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特許7339917ミキサドラム駆動装置及び電磁比例弁の較正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ミキサドラム駆動装置及び電磁比例弁の較正方法
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20230830BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20230830BHJP
   F16H 61/38 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B60P3/16 A
F15B11/02 Z
F16H61/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020064753
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160583
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】川島 茂
(72)【発明者】
【氏名】木本 恵介
(72)【発明者】
【氏名】市川 卓
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-94198(JP,A)
【文献】特開2001-106482(JP,A)
【文献】特開平10-267121(JP,A)
【文献】特開平1-268924(JP,A)
【文献】特開2012-91729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
F15B 11/02
F16H 61/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラムを回転駆動するミキサドラム駆動装置であって、
駆動源によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプから吐出された作動流体によって作動して前記ミキサドラムを回転駆動する2速式の流体圧モータと、
前記流体圧ポンプから前記流体圧モータへ供給される作動流体の流れを制御する電磁比例弁と、
前記ミキサドラムの回転数が目標回転数となるように前記流体圧モータ及び前記電磁比例弁の動作を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記流体圧モータを1速と2速とで切り換えて前記ミキサドラムを駆動すると共に前記流体圧モータの速度切換の際の前記電磁比例弁への通電量を変化させて、前記流体圧モータの速度切換の際の前記ミキサドラムの回転数の変動が予め定められる閾値以下となるような前記電磁比例弁への通電量を算出する自動調整処理を実行可能に構成され、
前記流体圧モータを1速と2速とで切り換えるのに伴い前記自動調整処理で算出された通電量によって前記電磁比例弁の動作を制御することを特徴とするミキサドラム駆動装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記電磁比例弁に対する基準の通電量となる基準値を記憶し、
前記自動調整処理において算出した補正値によって前記基準値を補正して前記電磁比例弁の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載のミキサドラム駆動装置。
【請求項3】
ミキサドラムを回転させる2速式の流体圧モータに供給される作動流体の流れを制御する電磁比例弁の較正方法であって、
前記ミキサドラムを目標回転数で回転させる指令値であるドラム回転指令の大きさに応じて前記流体圧モータを1速と2速とで切り換えて前記ミキサドラムを駆動すると共に前記流体圧モータの速度切換の際の前記電磁比例弁への通電量を変化させて、前記流体圧モータの速度切換の際の前記ミキサドラムの回転数の変動が予め定められる閾値以下となるような前記電磁比例弁への通電量を算出することを特徴とする電磁比例弁の較正方法。
【請求項4】
前記電磁比例弁への通電量と前記ドラム回転指令との対応関係を示す傾きを補正する補正係数を初期値に設定する第1ステップと、
前記ドラム回転指令を変化させながら前記ミキサドラムを回転させて、前記流体圧モータが1速と2速とで切り換わったときに前記ミキサドラムの回転数の変動が前記閾値以下となるか否かを判定する第2ステップと、
前記ミキサドラムの回転数の変動が前記閾値よりも大きい場合に前記補正係数を前記初期値よりも小さくなるように更新する第3ステップと、
