同期指令情報D2や回転規制情報D3が含まれている場合に、これらの情報が適切であるか否かを併せてチェックするようにしてもよい。
【0092】
また、装着管理装置270は、第二実施形態において割り当て情報D1に従った装着処理を実行した場合に、部品92同士の干渉が発生するか否かを判定するものとした。これに対して、装着管理装置270は、連続する2回の採取動作に1つ置きの保持部材が設定されている場合に、これらの採取動作が所定の条件(干渉回避可能、且つ目標の装着角度で装着可能)を満たすときに隣り合う2つの保持部材を割り当てることが可能であることを作業者に案内してもよい。これにより、作業者には、装着処理の効率化の余地があることが案内され、割り当て情報D1の編集を促すことができる。
【0093】
また、装着管理装置270による制御プログラムM1のチェック処理は、適宜タイミングで実行される。具体的には、部品装着機210が制御プログラムM1を生産管理装置60から入力したときや、制御プログラムM1を用いた装着処理を実行するときにチェック処理を実行してもよい。また、装着管理装置270の機能の一部が外部装置にある場合に、例えば制御プログラムM1の生成時にチェック処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0094】
10,110,210:部品装着機、 13:部品移載装置、 16,116,216:制御装置、 20:装着ヘッド、 21:ヘッド本体、 22:ロータリヘッド、 23:ホルダ、 24:圧縮スプリング、 25:吸着ノズル(保持部材)、 30:R軸回転装置、 40:Q軸回転装置、 50:昇降装置、 60:生産管理装置、 70,170,270:装着管理装置、 71,271:第一判定部、 72,272:第二判定部、 73:設定部、 74:指令部、 75プログラム生成部、 276:動作判定部、 277:通知部、 91:基板、 92:部品、 M1:制御プログラム、 D1:割り当て情報、 D2:同期指令情報、 D3:回転規制情報、 F1:設計情報、 F2:部品情報、 Ck:採取角度、 Ta:所定範囲、 Vc:仮想円、 Ai:干渉領域、 Nv:(ホルダ同士の)間隔