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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230830BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20230830BHJP
   H01F 27/22 20060101ALI20230830BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
H01F30/10 S
H01F30/10 A
H01F30/10 C
H01F27/22
H01F27/02 150
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020099462
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193860
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】市橋 克弘
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157756(JP,A)
【文献】特開2011-077328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H01F 30/10
H01F 27/22
H01F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板(30)と、前記回路基板に設けられたコイル(21,22a)と、前記回路基板を保持するとともに前記回路基板を放熱する放熱部材(40)と、を備える電力変換装置(10)において、
前記回路基板の少なくとも一方の面には、前記回路基板の熱伝導率に比較して熱伝導率が高い伝熱部材(22b)が当接しており、
前記伝熱部材は、絶縁部材(63)を介して前記放熱部材に熱的に接続されており、前記コイルからの熱を前記放熱部材に伝達する伝熱経路とされており、
前記回路基板には、前記回路基板の垂直方向において前記コイルの少なくとも一部と重複するように、前記コイルのコア(50)が設置されており、
前記放熱部材は、前記回路基板に対向配置されているとともに、前記コアを避けて、前記垂直方向において前記放熱部材から前記回路基板の側へ突出する突出部(44,45)を有し、
前記伝熱部材は、前記垂直方向において前記コア及び前記コイルと重複する位置から前記突出部に重複する位置に達するまで前記回路基板に沿って延びるように形成されているとともに、前記放熱部材の前記突出部に熱的に接続されており、
前記コアには、前記垂直方向に沿って貫通する貫通孔が形成されており、又は外縁において外側に開口する凹部(55)が前記垂直方向に沿って形成されており、もしくは前記貫通孔及び前記凹部が形成されており、
前記突出部は、前記貫通孔及び前記凹部のうち少なくともどちらか一方を介して前記回路基板の側に突出している、電力変換装置。
【請求項2】
回路基板(30)と、前記回路基板に設けられたコイル(21,22a)と、前記回路基板を保持するとともに前記回路基板を放熱する放熱部材(40)と、を備える電力変換装置(10)において、
前記回路基板の少なくとも一方の面には、前記回路基板の熱伝導率に比較して熱伝導率が高い伝熱部材(22b)が当接しており、
前記伝熱部材は、絶縁部材(63)を介して前記放熱部材に熱的に接続されており、前記コイルからの熱を前記放熱部材に伝達する伝熱経路とされており、
前記回路基板には、前記回路基板の垂直方向において前記コイルの少なくとも一部と重複するように、前記コイルのコア(50)が設置されており、
前記放熱部材は、前記回路基板に対向配置されているとともに、前記コアを避けて、前記垂直方向において前記放熱部材から前記回路基板の側へ突出する突出部(44,45)を有し、
前記伝熱部材は、前記垂直方向において前記コア及び前記コイルと重複する位置から前記突出部に重複する位置に達するまで前記回路基板に沿って延びるように形成されているとともに、前記放熱部材の前記突出部に熱的に接続されており、
前記放熱部材は、前記回路基板の垂直方向両側に配置されており、
前記垂直方向において、一方の前記放熱部材から突出する突出部は、前記回路基板を挟んで、他方の前記放熱部材から突出する突出部と対向している、電力変換装置。
【請求項3】
回路基板(30)と、前記回路基板に設けられたコイル(21,22a)と、前記回路基板を保持するとともに前記回路基板を放熱する放熱部材(40)と、を備える電力変換装置(10)において、
前記回路基板の少なくとも一方の面には、前記回路基板の熱伝導率に比較して熱伝導率が高い伝熱部材(22b)が当接しており、
前記伝熱部材は、絶縁部材(63)を介して前記放熱部材に熱的に接続されており、前記コイルからの熱を前記放熱部材に伝達する伝熱経路とされており、
前記回路基板には、前記回路基板の垂直方向において前記コイルの少なくとも一部と重複するように、前記コイルのコア(50)が設置されており、
前記放熱部材は、前記回路基板に対向配置されているとともに、前記コアを避けて、前記垂直方向において前記放熱部材から前記回路基板の側へ突出する突出部(44,45)を有し、
前記伝熱部材は、前記垂直方向において前記コア及び前記コイルと重複する位置から前記突出部に重複する位置に達するまで前記回路基板に沿って延びるように形成されているとともに、前記放熱部材の前記突出部に熱的に接続されており、