前記第2ステップ及び前記第3ステップが1回以上繰り返されて前記ミキサドラムの回転数の変動が前記閾値以下になった場合の前記補正係数に基づいて前記通電量を較正する第4ステップと、を備えることを特徴とする請求項3に記載の電磁比例弁の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサドラム駆動装置及び電磁比例弁の較正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ミキサ車に回転自在に搭載されたドラムを回転駆動するドラム回転装置が記載されている。このドラム回転装置は、ミキサ車の走行用エンジンによって駆動される油圧ポンプと、当該油圧ポンプから送られる圧油によって回転される油圧モータと、油圧モータの出力軸に連結されたドラムと、を備える。また、油圧モータは、斜板の傾転角が二段階に切換可能とされた容量可変型の油圧モータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-91729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可変容量型の油圧モータによってミキサドラムを回転駆動するミキサドラム駆動装置では、エンジン負荷を低減するために、ミキサドラムの回転数は変化しないように一定に維持しつつ、油圧モータの容量を小さくするように切り換える制御が行われることがある。このような制御においては、油圧モータの容量の切り換えによってミキサドラムの回転数が変化しないように、油圧ポンプから油圧モータに供給する流量を油圧モータの容量の切り換えに伴って適切に制御することが求められる。
【0005】
しかしながら、油圧モータには個体差が生じるため、油圧モータの容量の切り換えに伴って油圧モータに供給すべき適切な流量が油圧モータによって異なる。このような油圧モータの個体差に起因して、従来では、油圧モータの容量の切り換えに伴うミキサドラムの回転数の変動を精度よく抑制することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラムの回転数の変動を精度よく抑制するミキサドラム駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ミキサ車に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラムを回転駆動するミキサドラム駆動装置であって、駆動源によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプと、流体圧ポンプから吐出された作動流体によって作動してミキサドラムを回転駆動する2速式の流体圧モータと、流体圧ポンプから流体圧モータへ供給される作動流体の流れを制御する電磁比例弁と、ミキサドラムの回転数が目標回転数となるように流体圧モータ及び電磁比例弁の動作を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、流体圧モータを1速と2速とで切り換えてミキサドラムを駆動すると共に流体圧モータの速度切換の際の電磁比例弁への通電量を変化させて、流体圧モータの速度切換の際のミキサドラムの回転数の変動が予め定められる閾値以下となるような電磁比例弁への通電量を算出する自動調整処理を実行可能に構成され、流体圧モータを1速と2速とで切り換えるのに伴い自動調整処理で算出された通電量によって電磁比例弁の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、コントローラが、電磁比例弁に対する基準の通電量となる基準値を記憶し、自動調整処理において算出した補正値によって基準値を補正して電磁比例弁の動作を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、電磁比例弁の較正方法であって、ミキサドラムを目標回転数で回転させる指令値であるドラム回転指令の大きさに応じて流体圧モータを1速と2速とで切り換えてミキサドラムを駆動すると共に流体圧モータの速度切換の際の電磁比例弁への通電量を変化させて、流体圧モータの速度切換の際のミキサドラムの回転数の変動が予め定められる閾値以下となるような電磁比例弁への通電量を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、電磁比例弁への通電量とドラム回転指令との対応関係を示す傾きを補正する補正係数を初期値に設定する第1ステップと、ドラム回転指令を変化させながらミキサドラムを回転させて、流体圧モータが1速と2速とで切り換わったときにミキサドラムの回転数の変動が前記閾値以下となるか否かを判定する第2ステップと、ミキサドラムの回転数の変動が閾値よりも大きい場合に補正係数を初期値よりも小さくなるように更新する第3ステップと、第2ステップ及び第3ステップが1回以上繰り返されてミキサドラムの回転数の変動が閾値以下になった場合の補正係数に基づいて通電量を較正する第4ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
これらの発明では、実際に流体圧モータが1速と2速とで切り換わるようにミキサドラムを駆動させる自動調整処理によって電磁比例弁への通電量が算出されるため、速度が切り換わった際の流体圧モータへの供給流量を流体圧モータの個体差に応じた流量とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ミキサドラムの回転数の変動が精度よく抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置を搭載するミキサ車の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置の構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置の目標回転数とソレノイドへの通電量との関係を示すグラフ図である。
