(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】空気分離装置、酸素および/または窒素の製造方法
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
F25J3/04 101
F25J3/04 102
F25J3/04 103
F25J3/04 A
(21)【出願番号】P 2020133288
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502450631
【氏名又は名称】エア・ウォーター・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 賢晃
(72)【発明者】
【氏名】橋本 保
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 斉
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096645(JP,A)
【文献】特開2016-080297(JP,A)
【文献】特開平11-118350(JP,A)
【文献】特開平10-325673(JP,A)
【文献】特開昭55-162581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する空気分離装置であって、
主熱交換器と、
前記主熱交換器へ前記原料空気ガスを供給する空気供給路と、
前記空気供給路に、前記原料空気ガスを圧縮する原料空気圧縮機と、前記原料空気圧縮機で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔と、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、および該空気供給路内におけるガスの流量を測定する流量計と、
前記主熱交換器で熱交換された圧縮空気を少なくとも酸素と窒素に分離する高圧精留塔および低圧精留塔を有する精留塔と、
前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する酸素回収路および/または前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する窒素回収路と、を有し、
前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記原料空気圧縮機で圧縮する前記原料空気ガスの流量を制御する手段、前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記酸素回収路における酸素の流量を制御する手段、および前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記窒素回収路における窒素の流量を制御する手段よりなる群から選ばれる少なくとも一つの手段を備え
ており、
前記空気分離装置にて製造した液体酸素を貯留する酸素貯槽と、
前記酸素貯槽に貯留した液体酸素の蒸発ガスを前記空気供給路へ供給する酸素供給路と、を有することを特徴とする空気分離装置。
【請求項2】
前記組成計は、酸素濃度計である請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項3】
原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する方法であって、
主熱交換器と、
前記主熱交換器へ前記原料空気ガスを供給する空気供給路と、
前記空気供給路に、前記原料空気ガスを圧縮する原料空気圧縮機と、前記原料空気圧縮機で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔と、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、および該空気供給路内におけるガスの流量を測定する流量計と、
前記主熱交換器で熱交換された圧縮空気を少なくとも酸素と窒素に分離する高圧精留塔および低圧精留塔を有する精留塔と、
前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する酸素回収路および/または前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する窒素回収路と、を有する空気分離装置を用い、
前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する前記原料空気ガスの流量、前記酸素回収路における酸素の流量、および前記窒素回収路における窒素の流量よりなる群から選ばれる少なくとも一つの流量を制御
し、
前記原料空気ガス中の酸素の物質量と酸素回収路から回収される酸素の物質量との比が一定となるように、
前記組成計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量の目標値、および/または前記酸素回収路における酸素の流量の目標値を設定し、
前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量、および/または前記酸素回収路における酸素の流量を制御することを特徴とする酸素および/または窒素の製造方法。
【請求項4】
原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する方法であって、
主熱交換器と、
前記主熱交換器へ前記原料空気ガスを供給する空気供給路と、
前記空気供給路に、前記原料空気ガスを圧縮する原料空気圧縮機と、前記原料空気圧縮機で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔と、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、および該空気供給路内におけるガスの流量を測定する流量計と、
前記主熱交換器で熱交換された圧縮空気を少なくとも酸素と窒素に分離する高圧精留塔および低圧精留塔を有する精留塔と、
前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する酸素回収路および/または前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する窒素回収路と、を有する空気分離装置を用い、
前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する前記原料空気ガスの流量、前記酸素回収路における酸素の流量、および前記窒素回収路における窒素の流量よりなる群から選ばれる少なくとも一つの流量を制御
し、
前記原料空気ガス中の窒素の物質量と窒素回収路から回収される窒素の物質量との比が一定となるように、