前記回路基板には、複数のコイが配置されており、
前記突出部は、隣り合うコイルの間に配置され、隣り合うコイルのいずれについても前記垂直方向において重複し、前記絶縁部材を介して当接している、電力変換装置。
【請求項4】
前記コイルは、複数のコイル部材(23a~23g,24a~24h)から構成されており、
複数の前記コイル部材のうち、1又は複数のコイル部材は、前記コアに重複するように配置され、
前記伝熱部材は、前記垂直方向において前記コアに重複する前記コイル部材と重なる位置から前記突出部に重なる位置に達するまで、前記回路基板に沿って前記伝熱経路が形成されるように構成されている請求項1~3のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記伝熱部材は、前記回路基板に沿って直線状の前記伝熱経路が形成されるように構成されている請求項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記コイルの一部は、前記垂直方向において前記コアを介さずに、前記突出部と重複している請求項~5のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記伝熱部材は、電流が流れる電流経路を兼ねている請求項1~のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記回路基板は、複数層重ねられて構成されており、
前記伝熱部材は、前記回路基板の最外層よりも外側、もしくは前記回路基板のいずれかの層間に配置されている請求項1~のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、DC/DCコンバータ等の電力変換装置は、スイッチング素子、トランス、リアクトル等により構成されている。これらのトランス、リアクトルなどのコイルは、適切に放熱をする必要がある。このため、例えば、特許文献1に記載の発明では、コイル基板の両側に放熱部材を配置し、コイル基板の両側から熱を逃がすように構成し、放熱性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-186596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイルの巻き数は、要求される仕様により変化する。コアに対する巻き数が多くなると、コイルの一部と、放熱部材との間の距離が長くなり、放熱しにくくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放熱性を向上させることができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、回路基板と、前記回路基板に設けられたコイルと、前記回路基板を保持するとともに前記回路基板を放熱する放熱部材と、を備える電力変換装置において、前記回路基板の少なくとも一方の面には、前記回路基板の熱伝導率に比較して熱伝導率が高い伝熱部材が当接しており、前記伝熱部材は、絶縁部材を介して前記放熱部材に熱的に接続されており、前記コイルからの熱を前記放熱部材に伝達する伝熱経路とされている。
【0007】
これにより、コイルと放熱部材との間の距離が離れていても、伝熱部材によりコイルからの熱が放熱部材に伝達する。これにより、放熱部材との間の距離が離れているコイルの放熱を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力変換装置の回路図。
図2】磁気部品の斜視断面図。
図3】磁気部品の縦断面図。
図4】磁気部品の拡大縦断面図。
図5】(a)は、磁気部品の平面図、(b)は、下コアの側面図。
図6】磁気部品の平面図。
図7】別例の磁気部品の平面図。
図8】別例の磁気部品の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、「電力変換装置」を絶縁型DC-DCコンバータに具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、各実施形態及び別例で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0010】
図1に、電力変換装置としての絶縁型DC-DCコンバータ10の回路構成の一部を示す。図1に示すように、絶縁型DC-DCコンバータ10は、1次側コイル21及び2次側コイル22a,22bを有するトランス20を備える。1次側コイル21は、1次側回路11に設けられ、1次側回路11には、図示しない電源から直流電流を入力し、交流電流に変換して出力する1次側インバータ12や、1次側リアクトルとしてのコイル13等が設けられている。
【0011】
また、2次側コイル22a,22bは、2次側回路14に設けられている。2次側回路14は、交流電流を入力し、直流電流に変換して図示しない負荷に出力する2次側インバータ15a,15bや、2次側リアクトルとしてのコイル16a,16b等が設けられている。なお、2次側回路14では、2次側コイル22a,22bなどがそれぞれ1対設けられている。
【0012】
次に、図2図5に基づいて、トランス20の具体的構造について説明する。図2に、トランス20等を含む磁気部品の斜視断面図を示し、図3に、磁気部品の縦断面図を示し、図4に、磁気部品の拡大断面図を示し、図5(a),図6に、磁気部品の平面図を示す。