図4】本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置の目標回転数とミキサドラムの実際の回転数との関係を示すグラフ図である。
図5】本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置による自動調整処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置100について説明する。
【0015】
まず、図1を参照して、ミキサドラム駆動装置100が搭載されるミキサ車10の全体構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、ミキサ車10は、運転室1と架台2とを備える車両である。ミキサ車10は、架台2に搭載されて生コンクリートを搭載可能なミキサドラム3と、ミキサドラム3を回転駆動するミキサドラム駆動装置100(以下、単に「駆動装置100」とも称する。)と、を備える。ミキサ車10は、ミキサドラム3内に生コンクリートを搭載して運搬するものである。
【0017】
ミキサドラム3は、架台2に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端に開口部(図示省略)を有する。ミキサドラム3は、その回転軸が車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。
【0018】
ミキサドラム3の開口部の後方上部には、ホッパ4が設けられる。開口部へ投入される生コンクリートは、ホッパ4によって開口部へと導かれる。ミキサドラム3の開口部の後方下部には、フローガイド5及びシュート6が設けられる。開口部から排出される生コンクリートは、フローガイド5によってシュート6に導かれ、シュート6によって所定の方向に排出される。
【0019】
ミキサドラム3は、図2に示すように、ミキサ車10に搭載された走行用のエンジン7を駆動源として回転駆動される。駆動装置100は、エンジン7の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム3を回転駆動するものである。
【0020】
エンジン7におけるクランクシャフトの回転運動は、エンジン7から動力を常時取り出すための動力取り出し機構8(PTO:Power take-off)と、動力取り出し機構8と駆動装置100とを連結するドライブシャフト(図示省略)と、によって駆動装置100に伝達される。
【0021】
駆動装置100では、作動流体として作動油が用いられる。なお、駆動装置100では、作動流体として作動油ではなく、他の非圧縮性流体を用いてもよい。
【0022】
駆動装置100は、エンジン7によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20によって駆動されてミキサドラム3を回転駆動する2速式の流体圧モータとしての油圧モータ30と、油圧ポンプ20から油圧モータ30に供給される作動油の流れを制御する電磁比例弁21と、油圧ポンプ20と油圧モータ30との動作を制御するコントローラ40と、を備える。駆動装置100は、ミキサドラム3を正逆転及び増減速させることが可能である。
【0023】
油圧ポンプ20は、動力取り出し機構8を介してエンジン7から常時取り出される動力によって回転駆動される。そのため、油圧ポンプ20の回転数は、車両の走行状態に伴うエンジン7の回転数の変化に、大きく影響を受ける。そこで、ミキサ車10では、エンジン7の回転数に応じてミキサドラム3が目標回転状態となるように、コントローラ40によって油圧モータ30の回転数を制御している。
【0024】
油圧ポンプ20は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ20から吐出された作動油は油圧モータ30に供給され、油圧モータ30が回転する。油圧モータ30の回転は、減速機9を介してミキサドラム3に伝達される。油圧ポンプ20は、ポンプ吐出圧が導かれるアクチュエータ(図示省略)の作動により、アクチュエータに導かれるポンプ吐出圧が上昇するほど、斜板を付勢する傾転スプリングに抗してポンプ吐出量が小さくなるように制御される。アクチュエータに導かれるポンプ吐出圧は、ロードセンシング弁(図示省略)によって調整される。ロードセンシング弁は、油圧ポンプ20の吐出圧と油圧モータ30に供給される圧力(負荷圧)との差圧が所定値となるようにアクチュエータに導かれるポンプ吐出圧を調整する。
【0025】
油圧ポンプ20によってミキサドラム3が正転運転されるときには、ミキサドラム3内の生コンクリートが攪拌される。一方、油圧ポンプ20によってミキサドラム3が逆転運転されるときには、ミキサドラム3内の生コンクリートが後端の開口部からフローガイド5及びシュート6を介して外部へと排出される。
【0026】
油圧モータ30は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ30は、油圧ポンプ20から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ30は、コントローラ40からの二速切換信号を受信して斜板(図示省略)の傾転角を調整する電磁弁(図示省略)を備える。油圧モータ30の容量は、電磁弁が切り換えられることによって、高速回転用の小容量(2速)と通常回転用の大容量(1速)との二段階に切り換えられる。
【0027】