前記組成計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量の目標値、および/または前記窒素回収路における窒素の流量の目標値を設定し、
前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量、および/または前記窒素回収路における窒素の流量を制御することを特徴とする酸素および/または窒素の製造方法。
【請求項5】
前記組成計は、酸素濃度計である請求項
3または4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する空気分離装置;原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する方法;に関する。
【背景技術】
【0002】
空気分離装置は、原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造できる装置であり、大気中の空気を原料空気ガスとして取り込み、原料空気圧縮機で圧縮した後、圧縮空気ガスに含まれる水や二酸化炭素などを吸着塔で除去してから主熱交換器および精留塔を用いて分離する。また、空気分離装置では、原料空気ガスに含まれるアルゴンを分離し、アルゴンを併せて製造することもある。こうした空気分離装置は、製鉄所、発電所、銅精錬、化学、電子産業などの分野における工場に設置されている。例えば、製鉄所や火力発電所では、窒素が保安用(防爆用)に使用されており、酸素は酸素濃度を上げることによって燃焼効率を向上させる酸素富化燃焼に使用されている。
【0003】
大気中の空気の組成は、通常一定と考えられるが、例えば、特許文献1、2には、近隣や同じ敷地内に、製鉄、化学及び発電プラントなど大量にCO2を放出する設備がある場合は、風向きなどにより空気中のCO2が設計値を大幅に上回ることが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-113593号公報
【文献】特開2014-113594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大規模な工場では、空気分離装置を複数台設置して運転していることが多く、他の空気分離装置から大気中に放出された酸素や窒素などが風向きによって原料空気ガスとして取り込まれることがあった。また、空気分離装置の設置台数が1台でも、製造した酸素や窒素が製品として消費されず、余剰ガスとして大気中に放出される場合や、前処理設備(例えば、吸着塔)の吸着剤の再生ガスが放出される場合には、これらのガスが風向きによって原料空気ガスとして取り込まれることがあった。余剰ガスとして放出された酸素や窒素が原料空気ガスとして取り込まれると、原料空気ガスの組成が大幅に変動することがあった。また、前処理設備(例えば、吸着塔)の吸着剤の再生ガスは、窒素リッチな場合が多いため、こうした再生ガスが原料空気ガスとして取り込まれると原料空気ガスの組成が大幅に変動することがあった。このように原料空気ガスの組成が大幅に変動すると、製品ガスの純度が変動することがあった。
【0006】
こうした余剰ガスや再生ガスが原料空気ガスとして取り込まれないようにするには、空気分離装置の設計時であれば、原料空気ガスの吸い込み口を再生ガスや余剰ガス等の放出口から離した位置に設計したり、空気分離装置の配置やガスの放出方向を工夫できる可能性がある。しかし、設備の設置区画はあらかじめ決まっていることが多いため、空気分離装置の配置を設計する自由度は低く、原料空気ガスの吸い込み口に配管を接続し、再生ガスや余剰ガス等の放出口から遠ざけたり、放出口配管を延伸させたりして、配管・ラック等の余分な設備を追加して放出ガスを取り込まないようにして対処することが多い。
【0007】
また、原料空気ガスの組成が変動することが予め分かっていれば、原料空気ガスの吸い込み口の設置位置を遠くにしたり、吸い込み口や放出口の方向を変更できるが、実際には、風向きを完全に把握することは困難であり、事前に原料空気ガスの組成が変動することは通常わからず、装置を試運転したり、実運転する段階になって、発覚することが多い。
【0008】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する空気分離装置であって、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素および/または窒素の純度変動を抑制できる空気分離装置、および該空気分離装置を用いた酸素および/または窒素の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成は以下のとおりである。
[1] 原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する空気分離装置であって、主熱交換器と、前記主熱交換器へ前記原料空気ガスを供給する空気供給路と、前記空気供給路に、前記原料空気ガスを圧縮する原料空気圧縮機と、前記原料空気圧縮機で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔と、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、および該空気供給路内におけるガスの流量を測定する流量計と、前記主熱交換器で熱交換された圧縮空気を少なくとも酸素と窒素に分離する高圧精留塔および低圧精留塔を有する精留塔と、前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する酸素回収路および/または前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する窒素回収路と、を有し、前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記原料空気圧縮機で圧縮する前記原料空気ガスの流量を制御する手段、前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記酸素回収路における酸素の流量を制御する手段、および前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記窒素回収路における窒素の流量を制御する手段よりなる群から選ばれる少なくとも一つの手段を備える空気分離装置。
[2] 前記組成計は、酸素濃度計である[1]に記載の空気分離装置。
[3] 前記空気分離装置にて製造した液体酸素を貯留する酸素貯槽と、前記酸素貯槽に貯留した液体酸素の蒸発ガスを前記空気供給路へ供給する酸素供給路と、を有する[1]または[2]に記載の空気分離装置。