【0013】
図3に示すように、トランス20を構成する1次側コイル21、2次側コイル22a,22bは、回路基板30に設けられている。図2に示すように、この回路基板30は、筐体40に保持されている。また、回路基板30の中心には、回路基板30を貫くようにコア50が配置されている。
【0014】
筐体40は、図2に示すように、箱状に形成されている。筐体40は、アルミ合金などの熱伝導率が優れた材料で形成されており、放熱性に優れている。筐体40は、平板の底板41と、底板41の外縁において立設し、外縁を囲む側壁42と、底板41に対向配置される天板43を有する。この実施形態では、筐体40(及び筐体40を構成する底板41又は天板43)が、放熱部材に相当する。
【0015】
筐体40の内部には、1次側コイル21及び2次側コイル22a,22bに対するコア50が収容されている。コア50は、フェライトで構成されており、上下に分割されている。下方(底板41の側)に配置されるコアを、下コア51と示し、上方(天板43の側)に配置されるコアを、上コア52と示す。下コア51は、上コア52とほぼ上下対称に構成されているため、下コア51を中心に説明し、上コア52の説明は省略する。なお、以降では、図2に示すように、筐体40の上下方向をZ軸方向と示し、筐体40の長手方向をX軸方向と示し、筐体40の短手方向をY軸方向と示す。
【0016】
図3に示すように、下コア51は、基部53と、基部53の中央からZ軸方向に突出する中央部54と、を有している。基部53は、図3図5(a)に示すように、正方形の略4角柱状に形成されている。そして、基部53の各側面の略中央には、それぞれ外側に開口する凹部55が形成されている。この凹部55は、断面が台形状に形成されており、Z軸方向(図5(a)において紙面の垂直方向)に沿って基部53の端から端まで形成されている。逆言えば、基部53の各角部には、外側に突出する凸部が形成されているともいえる。中央部54は、円柱状に形成されており、Z軸方向に沿って基部53から突出するように形成されている。
【0017】
また、図5(a)及び図5(b)に示すように、基部53の各角部には、基部53からZ軸方向に突出する磁脚53aがそれぞれ設けられている。この磁脚53aは、Z軸方向において、中央部54と同じ程度の高さを有するように構成されている。なお、磁脚53aは、後述する回路基板30の設置場所を避けるように設けられている。
【0018】
そして、上コア52と下コア51は、その中央部54及び磁脚53a同士が当接するように、上コア52と下コア51とを重ね合わせて配置される。その際、基部53の角や、凹部55が対応するように上コア52と下コア51とが重ね合わせられる。これにより、コア50では、コア50の外側に開口する凹部55がZ軸方向に沿って設けられていることとなる。また、図3に示すように、コア50には、中央部54の周面と基部53の平面とで囲まれたくびれ部56が形成されることとなる。
【0019】
なお、下コア51は、放熱シート61を介して、底板41に密接するように配置されている。上コア52も同様に、放熱シート62を介して、天板43に密接するように配置されている。なお、放熱シート61,62は、絶縁性を有している。また、放熱シート61,62は、熱伝導グリスに変更してもよい。
【0020】
そして、図2に示すように、筐体40には、底板41からZ軸方向に沿って天板43の側に突出する突出部としての第1突出部44が複数(本実施形態では4つ)形成されている。4つ第1突出部44は、図3図5(a)に示すように、コア50の4辺を取り囲むように配置されている。
【0021】
より詳しくは、図5(a)に示すように、4つの第1突出部44は、それぞれ基部53の凹部55に対応するように配置されている。すなわち、第1突出部44は、その断面形状が台形である4角柱状に形成されている。そして、第1突出部44は、第1突出部44の上底(短いほうの底辺)が凹部55の底部と向かい合い、かつ、斜辺がそれぞれ凹部55の斜辺(台形の脚)と向かい合うように、設けられている。その際、第1突出部44が凹部55内に配置されるようになっている。
【0022】
図3に示すように、Z軸方向において、第1突出部44の高さは、下コア51の基部53の上面の高さとほぼ同じとなっている。つまり、第1突出部44の高さは、基部53と放熱シート61とを合わせた高さとほぼ同じとなっている。
【0023】
また、天板43からZ軸方向に沿って底板41の側に突出する突出部としての第2突出部45が複数(4つ)設けられている。第2突出部45は、Z軸方向における高さ寸法以外、第1突出部44とほぼ同様に設けられている。すなわち、各第2突出部45は、それぞれ第1突出部44に対応するように上下対称に設けられている。
【0024】
そして、図6に示すように、第1突出部44及び下コア51の基部53の上には、回路基板30が、絶縁シート63を介して、載置される。この回路基板30は、その垂直方向がZ軸方向と平行となるように、載置されている。また、回路基板30は、中心に、貫通孔31が設けられており、当該貫通孔31内に下コア51の基部53から突出する中央部54が挿通される。言い換えると、回路基板30は、中央部54を囲むように環状に形成されているともいえる。
【0025】
この回路基板30は、積層基板であり、図4に示すように、回路基板30の内部には、1次側コイル21と、2次側コイル22a等が設けられている。より詳しくは、回路基板30は、複数の絶縁層及び複数の配線層等から構成されている。複数の配線層のうち2層の配線層には、1次側コイル21が形成されている。また、複数の配線層のうち2層の配線層には、2次側コイル22aが形成されている。なお、配線層と配線層の間には、絶縁層が形成されている。また、最外層は、絶縁層となっている。