油圧モータ30には、回転数検知器としての回転センサ30aが設けられる。回転センサ30aは、その出力軸(図示省略)の回転方向と出力軸の回転数を検知し、コントローラ40に回転方向信号と回転数信号とを出力する。
【0028】
油圧ポンプ20と油圧モータ30の間には、閉回路Lが設けられ、この閉回路Lを作動油が循環するようになっている。この閉回路L中に電磁比例弁21が設けられる。電磁比例弁21は、油圧ポンプ20が吐出した作動油をミキサドラム3を正回転させるように油圧モータ30に導く正転位置21Aと、油圧ポンプ20が吐出した作動油をミキサドラム3を逆回転させるように油圧モータ30に導く逆転位置21Bと、油圧ポンプ20から油圧モータ30への間の作動油の流れを遮断する中立位置21Cと、を備える。
【0029】
電磁比例弁21は、一対のソレノイド22a,22b及び一対のリターンスプリング23a,23bを有する。一対のソレノイド22a,22bは、コントローラ40から出力される制御信号によって作動する。制御信号とは、具体的には、電流値である。この電流値を調整することで、電磁比例弁21は、正転位置21A、中立位置21C、及び逆転位置21Bによりそのポジションが無段階に切り換えられる。
【0030】
電磁比例弁21は、一方のソレノイド22aへ通電されることで、その通電量に応じた開度で正転位置21Aに切り換えられる。これにより、油圧モータ30には、電磁比例弁21の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム3を正転方向に回転させるように供給される。
【0031】
反対に、電磁比例弁21は、他方のソレノイド22bへ通電されることで、その通電量に応じた開度で逆転位置21Bに切り換えられる。これにより、油圧モータ30には、電磁比例弁21の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム3を逆転方向に回転させるように供給される。なお、電磁比例弁21は、ソレノイド22a,22bへの通電量が大きいほど、開度が大きくなり多くの流量が油圧モータ30に導かれる。
【0032】
電磁比例弁21は、一対のソレノイド22a,22bへの通電が遮断されると、一対のリターンスプリング23a,23bの付勢力によって中立位置21Cに切り換えられる。中立位置21Cでは、油圧モータ30への作動油の供給が遮断されるため、油圧モータ30は回転駆動されない。
【0033】
コントローラ40は、駆動装置100の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)などを備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラムなどを予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって駆動装置100の制御が実現される。
【0034】
コントローラ40には、作業者が運転室1内のイグニッションスイッチ(図示省略)を操作することによってエンジン7が始動すると、イグニッション電源が入力される。これにより、コントローラ40が駆動される。
【0035】
運転室1内には、ミキサドラム3を操作するための操作装置50が設けられる。
【0036】
操作装置50には、ミキサドラム3の回転方向及び回転数を切り換えるためのつまみ型の操作スイッチ51と、表示器としてのモニタ52と、が設けられる。なお、操作スイッチ51とモニタ52とは、一体的に設けられてもよいし、別々に設けられていてもよい。
【0037】
作業者が操作スイッチ51を操作することに基づいて、操作装置50からコントローラ40に対して指令信号(ドラム回転指令)が出力される。コントローラ40は、その指令信号に基づいて、ミキサドラム3の目標回転状態、具体的には回転方向と回転数を決定する。つまり、ドラム回転指令とは、ミキサドラム3の目標の回転方向の指令と目標回転数の指令値とを含むものである。
【0038】
次に、駆動装置100の作用について説明する。
【0039】
まず、ミキサドラム3の回転動作について説明する。
【0040】
コントローラ40は、作業者による操作スイッチ51の操作に応じたドラム回転指令からミキサドラム3の目標回転数を演算すると共に、エンジン7の回転数を演算する。そして、コントローラ40は、演算したエンジン7の回転数に応じて、ミキサドラム3の回転方向と回転数とが目標回転状態となるように、油圧ポンプ20、油圧モータ30、及び電磁比例弁21の動作を制御する。
【0041】
具体的には、ミキサドラム3の目標回転数が定まることで、目標回転数と油圧モータ30の容積とから、ミキサドラム3を目標回転数で回転させるために必要な油圧モータ30への供給流量が定まる。また、油圧ポンプ20の吐出流量は、油圧ポンプ20の回転数及び油圧ポンプ20の容積によって定まる。コントローラ40は、油圧ポンプ20の吐出流量に基づいて、油圧モータ30への供給流量が所望の供給流量となるように電磁比例弁21のソレノイド22a,22bへの通電量を制御する。これにより、ミキサドラム3が、作業者によって設定される目標回転数で回転するように制御される。なお、油圧ポンプ20の回転数は、エンジン7からの動力を取り出す動力取り出し機構8のギヤ比に応じて定められるが、本実施形態ではエンジン回転数と略一致している。油圧ポンプ20の回転数は、ドライブシャフトの回転数を検出する回転センサ(図示省略)により検出され、コントローラ40に入力される。