[4] 原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する方法であって、主熱交換器と、前記主熱交換器へ前記原料空気ガスを供給する空気供給路と、前記空気供給路に、前記原料空気ガスを圧縮する原料空気圧縮機と、前記原料空気圧縮機で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔と、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、および該空気供給路内におけるガスの流量を測定する流量計と、前記主熱交換器で熱交換された圧縮空気を少なくとも酸素と窒素に分離する高圧精留塔および低圧精留塔を有する精留塔と、前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する酸素回収路および/または前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する窒素回収路と、を有する空気分離装置を用い、前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する前記原料空気ガスの流量、前記酸素回収路における酸素の流量、および前記窒素回収路における窒素の流量よりなる群から選ばれる少なくとも一つの流量を制御する酸素および/または窒素の製造方法。
[5] 前記組成計は、酸素濃度計である[4]に記載の製造方法。
[6] 前記原料空気ガス中の酸素の物質量と酸素回収路から回収される酸素の物質量との比が一定となるように、前記組成計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量の目標値、および/または前記酸素回収路における酸素の流量の目標値を設定し、前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量、および/または前記酸素回収路における酸素の流量を制御する[4]または[5]に記載の製造方法。
[7] 前記原料空気ガス中の窒素の物質量と窒素回収路から回収される窒素の物質量との比が一定となるように、前記組成計で測定されたデータに基づき、前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量の目標値、および/または前記窒素回収路における窒素の流量の目標値を設定し、前記原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量、および/または前記窒素回収路における窒素の流量を制御する[4]または[5]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気分離装置は、主熱交換器へ原料空気ガスを供給する空気供給路の経路上に、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、該空気供給経路内におけるガスの流量を測定する流量計を設け、当該組成計および流量計で測定されたデータに基づいて原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量を制御する手段、酸素回収路における酸素の流量を制御する手段、および窒素回収路における窒素の流量を制御する手段よりなる群から選ばれる少なくとも一つの手段を備えているため、本発明の空気分離装置を用いれば、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素および/または窒素の純度変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態2に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態3に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態4に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る空気分離装置の変更例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
空気分離装置に設けられた吸着塔で少なくとも水および二酸化炭素を除去した後のガスの組成は、通常、理論値として、窒素を78.11体積%、酸素を20.96体積%、アルゴンを0.93体積%含有していると考えて精留塔やアルゴン塔などの蒸留塔を設計している。従って原料空気ガスに含まれる酸素が多く、窒素が少ない場合は、空気分離装置の精留塔において酸素分が多くなるため窒素回収路から回収される窒素の純度が悪化してしまう。一方、原料空気ガスに含まれる酸素が少なく、窒素が多い場合は、酸素回収路から回収される酸素の純度が悪化してしまう。
【0013】
そこで、本発明者らは、既存の空気分離装置に対して簡単に後付けでき、今後設計する空気分離装置に対しても大幅な設計変更をすることなく、原料空気ガスの組成が変動しても空気分離装置を安定に運転でき、酸素回収路から回収される酸素、および/または窒素回収路から回収される窒素の純度変動を抑制できる装置および方法を提供するために鋭意検討を重ね、本発明を完成した。以下、下記実施の形態に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合する範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合があるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る空気分離装置は、原料空気ガスを分離して酸素および/または窒素を製造する空気分離装置であって、主熱交換器と、前記主熱交換器へ前記原料空気ガスを供給する空気供給路と、を有し、前記空気供給路の経路上に、前記原料空気ガスを圧縮する原料空気圧縮機と、前記原料空気圧縮機で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔と、該空気供給路内におけるガスの組成を測定する組成計と、を有し、更に、該空気供給路内におけるガスの流量を測定する流量計と、前記主熱交換器で熱交換された圧縮空気を少なくとも酸素と窒素に分離する高圧精留塔および低圧精留塔を有する精留塔と、前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する酸素回収路および/または前記低圧精留塔と前記主熱交換器とを接続する窒素回収路と、を有し、前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記原料空気圧縮機で圧縮する前記原料空気ガスの流量を制御する手段、前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記酸素回収路における酸素の流量を制御する手段、および前記組成計および前記流量計で測定されたデータに基づいて前記窒素回収路における窒素の流量を制御する手段よりなる群から選ばれる少なくとも一つの手段を備えることを特徴とする。