【0026】
1次側コイル21は、図4に示すように、複数(本実施形態では7つ)の1次側のコイル部材23a~23gを有する。各コイル部材23a~23gは、図5(a)や図6において破線で示すように、それぞれ円環状に形成されている。各コイル部材23a~23gは、幅広の帯状に形成されている。
【0027】
コイル部材23a~23dは、同じ配線層に設けられており、コア50の中央部54を中心として同心円状となるように、中央部54を囲むように配置されている。同様に、コイル部材23e~23gは、同じ配線層に設けられており、コア50の中央部54を中心として同心円状となるように、中央部54を囲むように配置されている。なお、コイル部材23a~23dが設けられる配線層と、コイル部材23e~23gが設けられる配線層と、は異なっている。
【0028】
また、径方向において、隣り合うコイル部材23a~23gは、所定距離離れて配置される。そして、径方向おいて、隣り合うコイル部材23a~23gの間には基板(絶縁材料)が配置されている。また、本実施形態において、1次側コイル21の巻き数を調整するため、Z軸方向において上側(天板43の側)であって、外側に配置されるコイル部材23gの幅寸法は、他のコイル部材23a~23fよりも広くなっている。なお、各コイル部材23a~23gは、スルーホールや配線などで互いに接続されて1次側コイル21を構成している。
【0029】
2次側コイル22aも同様に、図4に示すように、複数(本実施形態では8つ)の2次側のコイル部材24a~24hを有する。各コイル部材24a~24hは、それぞれ円環状に形成されている。また、各コイル部材24a~24hは、幅広の帯状に形成されている。
【0030】
コイル部材24a~24dは、同じ配線層に設けられており、コア50の中央部54を中心として同心円状となるように、中央部54を囲むように配置されている。同様に、コイル部材24e~24hは、同じ配線層に設けられており、コア50の中央部54を中心として同心円状となるように、中央部54を囲むように配置されている。なお、コイル部材24a~24dが設けられる配線層と、コイル部材24e~24hが設けられる配線層と、は異なっている。
【0031】
また、径方向において、隣り合うコイル部材24a~24hは、所定距離離れて配置される。そして、径方向おいて、隣り合うコイル部材24a~24hの間には基板(絶縁材料)が配置されている。なお、各コイル部材24a~24hは、スルーホールや配線などで互いに接続されて2次側コイル22aを構成している。
【0032】
そして、2次側コイル22aを構成する各コイル部材24a~24hは、それぞれ1次側コイル21を構成する各コイル部材23a~23gに対してZ軸方向において、絶縁層を挟んで対向するように、配置されている。
【0033】
また、回路基板30の下面には、幅広の円環状に構成された2次側コイル22bが固定されている。2次側コイル22bは、中央部54を中心として配置されている。この回路基板30は、この2次側コイル22bが下面に固定された状態で、絶縁シート63を介して第1突出部44及び下コア51の基部53の上に配置されている。
【0034】
そして、回路基板30の上面は、絶縁シート64により覆われており、絶縁シート64を介して、第2突出部45に当接するようになっている。すなわち、回路基板30は、絶縁シート63,64を介して、第1突出部44及び第2突出部45により、Z軸方向の両側から挟み込まれるようにして固定されている。
【0035】
また、上コア52の基部53と、回路基板30との間には、環状の絶縁リング65が設けられている。絶縁リング65のZ軸方向における厚さ寸法は、上コア52の基部53と回路基板30との間が埋まるように、設定されている。
【0036】
ところで、1次側コイル21及び2次側コイル22aは、電流が流れると、発熱するため、適切に放熱する必要がある。しかしながら、図3図5に示すように、基本的に、1次側コイル21を構成するコイル部材23a~23gは、下コア51と上コア52に挟まれており、放熱しにくい構造となっている。
【0037】
そこで、下コア51及び上コア52の各辺に凹部55を設け、コア50の間に配置されるコイル部材23a~23g,24a~24hのうち一部が、下コア51と上コア52に挟まれないようにしている。より詳しく説明すると、コイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hの内径は、突出部44,45の上底(径方向中央側の辺)よりも外側に位置するように、大きく構成されている。これにより、凹部55内に配置されたコイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hの一部は、コア50が介在することなく、Z軸方向において突出部44,45に重複し、突出部44,45に絶縁シート63,64を介して当接するように構成されている。
【0038】
コイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hは、環状に構成されている。このため、一部でも突出部44,45に重複していれば、コイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hに沿って突出部44,45に適切に放熱させることが可能となる。
