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特許7339910織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置
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  • 特許-織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置 図1
  • 特許-織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置 図2
  • 特許-織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置 図3
  • 特許-織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置 図4
  • 特許-織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置
(51)【国際特許分類】
   D06H 3/08 20060101AFI20230830BHJP
   D03D 49/62 20060101ALI20230830BHJP
   D03J 1/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
D06H3/08
D03D49/62 Z
D03J1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020051242
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147735
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390018153
【氏名又は名称】日本毛織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】霜降 良彰
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真栄雄
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539338(JP,A)
【文献】特開平6-102200(JP,A)
【文献】特開2000-290861(JP,A)
【文献】国際公開第2004/072342(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 3/00
D03D 49/00
D03J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機に配列されている多数本の経糸の検査方法を含む織物の製造方法であって、
前記経糸は先染糸を含み、
緯糸が配列される前の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データとし、
経糸見本の色調及び撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定し、許容範囲にあることを確認した後に織物を製造することを特徴とする織物の製造方法。
【請求項2】
前記経糸の検査は、綜絖と織前点との間で、かつ綜絖で上げている糸を綜絖のサイクル分検査する請求項1に記載の織物の製造方法。
【請求項3】
前記経糸は全本数検査する請求項1又は2に記載の織物の製造方法。
【請求項4】
前記経糸の色調と経糸の撚り方向は同一又は別のカメラで撮影する請求項1又は2に記載の織物の製造方法。
【請求項5】
前記経糸の色調は、経糸の幅の正中線のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の長さ方向の平均値を経糸見本と照合する請求項1~4のいずれかに記載の織物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の織物の製造に使用する経糸の検査方法であって、
緯糸が配列される前の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データとし、
見本の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定することを特徴とする経糸の検査方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の織物の製造に使用する経糸の検査装置であって、
緯糸が配列される前の経糸の色調及び経糸の撚り方向を撮影するためのカメラと、
前記カメラで撮影した画像データと見本の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定する手段を含むことを特徴とする経糸の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先染糸を経糸とした織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から織物の柄合わせは、織機上の織物をカメラで撮影し、得られた写真と見本とを比較観察することにより行われている。目視観察と見本とを照合して行う場合も多い。特許文献1には、緯糸の折り返し位置にマーク材を付設し、緯糸をCCDカメラで撮影し、マーク位置観察座標を検出して緯糸の位置ずれを計測することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-256942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来、先染糸を経糸とした織物を製造する際に、先染糸が設計通りに織機に配置されているかを検査する技術はなく、自動化することは困難であった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するため、経糸として先染糸が設計通りに織機に配置されているかを検査し、見本通りの織物を正確に製造できる織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の織物の製造方法は、織機に配列されている多数本の経糸の検査方法を含む織物の製造方法であって、前記経糸は先染糸を含み、緯糸が配列される前の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データとし、経糸見本の色調及び撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定し、許容範囲にあることを確認した後に織物を製造することを特徴とする。
【0007】
本発明の経糸の検査方法は、前記の織物の製造に使用する経糸の検査方法であって、緯糸が配列される前の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データとし、見本の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定することを特徴とする。
【0008】
本発明の経糸の検査装置は、前記の織物の製造に使用する経糸の検査装置であって、緯糸が配列される前の経糸の色調及び経糸の撚り方向を撮影するためのカメラと、前記カメラで撮影した画像データと見本の経糸の色調及び経糸の撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定する手段を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、経糸として先染糸が設計通りに織機に配置されているかを検査し、見本通りの織物を正確に製造できる織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一実施形態における織物製造工程を説明する模式的断面図である。