【0015】
以下、本発明の実施の形態1に係る空気分離装置について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図であり、
図1に示した空気分離装置は、原料空気圧縮機1、吸着塔2、主熱交換器3、および精留塔4を有している。精留塔4は、高圧精留塔4aおよび低圧精留塔4bを有しており、高圧精留塔4aには、主凝縮器5が備えられている。
【0016】
主熱交換器3には、原料空気ガスを供給する空気供給路11が接続されており、空気供給路11には、原料空気圧縮機1と、該原料空気圧縮機1で圧縮された圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去する吸着塔2が備えられている。
【0017】
主熱交換器3に接続されている空気供給路11は、高圧精留塔4aまで延伸しており、高圧精留塔4aに接続されている。また、空気供給路11は、主熱交換器3の内部で分岐し、空気供給路11の分岐路11aは低圧精留塔4bに接続されている。空気供給路11の分岐路11aには、タービン6が設けられている。
【0018】
低圧精留塔4bと主熱交換器3は、酸素回収路12で接続されており、酸素回収路12は、主熱交換器3より下流側に延伸している。酸素回収路12には、主熱交換器3より下流側に酸素流量調整弁42が設けられており、該酸素流量調整弁42と主熱交換器3との間に酸素流量計32が備えられている。なお、酸素流量調整弁42と酸素流量計32は、主熱交換器3より下流側に設けられていればよく、酸素流量計32と酸素流量調整弁42を配置する順番は特に限定されず、例えば、酸素流量計32と主熱交換器3との間に酸素流量調整弁42を設けてもよい。
【0019】
低圧精留塔4bと主熱交換器3は、窒素回収路13で接続されており、窒素回収路13は、主熱交換器3より下流側に延伸している。窒素回収路13には、主熱交換器3より下流側に窒素流量調整弁43が設けられており、該窒素流量調整弁43と主熱交換器3との間に窒素流量計33が備えられている。なお、窒素流量調整弁43と窒素流量計33は、主熱交換器3より下流側に設けられていればよく、窒素流量計33と窒素流量調整弁43を配置する順番は特に限定されず、例えば、窒素流量計33と主熱交換器3との間に窒素流量調整弁43を設けてもよい。
【0020】
なお、
図1では、酸素回収路12および窒素回収路13の両方を設けた形態を示したが、空気分離装置で酸素を製造する場合は、少なくとも酸素回収路12を有していればよく、窒素回収路13を有さなくてもよい。また、空気分離装置で窒素を製造する場合は、少なくとも窒素回収路13を有していればよく、酸素回収路12を有さなくてもよい。
【0021】
次に、
図1に示した空気分離装置を用いて原料空気ガスを分離し、酸素および/または窒素を製造する方法について説明する。
【0022】
原料空気ガスは、原料空気圧縮機1で高圧精留に必要な圧力(例えば、300~800kPa)に昇圧圧縮される。原料空気圧縮機1で昇圧圧縮された原料空気ガスを、以下、圧縮空気ガスということがある。原料空気圧縮機1で圧縮された圧縮空気ガスは、吸着塔2で少なくとも水と二酸化炭素が除去され、空気供給路11を通して主熱交換器3へ供給される。
【0023】
図1では、吸着塔2として、吸着塔2aと吸着塔2bの二塔設けており、吸着塔2a、2bには、圧縮空気ガスから少なくとも水および二酸化炭素を除去できる吸着剤が充填されている。吸着剤としては、例えば、活性アルミナやゼオライトなどが挙げられる。吸着塔2は、一方の吸着塔を使用している間に、他方の吸着塔を再生し、交互に切り替えることにより連続運転できる。なお、
図1では、吸着塔2を二塔設けた構成例を示したが、吸着塔2の数は3つ以上でもよい。
【0024】
主熱交換器3へ供給された圧縮空気ガスは、主熱交換器3で後述する酸素回収路12から回収される酸素や窒素回収路13から回収される窒素との間で熱交換され、冷却される。主熱交換器3で熱交換された圧縮空気の一部は、空気供給路11を通して高圧精留塔4aへ供給され、圧縮空気の一部は、空気供給路11の分岐路11aを通して低圧精留塔4bへ供給される。高圧精留塔4aおよび低圧精留塔4bでは、蒸留により圧縮空気が少なくとも酸素と窒素に分離される。
【0025】
精留塔4で分離した酸素は、酸素回収路12を通して主熱交換器3へ供給され、上述した圧縮空気ガスとの間で熱交換され、昇温されて酸素として回収される。精留塔4で分離した窒素は、窒素回収路13を通して主熱交換器3へ供給され、上述した圧縮空気ガスとの間で熱交換され、昇温されて窒素として回収される。
【0026】
本発明の実施の形態1に係る空気分離装置は、空気供給路11に、該空気供給路11内におけるガスの組成を測定する組成計21と、該空気供給路11内におけるガスの流量を測定する流量計31と、を有している。組成計21は、
図1では、空気供給路11における吸着塔2と主熱交換器3との間に設けられており、流量計31は、
図1では、組成計21と吸着塔2との間に設けられている。空気供給路11内におけるガスは、吸着塔2で水や二酸化炭素が除去されているため、吸着塔2の二次側に組成計21を設けることによって、空気供給路11内のガスに含まれる酸素や窒素の量をより正確に計測できる。また、原料空気圧縮機1の二次側は圧力が高いため、原料空気圧縮機1の二次側に組成計21を設けることによって、組成計21にガスを流すための圧力を確保しやすくなる。また、吸着塔2の二次側に組成計21を設けたうえで、吸着塔2の二次側に流量計31を設けることによって、主熱交換器3へ供給される圧縮空気に含まれる酸素の量および/または窒素の量をより正確に測定できる。
【0027】
また、
図1では、組成計21および流量計31で測定されたデータを入力し、演算する演算部7が設けられており、演算部7で得られた結果に基づいて原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御している。具体的には、酸素回収路12における酸素の純度を安定化させたい場合に、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量が減少したことが検知されたときには、原料空気圧縮機1に取り込む原料空気ガスの流量を増大させればよい。逆に、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量が増加したことが検知されたときには、原料空気圧縮機1に取り込む原料空気ガスの流量を減少させればよい。窒素回収路13における窒素の純度を安定化させたい場合に、空気供給路11内におけるガスに含まれる窒素量が減少したことが検知されたときには、原料空気圧縮機1に取り込む原料空気ガスの流量を増大させればよい。逆に、空気供給路11内におけるガスに含まれる窒素量が増加したことが検知されたときには、原料空気圧縮機1に取り込む原料空気ガスの流量を減少させればよい。