【0039】
一方、コイル部材23a~23g,24a~24hのうち、他のコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fは、周方向のいずれにおいても下コア51と上コア52の間に挟まれている。つまり、これらのコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fの外径は、凹部55よりも内側となるように設定されている。したがって、図3に示すように、これらのコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fは、周方向いずれにおいても、コア50に形成されているくぼみ部56に入り込んでいる。
【0040】
このため、通常であれば、これらのコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fは、突出部44,45とその一部が重複するコイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hに比較して、放熱しにくいこととなる。
【0041】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、2次側コイル22bを、絶縁シート63を介して第1突出部44に熱的に接続させる一方で、コイル21,22aからの熱を突出部44,45に伝達する伝熱経路としている。すなわち、2次側コイル22bは、回路基板30に比較して熱伝導率が高く、また、基部53の熱伝導率と比較して第1突出部44の熱伝導率が高いため、2次側コイル22bを熱のバイパス経路として構成している。
【0042】
より詳しくは、2次側コイル22bは、Z軸方向においてコア50及びコイル21,22aと重複する位置から第1突出部44に重複する位置に達するまで回路基板30に沿って延びるように形成されている。より具体的には、2次側コイル22bは、コア50の内側に配置されたコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fに重複する位置から第1突出部44と重複する位置に達するまで回路基板30に沿って直線状の伝熱経路が形成されるように構成されている。つまり、2次側コイル22bの径方向における幅寸法は、Z軸方向において、コイル部材23a,24a,23e,24eに重複する位置から、第1突出部44と重複する位置に達するまでの幅寸法に相当する。
【0043】
これにより、図4において矢印に示すように、コア50の内側に配置されたコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fから生じた熱は、2次側コイル22bを介して第1突出部44まで伝達される。
【0044】
以上のように構成した第1実施形態は、以下に示す有利な効果を有する。
【0045】
回路基板30の下面には、回路基板30の熱伝導率に比較して熱伝導率が高い伝熱部材としての2次側コイル22bが当接している。そして、2次側コイル22bは、絶縁シート63を介して第1突出部44に熱的に接続されており、コイル21,22aからの熱を第1突出部44を介して筐体40に伝達する伝熱経路とされている。これにより、コイル21,22aと筐体40(又は突出部44,45)との間の距離が離れていても、2次側コイル22bによりコイル21,22aからの熱が速やかに筐体40(又は突出部44,45)に伝達することができる。これにより、筐体40(又は突出部44,45)との間の距離が離れているコイル21,22aの放熱を好適に行うことができる。
【0046】
回路基板30には、Z軸方向においてコイル21,22aの少なくとも一部と重複するように、コア50が設置されている。そして、筐体40の底板41(又は天板43)は、回路基板30に対向配置されているとともに、コア50を避けて、Z軸方向において底板41(又は天板43)から回路基板30の側へ突出する突出部44,45を有する。そして、突出部44,45は回路基板30に絶縁シート63,64を介して当接している。これにより、回路基板30から突出部44,45を介して筐体40に効率よく放熱させることができる。
【0047】
また、Z軸方向においてコア50と重複するコイル21,22aの一部は、筐体40の底板41(又は天板43)から隠れてしまう。これにより、通常、Z軸方向においてコア50と重複するコイル21,22aの一部は、筐体40までの距離が遠くなり、放熱しにくい。
【0048】
そこで、2次側コイル22bを、Z軸方向においてコア50及びコイル21,22aと重複する位置から突出部44,45に重複する位置まで回路基板30に沿って延びるように幅広に形成した。これにより、コア50と重複し、放熱しにくいコイル21,22aの一部から効果的に放熱させることができる。
【0049】
コア50の内側に配置されるコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fは、コア50によって筐体40の底板41(又は天板43)から完全に隠れてしまう。このため、通常、筐体40までの距離が遠くなり、また、回路基板30を介して放熱する構成上、放熱しにくいといえる。
【0050】