【0042】
また、作業者の操作に応じて定まる目標回転数(ドラム回転指令S)とこれに対応する電磁比例弁21のソレノイド22a,22bへの通電量Iとの対応関係は、図3のグラフ図で示すように予め定められる。駆動装置100では、高回転時のエンジン負荷を低減するために、目標回転数が予め定められる変速回転数S1以上である場合には、油圧モータ30の電磁弁に2速切換信号を出力し、油圧モータ30が2速に切り換えられる。反対に、目標回転数が変速回転数S1以下となるようなドラム回転指令がコントローラ40に入力されると、コントローラ40は、油圧モータ30の電磁弁に1速切換信号を出力し、油圧モータ30を1速に切り換える。
【0043】
このようにして油圧モータ30が1速と2速とで切り換えられる際には、ミキサドラム3に衝撃が生じないように、ミキサドラム3の回転数が変動しないことが求められる。このため、油圧モータ30の速度が切り換えられる際には、油圧モータ30の容量の変化に応じて油圧モータ30への供給流量(つまり、電磁比例弁21の開度)が調整される。よって、図3に示すように、変速回転数S1を境にして、ソレノイド22a,22bへの通電量Iとドラム回転指令Sとの関係(直線の傾き及び切片)が変化している。
【0044】
ここで、油圧ポンプ20及び油圧モータ30には、製造誤差等に起因した個体差が生じる。このため、予め設定される目標回転数に応じたドラム回転指令Sとソレノイド22a,22bへの通電量Iとの関係に基づいてソレノイド22a,22bを制御しても、油圧ポンプ20や油圧モータ30に生じる個体差に起因して、ミキサドラム3が目標回転数に制御できないことがある。つまり、例えば、2速から1速に油圧モータ30が切り換わる際、図4中実線で示すように、ミキサドラム3の回転数が変化なく滑らかに切り換わらず、意図せずに上昇するおそれがある。
【0045】
ミキサドラム3から生コンクリートを排出する際にこのような意図しない速度上昇が生じると、生コンクリートを打設する型枠から生コンクリートがこぼれるなどの事態が生じるおそれがある。よって、作業者は大きな注意を払いながら作業をしなくてはならず、煩わしいものとなる。
【0046】
そこで、駆動装置100では、コントローラ40は、油圧ポンプ20及び油圧モータ30の個体差に応じた電磁比例弁21の較正(キャリブレーション)が実行可能である。より具体的には、コントローラ40は、油圧ポンプ20及び油圧モータ30の個体差に応じた電磁比例弁21への通電量Iを算出する自動調整処理を実行可能に構成される。以下、自動調整処理(電磁比例弁21の較正方法)について具体的に説明する。
【0047】
以下では、図4に実線で示すように、油圧モータ30を2速から1速に切り換える際にミキサドラム3の回転数が上昇する場合を例に説明する。なお、油圧モータ30を2速から1速に切り換える際にミキサドラム3の回転数が上昇する場合とは、油圧モータ30の2速時の1回転当たりの容量C2と1速時の1回転当たりの容量C1との比を容積比R(R=C2/C1)とした際、実際の油圧モータ30の容積比Rである実容積比Raが油圧モータ30の設計上の仕様に基づく理論容積比R0よりも大きい場合(Ra>R0)である。
【0048】
自動調整処理は、理論容積比R0に基づいて定められたドラム回転指令Sに対するソレノイド22bへの通電量Iの値を補正するための処理である。コントローラ40には、理論容積比R0であって、油圧モータ30が2速の状態におけるドラム回転指令Sとソレノイド22bへの通電量Iとの関係が予め記憶されている。具体的には、ドラム回転指令Sとソレノイド22bへの通電量Iとの関係は、一次式I=A×S+B(以下、この式を「関係式」と称する。)で表されるため、理論容積比R0に基づいて定められる関係式の傾きA0及び切片B0がコントローラ40に記憶される。自動調整処理では、油圧モータ30が2速から1速に切り換わった際のミキサドラム3の速度変化が予め定められる閾値以下となるように、理論容積比R0に基づく関係式を補正する。なお、この補正前の関係式(理論容積比R0に基づく関係式)が基準の関係であり、この関係式により算出される電流値が基準値に相当する。
【0049】
コントローラ40は、理論容積比R0から算出した関係式の傾きA0に乗算することで、2速から1速への変速時のミキサドラム3の速度変化を閾値以下とすることができる関係式となるような補正係数αを算出する。この補正係数αの算出は、油圧ポンプ20及び油圧モータ30を実際に稼働させることで算出する。これにより、油圧モータ30及び油圧ポンプ20の実容量に基づいて補正係数αを算出することができる。
【0050】
図5を参照して、自動調整処理を具体的に説明する。
【0051】
自動調整処理は、例えば、コントローラ40に予め記憶されるアプリケーションプログラムにより実行される。自動調整処理は、ミキサ車10のエンジン7が駆動し、作業者によって自動調整ボタン(図示省略)が操作されることで、実行される。具体的には、コントローラ40は、自動調整ボタンが作業者によって操作されると、図5に示す処理を実行する。本実施形態では、ミキサドラム3を逆転回転(排出回転)させ、回転数を徐々に低下させることで、補正係数αを算出する自動調整処理が実行される場合を例に説明する。なお、自動調整処理は、コントローラ40に予め記憶されるアプリケーションプログラムにより実行されるものに限らず、コントローラ40に接続されるコンピュータによって実行されるものでもよい。言い換えれば、ミキサドラム3の作動を制御するコンピュータと、自動調整処理を実行するコンピュータと、の複数のコンピュータによってコントローラ40が構成されていてもよい。