【0028】
上記のとおり、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御することによって、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素および/または窒素の純度変動を抑えることができる。また、本発明によれば、放出された酸素や窒素が原料空気ガスとして原料空気圧縮機に取り込まれないように、酸素や窒素の放出口と、原料空気ガスの取り込み口を離すなどの配置制約が不要となるため、敷地が狭くても空気分離装置を建設できる。また、酸素や窒素の放出口を離すために設けていたラックや配管が不要となるため、初期費用を削減できる。また、組成計および流量計であれば、既存の空気分離装置に対しても簡単に後付けできる。
【0029】
演算部7における演算は、例えば、酸素回収路12における酸素純度を一定にする場合、下記式に基づいて行なうことが好ましい。これにより、原料空気ガス中の酸素量が常に一定になるように制御できる。
【0030】
演算設定値(原料空気量)=定格原料空気量+定格原料空気量×(20.96-空気中酸素濃度)÷100×(100÷空気中酸素濃度)
【0031】
なお、上記計算式中の定数20.96は、設計時に想定した空気中の酸素濃度を意味している。
【0032】
組成計21としては、例えば、酸素濃度計を備えることが好ましい。原料空気ガス中の酸素濃度が低くなった場合は、原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスを増量して酸素の不足分を補えばよい。一方、原料空気ガス中の酸素濃度が高くなった場合は、原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスを減量して酸素の余剰分を削減し、精留塔におけるバランスを回復させればよい。これにより、精留塔における物質収支のバランスを保つことができるため、空気分離装置の安定運転が可能となる。
【0033】
なお、窒素回収路13における窒素純度を一定にしたい場合は、原料空気ガス中の酸素濃度を、酸素濃度計を用いて測定し、計算により原料空気ガス中の窒素濃度を算出すればよい。これにより、原料空気ガス量や窒素回収路13から回収される窒素量を制御できるため、窒素回収路13から回収される窒素の純度を安定させることもできる。
【0034】
酸素濃度計としては、例えば、ジルコニア式の酸素分析計を設置することが好ましい。
【0035】
演算部7における他の演算方法としては、原料空気ガス中の酸素濃度にしきい値を設け、そのしきい値を超えるたびに原料空気圧縮機で圧縮する原料空気ガスの流量制御の設定値を変更する方法がある。具体的には、空気分離装置の処理スペックが、例えば、空気量が100,000Nm3/h程度の場合は、酸素濃度計が規定値以下(例えば、20.5%以下)となれば、原料空気流量制御の設定値を+α(SV=SV+αNm3/h)とすればよい。一方、酸素濃度計が規定値以上(例えば、21.5%以上)となれば、原料空気流量制御の設定値を-α(SV=SV-αNm3/h)とすればよい。なお、αの値は実際に運転した実績に基づいて調整すればよい。
【0036】
組成計21は、主熱交換器3の上流側であればどこに設置してもかまわない。
図1のように吸着塔2の出口付近に設けてもよい。即ち、吸着塔2の出口付近には、通常、吸着塔2に備えられた吸着剤の破過を検知するために二酸化炭素分析計や水分分析計が設けられているため、この分析計のラインに組成計21を接続すればよい。
【0037】
流量計31についても、主熱交換器3の上流側であればどこに設置してもかまわない。
図1では、演算部7を設けた構成例を示したが、演算部7を設けず、例えば、原料空気圧縮機1に原料空気ガスの流量を制御する手段を設けておき、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御してもよい。
【0038】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る空気分離装置について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態2に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図であり、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。
【0039】
図2では、
図1に示した構成例に対し、空気供給路11に設ける組成計21と流量計31の配置位置を変更している。即ち、
図2では、組成計21を原料空気圧縮機1の上流側(一次側)に配置し、流量計31を原料空気圧縮機1と吸着塔2との間に配置している。このように組成計21を原料空気圧縮機1の一次側に配置することによって、原料空気圧縮機1の動力に影響を与える大気中の水分や、大気中の不純物(例えば二酸化炭素、亜酸化窒素、炭化水素など)を同じサンプルラインから測定できる。また、原料空気圧縮機1として遠心式圧縮機を用いる場合、サージング防止のための流量計を原料空気圧縮機1の二次側に設置することにより、流量計を兼用できる。
【0040】
図2では、流量計31で測定されたデータに基づいて原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御している。
【0041】
また、
図2では、組成計21および流量計31で測定されたデータを演算部7に入力し、演算部7で得られた結果を酸素流量計32に入力し、酸素流量調整弁42を制御して酸素回収路12における酸素の流量を制御している。具体的には、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量が減少したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42を絞って酸素回収路12における酸素の流量を減少させればよい。一方、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量が増加したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42を増開して酸素回収路12における酸素の流量を増大させればよい。組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素回収路12における酸素の流量を制御することによって、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素の純度変動を抑えることができる。
【0042】