図2図2は同、織機の模式的斜視図である。
図3図3は同、織り上げ部の模式的斜視図である。
図4図4は同、経糸の模式的拡大図である。
図5図5は同、経糸の分析個所を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においては、経糸は先染糸を含む。先染糸は糸染めしたもの、綿(わた)染めしたもののいずれであってもよい。経糸は先染糸100%であってもよいし、染めていない白色の糸を含んでいてもよい。例えば先染糸と染めていない白色糸との双糸使いがある。また、織機上で織物にする直前の経糸の色調及び撚り方向を検査する。経糸の色調及び撚り方向は織柄となるものであり、これにより、見本通りの織柄と正確に一致させることができる。
【0012】
例えば、経糸の色調及び経糸の撚り方向をカメラで撮影して画像データとし、経糸見本の色調及び撚り方向を画像データと照合し、許容範囲内にあるかを判定し、許容範囲にあることを確認した後に織物を製造する。露光時間、照度などの撮影条件は見本と織機上の経糸を合わせる。経糸の色調は、経糸の幅の正中線のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の長さ方向の平均値を経糸見本と照合するのが好ましい。1本でも合わない経糸があれば、配列しなおす。
【0013】
経糸の撚り方向は、S方向の撚りかZ方向の撚りかを判定する。単糸の場合は、単糸のS方向の撚りかZ方向の撚りかを判定する。双糸又は3本以上の撚り糸の場合は、上撚りの撚り方向を判定する。撚り方向は1本でも合わない経糸があれば、配列しなおす。
【0014】
前記経糸の検査は、綜絖と織前点との間で、かつ綜絖で上げている糸を綜絖のサイクル分検査するのが好ましい。このようにして経糸の全本数を検査するのが好ましい。これにより、品位の高い織物の歩留まりを上げることができる。ここで経糸の全本数とは、織物に仕上がる経糸のことで、端をカットして除去する経糸は含まない。
【0015】
経糸の色調及び経糸の撚り方向を撮影するためのカメラは、織機の上の架台又は筬(おさ)バーの上の架台に設置できる。カメラは1台でも複数台でもよいが、迅速に検査するためには複数台設置するのが好ましい。このカメラは移動可能に設置し、経糸の全本数を検査する。経糸の色調と経糸の撚り方向をカメラで撮影する際に、照明はあったほうがよい。経糸の色調を撮影する際の照明はカメラの近くにあるのが好ましく、撚り方向を撮影する際の照明はカメラからある程度の角度を取り、例えば照明をカメラ中心部から60~80°の角度に配置するのが好ましい。
本発明で使用する織機は、シャトル織機、レピア織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機などいかなる織機でもよい。
【0016】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。図1は本発明の一実施形態における織物製造工程を説明する模式的断面図である。本発明で使用する織機1は、一例としてニードルレピア織物装置である。多数本の経糸3a,3bを織機1に掛け、バックロール2から綜絖(ヘルド)5a,5bを通し、上下に開口させ、開口部にレピアシャトル6により緯糸を打ち込む。次いで筬7の前方向への移動により緯糸が押し込まれ織物組織となる。矢印8は筬7の動きを示す。織り上がった織物9はシリンダーに巻き上げられる。4はワープラインである。この例においては、筬7の上の架台7aにカメラ10が固定されており、矢印Aのように経糸3a,3bの色調と撚り方向を撮影する。
【0017】
図2は同、織機の正面から見た模式的斜視図である。織機1の上部の架台11にカメラ10a,10b,10cをスライド可能に取り付け、経糸を撮影する。カメラは3台に限定されない。12は緯糸ボックスであり、ここから緯糸が供給される。13は端がカットされた除去部である。
【0018】
図3は同、織り上げ部の模式的斜視図である。この織物は綾織り組織の織物の例である。経糸14は織前点16aから緯糸15と交錯して織物16となる。本発明は、経糸14の色調及び経糸の撚り方向を検査する。
【0019】
図4は同、織機上の経糸14a,14,14cの模式的拡大図である。拡大写真により、撚り方向を判別できる。
図5は同、経糸の分析個所を示す説明図である。経糸の色調は、経糸の14a,14,14cの正中線の幅L1,L2,L3(0.01mm)のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の長さ方向の平均値を経糸見本と照合する。例えば下記式(数1)で算出する。
(数1)ΔRGB=[(R2-R12+(G2-G12+(B2-B121/2
(但し、R1,G1,B1は見本のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の色度、R2,G2,B2は検査対象の経糸のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の色度)
ΔRGBが例えば20以下を合格とし、これを超えると不合格とする。
別の算出方法としては、(R-R)/R,(G-G)/G,(B-B)/Bのそれぞれを算出し、この値が±10%以下を合格とし、これを超えると不合格とする。
【実施例
【0020】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)
(1)経糸
経糸として、メリノウール100%の紡績糸、52メートル番手(1/52と表示、192decitex)、撚り数610回/m(Z撚り)を2本ダブルツィスターで撚り数520回/m(S撚り)の撚りを掛けて双糸(2/52と表示、384decitex)とした。この双糸は常法により糸染めし、レッド色(R)の巻糸体と、グリーン色(G)の巻糸体と、ブルー色(B)の巻糸体とした。
(2)緯糸
緯糸は経糸と同じブルー色(B)を使用した。
(3)織物製造
今村機械社製、商品名“KR-Z”、ニードルレピア織物装置を用いて、経糸本数2070本、緯糸1本(緯糸はレピアシャトルにより打ち込み)、織物幅100cm、織物組織は2/1ツイルの織物を製造した。
(4)経糸検査
図3の経糸14を撮影するためのカメラを3台使用し、経糸の全本数を撮影し、撚り方向と色調を見本と照合した。
カメラは東芝テリー社製、BU130C、有効画素数1280×960、画素サイズ4.8×3.6mm、レンズはHOZAN ズームレンズ、光学倍率0.56~4倍(×0.8で視野6mm×4.5mm、4.7μm×4.7μm/pix.)、移動速度は左右方向20mm/sec(移動単位20μm/パルス)、最大40mm/sec、上下方向10mm/sec(移動単位10μm/パルス)、最大20mm/sec、照明はHOZAN L-711とした。
前記経糸の色調は、経糸の幅0.4mmの正中線のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の長さ方向100箇所の平均値を前記式(数1)で算出し、経糸見本と照合し、ΔRGBが 20以下を合格とし、これを超えると不合格とした。
検査時間は20分~30分程度であった。同じ検査を目視で検査すると熟練者でも10時間かかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の織物の製造方法、経糸の検査方法及び経糸の検査装置は、衣料用織物、工業用織物など、様々な織物製造に有用である。
【符号の説明】
【0023】
1 織機
2 バックロール
3a,3b 経糸
4 ワープライン
5a,5b 綜絖(ヘルド)
6 レピアシャトル
7 筬
7a 筬上の架台
9 織物
10,10a,10b,10c カメラ
11 上部架台
12 緯糸ボックス
13 織物端のカット除去部
14,14a,14,14c 経糸
15 緯糸
16 織物
16a 織前点
L1,L2,L3 正中線の幅
図1
図2
図3
図4
図5