【0052】
図5に示すように、ステップS10では、補正係数αを初期値に設定(リセット)する。初期値は、任意に定めることが可能であるが、例えば、「1」に設定される。よって、補正係数αがリセットされた直後では、2速領域におけるドラム回転指令Sとソレノイド22bへの通電量Iとの関係式は、理論容積比R0に基づいたI=A0×S+B0となる。また、本実施形態では、ソレノイド22bの通電量を補正する、ドラム回転指令Sの範囲が定められている。具体的には、変速回転数S1から図3示す変速回転数S1よりも大きい制御回転数S2(S2>S1)の間の範囲が補正される対象となる。補正前の関係式と補正後の関係式とでは、制御回転数S2において電流値が一致するものとして設定される。このステップS10が、電磁比例弁への通電量とドラム回転指令との対応関係を示す傾きを補正する補正係数を初期値に設定する第1ステップに相当する。
【0053】
ここで、ドラム回転指令Sが大きくミキサドラム3を高い回転数で駆動する場合には、エンジン7がアイドリング状態からより高い回転数で回転するように制御される。これに対し、制御回転数S2は、エンジン7がアイドリング動作するようなドラム回転指令Sに設定されることが望ましい。つまり、制御回転数S2は、エンジン7がアイドリング動作中であって、かつ、油圧モータ30が2速で回転するようなドラム回転指令Sの範囲内で設定されるものであることが望ましい。これによれば、アイドリング動作中はエンジン7の回転数が比較的安定し、油圧ポンプ20の吐出量(回転数)もその分安定するため、電磁比例弁21の通電量の較正(自動調整処理)を安定して行いやすくなる。ただし、この構成に限定されるものではなく、制御回転数S2は、任意に設定することができる。
【0054】
ステップS11では、油圧モータ30が2速で回転駆動するように、変速回転数S1以上のドラム回転指令Sが出力される。これにより、油圧ポンプ20から2速状態の油圧モータ30に作動油が供給され、油圧モータ30によってミキサドラム3が回転駆動される。
【0055】
ステップS12では、前回出力したドラム回転指令値よりも低い値のドラム回転指令値を出力する。そして、ステップS13において、油圧モータ30が1速に切り換わったか否かが判定される。油圧モータ30が1速に切り換わっていなければ、再びステップS12を実行してさらに低い値のドラム回転指令値を出力し、ステップS13において油圧モータ30が1速に切り換わったかを判定する。このようにして油圧モータ30が2速から1速に切り換わるまでステップS12及びS13を繰り返し実行する。油圧モータ30が1速に切り換わると、ステップS13からステップS14に進む。
【0056】
ステップS14では、油圧モータ30が2速から1速に切り換わった際のミキサドラム3の回転数の変化(変動)が、予め定められる閾値以下であるかを判定する。ミキサドラム3の回転数の変化が閾値以下であるか否かの判定は、ミキサドラム3の回転数を実際に計測して判定してもよいし、例えば、油圧モータ30の回転センサ30aが計測する油圧モータ30の回転数に基づいて間接的に判定するものでもよい。ミキサドラム3の回転数の変化が閾値以下である場合には、ステップS15において調整完了の信号が生成され、関係式が補正係数αによって補正される(通電量Iが較正される)。その後、処理を終了する。ステップS11、S12,S13,及びS14が、全体として、ドラム回転指令を変化させながらミキサドラムを回転させて、流体圧モータが1速と2速とで切り換わったときにミキサドラムの回転数の変動が閾値以下となるか否かを判定する第2ステップに相当する。
【0057】
ミキサドラム3の回転数の変化が閾値よりも大きい場合には、ステップS16に進み、補正係数αの値を更新する。これにより、電磁比例弁21への通電量Iとドラム回転指令Sとの対応関係(関係式)が更新されることになる。本実施形態のように、2速から1速への切り換えによってミキサドラム3の回転数が上昇する場合には、補正係数αは、小さい値に更新される。つまり、補正係数αの初期値を1とした場合には、1より小さい補正係数αに更新される。どのような補正係数αに更新するかといった補正係数αの変化率(量)は、予めコントローラ40に記憶される。ステップS16が、ミキサドラムの回転数の変動が閾値よりも大きい場合に補正係数を初期値よりも小さくなるように更新する第3ステップに相当する。
【0058】
ステップS17では、更新された補正係数αが、予め定められる設定範囲内にあるかが判定される。補正係数αが設定範囲内にある場合には、ステップS11に戻り、再びステップS11~S17を実行する。このようにして、ステップS14において2速から1速への速度切換の際のミキサドラム3の回転数の変化が閾値以下と判定されるまで、補正係数αを更新しながらステップS11~S17の処理を繰り返し実行する。補正係数αが初期値の状態においてステップS14で「NO」と判定されれば、少なくともステップS11、S12,S13、S14、S16が1回は繰り返し実行されることになる。その後ステップS14において2速から1速への速度切換の際のミキサドラム3の回転数の変化が閾値以下と判定されると、上述のようにステップS15において現在の補正係数αに基づいて通電量Iが較正される。このように、ステップS15が、第2ステップ及び第3ステップが1回以上繰り返されてミキサドラムの回転数の変動が閾値以下になった場合の補正係数に基づいて通電量を較正する第4ステップに相当する。