図2では、演算部7を設けた構成例を示したが、演算部7を設けず、例えば、酸素流量調整弁42に酸素の流量を制御する手段を設けておき、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素流量調整弁42を制御して酸素回収路12における酸素の流量を調整してもよい。
【0043】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る空気分離装置について
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施の形態3に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図であり、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。
【0044】
図3では、
図1に示した構成例に対し、空気供給路11に設ける組成計21と流量計31の配置位置を変更している。即ち、
図3では、組成計21を原料空気圧縮機1と吸着塔2の間に配置し、流量計31を吸着塔2と主熱交換器3との間に配置している。このように組成計21を原料空気圧縮機1の二次側に配置することによって、大気中の不純物(例えば、二酸化炭素、亜酸化窒素、炭化水素など)を検出することもでき、また、原料空気圧縮機1の二次側の圧力の高い空気が測定対象となるのでサンプルガスを取得しやすくなる。また、流量計31を吸着塔2の二次側に配置することによって、吸着塔2により水分等が除去されているため流量をより正確に測定できる。
【0045】
図3では、流量計31で測定されたデータに基づいて原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御している。
【0046】
また、
図3では、組成計21および流量計31で測定されたデータを演算部7に入力し、演算部7で得られた結果を酸素流量計32または窒素流量計33に入力し、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を制御して酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を制御している。具体的には、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量または窒素量が減少したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を絞って酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を減少させればよい。一方、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量または窒素量が増加したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を増開して酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を増大させればよい。組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を制御することによって、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素または窒素の純度変動を抑えることができる。
【0047】
なお、
図3に示した構成例では、演算部7で得られた結果を酸素流量計32または窒素流量計33に入力した場合について説明したが、演算部7で得られた結果を酸素流量計32および窒素流量計33の両方に入力し、酸素流量調整弁42および窒素流量調整弁43の両方を制御して酸素回収路12における酸素の流量および窒素回収路13における窒素の流量を制御してもよい。
【0048】
図3では、演算部7を設けた構成例を示したが、演算部7を設けず、例えば、酸素流量調整弁42に酸素の流量を制御する手段を設け、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素流量調整弁42を制御して酸素回収路12における酸素の流量を調整してもよいし、窒素流量調整弁43に窒素の流量を制御する手段を設け、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて窒素流量調整弁43を制御して窒素回収路13における窒素の流量を調整してもよい。また、酸素流量調整弁42に酸素の流量を制御する手段を設け、窒素流量調整弁43に窒素の流量を制御する手段を設けてそれぞれを制御してもよい。
【0049】
なお、
図3においても、
図1(実施の形態1)と同様、酸素回収路12における酸素の純度や窒素回収路13における窒素の純度を安定させるために、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御してもよい。具体的には、
図3において、演算部7から流量計31に向かう点線矢印によって、原料空気ガスの流量を制御することができる。例えば、原料空気ガス中の酸素濃度が減少すれば、原料空気ガスの流量制御の目標値を増加させ、原料空気ガス中の酸素濃度が増加すれば、原料空気ガスの流量制御の目標値を減少させればよい。原料空気ガスの流量を制御して酸素回収路12における酸素の純度や窒素回収路13における窒素の純度を安定化する場合、酸素流量制御または窒素流量制御の目標値は演算部7の結果により変更せず、一定値としてもよい。
【0050】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る空気分離装置について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施の形態4に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図であり、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。
【0051】
図4に示した空気分離装置は、
図1に示した空気分離装置に対し、組成計21および流量計31で測定されたデータを演算部7に入力し、演算部7で得られた結果を酸素流量計32または窒素流量計33に入力し、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を制御して酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を制御している点で相違している。