そこで、上記実施形態では、2次側コイル22bを、これらのコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fと重なる位置から突出部44,45に重なる位置に達するまで回路基板30に沿って直線状の伝熱経路が形成されるように構成した。これにより、これらのコイル部材23a,23b,23e,23f,24a,24b,24e,24fであっても、2次側コイル22b及び第1突出部44を介して、効率的に放熱させることができる。
【0051】
コア50には、その外縁において外側に開口する凹部55がZ軸方向に沿って形成されている。そして、突出部44,45は、凹部55を介して回路基板30の側に突出し、絶縁シート63,64を介して当接している。これにより、コア50を小さくしなくても、もしくは2次側コイル22bを大きくしなくても、突出部44,45を2次側コイル22bに当接させることができ、全体として磁気部品を小型化することができる。
【0052】
下コア51及び上コア52の各辺に凹部55を設け、コア50の間に配置されるコイル部材23a~23g,24a~24hのうち一部が、下コア51と上コア52に挟まれないようにしている。より詳しく説明すると、コイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hの内径は、突出部44,45の上底(径方向中央側の辺)よりも大きく構成されている。これにより、凹部55内に配置されたコイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hの一部は、コア50が介在することなく、Z軸方向において突出部44,45に重複し、突出部44,45に絶縁シート63,64を介して当接するように構成されている。このため、コイル部材23c,23d,23g,24c,24d,24g,24hから突出部44,45に対して効率的に放熱させることが可能となる。
【0053】
Z軸方向において、回路基板30の両側に、筐体40の底板41及び天板43がそれぞれ対向するように配置されている。そして、Z軸方向において、底板41から突出する第1突出部44は、回路基板30を挟んで、天板43から突出する第2突出部45と対向している。これにより、回路基板30の両側から突出部44,45を当接させることができる。したがって、一方の面のみから放熱させる場合に比較して、両面から効率的に放熱させることができる。また、回路基板30を突出部44,45により好適に保持することができる。
【0054】
コイル21,22a,22bのほとんどを下コア51と上コア52の間に配置している。これにより、トランス20を効率よく作動させることができる。それとともに、磁気部品を小型化することが可能となる。
【0055】
(他の実施形態)
上記絶縁型DC-DCコンバータ10は、以下のようにその構成を変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態において、図7図8に示すように、回路基板130には、複数のコイル21,22a,22b,13,16aが配置されていてもよい。そして、突出部44,45は、隣り合うコイル(例えば、コイル部材23gとリアクトルを構成するコイル13,16a)の間に配置され、隣り合うコイルのいずれについてもZ軸方向において重複し、絶縁シート63を介して当接していてもよい。これにより、隣り合う複数のコイルから突出部44,45を介して放熱させることができる。このため、コイルごとに突出部44,45を形成する場合に比較して、突出部44,45の数を減らすことができ、小型化できる。
【0057】
・上記実施形態では、電流が流れる電流経路となる2次側コイル22bを伝熱部材として兼用したが、2次側コイル22bである必要はなく、バスバーなどであってもよいし、電流が流れない部材に変更してもよい。なお、変更する部材を構成する材料は、回路基板30よりも熱伝導率が高いことが望ましい。
【0058】
・上記実施形態において、伝熱部材の形状は、任意に変更してもよい。例えば、直線状の板状に形成されていてもよい。
【0059】
・上記実施形態において、回路基板30は、積層基板でなくてもよく、単なるプリント基板であってもよい。
【0060】
・上記実施形態において、2次側コイル22bは、回路基板30の表面(最外層よりも外側)に形成されていたが、回路基板30のいずれかの層間に配置されていてもよい。
【0061】
・上記実施形態において、トランス20の代わりにリアクトルに変更してもよい。また、上記実施形態において、コイル21,22a,22bの巻き方や巻き数は任意に変更してもよい。また、コイル21,22a,22bの形状を変更してもよい。
【0062】
・上記実施形態において、コア50に凹部55を設けなくてもよい。また、コア50に凹部55の代わりに、又は凹部55とともにZ軸方向に貫通する貫通孔を設けてもよい。そして、当該貫通孔に筐体40からの突出部を挿通し、回路基板30に当接させてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、回路基板30の両側に、それぞれ突出部44,45を当接させていたが、いずれか一方のみでもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…絶縁型DC-DCコンバータ(電力変換装置)、21…1次側コイル、22a…2次側コイル、22b…2次側コイル、40…筐体(放熱部材)、41…底板(放熱部材)、43…天板(放熱部材)、61,62…放熱シート、63,64…絶縁シート。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8