【0059】
ステップS17において、補正係数αが設定範囲内にないと判定された場合には、ステップS18においてモニタ52上にエラー表示を行い、処理を終了する。これは、油圧ポンプ20と油圧モータ30の仕様上の制限から補正係数αの調整ではミキサドラム3の回転数の変化を閾値以下とできない(どのような補正係数αとしても閾値以下とできない)場合が想定されるため、このような場合に制御ルーチンを抜けるための処理である。よって、ステップS17における設定範囲とは、油圧モータ30と油圧ポンプ20の仕様上の制限に基づいて設定される範囲である。
【0060】
以上のようにして、実際に油圧モータ30を1速と2速とで切り換えて作動させることで補正係数αが算出されると、補正前の関係式と補正後の関係式とでは、制御回転数S2において電流値が一致するため、補正前の関係式の切片B0と算出された補正係数αとに基づいて、補正後の切片Bnが算出できる。このようにして算出された補正係数αと切片Bnとにより関係式が補正される。
【0061】
補正された関係式(I=α×A0×S+Bn)によって油圧ポンプ20の作動を制御することで、油圧モータ30及び油圧ポンプ20の個体差を踏まえた状態でミキサドラム3の回転を制御することができる。言い換えれば、本実施形態の自動調整処理によれば、油圧モータ30及び油圧ポンプ20を実際に作動させた結果に基づいて速度切換時のミキサドラム3の回転数の変化が閾値以下となるような関係式を算出するため、油圧モータ30及び油圧ポンプ20の個体差の影響を排除することができる。このような補正された関係式によって油圧ポンプ20を作動させることで、図4中破線で示すように、初期の補正式(理論容積比R0に基づく補正式)によって作動を制御する場合と比較して、油圧モータ30を2速から1速に切り換えた際のミキサドラム3の回転数の変動が抑制される。よって、作業者が煩わしさを感じることなく、ミキサドラム3を容易に操作することができる。
【0062】
なお、油圧ポンプ20及び油圧モータ30の個体差があまりない場合には、理論容積比R0に基づく関係式によって電磁比例弁21を制御することで、油圧モータ30の変速時のミキサドラム3の回転数の変化を閾値以下とすることができる。つまり、油圧ポンプ20及び油圧モータ30によっては、関係式を補正する必要がない場合もある。これに対し、本実施形態では、補正係数αの初期値を「1」としているため、初期の関係式は理論容積比R0に基づいたI=A0×S+B0となる。このため、本実施形態の自動調整処理では、補正がない場合には理論容積比R0に基づく関係式によって電磁比例弁21が制御されることとなり、補正が必要ない場合にも関係式を補正してしまうという事態は防止されている。
【0063】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0064】
駆動装置100では、自動調整処理において実際に油圧モータ30及び油圧ポンプ20を稼働させることで補正係数αを算出し、当該補正係数αによって電磁比例弁21のソレノイド22a,22bへの通電量I(具体的には関係式)を補正する。これにより、速度が切り換わった際の油圧モータ30への供給流量を油圧モータ30の個体差に応じた流量とすることができ、ミキサドラム3の回転数の変動を精度よく抑制することができる。
【0065】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0066】
上記実施形態では、自動調整処理は、排出回転させながら油圧モータ30を2速から1速に切り換えて補正係数αを算出した。これに対し、補正係数αを算出するために、自動調整処理では、撹拌回転させるものでもよいし、1速から2速に切り換えるものでもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、油圧モータ30が2速の状態における通電量I(関係式)を補正するものである。これに対し、油圧モータ30が1速の状態における通電量Iを補正するものでもよいし、1速及び2速の両方の状態における通電量Iを補正するものでもよい。また、上記実施形態では、油圧モータ30が2速から1速に切り換わった際にミキサドラム3が加速する場合を例に説明したが、補正係数αの設定の仕方を変更するだけで、減速する場合であっても同様に調整が可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、ドラム回転指令Sと電磁比例弁21のソレノイド22a,22bへの通電量Iとの関係式によってソレノイド22a,22bへの通電量Iを制御し、自動調整処理では当該関係式を補正するものとして説明した。これに対し、油圧モータ30等の個体差に応じたソレノイド22a,22bへの通電量Iが算出されるかぎり、ソレノイド22a,22bの制御及び自動調整処理は上記実施形態で説明した方法に限定されるものではない。例えば、上述のような関係式ではなく、油圧モータ30が1速から2速へ切り換えられるのに伴い、ソレノイド22a,22bへの通電量Iを容積比(R=C2/C1)の逆数倍するようにして、ソレノイド22a,22bを制御することも可能である。つまり、容積比Rが1/3の場合、1速から2速に切り換わる際には通電量を3倍とするような制御も可能である。このようにしてソレノイド22a,22bが制御される場合には、理論容積比R0に乗算するような補正係数αを自動調整処理で算出すればよい。この場合であっても、1速と2速とで油圧モータ30が切り換わる際のソレノイド22a,22bへの通電量Iが補正されることとなるため、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