図4に示した空気分離装置では、具体的には、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量または窒素量が減少したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を絞って酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を減少させればよい。一方、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量または窒素量が増加したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を増開して酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を増大させればよい。組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を制御することによって、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素または窒素の純度変動を抑えることができる。
【0052】
なお、
図4に示した構成例では、演算部7で得られた結果を酸素流量計32または窒素流量計33に入力した場合について説明したが、演算部7で得られた結果を酸素流量計32および窒素流量計33の両方に入力し、酸素流量調整弁42および窒素流量調整弁43の両方を制御して酸素回収路12における酸素の流量および窒素回収路13における窒素の流量を制御してもよい。
【0053】
図4では、
図1に示した構成例に対し、空気分離装置にて製造した液体酸素を貯留する酸素貯槽8と、酸素貯槽8に貯留した液体酸素の蒸発ガスを原料空気圧縮機1へ供給する酸素供給路14と、が備えられている。なお、
図4では、空気分離装置にて製造した液体酸素を酸素貯槽8へ供給する経路は図示していない。
【0054】
酸素貯槽8には、例えば、精留塔4で余剰となった液体酸素を貯留すればよく、酸素貯槽8に貯留した液体酸素の蒸発ガスを原料空気圧縮機1へ供給することによって、酸素回収路12から回収される酸素量を増加させることができるため、原単位を削減できる。即ち、酸素貯槽8には熱侵入があるため、酸素貯槽8に貯留された酸素が蒸発する。従来は、蒸発したガスは大気中に放出されていたが、この蒸発したガスを、酸素供給路14を通して原料空気圧縮機1へ供給することによって、酸素回収路12から回収される酸素量を増大させることができるため、原単位を削減できる。あるいは、原料空気ガス量を減らすことができるため、省エネ化を実現できる。
【0055】
なお、
図4には、空気分離装置にて製造した液体酸素を貯留する酸素貯槽8を設けた構成例を示したが、酸素貯槽8の代わりに窒素貯槽やアルゴン貯槽を設けたり、酸素貯槽8、窒素貯槽、およびアルゴン貯槽より任意に選ばれる2つあるいは全てを設けてもよい。また、充填場におけるローリーの放出ガス、配管予冷のための放出ガス、低温ポンプ予冷のための放出ガスを原料空気圧縮機1の空気吸い込み口に取り込んでも同様の効果が得られる。
【0056】
図4では、演算部7を設けた構成例を示したが、演算部7を設けず、例えば、酸素流量調整弁42に酸素の流量を制御する手段を設け、窒素流量調整弁43に窒素の流量を制御する手段を設けておき、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素流量調整弁42および窒素流量調整弁43を制御して酸素回収路12における酸素の流量および窒素回収路13における窒素の流量を調整してもよい。
【0057】
なお、
図4においても、
図1(実施の形態1)と同様、酸素回収路12における酸素の純度や窒素回収路13における窒素の純度を安定させるために、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御してもよい。具体的には、
図4において、演算部7から流量計31に向かう点線矢印によって、原料空気ガスの流量を制御することができる。例えば、原料空気ガス中の酸素濃度が減少すれば、原料空気ガスの流量制御の目標値を増加させ、原料空気ガス中の酸素濃度が増加すれば、原料空気ガスの流量制御の目標値を減少させればよい。原料空気ガスの流量を制御して酸素回収路12における酸素の純度や窒素回収路13における窒素の純度を安定化する場合、酸素流量制御または窒素流量制御の目標値は演算部7の結果により変更せず、一定値としてもよい。
【0058】
(変更例)
次に、本発明に係る空気分離装置の変更例について
図5を用いて説明する。
図5は、酸素および/または窒素に加えて、アルゴンを製造する構成を示している。
図5は、本発明に係る空気分離装置の具体的な構成を示す概略図であり、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。
【0059】
図5では、
図1に示した構成例に対し、低圧精留塔4bから供給される酸素リッチガスからアルゴンを分離するアルゴン塔9と、アルゴン塔9と低圧精留塔4bとを接続する経路15a、15bと、アルゴン塔9と主熱交換器3とを接続するアルゴン回収路16と、を設けている。アルゴン塔9と低圧精留塔4bとを接続する経路のうち、15aは低圧精留塔4bから取り出した酸素リッチガスをアルゴン塔9へ供給する経路、15bはアルゴン塔9から取り出した液体酸素を低圧精留塔4bへ返送する経路、をそれぞれ示している。また、アルゴン塔9には、凝縮器9aが設けられている。
【0060】
図5では、アルゴン塔の頂部からアルゴンをガス状態で抜いているが、アルゴン塔の頂部からアルゴンを液状態で抜き、主熱交換器3で蒸発させて常温とし、アルゴンを製造してもよい。
【0061】
アルゴン回収路16には、主熱交換器3より下流側にアルゴン流量調整弁46と、該アルゴン流量調整弁46と主熱交換器3との間にアルゴン流量計36が備えられている。なお、アルゴン流量調整弁46とアルゴン流量計36は、主熱交換器3より下流側に設けられていればよく、例えば、アルゴン流量計36と主熱交換器3との間にアルゴン流量調整弁46を設けてもよい。
【0062】
図5では、流量計31で測定されたデータに基づいて原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御している。
【0063】
また、
図5では、組成計21および流量計31で測定されたデータを演算部7に入力し、演算部7で得られた結果に基づいて酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を制御して酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を制御している。具体的には、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量または窒素量が減少したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を絞って酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を減少させればよい。一方、空気供給路11内におけるガスに含まれる酸素量または窒素量が増加したことが検知された場合には、酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を増開して酸素の流量または窒素の流量を増大させればよい。組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量を制御することによって、原料空気ガスの組成が変動しても製造して得られる酸素または窒素の純度変動を抑えることができる。