また、上記実施形態では、自動調整処理において、補正係数αの初期値の設定(ステップS10)、ドラム回転指令Sの出力(ステップS11)、ステップS11よりも低いドラム回転指令Sの出力(ステップS12)、補正係数αの更新(ステップS14)において利用される補正係数α又はドラム回転指令Sの値は、すべてコントローラ40が予め規定された条件によって自動で設定するものである。これに対し、自動調整処理で設定される補正係数α及びドラム回転指令Sの値は、その一部又は全部が、作業者によって手動で設定されるものでもよい。例えば、自動調整処理を実行する際に補正係数α及びドラム回転指令Sの値がモニタ52上で入力可能に構成されてもよい。つまり、自動調整処理では、少なくとも油圧モータ30の速度切換の際にミキサドラム3の回転数の変化が予め定められる閾値以下であるかを判定するものであれば、利用される補正係数α及びドラム回転指令Sの具体的な値は、コントローラ40により自動で設定されるか、作業者によって手動で設定されるかは問わない。また、当該閾値も作業者によって手動で設定可能なものでもよい。
【0070】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0071】
ミキサ車10に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラム3を回転駆動するミキサドラム駆動装置100は、駆動源(エンジン7)によって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20から吐出された作動油によって作動してミキサドラム3を回転駆動する2速式の油圧モータ30と、油圧ポンプ20から油圧モータ30へ供給される作動油の流れを制御する電磁比例弁21と、ミキサドラム3の回転数が目標回転数となるように油圧ポンプ20、油圧モータ30、及び電磁比例弁21の動作を制御するコントローラ40と、を備え、コントローラ40は、油圧モータ30を1速と2速とで切り換えてミキサドラム3を駆動すると共に油圧モータ30の速度切換の際の電磁比例弁21への通電量Iを変化させて、油圧モータ30の速度切換の際のミキサドラム3の回転数の変化が予め定められる閾値以下となるような電磁比例弁21への通電量Iを算出する自動調整処理を実行可能に構成され、油圧モータ30を1速と2速とで切り換えるのに伴い自動調整処理で算出された通電量Iによって電磁比例弁21の動作を制御する。
【0072】
ミキサドラム駆動装置100では、コントローラ40は、電磁比例弁21に対する基準の通電量Iとなる基準値を記憶し、自動調整処理において算出した補正値によって基準値を補正して電磁比例弁21の動作を制御する。
【0073】
また、電磁比例弁の較正方法は、ミキサドラム3を目標回転数で回転させる指令値であるドラム回転指令Sの大きさに応じて油圧モータ30を1速と2速とで切り換えてミキサドラム3を駆動すると共に油圧モータ30の速度切換の際の電磁比例弁21への通電量を変化させて、油圧モータ30の速度切換の際のミキサドラム3の回転数の変化が予め定められる閾値以下となるような電磁比例弁21への通電量を算出する。
【0074】
また、電磁比例弁の較正方法は、電磁比例弁21への通電量Iとドラム回転指令Sとの対応関係を示す傾きA0を補正する補正係数αを初期値に設定する第1ステップ(ステップS10)と、ドラム回転指令Sを変化させながらミキサドラム3を回転させて、油圧モータ30が1速と2速とで切り換わったときにミキサドラム3の回転数の変動が閾値以下となるか否かを判定する第2ステップ(ステップS11、S12、S13、S14)と、ミキサドラム3の回転数の変動が閾値よりも大きい場合に補正係数αを初期値よりも小さくなるように更新する第3ステップ(ステップS16)と、第2ステップ及び第3ステップが1回以上繰り返されてミキサドラム3の回転数の変動が閾値以下になった場合の補正係数αに基づいて通電量Iを較正する第4ステップ(ステップS15)と、を備える。
【0075】
これらの構成では、実際に油圧モータ30が1速と2速とで切り換わるようにミキサドラム3を駆動させる自動調整処理によって電磁比例弁21への通電量Iが算出されるため、速度が切り換わった際の油圧モータ30への供給流量を油圧モータ30の個体差に応じた流量とすることができる。したがって、ミキサドラム3の回転数の変動が精度よく抑制される。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0077】
100…ミキサドラム駆動装置、3…ミキサドラム、7…エンジン(駆動源)、10…ミキサ車、20…油圧ポンプ(流体圧ポンプ)、21…電磁比例弁、22a,22b…ソレノイド、30…油圧モータ(流体圧モータ)、40…コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5