【0064】
なお、
図5に示した構成例では、演算部7で得られた結果に基づいて酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43を制御した例について説明したが、演算部7で得られた結果を酸素流量計32または窒素流量計33に加えてアルゴン流量計36にも入力し、入力データに基づいて酸素流量調整弁42または窒素流量調整弁43に加えてアルゴン流量調整弁46を制御し、酸素回収路12における酸素の流量または窒素回収路13における窒素の流量に加えてアルゴン回収路16におけるアルゴンの流量を制御してもよい。
【0065】
高純度のアルゴンを製造する際には、主熱交換器3から出てきたアルゴンを、アルゴン中の酸素を水素などの還元剤と反応させて除去する設備(アルゴン精製装置)に供給し、さらに熱交換器で冷却し、精製アルゴン塔に供給し、水素などの不純物を除去してアルゴンの純度を高くしてもよい。
【0066】
図5では、
図1に示した構成例に対し、空気分離装置にて製造した液体アルゴンを貯留するアルゴン貯槽10と、アルゴン貯槽10に貯留した液体アルゴンが蒸発したアルゴンガスを原料空気圧縮機1へ供給するアルゴン供給路17と、が備えられている。なお、
図5では、液体アルゴンをアルゴン貯槽10へ供給する経路は図示していない。
【0067】
アルゴン貯槽10には、例えば、アルゴン塔9で分離、製造した液体アルゴンを貯留すればよく、アルゴン貯槽10に貯留した液体アルゴンから発生する蒸発ガスを原料空気圧縮機1へ供給することによって、アルゴン回収路16から回収されるアルゴン量を増加させることができるため、原単位を削減できる。
【0068】
なお、
図5には、アルゴン貯槽10を設けた構成例を示したが、更に、空気分離装置にて製造した液体酸素を貯留する酸素貯槽8を設けたり、空気分離装置にて製造した液体窒素を貯留する窒素貯槽を設けてもよい。もちろん、アルゴン貯槽10、酸素貯槽8、窒素貯槽を複数組み合わせて設けてもよい。
【0069】
組成計21としては、例えば、酸素濃度計を備えることが好ましい。さらに、アルゴン濃度計を設けてもよい。酸素濃度計を用いて原料空気ガス中の酸素濃度を測定すれば、計算により原料空気ガス中の窒素濃度を求めることができる。これにより原料空気ガス量や窒素回収路13から回収される窒素量を制御できるため、窒素回収路13から回収される窒素の純度を安定させることができる。
図5では、演算部7を設けた構成例を示したが、演算部7を設けず、例えば、酸素流量調整弁42に酸素の流量を制御する手段を設け、窒素流量調整弁43に窒素の流量を制御する手段を設け、アルゴン流量調整弁46にアルゴンの流量を制御する手段を設けておき、組成計21および流量計31で測定されたデータに基づいて酸素流量調整弁42、窒素流量調整弁43、およびアルゴン流量調整弁46を制御して酸素回収路12における酸素の流量、窒素回収路13における窒素の流量、およびアルゴン回収路16におけるアルゴンの流量を調整してもよい。
【0070】
なお、
図5においても、
図1(実施の形態1)と同様、酸素回収路12における酸素の純度や窒素回収路13における窒素の純度を安定させるために、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御してもよい。具体的には、
図5において、演算部7から流量計31に向かう点線矢印によって、原料空気ガスの流量を制御することができる。例えば、原料空気ガス中の酸素濃度が減少すれば、原料空気ガスの流量制御の目標値を増加させ、原料空気ガス中の酸素濃度が増加すれば、原料空気ガスの流量制御の目標値を減少させればよい。原料空気ガスの流量を制御して酸素回収路12における酸素の純度や窒素回収路13における窒素の純度を安定化する場合、酸素流量制御または窒素流量制御の目標値は演算部7の結果により変更せず、一定値としてもよい。
【0071】
本発明の空気分離装置を用いて酸素および/または窒素を製造する場合は、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガス中の酸素濃度の基準値または窒素濃度の基準値を予め設定しておき、設定した基準値に対する変動幅が±10%となるように原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量を制御することが好ましい。設定した基準値に対する変動幅を±10%とすることにより、酸素回収路12から回収される酸素、または窒素回収路13から回収される窒素の純度変動を抑制できる。
【0072】
本発明の空気分離装置を用いて酸素を製造する場合は、原料空気ガス中の酸素の物質量と酸素回収路12から回収される酸素の物質量との比が一定となるように、組成計21で測定されたデータに基づき、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量の目標値、および/または酸素回収路12における酸素の流量の目標値を設定し、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量、および/または酸素回収路12における酸素の流量を制御することが好ましい。
【0073】
本発明の空気分離装置を用いて窒素を製造する場合は、原料空気ガス中の窒素の物質量と窒素回収路13から回収される窒素の物質量との比が一定となるように、組成計21で測定されたデータに基づき、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量の目標値、および/または窒素回収路13における窒素の流量の目標値を設定し、原料空気圧縮機1で圧縮する原料空気ガスの流量、および/または窒素回収路13における窒素の流量を制御することが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
1 原料空気圧縮機
2、2a、2b 吸着塔
3 主熱交換器
4 精留塔
4a 高圧精留塔
4b 低圧精留塔
5 主凝縮器
6 タービン
7 演算部
8 酸素貯槽
9 アルゴン塔
9a 凝縮器
10 アルゴン貯槽
11 空気供給路
11a 分岐路
12 酸素回収路
13 窒素回収路
14 酸素供給路
15a、15b アルゴン塔と低圧精留塔とを接続する経路
16 アルゴン回収路
17 アルゴン供給路
21 組成計
31 流量計
32 酸素流量計
33 窒素流量計
36 アルゴン流量計
42 酸素流量調整弁
43 窒素流量調整弁
46 アルゴン流量調整弁